説明

遠赤外線放射繊維およびこれからなる布帛ならびにその製造方法

【課題】 抗ピリング性を発現する遠赤外線放射繊維、およびこの繊維からなる布帛ならびにその製法を提供する。
【解決手段】 テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、且つ式
【化1】


(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステルであって、リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量がポリエステルを構成する全カルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%であるポリエステル(A)が、二酸化チタンを5重量%以上含有する遠赤外線放射繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ピリング性能を有し、尚且つ遠赤外線を放射する繊維、およびこの繊維を用いて形成された布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、強度や伸度などで代表される力学的特性に優れており、しかも耐熱性、耐候性、耐薬品性などの特性にも優れているため、衣料や産業資材をはじめとして多くの分野で広く用いられている。しかし、ポリエステル繊維の高強度や高伸度という特性は、反面、衣料などに用いた場合、特にニット製品や組織のルーズな織物に用いた場合には、ピリングが発生し易く、製品の外観を著しく損ねるという欠点を有している。
【0003】
そして、ポリエステル繊維におけるピリングの発生を防止するために、ポリエステルにリン酸エステルを共重合させたり、ポリエステル中にリン化合物を添加し、そのようなポリエステルを用いて繊維を製造した後、熱水中で処理してポリエステル繊維の強度を低下させて抗ピリング性を付与する方法が従来からいろいろ提案されている(例えば特許文献1、2を参照)
【0004】
一方、遠赤外線放射効果を有する繊維には多くの提案がなされている。例えば繊維形成重合体にセラミック素材を入れて作った繊維が特開昭60−126310号公報、特開昭61−12908号公報、特開昭62−238811号公報、特開昭63−243315号公報に、繊維表面に遠赤外線放射性セラミック微粉末を耐熱性合成樹脂でコーティングした繊維が特開昭60−239543号公報、特開昭60−239563号公報などに提案されている。しかしこれら遠赤外線放射効果を有する繊維は、従来知られている抗ピリング性を付与する方法ではセラミック微粉末などの凝集などのため望ましい繊維を得ることが困難であったために、充分な抗ピリング性を付与することが困難であった。すなわち、長期間の着用によりピリングが発生してしまい、製品の外観を著しく損ねるという欠点を有していた。
【特許文献1】特開昭50−135351号公報
【特許文献2】特公昭58−18447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の課題を解決するものであり、本発明は抗ピリング性能を発現し、尚且つ遠赤外線を放射する繊維、およびこの繊維を用いて形成された布帛ならびに該布帛の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、且つ下記の式(i);
【0007】
【化1】

(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステル(A)を含むポリエステル系の遠赤外線放射繊維であって、前記リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量が前記遠赤外線放射繊維構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%であるとともに、二酸化チタンを5重量%以上含有することを特徴とする遠赤外線放射繊維である。
【0008】
また該遠赤外線放射繊維からなる布帛である。
【0009】
また、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、且つ下記の式(i);
【0010】
【化2】

(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステル(A)を含むポリエステル系の遠赤外線放射繊維であって、前記リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量が前記遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%であるとともに、二酸化チタンを5重量%以上含有する遠赤外線放射繊維からなる布帛を水の存在下に110℃以上の温度で熱処理することを特徴とする上記布帛の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遠赤外線放射繊維は二酸化チタンを5重量%以上含有するので、遠赤外線放射性を有する。
また本発明の遠赤外線放射繊維はテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなるポリエステル(A)を含んでいるので、種々の用途に好適なポリエチレンテレフタレート系繊維およびこれを含む繊維の性質を有している。
