説明

遠隔操作装置

【課題】本発明は、操作者の違和感を抑えることができる、遠隔操作装置の提供を目的とする。
【解決手段】画面に表示されるポインタpの位置を指示するジョイスティックに反力を付与する車両用遠隔操作装置であって、アイコン上にジョイスティックによる操作で動くポインタpが存在する表示画面Aの状態S1で、決定SWが操作者によってオン操作されることが検知されると、表示画面Aに対応する反力マップaを保持したまま画面を表示画面Aから表示画面Bに遷移し、その後、ジョイスティックの操作が検知されると同時に反力マップaから表示画面Bに対応する反力マップbに切り替えることを特徴とする、遠隔操作装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段に反力を付与する反力付与手段を備える遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作ハプティックデバイスの反力制御技術として、表示画面を有する表示部と、前記表示画面上に表示されるポインタの移動位置を指示する指示部を有し当該指示部に対して反力データに従って前記ポインタの画面位置に応じた反力を付与する操作デバイスと、前記表示部に対して前記表示画面に表示すべき画像データを出力するとともに、その画像データに対応する反力データを前記操作デバイスに出力するデータ出力手段とを備える、表示操作システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この表示操作システムは、第1の画面から第2の画面への切換時に、前記操作デバイスは、前記第2の画面に対応する第2の反力データを受信しても、即座にその第2の反力データを有効にするのではなく、前記表示部における前記第2の画面の描画に同期して前記第2の反力データを有効にするものである。すなわち、特許文献1の開示内容によると、第2の画面の描画直前まで第1の画面に対応する第1の反力データを有効にし、第1の画面から第2の画面への切換えと同時に第1の反力データから第2の反力データへの切換えを行うように制御するものである。
【特許文献1】特開2005−100151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の画面から第2の画面への切換えと同時に第1の反力データから第2の反力データへ切り替える上述の従来技術では、画面上のポインタの位置によっては、反力データの切り替わりに伴い指示部に付与される反力も変化するため、操作者に違和感を与えるおそれがある。例えば、図5に示されるように、ポインタpが画面上の釦の表示位置に自然に引き込まれるように画面上の各釦やその周辺領域に反力マップが形成されているので、現画面Aから次画面Bに遷移する時に反力マップも当該遷移と同時にaからbに変更されると、操作者がたとえ力加減を変えていなくても、次画面Bに対応する反力マップbに従って指示部に反力が付与されることにより指示部が操作者の意図にかかわらずに動き、ポインタpが勝手に近くの釦に引き込まれるような動きをすることによって、操作者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、操作者の違和感を抑えることができる、車両用遠隔操作装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る車両用遠隔操作装置は、
画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段と、
前記画面の表示内容に対応する反力データに従って、前記ポインタの表示画面上の位置に応じた反力を前記指示手段に付与する反力付与手段と、
前記反力データを前記表示内容の遷移後に前記指示手段による指示に同期して切り替える反力データ切替手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る車両用遠隔操作装置であって、
前記表示内容の遷移前の反力データが、前記指示手段による指示が少なくともされるまで反映されることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用遠隔操作装置であって、
前記表示内容の遷移後の反力データの反映度合いが時間とともに増加する切り替え期間が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作者の違和感を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。図1は、本発明の実施形態である車両用遠隔操作システム100の構成例を示した図である。車両用遠隔操作システム100は、ナビゲーション装置10と、表示装置20と、操作コントローラ30とを有する。ナビゲーション装置10と表示装置20と操作コントローラ30とは、伝送線1を介して又は無線で、信号を互いに送受可能である。各装置10,20,30は、互いに協調して通信を行うことができるように、ゲートウェイ機能を有するゲートウェイ装置(不図示)を介して接続されてもよい。なお、各装置10,20,30における信号の送受のための接続形態は、図1(a)に示される接続形態に限らず、図1(b)に示される接続形態をはじめ、任意の適切な接続形態であればよい。
