説明

遠隔操作式の水栓装置

【課題】操作装置と弁装置とを離隔して別々に設置することを可能となして水栓装置の設置部周りの美観,意匠性を良好となし、且つ操作装置における操作を正確に弁装置に伝え得て、弁装置を適正に動作させることのできる遠隔操作式の水栓装置を提供する。
【解決手段】弁装置10と、弁装置10を操作する操作装置7とを離隔して配置し、操作装置7と弁装置10とを、操作装置7に加えられた操作力をラック部材72,82,88とピニオンギヤ80,86とで交互に運動変換して伝達する操作力の伝達機構12で連結するとともに、弁装置10の側でパイロット弁体を直接付勢する状態に且つ付勢力を伝達機構12全体に対して及ぼす状態でコイルばね78を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水栓装置に関し、詳しくは弁装置を操作装置と離隔して配置し、弁装置を操作装置にて遠隔操作するようになした遠隔操作式の水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓装置は弁装置に対して操作装置が直接結合した一体形態をなしており、この場合、例えば浴室の壁面から室内側に突出したカウンタ部に水栓装置を設置するとき、弁装置をカウンタ部の内部に収める必要のあることから、必然的にカウンタ部が大型化してしまう。そしてそのことによって水栓装置の設置部周りの美観,意匠性が損なわれてしまう。
【0003】
また従来の水栓装置では、操作装置の方向と弁装置の方向とを合致させる必要があるため、水栓装置全体の設置の方向が限られてしまい、水栓装置を設置する際の自由度が低いといった問題があった。
この場合、水栓装置における操作装置と弁装置とを別々に構成してそれらを離隔して配置し、弁装置を操作装置にて遠隔操作するようになすことが考えられる。
【0004】
例えば下記特許文献1には、操作装置と弁装置とを離隔して配置し、弁装置を操作装置にて遠隔操作するようになしたボックス型コックが開示されている。
この特許文献1に開示のものでは、操作部に加えられた操作力をラック部材からピニオンギヤに、更にピニオンギヤからラック部材に、更にラック部材からピニオンギヤへと伝達し、回転式の弁体を操作するようになしている。
【0005】
この特許文献1に開示のものは、単に弁体を開閉することを目的としたものであり、従って操作部に加えられた操作力を単にピニオンギヤとラック部材とで伝達することで目的を達することができるが、流量調節を必要とする水栓装置において、操作装置から弁装置への操作力の伝達経路をこれらピニオンギヤとラック部材とで構成するだけであると、ギヤとギヤとの噛合い部分のバックラッシに基いて発生する隙間(遊び)によって、流調操作部の操作位置が同一であっても、流量を増大させるときと減少させるときとで流量が異なってしまう、所謂ヒステリシス現象を起してしまい、水栓装置の性能を落してしまう。
【0006】
また下記特許文献2に開示しているように流量調節と吐水及び止水の状態切替えとを同じ操作装置の別々の操作部を操作することによって行い、且つ止水操作後において吐水操作を行ったときに、前回調節済みの流量で吐水を行う、操作装置が複雑な構造をなしている水栓装置において、どのようにしてその操作装置における各操作を弁体に伝達して、目的とする動作を行わせるようにするかが問題となる。
【0007】
【特許文献1】実開昭54−58643号公報
【特許文献2】特開2007−46770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情を背景とし、操作装置と弁装置とを離隔して別々に設置することを可能となして水栓装置の設置部周りの美観,意匠性を良好となし、且つ操作装置における操作を正確に弁装置に伝え得て、弁装置を適正に動作させることのできる遠隔操作式の水栓装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して請求項1のものは、弁装置と、該弁装置を操作する操作装置とを離隔して配置し、該操作装置と弁装置とを、該操作装置に加えられた操作力をラック部材とピニオンギヤとで交互に運動変換して伝達する操作力の伝達機構で連結するとともに、前記弁装置の側で弁体を直接付勢する状態に且つ付勢力を伝達機構全体に及ぼす状態にばねを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2のものは、請求項1において、何れかの前記ラック部材が操作力の伝達経路の方向に分割されていて、該分割されたラック部材同士が可撓性且つ非伸縮性の連結部材にて連結されており、且つ前記ばねが該連結部材を引張させる方向に設けてあることを特徴とする。
【0011】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記弁装置が主弁体とパイロット弁体とを有し、該パイロット弁体との間に微小間隙を形成しつつ該パイロット弁体の進退移動に追従して該主弁体を同方向に進退移動させるパイロット式弁装置であり、該パイロット弁体に対して前記伝達機構が連結されていて、該パイロット弁体に操作力を伝達するようになしてあることを特徴とする。
【0012】
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が前記弁体を開閉させるプッシュ操作式のプッシュ操作部と、該プッシュ操作部のプッシュ操作で押込運動する押込部材とを有しており、該押込部材の押込運動及び押込位置から引込位置への引込運動により、前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材を設定ストロークだけ前進及び後退移動させて、該ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、前記弁体の開弁状態と閉弁状態との状態切替えを行うようになしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項5のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が前記弁体の開弁量の調節を行う回転操作部を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項6のものは、請求項5において、前記回転操作部の回転操作により前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材を、該回転操作部の回転操作量に応じた進退量で連続的に進退移動させ、該ラック部材の移動に伴う前記弁体の連続的な進退移動により該弁体の開弁量の調節を行うようになしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項7のものは、請求項6において、前記操作装置が前記回転操作部の回転とともに回転する回転部材を有していて、該回転部材と前記ラック部材とがねじ結合され、該回転部材の回転に伴って該ラック部材がねじ送りで進退移動するものとなしてあることを特徴とする。
【0016】
請求項8のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が、前記弁体を開閉させるプッシュ操作部及び該プッシュ操作部のプッシュ操作により押し込まれる押込部材と、前記弁体の開弁量の調節を行う回転操作部及び該回転操作部とともに回転する回転部材とを有しており、該回転部材は前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材とねじ結合されていて、それら回転部材とラック部材とがねじ送りで伸縮する伸縮軸を構成しており、前記プッシュ操作部のプッシュ操作による前記押込部材の押込運動及び押込位置から引込位置への引込運動により、該伸縮軸を伸縮させることなく全体的に設定ストロークだけ前進及び後退移動させて前記ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、前記弁体の開弁状態と閉弁状態の状態切替えを行うとともに、前記回転操作部の回転操作に伴う前記回転部材の回転により前記伸縮軸をねじ送りで伸縮させて、前記ラック部材を該回転操作部の回転操作量に応じて連続的に進退移動させ、前記弁体の開弁量の調節を行うようになしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項9のものは、請求項4若しくは8の何れかにおいて、前記プッシュ操作部をプッシュ操作するごとに前記押込部材を前記押込位置と引込位置とに位置切替えし且つ位置保持するラッチ機構が設けてあり、且つ該ラッチ機構が、前記操作装置に備えてあることを特徴とする。
【0018】
請求項10のものは、請求項9において、前記ラッチ機構に対して前記ラック部材が前記プッシュ操作部の操作方向と直角方向の径方向外側の位置に且つ該径方向に重なる位置に配置してあることを特徴とする。
【0019】
請求項11のものは、請求項9,10の何れかにおいて、前記ばねは、前記弁装置の前記弁体を開弁させる方向に付勢力を及ぼすように設けてあることを特徴とする。
【0020】
