説明

遠隔検針システム、親機

【課題】遠隔検針にあたり、複数の通信経路を利用可能にし、検針の信頼性を高める。
【解決手段】構内通信網を有する集合住宅1に、需要家における電力使用量を計測する複数台の電力メータ2と、各電力メータ2とそれぞれ通信可能であって電力メータ2ごとの計測結果を収集する親機3とが設けられる。親機3は広域網NT2を通して集計装置4と通信可能であり、集計装置4は親機3が収集した需要家での電力使用量を集計する。集合住宅1の少なくとも一部の住戸11には、ルータ13を介して集計装置4と通信可能であって、構内通信網に接続された設備機器12が設けられる。集合住宅1にはルータ15が設けられ、親機3と集計装置4との間で通信を行う際に、ルータ15により、構内通信網を通らない通信経路L2と構内通信網を通る通信経路L3との一方を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内通信網を有する建物において供給事業者から供給設備を通して購入した供給媒体の使用量を計測し、通信技術を用いて計測結果を管理装置に通知する遠隔検針システム、遠隔検針システムに用いる親機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気、ガス、水、熱のような供給媒体は、送電線、ガス導管、水道管、熱導管のような供給設備を通して供給事業者から需要家に供給されている。供給媒体の需要家では、供給媒体の使用量を計測器(メータ)により計測しており、供給事業者では、計測器による計測結果を検針員により確認し、需要家に供給媒体の使用量に対する対価を請求している。
【0003】
検針員による検針作業は、人件費が必要であるとともに、計測値の読み間違いが生じるなどの問題があるから、この種の問題を解決するために、検針員を通さずに計測値を管理する技術が種々提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、集合住宅の各戸またはビル内の各テナントを需要家として供給媒体である電気の使用量について遠隔検針を行う技術が提案されている。この技術では、電気の使用量を各戸や各テナントに設けた積算電力計により計測し、積算電力計に内蔵した子機側通信器と検針結果を受信する親機側通信器との間で電力線搬送通信を行っている。建物(集合住宅あるいはビル)では、変圧器を介して複数本の配電線が敷設され、各配電線にそれぞれ積算電力計が接続され、かついずれかの配電線に親機側通信器が接続される。さらに、親機側通信器と電力会社(供給事業者)側の集計装置との間で通信網を介して通信を行うことにより、親機側通信器が子機側通信器から取得した検針結果が集計装置に送信する構成が記載されている。この構成により遠隔検針が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−180021号公報(0042段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、集合住宅やビルにおいて子機側通信器から親機側通信器が取得した検針結果を集計装置に送信することが記載され、親機側通信器と集計装置との間の通信経路としては電話網が例示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電話網が不通になった場合には、親機側通信器から集計装置に対して検針結果を送信することができなくなる。すなわち、集計装置により使用電力量を管理している場合に、電力会社では使用電力量を把握できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、複数の通信経路を利用可能にすることにより、検針の信頼性を高めることができる遠隔検針システム、およびその遠隔検針システムに用いる親機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、構内通信網を有する建物において供給事業者から供給設備を通して購入した供給媒体の需要家における使用量を計測する複数台の子機と、建物内に配置され子機のそれぞれと通信可能であって子機ごとの計測結果を収集する親機と、親機と通信可能であり親機が収集した需要家での供給媒体の使用量を集計する集計装置と、構内通信網を通して親機と通信可能であり広域網を通して集計装置と通信可能である設備機器と、親機と集計装置との間で構内通信網を通らない通信経路と構内通信網を通る通信経路との一方を選択する経路選択装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
親機は、集計装置との通信を行う場合に、構内通信網を通らない通信経路による通信が可能か判断し、通信可能であれば当該通信経路を選択するように経路選択装置に指示し、当該通信経路が不通であるときには構内通信網を通る通信経路を選択するように経路選択装置に指示することが望ましい。
【0011】
親機からの指示を受けることにより構内通信網を通して設備機器を制御する制御装置を備え、制御装置は、設備機器に対して集計装置と通信可能か否かを問い合わせ、親機は、経路選択装置に構内通信網を通る通信経路の選択を指示した場合に、制御装置により集計装置と通信可能であることが確認された設備機器を通る通信経路を採用する構成とすることができる。
【0012】
また、設備機器ごとに集計装置と通信可能か否かの回線接続状況を確認した結果と設備機器を識別する情報と確認した曜日と時間帯との少なくとも一方を対応付けて履歴情報として記憶する記憶部を備え、親機は、構内通信網を通る通信経路で集計装置と通信する時点において、記憶部に記憶した履歴情報を参照し、曜日と時間帯との少なくとも一方が当該時点と同じである過去の回線接続状況において通信可能であった設備機器について集計装置と通信可能か否かを順に問い合わせる構成とすることができる。