また該ポリエステル(A)が下記の式(i);
【0012】
【化3】

(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを、該リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量が前記遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%用いて変成されているので、高い抗ピリング性を発現する。
また前記二酸化チタンと前記リン酸アルキルエステルとをこのような割合で用いることで、従来遠赤外線放射繊維に高い抗ピリング性を付与しようとすると起こっていた凝集などの問題が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリエステル(A)は上記の式(i)で表されるリン酸ジアルキルエステル[以下「リン酸ジアルキルエステル(i)」という]を用いて変成されているポリエステルである。そして、ポリエステル(A)がリン酸ジアルキルエステル(i)によって変成されていることによって、繊維の形成後、またはその繊維から布帛を形成したり、該布帛から縫製品などの製品を製造した後に、それらの繊維、布帛を水の存在下に110℃以上の温度で熱処理すると、ポリエステルの部分的な加水分解が生じてポリエステルの重合度が低下して良好な抗ピリング性が繊維に付与される。
【0014】
ポリエステル(A)における変成成分である上記の式(i)で表されるリン酸ジアルキルエステルにおいて、上記したように基RとRは、それぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基であり、したがって基RおよびRはプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基およびオクチル基から選ばれる炭素原子数3〜8のアルキル基である。前記したアルキル基は直鎖状のアルキル基であっても、または分岐したアルキル基であってもよいが、直鎖状のアルキル基であるのが好ましい。また、基RとRはお互いに同じアルキル基であっても、また異なるアルキル基であってもよい。
【0015】
リン酸ジアルキルエステル(i)の具体例としては、ジ−n−プロピルホスフェート、ジ−n−ブチルホスフェート、ジ−t−ブチルホスフェート、ジ−n−ペンチルホスフェート、ジ−n−ヘキシルホスフェート、ジ−n−ヘプチルホスフェート、ジ−n−オクチルホスフェート、(n−プロピル)(n−ブチル)ホスフェート、(n−プロピル)(n−ペンチル)ホスフェート、(n−プロピル)(n−ヘキシル)ホスフェート、(n−プロピル)(n−ヘプチル)ホスフェート、(n−プロピル)(n−オクチル)ホスフェート、(n−ブチル)(n−ペンチル)ホスフェート、(n−ブチル)(n−ヘキシル)ホスフェート、(n−ブチル)(n−ヘプチル)ホスフェート、(n−ブチル)(n−オクチル)ホスフェート、(n−ペンチル)(n−ヘキシル)ホスフェート、(n−ペンチル)(n−ヘプチル)ホスフェート、(n−ペンチル)(n−オクチル)ホスフェート、(n−ヘキシル)(n−ヘプチル)ホスフェート、(n−ヘキシル)(n−オクチル)ホスフェート、(n−ヘプチル)(n−オクチル)ホスフェートなどを挙げることができる。また、前記したそれぞれのリン酸ジアルキルエステル(i)において、リン酸エステルを形成しているその2つのアルキル基のうちの一方または両方が、n−アルキル基ではなく分岐したアルキル基であるリン酸ジアルキルエステルも勿論使用できる。
そして、ポリエステル(A)は上記したリン酸ジアルキルエステル(i)の1種類によって変成されていても、または2種類以上によって変成されていてもよい。
【0016】
本発明において、基RおよびRが炭素原子数3〜8のアルキル基であるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステル(A)を使用する理由は、基RおよびRがメチル基やエチル基の場合には、リン酸ジアルキルエステルが非常に分解し易く、ポリエステルの変成用として有効に使用することができないためである。一方、基RおよびRが炭素原子数9以上のアルキル基であるリン酸ジアルキルエステルを用いてポリエステルを変成した場合には、変成により得られるポリエステルが黄色味を帯びてその色調が不良になり、好ましくない。
【0017】
そして、ポリエステル(A)では、リン酸ジアルキルエステル(i)に由来するリン原子の含有量が遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%である。すなわち、遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルの全カルボン酸成分100モル当たり0.9〜1.3モルであることが必要である。リン酸ジアルキルエステル(i)に由来するリン原子の含有量が、全カルボン酸成分に対して0.9モル%未満であると、ポリエステル(A)を溶融して得られるポリエステル繊維や布帛などは抗ピリング性が優れない。一方、1.3モル%を超えると、抗ピリング性は付与できるが、繊維の製造工程中における加水分解が著しくなってロット間の差が大きくなったり、得られる繊維の力学的特性などが低下して、繊維を紡績したり、布帛にする工程での損傷が著しくなる。また、布帛の着用中に擦れ、破れ等の損傷を受け易くなる。
【0018】
