説明

遠隔操作システム

【課題】通信安定性を確保することが可能な遠隔操作システムを提供すること。
【解決手段】リモコン2からのリモコン操作信号が障害物の存在により自車11まで直接的には到達しない場合を想定している。上記リモコン操作信号が他車12で受信されると、この他車12はリモコン操作信号の中継信号を送信する。他車13及び14から中継信号が送信されない条件が設定され、その結果、自車11は、他車12による中継信号のみを受信することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン操作を通じて制御対象を遠隔操作する遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両ユーザによるリモコン操作を通じてエンジンを始動するエンジン始動システムが開示されている。このシステムでは、リモコンを送信側とする単方向通信が行われ、リモコンからリモコン操作信号が送信される。そして、この信号が車両側で解析されるとともに、その解析の結果、正規のリモコンによるエンジン始動の要求であると肯定判断されると、エンジンが始動される。従って、当該システムが適用された車両では、リモコン操作を通じて暖機運転を行えるようになり、利便性が向上する。
【0003】
尚、上記システムは、暖機運転の開始を制御の完了としてリモコン側に知らせるアンサーバック機能を有する双方向通信システムにも応用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188505号公報(段落[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リモコン操作信号或いはアンサーバック信号といった無線信号の伝送途中に建造物等の障害物が存在すると、通信性能が悪化し、程度によっては通信不可となる。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、通信安定性を確保することが可能な遠隔操作システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、リモコン操作を通じて制御対象を遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、前記リモコン操作による遠隔制御用の操作信号を選択的に中継する中継器を備え、前記中継器は、他の中継器による中継信号を検出したとき、前記操作信号を中継しないことをその要旨としている。
【0008】
同構成によると、遠隔操作システムに中継器を加えることで、遠隔制御用の操作信号を中継できるようになる。このため、上記信号の伝送途中に建造物等の障害物が存在する場合でも、その障害物を回避するかたちで中継器による中継が行われれば、当該信号をリモコンの通信相手まで到達させることができる。従って、通信安定性を確保することができる。尚、全ての中継器による中継が一斉に行われる訳ではなく、いずれかの中継器による中継が既に行われている場合には、その中継に委ねるべく、新たな中継は行われない。従って、混信による通信不良を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遠隔操作システムにおいて、前記中継器は、前記操作信号の受信強度が第1の閾値よりも弱いとき、他の中継器による中継信号の有無を判断し、その中継信号が有ると判断したとき、当該操作信号を中継しない一方、前記中継信号が無いと判断したとき、当該操作信号を中継することをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、リモコンからの操作信号の受信強度が弱い場合には、他の中継器による中継が行われているか否かが判断され、肯定判断された場合には、当該他の中継器による中継に委ねられ、自中継器による中継は行われない。一方、リモコンからの操作信号の受信強度が弱い場合でも、他の中継器による中継が行われているか否かの判断で否定判断された場合には、自中継器による中継が行われる。このようにリモコンからの操作信号の受信強度が弱い場合には、その操作信号が自中継器によって直ちに中継されるのではなく、他の中継器による中継が行われているか否かが一旦検証され、その検証結果に基づき、自中継器による中継が選択的に行われる。従って、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遠隔操作システムにおいて、前記中継器は、前記操作信号の受信強度が第2の閾値よりも強いとき、当該操作信号を中継しないことをその要旨としている。
【0012】
リモコンからの操作信号の受信強度が強い場合には、当該リモコンが自中継器の近くに存在している可能性が高く、この場合、自中継器による中継を経ることなく、前記操作信号が他の中継器を経由して間接的に、或いはいずれの中継器も経由することなく直接的にリモコンの通信相手に到達できる可能性がある。いずれにせよ、このような場合には、自中継器による中継が必ずしも必要のない点を踏まえ、本発明による構成では、上記場合に操作信号を中継しないこととしている。従って、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠隔操作システムにおいて、前記操作信号が前記中継器による中継を介さずにリモコンの通信相手に直接的に到達したことに伴い、前記制御対象が遠隔操作されたとき、当該操作信号が前記中継器による中継を介してリモコンの通信相手に間接的に到達したことに伴う前記制御対象の遠隔操作が禁止されることをその要旨としている。