請求項12のものは、請求項1〜11の何れかにおいて、前記弁装置が浴室の壁から室内側に突出した洗面器置台の内部に、前記操作装置が該洗面器置台よりも上方で前記壁から室内側に突出したカウンタ部にそれぞれ配置してあり、前記伝達機構がそれら操作装置と弁装置と上下に連結していることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように請求項1のものは、弁装置と操作装置とを離隔して配置し、そしてその操作装置と弁装置とを、操作装置に加えられた操作力をラック部材とピニオンギヤとで交互に運動変換して伝達する操作力の伝達機構で連結するとともに、弁装置の側で弁体を直接付勢する状態に且つ付勢力を伝達機構全体に及ぼす状態にばねを設けたものである。
【0022】
この請求項1によれば、操作装置に加えられた操作力をピニオンギヤを介して弁装置の側に伝達するため、操作装置及び弁装置をピニオンギヤ周りに角度を変えて設置することが可能となり、水栓装置を設置するに際して操作装置や弁装置の向きを自由に設定でき、水栓装置の設置の自由度を高めることができる。
また操作装置と弁装置とを別々に離して設置できるため、水栓装置の設置の際のレイアウトの自由度が高まる。
【0023】
この請求項1では、弁装置の側で弁体を直接付勢する状態にばねを設け、そしてそのばねを伝達機構全体に及ぼすようにしていることから、ギヤの歯と歯との間のバックラッシに基いて遊び(隙間)が生じていても、ピニオンギヤとラックギヤの各歯面を操作力の伝達方向に接触状態に保つことができ、バックラッシに基いて操作力が弁装置に適正に伝達されず、そのことによって操作装置の操作に対する弁装置の応答性が悪化する問題を解消することができる。即ち操作部の操作に正確に対応して弁装置を動作させることが可能となる。
【0024】
従ってこの請求項1を給水と給水停止及び給水量変化させる単水栓装置等の給水装置に適用し、その操作装置の側で流調操作部を操作して流調,即ち給水量(吐水量)調節を行う場合、流量を増大させるときと減少させるときとで、流調操作部の操作位置が同一であっても流量が異なってしまうヒステリシス現象の発生を防止することができる。
【0025】
また請求項1を、湯側弁体と水側弁体とを有し且つそれらの弁開度を互いに逆の関係で大小変化させて湯水の混合比率(即ち混合水温度)を変化させる湯水混合弁装置に適用し、操作装置の側で温調操作部を操作して何れかの弁体、例えば湯側弁体の開弁量を調節することにより混合水温度を変化させる場合、混合水温度を上昇させる場合と低下させる場合とで、温調操作部の操作位置が同一であっても混合水温度が異なってしまう現象の発生を防止することができる。
【0026】
次に請求項2は、伝達機構における何れかのラック部材を操作力の伝達経路の方向に分割して、それらを可撓性且つ非伸縮性の連結部材にて連結するとともに、上記のばねを連結部材を引張させる方向に設けたものである。
【0027】
この請求項2によれば、操作装置から弁装置への操作力の伝達経路上に障害物があるような場合においても、連結部材を曲り状態に配置することで、その障害物との干渉を回避して伝達機構を配置し、以って操作装置と弁装置とを良好に作動的に連結状態となすことができる。
【0028】
またこの請求項2では、ばねがその連結部材を引張させる方向に付勢力を働かせているため、連結部材が緩むことによって操作力が良好に伝達されなくなるのを防止し、操作装置に加えられた操作力を連結部材を介して確実に弁装置へと伝達し、これを動作させることができる。
【0029】
ここで連結部材として可撓性且つ非伸縮性の線材、例えば金属ワイヤーを好適に用いることができる。
また連結部材を曲り状態に配置するに際し、これを所定個所に設けた滑車等に掛けるようにして配置し、これを曲り状態に且つ引張状態に設けることができる。
【0030】
請求項3は、弁装置を、主弁体とパイロット弁体とを有し、パイロット弁体との間に微小間隙を形成しつつパイロット弁体の進退移動に追従して主弁体を同方向に進退移動させるパイロット式弁装置として構成し、そしてそのパイロット弁体に伝達機構を連結して、パイロット弁体に操作力を伝達するようになしたものである。
【0031】
上記ピニオンギヤとラックギヤとの噛合いにより操作力を伝達する伝達機構では、操作力の伝達効率が低くなるのを避けられないが、その場合においてもこの請求項3によれば、小さな操作荷重で弁装置を作動させることができ、僅かな力で弁体を移動させ得て軽い操作で弁装置を操作することが可能となる。
【0032】
請求項4は、操作装置に弁体を開閉させるプッシュ操作部と、これをプッシュ操作することで押込運動する押込部材とを設け、その押込部材の押込運動及び押込位置から引込位置への引込運動により、伝達機構の操作装置側の始端のラック部材を設定ストロークだけ前進及び後退移動させて、ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、弁体の開弁状態と閉弁状態との状態切替えを行うようになしたもので、この請求項4によれば、プッシュ操作部のプッシュ操作によって確実に弁体を一定ストロークだけ進退移動させることができ、かかる弁体の開弁状態と閉弁状態との状態切替を遠隔操作にて行うことができる。
【0033】
この場合において請求項4を上記の単水栓装置等の給水装置に適用して、プッシュ操作部を吐止水操作部として構成し、そのプッシュ操作によって吐止水を行うようになすことができる。
また請求項4を上記の湯水混合弁装置に適用して、プッシュ操作部を例えば湯側弁体の開閉を行う開閉操作部として構成し、そのプッシュ操作部によって湯側弁体を開弁状態と閉弁状態とに状態切替えすることで、湯水混合弁装置を、混合水吐水状態と水のみを吐水する水吐水状態とに状態切替えするようになすことができる。
【0034】
請求項5は、操作装置に回転式の、弁体の開弁量調節を行う回転操作部を設けたもので、この請求項5では回転操作部を回転操作することによって弁体の開弁量調節を行うことができる。
ここで請求項5を上記の単水栓装置等に適用し、弁体の開弁量調節を行う回転操作部を、流調操作部として構成することができる。
また請求項5を上記の湯水混合弁装置に適用し、回転操作部を、例えば湯側弁体の開弁量調節によって湯水混合比率、即ち混合水温度を調節する温調操作部として構成することができる。
【0035】
この場合において、回転操作部の回転操作により先ずピニオンギヤを回転させて操作力を伝達するようになしておくことができるが、請求項6に従って、先ず伝達機構の操作装置側の始端のラック部材を回転操作部の回転操作量に応じた進退量で連続的に進退移動させ、これに伴う弁体の連続的な進退移動により弁体の開弁量の調節を行うようになしておくことができる。
【0036】
更にこの場合において、操作装置に回転操作部の回転とともに回転する回転部材を設けておいて、その回転部材と上記始端のラック部材とをねじ結合し、回転部材の回転に伴ってラック部材をねじ送りで進退移動させるようになしておくことができる(請求項7)。
【0037】
このようにしておけば、回転操作部の回転操作によって、その操作量に対応してラック部材を進退移動させることができ、ラック部材の進退移動を弁体に伝達してこれを進退移動させ、弁体の開弁量の変化を良好に行わせることができる。
【0038】
次に請求項8は、操作装置に弁体を開閉させるプッシュ操作部及びその操作によって押し込まれる押込部材と、弁体の開弁量の調節を行う回転操作部及びこれとともに回転する回転部材とを設け、その回転部材と操作装置側の始端のラック部材とをねじ結合して、それらによりねじ送りで伸縮する伸縮軸を構成し、そしてプッシュ操作部のプッシュ操作による押込部材の押込運動及び引込運動により、伸縮軸を伸縮させることなく全体的に設定ストロークだけ前進及び後退移動させて、ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、以って弁体の開弁状態と閉弁状態とを状態切替えするようになし、また回転操作部の回転操作に伴う回転部材の回転により、伸縮軸をねじ送りで伸縮させて、ラック部材を回転操作部の回転操作量だけ連続的に進退移動させ、弁体の開弁量の調節を行うようになしたものである。
【0039】
この請求項8の水栓装置では、回転操作部の回転操作により、その操作量に応じた量で伸縮軸を連続的に伸縮させ得、これにより回転操作部の操作力を弁体に伝達して、かかる弁体を回転操作部の操作量に応じて連続移動させることができる。そしてこのことによって弁体の開弁量の調節を連続して良好に行うことができる。
【0040】
また一方、プッシュ操作部をプッシュ操作することで、回転操作部の操作により伸縮した伸縮軸を、同一の伸縮量を保ったまま全体的に前進位置と後退位置とで位置切替えし、プッシュ操作部の操作を伸縮軸を介して、即ちラック部材を介して確実に弁体に伝達することができる。そしてその弁体を前進位置と後退位置とに位置切替えし、開弁状態と閉弁状態との状態切替えを行わせることができる。
【0041】
この請求項8の水栓装置では、伸縮軸が回転操作部の操作により予め所定の伸縮状態とされた後、プッシュ操作部の操作によりその伸縮量を(伸縮状態を)保ったまま、設定ストローク進退移動して前進位置と後退位置とに位置切替えされるため、この請求項8の水栓装置では、弁体が閉弁状態から開弁状態に状態切替えされたとき、予め調節済みの開弁量で弁体を開弁させることができる。
従って上記の単水栓装置にあっては、止水状態から吐水状態に状態切替えしたときに、予め調節済みの流量で吐水を行わせることができる。
