説明

遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法及び装置

【課題】遠洋鰹釣り漁船の活餌装置で、各種ポンプや新鮮海水の冷却装置に要する動力を低減して、省エネを達成する。
【解決手段】複数の活餌槽12、曝気タンク26及び調整槽16を介設した蓄養水の循環路14と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路34と、循環水の一部を船外に排出する排水路44と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器40と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置50とを備え、二次冷却した新鮮海水を循環路14に供給し、活餌を蓄養する活餌槽数の減少に対応して各活餌槽12設定換水量維持しながら、循環路14の循環水量を減少させ、循環水量に供給する新鮮海水量を設定換水量に対して必要量以上となるように制御すると共に、調整槽16の水面レベルLを検出し、該水面レベルを一定に維持するように排水量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活き鰯等の活餌を蓄養する活餌倉を備えた遠洋鰹1本釣り漁船において、活餌倉に循環水を循環したり新鮮海水を供給するポンプ類及び冷却装置の動力低減を可能にした循環水制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠洋鰹一本釣り漁船では、餌鰯の蓄養として、例えば10〜14の活餌倉を使用して、活き鰯を漁場まで運ぶ。各活餌倉の容積は、例えば20〜30mである。遠洋鰹一本釣り漁船では、27〜30℃ほどの水温の海洋で操業することが多い。
一方、活餌倉内に蓄養されている活き鰯は、27℃以上に水温が上昇すると、急激に斃死率が高くなるので、活餌倉内の水温は、鰯の蓄養に最適な温度である14〜17℃ほどに保持されている。また、活餌倉内の環境水を循環して換水すると共に、活鰯の死滅の要因である魚倉の汚染(アンモニアなど)を防ぐため、魚倉内に換水量の30%以上の割合で新鮮海水を取り入れることが良いとされている。
【0003】
特許文献1(特開昭57−36921号公報)に、本出願人が提案している漁船内の活餌装置が開示されている。以下この活餌装置を図5により説明する。
図5において、活魚貝類を蓄養する蓄養倉01、蓄養倉環境水への酸素の供給と炭酸ガスの除去を行なう曝気装置02、及び循環ポンプPが循環路03により連絡されている。循環路03における曝気装置02の下流側及び上流側には、船外の新鮮海水を給水する新鮮海水供給路04及び活餌倉01からの低温排水を船外に排出する排水路05が夫々接続されている。
【0004】
船外の新鮮海水を新鮮海水ポンプPによって新鮮海水供給路04に汲み上げ、新鮮海水供給路04に汲み上げられた新鮮海水は、一次冷却器06及び二次冷却器07を経て循環路03に供給される。汲み上げた新鮮海水を冷却するための冷却装置012が設けられ、冷却装置012は、二次冷却器07、冷媒圧縮機08、凝縮器09、膨張弁010及びこれらの機器に冷媒を循環する冷媒経路011からなる冷凍サイクルを構成している。
排水路05は、循環路03との接続部から分岐し、流量調整弁013、一次冷却器06を経て、冷却装置012の凝縮器09に導入され、さらに船外に導設されている。
【0005】
かかる構成において、新鮮海水ポンプPによって汲み上げられた新鮮海水を、一次冷却器06で循環路03から流量調整弁013を経た低温排水と熱交換させて予冷却する。その後、低温排水は、凝縮器09で高温ガス冷媒を液化した後、船外に排出される。
新鮮海水は、一次冷却器06で予冷却された後、二次冷却器07で冷却され、その後、循環路03に供給される。
【0006】
特許文献1の活餌装置では、新鮮海水を一次冷却器06で低温排水と熱交換させて予冷却するようにし、また、新鮮海水を予冷却した後の低温排水で高温ガス冷媒を液化させ、これによって、冷却装置012の所要動力を低減するようにしている。
【0007】
【特許文献1】特開昭57−36921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遠洋鰹一本釣り漁船の活餌装置では、前述のように、循環ポンプPや新鮮海水ポンプP、その他排水路04に設けられる排水ポンプ等、多数のポンプが使用されており、これらポンプの所要動力の合計は100kWを超えている。
【0009】
操業が始まると餌鰯を餌に鰹を釣るため、操業の経過に伴って餌鰯が消費される。そのため、餌鰯の減少に伴って餌鰯を蓄養する活餌倉の数が減少していく。活餌倉の数が減少すると、活餌倉全体の換水量の調整が必要となる。この場合、従来は、活餌倉の循環水量を、循環ポンプの吐出バルブの開度を調整して循環ポンプの揚程を揚げることにより、ポンプ能力を落として調整していた。しかし、吐出バルブで流量を減少しても、ポンプ動力の削減量は少なく、効率の悪い運転となっていた。