【0014】
同構成によると、一度のリモコン操作で二度或いはそれ以上に亘って制御対象が遠隔操作されるといったことを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のリモートエンジンスタートシステムについて、その構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態のリモートエンジンスタートシステムについて、その作用を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を車両用のリモートエンジンスタートシステムに具体化した一実施形態について説明する。尚、本実施形態のリモートエンジンスタートシステムは、リモコン操作を通じて暖機運転を開始するといったかたちで制御対象である車両エンジンを遠隔制御するとともに、制御の完了をリモコン側に知らせるアンサーバック機能を有する双方向通信システムである。
【0018】
図1に示すように、リモートエンジンスタートシステム1は、車両ユーザが所持するリモコン2と、車両側に設けられる暖機運転装置3とを備えるとともに、リモコン2と暖機運転装置3との間で双方向通信が可能である。
【0019】
リモコン2は、無線による送受信機能を有するとともに、車両に対し暖機運転の開始等を要求するために操作される操作部21、一連の制御を司る制御部22、送信回路23、送信アンテナ24、受信アンテナ25、受信回路26、報知部27を備えている。尚、上記制御部22は、リモコン2毎に個別に設定されたIDコードを記憶する不揮発性のメモリ22aを備えている。
【0020】
制御部22は、操作部21を通じて暖機運転の開始を要求するための操作が行われると、車両に対して暖機運転の開始を要求するために、暖機運転開始要求コードと上記IDコードとを含むリモコン操作原信号を生成するとともに、これを送信回路23に出力する。送信回路23は、上記原信号を所定周波数の電波に変調するとともに、送信アンテナ24は当該電波をリモコン操作信号として外部に送信する。そして、この信号がリモコン2の通信相手である暖機運転装置3で受信されることに伴い、上記要求が車両側で受け付けられると、この旨を知らせる第1のアンサーバック信号が車両側から送信されるとともに、エンジンが始動されて暖機運転が開始された場合には、その旨を知らせる第2のアンサーバック信号が車両側から送信される。そして、上記各アンサーバック信号が受信アンテナ25で受信されると、受信回路26は、当該信号を復調して受信信号を生成するとともに、それを制御部22に出力する。報知部27は、制御部22による制御のもと、リモコン操作が車両側で受け付けられた旨のメッセージ、或いは、暖機運転が開始された旨のメッセージを表示により視覚的に報知する。
【0021】
車両側の暖機運転装置3は、無線による送受信機能を有するとともに、受信アンテナ31、受信回路32、リモートエンジンスタート制御部33、送信回路34、送信アンテナ35を備えている。尚、上記リモートエンジンスタート制御部33は、暖機運転装置3が搭載されている車両に適合する正規のリモコン2のIDコードに一致する基準IDコードを記憶する不揮発性のメモリ33aを備えている。
【0022】
そして、上記リモコン操作信号が受信アンテナ31で受信されると、受信回路32は、当該信号を復調して受信信号を生成するとともに、それをリモートエンジンスタート制御部33に出力する。リモートエンジンスタート制御部33は、上記受信信号の解析を行い、この解析においてまず、当該信号に含まれているIDコードと上記基準IDコードとが一致しているか否かを判断する。そして、リモートエンジンスタート制御部33は、両IDコードが一致したとき、正規のリモコン2による操作であると肯定判断するとともに、更なる解析の結果、上記受信信号に暖機運転開始要求コードが含まれている場合には、当該リモコン操作による暖機運転開始の要求を容認する。このときリモートエンジンスタート制御部33は、リモコン2に対しリモコン操作の受付完了を知らせるために、第1のアンサーバック原信号を生成するとともに、これを送信回路34に出力する。送信回路34は、上記原信号を所定周波数の電波に変調するとともに、送信アンテナ35は当該電波を第1のアンサーバック信号として外部に送信する。
【0023】
また、リモートエンジンスタート制御部33は、リモコン操作を受け付けたことに伴い、暖機運転を開始するに相応しい車両状況にあるか否かを検証する目的で、図示しないドア開閉センサ等のセンサ群からの入力信号を監視する。そして、車両搭載のドアが全て閉状態にある等、暖機運転を開始するに相応しい車両状況にあると判断したとき、リモートエンジンスタート制御部33はエンジンを始動する。そして、エンジンが始動されたことを図示しないエンジン回転センサからの入力信号に基づき判断したとき、リモートエンジンスタート制御部33は、リモコン2に対し暖機運転が開始されたことを知らせるために、第2のアンサーバック原信号を生成するとともに、これを送信回路34に出力する。送信回路34は、上記原信号を所定周波数の電波に変調するとともに、送信アンテナ35は当該電波を第2のアンサーバック信号として外部に送信する。
【0024】