また湯水混合弁装置において、例えば湯側弁体を閉弁状態から開弁状態に状態切替えしたとき、即ち水吐水状態から混合水吐水状態に状態切替えしたとき、予め調節済みの混合水温度で混合水吐水を行わせることができる。
【0042】
しかもこの請求項8の水栓装置によれば、プッシュ操作部と回転操作部とのそれぞれの操作を、ともに同一の始端のラック部材に加えて、伝達機構により各操作を弁装置の弁体へと伝達し、かかる弁体をそれぞれの操作に応じて動作させることができる。
【0043】
上記請求項4若しくは請求項8の何れかにおいて、プッシュ操作部をプッシュ操作するごとに、押込部材を押込位置と引込位置とに位置切替えしてそれぞれに位置保持するラッチ機構を設け、且つこれを操作装置の側に備えておくことができる(請求項9)。
【0044】
このようにすれば、プッシュ操作部の操作によって弁体の開弁状態と閉弁状態とを切り替えたときに、そのラッチ機構によりその後も開弁状態と閉弁状態とをそのまま維持することができる。
またそのラッチ機構は操作装置の側に備えてあるため、ラッチ機構による切替えの感触が手に直接伝わり、切替動作が行われたことを手で直接感じ取ることができ、使用者に良好な操作感を感じさせることができる。
【0045】
請求項10は、上記ラッチ機構に対してプッシュ操作部の操作方向と直角方向の径方向外側の位置にラック部材を設け、且つこれをラッチ機構に対し径方向に重なるように配置したもので、このようにすれば、ラック部材がラッチ機構と並列配置となって、かかるラッチ機構を設けることにより操作装置が操作方向に厚く大型化するのを効果的に回避でき、操作装置を薄型且つコンパクトに構成することが可能となる。
【0046】
次に請求項11は、弁装置の弁体を開弁させる方向にばねを設けたもので、この請求項11によれば、ラッチ機構の動作用としてばねを働かせることができる。
即ちかかるばねを、伝達機構におけるギヤのバックラッシに拘らず歯面と歯面とを常に操作力の伝達方向に接触させるためのものとして働かせることができるとともに、ラッチ機構の動作用のばねとして働かせることができる。
【0047】
本発明では、浴室の壁から室内側に突出した洗面器置台の内部に弁装置を収納し、また操作装置を、洗面器置台よりも上方で壁から室内側から突出したカウンタ部に設けておくことができ、そして上側の操作装置と下側の弁装置とを、伝達機構にて連結しておくことができる(請求項12)。
【0048】
このようにすることで、浴室内の特定の1つのカウンタ部に弁装置と操作装置とを有する水栓装置を設置する場合に比べて、外観上現れる操作装置の設置側のカウンタ部をコンパクトに構成することができ、水栓装置の設置部の美観,意匠性を高めることができる。
【0049】
尚、操作装置を設けたカウンタ部に吐水口を併せて設けておくことができる。
これにより下方の洗面器置台の上に載せた洗面器に対し、上方のカウンタ部の吐水口から良好に吐水を行うことができる。
この場合において、上記伝達機構を操作装置側の始端のラック部材,これに噛み合うピニオンギヤ,更にこれに噛み合うラック部材,更にこれに噛み合うピニオンギヤ,そして弁装置側の最終のラック部材とを含んで構成しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、浴室の内部を表している。
図中1は浴槽で、2は浴室の壁Wに取り付けられたカウンタ部材である。
カウンタ部材2は、壁Wから室内側に突出した下カウンタ部と、上カウンタ部3、及びそれらを上下に連絡する連絡部4を有している。
ここで下カウンタ部は洗面器置台5を成している。
またカウンタ部材2の上側には壁付のミラーMが設けられている。
【0051】
一方上カウンタ部3には、図2にも示しているように本実施形態の水栓装置6における操作装置7が取り付けられている。またこの上カウンタ部3には、先端に吐水口を有する水栓装置6における吐水管8が室内側に突き出す状態で設けられている。
尚、水栓装置6は水だけを吐水する単水栓の水栓装置となしておくこともできるし、また混合水を吐水する水栓装置となしておくこともできる。
【0052】
後者の場合には、図2に示しているように上カウンタ部3に温調(温度調節)操作部11を設けておき、その温調操作部11の操作により混合弁で適温に温度調節した混合水を吐水管8から吐水するようになしておくのが好適である。
【0053】
図2に示しているように、洗面器置台5の内部には水栓装置6における弁装置10が収容されており、この弁装置10と操作装置7とが、連絡部4の内部で伝達機構12にて上下に作動的に連結されている。
ここで伝達機構12は、操作装置7に加えられた操作力を弁装置10に伝達して弁装置10を動作させる。
尚14は伝達機構12に備えられたケースである。
【0054】
図5に弁装置10(この弁装置10は吐止水(給水と給水停止)及び吐水(給水)の流量調節を行うものである)の構成が具体的に示してある。
同図において、16は弁装置10におけるボデーで、その内部に主水路を形成する1次側の流入通路18,2次側の流出通路20が形成されている。
尚22は流入口で、24は流出口である。
【0055】
この実施形態では、弁機構全体が単一のユニットとしての着脱可能な弁カートリッジとして構成されている。図中26は、その弁カートリッジのカートリッジケースで、このカートリッジケース26は、図中の左部26-1と右部26-2とに分割されており、そしてそれらがカートリッジケース26の中間部をなす後述の背圧室形成部材28にて弾性的に連結されている。
弁カートリッジは、ボデー16内部に挿入された状態でボデー16への固定ナット30のねじ込みにより抜止状態に固定されている。
【0056】
図5において、32は主水路上に設けられたダイヤフラム弁体からなる主弁体で、樹脂製の硬質の主弁本体34と、これにより保持されたゴム製のダイヤフラム膜36とからなっている。
この主弁体32は、主弁座38に対して図中左右方向に進退移動して主水路を開閉し、また主水路の開度を変化させる。
詳しくは、主弁座38への着座によって主水路を遮断し、また主弁座38から図中左向きに離間することによって主水路を開放する。
また主弁座38からの離間量に応じて主水路の開度を大小変化させ、主水路を流れる水の流量即ち吐水部からの流量を調節する。
【0057】
この主弁体32の図中左側の背後には背圧室40が形成されている。
背圧室40は、内部の圧力を主弁体32に対して図中右向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
主弁体32には、これを貫通して1次側の流入通路18と背圧室40とを連通させる導入小孔42が設けられている。
この導入小孔42は、流入通路18からの水を背圧室40に導いて背圧室40の圧力を増大させる。
【0058】
主弁体32にはまた、これを貫通して背圧室40と2次側の流出通路20とを連通させる水抜水路としてのパイロット水路44が設けられている。
このパイロット水路44は、背圧室40内の水を流出通路20に抜いて、背圧室40の圧力を減少させる。
【0059】
図5に示しているように、主弁体32にはその中心部においてこれを軸心方向に貫通する貫通孔が設けられており、そこに吐止水パイロット弁体及び流調パイロット弁体を兼ねた共通のパイロット弁体46が挿通され、このパイロット弁体46の外周面と貫通孔の内周面との間に、通路幅が狭小な環状をなす上記パイロット水路44が形成されている。
【0060】
この主弁体32には、図7及び図8にも示しているように貫通孔の内周面に沿って主弁体32の軸心周りに環状をなすパイロット弁座48が一体に設けられている。
50はこのパイロット弁座48におけるシール部で、環状溝内部に環状をなす弾性シールリングとしてのOリング52を保持ししている。
【0061】
上記パイロット弁体46は、このパイロット弁座48に対し主弁体32の軸心に沿って図5中左右方向に進退移動可能に嵌合するようになっている。
詳しくは、このパイロット弁体46は、断面円形をなし且つ図中左右方向即ち進退方向において外径が同径のシール部54と、これより先端側(図7中下側,図5中右側)の環状の凹所56とを有している。
環状の凹所56の軸方向の各端部は、凹所56の最小径部に向かって漸次小径となるテーパ面とされており、そのテーパ面の大径側の各端部に段付部58,60が形成されている。
【0062】
尚、図5はパイロット弁体46の止水時(閉弁時)の状態を表しており、このときパイロット弁体46は、シール部54をOリング52を介してパイロット弁座48に対し全周に亘って径方向に弾性接触させ、パイロット弁体46とパイロット弁座48との間を水密にシールした状態にある。
またこのとき主弁体32は主弁座38に着座した状態(閉弁状態)にあって、主水路は閉鎖された状態にある。
【0063】
図7及び図8はパイロット弁体46の移動による流調(流量調節)時の作用を表している。
この実施形態では、流調の際にパイロット弁体46はパイロット水路44を閉鎖することはなく、その移動によってパイロット水路44の開度だけを変化させる。
後述の流調操作部としての回転操作部113に対する回転操作量がそのように規制されている。
【0064】
この実施形態では、図7(I)に示しているようにパイロット弁体46が同図中上向き(図5中左向き)に後退移動すると、パイロット弁体46とパイロット弁座48との間の隙間が一時的に大となり、背圧室40内の水がパイロット水路44を通じて流出通路20側に多く抜け出して背圧室40の圧力が減少する。