また、ポリエステル(A)はテレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなっていることが必要であり、ポリエステル(A)を構成する全カルボン酸成分に対してテレフタル酸単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上、そしてポリエステル(A)を構成する全ジオール単位およびポリオール単位の合計に対してエチレングリコール単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上有しているのがよい。
【0019】
ポリエステル(A)は、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位以外に、その全構成単位に基づいて、30モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば他の2官能性化合物から誘導される構造単位を必要に応じて1種または2種以上を共重合単位として含有していてもよい。そのような他の2官能性化合物から誘導される構造単位としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;デカリンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸、マンデル酸、マトロラクチン酸などのヒドロキシカルボン酸;ε−カプロラクトンなどの脂肪族ラクトン;トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコールなどの脂肪族ジオール;ヒドロキノン、カテコール、ナフタレンジオール、レゾルシン、1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼンなどの芳香族ジオール;シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールなどの2官能性成分から誘導される構造単位を挙げることができる。
【0020】
また、紡糸後のポリエステル(A)は、フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中、30℃でウベローデ型粘度計を用いて測定したときの極限粘度[η]が0.45〜0.55dl/gであるのが好ましく、0.47〜0.53dl/gであるのが好ましい。ポリエステル(A)の極限粘度[η]が0.45dl/g未満であると、形成された繊維、該繊維より形成された布帛、該布帛より形成された製品などの製品を、水の存在下に110℃以上の温度で熱水処理すると、抗ピリング性は得られるものの、繊維の強度が弱くなり過ぎてしまう。また、0.55dl/gを超えると、同処理によって抗ピリング性が付与されにくい。
【0021】
ポリエステル(A)の製法は特に限定されず、上記した要件を満たすポリエステルであればいずれも使用することができるが、好ましくは次のようにして製造させる。すなわち、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主体とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主体とするジオール成分から主としてなり、必要に応じて上記したような他の2官能性化合物を含有する原料を用いてエステル化反応またはエステル交換反応を行ってプレポリマーを製造し(第1段目の反応)、次いで第1段目の反応により得られたプレポリマーを減圧下に加熱して重縮合反応させて最終的なポリエステルを製造する(第2段目の反応)に当たって、第1段目の反応の終了後で第2段目の反応が終了するまでの間の任意の時点で上記したリン酸ジアルキルエステル(i)を反応系に加えることによって、ポリエステル(A)を円滑に製造することができる。ポリエステル(A)の製法に関しては、本出願人の出願に係る上記した特開昭61−47818号公報に詳細に記載されており、本発明で用いるポリエステル(A)はそれに記載されている方法に準じて製造することできる。
【0022】
遠赤外線放射性の効果においては、(社)遠赤外線協会が定めた基準が目安となる。すなわち、FT−IR法による遠赤外線分光放射率が、4〜20μmの波長域において積分分光放射率が未加工品に比べて5%以上上回ること、もしくは上記波長域の任意の区間での全放射率が未加工品に比べて10%以上上回ることが基準である。
【0023】
その、遠赤外線を放射させるための微粒子としては、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ジルコン、マンガン酸化物、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロムなどを挙げることができる。しかし、原料の価格、粉砕のし易さとコスト、ポリエステルポリマー中での分散状態が紡糸に影響しないように良いことを考慮すると、二酸化チタン、二酸化ケイ素が望ましい。本発明の遠赤外線放射繊維は、二酸化チタンを5重量%以上含有することが必要である。また、遠赤外線を放射させるための微粒子として二酸化チタンを単独で用いる場合、5〜10重量%であることが好ましく、さらには6〜8重量%であることが望ましい。二酸化チタンの含有率が5重量%未満では、遠赤外線放射量が少なく、遠赤外線協会が定めた基準に達しない。また、含有率が10重量%を超えると、二酸化チタンの含有量が多いために、二酸化チタンの凝集が起こりやすく、紡糸時のポリマーフィルターが詰まる、または紡糸時に断糸するなどのトラブルが発生しやすくなり、好ましくない。
