説明

遠投用コマセ籠

【課題】遠投性能及び方向性に優れ、所要タナ到達後にコマセを放出することができ、着水時から所要タナ到達までの過程で釣り針とコマセ籠又は道糸との絡みも確実に防止し、しかも簡単な構成にして安価に提供できる遠投用コマセ籠を提供する。
【解決手段】遠投時にコマセ籠の開口部に浮きを嵌合して両者を一体化するようにした遠投用コマセ籠において、開口部にスリットを形成する一方、道糸に浮きと遠投用コマセ籠との間に位置して回転止めを設け、遠投用コマセ籠が所要タナに到達するまでは該回転止めをスリット内側に係合させて、遠投用コマセ籠を有底部を下にした状態に保持、道糸及びハリスの弛み防止、内部の釣り針の放出防止を行わせ、所要タナ到達後に竿のシャクリにより上記回転止めをスリットから外して遠投用コマセ籠の回転と、内部の釣り針の放出を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠投カゴ釣りに用いられる遠投用コマセ籠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、磯釣りや堤防などで行われる遠投カゴ釣りは、遠投用のリール付き竿、道糸、浮き、コマセ籠、ハリスなどから成る釣具を用い、磯や堤防から数十m、例えば40m〜80m離れた位置まで遠投し、しかる後一定の深さの所要タナまでコマセ籠を沈め、同コマセ籠からコマセを放出してハリスにより魚を釣るようにしている。
【0003】
しかし、上記一般に用いられている遠投カゴ釣りの釣具は、道糸に浮きとコマセ籠をそれぞれ別個に設けるようにしているため、遠投時に浮き及びコマセ籠が受ける空気抵抗や風の影響で、目的とする遠くのポイント位置まで容易に遠投できないばかりか、該浮きとコマセ籠が受ける空気抵抗も個々に違うため、方向性も定まらず困難を要していた。特に、釣りの熟練者は未だよいが素人では非常に困難を要するものであった。更に、着水時の衝撃やコマセ籠が所要タナに到達する過程で同コマセ籠内に収納したコマセが放出されてしまう問題を有していた。
【0004】
このため、遠投時にコマセ籠と浮きを一体化すると共に、所要タナ到達後にコマセを放出するようにした釣具が、例えば実開平1−66872号公報(特許文献1)や実開平7−30063号公報(特許文献2)にて提案されている。
【0005】
特許文献1は、一端に開口部を有する断面U形状のコマセ籠と、この開口部に嵌合する浮きとを備えた遠投用の釣具であって、遠投時には上記コマセ籠の開口部に浮きの一端を嵌合して同コマセ籠と浮きを一体化し、着水後にこの両者を分離し、分離されたコマセ籠を所要タナに到達後に反転させて内部のコマセを放出するようにした遠投用の釣具である。
なお、ハリスに設けた釣り針は、コマセ籠の開口部より内部のコマセの上に一緒に入れるようにしている。
【0006】
また、上記特許文献2は、円筒部と上下蓋体からなる3段構成とし、下端にハリス、上端に道糸が接続され、上端に嵌合部を備えたコマセ籠と、道糸に所定の範囲内で移動可能に取付けられた挿入部を有する浮きを備えた遠投用の釣り具であって、遠投時には上記コマセ籠の嵌合部に浮きの挿入部を嵌合して一体化し、着水後にこの両者を分離し、分離されたコマセ籠が所定タナに到達後、先ず上部蓋体を開放し、次いで下部蓋体を開放して順次コマセを放出するようにした遠投用の釣り具である。
なお、ハリスに設けた複数(図面中は2ケ)の釣り針は、それぞれコマセ籠の上部蓋体、下部蓋体の中にコマセと一緒に入れ、各上下蓋体の開放によりコマセと一緒に順次放出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−66872号公報