そこで主弁体32が流入通路18との圧力差により図中上向きに後退移動し、そして図7(II)に示しているように、流入通路18の圧力と背圧室40の圧力とがバランスする位置で主弁体32の後退移動が停止する。
即ち、主弁体32がパイロット弁体46の後退移動に追従するようにして共に後退移動し、そしてパイロット弁体46の停止とともに主弁体32もまた停止する。
このとき、パイロット弁体46と主弁体32との間には微小な間隙(追従間隙)が保持される。
主弁体32は以後もこの一定の微小間隙を保持しつつパイロット弁体46とともに移動する。
【0065】
この主弁体32の後退移動によって主弁体32と主弁座38との間の隙間が大となり、流入通路18から流出通路20への水の流入量が増大する。
【0066】
この状態からパイロット弁体46が更に図中上向きに後退移動させられると、背圧室40の圧力と流入通路18との圧力をバランスさせるようにして、主弁体32がパイロット弁体46の後退移動に追従して後退移動し、主水路の開度を更に広くして主水路を流れる水の流量を増大させる(図7(III)参照)。
【0067】
一方、パイロット弁体46が図8(I)に示しているように図中下向きに前進移動すると、パイロット弁体46とパイロット弁座48との間、詳しくはパイロット弁体46におけるシール部54とパイロット弁座48に保持されたOリング52との間の隙間が一時的に小さくなって、即ちパイロット水路44の開度が小さくなって、背圧室40から流出通路20に抜ける水の量が少なくなり背圧室40の圧力が増大する。
【0068】
このため、その増大した圧力により主弁体32が今度は図中下向き(図5中右向き)に前進移動して、背圧室40の圧力と流入通路18との圧力をバランスさせる位置で停止する。
このときにもパイロット弁体46と主弁体32との間には一定の微小間隙(追従間隙)が保持される。
このようにして背圧室40の圧力が一時的に増大すると、その増大した圧力により主弁体32が図中下向きに前進移動して、背圧室40の圧力と流入通路18の圧力とをバランスさせる位置で停止する。
このとき主弁体32と主弁座38との間の隙間は小さくなって、即ち主水路の開度が小さくなって、主水路を流れる水の流量が減少する(図8(II)参照)。
【0069】
そしてこの状態から更にパイロット弁体46が図中下向きに前進移動すると主水路の開度が更に小さくなり、主水路を流れる水の流量が更に減少する(図8(III)参照)。
【0070】
図5において、28は背圧室形成部材で逆カップ状を成しており、その内側に上記の背圧室40を形成している。
この背圧室形成部材28はまた、主弁体押えとしての働きもなしている。
【0071】
この背圧室形成部材28には、一対の弾性を有する環状のシールリングとしてのOリング64が保持されている。
これらOリング64は、後述の作用軸66の外周面に全周に亘り弾性接触して、作用軸66と背圧室形成部材28との間、即ち背圧室40との間を水密にシールする。
尚、カートリッジケース26における右部26-2にもまたその外周面にOリング68が保持されており、このOリング68にてボデー16との間が水密にシールされている。
【0072】
図5において、66は加えられた操作力に基づいてパイロット弁体46を作用させる作用軸で、この作用軸66は一様な円形断面且つ一様な外径で軸方向に延びており、そしてこの作用軸66の端部に、上記のパイロット弁体46が一体に構成されている。
尚、この作用軸66の図5中右端部にはEリングから成る弾性止め輪62が装着されている。この止め輪62は、主弁体46の中心部に形成された貫通孔よりも大径をなしている。
【0073】
上記操作装置7と弁装置10とを作動的に連結している伝達機構12は、図5に示しているように弁装置10側の末端に、作用軸66の移動方向と同方向の左右方向に移動する、ラックギヤ70を備えたラック部材72を有している。
ラック部材72は、作用軸66に対し球面軸受部74で連結されており、かかる作用軸66が、即ちこれに一体に構成されたパイロット弁体46がラック部材72と一体に左右方向に直線的に移動するようになっている。
【0074】
このラック部材72と弁機構との間、具体的には弁装置10のボデー16に固定されたばね受部材76との間には、金属製のコイルばね78が介装されており、かかるコイルばね78によってラック部材72が図中左方向、即ちパイロット弁体46を開弁させる方向に付勢されている。
【0075】
図3,図5,図9及び図10に示しているように、伝達機構12は、更にラック部材72のラックギヤ70に噛み合うピニオンギヤ80,ピニオンギヤ80に噛み合った状態で図中上下方向に移動する、ラックギヤ70を備えたラック部材82、更にラック部材82から図中上向きに延びる連結ロッド84、連結ロッド84の上端部に設けられた、ラックギヤ70を備えたラック部材85、更にこのラック部材85のラックギヤ70に噛み合うピニオンギヤ86、及びピニオンギヤ86に噛み合った状態で図中左右方向に移動する操作装置7側の始端の、ラックギヤ70を備えたラック部材88を備えている。
【0076】
即ち伝達機構12は、操作装置7において加えられた操作力を図3,図4,図9,図10の始端のラック部材88からピニオンギヤ86に、更にピニオンギヤ86からラック部材85、続いて連結ロッド84を経由してラック部材82に、更に続いてピニオンギヤ80を経てラック部材72に伝達し、その後作用軸66に図中左右方向に作用させる。
【0077】
上記コイルばね78は、この伝達機構12の全体に対して付勢力を及ぼしており、このため図10に示しているように、ラック部材72のラックギヤ70とピニオンギヤ80,ピニオンギヤ80とラック部材82のラックギヤ70,ラック部材85のラックギヤ70とピニオンギヤ86,ピニオンギヤ86とラック部材88のラックギヤ70とは、それぞれ操作装置7側からの操作力の伝達方向、またコイルばね78の付勢力を操作装置7の側に伝える方向に、各ギヤの歯面が一方向に隙間無く当った状態にある。
【0078】
図11,図12において、90は操作装置7に備えられた円筒形状のケースで、このケース90がカウンタ部材2に対して固定状態とされている。
上記ラック部材88は、図12に示しているように概略円筒形状をなしており、その上面にラックギヤ70が設けられている。
また側面には挿入部92,94が設けられ、これら挿入部92,94がケース90側の挿通孔96,98に挿通されている。
そしてこのことによって、ラック部材88がケース90により図中左右方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に保持されている。
尚、ラック部材88のラックギヤ70は、ケース90に設けられた貫通の挿通孔100に図中左右方向に移動可能に挿通されている。
このラック部材88には、その内周面に雌ねじ部102が設けられている。
【0079】
図9に示しているように、操作装置7はその中心部に円筒形状のガイド部材106を有しており、このガイド部材106が、締結軸108にてケース90の底部に固定されている。
締結軸108は、図9中右端部に大径の頭部110を有しており、この頭部110と反対側の端部に弾性的に嵌められた止め輪112とによって挟持される状態に、ガイド部材106がケース90の底部に回転可能に軸方向に固定されている。
このガイド部材106の外周面には、図12,図13に示すようにガイド部107が設けられている。
【0080】
図9,図11,図12において、113は流調操作部を成す回転ハンドル式のリング状をなす回転操作部で、114はこの回転操作部113とともに一体回転する回転部材、116は回転操作部113の回転を回転部材114に伝える中間リングである。
【0081】
回転部材114は、図12に示しているようにフランジ部117を有する円筒形状の部材で、その円筒部の外周面に雄ねじ部118が設けられ、この雄ねじ部118において回転部材114が上記のラック部材88の雌ねじ部102に螺合され、ねじ結合されている。
これら回転部材114とラック部材88とは、ねじ送りで図9中左右方向に伸縮する伸縮軸120を構成している。
この伸縮軸120は、回転部材114が一方向に回転させられると、ラック部材88が図9中左方向に前進して伸縮軸120全体が伸張する。
また回転部材114が逆方向に回転させられると、ねじ送りでラック部材88が図9中右方向に後退移動し、伸縮軸120が全体として収縮する。
【0082】
この回転部材114には、径方向外方に突出した突出部122が設けられており、その突出部122の外周面に軸方向に延びる係合歯124が形成されている。
またその内周面には、周方向の複数個所に軸方向に延びる突条126が形成されている。
また径方向外向きのフランジ部117とは反対側の端部に、図12(B)に示すように径方向内向きのフランジ部128が設けられている。
【0083】
一方、中間リング116には図11に示しているように径方向内向きに突出した突出部130が設けられており、この突出部130の内周面に軸方向に延びる係合歯132が形成されている。そしてこの係合歯132が回転部材114の係合歯124に係合させられ、それらの係合作用により中間リング116と回転部材114とが一体に回転するようになっている。
【0084】