【0024】
二酸化ケイ素をさらに加えると遠赤外線放射の効果が大きくなる。二酸化ケイ素をポリエステル(A)に対して、0.5重量%以上含有させることが必要で、0.6〜3重量%含有させることが望ましい。含有率が0.5重量%未満では、二酸化チタンにさらに添加しても、遠赤外線協会の測定方法において効果が小さい。含有率が3重量%を超えると、二酸化チタンの時と同様に、二酸化ケイ素の凝集が起こりやすく、紡糸時のポリマーフィルターが詰まる、または紡糸時に断糸するなどのトラブルが発生しやすくなり、好ましくない。
【0025】
ポリエステル(A)に二酸化チタンや二酸化ケイ素を混合させる方法としては、微粒子が均一に混合されて溶融紡糸され得る方法であればいずれでもよく、特に制限されない。例えば、
(1) エステル化反応開始前にエチレングリコールなどに分散させた二酸化チタンを添加し、エステル化反応またはエステル交換反応を行ってプレポリマーを製造し(第1段目の反応)、次いで第1段目の反応により得られたプレポリマーを減圧下に加熱して重縮合反応させて最終的なポリエステルを製造する(第2段目の反応)に当たって、第1段目の反応の終了後で第2段目の反応が終了するまでの間の任意の時点で上記したリン酸ジアルキルエステル(i)を反応系に加える方法。
(2) エステル化反応またはエステル交換反応を行ってプレポリマーを製造した(第1段目の反応)後に、エチレングリコールなどに分散させた二酸化チタンを添加し、次いで第1段目の反応により得られたプレポリマーを減圧下に加熱して重縮合反応させて最終的なポリエステルを製造する(第2段目の反応)に当たって、第1段目の反応の終了後で第2段目の反応が終了するまでの間の任意の時点で上記したリン酸ジアルキルエステル(i)を反応系に加える方法。
(3) 得られたポリエステル(A)にチップを再溶融する際に、二酸化チタン、二酸化ケイ素を添加して、微粒子が均一に分散したチップを得、このチップを溶融紡糸に用いる方法。
(4) 得られたポリエステル(A)にチップを再溶融し、二酸化チタン、二酸化ケイ素を添加して、微粒子が均一に分散させた後に、このポリマーを直接、溶融紡糸に用いる方法。
(5) ポリエステル(A)と二酸化チタンまたは二酸化ケイ素を含有するポリエステル(B)チップを別々に製造して、それらをブレンドして再溶融して両方のポリエステルが均一に混合しているチップを製造し、そのチップを溶融紡糸に用いる方法。
(6) ポリエステル(A)と二酸化チタンまたは二酸化ケイ素を含有するポリエステル(B)チップを別々に製造して、それらをブレンドして再溶融して両方のポリエステルが均一に混合させて直接、溶融紡糸に用いる方法。
(7) ポリエステル(A)と二酸化チタンまたは二酸化ケイ素を含有するポリエステル(B)チップをそれぞれ個別に溶融し、各溶融物を溶融紡糸装置の上流側に設けた混合部で均一に混合してそのまま直接溶融紡糸する方法。
(8) ポリエステル(A)と二酸化チタンを含有するポリエステル(B)と二酸化ケイ素を含有するポリエステル(C)チップを別々に製造して、それらをブレンドして再溶融して、3種のポリエステルが均一に混合しているチップを製造し、そのチップを溶融紡糸に用いる方法。
(9) ポリエステル(A)と二酸化チタンを含有するポリエステル(B)と二酸化ケイ素を含有するポリエステル(C)チップを別々に製造して、それらをブレンドして再溶融して、3種のポリエステルが均一に混合させて直接、溶融紡糸に用いる方法。
(10)ポリエステル(A)と二酸化チタンを含有するポリエステル(B)と二酸化ケイ素を含有するポリエステル(C)チップをそれぞれ個別に溶融し、各溶融物を溶融紡糸装置の上流側に設けた混合部で均一に混合してそのまま直接溶融紡糸する方法。
などを挙げることができる。
要するに、ポリエステル(A)に二酸化チタン、二酸化ケイ素の混合が均一に行なわれるのであれば、両者の混合をそれぞれの重合体の重合完了後から溶融紡糸を行なう間の任意の時点で適当な方法を採用して行なえばよい。
【0026】
ポリエステル(B)及び(C)は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなっていることが必要であり、ポリエステル(B)及び(C)を構成する全カルボン酸成分に対してテレフタル酸単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上、そしてポリエステル(B)及び(C)を構成する全ジオール単位およびポリオール単位の合計に対してエチレングリコール単位を70モル%以上、好ましくは90モル%以上有しているのがよい。
【0027】
ポリエステル(B)及び(C)は、テレフタル酸単位及びエチレングリコール単位以外に、その全構成単位に基づいて、30モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば他の2官能性化合物から誘導される構造単位を必要に応じて1種または2種以上を共重合単位として含有していてもよい。
【0028】
また、溶融紡糸を行なうに当たっては、ポリエステル系重合体からエステル繊維を製造する際に、従来から知られている溶融紡糸法および溶融紡糸装置を用いて行なえばよく、特に制限されない。溶融紡糸温度、紡糸後の冷却条件、紡糸した繊維の捲取速度などの各種条件も特に制限されない。例えば、約270〜300℃の溶融紡糸温度を使用して、約500〜6000m/分の引き取り速度で溶融紡糸を行なうのが好ましい。