【特許文献2】実開平7−30063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1は、遠投時にコマセ籠の開口部に浮きを嵌合して一体化することにより遠投性能及び方向性の向上を図ると共に、コマセ籠を所要タナ到達後に反転することにより所要タナの釣りポイントにコマセを撒くことができ、しかも構造も簡単で安価に提供できるので実用化も行われている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の遠投用の釣具においては、浮きと分離して開口されたコマセ籠の開口部から内部に収納した釣り針が着水時の衝撃により外部に放出されることがあった。また、着水時の衝撃により内部の釣り針が放出されない場合においても、分離されたコマセ籠が所要タナに到達する過程において、コマセ籠とこのコマセ籠に接続されたハリスに加わる水の抵抗の違いにより該ハリスが引っぱられ、これに伴って内部の釣り針も引っぱられて外部に放出されるものであった。このため、外部に放出された釣り針がコマセ籠や道糸と絡んでしまう問題を有していた。
【0010】
この点、上記特許文献2の遠投用の釣具は、遠投時に接続具を介して浮きとコマセ籠を一体化することにより遠投性能及び方向性の向上を図ると共に、コマセ籠が所要タナ到達後にその上下蓋体を順次開放して、所要タナの釣りポイントに内部のコマセ及び釣り針を順次放出してなるので、該コマセ籠が所要タナに到達するまでは内部に収納した釣り針は放出されることもなく、特許文献1のような着水後から所要タナ到達までの過程で釣り針と道糸又はコマセ籠が絡むと云った問題も生じなく好ましいものである。
しかしながら、上記コマセ籠は3段構成、上下蓋体の移動機構、浮きとの嵌合離脱機構など構造が複雑でコスト高となるばかりか、コマセを上下それぞれに収納するなど作業性も煩雑で使い勝手が悪いため実用化されていないのが実情である。
【0011】
本発明は上記点に鑑みなされたもので、遠投性能及び方向性に優れ、所要タナ到達後にコマセを放出することができ、着水時から所要タナ到達までの過程で釣り針とコマセ籠又は道糸との絡みも確実に防止でき、しかも簡単な構成にして安価に提供できる遠投用コマセ籠を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一端に開口部を、他端に錘を有する有底部を設け、この有底部に上記浮きからの道糸と、釣り針を有するハリスを接続してなり、
遠投時には上記開口部に浮きの一端を嵌合して一体化すると同時に同開口部を閉塞し、着水後には該浮きと分離し、しかる後所定タナに到達するまでは有底部を下にして水没し、所定タナに到達後に反転するようにした断面略U形状のコマセ籠を有する遠投用コマセ籠において、
上記コマセ籠の開口部にスリットを形成する一方、上記道糸に浮きとコマセ籠との間に位置して該スリット幅と略同一若しくは若干大きい径の回転止めを設けてなり、
上記ハリスを上記スリットを介してコマセ籠内に導出し釣り針をコマセ籠内部に収納した後、上記道糸の回転止めを上記スリットに強制的に通して同スリット内側に係合せしめ、このスリット内側に係合した回転止めにより浮きと分離したコマセ籠が所要タナに到達するまでは、同コマセ籠の回動動作を規制すると共に有底部の錘と相俟って該コマセ籠を有底部を下にした状態に保持し、
所要タナ到達後に竿のシャクリに伴うコマセ籠の水の抵抗に抗して道糸を引っぱることにより上記回転止めをスリットから外して、該コマセ籠の回動規制を解除すると共にハリスをフリー状態と成し、同コマセ籠を反転させると共に内部の釣り針を外部に放出するようにしたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による遠投用コマセ籠においては、遠投時にコマセ籠の開口部に浮きを嵌合して両者を一体化することにより、遠投性能及び方向性の向上を図り所望の遠くのポイント位置まで容易に遠投させることができる。また、着水後浮きと分離したコマセ籠が所要タナに到達するまでは、スリット内側に係合した回転止めによるコマセ籠の回動規制と有底部に設けた錘により、同コマセ籠を有底部を下にした状態に確実に保持することができると共に、上記スリット内側に係合した回転止めによりハリスをその上部から押さえて同ハリスの緩み防止と内部に収納した釣り針の外部への放出を確実に防止することができ、着水時からコマセ籠が所要タナに到達する過程での釣り針と道糸又はコマセ籠との絡みを確実に防止できる利点がある。
