説明

遠隔操作式排水栓装置

【課題】力の弱い人でも容易に開閉でき、水密性の維持が容易な遠隔操作式排水栓を提供する。
【解決手段】遠隔操作式排水栓装置を、槽体の底面に設けられた排水口1と、該排水口1を開閉する弁部材2と、弁部材2に備えられた第一磁石部3と、第一磁石部3に反発するように配置固定され、磁力の反発で弁部材2を浮遊させる第二磁石部4と、第二磁石部4の近傍に配置されて、通電時に第二磁石部4を消磁する磁界を生じる電磁石部5と、電磁石部5に適切な電流・電圧で電気の供給を行う電源部6と、電磁石部5への通電の制御を行うことで、排水口1の開閉を操作する操作部7と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面台や浴槽等の排水口に使用される、遠隔操作式排水栓装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗面台や浴槽など、排水機器の槽体の底面には、使用によって生じた排水を下水側に排水するために排水口が設けられている。そして、この排水口を必要に応じて閉口するために、ゴム栓などの弁部材が設けられている場合が多い。この排水口を閉塞する弁部材などの装置の中で、特に排水口から離れた位置にある操作部に操作を加えることで、排水口を遠隔的に開閉できるようにした排水装置を遠隔操作式排水栓装置と呼ぶ。
従来良く知られた遠隔操作式排水栓装置としては、以下のような遠隔操作式排水栓装置がある。
【0003】
以下に、従来の遠隔操作式排水栓装置を、図面を参照しつつ説明する。図9に示した従来の遠隔操作式排水栓装置は、図9に示したような槽体としての洗面台(洗面ボウル)に取り付けられた排水栓本体と、弁部材と、操作部と、T字継手と、レリースワイヤと、保持機構部と、から構成される。
洗面台はキャビネットの上に槽体である洗面ボウルを配置した排水機器であり、洗面ボウルの底部に後記する取付口を開口してなる。
排水栓本体は、円筒状であって外側面に雄ねじを有すると共に、上端に外側方向に突出するフランジを備えた部材であり、その内部に、浴槽内の排水を下水側へと排水するための排水口を設けてなる。
T字継手は、90度倒したT字状に筒体を組み合わせたものであって、筒体の上方の開口には排水栓本体の雄ねじに螺合する雌ねじを有する袋ナットを、筒体の下方の開口には保持機構部の収納部を、それぞれ備えてなり、また側面にも排水を排出する排出口を備えて成る。
弁部材は排水口上端を閉口するための部材であって、平面視円形の略平板状の弁部と、弁部の下面中央部分から垂下した弁軸と、弁軸にスライド自在に備えられたヘアキャッチャーと、からなる。
操作部は、部材を遠隔的に操作するための押しボタンであって、洗面台の糟体である洗面ボウルの開口周縁に配置される。
レリースワイヤは、筒状のアウターチューブ、金属のより線から成るインナーワイヤ、から構成され、インナーワイヤはアウターチューブ内に進退自在に配置される。尚、また、当該レリースワイヤのT字継手側端部には保持機構部を、操作部側端部にはインナーワイヤを操作部側に付勢するスプリングを、それぞれ備えて成る。
保持機構部は、ノック式ボールペンの保持機構等として周知であるスラストロック機構(図示せず)を内蔵した部材であって、中央にスライド軸を備え、スライド軸の後端を押し込む毎に、スライド軸の先端を突出させて固定保持/固定を解除してスライド軸を後退、を繰り返す機能を有している。当該保持部機構部は、T字継手の収納部に収納され、収納部に収納され配置固定された状態では、スライド軸の後端(収納部収納時には下端)がレリースワイヤのインナーワイヤ先端に当接するように、また、スライド軸の先端(収納部収納時には上端)が弁軸の直下位置になるように固定配置される。
操作部側のレリースワイヤ端部に接続する構成である。尚、当該保持機構部は、レリースワイヤのインナーワイヤの進退を保持する機構である。
【0004】
前記した従来例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように施工・取り付けされる。
洗面ボウルの取付口に上方から排水栓本体を挿入し、排水栓本体の下方から固定用の板ナットを螺合させ、排水栓本体のフランジ下面と板ナット上面で取付口周縁を挟持するようにして固定する。次に、排水栓本体の下端に袋ナットを利用してエルボ部材を接続する。
そして、操作部を取付部に挿通して固定し、更に操作部にレリースワイヤを取り付けた後、エルボ部材の収納部に保持機構部を収納した上で、ナットなどを用いてレリースワイヤの他端を接続する。最後に排出口と床下配管の間を配管で接続し、排水栓本体内の排水口内に弁部材を配置して遠隔操作式排水栓装置の取付が終了する。尚、ここで言う「配管」とは、単に円筒状の管体の部材のことを指し示すものである。一方、後述される「排水配管」とは、洗面ボウルに設けられた排水口から床下配管までの排水の流路としての配管全体を指し示すものであって、洗面ボウルに遠隔操作式排水栓装置が採用されている場合には、遠隔操作式排水栓装置も「排水配管」の一部である。