【0011】
ナビゲーション装置10と表示装置20と操作コントローラ30は、互いに離れて車内に配置される。特に、表示装置20の画面を乗員が視認可能な位置に配置され、操作コントローラ30は乗員が操作可能な位置に配置される。例えば、ナビゲーション装置10は車室前部のインストルメントパネル内に設置され、表示装置20は当該インストルメントパネル上に設置され、操作コントローラ30はユーザが座席(前部座席でも後部座席でもよい)に座りながら操作できるような位置(例えば、センターコンソール付近)に設置される。
【0012】
ナビゲーション装置10は、乗員に情報提供を行うために、経路案内機能やオーディオ機能などの情報提供機能を備え、地図画像やメニュー画像などの情報提供画像を表示するための画像データを生成し、生成した画像データを表示装置20に出力する。情報提供画像には、ナビゲーション装置10のマイクロコンピュータに与えるコマンドを文字や記号や図形などで表現したアイコンが含まれる。画面上に表示されるポインタを移動させてアイコンに合わせた状態で操作コントローラ30を操作することによって、当該アイコンに対応するコマンドを実行させることができる。また、ナビゲーション装置10は、詳細は後述するが、表示装置20の画面の表示内容に対応する反力データ(反力マップ)を操作コントローラ30に出力する。
【0013】
表示装置20は、画面(例えば、液晶や有機ELなどのディスプレイ)を有する表示手段である。表示装置20は、ナビゲーション装置20によって生成された画像データに基づいて、当該画像データに対応する情報提供画像を画面に表示する。また、表示装置20は、操作コントローラ30からの操作信号に基づいて、情報提供画像の表示画面上にポインタを表示させる。
【0014】
操作コントローラ30は、表示装置20の画面に表示されるポインタの位置をユーザが指示する指示手段として、ジョイスティックやマウスやノブなどのポインティングデバイスを備える。また、操作コントローラ30は、表示装置20の画面に表示される釦などのアイコンの位置に応じた反力をポインティングデバイスに付与する反力付与手段を備える、いわゆるハプティックデバイスである。触覚をポインティングデバイスを介して操作者に与えることで遠隔操作における操作性が向上する。ユーザがポインティングデバイスを指などで直接操作することによって、その操作方向に応じて表示画面上のポインタが移動する。
【0015】
図2は、操作コントローラ30の構成を示したブロック図である。操作コントローラ30は、ユーザによって直接操作されるジョイスティック31及び決定スイッチ(SW)32と、ジョイスティック31の移動量を検出するセンサ36と、ジョイスティック31にX軸方向の反力を付与するX軸方向反力付与部34及びX軸方向に直角なY軸方向の反力を付与するY軸方向反力付与部35と、反力マップを記憶するメモリ37と、ナビゲーション装置10及び表示装置20との通信を可能にする通信インターフェイスである通信部(例えば、CANドライバ)38と、これらの各部との信号の送受によって操作コントローラ30を制御する制御部(例えば、CPUやメモリなどを備え、プログラムを処理するマイクロコンピュータ)33と、を有する。
【0016】
ジョイスティック31は、例えば上下左右の4方向やそれに斜め方向を加えた8方向に移動操作可能であって、その移動操作方向に応じてポインタを移動させることができる。また、決定SW32は、アイコン上にポインタを移動させた状態で決定SW32を操作することによって、当該アイコンに対応するコマンドを実行させることができる。例えば、選択項目を示すアイコンであれば、決定SW32を押下することによって、その選択項目を選択した処理を実行させることができる。ジョイスティック31と決定SW32は、一体で構成されても別体で構成されてもよい。
【0017】
ユーザによってX軸方向又はY軸方向にジョイスティック31が操作されると、ユーザの操作意思(指示操作)として、その操作方向(移動方向)とその操作によるジョイスティック31の操作量(移動量)がセンサ36によって検出される。その検出値に応じてセンサ36から出力される信号に基づいて、制御部33はジョイスティック31の移動方向とその移動量を演算する。
【0018】
X軸方向反力付与部34及びY軸方向反力付与部35は、制御部33からの制御信号に基づいて、ジョイスティック31の操作に対してその中立位置に戻そうとする抵抗力を反力として付与する反力付与手段である。X軸方向反力付与部34は、例えば、ジョイスティック31に伝達すべきX軸方向の反力を発生させるモータ(アクチュエータ)と、制御部33からの制御信号に基づいてモータを駆動する駆動回路とを備える。Y軸方向反力付与部35についても同様である。