【0014】
また、コマセ籠が所要タナ到達後に上記回転止めをスリットから外してコマセ籠の回動規制解除とハリスをフリー状態と成し、同コマセ籠の反転動作とこれにより内部の釣り針を外部に放出してなるので、所要の釣り状態とすることができると共に釣りポイントに的確にコマセを撒くことができる利点がある。
【0015】
また、複数の釣り針を設けたハリスを用いる場合においては、最下端に位置する釣り針のみをコマセ籠内に収納し、それ以外の釣り針をコマセ籠外周面に巻回したハリスにより同コマセ籠外周面に保持するようにしてなるが、コマセ籠が所要タナ到達するまでは上記回転止めによりハリスの緩みを防止し、コマセ籠内に収納した釣り針の外部への放出を阻止すると同時に、巻回されたハリスの緩みを防止しコマセ籠外周面に保持された釣り針が外れるのを阻止してなるので、釣り針と道糸又はコマセ籠との絡み発生を確実に防止することができる利点がある。
【0016】
また、所要タナ到達後に上記回転止めをスリットから外してハリスをフリー状態とすることにより、コマセ籠の反転動作及びコマセ籠内に収納した釣り針の外部への放出、更には巻回されたハリスを解きコマセ籠外周面に保持されていた釣り針の放出を可能とし、所要の釣り状態にできるので複数の釣り針を有するハリスにも対応できる利点がある。
【0017】
しかも、本発明の遠投用コマセ籠は極めて簡単な構成にしてなし得、安価に提供することができる利点がある。
更に、本発明の遠投用コマセ籠に使用する浮きは、コマセ籠の開口部に嵌合し同開口部を閉塞するものでよいため、市販の棒状又は砲弾型の遠投ウキをそのまま利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す遠投用コマセ籠の斜視図である。
【図2】図1の遠投用コマセ籠の断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す遠投用コマセ籠の遠投前の状態を示し、(a)は回転止めをコマセ籠のスリット内側に係合させる前後の状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図、(b)は浮きを嵌合した状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す遠投用コマセ籠の着水後の状態を示し、(a)は着水時に天秤が外れた状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図、(b)は水没する状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図、(c)は竿のシャクリにより回転止めがスリットから外れた状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図、(d)はコマセ籠の反転と同時に内部の釣り針が放出された状態を示すコマセ籠の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す遠投用コマセ籠の上面図である。
【図6】図1の遠投用コマセ籠を用いた釣具の遠投前の釣具全体構成を示す説明図である。
【図7】図6の遠投用コマセ籠の着水時から所要タナ到達までのコマセ籠の状態を示し、(a)は着水直後の状態を示す説明図、(b)は天秤が元の状態に復帰した状態を示す説明図、(c)は遠投用コマセ籠が水没する状態を示す説明図である。
【図8】図7の遠投用コマセ籠の所定タナ到達後の状態を示し、(a)はコマセ籠が反転した状態を示す説明図、(b)は釣り状態となった時の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の遠投用コマセ籠を図を用いて詳細に説明する。