【0005】
上記のように取り付けられた従来例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように作動する。
まず弁部材が降下し、排水口が閉口されている状態にする。この状態の時に、操作部に押し込み操作を加えると、レリースワイヤのインナーワイヤを介して、保持機構部のスライド軸後端が押圧され、スライド軸の先端が突出して固定された状態となる。このとき、スライド軸の先端が、弁軸を押し上げるため、弁軸ごと弁部材が押し上げられ、弁部材も持ち上がって排水口が開口する。この状態から再度操作部に押し込み操作を行うと、再びレリースワイヤのインナーワイヤを介して、保持機構部のスライド軸後端が押圧され、スライド軸の固定が解除され、スライド軸が自重で降下し、再び排水口が閉口された状態となる。以降、この過程を繰り返すことで、排水口を遠隔操作的に、自在に開閉できる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−152505号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら前記した従来例での遠隔操作式排水栓装置では以下のような問題点があった。
1.従来の遠隔操作式排水栓装置では、レリースワイヤを介して、操作部に操作を加える使用者の力によってインナーワイヤを動かし、弁部材の上昇を行っている。ところが槽体が満水の場合、水圧は相当なものになるため、これを開閉させるためには相当な力が必要となり、老人や子供、身体障害者など、力のあまり無い使用者には使いにくい機材となっていた。
2.操作部に加えた操作を弁部材に伝達するため、上記従来例ではレリースワイヤを利用している。このようにレリースワイヤを操作部から弁部材まで配置するためには、操作部から弁部材までの間に一本の通路を形成する必要があり、この通路形成のため、上記従来例ではエルボ部材に挿通孔などを設けている。このように遠隔操作式排水栓装置を採用した場合、挿通孔を設けるなど各部材は遠隔操作式排水栓装置専用の部材を用いなければならなかった。このため、遠隔操作式排水栓装置を使用しない排水配管の部材と共通化を図ることが出来ず、部材のコストダウンや管理に問題を有していた。また、既に施工されている排水配管に遠隔操作式排水栓装置を後付的に追加することも、専用部材を交換することが困難であり、実際上不可能であった。更に挿通孔部分など接続箇所が増加したことから、水密性を確保し、漏水を生じないようにしなければならない箇所も増加するなどの問題を有していた。
本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記問題点に鑑み発明されたもので、老人や子供、身体障害者など、使用者があまり力の無い場合でも容易に使用することができ、必要に応じて後付が可能で、且つ水密性の維持が容易な遠隔操作式排水栓装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、槽体の底面に設けられた排水口(1)と、該排水口(1)を開閉する弁部材(2)と、弁部材(2)に備えられた第一磁石部(3)と、第一磁石部(3)に反発するように配置固定され、磁力の反発で弁部材(2)を浮遊させる第二磁石部と、第二磁石部の近傍に配置されて、通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部と、電磁石部に適切な電流・電圧で電気の供給を行う電源部(4)と、電磁石部への通電の制御を行うことで、排水口(1)の開閉を操作する操作部(5)と、から構成されたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
請求項2に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、弁部材(2)が排水口(1)から飛び出すことを防止するストッパー(6)を備えた事を特徴とする、段落0008に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0010】
請求項3に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部が、排水口(1)から続く排水の流路外に配置されていることを特徴とする段落0008又は段落0009に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】
