説明

遠隔操作ロボットシステム

【課題】遠隔操作ロボットシステムにおいて、制御処理装置の簡素化及び低コスト化を図る。
【解決手段】操作機51の操作機制御部53とロボット11のロボット制御部32との間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信する有線ネットワーク及び無線ネットワークを構築し、有線ネットワークを、操作機用メディアコンバータ54とロボット用メディアコンバータ33を伝送ケーブル26により接続するイーサネット(登録商標)回線により構成する一方、無線ネットワークを、操作機用ブリッジ55とロボット用ブリッジ34を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成し、主要部の制御機器を共通化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作機側とロボット側との間で各種データを送受信することで操作機によりロボットを遠隔操作する遠隔操作ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物内で事故や火災などが発生した場合、消防設備によって警報を発し、スプリンクラーを作動して消火を行うと共に、防火シャッターを作動して火炎の拡大や煙の拡散を抑えながら、排煙設備により煙を迅速に排出するようにしている。また、管理室にいる管理者は、各所に配置されているテレビカメラにより事故や火災などの発生状況を監視し、事故や火災などの発生箇所の特定、被害状況の把握、または不審者の確認などを行っている。そして、火災現場での消火活動や救助活動などは、現場の人や管理者、消防員などが行っているのが現状である。
【0003】
しかし、建物内に設けられたテレビカメラからの画像では、テレビカメラの視野が制限され、モニタできる範囲が限定されて不審人者の特定や火災の発生状況を的確に把握することが難しい。また、現場の人や管理者が火災現場での消火活動や救助活動などを行うことは危険であり、消防員であっても、火災現場で有毒ガスが発生している状況では、消火活動や救助活動などを行うことは危険を伴ってしまう。
【0004】
このような問題を解決するものとして、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された走行式作業ロボットは、左右のクローラにより不整地でも走行可能であり、遠隔制御部及び搭載したバッテリからケーブルを介して電力が供給可能であると共に、この走行式作業ロボットは、遠隔制御部から送信される制御情報を受信してクローラや各関節アームを動作可能であると共に、ロボット各部の動作状態情報を遠隔制御部に送信可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−254363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように遠隔地にいる使用者が遠隔制御部を操作して走行式作業ロボットを遠隔操作する場合、遠隔制御部と走行式作業ロボットとの間で各種の情報をやり取りする必要がある。一般には、遠隔制御部と走行式作業ロボットとで、有線または無線により各種情報を伝送することが考えられ、この場合、信号の伝達性能や伝達速度などを考慮すると有線に信頼性があるが、伝送ケーブルの取り回しや切断事故などを考慮すると無線に信頼性がある。そのため、遠隔制御部と走行式作業ロボットとの間で有線及び無線により各種情報を伝送可能とすることが考えられるが、この場合、通信機器や制御機器の複雑化、大型化、高コスト化を招いてしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、制御処理装置の簡素化及び低コスト化を図った遠隔操作ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1の発明の遠隔操作ロボットシステムは、操作機とロボットとの間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信することで前記操作機により前記ロボットを遠隔操作可能な遠隔操作ロボットシステムにおいて、操作機制御部及びロボット制御部と、前記操作機制御部と前記ロボット制御部とを接続する有線ネットワークと、前記操作機制御部と前記ロボット制御部とを接続する無線ネットワークと、前記有線ネットワークと前記無線ネットワークとを切換可能なネットワーク切換手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明の遠隔操作ロボットシステムでは、前記有線ネットワークは、操作機用メディアコンバータとロボット用メディアコンバータを光ファイバにより接続するイーサネット(登録商標)回線により構成される一方、前記無線ネットワークは、操作機用中継局とロボット用中継局を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明の遠隔操作ロボットシステムでは、前記ネットワーク切換手段は、前記操作機用メディアコンバータ及び前記操作機用中継局が接続される操作機用マネージドスイッチと、前記ロボット用メディアコンバータ及び前記ロボット用中継局が接続されるロボット用マネージドスイッチにより構成されたことを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明の遠隔操作ロボットシステムでは、前記ネットワーク切換手段は、前記操作機用メディアコンバータへの電源供給を停止する第1電源スイッチと、前記操作機用中継局への電源供給を停止する第2電源スイッチにより構成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明の遠隔操作ロボットシステムでは、前記操作機用マネージドスイッチは、前記操作機用制御部との間で制御データの送受信が可能であると共に、ビデオデコーダを介して音声データ及び映像データの送受信が可能であることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明の遠隔操作ロボットシステムでは、前記ロボット用マネージドスイッチは、前記ロボット用制御部との間で制御データの送受信が可能であると共に、ビデオエンコーダを介して音声データ及び映像データの送受信が可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、操作機制御部とロボット制御部との間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信する有線ネットワーク及び無線ネットワークを設けると共に、この有線ネットワークと無線ネットワークを切換可能なネットワーク切換手段を設けたので、このネットワーク切換手段によりロボットの使用状況に応じて有線ネットワークと無線ネットワークを適正に切換えて選択的に使用することができ、且つ、機器構成を共通化して制御処理装置の簡素化及び低コスト化を可能とすることができる。
【0015】
請求項2の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、有線ネットワークを、操作機用メディアコンバータとロボット用メディアコンバータを光ファイバにより接続するイーサネット(登録商標)回線により構成する一方、無線ネットワークを、操作機用中継局とロボット用中継局を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成したので、操作機制御部とロボット制御部との間で送受信するデータをデジタルデータとすることで、主要部の制御機器を共通化して制御処理装置の簡素化及び低コスト化を可能とすることができる。
【0016】
請求項3の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、ネットワーク切換手段を、操作機用メディアコンバータ及び操作機用中継局が接続される操作機用マネージドスイッチと、ロボット用メディアコンバータ及びロボット用中継局が接続されるロボット用マネージドスイッチにより構成したので、各マネージドスイッチにより有線ネットワークと無線ネットワークを簡単に切換えて使用することができると共に、冗長接続を可能としてロボットの確実な遠隔操作を可能とすることができる。
【0017】
請求項4の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、ネットワーク切換手段を、操作機用メディアコンバータへの電源供給を停止する第1電源スイッチと、操作機用中継局への電源供給を停止する第2電源スイッチにより構成したので、各電源スイッチにより有線ネットワークと無線ネットワークを簡単に切換えることができ、装置の簡素化を可能とすることができる。
【0018】
請求項5の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、操作機用マネージドスイッチにより操作機用制御部との間で、制御データを送受信可能であると共にビデオデコーダを介して音声データ及び映像データを送受信可能としたので、簡単な構成で制御データと音声データと映像データを送受信することができる。
【0019】
請求項6の発明の遠隔操作ロボットシステムによれば、ロボット用マネージドスイッチによりロボット用制御部との間で、制御データを送受信可能であると共にビデオエンコーダを介して音声データ及び映像データを送受信可能としたので、簡単な構成で制御データと音声データと映像データを送受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る遠隔操作ロボットシステムの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る遠隔操作ロボットシステムを表す概略構成図、図2は、本実施例の遠隔操作ロボットシステムにおけるロボットの正面図、図3は、本実施例の遠隔操作ロボットシステムにおけるロボットの平面図である。
【0022】