この中間リング116には、内周側に内向きの弾性爪134が設けられており、図9に示しているようにこの弾性爪134が、ケース90側の外向きの爪136に弾性的に掛止されている。そしてこれにより、中間リング116がケース90に抜止状態に保持されている。
中間リング116にはまた、周方向の複数個所に回転方向の位置決用の切欠き140が形成されており、更にそれら切欠き140と140との間の位置において、回転操作部113との組付用の弾性爪142が設けられている。
【0085】
他方、回転操作部113には図11に示すように内周面に位置決用の突起144が設けられ、この突起144が、中間リング116の切欠き140に嵌り合っている。そしてそれらの嵌合作用により、中間リング116が回転操作部113と一体に回転するようになっている。
即ち、回転操作部113を回転操作すると、その回転運動が中間リング116に伝えられ、更にこの中間リング116を経て回転部材114に伝えられる。
その結果、回転部材114とラック部材88とから成る上記の伸縮軸120が、図9においてラック部材88の図中左右方向の進退移動を伴って左右方向、即ち軸方向に伸縮動作する。
【0086】
回転操作部113の内周面にはまた掛止部146が設けられ、図11の部分拡大図に示しているように、この掛止部146に対して上記中間リング116の弾性爪142が弾性的に掛止し、そのことによって中間リング116と回転操作部113とが軸方向に組み付けられている。
尚回転操作部113の内周面には、軸方向に延びるリブ状の当り部148が設けられており、図11の部分拡大図に示しているように、この当り部148に対して中間リング116の鍔状部150が軸方向に当ることによって、中間リング116と回転操作部113との軸方向の相対位置が規定されるようになっている。
【0087】
図9及び図11において、152はプッシュ操作によって吐水状態と止水状態とを切り替える吐止水操作部としてのプッシュ操作部で有底円筒形状をなしており、図9に示しているように中間リング116に対して外嵌状態に嵌合されている。
このプッシュ操作部152には、一端に径方向外向きのフランジ部154が設けられており、このフランジ部154の、回転操作部113の内向きのフランジ部156への当接によって、プッシュ操作部152が図9中右方向に抜け防止されている。
【0088】
このプッシュ操作部152は、吐水状態において上記のコイルばね78の付勢力により、フランジ部154が回転操作部113のフランジ部156に当接した状態に保持される(図4参照)。
このプッシュ操作部152の底部には、図11中左向きに立上った円弧形状の立上り部158が設けられている。この立上り部158の外周面には、回転方向の位置決用の軸方向に延びる突条160が設けられている。
プッシュ操作部152は、この円弧形状の立上り部158を、ケース90側の図中右方向の円弧形状の立上り部162に内嵌させ、そして突条160をケース90側の立上り部162に形成した切欠部164に係合させることで、ケース90に対し回転規制される。即ちプッシュ操作部152は、回転阻止された状態で軸方向にのみ移動可能とされている。
【0089】
図9及び図12において、166はプッシュ操作部152のプッシュ操作の度に図9中左方向の押込位置と、図中右方向の引込位置とに押込み及び引込運動する押込部材で円筒形状をなしており、上記のガイド部材106に対して一体回転状態に外嵌され、また回転部材114に対して一体回転状態に内嵌されている。
詳しくはこの押込部材166には、内周面に軸方向の複数の突条167が設けられていて、この突条167が、ガイド部材106の外周面の凹条168に嵌合して、ガイド部材106に対し相対回転規制され、また外周面には軸方向の凹条170が設けられていて、この凹条170が、回転部材114の内周面の突条126に嵌合され、回転部材114に対し相対回転規制されている。
【0090】
この押込部材166は、図9のスラストロック機構(ラッチ機構)172によって、押込位置から引込位置に位置切替えされ、また引込位置から押込位置へと位置切替えされるとともに、押込位置と引込位置にそれぞれ位置保持される。そしてこの押込部材166の図9中左方向への押込みによって、伸縮軸120が伸縮運動を伴うことなく、そのままの状態で図9中左方向に押し出される。
そしてこのことによって図5のパイロット弁体46が図5に示す止水位置に到り、弁装置10が閉弁状態となる。即ち止水状態となる。
また逆に押込部材166が引込運動すると、伸縮軸120が伸縮運動することなく同じ伸縮量を保ったまま、設定ストローク図9中右方向に移動し、これによりパイロット弁体46が図5中左方向に移動して、弁装置10が開弁状態となる。即ち吐水状態となる。
【0091】
この伸縮軸120は、上記のように回転操作部113を回転操作すると、図10に示すようにラック部材88が回転部材114からねじ送りで押し出され或いは引き込まれて、全体が伸縮運動する。そしてその伸縮運動によって、パイロット弁体46を回転操作部113の回転量に応じて、図5及び図6中左右方向に進退移動させ、これにより主弁体32の位置を連続的に変化させて流量調節を行わせる。
【0092】
一方プッシュ操作部152をプッシュ操作したとき、伸縮軸120は先に回転操作部113の操作により伸張又は収縮したときの状態をそのまま保って、全体的に図9中左右方向に設定ストロークだけ前進した位置と後退した位置とに位置切替えされ、従ってこの実施形態では、プッシュ操作部152を操作して止水状態とした後、再びプッシュ操作部152を操作して吐水状態としたときに、前回調節済みの流量で吐水を行わせることができる。
【0093】
押込部材166の図中左端には、図13にも示しているように山形状を成す係合歯176が、周方向に沿って所定ピッチで連設されている。
この係合歯176の図中左面(図14,図15参照)には、回転子174を押込部材166の図9中左向きの押込運動と右向きの引込運動とによって、カム作用で回転させるための駆動カム面178が形成されている。
【0094】
回転子174は、図13に示すようにリング状の部材から成るもので、周方向の複数個所(ここでは3個所)に図中右向きに山形状に突出する係合歯180が設けられている。
また周方向の同じ個所において、径方向内側に突出する形態で鋸歯状を成す係合歯182が同じく図中右向きに設けられている。
【0095】
外側の係合歯180は、一方の斜辺に沿った右面が押込部材166の駆動カム面178に対応した第1従動カム面184とされている。
ここで第1従動カム面184の傾斜角度は、押込部材166側の駆動カム面178と同一角度とされている。
一方内側の係合歯182においてもまた、その斜辺に沿った右面が傾斜した第2従動カム面186とされている。
この実施形態では、第1従動カム面184と第2従動カム面186との傾斜角度が異ならせてあり、第2従動カム面186の傾斜角度が急角度をなし、これに対して第1従動カム面184の傾斜角度が小角度とされている。
【0096】
この回転子174は、図12に示す円筒形状の回転部材114の内部に挿入されて、その軸方向端の内向きのフランジ部128にて回転可能に支持されており、かかるフランジ部128の面上を回転摺動する。
尚、図12に示しているように回転子174には周方向に溝188が設けられているが、この溝は回転子174を回転部材114内部に挿入する際に突条126との干渉を避けるためのもので、フランジ部128に当った状態では溝188は突条126と嵌り合っておらず、回転子174はフランジ部128の面上を自在に回転摺動可能である。
【0097】
図9に示しているようにこの回転子174に対しては、図5のコイルばね78の付勢力が、伝達機構12及び回転部材114を介して図9中右向きに及ぼされている。
即ちこの実施形態では、弁装置10側に配設されたコイルばね78がスラストロック機構120の動作用のばねとして利用されている。
【0098】
上記ガイド部材106には、図13に示しているように外周面にガイド部107が設けられている。
このガイド部107は図中左端に係合歯190を有している。
この係合歯190の左面にもまた、回転子174をカム作用で回転させるための、回転子174の第2従動カム面186に対応した傾斜形状の案内カム面192が形成されている。
ここで案内カム面192の傾斜角度は、回転子174の第2従動カム面186と同じ傾斜角度とされている。
【0099】
このガイド部107にはまた、軸方向に延びる嵌入溝194が周方向に所定間隔で形成されている。
回転子174は、内方への突出形状をなす係合歯182を嵌入溝194に位置させる回転位置となったとき、かかる係合歯182を嵌入溝194の内部に嵌入させることによって、図中右方への後退運動が許容される。
【0100】
一方係合歯190は、回転子174の係合歯182に噛み合ってこれを図中左方向の前進位置に保持してロックする働きをなす。即ちパイロット弁体46を閉弁位置に保持してロックする働きをなす。
本実施形態では、ガイド部材106,回転子174,押込部材166の係合歯176及び上記のコイルばね78等にてスラストロック機構172が構成されている。
【0101】
この実施形態では、プッシュ操作部152をプッシュ操作するごとに、押込部材166が図9中左方向の押込位置と右方向の引込位置とに移動し、これとともにパイロット弁体46が図5に示す閉弁位置と、図6に示す開弁位置とに位置切替えされ、且つスラストロック機構172にてそれぞれの位置に位置保持される。