請求項4に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部が、排水口(1)から続く排水の流路内に配置されると共に、その電磁石部に電気を供給する手段が、非接触電源を利用したものであることを特徴とする、段落0008又は段落0009に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0012】
請求項5に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置が、非接触電源に充電機能を備えた、非接触充電を利用したものであることを特徴とする段落0011に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0013】
請求項6に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、遠隔操作式排水栓装置を、排水口(1)から続く排水の流路内に配置される部材と、排水の流路外に配置される部材とに分けて、それぞれを遠隔操作式排水栓装置が備えられる排水配管から着脱自在とできるようにユニット化したことを特徴とする、段落0011又は段落0012に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項7に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置において、操作部(5)から電磁石部への通電の制御を、電波によって行うことで、排水口(1)の開閉を操作するように構成したことを特徴とする、段落0008乃至段落0013のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0015】
請求項8に記載の本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記遠隔操作式排水栓装置を、洗面ボウル(B)において採用した事を特徴とする、段落0008乃至段落0014のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の遠隔操作式排水栓装置は、上記のように構成したため、以下のような優れた効果を奏する。
1)請求項1に記載の本発明では、磁力と電力を利用して、非通電時には磁石の反発によって排水口が開口し、通電時には弁部材が降下して排水口を閉口する、電動式の遠隔操作式排水栓装置として構成した。このため、使用者にあまり力が無くても、容易に排水口を開閉することができる。
2)排水口が閉口し、且つ槽体が満水のとき、確実に排水口を開口させるためには、第一磁石部と第二磁石部が水圧に負けない程度に強力に反発しなければ成らない。一方、第一磁石部と第二磁石部が強力に反発しすぎると、槽体内に水が無く、且つ開口状態のとき、弁部材が反発力によって排水口から外れてしまう。しかし、請求項2に記載の本発明では、抜け防止の為、開口状態から更に弁部材が抜けることのないようにストッパーを採用したため、弁部材が排水口から外れることのない遠隔操作式排水栓装置とする事ができる。
3)請求項3に記載の本発明では、電磁石部が、排水の流路外に配置されているため、通電部分が排水に直接晒されることがない。このため、通電する部材が水に濡れて漏電したり、水を浴びて部材が劣化(錆など)することがほとんどない。
4)請求項4に記載の本発明では、電磁石部分を排水口内に配置することで、電磁石の効率を向上させることができる。また、排水口内に電磁石を配置しているが、電力の供給は非接触電源を利用しているため、配線を排水口等の内外に通す必要が無く、各部材に高い水密性を容易に確保することができる。
5)請求項5に記載の本発明では、電磁石側に充電池を備えて成る。このため、不要な電力供給を抑制し、且つ動作の安定性を確保することができる。
6)請求項6に記載の本発明では遠隔操作式の各部材を着脱自在のユニットとしたことで、遠隔操作式ではない通常の排水栓装置との部材の共通化を図ることができる。
7)請求項7に記載の本発明では、操作部から電磁石部への通電の制御を電波によって行うように構成した事で、従来のワイヤー式と異なり、各部にワイヤーを通すための開口を設ける必要が無くなった。このため、操作部を2つなど複数用意し、別々の場所から操作することが可能になった。また、特に請求項6に記載した遠隔操作式排水栓装置にこの電波による制御を採用した場合、遠隔操作の機能が無い排水栓装置に、遠隔操作式排水栓装置の機能を後付けする事ができる。