【0029】
ポリエステル(A)及び(B)及び(C)のそれぞれには、必要に応じて、無機微粒子、芳香剤、抗菌剤、難燃剤、消臭剤、染顔料、つや消し剤、制電剤(帯電防止剤)、酸化防止剤、光安定剤など任意の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0030】
繊維の横断面形状は特に制限されず、円形以外にも目的に応じて異型断面を適宜選択することができる。限定されるものではないが、本発明における異型断面としては、例えば、中空形状、Y型、T型、十字型、偏平型、3〜8葉型、3〜8角形、ドッグボーン型、楕円形などの横断面形状を挙げることができる。
また、ポリエステル繊維の単繊維繊度、総デニール数なども特に制限されず、任意の単繊維繊度を有するモノフィラメントまたはマルチフィラメントを円滑に製造することができる。
【0031】
そして上記一連の工程によってポリエステル繊維が製造されるが、それによって得られるポリエステル繊維は、水の存在下での熱処理を行なわずに、そのまま直接流通、販売したり、延伸処理、捲縮加工、交絡加工、タスラン加工などの加工を施してから、流通、販売することができ、しかもその際の形態もフィラメント糸、ステープル、スライバー、紡績糸、編布、織布、不織布などの布帛、縫製して得られる製品などのいずれの形態であってもよい。そして、その場合には、それらの繊維、糸、布帛、製品などを購入した側で、それらを水の存在下に110℃以上の温度で熱処理することによって、抗ピリング性を付与することができる。
【0032】
また、上記の溶融紡糸により得られるポリエステル繊維は、延伸、捲縮加工、交絡加工、タスラン加工などの加工を施す前、布帛にする前、或いは前記の加工を施した後、布帛にした後、布帛などから縫製品などの最終製品を製造した後に、水の存在下に110℃以上の温度で熱処理して抗ピリング性を付与し、その後に流通、販売してもよい。
【0033】
そして、ポリエステル繊維、それよりなるステープル、スライバー、糸、布帛、製品などを熱処理して抗ピリング性を付与するに当たっては、水の存在下に熱処理を行なうことが必要である。熱処理を水の存在下に行なうと、抗ピリング性を付与するのに必要なポリエステル繊維の部分加水分解、およびそれに伴う繊維物性の低下を発現させることができない。また、熱処理温度は110℃以上であることが必要であり、110℃未満であると抗ピリング性を付与するための熱処理の効率性およびポリエステル繊維の著しい物性低下の防止などの点から、水の存在下における熱処理を120〜180℃の温度で行なうのが好ましい。また、この熱処理は、熱処理後のポリエステル繊維の引張り強さが単繊維で3.4〜5.8cNの範囲になり、且つ引張伸度が12〜18%の範囲になるまで行なうのが抗ピリング性の付与および熱処理後のポリエステル繊維の力学的特性などの点から好ましく、引張強さが単繊維で3.7〜4.2cNの範囲になり且つ引張伸度が14〜16%の範囲になるまで行なうのがより好ましい。
【0034】
水の存在下に熱処理を行なうに当たっては、ポリエステル(A)から得られるポリエステル繊維、それからなる糸、スライバー、ステープル、布帛、縫製製品などを、110℃以上の熱水中に所定の時間浸漬して行なうとよく、通常、圧力装置中に水を入れて水の温度を110℃以上にし、それに浸漬して行なう。上記したように、抗ピリング性を付与するための水の存在下での熱処理は、繊維、ステープル、スライバー、糸、布帛、縫製製品などの最終製品に至るまでのどの段階で行なってもよいが、特に染色工程で受ける高熱熱水処理を抗ピリング性を付与するための熱処理として併用するのが工程的にも便利である。
【0035】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各評価は以下の方法にて行った。
【0036】
[遠赤外線分光放射率];FT−IRを用いて、4〜20μmの波長域において、積分分光放射率が未加工品に比べてどれだけ高いかを測定した。
【0037】
[熱水処理後の繊維の引張強さ、および引張伸度の測定];
JIS L 1050 7.7.1 引張り強さ、および伸び率、標準時の方法にしたがって測定した。用いた試験機は定速荷重型の試験機(容量20g)であり、試料のつかみ間隔は20mm、引張速度は20gf/分とした。なお、引張り強さの値は、試料が切断したときの荷重(gf)で表した。
【0038】
[織物のピリング性の評価];
JIS L 1076 6.1A法(ICI型試験機を用いる方法)にしたがって評価した。
【0039】
(実施例1)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.5モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを10重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)=40/60の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;1.0モル%、二酸化チタン;6.0重量%のポリエステル繊維のステープルとして遠赤外線放射繊維を製造した。
【0040】