【0010】
新鮮海水ポンプについては、新鮮海水ポンプの流量調整が難しいため、活餌倉数が減っても減少前の汲み上げ量を維持していた。これによって、換水量の30%以上の新鮮海水の供給量を維持していた。そのため、活餌倉数が減っても、新鮮海水を汲み上げるポンプの動力、及び新鮮海水を冷却する冷却装置の負荷は減少しなかった。
【0011】
また、新鮮海水を冷却する冷却装置において、圧縮機としてスクリュー圧縮機を用いた場合、スクリュー圧縮機の容量制御は、スライド弁により、圧縮直前の吸入ガスをバイパスさせて吸入側へ戻すようにしている。ちなみに、レシプロ圧縮機の場合は、吸入弁を開けたまま圧縮動作を行って吸入ガスをバイパスする機構を取っている。
スクリュー圧縮機は、このような機構から、容量制御範囲は広く、レシプロ圧縮機の段階制御では追従できない領域まで使用できるので、鰹一本釣り漁船のように負荷領域の広い分野に使用されている。
【0012】
しかし、低負荷時の多い鰹一本釣り漁船では、スライド弁式の容量制御では、低負荷時の時、冷凍能力に対して消費電力が多く、冷却効率が悪化するという問題がある。
【0013】
また、図6に示すように、排水路05に排水ポンプPを設けて、一次冷却器06に低温排水を供給するように構成した場合、排水ポンプPの流量調整を行なうため、排水路05に戻り管路014を設け、戻り管路014に電磁弁015を介設して、電磁弁015の開閉により、低温排水の流量を調整していた。
しかし、電磁弁015の開閉は、オンオフ制御であるため、低温排水の精度良い流量調整はできなかった。
【0014】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、遠洋鰹一本釣り漁船の活餌装置において、各種ポンプや冷却装置に要する動力を低減して、省エネを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するため、本発明の遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法は、
複数の活餌倉と、該活餌倉と調整倉間に循環水を循環させる循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを用意し、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法において、
活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように新鮮海水供給量を制御することにより、新鮮海水供給量と新鮮海水供給に要するポンプ動力及び新鮮海水の冷却に要する前記冷却装置の所要動力を低減するようにしたものである。
【0016】
本発明方法では、活餌を蓄養する活餌倉の減少に対応して、活餌倉内の環境水の循環量を減少していくと共に、循環水量に対する新鮮海水量の混合割合を常に一定となるように制御する。これによって、1個当りの活餌倉の換水量を減少させず、かつ循環水に加える新鮮海水量の割合を減少させることなく、設定量を保持したまま新鮮海水の汲み上げ量を減少できる。そのため、新鮮海水ポンプの所要動力を低減できると共に、新鮮海水を冷却する冷却装置の動力をも低減でき、これによって、活餌装置の省エネを達成できる。
【0017】
本発明方法において、前記循環路の循環水量、新鮮海水供給路の新鮮海水供給量及び排水路の排水量をこれら各流路に設けられた移送ポンプの回転数制御により制御すると共に、前記冷却装置の回転圧縮機を回転数制御することにより、新鮮海水を設定温度に二次冷却するようにするとよい。
【0018】
移送ポンプの回転数制御を行なうと、移送ポンプの回転力(トルク)は流体速度の2乗に反比例するため、回転数制御によりポンプの流量を少なくすると、必要な動力は回転数の3乗に比例して小さくなる。これによって、前記各流路に設けられた移送ポンプを回転数制御し、活餌を蓄養する活餌倉の減少に対応して、低回転数で運転することにより、大幅な省エネ(省電力)が可能になる。
【0019】
また、冷凍サイクルを構成する冷却装置の回転圧縮機を回転数制御することにより、新鮮海水を設定温度に二次冷却するようにすれば、低負荷運転の多い遠洋鰹釣り漁船では、低負荷運転時の消費電力を低減できるので、さらに省エネを達成できる。
また、ポンプや回転圧縮機の起動時も、従来の起動方式と比べ大電流発生の虞がなく、安定したリニアスタートとなるため、発電機への負荷も低減される。
【0020】
また、前記本発明方法に直接使用可能な本発明の遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置は、