ところで、上記リモートエンジンスタート制御部33には、自車が中継器となって、他車用のリモコンからのリモコン操作信号を中継するか否かを設定するための設定スイッチ36が電気的に接続されている。そして、リモートエンジンスタート制御部33は、中継機能が有効となるよう設定されているとき、上記解析において自基準IDコードと一致しなかったIDコードを含む受信信号を中継するべく、同信号に対し自基準IDコードを中継回数の通し番号とともに付加して中継原信号を生成するとともに、これを送信回路34に出力する。送信回路34は、上記原信号を所定周波数の電波に変調するとともに、送信アンテナ35は当該電波を中継信号として外部に送信する。
【0025】
次に、リモートエンジンスタートシステム1の作用について説明する。ここでは、図2に示すように、車両ユーザがリモコン2を操作して自車11の暖機運転を開始する場合を想定し、その周辺には他車12〜14が存在するとともに、これら他車12〜14はいずれも中継機能が有効となるよう設定されていることとする。尚、自車11及び他車12〜14はいずれも図1に示す暖機運転装置3と同様の構成を備えている。そして、本実施形態では、中継回数の限度が1回に設定され、そのことが各車で共通認識されている。
【0026】
車両ユーザがリモコン操作を行うと、リモコン2からリモコン操作信号が送信され、この信号は、障害物の存在により自車11まで直接的には到達しないとともに(矢印A)、他車12によって受信され(矢印B)、また、他車13でも受信される(矢印C)。尚、上記信号は、送信可能距離を超える位置に存在する他車14では受信されない。
【0027】
そして、他車12は、リモコン操作信号の解析においてIDコードが一致しないことを受け、中継回数が1回目であることを示す情報及び当該他車12の基準IDコードを付加した上でリモコン操作信号の中継信号を送信する。そして、この信号が自車11で受信されるとともに(矢印D)、他車13でも受信され(矢印E)、さらに他車14でも受信される(矢印F)。
【0028】
ここで、他車13は、上記の通り、リモコン操作信号を受信するが(矢印C)、他車12による中継信号を受信したことを受け(矢印E)、当該他車12による中継に委ねるべく、他車13自らは中継信号を送信しない。一方、他車14は、他車12による中継信号を受信するが(矢印F)、その信号に含まれる中継回数が1回目であることを受け、他車14自らが新たに中継すると限度回数の1回を超えることになるため、他車14自らは中継信号を送信しない。その結果、自車11は、他車12による中継信号のみを受信することになる(矢印D)。
【0029】
そして、自車11は、リモコン2からのリモコン操作信号を他車12による中継信号というかたちで受信したとき(矢印D)、この信号の解析を行い、その解析においてIDコードが一致することを受け、正規のリモコン2による要求を受け付けた後、アンサーバック信号を送信する。尚、このアンサーバック信号は第1のアンサーバック信号及び第2のアンサーバック信号の総称であり、いずれのアンサーバック信号にも、中継の有無に関する情報及び中継器となった車両の基準IDコードが含まれている。すなわち、本例のアンサーバック信号には、リモコン操作信号について他車12による中継のあったことを受け、中継有りの情報が含まれ、特に本実施形態では中継の限度回数が1回に設定されることに伴い、当該情報は中継回数が1回であることを示す情報ともなる。また、本例のアンサーバック信号には、他車12の基準IDコードが含まれることになる。
【0030】
そして、上記アンサーバック信号が自車11から送信されると、この信号は、障害物の存在によりリモコン2まで直接的には到達しないとともに(矢印G)、他車12によって受信され(矢印H)、また、他車14でも受信される(矢印I)。尚、上記信号は、送信可能距離を超える位置に存在する他車13では受信されない。
【0031】
そして、他車12は、アンサーバック信号の解析を行い、この解析において当該他車12の基準IDコードが含まれていることを受け、他車12自らによる中継を経て自車11にリモコン操作信号が到達したことに基づくアンサーバック信号である旨を認識する。そして、他車12は、リモコン操作信号の中継を行った往路に対し、復路ではアンサーバック信号の中継を行うべく、復路での中継回数が1回目であることを示す情報及び当該他車12の基準IDコードを付加した上でアンサーバック信号の中継信号を送信する。そして、この信号がリモコン2で受信されるとともに(矢印J)、他車14でも受信され(矢印K)、さらに他車13でも受信される(矢印L)。
【0032】
ここで、他車14は、上記の通り、アンサーバック信号を受信するが(矢印I)、それには当該他車14の基準IDコードが含まれおらず、また、この他車14は、他車12による中継信号も受信するが(矢印K)、それにも当該他車14の基準IDコードが含まれていないため、往路と同様、復路でも中継を行わない。一方、他車13も、他車12による中継信号を受信するが(矢印L)、それには当該他車13の基準IDコードが含まれていないため、往路と同様、復路でも中継を行わない。その結果、リモコン2は、他車12による中継信号のみを受信することになる(矢印J)。
【0033】