(2) 上記(1)で得たステープルを温度130℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ4.1cNおよび14.2%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度120℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、5級であり、抗ピリング性に優れ、ソフト感および嵩高性を備える良好な織物(布帛)であった。
(4) 上記(3)で得たポリエステル織物を、FT−IRを用いて、4〜20μmの波長域において、積分分光放射率を測定すると、74.1%であった。二酸化チタンを含まない比較例1の68.2%と比べると、5.9%高かったので、良好な遠赤外線放射効果が見られた。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様にして遠赤外線放射繊維、布帛を得て試験した。
【0042】
(実施例3)
実施例1と同様にして遠赤外線放射繊維、布帛を得て試験した。
【0043】
(実施例4)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.6モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを15重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ、及びポリエステル(C)として二酸化ケイ素を6重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)/ポリエステル(C)=50/40/10の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;1.3モル%、二酸化チタン;6.0重量%、二酸化ケイ素;0.6重量%のポリエステル繊維のステープルとして遠赤外線放射繊維を製造した。
【0044】
(2) 上記(1)で得たステープルを温度130℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ3.5cNおよび13.5%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度120℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、5級であり、抗ピリング性に優れ、ソフト感および嵩高性を備える良好な織物(布帛)であった。
(4) 上記(3)で得たポリエステル織物を、FT−IRを用いて、4〜20μmの波長域において、積分分光放射率を測定すると、75.9%であった。二酸化チタンを含まない比較例1の68.2%と比べると、7.7%高かったので、良好な遠赤外線放射効果が見られた。
【0045】
(比較例1)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.5モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを含有しないポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)=40/60の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;1.0モル%、二酸化チタン;0重量%のポリエステル繊維のステープルを製造した。
(2) 上記(1)で得たステープルを温度130℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ4.2cNおよび14.5%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度120℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、5級であり、抗ピリング性に優れ、ソフト感および嵩高性を備える良好な織物(布帛)であった。
(4) 上記(3)で得たポリエステル織物を、FT−IRを用いて、4〜20μmの波長域において、積分分光放射率を測定すると、68.2%であった。遠赤外線放射効果の未加工品の基準とし、この値との差を評価した。
【0046】
(比較例2)
比較例1と同様にして、繊維、布帛を得て評価を行った。
【0047】
(比較例3)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.0モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを10重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)=40/60の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;0.8モル%、二酸化チタン;6.0重量%のポリエステル繊維のステープルを製造した。
【0048】
(2) 上記(1)で得たステープルを温度130℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ6.0cNおよび20.0%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度120℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、2級であり、ピリング性に劣る織物であった。
