説明

遠赤外線輻射材料

【課題】原料調達に不安が無く、衣料その他に用いたきに、輻射等によって熱源から受け取る熱エネルギーを、効率よく遠赤外線エネルギーとして再放射することができる、改良された遠赤外線輻射材料を提供する。
【解決手段】遠赤外線輻射材料は、二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素10〜40重量%とを含有する粉末状遠赤外線放射材料100重量部に対して、金属アルミニウム及び酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種を含有する粉末状輻射補助剤を、20〜60重量部配合してなるもので、合成樹脂に配合した組成物から形成された板状、筒状、シート状又は繊維状の遠赤外線輻射材料も、遠赤外線輻射材料に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱輻射性材料、特に遠赤外線域の熱輻射を利用して種々な材料や器具等の加熱や冷却、或いは生物の生育環境の調節や衣料等の保温機能性を高めるに使用する遠赤外線輻射材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠赤外線域の熱輻射性材料としては、遠赤外線放射性を有する二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を含むセラミックスが、種々提案されており、これらの材料を用いて熱エネルギーの吸収や放射を効率よく行うことで、物品の加熱、冷却、乾燥などのほか、冷暖房や医療に応用することが知られている。その一方で本発明者は、人体などを含む動植物体に含まれる水分子の励起に必要な熱エネルギーを、効率的に放射することができる遠赤外線放射材料(特公平07-115914)を発明したほか、更に製造コストを低減できる遠赤外線放射材料(特開2004-51896)を発明して、衣料等の保温機能を高めるための熱輻射性繊維などへの用途開拓を、進めてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2137667号(特公平07-115914号公報)
【特許文献2】特許第4175558号(特開2004-51896号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の遠赤外線放射材料には希土類金属酸化物が使用されているため、原料調達が不安定であるという問題があるうえ、遠赤外線放射効率が所望の熱輻射効率に及ばないという問題もあった。そこで本発明は、原料調達に不安が無く、また衣料その他に用いたときに、輻射等によって熱源から受け取る熱エネルギーを、効率よく遠赤外線エネルギーとして再放射することができる、改良された遠赤外線輻射材料を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成できる本発明の遠赤外線輻射材料は、二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素10〜40重量%とを含有する粉末状遠赤外線放射材料100重量部に対して、金属アルミニウム及び酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種を含有する粉末状輻射補助剤を、20〜60重量部配合してなるものである。
【0006】
更に前記の本発明の遠赤外線輻射材料を合成樹脂に配合した組成物から形成された板状、筒状、シート状又は繊維状の遠赤外線輻射材料も、本発明の遠赤外線輻射材料を使用するに際して、最終的応用製品を製造するための中間材料となるものであって、遠赤外線輻射材料の別な態様と言うべき材料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遠赤外線輻射材料には、二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素60〜90重量%とを含有する遠赤外線放射材料が採用されるが、この遠赤外線放射材料には希土類金属酸化物が含まれていないので、遠赤外線放射効率の点では、前記の特許文献2記載の遠赤外線放射材料に僅かに及ばないものの、原料調達が不安定という問題が解消できる。そこで本発明に採用される遠赤外線放射材料には、その100重量部に対して、金属アルミニウム及び酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種を含有する粉末状輻射補助剤を、20〜60重量部配合することで、遠赤外線輻射材料としての集熱性及び伝熱性が改良され、優れた熱エネルギー再放射性能を発現するという効果が得られたのである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の遠赤外線輻射材料は、二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素10〜40重量%とを含有する粉末状遠赤外線放射材料100重量部に対して、金属アルミニウム及び酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種を含有する粉末状輻射補助剤を、20〜60重量部配合してなるが、その内容を以下に詳細に説明する。
【0009】
本発明の遠赤外線輻射材料を構成する遠赤外線放射材料部分は、二酸化チタンと二酸化珪素とからなる粉末状体であり、その中の二酸化チタンの含有量は60〜90重量%で、二酸化珪素の含有量は10〜40重量%であるが、二酸化珪素の含有量が40重量%を超えると遠赤外線域の熱再放射効率が低下し、逆に10重量%未満となっても遠赤外線域の熱再放射効率が低下するから、何れも好ましくない。
【0010】
更に本発明の遠赤外線輻射材料の熱伝導性を向上させ、熱エネルギーの集熱性を高め、遠赤外線域の熱再放射効率を高める目的で配合される、金属アルミニウム及び酸化マグネシュウムから選ばれた少なくとも1種を含有する粉末状輻射補助剤は、上記の遠赤外線放射材料100重量部に対して20〜60重量部を配合されるが、その含有量が20重量部未満では熱伝導性の向上は望めず、また、60重量部以上の多量を醍合することは熱伝導性の問題はないが、合成樹脂等の高分子結合材等と配合される際に混合操作に問題が生じ、混錬加工性が悪化する恐れがあり、実用的でない。
【0011】
このような本発明の遠赤外線輻射材料には、更に、少量の酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、アルカリ土類金属酸化物、第8族金属酸化物などが含まれていても、それらの合計が5重量部以下の少量であれば特に重大な支障は生じない。また、これらの各構成成分は、単独酸化物等の形慧で含まれていてもよいが、複合酸化物等の形態で含まれていてもよい。
【0012】
本発明の遠赤外線輻射材料を横成する各成分は、それぞれが粉末状態で混含された組成物であってもよく、またそのいくつか又は全部を配合した後、高温で焼結し、さらに粉砕したものであってもよい。こうして得られる遠赤外線輻射材料の粒径は、以下に述べる各種の加工に際しての、混合操作性や成形加工性などの面から、細かいものであることが望ましく、特には粒径が、1μm程度或いはそれ以下であることが、好ましい。
【実施例1】
【0013】
(試験例1)
二酸化チタン粉末(粒径:0.15μm)、二酸化珪素粉末(粒径:0.05μm)、アルミニウム粉末(粒径:5μm)、酸化マグネシウム粉末(粒径;2μm)を、それぞれ表1に示すような配合に従って混合して、本発明の遠赤外線輻射材料、及び比較用、並びに対照用の遠赤外線輻射材料として、A〜Qを得た。
【0014】
これらの遠赤外線輻射材料を、高密度ポリエチレン樹脂100重量部に対して各々10重量部配合し、東洋テスター製の混練押出機(KCK型)を用いて、回転数150rpm、樹脂温度200℃で10分間混練してペレットを得、これを押出機にかけてシート化したのち、熱プレスによって厚さ0.5mmのシート体を作成した。
【0015】
次いで、これらのシート体から10cm×10cmの試験片を切出し、遠赤外線パワーメータ(TMM-P-10、フェロテクス製)により温度34℃における遠赤外線域の熱再放射量(mW/cm2)を測定し、その結果を表1に示した。
なお、この遠赤外線域の熱再放射量の値は、(財)遠赤外線協会親定の放射量に準じて、遠赤外線放射加工を施していない同一形状の高密度ポリエチレン樹脂より放射される、遠赤外線域の熱再放射量(34℃において4.5mW/cm2)を基準として、これより10%上回る5.5mW/cm2以上を、有効放射量とした。
【0016】
【表1】

【0017】
表1の内容から、本発明の遠赤外線輻射材料の構成成分の内、二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素10〜40重量%とからなる粉末状の遠赤外線放射材料は、アルミニウム粉末や酸化マグネシウム粉末の何れかの輻射補助剤を、遠赤外線放射材料の100重量部に対して、20〜60重量部配合することによって、熱エネルギー再放射性能が大きくなることが分かる。
【0018】
(試験例2)
繊維紡糸用のポリエステル樹脂R100重量部に対して、本発明の遠赤外線輻射材料Fを2重量部配合し、これを溶融紡糸して6d×51mm長のポリエステルステープルPfを製造した。次に、このポリエステルステープルPfと熱溶融繊維を95%/5%の比率になるよう混合し、ニードルバンチ式不織布製造機によって200g/m2の不織布を作製した後、この不織布を熱ロールの間に通して熱圧し、1m角の不織布ボードPfを作製した。そして、前記の不繊布ボードPfを、幅2.1m、長さ5.8m、高さ2.1mの、IF型蒸気式木材乾燥庫(ヒルデブランド製)の天井面と左右側壁面とに、耐熱性両面接着テープを用いて取り付けて木材乾燥庫Fを用意した。
【0019】
このようにして用意された木材乾燥庫F内の中央部に、乾燥用試験材として、82mm角、長さ2.300mmのナラ材150本、及び82mm角、長さ1.150 mmのナラ材200本を、工業技術センター運営協会の標準横積み方式に従って設置し、乾球湿度50℃より70℃、湿球温度39℃より68℃の乾燥スケジュールで、木材の乾燥試験を行って、木材の含水率が60%から目標含水率である15%に達したときの、表面割れが発生した本数とその割合(%)、及び落ち込みが発生した本数とその割合(%)を、それぞれ測定し、その結果を表2に示した。
【0020】
また、前記の本発明の遠赤外線輻射材料Fを使用した木材乾燥庫Fと比較するために、前記と同様に、繊維紡糸用のポリエステル樹脂R100重量部に対して、比較用の遠赤外線輻射材料Jを2重量部配合して、比較用の6d×51mm長のポリエステルステープルPjを製造し、更に前記と同様にして、このポリエステルステープルPjと熱溶融繊維とを用いて作製した不織布から、比較用の不織布ボードPjを作成した。
【0021】
こうして更に前記と同様にして、不織布ボードPjを天井面と左右側壁面とに取り付けて木材乾燥庫Jを用意し、その中に前記と同様にナラ材の枠をさん積みし、更にその中央部に乾燥用試験材を設置して、前記と同様の条件で木材の乾燥試験を行って、表面割れが発生した本数とその割合(%)、及び落ち込みが発生した本数とその割合(%)を、それぞれ測定し、その結果を表2に併せて示した。
【0022】
また前記と同様に、繊維紡糸用のポリエステル樹脂Rを溶融紡糸して、遠赤外線輻射材料を配合しない6d×51mm長のポリエステルステープルPrを製造した。そしてこのポリエステルステープルPrと熱溶融繊維を95%/5%の比率になるよう混合して、ニードルパンチ式不織布製造機によって200g/m2の不織布を作製し、前記と同様にして、対照用の不織布ボードPrを作成した。そして不織布ボードPrを取り付けた対照用の木材乾燥庫Rを用意し、前記と同様に木材の乾燥試験を行って同様な測定を行い、その結果を表2に併せて示した。
【0023】
【表2】