図1及び図2に示す遠投用コマセ籠本体1は、断面略U形状のコマセ籠2と、このコマセ籠2の有底部5に設けた弾性力を有する天秤9とから大略構成している。
【0020】
上記コマセ籠2は、図1及び図2に示すように内部にコマセ収納部3を、その一端に浮き12が嵌合される開口部4を、他端に錘6を内蔵する有底部5から構成している。そして、このコマセ籠2の開口端側外壁に図1と図2と図5に示すように道糸Mをコマセ籠2の内部に導くためのスリット7を複数個形成し、上記開口部4部位に後述する浮きを嵌合する際の所要の弾性力を付与するようにしている。また、コマセ籠2の外周壁及び有底部5には必要に応じて複数の水抜き孔8を形成している。
【0021】
上記コマセ籠2の開口部4に嵌合する浮き12は、例えば図2に示すように内部に道糸Mを通す貫通孔13を有する棒状中通し式の遠投浮きが用いられる。この浮き12の下端部にはコマセ籠2の開口部4の内径と略同一外径且つ所要長さとした嵌合部15と、その上部に外周に突出する断面鉤状の係止部16を有する係止環14が設けられている。
なお、浮き12の貫通孔13を通して導出された道糸Mは結着部(サルカンなど)11aを介して上記コマセ籠2の有底部5に接続されている。
【0022】
上記コマセ籠2の有底部5に設けられた天秤9は、錆び難い1本の針金部材によって弾性力を有して構成され、通常時には図1及び図2に示すようにコマセ籠2に対して周方向に突出すると共に、同コマセ籠2側に所要角度傾斜した状態に形成されている。
【0023】
そして、この天秤9の先端部9aには、上記浮き12の係止環14の係止部16に係止するフック部10を形成している。また、同天秤9には結着部(サルカンなど)11bを介してハリスSが移動自在に設けられており、このハリスSが天秤9の基端部9bと先端部9aとの間で移動可能としている。なお、ハリスSは1個又は複数個の釣り針を有するものであってもよく、図1及び図2においては複数個の釣り針17を有するハリスSを示している。
【0024】
なお、図1及び図2に示すように道糸Mには浮き12の前後に位置して浮き止め18・18を設けると共に、下部側の浮き止め18の下方に位置して更に上記スリット7の幅と略同一若しくは若干大きい径の回転止め19を設けている。
【0025】
次ぎに、その使用時について以下詳述する。
先ず、図2に示すようにコマセ籠2のコマセ収納部3内に開口部4から撒き餌(コマセ)aを入れた後、ハリスSの結着部11bを天秤9の基端部9b側に位置させた状態で、図6に示すようにハリスSをコマセ籠2の外周面に巻回して図3(b)に示すように最下端となる餌を付けた釣り針17を上記スリット7を介してコマセ収納部3内に入れる。
なお、複数個の釣り針17が設けられたハリスSにあっては、図6に示すように上部側に位置する釣り針17を順番にコマセ籠2外周面に置いた上からハリスSを巻回することによりコマセ籠2外周面に釣り針17を順次保持させ、最後に最下端となる釣り針17をスリット7を介してコマセ収納部3内に入れる。
【0026】
なお、例えば天秤9の先端にハリスSを設けた場合には、同天秤9がコマセ籠2の外側面に沿わせた略平行状態から周方向に突出する状態に復帰動作させるために予めハリスSに所要の弛みを付与する必要がある。このハリスSに付与する弛みによってコマセ籠2外周面に巻回したハリスSが緩み解けてしまうため、コマセ籠2外周面に保持させていた釣り針17も外れてコマセ籠2又は天秤9と絡んでしまう畏れがあるが、ハリスSの結着部11bを天秤9の基端部9bに位置させてハリスSの弛みがない状態で巻回できるので、巻回したハリスSが緩んで解け釣り針17が外れるのを確実に阻止し、釣り針17とコマセ籠2又は道糸Mとの絡みを未然に防止することができるものである。
【0027】
しかる後、図2や図3(a)に示すように回転止め19をスリット7に強制的に通して浮き12下部の道糸Mをコマセ籠2内に導出する。この際、図3(a)に示すようにスリット7下端内側にてハリスSを上から押さえるようにして回転止め20が位置するため、コマセ収納部3内に収納した最下端に位置する釣り針17がスリット7から抜け出るのを確実に阻止すると同時に、ハリスSの緩みを阻止することができる。
【0028】
そして、浮き12をコマセ籠2の開口部4に嵌合すると、コマセ籠2の開口部4は上記浮き12にて閉塞される。この際、コマセ籠2の開口部4の内径と浮き12の嵌合部15の外径寸法とを略同一にしてなるので、コマセ籠2の開口端部の弾性力と相まって適度なフリクションを有して嵌合されることになる。
【0029】
ここで、浮き12を図4(a)に示すように係止環14の係止部16の段差部がコマセ籠2の開口部4の開口端と接するまで押し込んだ状態において、図2に示す周方向に突出した状態の天秤9を図4(a)に示すようにコマセ籠2側面近くまで回動し、図3(b)に示すように浮き12を離脱方向に若干移動すると天秤9のフック部10が浮き12の係止部16に係止し、該天秤9はコマセ籠2の外側面に沿わせた略平行状態に保持される。これと同時に浮き12はこれ以上の離脱方向への動きが規制され、開口部4から抜けるのを阻止される。この状態において、上記浮き12は同図3(b)に示すように係止部17の段差部とコマセ籠2の開口部4の開口端との間隙X分だけ嵌合方向に移動可能な状態とされている。
【0030】
次に、図6に示す状態において竿を振りかざして遠投すると、コマセ籠2は錘6を内蔵する有底部5側を先頭として飛行する。この際、コマセ籠2と浮き12は略直線上に一体化された結合状態で飛行すると共に、天秤9もこのコマセ籠2の外側面に沿った略平行状態に保持されて一緒に飛行するので、遠投時の空気抵抗も大幅に低減し、風の影響も受け難く且つ方向性も安定するので、遠投性能を著しく向上することができる。よって、釣りの熟練者のみならず初心者でも目的とする遠方のポイントまで容易に遠投することができる。
【0031】
そして、着水時には、図7(a)に示すように結合状態のコマセ籠2と浮き12は同コマセ籠2の有底部5を下にして着水するが、この着水時の衝撃によって該浮き12が図3(b)に示す位置から図4(a)に示す位置に移動、即ち嵌合方向に間隙X分移動する。これにより、天秤9のフック部10と浮き12の係止部16との係止が外れ、図4(a)と図7(b)に示すように天秤9は自身の弾性力により元のコマセ籠2に対して周方向に突出する状態に復帰すると同時に、浮き12の離脱方向の動き規制も解除される。
【0032】
これにより、浮き12は、浮き12自身の浮力とコマセ籠2のコマセ収納部3内に浸入してきた海水の水圧などによってコマセ籠2の開口部4から分離するので、分離した浮き12は海面に浮かぶ一方、コマセ籠2は所定タナまで沈んでいく。
この際、図4(b)に示すように回転止め19がスリット7下端内側に係合してコマセ籠2の上部回動規制を行うと共に、コマセ籠2の有底部5に内蔵した錘6と相俟って、図7(c)に示すように同コマセ籠2を有底部5を下にした状態に保持されて沈み、所定タナに到達することになる。なお、コマセ籠2が水没する過程で、仮にハリスSに水の抵抗等により引っぱり力が加わったとしても、上記回転止め19がスリット7下端内側に係合し、内部の釣り針17が外部に放出されるのを確実に阻止している。
【0033】
所定タナ到達後に竿をシャクルと、コマセ籠2が受けるの水の抵抗に抗して道糸Mが引っぱられるため、図4(c)に示すように回転止め19がスリット7から外れ、これによりコマセ籠2の回動規制とハリスSの緩み規制が解除される。よって、図4(c)及び図8(a)に示すようにコマセ籠2が回動動作を行い、これに伴って内部の釣り針17も外部に放出されると共に、コマセ籠2の外周面に巻回したハリスSも解けるので、この巻回したハリスSにより同コマセ籠2外周面に保持されていた他の釣り針17も順次開放されることとなる。
【0034】