【0019】
制御部33は、センサ36によって検出されたジョイスティック31の移動方向とその移動量に応じた反力を発生させるように、通信部38を介してナビゲーション装置10から受信したメモリ37に記憶された反力マップに従って、X軸方向反力付与部34及びY軸方向反力付与部35を制御する。メモリ37に記憶された反力マップは、表示画面上のポインタの位置とその位置にポインタが存在するときにジョイスティック31に付与すべき反力値との相対関係を示したデータである。メモリ37には、画面の表示内容毎の反力マップが記憶され得る。また、反力マップは、表示画面の遷移毎に速やかにナビゲーション装置10からメモリ37に送信されてもよいし、予めメモリ37に記憶されていてもよい。
【0020】
制御部33は、センサ36によって検出されたジョイスティック31の移動方向とその移動量に基づいて、当該移動方向及びその移動量に対応する表示画面上のポインタの位置(例えば、座標データ)を演算する。そして、制御部33は、ナビゲーション装置10から通信部38を介して受信した表示画面情報に基づいて、表示画面の表示内容に対応する反力マップを参照し、演算したポインタの位置に対応する反力値を演算する。制御部33は、その演算した反力値を発生させるように制御信号をX軸方向反力付与部34及びY軸方向反力付与部35に出力する。
【0021】
図3は、表示画面Aから表示画面Bに遷移するときの車両用遠隔操作システム100の第1の動作例を示した図である。表示画面A(目的地設定画面)に対応する反力マップをaとし、表示画面B(電話番号設定画面)に対応する反力マップをbとする。反力マップaとbに規定される反力値の構成は、互いに異なる。
【0022】
まず、表示画面Aが表示されている状態では、反力マップaに従ってジョイスティック31に反力が付与されるものとする(状態S1は、表示画面Aが表示されている状態であって反力マップaが現表示画面に対応する反映マップとして設定されている状態)。ユーザによるジョイスティック31の操作により、ポインタpが移動する。ユーザは、選択したい項目のアイコン上にポインタpを移動させ、当該アイコン上にポインタpがある状態で決定SW32のオン操作を行う。図3は、電話機能を作動させるための電話番号アイコン上にポインタpが移動し、決定SW32により選択操作がされることを例示している。決定SW32のオン操作を示す操作信号は、通信部38を介して、ナビゲーション装置10に送信される。
【0023】
ポインタpがアイコン上にある状態で決定SW32の操作が検出された時、表示装置20の画面を当該アイコンに対応した表示画面Bに遷移する。例えば、ナビゲーション装置10のマイクロコンピュータは、ポインタpがアイコン上にある状態で決定SW32のオン操作を示す操作信号を検出した時t1に(又は、検出時から所定の処理時間経過時に)、表示装置20の画面を表示画面Aから表示画面Bに遷移させる。このとき、表示画面Aから表示画面Bへの遷移と同時に反力マップもaからbに切り替えるのではなく、遷移前の反力マップaを保持したままとする(状態S2は、表示画面Bが表示されている状態であって反力マップaが現表示画面に対応する反映マップとして設定されている状態)。また、ポインタpの画面上の絶対位置も遷移前後で同位置である。
【0024】
表示画面Aから表示画面Bへの遷移以後、少なくともジョイスティック31の操作がセンサ36によって検出されるまで、表示画面Bが表示されたまま反力マップaが現表示画面に対応する反映マップとして設定されている状態が保持される。ジョイスティック31の操作の検出は、ジョイスティック31が僅かに移動したこと(ジョイスティック31の微小な移動量)を検出可能な閾値を設定すればよい。
【0025】
そして、ジョイスティック31の操作が検出されると同時に反力マップをaからbに切り替える。反力マップbへの切り替え後の状態S3は、表示画面Bが表示されている状態であって反力マップbが現表示画面に対応する反映マップとして設定されている状態を示している。すなわち、状態S3では、制御部33は、反力マップbに従って、反力を発生させるようにX軸方向反力付与部34及びY軸方向反力付与部35を制御する。
【0026】
続いて、図4は、表示画面Aから表示画面Bに遷移するときの車両用遠隔操作システム100の第2の動作例を示した図である。第2の動作例は、反力マップを切り替える際の反力発生をフェードインして反力マップの切り替え期間(例えば、100ms)を設けた実施例である。表示画面Aから表示画面Bへの遷移以後、少なくともジョイスティック31の操作がセンサ36によって検出されるまで、表示画面Bが表示されたまま反力マップaが現表示画面に対応する反映マップとして設定されている状態が保持される点までは、図3の第1の動作例と同様である。
【0027】