8)本発明の遠隔操作式排水栓装置は、非通電時に排水口が開口し、通電時に排水口が閉口する。このため、請求項8に記載したように、洗面台のような通常排水口を開口している排水機器において使用電力が少なくて済み好適である。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の遠隔操作式排水栓装置の第一実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図4に示した、本発明の遠隔操作式排水栓装置の第一実施例は、図1に示した、洗面台(C)に備えられた槽体としての洗面ボウル(B)に取り付けられ、更に以下に記載する排水栓本体(7)、弁部材(2)、操作部(5)、エルボ部材(9)、エルボ部材(9)の内部に配置される内部ユニット部(12)、エルボ部材(9)の外周部分に配置される外部ユニット部(13)、電源部(4)、その他の部材から構成される。
洗面台(C)はキャビネットの上に槽体である洗面ボウル(B)を配置した排水機器であり、洗面ボウル(B)の底部に後記する取付口を開口してなる。また、洗面ボウル(B)の天板上には、操作部(5)を取り付けるための開口である取付部を設けて成る。
排水栓本体(7)は、円筒状であって外側面に雄ねじを有すると共に、上端に外側方向に突出するフランジ(8)を備えた部材であり、その内部に、浴槽内の排水を下水側へと排水するための排水口(1)を設けてなる。
エルボ部材(9)は、上記排水栓本体(7)の雄ねじと螺合する雌ねじを備えた有底円筒形状の部材であって、側面に排水を排出する排出口を備えてなる。また、エルボ部材(9)の内部には、内部ユニット部(12)を配置固定する第一取付部(10)を備えてなり、また、外側面には外部ユニット部(13)を配置固定する第二取付部(11)を備えてなる。
弁部材(2)は排水口(1)上端を閉口するための部材であって、平面視円形の略平板状の弁部(14)と、弁部(14)の下面中央部分から垂下した弁軸(15)と、弁軸(15)にスライド自在に備えられたヘアキャッチャー(16)と、弁軸(15)の下端に備えられた永久磁石から成る第一磁石部(3)と、排水口(1)上方を安定して上下動するためのガイド部と兼用した、排水口(1)の開口時排水口(1)から弁部材(2)が抜脱する事を防止するストッパー(6)を備えてなる。
内部ユニット部(12)はエルボ部材(9)の第一取付部(10)に備えられる部材であって、その内部に、施工完了時、第一磁石部(3)と反発する方向に配置固定される永久磁石から成る第二磁石部を備えて成る。
外部ユニット部(13)はエルボ部材(9)の第二取付部(11)に備えられる部材であって、その内部に、施工完了時、通電した際、第二磁石部の磁界と反対方向の磁界を発生させ、第二磁石部の磁界を消磁するように作用する電磁石部を備えて成る。
電源部(4)は、一般家庭の電源(コンセント)から得られた電気を、電気回路を利用して適切な電流・電圧に調整し、外部ユニット部(13)の電磁石部に出力するように接続して成る。
操作部(5)は洗面台(C)の天板上に配置される部材であって、配線によって電気回路に接続されて成り、電磁石部への通電を制御することで、弁部材(2)を上下動させ、排水口(1)の開閉を行う。
【0018】
段落0017に記載した第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように洗面台(C)に施工・取り付けされる。
洗面ボウル(B)の取付口に上方から排水栓本体(7)を挿入し、排水栓本体(7)の下方からエルボ部材(9)を螺合させ、排水栓本体(7)のフランジ(8)下面とエルボ部材(9)上面で取付口周縁を挟持するようにして固定する。
また、電源部(4)をキャビネット内の適宜位置に設置する。また、操作部(5)の配線を洗面ボウル(B)の天板上に設けた取付部を挿通させた上で、操作部(5)を取付部に取り付ける。
次に、第一取付部(10)に内部ユニット部(12)を、第二取付部(11)に外部ユニット部(13)を、それぞれ取付固定する。
更に外部ユニット部(13)の電磁石部、電源部(4)、操作部(5)をそれぞれ配線で適宜接続する。
最後に排水口(1)に弁部材(2)のストッパー(6)を抜脱しないように係合させて取り付け、エルボ部材(9)の排出口を配管(U)を用いて床下配管に接続し、第一実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0019】
前記のように取り付けられた本発明の第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように作動する。
操作部(5)を操作して、排水口(1)を開口した状態、即ち電磁石部に通電していない状態とする。
この状態では、第一磁石部(3)と第二磁石部が反発し、且つ第二磁石部が固定されていることから、図2に示したように弁部材(2)が上昇して排水口(1)が開口状態となる。但し、ガイド部兼用のストッパー(6)が機能するので排水口(1)から弁部材(2)が抜脱する事はない。また、ガイド部兼用のストッパー(6)が機能するので、弁部材(2)が排水口(1)を閉塞できないような位置にずれてしまうような事はない。