ハリスSが全て解けると、ハリスSの結着部11bは、天秤9の下方向の傾斜によって基端部9b側から先端部9a側に移動するので、同天秤9の先端部9aに最終的に達し本来の天秤機能が作用することとなる。以上により、水中での釣りの仕掛けは完了し、以後は竿をシャクってコマセ籠2を上下動しコマセ収納部3内の撒き餌(コマセ)aを適量放出して釣りを楽しむ。
【0035】
上述したように、遠投時は無論のこと、着水時から所定タナに達してコマセ籠2が反転するまでは、ハリスSは緩みのない状態でコマセ籠2の外周面に巻回してなるので、この過程で勝手にハリスSが緩んで釣り針17が放出されて道糸Mやコマセ籠2と絡むのを防止することができる。
【0036】
また、上記各実施例においては、ハリスSに複数の釣り針17を設けたものについて説明したが、例えば1個の釣り針17を有するハリスでもよく、この場合ハリスSを上記実施例のようにコマセ籠2の外周面に巻回して先端部の釣り針17部位をコマセ籠2内に収納するようにしても、若しくは特段コマセ籠2の外周面に巻回せずに先端部の釣り針17部位をコマセ籠2内に収納するようにしても構わない。
【0037】
また、上記各実施例においては浮き12に一般的な棒状中通し式の遠投浮きを用いたものについて説明したが、これに限定されるものではなく例えば一般的な環付き遠投浮きを用いても何等構わない。また、棒状タイプの浮きに限らず、コマセ籠2の開口部4に嵌合して同開口部4を閉塞できる形状であれば砲弾型タイプの浮きであっても構わない。
【0038】
上述のように遠投性能に優れ、所要タナ到達後にコマセを放出することができ、着水時から所要タナ到達までの過程で釣り針とコマセ籠又は道糸との絡みも確実に防止できる遠投用コマセ籠を、極めて簡単な構成にして安価な提供することができるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 遠投用コマセ籠本体
2 コマセ籠
3 コマセ収納部
4 開口部
5 有底部
6 錘
7 スリット
8 水抜き孔
9 天秤
9a 先端部
9b 基端部
10 フック部
11a、11b 結着部(サルカンなど)
12 浮き
13 貫通孔
14 係止環
15 嵌合部
16 係止部
17 釣り針
18 浮き止め
19 回転止め
a 撒き餌(コマセ)
M 道糸
S ハリス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を、他端に錘を有する有底部を設け、この有底部に上記浮きからの道糸と、釣り針を有するハリスを接続してなり、
遠投時には上記開口部に浮きの一端を嵌合して一体化すると同時に同開口部を閉塞し、着水後には該浮きと分離し、しかる後所定タナに到達するまでは有底部を下にして水没し、所定タナに到達後に反転するようにした断面略U形状のコマセ籠を有する遠投用コマセ籠において、
上記コマセ籠の開口部にスリットを形成する一方、上記道糸に浮きとコマセ籠との間に位置して該スリット幅と略同一若しくは若干大きい径の回転止めを設けてなり、
上記ハリスを上記スリットを介してコマセ籠内に導出し釣り針をコマセ籠内部に収納した後、上記道糸の回転止めを上記スリットに強制的に通して同スリット内側に係合せしめ、このスリット内側に係合した回転止めにより浮きと分離したコマセ籠が所要タナに到達するまでは、同コマセ籠の回動動作を規制すると共に有底部の錘と相俟って該コマセ籠を有底部を下にした状態に保持し、
所要タナ到達後に竿のシャクリに伴うコマセ籠の水の抵抗に抗して道糸を引っぱることにより上記回転止めをスリットから外して、該コマセ籠の回動規制を解除すると共にハリスをフリー状態と成し、同コマセ籠を反転させると共に内部の釣り針を外部に放出するようにしたことを特徴とする遠投用コマセ籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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