複数の活餌倉と、該活餌倉内の環境水を循環して換水する循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを備え、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の活餌装置において、
前記循環路、新鮮海水供給路及び排水路に夫々回転数制御可能な移送ポンプを設け、活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して、該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように、前記移送ポンプで前記各流路の流量を制御するように構成したものである。
【0021】
本発明装置では、活餌の消費に伴う活餌倉数の減少に応じて、活餌倉が設定された換水量を維持するように循環水量を減少すると共に、循環水に対する新鮮海水の混合割合を常に一定となるように制御するので、活餌倉数の減少と共に、新鮮海水の汲み上げ量を減少できる。従って、新鮮海水ポンプの所要動力を低減できると共に、新鮮海水を冷却する冷却装置の動力をも低減できる。
また、循環路、新鮮海水供給路及び排水路に夫々設けられた移送ポンプを回転数制御して、流量を制御することにより、活餌を蓄養する活餌倉の減少に対応して、各移送ポンプを低回転数で運転でき、大幅な省エネ(省電力)が可能になる。
【0022】
本発明装置において、前記調整倉内の循環水面レベルを検出するレベル計と、該レベル計の検出値を入力して該循環水面レベルが常に一定となるように前記排水路の排水量を制御するコントローラとを設けるとよい。これによって、活餌倉を循環する環境水の循環水量を安定させ、各活餌倉の換水量を設定値に保持するのが容易になる。
【0023】
また、本発明装置において、循環路に設けられた曝気タンクと、該曝気タンク上流側の循環路に設けられた空気混合器と、該空気混合器に接続された空気供給管の空気圧を検出する空気圧センサと、該空気圧センサの検出値に基づいて該循環路の循環水量を制御するコントローラとを設け、該コントローラによって循環水の酸素溶存量を設定値に保持するように構成するとよい。
これによって、循環水中の溶存酸素量を活餌の蓄養に好適な量に保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明方法によれば、複数の活餌倉と、該活餌倉と調整倉間に循環水を循環させる循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを用意し、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法において、活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように新鮮海水供給量を制御することにより、漁獲操業の継続に伴う活餌倉数の減少に応じて、新鮮海水の汲み上げ量を減少でき、従って、新鮮海水供給量と新鮮海水供給に要するポンプ動力及び新鮮海水の冷却に要する前記冷却装置の所要動力を低減できるので、従来に比べて大幅な省エネを達成できる。
【0025】
また、本発明装置によれば、複数の活餌倉と、該活餌倉と調整倉間に循環水を循環させる循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを備え、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置において、前記循環路、新鮮海水供給路及び排水路に夫々回転数制御可能な移送ポンプを設け、活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して、該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように、前記移送ポンプで前記各流路の流量を制御するように構成したことにより、漁獲操業の継続に伴う活餌倉数の減少に応じて、新鮮海水の汲み上げ量を減少できる。
従って、新鮮海水供給量と新鮮海水供給に要するポンプ動力及び新鮮海水の冷却に要する前記冷却装置の所要動力を低減できるので、従来に比べて大幅な省エネを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る遠洋鰹釣り漁船の活餌装置の全体構成図である。
図1において、漁船内で餌鰯の蓄養として、左右に例えば合計14倉の活餌倉12A、12B、・・・が配置されている。各活餌倉12は、1倉当り例えば20〜30mの容積を有している。各活餌倉12には夫々換水のための循環路14が接続され、設定された換水量で各活餌倉内の海水が循環されている。換水量(m/h)は、活餌倉内にある環境水の循環量(m/h)と新鮮海水供給量(m/h)との合計から餌桶に流れ出る量を減算した流量である。
【0028】
