説明

遠心分離装置

【課題】遠心容器およびチューブの周りのスペースを広げることなく遠心容器をスムーズに揺動させる。
【解決手段】回転アーム25と、回転アーム25をその回転軸線回りに回転させるモータと、回転軸線に対して半径方向に離れた位置に配置される揺動軸27回りに揺動可能に、回転アーム25に支持される遠心容器1と、遠心容器1に一端が接続されたチューブ15と、チューブ15の他端に接続されるとともに回転アーム25に固定され、回転アーム25の回転中においてもチューブ15と外部の配管との間で流体を流通可能に接続するロータリジョイントとを備え、チューブ15の両端の容器側口金13A,13Bおよび軸体側口金43が、揺動軸27に平行な方向を向けて遠心容器1およびロータリジョイントに接続されている遠心分離装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脂肪組織等の生体組織を分解して細胞懸濁液を生成する分解処理部と分解処理部により生成された細胞懸濁液を濃縮する遠心容器とをチューブにより接続し、分解処理部からチューブを介して供給された細胞懸濁液を収容する遠心容器を、遠心容器から離れた回転軸線回りに回転させることにより、細胞懸濁液内に含有されている成分を比重によって分離する遠心分離装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている遠心分離装置は、遠心容器を所定の揺動軸線回りに揺動自在に支持し、遠心容器を回転軸線回りに回転させてその底部が半径方向外方に向かうように揺動軸線回りに揺動させることにより、分解処理部からチューブを介して遠心容器に供給された細胞懸濁液中の細胞と他の成分とを比重に応じて遠心容器の深さ方向に分離させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の遠心分離装置のように、遠心容器と分解処理部等をチューブにより接続した状態で遠心容器を揺動軸線回りに揺動させようとすると、チューブに撓みが生じ遠心容器の揺動動作の妨げになるという問題がある。また、チューブの撓みによって遠心容器の揺動動作が妨げられないように、遠心容器およびチューブの周りのスペースを広くするのでは、遠心分離装置が大型化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、遠心容器およびチューブの周りのスペースを広げることなく遠心容器をスムーズに揺動させることができる遠心分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、回転アームと、該回転アームをその回転軸線回りに回転させる回転駆動部と、前記回転軸線に対して半径方向に離れた位置に配置される揺動軸線回りに揺動可能に、前記回転アームに支持される遠心容器と、該遠心容器に一端が接続されたチューブと、該チューブの他端に接続されるとともに前記回転アームに固定され、該回転アームの回転中においても前記チューブと外部の配管との間で流体を流通可能に接続するロータリジョイントとを備え、前記チューブの両端の口金が、前記揺動軸線に平行な方向を向けて前記遠心容器および前記ロータリジョイントに接続されている遠心分離装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、回転駆動部の作動により回転アームが回転すると、回転アームに支持された遠心容器が回転軸線回りに回転させられ、その底部が半径方向外方に向かうように揺動軸線回りに揺動させられる。比重が異なる成分を含有する流体を外部の配管からロータリジョイントを介してチューブに流通させて遠心容器に供給し、遠心容器を回転軸線回りに回転させれば、遠心容器に収容された流体に半径方向外方に向かう遠心力が作用し、流体内の成分を比重によって遠心容器の深さ方向に分離させることができる。
【0009】
この場合において、遠心容器およびロータリジョイントに接続されたチューブの両端の口金をそれぞれ揺動軸線に平行な方向に向けて配置することで、遠心容器が揺動軸回りに揺動して姿勢が変化しても互いの口金の向きは変動しない。そのため、チューブを大きく撓ませることなく、チューブのねじれによって遠心容器の姿勢を変化させることができる。したがって、チューブの撓みによって遠心容器の揺動動作が妨げられるのを抑制し、遠心容器およびチューブの周りにスペースを広げることなく遠心容器をスムーズに揺動させることができる。
【0010】
上記発明においては、前記チューブの両端の口金の少なくとも一方が、前記揺動軸線と平行な軸線回りに回転可能に設けられていることとしてもよい。
【0011】
このように構成することで、チューブの両端の口金の少なくとの一方の回転により、遠心容器が揺動軸線回りに揺動することによって生じるチューブの撓みやねじれを吸収することができる。したがって、遠心容器をよりスムーズに揺動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠心容器およびチューブの周りのスペースを広げることなく遠心容器をスムーズに揺動させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る静止時の遠心分離装置を回転軸線に直交する方向から見た概略構成図である。
【図2】図1の遠心分離装置を回転軸線方向に見た概略構成図である。
【図3】図1の遠心分離装置を回転アームが延びる方向に見た概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転時の遠心分離装置を回転軸線に直交する方向から見た概略構成図である。