そして、リモコン2は、自車11からのアンサーバック操作信号を他車12による中継信号というかたちで受信したとき(矢印J)、報知部27に所定のメッセージを表示する。例えば、第1のアンサーバック信号を受信したとき、「受け付けました。これからエンジンをかけます。」といったメッセージを表示するとともに、第2のアンサーバック信号を受信したとき、「エンジンがかかりました。」といったメッセージを表示する。また、「電波事情により車1台に中継協力されました。」といったメッセージも併せて表示する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)リモートエンジンスタートシステム1に中継器(図2の例では他車12)を加えることで、リモコン操作信号やアンサーバック信号を中継できるようになる。このため、上記信号の伝送途中に建造物等の障害物が存在する場合でも、その障害物を回避するかたちで中継器による中継が行われれば、当該信号を通信相手まで到達させることができる。従って、通信安定性を確保することができる。
【0035】
(2)全ての中継器による中継が一斉に行われる訳ではなく、いずれかの中継器による中継が既に行われている場合には、その中継に委ねるべく、新たな中継は行われない。従って、混信による通信不良を抑制することができる。
【0036】
(3)リモコン2の通信相手である自車11は、中継器による中継の有無に関する情報を当該リモコン2側に知らせるアンサーバック機能を有している。このため、リモコン2側において、自車11から取得した上記情報を視覚的に報知することで、リモコン操作を行ったユーザは、通信環境を把握することができる。
【0037】
(4)自車に中継機能を持たせるか否かを設定する設定スイッチ36を備えるようにした。このため、中継機能が有効となるよう設定された場合には、通信安定性の確保に貢献できるとともに、中継機能が無効となるよう設定された場合には、秘匿性を確保することができる。尚、自車が他車による中継機能の恩恵を受けたい場合に、その代償として、他車が当該自車による中継機能の恩恵を受けられるよう、それらをワンセットとするかたちで「有効」の設定がなされることとすれば、車両ユーザの立場から平等となる。
【0038】
(5)立地条件等により電波条件(通信環境)の悪い立体駐車場等では、中継器が介在されない場合に、リモコン2と自車11との間で通信できないケースもあると予想されるが、本実施形態のように中継器を備える構成では、車両密集地において中継される確率が高まり、立体駐車場等においてむしろ逆に有利になると考えられる。
【0039】
(6)中継回数に限度を設けることで、無限に中継が繰り返されることを防止することができる。
(7)中継信号には中継器となる車両の基準IDコードを付加することとした。このため、例えば往路において自車の基準IDコードが付加された中継信号を受信した場合、この往路において既に自車は中継を行ったことになるので、中継の重複を無くするべく、限度回数に達していなくても中継しないこととすれば、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。
【0040】
(8)上記(7)に加え、往路での伝送経路の逆順となるよう限定するかたちで復路の伝送経路を構築できるようになる。従って、復路において、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。
【0041】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・他の中継器による中継信号が存在するか否かの判断は、何らかの電波が受信アンテナ31で受信されたことに伴い、その受信信号がリモートエンジンスタート制御部33で検知されたことに基づき肯定判断されてもよいし、受信信号の解析を経たものであってもよい。
【0042】
・往路と同様、復路にも中継回数の限度を設け、それを超えない範囲で中継が行われるようにしてもよい。或いは、往路と同様、復路でも、他の中継器による中継信号が存在しないことを条件に中継するようにしてもよい。
【0043】
・電波条件が良く、中継を経ることなく、リモコン2から自車11に対し直接的にリモコン操作信号が到達した場合には、この自車11からのアンサーバック信号に、中継無しの情報が含まれ、この信号もやはり、中継を経ることなく、リモコン2に到達できる確率が高いと考えられる。しかし、往路で中継が必要なかった場合でも、復路では電波条件が変わって中継が必要となることも考えられる。そこで、往路と復路を区別して、たとえ往路で中継が必要なかった場合でも、復路では、中継回数の限度を設けたり、或いは、他の中継器による中継のないことを条件に中継を行う等して、上記実施形態に倣うかたちで復路において選択的に中継するようにしてもよい。
【0044】
・上記別例のように中継無しでリモコン操作信号が到達した場合には、それに伴い、自車11で暖機運転が開始されることになるが、それに遅れるかたちで、中継を経た信号が自車11に到達する。この場合、中継を経て間接的に到達したリモコン操作信号による要求を適えることはせず、すなわちそれによる暖機運転を禁止することとすれば、一度のリモコン操作で二度或いはそれ以上に亘って暖機運転が開始されるといったことを防止できる。
【0045】