表示画面Bへの遷移以後ジョイスティック31の操作が検出されると徐々に反力マップをaからbに切り替える。例えば、制御部33は、表示画面Bに遷移してからジョイスティック31の操作の検出以後、現表示画面に対応する反映マップとして、遷移前の表示内容に対応する反力マップaの反映度合いを時間とともに低下させるとともに、遷移後の表示内容に対応する反力マップbの反映度合いを時間とともに増加させる。例えば、制御部33は、反力マップaの反力値を所定の減少速度で零まで減少させる一方で、反力マップbの反力値を所定の増加速度で零から増加させ、その減少反力値とその増加反力値とを加算した時変加算反力マップを、現表示画面に対応する反映マップとして設定するとよい。これは、反力マップに規定された画面上の各位置における反力値について、行われるとよい。このように、反力マップを徐々に切り替えることによって、第1の動作例に比べ、更に違和感を抑えることも可能となる。
【0028】
したがって、車両用遠隔操作システム100によれば、表示画面が反力マップの異なる表示内容に遷移しても操作者によるジョイスティック31の操作が検出されない場合には、遷移前の反力マップが維持される。すなわち、表示画面の遷移と同時に遷移後の表示画面に対応する反力マップに従って反力を付与するのではなく、操作者の操作が検出されたタイミングに遷移後の表示画面に対応する反力マップに従って反力を付与しはじめるので、表示画面の遷移のたびにジョイスティック31が勝手に動くと感じてしまう操作者の違和感を払拭することができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0030】
例えば、ナビゲーション装置は、画面を有する表示装置を介して乗員に対して情報を提供する情報提供装置であればよい。
【0031】
また、上述の実施例では、車両用遠隔操作システムを例に挙げて本発明に係る遠隔操作装置について説明したが、車両用に限定することなく、画面と当該画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段とが離間する遠隔操作装置に本発明を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態である車両用遠隔操作システム100の構成例を示した図である。
【図2】操作コントローラ30の構成を示したブロック図である。
【図3】表示画面Aから表示画面Bに遷移するときの車両用遠隔操作システム100の第1の動作例を示した図である。
【図4】表示画面Aから表示画面Bに遷移するときの車両用遠隔操作システム100の第2の動作例を示した図である。
【図5】従来技術における、表示画面の遷移と反力マップの切り替えとの関係を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
10 ナビゲーション装置
20 表示装置
30 操作コントローラ
31 ジョイスティック
32 決定SW
33 制御部
34,35 反力付与部
100 車両用遠隔操作システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段と、
前記画面の表示内容に対応する反力データに従って、前記ポインタの表示画面上の位置に応じた反力を前記指示手段に付与する反力付与手段と、
前記反力データを前記表示内容の遷移後に前記指示手段による指示に同期して切り替える反力データ切替手段とを備える、遠隔操作装置。
【請求項2】
前記表示内容の遷移前の反力データが、前記指示手段による指示が少なくともされるまで反映される、請求項1に記載の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記表示内容の遷移後の反力データの反映度合いが時間とともに増加する切り替え期間が設けられた、請求項1又は2に記載の遠隔操作装置。

【請求項4】
画面を有する表示手段と、
前記画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段と、
前記画面の表示内容に対応する反力データに従って、前記ポインタの表示画面上の位置に応じた反力を前記指示手段に付与する反力付与手段と、
前記反力データを前記表示内容の遷移後に前記指示手段による指示に同期して切り替える反力データ切替手段とを備える、遠隔操作装置。
【請求項5】
画面を有する表示手段と、
前記画面に表示されるポインタの位置を指示する指示手段と、
前記画面の表示内容に対応する反力データを出力するデータ出力手段と、
前記データ出力手段によって出力された反力データに従って、前記ポインタの表示画面上の位置に応じた反力を前記指示手段に付与する反力付与手段と、
前記反力データを前記表示内容の遷移後に前記指示手段による指示に同期して切り替える反力データ切替手段とを備える、遠隔操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate