説明

遠隔接点出力制御システム

【課題】 遠隔接点出力制御において、障害時の動作を予め指定しておくことにより、通信障害によって制御不能になったとき、自動的に復旧できる遠隔接点出力制御システムを提供する。
【解決手段】 クライアントの開始要求手段、終了要求手段、接点出力制御指定手段、接点出力復旧指定手段とともに、通信途絶の検出に基づくクライアント異常終了判定手段を備え、クライアントが異常終了した場合に接点出力復旧指定手段の指定に従って接点出力制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔接点出力制御システムに関し、詳しくは、ディジタルネットワークを用いた接点出力制御において、通信途絶によって制御不能に陥った場合に、予め指定された復旧機能によって復旧する手段を有するような遠隔監視制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視制御装置のディジタル化とネットワーク対応が進み、低コストで遠隔地の監視制御が実現できるようになっている。この中には、ネットワークカメラを用いた映像通信やカメラ制御、センサー等の接点入力の検知、リレー等の接点出力の制御等が含まれる。アナログ方式に較べて大規模システムの実現が容易で、例えばインターネットを用いれば、地球規模の監視網も不可能ではない。
【特許文献1】特開平09−55987号公報
【特許文献2】特開平2000−201292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ネットワークによる通信では一般に信頼性の保証が困難であり、回線断による通信途絶や混雑による接続失敗等の障害が発生する。高品質の回線を用いることで、ある程度は改善することもできるが、高コスト化という問題があり、携帯電話等の移動体では限界もある。高度に複雑化したネットワークでは、一般にベストエフォート型が多く、あらゆる状況で良好な通信状態を保証するのは難しい。
【0004】
ここで発生する問題は、接点出力を意図しない状態のまま制御不能に陥ってしまうことがあるということである。映像通信、カメラ制御、あるいは接点入力通知については、通信機能が復旧するまで機能が回復しないという以上の問題はない。しかし接点出力制御の場合は、本来オフにすべき出力がオンのままになってしまうことになる。制御不能状態に陥った場合、現地に出向いて対応しなければならないこともあり、迅速な対応がとれないばかりか、場合によっては重大な損害をひきおこす懸念もあった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものである。つまり、高コスト化を招くことなく、安全性の高い遠隔監視制御方式を実現する遠隔接点出力制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、遠隔監視制御方式において、遠隔接点出力制御クライアントとの異常終了判定手段と、異常終了時の復旧処理指定手段とを設けるとともに、前記異常終了判定手段によって遠隔接点出力制御クライアントが異常終了したと判定された場合に、前記復旧処理指定手段によって指定された接点出力の復旧処理を実行する手段を設ける。本構成によれば、予め通信障害に対してとるべき措置を指定しておくことができるため、制御不能状態に陥った後でも接点出力が意図しない状態で放置されるような事態を避けることが可能である。
【0007】
すなわち本発明は、ネットワークを介して接点出力の制御を行う遠隔接点出力制御システムであって、遠隔接点出力制御クライアントの開始要求手段、終了要求手段、接点出力制御指定手段、接点出力復旧指定手段を備えるとともに、通信途絶の検出に基づいてクライアントの異常終了を判定する手段を備え、該異常終了判定手段によってクライアントが異常終了したと判定された場合に、前記接点出力復旧指定手段で指定された内容に基づいて接点出力を制御することを特徴とする、遠隔接点出力制御システムである。
【発明の効果】
【0008】
ネットワークを介して接点出力の制御を行う遠隔接点出力制御システムにおいて、クライアントの開始要求手段、終了要求手段、異常終了判定手段、接点出力制御指定手段、接点出力復旧指定手段を設けることによって、高コスト化を招くことなく、安全性の高い遠隔接点出力制御システムを実現することが可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図を用いて説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の実施例における監視制御装置101と監視制御端末102からなるシステム構成図である。監視制御装置101と監視制御端末102は、ネットワーク103によって相互に接続される。ネットワーク103は、イーサネット(登録商標)、公衆回線、ISDN等、一般に複数種類の回線で構成されるネットワークである。監視制御装置101には、カメラ104やリレー105等が接続される。カメラ104で撮影された映像は、監視制御装置101からネットワーク103を経て監視制御端末102に送られる。またリレー105は、監視制御端末102の操作に基づいて、監視制御装置101によって駆動される。
【0011】
図2は、監視制御装置101の内部構成を示すブロック図である。201は監視制御装置内部の制御プログラムを実行するCPU、202はプログラムの実行で用いられる主記憶装置である。203はプログラムや設定パラメータ等の保存する二次記憶装置であり、ディスク装置やフラッシュROM等である。204はセンサーやリレーを接続するための接点入出力インタフェース、205はネットワークに接続するためのネットワークインタフェース、206はカメラ等を接続するための周辺機器インタフェースである。207は上記構成要素を相互に接続するバスである。
【0012】
図3は、接点出力制御内容を管理する接点出力管理表を示す図である。接点出力管理表は、接点出力毎に制御要求元クライアント、出力制御内容、およびクライアント異常終了時の復旧処理内容を管理するものである。異常終了時の処理内容としては、そのままの状態を保持する、直ちに接点出力をオン・オフする、指定時間後に接点出力をオン・オフする、外部記憶装置203に記憶されたプログラムによって解釈実行される条件付き組合せ処理を指定することが可能である。ただし、通常は復旧処理として複雑な動作を指定することはなく、指定時間待機した後に接点出力をオンまたはオフに制御することが多い。指定時間の待機は通信途絶からの回復を試みるために設けるもので、復旧処理が起動される以前に通信機能が回復し、接点出力制御クライアントが改めて開始要求と出力制御要求を行えば、復旧処理は取り消されることになる。
【0013】
図4は、監視制御装置の制御プログラムによって実行される、制御クライアント毎の処理内容を示すフローチャートである。以下、図面では、ステップをSと示す。本処理は、接点出力管理表の更新と、それに伴う接点出力制御から成る。接点出力管理表の更新は、接点出力制御クライアントの各種要求に基づいて行われるが、これに先立って接点出力制御クライアントの開始要求が処理される。これは、後述する異常終了判定処理によって異なるが、基本的には接点出力管理表において制御要求元クライアントを識別するための取り決めを行う前処理である(ステップ401)。開始要求に対応して、後処理としての終了要求もある。これは接点出力制御クライアントが正常に終了することを通知するもので、通常接点出力制御クライアントから終了要求メッセージが送られる。終了要求処理においては、接点出力管理表中から、要求元クライアントが終了要求クライアントと一致するものについて、出力制御内容と復旧処理内容が破棄して(ステップ406)、処理を終了する。
【0014】
開始要求から終了要求までの間は、通常複数の制御要求が処理される。制御要求は、要求待ち(ステップ402)において受信され、要求メッセージから接点出力番号、出力制御内容、および異常終了時の復旧処理制御内容が取り出される。正しい制御要求メッセージであれば、接点出力制御を行い(ステップ403)、接点出力管理表を更新して(ステップ404)、要求待ちに戻る。一方、クライアントの異常切断は要求待ちにおいて検知され、異常と判定されれば、接点出力の復旧処理を行い(ステップ405)、終了処理に移る。
【0015】
以上において、クライアントの異常終了は通信途絶に基づいて判定されるが、具体的な判定手段は、通信形態によって異なる。
【0016】
第一は、間歇接続型ネットワークを用いるものである。例えば公衆回線を用いてダイヤルアップ接続する場合であり、ネットワークインタフェースとしてモデム、データリンクプロトコルとしてPPP、さらに上位のメッセージ交換プロトコルを用いるものである。この場合、クライアントの開始要求は回線接続とPPP接続に続く送信開始要求メッセージの受信、終了要求は終了要求メッセージの受信とし、さらにクライアントの異常終了判定手段として、終了要求メッセージを受信していない状態での回線切断を用いる。回線が接続している状態では、クライアントプログラムの終了操作において終了メッセージを送信することが可能であり、終了メッセージを受信することなく回線切断を検知した場合は、回線の不具合によって通信が途絶したと判断される。
【0017】
第二は、常時接続型ネットワークを用いるものである。例えばインターネットの常時接続サービスを用いる場合であり、TAやADSLモデムを介して接続される。特にプロトコルとしてTCPのようなコネクション型トランスポートプロトコルを用いる場合は、クライアントの開始要求手段としてトランスポートコネクションの確立、終了要求手段として終了要求メッセージの受信、異常終了判定手段として終了要求メッセージ未受信中のトランスポートコネクション切断検知を用いる。トランスポートコネクションの切断検知はトランスポートプロトコルに依存するが、TCPではキープアライブや再送タイムアウトを用いれば可能である。
【0018】
なお常時接続型ネットワークにおいても、回復に時間を要する回線レベルの切断は発生しうるものであり、逆に間歇接続型ネットワークにおいても、クライアントプログラムの不具合では回線が切断されないことがある。上記第一と第二の異常終了判定手段は、必ずしも独立に用いる必要はなく、組み合わせて用いてもよい。
【0019】
最後に、ネットワークの接続形態とは無関係に、任意のメッセージ交換プロトコルに適用できる方法について説明する。例えばHTTPは、常時接続型ネットワークでも用いられ、トランスポートレベルのコネクションは一般に複数であるため、第一または第二の方法では異常終了と判定することができない。このような場合、クライアントの開始要求手段として開始要求メッセージの受信、終了要求手段として終了要求メッセージの受信を用いるとともに、クライアントの生存確認メッセージを定期的に送受する手段を設け、異常終了判定手段としては、前記クライアント生存確認メッセージの受信タイムアウトを用いればよい。
【0020】
以上説明した、回線やプロトコルの性質に依存したもので、通信量や通信途絶が発生してから検知されるまでの時間差に違いがあり、目的に応じて使い分けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例における遠隔監視システムの構成図である。
【図2】図1に示した監視制御端末のブロック図である。
【図3】接点出力制御内容を管理する接点出力管理表を示す図である。
【図4】監視制御装置の制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
101 監視制御装置
102 監視制御端末
103 ネットワーク
104 カメラ
105 リレー
201 CPU
202 主記憶装置
203 二次記憶装置
204 接点入出力インタフェース
205 ネットワークインタフェース
206 周辺機器インタフェース
207 システムバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接点出力の制御を行う遠隔接点出力制御システムであって、遠隔接点出力制御クライアントの開始要求手段、終了要求手段、接点出力制御指定手段、接点出力復旧指定手段を備えるとともに、通信途絶の検出に基づいてクライアントの異常終了を判定する手段を備え、該異常終了判定手段によってクライアントが異常終了したと判定された場合に、前記接点出力復旧指定手段で指定された内容に基づいて接点出力を制御することを特徴とする、遠隔接点出力制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔接点出力制御システムにおいて、接点出力復旧指定手段によって指定時間後に接点出力をオンまたはオフするものとし、かつ該指定時間として通信途絶からの回復見込み時間を用いることを特徴とする、遠隔接点出力制御システム。
【請求項3】
前記遠隔接点出力制御システムにおいて、間歇接続型ネットワークを用い、クライアント開始要求手段として回線とノード装置間接続に続く開始要求メッセージの受信、終了要求手段として終了要求メッセージの受信、異常終了判定手段として終了要求メッセージ未受信中の回線切断検知を用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の遠隔接点出力制御システム。
【請求項4】
前記遠隔接点出力制御システムにおいて、コネクション型トランスポートプロトコルを用い、クライアント開始要求手段としてトランスポートコネクションの確立、終了要求手段として終了要求メッセージの受信、異常終了判定手段として終了要求メッセージ未受信中のトランスポートコネクション切断検知を用いることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の遠隔接点出力制御システム。
【請求項5】
前記遠隔接点出力制御システムにおいて、任意のメッセージ交換プロトコルを用い、クライアント開始要求手段として開始要求メッセージの受信、終了要求手段として終了要求メッセージの受信を用いるとともに、クライアント生存確認メッセージの定期的交換手段を有し、異常終了判定手段として前記クライアント生存確認メッセージの受信タイムアウトを用いることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の遠隔接点出力制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の遠隔接点出力制御システムにおいて、メッセージ交換プロトコルとしてHTTPを用い、開始要求、終了要求、生存確認等一連のメッセージをCGIとして処理することを特徴とする、遠隔接点出力制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−5885(P2007−5885A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180481(P2005−180481)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】