・リモコン操作信号の受信強度が第1の閾値よりも弱いとき、他の中継器による中継信号の有無を判断し、その中継信号が有ると判断したとき、当該リモコン操作信号を中継しない一方、上記中継信号が無いと判断したとき、当該リモコン操作信号を中継するようにしてもよい。同構成によると、リモコン操作信号の受信強度が弱い場合には、他の中継器による中継が行われているか否かが判断され、肯定判断された場合には、当該他の中継器による中継に委ねられ、自中継器による中継は行われない。一方、リモコン操作信号の受信強度が弱い場合でも、他の中継器による中継が行われているか否かの判断で否定判断された場合には、自中継器による中継が行われる。このようにリモコン操作信号の受信強度が弱い場合には、その信号が自中継器によって直ちに中継されるのではなく、他の中継器による中継が行われているか否かが一旦検証され、その検証結果に基づき、自中継器による中継が選択的に行われる。従って、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。尚、この別例の内容は、リモコン操作信号をアンサーバック信号に置き換えて復路に応用することもできる。
【0046】
・上記別例とは逆に、リモコン操作信号の受信強度が第2の閾値よりも強いとき、当該リモコン操作信号を中継しないようにしてもよい。リモコン操作信号の受信強度が強い場合には、リモコン2が自中継器の近くに存在している可能性が高く、この場合、自中継器による中継を経ることなく、リモコン操作信号が他の中継器を経由して間接的に、或いはいずれの中継器も経由することなく直接的に自車11に到達できる可能性がある。いずれにせよ、このような場合には、自中継器による中継が必ずしも必要のない点を踏まえ、本別例による構成では、上記場合にリモコン操作信号を中継しないこととしている。従って、必要以上に中継信号が発信されるといったことが抑制される。尚、この別例の内容は、リモコン操作信号をアンサーバック信号に置き換えて復路に応用することもできる。
【0047】
・報知部27による報知態様は、音によるもの或いは振動によるもの等であってもよい。
・暖機運転を行うリモートエンジンスタートシステムに代えて、車内空調を行うリモートエアコンシステム等に本発明が適用されてもよい。
【0048】
・アンサーバック機能を有さない単方向通信システムに具体化されてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記リモコンの通信相手は、前記中継器による中継の有無に関する情報又は中継の回数に関する情報を当該リモコン側に知らせるアンサーバック機能を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠隔操作システム。同構成によると、リモコン側において、通信相手から取得した情報を例えば視覚的に報知するようにすれば、リモコン操作を行ったユーザは、通信環境を把握できるようになる。
【0049】
(ロ)請求項1〜4、上記(イ)のいずれか一項に記載の遠隔操作システムにおいて、前記中継器に前記操作信号の中継機能を持たせるか否かを設定する設定手段をさらに備えることを特徴とする遠隔操作システム。同構成によると、中継機能が有効となるよう設定された場合には、通信安定性の確保に貢献できるとともに、中継機能が無効となるよう設定された場合には、秘匿性を確保することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…リモートエンジンスタートシステム(遠隔操作システム)、2…リモコン、3…暖機運転装置、11…自車(リモコンの通信相手)、12〜14…他車(中継器)、21…操作部、22…制御部、22a…メモリ、23…送信回路、24…送信アンテナ、25…受信アンテナ、26…受信回路、27…報知部、31…受信アンテナ、32…受信回路、33…リモートエンジンスタート制御部、33a…メモリ、34…送信回路、35…送信アンテナ、36…設定スイッチ(設定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモコン操作を通じて制御対象を遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、
前記リモコン操作による遠隔制御用の操作信号を選択的に中継する中継器を備え、
前記中継器は、他の中継器による中継信号を検出したとき、前記操作信号を中継しない
ことを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
前記中継器は、前記操作信号の受信強度が第1の閾値よりも弱いとき、他の中継器による中継信号の有無を判断し、その中継信号が有ると判断したとき、当該操作信号を中継しない一方、前記中継信号が無いと判断したとき、当該操作信号を中継する
請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記中継器は、前記操作信号の受信強度が第2の閾値よりも強いとき、当該操作信号を中継しない
請求項1又は2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記操作信号が前記中継器による中継を介さずにリモコンの通信相手に直接的に到達したことに伴い、前記制御対象が遠隔操作されたとき、当該操作信号が前記中継器による中継を介してリモコンの通信相手に間接的に到達したことに伴う前記制御対象の遠隔操作が禁止される
請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠隔操作システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−115642(P2013−115642A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260563(P2011−260563)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】