【0102】
図14及び図15は、プッシュ操作部152の1回のプッシュ操作ごとに、パイロット弁体46を閉弁位置と開弁位置とに位置切替えして、それぞれの位置に位置保持するスラストロック機構172の作用を具体的に表している。
【0103】
図14(I)はパイロット弁体46の閉弁状態即ち止水状態を表しており、このとき回転子174における係合歯182がガイド部材106のガイド部107の係合歯190に噛み合った状態にあって、回転子174は図9中の左端位置即ち前進位置にロック状態に保持される。即ちパイロット弁体46が閉弁状態に保持される。
尚このとき、プッシュ操作部152は押込位置で停止し、押込位置に保持される。
【0104】
この状態で(II)に示しているようにプッシュ操作部152を左に押し込むと、伸縮軸120が一定の伸縮量を保ったまま図9中左向きに前進移動するとともに、回転子174がコイルばね78による右向きの付勢力に抗して左向き(図14においては下向き)に押し出され、回転子174の係合歯182とガイド部107の係合歯190との係合が外れる。
すると押込部材166の駆動カム面178と回転子174の第1従動カム面184とのカム作用で、回転子174が図14中左方向に所定角度回転させられ、そして押込部材166の係合歯176と回転子174の係合歯180とが丁度噛み合った位置(第1ストッパ位置)で回転停止させられる。図14(III)(A)はこのときの状態を表している。
【0105】
このとき、(III)(B)に示しているように回転子174の第2従動カム面186はガイド部107の回転方向の次の案内カム面192に対向した状態となり、そこで(IV)に示しているように回転子174に加えていた押込力を除くと、コイルばね78の付勢力で回転子174が押込部材166とともに微小距離上昇して係合歯182の第2従動カム面186が、ガイド部107の案内カム面192に当接する。
【0106】
そしてそれら案内カム面192と第2従動カム面186とのカム作用で回転子174が更に同図中矢印で示す方向に回転移動して、図14(V)(B)に示すように係合歯182がガイド部107の嵌入溝194の位置に至る。
ここにおいて係合歯182が嵌入溝194に嵌入するに至って、回転子174がプッシュ操作部152及び押込部材166とともにコイルばね78の付勢力によって図9中右向き(図15中上向き)に後退運動させられ(図15(VI))、プッシュ操作部152が図4,図9中右向きに引き込まれて、その引込位置に位置保持されるとともに、伸縮軸120の位置が図9中右位置の後退位置に位置切替えされ、パイロット弁体46が開弁状態(吐水状態)となって、主水路に水の流れが生じ、吐水部からの吐水が行われる。
【0107】
この開弁状態から再びプッシュ操作部152を押し込むと、回転子174が図15の上昇位置から下降せしめられ、そして係合歯182が嵌入溝194から外れると、回転子174が駆動カム面178と第1従動カム面184とのカム作用で、図15(VII)中矢印方向(左方向)に回転移動して、回転子174の係合歯180が押込部材166の回転方向の次の係合歯176に噛み合うに至って、ここに回転子174の次の1ピッチの回転運動がそこで停止せしめられる(図15(VIII))。
【0108】
この状態でプッシュ操作部152に対する押込力を除くと、コイルばね78の付勢力で回転子174が最下位置から微小距離上昇して、係合歯182の第2従動カム面186がガイド部107の案内カム面192に当接するに至り(図15(IX))、更にそれらのカム作用で回転子174が引き続いて図中左方向に回転移動して、回転子174の係合歯182がガイド部107の次の係合歯190に噛み合う位置(第2ストッパ位置)となり、ここに回転子174の回転動がそこで停止させられる(図15(X))。
この図15(X)に示す状態は、図14(I)に示すのと同じ状態であって、ここにパイロット弁体46及び主弁体32が閉弁状態即ち止水状態となる。
【0109】
以上のように本実施形態によれば、操作装置7に加えられた操作力をピニオンギヤ80,86を含む伝達機構12を介して弁装置10の側に伝達するため、操作装置7及び弁装置10をピニオンギヤ80,76周りに角度を変えて設置することが可能となり、水栓装置6を設置するに際して操作装置7や弁装置10の向きを独立に選択でき、水栓装置6の設置の自由度を高めることができる。
また操作装置7と弁装置10とを別々に離して設置できるため、水栓装置6の設置の際のレイアウトの自由度が高まる。
【0110】
またこの実施形態では、弁装置10の側で弁体を直接付勢する状態にコイルばね78を設け、そしてそのコイルばね78の付勢力を伝達機構12全体に及ぼすようにしていることから、ギヤの歯と歯との間のバックラッシに基いて遊び(隙間)が生じていても、図10に示すようにピニオンギヤ80,86とラック部材72,82,85,88のラックギヤ70の各歯面を操作力の伝達方向に接触状態に保つことができ、操作装置7における操作に正確に対応して弁装置10を動作させることができる。
従って操作装置7の回転操作部113を回転操作して吐水の流量を調節するに際し、回転操作部113の操作位置が同一であっても、流量を増大させるときと減少させるときとで流量が異なってしまうヒステリシス現象の発生を防止することができる。
【0111】
本実施形態では、弁装置10を、主弁体32とパイロット弁体46とを有し、パイロット弁体46との間に微小間隙を形成しつつパイロット弁体46の進退移動に追従して主弁体32を同方向に進退移動させるパイロット式弁装置として構成し、そしてそのパイロット弁体46に伝達機構12を連結して、パイロット弁体46に操作力を伝達するようになしている。
【0112】
上記ピニオンギヤ80,86とラック部材72,82,85,88のラックギヤ70との噛合いにより操作力を伝達する伝達機構12では、操作力の伝達効率が低くなるのを避けられないが、その場合においてもこの実施形態によれば、小さな操作荷重で弁装置10を作動させることができ、僅かな力で主弁体32を移動させ得て、軽い操作で弁装置10を操作することができる。
【0113】
本実施形態では、回転操作部113の回転操作により、その操作量に応じた量で伸縮軸120を連続的に伸縮させ、これにより回転操作部113の操作力をパイロット弁体46に伝達して、パイロット弁体46及び主弁体32を回転操作部113の操作量に応じて連続移動させることができる。そしてこのことによって流量調節を連続的に良好に行うことができる。
【0114】
また一方で、プッシュ操作部152をプッシュ操作することで、回転操作部113の操作により伸縮した伸縮軸120を、同一の伸縮量を保ったまま全体的に前進位置と後退位置とで位置切替えし、プッシュ操作部152の操作を伸縮軸120を介して、即ちラック部材88を介して確実にパイロット弁体46に伝達することができる。そしてパイロット弁体46を前進位置と後退位置とに位置切替えし、吐水状態と止水状態との状態切替えを行わせることができる。
【0115】
そしてこの実施形態では、伸縮軸120が回転操作部113の操作により予め所定の伸縮状態とされた後、プッシュ操作部152の操作によりその伸縮量を(伸縮状態を)保ったまま、設定ストローク進退移動して前進位置と後退位置とに位置切替えされるため、止水状態から吐水状態に状態切替えされたとき、予め調節済みの流量で吐水を行わせることができる。
【0116】
しかもこの実施形態の水栓装置6によれば、プッシュ操作部152と回転操作部113とのそれぞれの操作を、ともに同一の始端のラック部材88に加えて、伝達機構12により各操作を弁装置10のパイロット弁体46へと伝達し、かかるパイロット弁体46をそれぞれの操作に応じて動作させることができる。
【0117】
本実施形態ではまた、プッシュ操作部152をプッシュ操作するごとに、押込部材166を押込位置(前進位置)と引込位置(後退位置)とに位置切替えしてそれぞれに位置保持するスラストロック機構172を設け、且つこれを操作装置7の側に備えてあり、このことによってプッシュ操作部152の操作によって吐水と止水とを切り替えたときに、その後も吐水状態と止水状態とをそのまま維持することができる。
またそのスラストロック機構172は操作装置7の側に備えてあるため、スラストロック機構172による切替えの感触が手に直接伝わり、切替動作が行われたことを手で直接感じ取ることができ、使用者に良好な操作感を感じさせることができる。
【0118】
更に本実施形態では、スラストロック機構172に対してプッシュ操作部152の操作方向と直角方向の径方向外側の位置にラック部材88を設け、且つこれをスラストロック機構172に対し径方向に重なるように配置しているため、ラック部材88がスラストロック機構172と並列配置となって、かかるスラストロック機構172を設けることにより操作装置7が操作方向に厚く大型化するのを効果的に回避でき、操作装置7を薄型且つコンパクトに構成することができる。
【0119】
また本実施形態では、弁装置10の弁体を開弁させる方向に設けたコイルばね78を伝達機構12における各ギヤの歯面と歯面とを常に操作力の伝達方向に接触させるためのものとして働かせているとともに、これをスラストロック機構172の動作用のばねとして利用しており、必要なばねの数を少なくすることができ、また構造を簡単化することができる。
【0120】