【図5】図4の遠心分離装置を回転軸線方向に見た概略構成図である。
【図6】図4の遠心分離装置を回転アームが延びる方向に見た概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る遠心分離装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る遠心分離装置100は、図1から図3に示すように、回転アーム25を回転軸線A回りに回転可能に備える遠心分離機20と、遠心分離機20の回転アーム25により回転軸線A回りに回転させられる遠心容器1を有する遠心分離ユニット40とを備えている。
【0015】
遠心分離機20は、内部にモータ(回転駆動部)21を収容するベース22と、ベース22により鉛直方向に支持され、モータ21によりベース22に対して回転軸線A回りに回転駆動させられる回転軸23と、回転軸23に固定され、回転軸線Aに対して半径方向外方に延びる梁状の一対の回転アーム25とを備えている。
【0016】
一対の回転アーム25は、回転軸23を半径方向に挟み、互いに平行に対向して配置されている。一対の回転アーム25の両端には、各回転アーム25に対して垂直に延び両者の間に水平に配置される揺動軸(揺動軸線)27と、揺動軸27回りに揺動可能に支持され、遠心容器1を収容可能なバケット31とが設けられている。
【0017】
バケット31は、軸方向の一端を閉塞する底部33を有し、内壁が遠心容器1の形状に沿って筒状に成形されている。このバケット31は、回転軸23が回転することにより、回転アーム25とともに回転軸線A回りに回転させられ、遠心力の作用により底部33が半径方向外方に向かうように揺動軸27回りに揺動するようになっている。すなわち、バケット31は、静止時には回転軸線A方向下方に底部33を向けた姿勢で支持され、回転時には半径方向外方に底部33を向けるように変化した姿勢で支持されるようになっている。
【0018】
遠心分離ユニット40は、細胞懸濁液を収容する遠心容器1と、遠心容器1に一端が接続されたチューブ15と、チューブ15の他端が接続されるとともにロータ20の回転アーム25に固定されるロータリジョイント37とを備えている。
【0019】
遠心容器1は、先端に向かって先細になる底部3を有する略円筒状に形成され、他端が蓋体11により閉塞されている。蓋体11には、その略中央部分から遠心容器1の内部を底部3に向かって深さ方向に延びる吐出管(図示略)および吸引管(図示略)が設けられている。吐出管は、例えば、細胞懸濁液や洗浄液を吐出したり最終生成物としての細胞を吸引したりするのに用いられ、吸引管は、例えば、上清を吸引するのに用いられる。
【0020】
本実施形態においては、遠心容器1に対して、蓋体11が接着あるいは一体成型によって形成された上で閉塞した態様となっている。このことによって、細胞懸濁液を扱う上での無菌性を担保する1つの遠心容器を提供するものである。しかしながら、本発明では、遠心容器1から蓋体11の取り外しができることを否定するものでない。
【0021】
チューブ15は、可撓性を有する材質により形成されている。チューブ15の一端はコネクタ17により2つに分岐され、その先端にはそれぞれ遠心容器1の蓋体11に接続された容器側口金13A,13Bが設けられている。
【0022】
一方の容器側口金13Aは、蓋体11に設けられた吐出管に開口し、他方の容器側口金13Bは、同じく蓋体11に設けられた吸引管に開口している。これらの容器側口金13A,13Bは、それぞれ遠心容器1の半径方向を向いて配置されている。
チューブ15の他端には、ロータリジョイント37に接続された軸体側口金43が設けられている。
【0023】
ロータリジョイント37は、回転軸線A上に配置されて回転アーム25に固定される円筒形状の回転軸体41と、回転軸体41の外側に同心円に配置された円筒形状のハウジング45とを備えている。これらの回転軸体41とハウジング45は、図示しないベアリングにより回転軸線A回りに相対回転可能に支持されている。
【0024】
回転軸体41には、チューブ15の軸体側口金43が揺動軸27に平行な方向を向いて接続されている。回転軸体41の内部には、軸体側口金43に一端が開口する内部流路(図示略)が設けられている。
【0025】
ハウジング45には、図示しないポンプやシリンジ等の外部の配管49のハウジング側口金47が接続されている。ハウジング45に接続されたハウジング口金47は、回転軸体41の内部流路の他端に開口することができるようになっている。
このように構成されたロータリジョイント37は、チューブ15と外部の配管49との間で内部流路を介して流体を流通させることができるようになっている。
【0026】
上記遠心容器1は、遠心分離機20のバケット31に収容された状態で、チューブ15の容器側口金13A,13Bが揺動軸27に平行な方向を向くように位置決めされるようになっている。遠心容器1は、回転アーム25が回転軸線A回りに回転させられると、バケット31とともに回転軸線A回りに回転させられ、遠心力によって揺動軸27回りに揺動させられて、その底部3が半径方向外方に向かうように姿勢を変化させるようになっている。
【0027】
次に、このように構成された本実施形態に係る遠心分離装置100の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る遠心分離装置100を用いて、細胞懸濁液から濃縮した細胞を回収するには、まず、生体組織を消化酵素により消化し、得られた細胞懸濁液をポンプにより配管49からロータリジョイント37を介して遠心容器1へ送る。
【0028】