本実施例の遠隔操作ロボットシステムは、建物内や地下街、地下鉄道の駅内に進入して防災支援活動を行うロボットである。まず、本実施例の遠隔操作ロボットシステムを構成するロボットについて説明する。図2及び図3に示すように、ロボット11は、車体12の両側に前部従動輪13L,13R及び後部駆動輪14L,14Rが支持されると共に、左右の前部従動輪13L,13Rと後部駆動輪14L,14Rとの間にクローラ15L,15Rが掛け回されている。そして、車体12の中央部には、左右一対の駆動モータ16L,16Rが搭載され、各駆動モータ16L,16Rの駆動軸に減速機17L,17Rを介して駆動スプロケット18L,18Rが固結されており、この駆動スプロケット18L,18Rと後部駆動輪14L,14Rに一体の中間スプロケット19L,19Rとの間にチェーン20L,20Rが掛け回されている。なお、図示しないが、各クローラ15L,15Rに対応して保持ブレーキが設けられている。
【0023】
従って、各駆動モータ16L,16Rを駆動すると、その駆動力が減速機17L,17R、駆動スプロケット18L,18R、チェーン20L,20R、中間スプロケット19L,19Rを介して後部駆動輪14L,14Rに伝達され、前部従動輪13L,13Rとこの後部駆動輪14L,14Rとの間に掛け回されたクローラ15L,15Rを駆動し、ロボット11を前進または後退することができる。このとき、左右の駆動モータ16L,16Rの駆動回転方向を逆にすると、左右のクローラ15L,15Rの駆動回転方向が逆になり、ロボット11を旋回することができる。つまり、左側のクローラ15Lを図2にて時計回り方向に回転し、右側のクローラ15Rを図2にて反時計回り方向に回転すると、ロボット11を左旋回(図3にて反時計回り方向旋回)することができ、左側のクローラ15Lを図2にて反時計回り方向に回転し、右側のクローラ15Rを図2にて時計回り方向に回転すると、ロボット11を右旋回(図3にて時計回り方向旋回)することができる。
【0024】
また、車体12には、前方カメラ21Aと後方カメラ21Bと側方カメラ21L,21Rが装着されると共に、各カメラ21A,21B,21L,21Rに対応して照明22A,22B,22L,22Rが装着されており、前方カメラ21Aは上下にパン・チルト可能となっている。更に、車体12の前部にマイクロフォン23及びスピーカ24が装着されている。
【0025】
そして、本実施例では、操作機51とロボット11とが有線ネットワークおよび無線ネットワークにより各種データの送受信が可能となっている。即ち、ロボット11の車体12には、伝送ケーブル(光ファイバ)26を巻き取るケーブルドラム27が回転自在に支持されると共に、ケーブルモータ28が搭載され、ケーブルモータ28の駆動軸とケーブルドラム27の回転軸との間にチェーン29が掛け回されている。従って、ロボット11の走行に応じてケーブルモータ28を駆動すると、ケーブルドラム27を回転して伝送ケーブル26を巻き取ったり、繰り出したりすることができる。また、ロボット11の後部には、ロボット用アンテナ30が装着されており、操作機51の操作機用アンテナ52と送受信することができる。
【0026】
次に、本実施例の遠隔操作ロボットシステムにおける操作機制御部及びロボット制御部について説明する。図1に示すように、操作機制御部53にて、有線ネットワークを構成するための操作機用メディアコンバータ54と、無線ネットワークを構成する操作機用ブリッジ(操作機用中継局)55とが設けられ、操作機用メディアコンバータ54には伝送ケーブル26の一端部が接続され、操作機用ブリッジ55にはアンテナ52が接続されている。そして、この操作機用メディアコンバータ54及び操作機用ブリッジ55は、ハブ(操作機用マネージドスイッチ)56に接続され、このハブ56はビデオデコーダ57に接続されている。
【0027】
ビデオデコーダ57には、マイクロフォン58とスピーカ59が接続されている。そして、ビデオデコーダ57は、ビデオキャプチャ60を介してコンピュータ61に接続されており、受信した映像と音声をデジタルデータとしてコンピュータ61に取り込むことができると共に、音声をスピーカ59から出力することができ、更に、マイクロフォン58から入力した音声をハブ56側に出力することができる。一方、ハブ56は、直接コンピュータ61に接続されており、コンピュータ61との間でロボット制御信号の出入力を行うことができる。なお、コンピュータ61には、ダウンスキャンコンバータ62及びハードディスクレコーダ63が接続されており、コンピュータ61からの映像と音声の出力信号をダウンスキャンコンバータ62により低周波数に変換し、ハードディスクレコーダ63に記録することができる。そして、コンピュータ61は映像を表示するディスプレイ64を有している。
【0028】
操作機51は、ロボット11の左右の走行装置31L,31Rに対応して2つのジョイスティク65L,65Rを有しており、このジョイスティク65L,65Rを操作して操作信号は、ポテンションメータ変換器66を介してコンピュータ61に入力される。
【0029】
バッテリ67はDCコンバータ68を介して操作機用メディアコンバータ54、操作機用ブリッジ55、ハブ56、ビデオデコーダ57、ビデオキャプチャ60、ダウンスキャンコンバータ62、ハードディスクレコーダ63に接続され、電力を供給可能となっている。なお、コンピュータ61は、電源コード69を介して電力が供給される。
【0030】