【0024】
表2から、本発明の遠赤外線輻射材料Fを用いた不織布ボ−ドPfを張り付けた乾燥庫Fでは、比較例の遠赤外線輻射材料Jを用いた不織布ボ−ドPjを張り付けた乾燥庫Jや対照用の乾燥庫Rと比較して、木材の乾燥の進行に伴って含水量が低下し木材が収縮することによって発生する乾燥応力を和らげて、表面割れや落ち込み角の損傷発生率を抑制する効果に繋がったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の遠赤外線輻射材料は、従来の遠赤外線放射材料が追求してきた遠赤外線放射効率の高さという観点を転換して、外部や環境から供給される熱エネルギーの吸収と、遠赤外域の熱再放射性の効率化とを総合した性能の高度化によって、エコロジカルな用途範囲などに、広く活用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン60〜90重量%と二酸化珪素10〜40重量%とを含有する粉末状遠赤外線放射材料100重量部に対して、金属アルミニウム及び酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも一種を含有する粉末状輻射補助剤を、20〜60重量部配合してなることを特徴とする遠赤外線輻射材料。
【請求項2】
合成樹脂と請求項1記載の遠赤外線輻射材料とを配合した組成物から形成された板状、筒状、シート状又は繊維状の遠赤外線輻射材料。

【公開番号】特開2011−127056(P2011−127056A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288735(P2009−288735)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(595101403)株式会社ファーベスト (2)
【Fターム(参考)】