更に本実施形態では、浴室の壁Wから室内側に突出した洗面器置台5の内部に弁装置10を収納し、また操作装置7を、洗面器置台5よりも上方で壁Wから室内側から突出した上カウンタ部3に設け、そして上側の操作装置7と下側の弁装置10とを伝達機構12にて連結しており、このようにすることで、外観上現れる操作装置7の設置側の上カウンタ部をコンパクトに構成することができ、水栓装置6の設置部の美観,意匠性を高めることができる。
【0121】
また上カウンタ部3に吐水口が併せて設けてあり、このことによって下方の洗面器置台5の上に載せた洗面器に対し、上カウンタ部3の吐水口から良好に吐水を行うことができる。
【0122】
図16は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、上記連結ロッド84に代えて、金属ワイヤー等可撓性且つ非伸縮性の連結部材200を用いたもので、この実施形態によれば、障害物202等がある場合において、連結部材200を滑車204に掛けるようにして連結部材200を曲り状態に配置することができる。
ここで連結部材200は、上記コイルばね78の付勢力によって常時引張状態に保持される。
【0123】
このようにすれば、操作装置7から弁装置10への操作力の伝達経路上に障害物202があっても、その障害物202との干渉を回避して伝達機構12を配置し、操作装置7と弁装置10とを良好に作動的に連結状態とすることができる。
【0124】
またその連結部材200は常時引張状態に保持されているため、連結部材200が緩むことによって操作力が良好に伝達されなくなるのを防止し、操作装置7に加えられた操作力を連結部材200を介して確実に弁装置10へと伝達し、これを動作させることができる。
【0125】
図17は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例では、弁装置10における主弁体32をコイルばね78にて直接閉弁方向に付勢し、その付勢力に基いて主弁体32を対応する主弁座38に対し軸方向に押し付ける状態に閉弁させるようになした例である。
【0126】
尚、図17中206はラック部材を、208はラック部材206の頭部を、210はその頭部208に設けられた雄ねじ部を、212は回転部材を、214は回転部材212の内周面の雌ねじ部をそれぞれ表している。
回転部材212とラック部材206とは、雄ねじ部210と雌ねじ部214とで螺合されており、ラック部材206と回転部材212とで伸縮軸120が構成されている。
【0127】
次に図18〜図21は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、湯水混合弁装置における湯側弁体の開閉の切替え及び開弁量調節に適用した場合の例で、図中220は弁装置(ここでは湯水混合弁装置)のボデーで、水の流入口222及びこれに続く流入通路226,湯の流入口224及びこれに続く湯の流入通路228が設けられている。
流入通路226,228を通じて流入した水と湯とは、混合室230で混合された上、2次側の流出通路232を通じ、流出口234から流出する。
尚、図18及び図19は弁装置10が水吐水状態に切り替った状態を表しており、従ってこのときには流出口234から水が流出する。
【0128】
一方、図20は弁装置10が湯水混合状態に切り替った状態を表しており、このときには水と湯とが混合室230に流入してそこで混合され、混合水が流出口234から流出する。
尚、236は後述の水側の背圧室248を形成する背圧室形成部材を兼ねたキャップで、ボデー220に固定されている。
【0129】
この実施形態において、弁装置10は、ダイヤフラム弁から成る湯側主弁体238,水側主弁体240を有している。
而して弁装置10には、湯側主弁体238に対応して湯側主弁座242,湯側背圧室246,湯側パイロット弁体250,湯側パイロット弁座254が設けられ、また水側主弁体240に対応して水側主弁座244,水側背圧室248,水側パイロット弁体252,水側パイロット弁座256が設けられている。
【0130】
湯側主弁体238,水側主弁体240は、基本的に図5,図6に示す主弁体32と同様の構成を有するもので、また湯側パイロット弁体250,水側パイロット弁体252も、図5及び図6のパイロット弁体46と基本的に同様の構成を有している。
更に湯側パイロット弁座254,水側パイロット弁座256も図5及び図6に示すパイロット弁座48と基本的に同様の構成を有している。
ここではそれらについての詳しい説明は省略し、対応する部分に対応する符号のみを付して示してある。
但し湯側主弁体238と水側主弁体240とは、図中左右逆向きに設けられている。即ち湯側主弁体238は湯側主弁座242に向けて図中右方向に前進移動し、また水側主弁体240は水側主弁座244に向けて図中左方向に前進移動する。
【0131】
即ち湯側主弁体238は、湯側主弁座242に対し図中左右方向に進退移動し、弁開度を変化させる。
詳しくは、湯側主弁体238は湯側主弁座242への着座によって閉弁状態となり、また湯側主弁座242から図中左向きに離間することによって開弁し、そしてその開弁量の変化に応じて混合室230への湯流入量を変化させる。
【0132】
一方水側主弁体240は、水側主弁座244に対して図中左右方向に進退移動し、弁開度を変化させる。
詳しくは、水側主弁座244への着座によって閉弁状態となり、また水側主弁座244から図中右向きに離間することによって開弁し、そしてその開弁量の変化に応じて混合室230への水の流入量を変化させる。
但しこの弁装置10では、湯側主弁体238と水側主弁体240とは互いに逆の関係でその開弁量を大小変化させ、湯と水との流入量を互いに逆の関係で増減変化させる。
【0133】
また湯側背圧室246は、内部の圧力を湯側主弁体238に対し図中右方向の閉弁方向の押圧力として作用させ、また水側背圧室248は、内部の圧力を水側主弁体240に対し図中左方向の閉弁方向の押圧力として作用させる。
【0134】
上記湯側パイロット弁体250,水側パイロット弁体252もまた、互いに逆の関係で図中左右方向に進退移動する。
即ち湯側パイロット弁体250は、図中右方向に前進移動して最終的に閉弁状態となり、また左方向に後退移動することによって開弁状態となる。
一方水側パイロット弁体252は、図中左方向に前進移動して最終的に閉弁状態となり、また図中右方向に後退移動して開弁状態となる。
但しこの実施形態において、湯側パイロット弁体250と水側パイロット弁体252とは、共通の作用軸(温調軸)66に一体に構成されている。
【0135】
この弁装置10では、図21に示しているように湯側主弁体238,水側主弁体240の何れもが開弁状態の下で、湯側パイロット弁体250が図中右方向に前進移動すると、湯側主弁体238が湯側パイロット弁体250との間に一定の微小な追従間隙を保持しつつ、湯側パイロット弁体250に追従して同じ右方向に前進移動し、湯側主弁座242との間の間隙Sを減少させ、混合室230への湯の流入量を連続的に減少変化させる。
【0136】
このとき、水側主弁体240は水側パイロット弁体252の図中右方向の後退移動により、水側パイロット弁体252との間に一定の微小な追従間隙を保持しつつ、水側パイロット弁体252の図中右方向の後退移動に追従して右方向に後退移動し、水側主弁座244との間の間隙Sを連続的に増大させ、混合室230への水の流入量を増大変化させる。
そしてこれらによって、湯流入量に対する水流入量の比率を連続的に増大変化させ、混合水温度を連続的に低下させる。
【0137】
また逆に湯側パイロット弁体250が図中左方向に後退移動すると、湯側主弁体238がこれに追従して図中左方向に後退移動し、図21(II)に示しているように湯側主弁座242との間の間隙Sを連続的に増大させ、混合室230への湯の流入量を連続的に増大変化させる。
【0138】
またこのとき、水側パイロット弁体252は図中左方向に前進移動し、これに伴って水側主弁体240が水側パイロット弁体252に追従して図中左方向に前進移動し、水側主弁座244との間の間隙Sを連続的に減少させ、混合室230への水の流入量を連続的に減少変化させる。
これにより混合水温度が連続的に上昇し、そして温度上昇した混合水が流出口234から流出する。
【0139】
図18に示しているように、上記伝達機構12におけるラック部材72は、球面軸受部74を介して作用軸66に連結されている。
またこの実施形態においては、図1〜図15の上記第1の実施形態の回転操作部113が、湯側パイロット弁体250及び湯側主弁体238の開弁量を調節することによって(つまりは混合弁258の位置調節によって)湯水の混合比率、即ち混合水温度を調節する温調操作部として構成され、また第1の実施形態におけるプッシュ操作部152が、湯側パイロット弁体250及び湯側主弁体238の開閉操作部(つまりは混合水吐水と水吐水との切替操作部)として構成されている。
【0140】
この実施形態では、回転操作部113を回転操作すると、その操作力が伝達機構12を介して作用軸66に伝えられ、作用軸66が図中左右方向に進退移動させられる。
即ちこれと一体に構成された湯側パイロット弁体250,水側パイロット弁体252が互いに逆の関係で連続的に進退移動させられる。
そしてこれにより、湯側主弁体238と水側主弁体240とが互いに逆の関係で開弁量を大小変化させ、混合水温度を連続的に高低変化させる。