この状態から操作部(5)に操作を加えて、電磁石部に通電した状態とすると、電磁石部が発生させた、第二磁石部とは逆向きの磁界によって第二磁石部の磁界がうち消され、第一磁石部(3)と第二磁石部の反発が無くなり、ガイド部によって弁部材(2)が逸れることなく自重で降下して弁部(14)が排水口(1)を覆うため、図3に示したように排水口(1)が閉口状態となる。
この状態から再度操作部(5)に操作を加えて電磁石部への通電を停止すると、第二磁石部を消磁していた電磁石部の磁界が消失し、再び第一磁石部(3)と第二磁石部が反発して弁部材(2)を上昇させ図2に示したように排水口(1)が開口状態となる。
以後この動作を繰り返すことで、遠隔操作的に排水口(1)を開口/閉口する事が出来る。
【0020】
上記第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は以下のような効果を奏する。
上記第一実施例の遠隔操作式排水栓装置は、その開閉動作を、磁石部の反発力と電磁石への通電によって生じる磁界とを利用して行うように構成してなる。人力を利用しないため、使用者にあまり力が無くても、容易に排水口(1)を開閉することができる。
また、弁部材(2)にストッパー(6)を備えて構成したため、動作を確実にするために強力な磁石を採用した場合でも、弁部材(2)が排水口(1)から抜脱する事がない。
また、駆動部分を弁部材(2)、内部ユニット部(12)、外部ユニット部(13)としてそれぞれ完全に独立させて構成すると共に、電磁石部等の通電する部材を排水の流路外に配置しているため、通電部分が排水に直接晒されることがない。よって、電磁石部など通電する部材が水に濡れて漏電したり、水を浴びて部材が劣化(錆など)することがほとんどない。
また、遠隔操作式排水栓装置としての機能部分をユニット化して排水栓装置から着脱自在とし、更に磁力の作用で、流路の内外を連通する穴などを設けなくても、壁面を介して開閉の機能が得られるように構成してなる。このため、排水栓本体(7)やエルボ部材(9)などの部材は、通常の遠隔操作式でない排水栓装置の部材と共有化することができ、部材単価の削減や、部材管理の簡易化を図ることができる。
また、上記のような遠隔操作式排水栓装置は、非通電時に排水口(1)が開口し、通電時に排水口(1)が閉口するため、特に実施例のような、通常排水口(1)を開口している洗面台(C)への使用において使用電力が少なくて済み好適である。
【0021】
以下に、本発明の遠隔操作式排水栓装置の第二実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図5乃至図8に示した、本発明の遠隔操作式排水栓装置の第二実施例は、図5に示した洗面台(C)に備えられた槽体としての洗面ボウル(B)に取り付けられ、更に以下に記載する排水栓本体(7)、弁部材(2)、操作部(5)、エルボ部材(9)、エルボ部材(9)の内部に配置される内部ユニット部(12)、エルボ部材(9)の外周部分に配置される外部ユニット部(13)、電源部(4)、その他の部材から構成される。
洗面台(C)はキャビネットの上に槽体である洗面ボウル(B)を配置した排水機器であり、洗面ボウル(B)の底部に後記する取付口を開口してなる。
排水栓本体(7)は、円筒状であって外側面に雄ねじを有すると共に、上端に外側方向に突出するフランジ(8)を備えた部材であり、その内部に、浴槽内の排水を下水側へと排水するための排水口(1)を設けてなる。また、排水口(1)内部には、内部ユニット部(12)を配置固定する第一取付部(10)を備えてなる。
エルボ部材(9)は、エルボ上部(9a)、エルボ下部(9b)の二つの部材から成る、上記排水栓本体(7)の雄ねじと螺合する雌ねじを備えた有底円筒形状の部材であって、側面に排水を排出する排出口を備えてなる。また、エルボ部材(9)の内部には、内部ユニット部(12)を配置固定する第一取付部(10)を備えてなり、また、外側面には外部ユニット部(13)を配置固定する第二取付部(11)を備えてなる。
弁部材(2)は排水口(1)上端を閉口するための部材であって、平面視円形の略平板状の弁部(14)と、弁部(14)の下面中央部分から垂下した弁軸(15)と、弁軸(15)にスライド自在に備えられたヘアキャッチャー(16)と、弁軸(15)の下端に備えられた永久磁石から成る第一磁石部(3)と、排水口(1)上方を安定して上下動するためのガイド部と兼用した、排水口(1)の開口時排水口(1)から弁部材(2)が抜脱する事を防止するストッパー(6)を備えてなる。