外部の配管49から供給される細胞懸濁液は、ロータリジョイント37の回転軸体43の内部流路を介してチューブ15内を流通させられ、吐出管から遠心容器1内に注入される。この段階では、図1に示すように、遠心容器1は静止している。
【0029】
次に、モータ21を作動させ、遠心容器1を回転軸線A回りに回転させることにより、遠心容器1内に収容されている細胞懸濁液を遠心分離する。
モータ21の作動により、回転軸23と共に回転アーム25が回転すると、バケット31が回転軸線A回りに回転しながら遠心力によって揺動軸27回りに揺動する。これにより、バケット31は、回転軸線A方向下方に底部33を向けていた姿勢から半径方向外方に底部33を向けるように姿勢を変化させる。
【0030】
バケット31が回転しながら姿勢を変化させることにより、図4〜図6に示すように、バケット31に収容されている遠心容器1もバケット31とともに回転軸線A回りに回転させられ、半径方向外方に底部3を向けるように姿勢を変化させる。
【0031】
この場合において、チューブ15の一端に設けられた容器側口金13A,13Bは揺動軸27に平行な方向を向いて配置されているので、遠心容器1が揺動軸27回りに揺動しても、これらの容器側口金13A,13Bの向きは変動しない。また、チューブ15の他端に設けられた軸体側口金43も揺動軸27に平行な方向を向いて配置されているで、容器側口金13A,13Bの向きと軸体側口金43の向きが常に一定に保たれる。したがって、チューブ15を大きく撓ませることなく、チューブ15のねじれによって遠心容器1の姿勢を変化させることができる。
【0032】
遠心容器1が姿勢を変化させながら回転軸線A回りに回転することにより、遠心容器1内に収容されている細胞懸濁液に遠心力が作用し、細胞懸濁液中の細胞と他の成分とが比重に応じて遠心容器1の深さ方向に積層状態に分離される。具体的には、比重の大きな細胞が遠心容器1の底部3に集められ、比重の小さな他の成分が細胞の上層に集められる。
【0033】
遠心分離が終了したら、モータ21の駆動を一旦停止し、遠心容器1を静止状態に戻す。ハウジング口金47に接続されているポンプを逆回転させ、吸引管により遠心容器1内の上清を吸引する。吸引管から吸引された上清は、チューブ15内を流通させられて、ロータリジョイント37を介して外部に排出される。
【0034】
上清が外部に排出されたら、細胞懸濁液の遠心分離と同様に、ポンプにより配管49から遠心容器1内に洗浄液を供給し、遠心容器1を回転軸線A回りに回転させて細胞を洗浄処理する。洗浄処理後は、遠心容器1内の上清を外部に排出する。そして、チューブ15に代えてシリンジ(図示略)を遠心容器1の吐出管に接続し、遠心容器1の底部3に残存する最終生成物としての細胞を吸引する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る遠心分離装置100によれば、遠心容器1が揺動軸27回りに揺動する場合において、チューブ15の容器側口金13A,13Bおよび軸体側口金43の向きが変動せず揺動軸27に対して常に平行に配置されているので、チューブ15の撓みを抑制し遠心容器1の揺動動作が妨げられるのを抑制することができる。したがって、遠心容器1およびチューブ15の周りにスペースを広げることなく遠心容器1をスムーズに揺動させることができる。
【0036】
本実施形態においては、チューブ15の容器側口金13A,13Bおよび軸体側口金43の少なくとも1つが、揺動軸27と平行な軸線回りに回転可能に設けられていることとしてもよい。容器側口金13A,13Bおよび軸体側口金43の少なくとの1つが回転することで、遠心容器1が揺動軸27回りに揺動することによって生じるチューブ15の撓みやねじれを吸収することができる。これにより、遠心容器1の揺動動作をよりスムーズにすることができる。また、チューブ15とコネクタ17との接合部分が揺動軸27と平行な軸線回りに回転可能に設けられていることとしてもよい。この場合も容器側口金13A,13Bまたは軸体側口金43を回転可能にした場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 遠心容器
13A,13B 容器側口金(口金)
15 チューブ
21 モータ(回転駆動部)
25 回転アーム
27 揺動軸(揺動軸線)
37 ロータリジョイント
43 軸体側口金(口金)
49 配管
100 遠心分離装置
A 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転アームと、
該回転アームをその回転軸線回りに回転させる回転駆動部と、
前記回転軸線に対して半径方向に離れた位置に配置される揺動軸線回りに揺動可能に、前記回転アームに支持される遠心容器と、
該遠心容器に一端が接続されたチューブと、
該チューブの他端に接続されるとともに前記回転アームに固定され、該回転アームの回転中においても前記チューブと外部の配管との間で流体を流通可能に接続するロータリジョイントとを備え、
前記チューブの両端の口金が、前記揺動軸線に平行な方向を向けて前記遠心容器および前記ロータリジョイントに接続されている遠心分離装置。
【請求項2】
前記チューブの両端の口金の少なくとも一方が、前記揺動軸線と平行な軸線回りに回転可能に設けられている請求項1に記載の遠心分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−110796(P2012−110796A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259093(P2010−259093)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】