尚この実施形態においても、回転操作部113の回転操作によっては湯側主弁体238が閉弁状態とならないように、回転操作部113が回転規制されている。
【0141】
一方プッシュ操作部152をプッシュ操作、即ち押込操作するごとに、湯側パイロット弁体250及び湯側主弁体238が図20に示す開弁状態と、図18及び図19に示す閉弁状態とに切り替り、且つ上記のスラストロック機構172によりそれぞれの状態に位置保持される。
即ち弁装置10が、水のみを吐水する水吐水状態と、混合水を吐水する混合水吐水状態とに切り替る。
而して混合水吐水状態に切り替ったとき、湯側主弁体238及び水側主弁体240は前回調節済みの開弁量で開弁した状態となり、前回設定した混合水温度で混合水を流出させる。
【0142】
尚この例は、所謂ミキシングタイプの湯水混合弁装置の例であるが、本発明は、混合水温度の変化によって付勢力を変化させる感温ばねを有し、混合水温度を設定温度に自動的に調節する自動温度調節機能付きの湯水混合弁装置にも適用可能なものである。
【0143】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明ではラッチ機構として上記スラスト機構に代えてハートカム機構その他の機構を用いることも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の一実施形態である遠隔操作式の水栓装置を備えた浴室の全体図である。
【図2】同実施形態の遠隔操作式の水栓装置を取付状態で示す斜視図である。
【図3】同実施形態における伝達機構の部分断面斜視図である。
【図4】同実施形態における操作装置の部分断面斜視図である。
【図5】同実施形態における弁装置の断面図である。
【図6】図5の弁装置の開弁状態を示す図である。
【図7】同弁装置の作用説明図である。
【図8】図7に続く作用説明図である。
【図9】図4の操作装置の側面断面図である。
【図10】同実施形態における伝達機構を模式的に示した図である。
【図11】同実施形態における操作装置を各部品に分解して示す斜視図である。
【図12】同実施形態におけるスラストロック機構を各部品に分解して示す斜視図である。
【図13】図12の要部を更に拡大して示す図である。
【図14】同実施形態におけるスラストロック機構の作用説明図である。
【図15】図14に続く作用説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【図17】本発明の更に他の実施形態を模式的に表した図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態の要部を示した図である。
【図19】図18の更に要部を拡大して示した図である。
【図20】同実施形態を異なった作用状態で示した図である。
【図21】同実施形態の作用説明図である。
【符号の説明】
【0145】
W 壁
3 上カウンタ部
4 連絡部
5 洗面器置台
6 水栓装置
7 操作装置
10 弁装置
12 伝達機構
32 主弁体
46 パイロット弁体
72,82,85,88 ラック部材
78 コイルばね
80,86 ピニオンギヤ
113 回転操作部
114 回転部材
120 伸縮軸
152 プッシュ操作部
166 押込部材
172 スラストロック機構(ラッチ機構)
200 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置と、該弁装置を操作する操作装置とを離隔して配置し、該操作装置と弁装置とを、該操作装置に加えられた操作力をラック部材とピニオンギヤとで交互に運動変換して伝達する操作力の伝達機構で連結するとともに、前記弁装置の側で弁体を直接付勢する状態に且つ付勢力を伝達機構全体に及ぼす状態にばねを設けたことを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項2】
請求項1において、何れかの前記ラック部材が操作力の伝達経路の方向に分割されていて、該分割されたラック部材同士が可撓性且つ非伸縮性の連結部材にて連結されており、且つ前記ばねが該連結部材を引張させる方向に設けてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記弁装置が主弁体とパイロット弁体とを有し、該パイロット弁体との間に微小間隙を形成しつつ該パイロット弁体の進退移動に追従して該主弁体を同方向に進退移動させるパイロット式弁装置であり、該パイロット弁体に対して前記伝達機構が連結されていて、該パイロット弁体に操作力を伝達するようになしてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が前記弁体を開閉させるプッシュ操作式のプッシュ操作部と、該プッシュ操作部のプッシュ操作で押込運動する押込部材とを有しており、該押込部材の押込運動及び押込位置から引込位置への引込運動により、前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材を設定ストロークだけ前進及び後退移動させて、該ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、前記弁体の開弁状態と閉弁状態との状態切替えを行うようになしてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が前記弁体の開弁量の調節を行う回転操作部を有していることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項6】
請求項5において、前記回転操作部の回転操作により前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材を、該回転操作部の回転操作量に応じた進退量で連続的に進退移動させ、該ラック部材の移動に伴う前記弁体の連続的な進退移動により該弁体の開弁量の調節を行うようになしてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項7】
請求項6において、前記操作装置が前記回転操作部の回転とともに回転する回転部材を有していて、該回転部材と前記ラック部材とがねじ結合され、該回転部材の回転に伴って該ラック部材がねじ送りで進退移動するものとなしてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項8】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記操作装置が、前記弁体を開閉させるプッシュ操作部及び該プッシュ操作部のプッシュ操作により押し込まれる押込部材と、前記弁体の開弁量の調節を行う回転操作部及び該回転操作部とともに回転する回転部材とを有しており、
該回転部材は前記伝達機構の前記操作装置側の始端のラック部材とねじ結合されていて、それら回転部材とラック部材とがねじ送りで伸縮する伸縮軸を構成しており、
前記プッシュ操作部のプッシュ操作による前記押込部材の押込運動及び押込位置から引込位置への引込運動により、該伸縮軸を伸縮させることなく全体的に設定ストロークだけ前進及び後退移動させて前記ラック部材を前進位置と後退位置とで位置切替えし、前記弁体の開弁状態と閉弁状態の状態切替えを行うとともに、
前記回転操作部の回転操作に伴う前記回転部材の回転により前記伸縮軸をねじ送りで伸縮させて、前記ラック部材を該回転操作部の回転操作量に応じて連続的に進退移動させ、前記弁体の開弁量の調節を行うようになしてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項9】
請求項4若しくは8の何れかにおいて、前記プッシュ操作部をプッシュ操作するごとに前記押込部材を前記押込位置と引込位置とに位置切替えし且つ位置保持するラッチ機構が設けてあり、且つ該ラッチ機構が、前記操作装置に備えてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項10】
請求項9において、前記ラッチ機構に対して前記ラック部材が前記プッシュ操作部の操作方向と直角方向の径方向外側の位置に且つ該径方向に重なる位置に配置してあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項11】
請求項9,10の何れかにおいて、前記ばねは、前記弁装置の前記弁体を開弁させる方向に付勢力を及ぼすように設けてあることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかにおいて、前記弁装置が浴室の壁から室内側に突出した洗面器置台の内部に、前記操作装置が該洗面器置台よりも上方で前記壁から室内側に突出したカウンタ部にそれぞれ配置してあり、前記伝達機構がそれら操作装置と弁装置と上下に連結していることを特徴とする遠隔操作式の水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−256883(P2009−256883A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104093(P2008−104093)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】