一方、ロボット制御部32にて、有線ネットワークを構成するためのロボット用メディアコンバータ33と、無線ネットワークを構成するロボット用ブリッジ(ロボット用中継局)34とが設けられ、ロボット用メディアコンバータ33には伝送ケーブル26の他端部が接続され、ロボット用ブリッジ34にはアンテナ30が接続されている。そして、このロボット用メディアコンバータ33及びロボット用ブリッジ34は、ハブ(ロボット用マネージドスイッチ)35に接続され、このハブ35はビデオエンコーダ36に接続されている。
【0031】
ビデオエンコーダ36には、マイクロフォン23とスピーカ24が接続されている。そして、ビデオエンコーダ36は、ディストリビュータ37を介してカメラ21A,21B,21L,21Rに接続されており、撮影した映像と入力した音声をデジタルデータとしてハブ35側に出力することができると共に、受信した音声をスピーカ24から出力することができる。一方、ハブ35はロボットコントローラ38にも接続されており、ロボット制御信号の出入力を行うことができる。
【0032】
ロボットコントローラ38は、左右の走行装置31L,31Rを駆動制御可能であり、ジョイスティク65L,65Rからの操作信号を受けてロボット11の走行を制御する。この場合、各走行装置31L,31Rは、駆動モータ16L,16Rに加え、図示しないブレーキ装置などにより構成されている。また、ロボットコントローラ38は、照明ユニット39を介して各照明22A,22B,22L,22Rに接続されており、必要に応じて照明22A,22B,22L,22Rを点灯することができる。更に、ロボットコントローラ38は、前方カメラ21Aの撮影角度を調整するパン・チルト装置40に接続されており、ロボット11の走行状態に応じて前方カメラ21Aの撮影角度を調整する。
【0033】
また、ロボット11には、方位計41と傾斜計42が搭載されており、計測した方位と傾斜角度をロボットコントローラ38に出力している。更に、ロボットには、周囲のガス濃度や温度、ガンマ線量などを測定することで現場の状況を検出する各種の検出機器43が搭載されており、検出結果をロボットコントローラ38に出力している。そして、このロボットコントローラ38は、検出した各種データをハブ35から有線ネットワークまたは無線ネットワークにより操作機制御部53に送信可能となっている。
【0034】
バッテリ44はDCコンバータ45を介して操作機用メディアコンバータ33、ロボット用ブリッジ34、ハブ35、ビデオエンコーダ36、ディストリビュータ37、ロボットコントローラ38に接続され、電力を供給可能となっている。
【0035】
ところで、本実施例では、上述したように、有線ネットワークは、操作機用メディアコンバータ54とロボット用メディアコンバータ33を伝送ケーブル26により接続するイーサネット(登録商標)回線により構成される一方、無線ネットワークは、操作機用ブリッジ55とロボット用ブリッジ34を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成されている。そして、この有線ネットワークと無線ネットワークとがネットワーク切換手段により切換可能となっている。
【0036】
このネットワーク切換手段は、操作機用メディアコンバータ54及び操作機用ブリッジ55が接続される操作機用ハブ56と、ロボット用メディアコンバータ33及びロボット用ブリッジ24が接続されるロボット用ハブ35を有している。そして、ネットワーク切換手段は、操作機用メディアコンバータ54と操作機用ブリッジ55への電源供給を停止する2つの電源スイッチにより構成されている。
【0037】
即ち、バッテリ67からDCコンバータ68を介して操作機用メディアコンバータ54に接続する電源供給ライン71に、この操作機用メディアコンバータ54への電源供給を停止する第1電源スイッチ72が設けられている。また、バッテリ67からDCコンバータ68を介して操作機用ブリッジ55に接続する電源供給ライン73に、この操作機用ブリッジ55への電源供給を停止する第2電源スイッチ74が設けられている。
【0038】
従って、第1電源スイッチ72を接続状態とする一方、第2電源スイッチ74を切断状態とすると、操作機用メディアコンバータ54がON状態となり、操作機用ブリッジ55がOFF状態となることで、操作機制御部53とロボット制御部32とは、伝送ケーブル26を用いたイーサネット(登録商標)回線により有線ネットワークを構築することができる。
【0039】
この場合、操作機51のジョイスティック65L,65Rを操作すると、コンピュータ61から出力されたロボット制御信号は、ハブ56から操作機用メディアコンバータ54に入り、伝送ケーブル26を通してロボット用メディアコンバータ33に伝送され、ハブ35を介してロボットコントローラ38に入力する。このロボットコントローラ38は、このロボット制御信号に応じて走行装置31L,31Rを駆動制御することで、ロボット11を走行することができる。
【0040】
このとき、操作機51側のマイクロフォン58から入力された音声は、ビデオデコーダ57でデジタル変換され、ハブ56から操作機用メディアコンバータ54に入り、伝送ケーブル26を通してロボット用メディアコンバータ33に伝送され、ハブ35を介してビデオエンコーダ36に入力する。このビデオエンコーダ36は、音声デジタルデータをアナログ変換し、スピーカ24から出力する。