【0049】
(比較例4)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.8モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを12重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)=50/50の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;1.4モル%、二酸化チタン;6.0重量%のポリエステル繊維のステープルを製造した。
(2) 上記(1)で得たステープルを温度130℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ3.3cNおよび11.0%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度120℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、5級であり、抗ピリング性に優れていたが、評価中での織物の擦れ、破れの損傷が大きく、使用できる状態になかった。
【0050】
(比較例5)
(1) ポリエステル(A)としてジ−n−ブチルホスフェート単位をリン原子に換算して全カルボン酸成分に対して2.5モル%の割合で有するポリエチレンテレフタレートのチップと、ポリエステル(B)として二酸化チタンを10重量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップとを、ポリエステル(A)/ポリエステル(B)=40/60の重量比でブレンドし、乾燥後に、溶融紡糸装置の上流側に設けた溶融装置でブレンド物を溶融した後、溶融紡糸装置に供給し、紡出孔を有する紡糸口金から、280℃で溶融紡糸し、1000m/分で引き取り、次いで70℃で2.5倍に延伸した後、常法により機械捲縮を付与し、繊維長38mmに切断して、リン原子;1.0モル%、二酸化チタン;6.0重量%のポリエステル繊維のステープルを製造した。
(2) 上記(1)で得たステープルを温度100℃の熱水中に60分間浸漬して処理した後取り出し、乾燥してその引張り強さおよび引張伸度を上記の方法により測定したところ、それぞれ6.6cNおよび22.0%であった。
(3) 上記(1)で得たステープルを用いて常法によって紡績糸(30番手)を製造して、その紡績糸を用いて常法により1/1平織物を製織し、織物の糊抜き、精練、染色(染色浴の温度100℃)を行なった後に、そのピリング性を上記の方法で評価したところ、1級であり、抗ピリング性に劣る織物(布帛)であった。
【0051】
以下の表1にリン酸ジアルキルエステルの含有量、二酸化チタンの含有量、および二酸化ケイ素の含有量を変化させた時の、繊維の熱水処理後の物性、織物の染色後のピリング性、遠赤外線放射効果についてまとめた。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、且つ下記の式(i);
【化1】

(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステル(A)を含むポリエステル系の遠赤外線放射繊維であって、前記リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量が前記遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%であるとともに、二酸化チタンを5重量%以上含有することを特徴とする遠赤外線放射繊維。
【請求項2】
請求項1に記載の遠赤外線放射繊維であって、二酸化ケイ素を0.5重量%以上含有することを特徴とする、遠赤外線放射繊維。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の、遠赤外線放射繊維からなる布帛。
【請求項4】
テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、且つ下記の式(i);
【化2】

(式中RおよびRはそれぞれ独立して炭素原子数3〜8のアルキル基を表す)で表されるリン酸ジアルキルエステルを用いて変成されているポリエステル(A)を含むポリエステル系の遠赤外線放射繊維であって、前記リン酸ジアルキルエステルに由来するリン原子の含有量が前記遠赤外線放射繊維を構成する全ポリエステルのカルボン酸成分に対して0.9〜1.3モル%であるとともに、二酸化チタンを5重量%以上含有する遠赤外線放射繊維からなる布帛を水の存在下に110℃以上の温度で熱処理することを特徴とする請求項3に記載の遠赤外線放射繊維からなる布帛の製造方法。
【請求項5】
FT−IR法による遠赤外線分光放射率が、4〜20μmの波長域において積分分光放射率が熱処理前に比べて5%以上上回ることを特徴とする、請求項4に記載の遠赤外線放射繊維からなる布帛の製造方法。

【公開番号】特開2009−97105(P2009−97105A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268451(P2007−268451)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】