海水循環路14には、調整倉16が介設されると共に、複数台の海水循環ポンプ18が並列に設けられている。各海水循環ポンプ18には、夫々インバータ回路20が設けられ、インバータ回路20によって、各海水循環ポンプ18の回転数を無段階に制御可能に構成されている。調整倉16内の液面レベルLはレベル計22によって検出され、海水循環路14の循環水量は、液面レベルLが常に一定となるように制御されている。
【0029】
海水循環路14において、海水循環ポンプ18の下流側に空気混合器24が介設され、空気混合器24の下流側に曝気タンク26が介設されている。空気混合器24にはブロア26から配管28を通して空気が供給されると共に、圧力センサ30で配管28を通る空気圧を検出している。そして、コントローラ32によって、配管28内の空気圧が設定圧となるように、インバータ回路20を制御し、海水循環ポンプ18の回転数を制御している。これによって、曝気タンク26内の循環水の溶存酸素量を常に設定された値とすることができる。
【0030】
活餌装置10には、船外の新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路34が設けられている。新鮮海水供給路34には新鮮海水ポンプ36が設けられ、新鮮海水ポンプ36で船外の新鮮海水を汲み上げている。汲み上げられた30℃の新鮮海水は、まず熱交換器40で18℃に冷却され、その後海水クーラ42で14℃に冷却された後、海水循環路14に供給される。新鮮海水ポンプ36にはインバータ回路38が設けられ、インバータ回路38によって新鮮海水ポンプ36は無段階に回転数制御され、流量を制御可能に構成されている。
【0031】
調整倉16には循環水の排水路44が設けられ、排水路44には複数の排水ポンプ46が並列に設けられている。排水ポンプ46にはインバータ回路48が設けられて、インバータ回路48によって排水ポンプ46の回転数を無段階に制御可能に構成されている。これによって、排水ポンプ46の流量を制御可能に構成している。排水ポンプ46によって調整倉16から排出された16℃の排水は、熱交換器40で新鮮海水と熱交換して、新鮮海水を予冷却した後、船外に排出される。
【0032】
新鮮海水ポンプ36で汲み上げられ海水循環路14に供給される新鮮海水と、排水路44から排出される排水とは、同量となるように制御され、これによって、調整倉16内の液面レベルLが常に一定に保持される。即ち、コントローラ49によって、液面レベルLが一定となるように、排水ポンプ46の回転数を制御している。
【0033】
活餌装置10には、冷媒、例えばNHを冷媒とした冷凍サイクルを構成する冷却装置50が設けられている。冷却装置50の圧縮機はスクリュー圧縮機52が使用されている。スクリュー圧縮機52の駆動モータ54にはインバータ回路56が設けられ、インバータ回路56によって、スクリュー圧縮機52のロータ軸の回転数制御を可能としている。冷媒がスクリュー圧縮機52から冷媒循環路58に設けられた図示しない凝縮器及び膨張弁60を通して海水クーラ42に供給され、冷媒で新鮮海水を冷却している。
【0034】
コントローラ62でインバータ回路56及び膨張弁60の開度を制御し、海水クーラ42より下流側の新鮮海水供給路34に新鮮海水の温度を検出する温度センサ64を設け、海水クーラ42下流側の新鮮海水の温度が14℃となるように、コントローラ62で駆動モータ54の回転数及び海水クーラ42に流れる冷媒量を制御している。
なお、活餌装置10の各流路には、流量調節のための手動操作弁66が設けられている。
【0035】
かかる構成の活餌装置10において、船外から新鮮海水供給路34に汲み上げられた30℃の新鮮海水は、熱交換器40で排水により18℃に冷却され、さらに海水クーラ42で14℃に冷却された後、循環路14に供給される。餌鰯の死滅の要因である活餌倉12の汚染(アンモニアなど)を防ぐため、換水量の30%以上の新鮮海水を供給する。
例えば、活餌倉12の容量が30mである場合、活餌倉の供給水量は、45m/hとし、この内、循環水量を30m/hとし、新鮮海水供給量を15m/hとする。
【0036】
こうして、図1に示すように、新鮮海水を加えて活餌倉12に供給する循環水の温度を15℃とし、活餌倉12から出る循環水の温度及び排水路44から排出される排水の温度を16℃となるように制御する。
【0037】
鰹一本釣り漁船には、活餌倉12以外に、−20℃のブライン(NaCl)で満たし捕獲した鰹を瞬時に凍結する複数の、例えば4倉の凍結倉を備えている。図2で、該凍結倉にブラインを供給する冷凍装置70の構成を説明する。図2において、冷凍装置70は、例えばNH等を冷媒とする冷凍サイクルを構成している。圧縮機72はスクリュー圧縮機であり、そのロータ軸は駆動モータ74で回転駆動される。
【0038】