【0041】
また、ロボット11のカメラ21A,21B,21L,21Rから取り込んだ映像データ及びマイクロフォン23から取り込んだ音声データは、ビデオエンコーダ36でデジタル変換され、ハブ35からロボット用メディアコンバータ33に入り、伝送ケーブル26を通して操作機用メディアコンバータ54に伝送され、ハブ56を介してビデオデコーダ57に入力する。このビデオデコーダ57は音声及び映像デジタルデータをアナログ変換し、スピーカ24から音声を出力すると共にコンピュータ61に出力し、ディスプレイ64に映像を表示する。
【0042】
一方、第1電源スイッチ72を切断状態とする一方、第2電源スイッチ74を接続状態とすると、操作機用メディアコンバータ54がOFF状態となり、操作機用ブリッジ55がON状態となることで、操作機制御部53とロボット制御部32とは、イーサネット(登録商標)回線により無線ネットワークを構築することができる。
【0043】
このとき、操作機51側のマイクロフォン58から入力された音声は、ビデオデコーダ57でデジタル変換され、ハブ56から操作機用ブリッジ55に入り、アンテナ52,30間の送信によりロボット用ブリッジ34に伝送され、ハブ35を介してビデオエンコーダ36に入力する。このビデオエンコーダ36は、音声デジタルデータをアナログ変換し、スピーカ24から出力する。
【0044】
また、ロボット11のカメラ21A,21B,21L,21Rから取り込んだ映像データ及びマイクロフォン23から取り込んだ音声データは、ビデオエンコーダ36でデジタル変換され、ハブ35からロボット用ブリッジ34に入り、アンテナ52,30間の送信により操作機用ブリッジ55に伝送され、ハブ56を介してビデオデコーダ57に入力する。このビデオデコーダ57は音声及び映像デジタルデータをアナログ変換し、スピーカ24から音声を出力すると共にコンピュータ61に出力し、ディスプレイ64に映像を表示する。
【0045】
このように本実施例の遠隔操作ロボットシステムにあっては、操作機51の操作機制御部53とロボット11のロボット制御部32との間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信する有線ネットワーク及び無線ネットワークを構築し、この有線ネットワークと無線ネットワークをネットワーク切換手段により必要に応じて切換可能としている。従って、このネットワーク切換手段によりロボット11の使用状況に応じて有線ネットワークと無線ネットワークを適正に切換えて選択的に使用することができる。
【0046】
そして、本実施例の遠隔操作ロボットシステムでは、有線ネットワークを、操作機用メディアコンバータ54とロボット用メディアコンバータ33を伝送ケーブル26により接続するイーサネット(登録商標)回線により構成する一方、無線ネットワークを、操作機用ブリッジ55とロボット用ブリッジ34を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成している。従って、操作機制御部53とロボット制御部32との間で送受信するデータをデジタルデータとすることで、主要部の制御機器を共通化して制御処理装置並びにソフトウェアの簡素化及び低コスト化を可能とすることができる。
【0047】
また、本実施例の遠隔操作ロボットシステムでは、上述したネットワーク切換手段として、操作機用メディアコンバータ54及び操作機用ブリッジ55が接続される操作機用ハブ56と、ロボット用メディアコンバータ33及びロボット用ブリッジ24が接続されるロボット用ハブ35トを設け、操作機用メディアコンバータ54と操作機用ブリッジ55への電源供給を停止する2つの電源スイッチ72,74により構成している。従って、各電源スイッチ72,74により有線ネットワークと無線ネットワークを簡単に切換えることができ、装置の簡素化を可能とすることができると共に、使用しない機器への電源供給を停止することで、省エネを実現することができる。
【0048】
なお、上述した実施例では、ネットワーク切換手段を2つの電源スイッチ72,74により構成したが、この構成に限定されるものではない。即ち、この電源スイッチ72,74を設けずに、操作機用メディアコンバータ54及び操作機用ブリッジ55へ常時電力を供給することで、有線ネットワークと無線ネットワークを常時使用可能な状態に維持してもよい。従って、有線ネットワークと無線ネットワークが使用可能な状態に維持されているときは、伝送速度が速い有線ネットワークによる各種データのやり取りが行われ、伝送ケーブル26が切断されて有線ネットワークが不通の状態となると、自動的に無線ネットワークに切換えられることとなる。そのため、ハブ34,56を用いたことで、有線ネットワークと無線ネットワークを簡単に切換えて使用することができると共に、冗長接続を可能とすることができ、その結果、ロボット11の確実な遠隔操作を可能とすることができる。また、光ファイバケーブルのコネクタをはずしたり、無線アンテナをはずすなど、経路を遮断する操作によって切換スイッチの代わりとすることも可能である。もちろん、明示的に、メディアコンバータの前後、無線ブリッジの前後にスイッチを入れて経路を遮断するように構成してもよい。