内部ユニット部(12)は排水口(1)内の第一取付部(10)に取り付けられる部材であって、その内部に、施工完了時、第一磁石部(3)と反発する方向に配置固定される永久磁石から成る第二磁石部と、その第二磁石部の磁界と反対方向の磁界を発生させ、第二磁石部の磁界を消磁するように作用する電磁石部、及びその電磁石部に接続された、蓄電機能を備えた非接触電源の出力側端末を備えて成る。
外部ユニット部(13)はエルボ部材(9)の第二取付部(11)に備えられる部材であって、その内部に、非接触電源の入力側端末を備えて成る。電源は一般家庭の電源(コンセント)を利用し、電気回路を利用して適切な電流・電圧に調整したものを外部ユニット部(13)の非接触電源の入力側端末に接続して成る。
操作部(5)は洗面台(C)の天板上に配置される部材であって、操作部(5)から電磁石部への通電の制御を、電波の発信を利用して行うことによって、弁部材(2)を上下動させ、排水口(1)の開閉を行う部材である。
【0022】
非接触電源とは、絶縁トランスの理論を利用して構成された電源の接続構造であり、電動歯ブラシやワイヤレス電話の子機などに利用されている。
その構造を簡単に説明すると、一次側トランスを備えた非接触電源の入力側端末と、同様に、二次側トランスを備えた非接触電源の出力側端末を、適切な位置に配置する(この配置時、両者に直接的な接触はない。このため非接触と呼ばれる)。ここで一次側トランスに高周波発信回路によって磁束を生じさせると、出力側の二字側トランスが磁束を受けて電磁誘導を生じさせる、という流れになる。この際に生じた電流は蓄電機能(一般には充電池)に充電され、操作部(5)の操作時に電磁石部に通電を行うための電流として使用される。
この入力側端末と出力側端末との間の電気の流れは直接的な電気の流れではなく、電力→磁力→電力という変化を起こしての流れであり、磁力での伝達部分は直接接触していなくても、壁などを介しても伝えることが出来るため、排水栓装置の外部から内部に、穴などを開けなくでも電気を通電することが出来る。
【0023】
段落0020、段落0021に記載した第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように洗面台(C)に施工・取り付けされる。
まずエルボ下部(9b)の第一取付部(10)に内部ユニット部(12)を取り付け固定した上で、エルボ上部(9a)とエルボ下部(9b)とを組み合わせ、エルボ部材(9)として完成させる。次に、洗面ボウル(B)の取付口に上方から排水栓本体(7)を挿入し、排水栓本体(7)の下方からエルボ部材(9)を螺合させ、排水栓本体(7)のフランジ(8)下面とエルボ部材(9)上面で取付口周縁を挟持するようにして固定する。
また、電源部(4)をキャビネット内の適宜位置に設置する。また、操作部(5)を洗面ボウル(B)の天板上に載せるようにして、接着剤などで取り付ける。
次に、第二取付部(11)に外部ユニット部(13)を取付固定した上で、電源部(4)、外部ユニット部(13)の電磁石部をそれぞれ配線で適宜接続する。
最後に排水口(1)に弁部材(2)のストッパー(6)を抜脱しないように係合させて取り付け、更にエルボ部材(9)の排出口を配管(U)を用いて床下配管に接続し、第二実施例の遠隔操作式排水栓装置の施工が完了する。
【0024】
前記のように取り付けられた本発明の第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、以下のように作動する。
操作部(5)を操作して、排水口(1)を開口した状態、即ち電磁石部に通電していない状態とする。
この状態では、第一磁石部(3)と第二磁石部が反発し、且つ第二磁石部が固定されていることから、図6に示したように弁部材(2)が上昇して排水口(1)が開口状態となる。但し、ガイド部兼用のストッパー(6)が機能するので排水口(1)から弁部材(2)が抜脱する事はない。また、ガイド部兼用のストッパー(6)が機能するので、弁部材(2)が排水口(1)を閉塞できないような位置にずれてしまうような事はない。
この状態から操作部(5)に操作を加えて、電波を介して電源部(4)に操作内容を送信し、電磁石部に通電を行うと、電磁石部が発生させた、第二磁石部とは逆向きの磁界によって第二磁石部の磁界がうち消され、第一磁石部(3)と第二磁石部の反発が無くなり、ガイド部によって弁部材(2)が逸れることなく自重で降下して弁部(14)が排水口(1)を覆うため、図7に示したように排水口(1)が閉口状態となる。
この状態から再度操作部(5)に操作を加えて電磁石部への通電を停止すると、第二磁石部を消磁していた電磁石部の磁界が消失し、再び第一磁石部(3)と第二磁石部が反発して弁部材(2)を上昇させ図6に示したように排水口(1)が開口状態となる。
以後この動作を繰り返すことで、遠隔操作的に排水口(1)を開口/閉口する事が出来る。
【0025】