駆動モータ74にインバータ回路76が設けられ、インバータ回路76で駆動モータ74の回転数を無段階に制御可能としている。冷凍装置70では、スクリュー圧縮機72から冷媒循環路78に設けられた図示しない凝縮器及び膨張弁80を通してブラインクーラ88に送られる。ブラインクーラ88で低温冷媒により−20℃に冷却されたブライン(NaCl)は、図示しない凍結倉に送られ、該凍結倉に貯留される。そして、漁獲した鰹を該凍結倉に入れて凍結する。凍結倉で凍結された鰹は、その後、活き鰯を餌として消費して空となった活餌倉に入れられる。活餌倉には直膨式のヘアピンコイルが設けられており、該ヘアピンコイルに低温ブラインが供給され、活餌倉内は−50℃に保冷される。
【0039】
ブラインクーラ88の出口側の冷媒循環路78に圧力センサ84が設けられている。圧力センサ84で冷媒循環路78内を通る冷媒圧力を検出し、該冷媒圧を設定値に保持するように、コントローラ86でスクリュー圧縮機72の駆動モータ74の回転数及び膨張弁80の開度を制御する。
【0040】
漁獲操業が進むと、活餌倉内の餌鰯が消費され、餌鰯を蓄養する活餌倉が減少する。餌鰯がいなくなった活餌倉は、餌鰯を蓄養するための環境を保持する必要はなく、前述のように、漁獲した鰹の保冷倉として利用される。
本実施形態では、餌鰯を蓄養する活餌倉の減少に比例して循環水量及び新鮮海水の汲み上げ量を減少させ、これによって、活餌倉の減少に対して、換水率を一定に保持するようにしている。
【0041】
このため、餌鰯を蓄養する活餌倉の減少に対応して新鮮海水の汲み上げ量を減少できるので、新鮮海水ポンプ36の所要動力を低減できると共に、新鮮海水の冷却に要する冷却装置50の所要動力を新鮮海水量に対応して節減することができる。
例えば、餌鰯を蓄養する活餌倉が14倉であり、各活餌倉の容積が30mであって、当初の循環水量が432mで、新鮮海水の供給量が200mであったとする。
その後、餌鰯を蓄養する活餌倉が7倉に半減したとき、従来方式であれば、新鮮海水供給量は200mと変わらないが、本実施形態では、新鮮海水供給量が100mに半減するので、新鮮海水ポンプ36の動力を低減できると共に、冷却装置50の所要動力も半減する。従って、従来の方式に比べて、大幅な省エネを達成できる。
【0042】
また、海水循環ポンプ18、新鮮海水ポンプ36及び排水ポンプ46を回転数制御すると、ポンプの流量特性において、ポンプの流量は、回転数に比例し必要な動力は回転数の3乗に比例して小さくなる。
従って、前記ポンプ類を回転数制御して、低負荷時に低回転数で運転することにより、大幅な省エネ(省電力)が可能になる。
また、ポンプ18、36、46やスクリュー圧縮機52の起動時も、従来の起動方式と比べ大電流発生の虞がなく、安定したリニアスタートとなるため、発電機への負荷も低減される。
【0043】
また、冷却装置50の圧縮機としてスクリュー圧縮機52を用いたことにより、容量制御範囲が広い長所を有すると共に、低負荷運転の多い遠洋鰹釣り漁船では、低負荷時の消費電力を低減できるので、さらに省エネを達成できる。
【0044】
また、本実施形態では、調整倉16内の循環水の液面レベルLを液面レベル計22で検出し、液面レベルLが常に一定となるように、コントローラ49で排水路44の排水量を制御しているので、活餌倉内の循環水量を安定させることができる。
さらに、配管28内の空気圧を検知し、該空気圧が設定値になるように循環水量を制御しているので、曝気タンク26内の酸素溶存量を設定値に保持できる。そのため、活餌倉12内の酸素溶存量を餌鰯の生存に最適な値に保持できる。
【0045】
図3は、新鮮海水ポンプ36の従来方式による吐出バルブ閉時又は本実施形態による回転数制御と流量(m/h)との関係を示す線図である。図3において、必要能力が75m/hの時、従来方式の吐出バルブ閉操作では、約14.5kwの消費動力であるのに対し、本実施形態の回転数制御では、約8.5kwとなり、6.0kw(45%)の動力削減となる。
【0046】
図4は、本実施形態と従来方式の冷却装置50の所要動力の差を示すもので、冷却装置50を構成する圧縮機として、スクリュー圧縮機を使用した場合である。従来方式では、餌鰯を蓄養する活餌倉が減少しても、新鮮海水の汲み上げ量が変わらないので、新鮮海水ポンプ36及び冷却装置50の所要動力は変わらない。あるいはスクリュー圧縮機をスライド弁方式で容量制御しても、低負荷時の冷凍能力に対して消費電力が多く、効率がわるい。
【0047】
一方、本実施形態では、餌鰯を蓄養する活餌倉の減少に対応させて新鮮海水の汲み上げ量を減少させ、新鮮海水量の減少に対して駆動モータ52をインバータ回路56で回転数制御することにより対応した。
図4において、縦棒は本実施形態と従来方式との各冷凍能力(%)における動力差を示す。例えば、所要動力が冷凍能力に対して50%の時に、従来のバイパス制御では約155kwの消費動力に対し、本実施形態では約110kwであり、45kwの消費動力が削減できる。
【0048】