【0049】
また、ネットワーク切換手段として、ロボット制御部32側にて、ロボット用メディアコンバータ33とロボット用ブリッジ34への電源供給を停止する2つの電源スイッチを設けてもよい。この場合、ロボット制御部32に、ケーブル26が切断されて有線ネットワークが不通状態となったのを検出する検出部を設け、この検出部が有線ネットワークの不通を検出したら、2つの電源スイッチを接続状態に切換えればよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る遠隔操作ロボットシステムは、操作機制御部とロボット制御部との間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信する有線ネットワーク及び無線ネットワークを設けると共に、この有線ネットワークと無線ネットワークを切換可能としたものであり、いずれの種類の遠隔操作ロボットシステムにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例に係る遠隔操作ロボットシステムを表す概略構成図である。
【図2】本実施例の遠隔操作ロボットシステムにおけるロボットの正面図である。
【図3】本実施例の遠隔操作ロボットシステムにおけるロボットの平面図である。
【符号の説明】
【0052】
11 ロボット
15L,15R クローラ
21A,21B,21L,21R カメラ
23 マイクロフォン
24 スピーカ
26 伝送ケーブル(光ファイバ)
30 ロボット用アンテナ
31L,31R 走行装置
32 ロボット制御部
33 ロボット用メディアコンバータ
34 ロボット用ブリッジ(ロボット用中継局)
35 ロボット用ハブ(ロボット用マネージドスイッチ)
36 ビデオエンコーダ
38 ロボットコントローラ
51 操作機
52 操作機用アンテナ
53 操作機用制御部
54 操作機用メディアコンバータ
55 操作機用ブリッジ(操作機用中継局)
56 操作機用ハブ(操作機用マネージドスイッチ)
57 ビデオデコーダ
58 マイクロフォン
59 スピーカ
61 コンピュータ
64 ディスプレイ
65L,65R ジョイスティック
67 バッテリ
68 DCコンバータ
71,73 電源供給ライン
72 第1電源スイッチ
74 第2電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作機とロボットとの間で制御データと音声データと映像データをデジタルデータとして送受信することで前記操作機により前記ロボットを遠隔操作可能な遠隔操作ロボットシステムにおいて、操作機制御部及びロボット制御部と、前記操作機制御部と前記ロボット制御部とを接続する有線ネットワークと、前記操作機制御部と前記ロボット制御部とを接続する無線ネットワークと、前記有線ネットワークと前記無線ネットワークとを切換可能なネットワーク切換手段とを具えたことを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔操作ロボットシステムにおいて、前記有線ネットワークは、操作機用メディアコンバータとロボット用メディアコンバータを光ファイバにより接続するイーサネット(登録商標)回線により構成される一方、前記無線ネットワークは、操作機用中継局とロボット用中継局を接続するイーサネット(登録商標)回線により構成されたことを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔操作ロボットシステムにおいて、前記ネットワーク切換手段は、前記操作機用メディアコンバータ及び前記操作機用中継局が接続される操作機用マネージドスイッチと、前記ロボット用メディアコンバータ及び前記ロボット用中継局が接続されるロボット用マネージドスイッチにより構成されたことを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔操作ロボットシステムにおいて、前記ネットワーク切換手段は、前記操作機用メディアコンバータへの電源供給を停止する第1電源スイッチと、前記操作機用中継局への電源供給を停止する第2電源スイッチにより構成されたことを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。
【請求項5】
請求項3に記載の遠隔操作ロボットシステムにおいて、前記操作機用マネージドスイッチは、前記操作機用制御部との間で制御データの送受信が可能であると共に、ビデオデコーダを介して音声データ及び映像データの送受信が可能であることを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。
【請求項6】
請求項3に記載の遠隔操作ロボットシステムにおいて、前記ロボット用マネージドスイッチは、前記ロボット用制御部との間で制御データの送受信が可能であると共に、ビデオエンコーダを介して音声データ及び映像データの送受信が可能であることを特徴とする遠隔操作ロボットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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