上記第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は以下のような効果を奏する。
上記第二実施例の遠隔操作式排水栓装置は、その動作に磁石部の反発力と電磁石が通電によって生じる磁界によって排水口(1)の開閉を行うように構成したため、使用者にあまり力が無くても、容易に排水口(1)を開閉することができる。
また、弁部材(2)にストッパー(6)を備えて構成したため、動作を確実にするため強力な磁石を採用した場合でも、弁部材(2)が排水口(1)から抜脱する事がない。
また、上記第二実施例では、図8で示したように駆動部分を弁部材(2)、内部ユニット部(12)、外部ユニット部(13)としてそれぞれ完全に独立させて構成している。更に、電磁石部等の通電する部材の一部は内部ユニットとして排水の流路内に配置されているが、上記実施例の場合、非接触電源を採用したことで、例えば内部ユニット部(12)を丸ごと樹脂コーティングするなどの方法によって、内部ユニット部(12)に高い水密性を容易に得ることができる。更に、レリースワイヤなどを排水口(1)の内外に連通しなければ成らず、どうしてもゴムパッキンなどで水密性を確保しなければならない従来の遠隔操作式排水栓装置とは異なり、非接触電源を採用したことで、排水口(1)の内外を完全に分断しても通電することが可能なため、遠隔操作式排水栓装置全体に、高い水密構造を備えさせることができる。
また、通電部分が排水に直接晒されることがないため、電磁石部など通電する部材が水に濡れて漏電したり、水を浴びて部材が劣化(錆など)することがほとんどない。
また、遠隔操作式排水栓装置としての機能部分をユニット化して排水栓装置から着脱自在とし、更に非接触電源によって、流路の内外を連通する穴などを設けなくても通電できるようにしたため、排水栓本体(7)やエルボ部材(9)などの部材は、通常の遠隔操作式でない排水栓装置の部材と共有化することができ、部材単価の削減や、部材管理の簡易化を図ることができる。
更に、遠隔操作式排水栓装置の操作を電波で伝達する構造としたため、操作部(5)から排水口(1)内部までの間に何らかの配線を行う必要が全くなくなった。これにより、前述のように遠隔操作式排水栓装置とそうではない排水栓装置とで部材を共有化すれば、洗面台(C)の天板や排水栓本体(7)などに新規に穴などを設けることなく、内部ユニット部(12)、外部ユニット部(13)、操作部(5)などを後付けすることが可能な遠隔操作式排水栓装置とすることができる。
また上記の遠隔操作式排水栓装置では、非接触電源の出力側に蓄電機能を備えてなる。このように構成すると、蓄電池に電気が充分に充電されると通電が生じなくなり、無駄な通電が抑制され、消費する電力を効果的に使用することができる。また、蓄電池に蓄電された電気を利用するため、一般家庭の電源(コンセント)等に、瞬間的な電圧降下など、極短時間の通電不良があっても、安定した動作を確保することができる。
また、上記のような遠隔操作式排水栓装置は、非通電時に排水口(1)が開口し、通電時に排水口(1)が閉口するため、特に実施例のような、通常排水口(1)を開口している洗面台(C)への使用において使用電力が少なくて済み好適である。
【0026】
本発明の実施例は上記のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲において適宜変更は可能である。
例えば上記実施例においては、遠隔操作式排水栓装置は洗面台(C)に備えられた洗面ボウル(B)に用いられているが、あくまでも洗面ボウル(B)に採用すると効果的である、というだけであって、上記実施例に限定されるものではなく、必要に応じて浴室の浴槽などに採用しても構わない。
【0027】
また上記各実施例では、第一磁石部(3)、第二磁石部は永久磁石を採用しているが、必要に応じて、電磁石を採用しても構わない。
【0028】
また上記第二実施例のように、遠隔操作式排水栓装置の操作を電波で伝達する構造とした場合、従来の遠隔操作式排水栓装置と異なり、操作部(5)を複数用意し、例えば浴室と台所など、異なる場所でそれぞれを利用することができる。
【0029】
また上記第二実施例では、非接触電源の出力側に、蓄電機能を備えて成るが、この蓄電機能についても必須の要素ではない。当該機能を省略すると動作の安定性等が悪化するが、他方で部材点数が減る分コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施例の施工状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図2】本発明の第1実施例の開口状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図3】本発明の第1実施例の閉口状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図4】本発明の第1実施例の部材構成を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図5】本発明の第2実施例の施工状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図6】本発明の第2実施例の開口状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図7】本発明の第2実施例の閉口状態を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図8】本発明の第2実施例の部材構成を示す、一部を切り書きした参考図である。
【図9】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 排水口 2 弁部材
3 第一磁石部 4 電源部
5 操作部 6 ストッパー
7 排水栓本体 8 フランジ
9 エルボ部材 9a エルボ上部
9b エルボ下部 10 第一取付部
11 第二取付部 12 内部ユニット部
13 外部ユニット部 14 弁部
15 弁軸 16 ヘアキャッチャー
B 洗面ボウル C 洗面台
U 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体の底面に設けられた排水口(1)と、
該排水口(1)を開閉する弁部材(2)と、
弁部材(2)に備えられた第一磁石部(3)と、
第一磁石部(3)に反発するように配置固定され、磁力の反発で弁部材(2)を浮遊させる第二磁石部と、
第二磁石部の近傍に配置されて、通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部と、
電磁石部に適切な電流・電圧で電気の供給を行う電源部(4)と、
電磁石部への通電の制御を行うことで、排水口(1)の開閉を操作する操作部(5)と、
から構成されたことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置。
【請求項2】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
弁部材(2)が排水口(1)から飛び出すことを防止するストッパー(6)を備えた事を特徴とする、
請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項3】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部が、排水口(1)から続く排水の流路外に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項4】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
通電時に第二磁石部を消磁する磁界を生じる電磁石部が、排水口(1)から続く排水の流路内に配置されると共に、その電磁石部に電気を供給する手段が、非接触電源を利用したものであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項5】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
遠隔操作式排水栓装置が、非接触電源に充電機能を備えた、非接触充電を利用したものであることを特徴とする、請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項6】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
遠隔操作式排水栓装置を、排水口(1)から続く排水の流路内に配置される部材と、
排水の流路外に配置される部材とに分けて、それぞれを遠隔操作式排水栓装置が備えられる排水配管から着脱自在とできるようにユニット化したことを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項7】
上記遠隔操作式排水栓装置において、
操作部(5)から電磁石部への通電の制御を、電波によって行うことで、排水口(1)の開閉を操作するように構成したことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置。
【請求項8】
上記遠隔操作式排水栓装置を、洗面ボウル(B)において採用した事を特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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