このように、冷却装置の低負荷運転の多い活餌装置では、冷却装置の動力削減が顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、遠洋鰹一本釣り漁船の活餌装置において、各流路に設けられたポンプ類や新鮮海水を冷却する冷却装置の所要動力を削減でき、省エネを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る活餌装置の全体構成図である。
【図2】前記実施形態に係る凍結倉用の冷凍装置の系統図である。
【図3】前記実施形態と従来方式との新鮮海水ポンプの動力差を示す線図である。
【図4】前記実施形態と従来方式との冷却装置の動力差を示す線図である。
【図5】従来の活餌装置の全体構成図である。
【図6】従来の活餌装置の別な例を示す一部構成図である。
【符号の説明】
【0051】
10 活餌装置
12A、12B 活餌倉
14 循環路
16 調整倉
18 循環ポンプ
22 液面レベル計
24 空気混合器
26 曝気タンク
20、38、48、56、76 インバータ回路
34 新鮮海水供給路
36 新鮮海水ポンプ
40 熱交換器
42 海水クーラ
44 排水路
46 排水ポンプ
50 冷却装置
52 スクリュー圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の活餌倉と、該活餌倉と調整倉間に循環水を循環させる循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを用意し、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法において、
活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように新鮮海水供給量を制御することにより、新鮮海水供給量と新鮮海水供給に要するポンプ動力及び新鮮海水の冷却に要する前記冷却装置の所要動力を低減するようにしたことを特徴とする遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法。
【請求項2】
前記循環路の循環水量、新鮮海水供給路の新鮮海水供給量及び排水路の排水量をこれら各流路に設けられた移送ポンプの回転数制御により制御すると共に、
前記冷却装置の回転圧縮機を回転数制御することにより、新鮮海水を設定温度に二次冷却するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の遠洋鰹釣り漁船の循環水制御方法。
【請求項3】
複数の活餌倉と、該活餌倉と調整倉間に循環水を循環させる循環路と、船外から新鮮海水を汲み上げる新鮮海水供給路と、循環水の一部を船外に排出する排水路と、新鮮海水を排水と熱交換させて一次冷却する熱交換器と、冷凍サイクルを構成し一次冷却された新鮮海水を二次冷却する冷却装置とを備え、二次冷却した新鮮海水を該循環路に供給するようにした遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置において、
前記循環路、新鮮海水供給路及び排水路に夫々回転数制御可能な移送ポンプを設け、活餌を蓄養する活餌倉数の減少に対応して、該活餌倉を設定換水量に維持するように前記循環路の循環水量を制御すると共に、循環水量に対する新鮮海水量の供給割合が常に一定となるように、前記移送ポンプで前記各流路の流量を制御するように構成したことを特徴とする遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置。
【請求項4】
前記調整倉内の循環水面レベルを検出するレベル計と、該レベル計の検出値を入力して該循環水面レベルが常に一定となるように前記排水路の排水量を制御するコントローラとを設けたことを特徴とする請求項3に記載の遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置。
【請求項5】
前記循環路に設けられた曝気タンクと、該曝気タンク上流側の循環路に設けられた空気混合器と、該空気混合器に接続された空気供給管の空気圧を検出する空気圧センサと、該空気圧センサの検出値に基づいて該循環路の循環水量を制御するコントローラとを設け、該コントローラによって循環水の酸素溶存量を設定値に保持するように構成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の遠洋鰹釣り漁船の循環水制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−51236(P2010−51236A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219223(P2008−219223)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】