【0013】
設備機器ごとに集計装置と通信可能か否かの回線接続状況を確認した結果と設備機器を識別する情報と確認した時とを対応付けて履歴情報として記憶する記憶部を備え、親機は、構内通信網を通る通信経路で集計装置と通信する時点において、記憶部に記憶した履歴情報を参照することにより集計装置と通信可能である設備機器を推定し、推定した設備機器を通して集計装置と通信する構成を採用してもよい。
【0014】
子機と親機とは建物に配線された配電線を通信経路に利用した電力線搬送通信により通信し、子機は、計測結果を電力線搬送通信の通信信号に変換して配電線に出力する通信部を備え、親機と配電線との間には、配線線を通信経路に利用した電力線搬送通信の通信信号をシリアル信号に変換する信号変換器を備えることが望ましい。
【0015】
集計装置は、親機に対して各需要家ごとの供給媒体の使用量に関する明細データを送信可能であり、設備機器は、表示装置を備えており、構内通信網を通して受け取った明細データを表示装置に表示することが望ましい。
【0016】
上述した遠隔検針システムに用いる親機は、集計装置との通信を行う場合に、構内通信網を通らない通信経路による通信が可能か判断し、通信可能であれば当該通信経路を選択し、当該通信経路が不通であるときには構内通信網を通る通信経路を選択する構成が望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、需要家での供給媒体の使用量を通信技術により集計装置に送信することによって遠隔検針を行う構成において、複数の通信経路が利用可能であるから、検針の信頼性を高めることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1を示すブロック図である。
【図2】実施形態2〜4を示すブロック図である。
【図3】実施形態5を示すブロック図である。
【図4】実施形態6を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に説明する実施形態では、建物として集合住宅を想定しているが、事務所や店舗として使用されるテナントビルのように、複数の需要家がそれぞれ独立したスペース(事務所、店舗)を占有する建物であっても同様の技術を適用することができる。また、建物には、管理人室や共用玄関などに設けた設備(たとえば、建物内の放送用設備、共用玄関に設置したロビーインターホンなど)と、各住戸に設けた住戸機との間で通信を行う通信経路として敷設された構内通信網が敷設されているものとする。
【0020】
実施形態では、供給事業者を電力会社とし、供給媒体を電気として説明する。したがって、各需要家では電力メータ(計測器)を用いることにより、各需要家で使用した電力量を計測する。また、電力メータにおいて需要家が使用した電力量を計測する計測部に接続された子機と、建物内の管理人室などに配置した親機との間で、第1の通信経路を介して通信を行うことにより、電力メータでの計測結果(以下、「検針値データ」と呼ぶ)を親機に送信することが可能になっている。第1の通信経路には、背景技術として説明した構成と同様に、各需要家に電力を供給している配電線を用いる。この場合、電力線搬送通信の技術を用いる。
【0021】
ただし、ガス、水、熱などの供給媒体についてもメータ(計測器)による検針値データを親機に送信するための第1の通信経路を設けることができる。第1の通信経路には、配電線を用いるほか、無線による通信経路や専用線による通信経路を用いることも可能である。
【0022】
(実施形態1)
図1に示すように、集合住宅1は複数の住戸11を有し、各住戸11にはインターネットのような広域網NT1を通して通信する通信機能を有した設備機器12と、設備機器12を広域網NT1に接続するためのルータ13とが設けられる。各住戸11に設けたルータ13は、設備機器12と後述する集計装置4との間で通信が可能となるようにルーティングを行う。
【0023】
設備機器12としては、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、インターネット家電などを用いることができる。ただし、設備機器12は、広域網NT1と常時接続されることが望ましく、また、後述するように、集合住宅1の構内網における端末として機能する必要があるから、住戸用のインターホン(住戸装置)で兼用するのが望ましい。設備機器12には、通信の際に設備機器11を識別する固有の識別情報として設備機器IDが設定されている。
【0024】
集合住宅1には、各住戸11での使用電力量を個別に計測する電力メータ2が配置される。電力メータ2は、各住戸11の使用電力量をそれぞれ計測する計測部21と、電力メータ2に通信の機能を付与する通信部22と、電力メータ2の動作を制御する制御部20とを有する。
【0025】
制御部20は、マイコンを内蔵しており、プログラムの実行により電力メータ2に各種の機能を付与する。電力メータ2の機能については後述する。通信部22は、上述のように電力線搬送通信の技術を用いることにより、配電線を通信路L1に用いて通信する機能を電力メータ2に付与する。したがって、電力メータ2は、通信端末として機能する。
【0026】
また、電力メータ2が通信路L1を通して通信する通信相手は、集合住宅1の管理人室14に配置される親機3であって、親機3の管理する通信ネットワークでは、電力メータ2は子機に相当する。
【0027】
管理人室14には、親機3のほかインターネットのような広域網NT2に親機3を接続するための経路選択装置としてのルータ15が設けられる。広域網NT2の通信経路L2には、広域網NT1とは異なる通信経路が用いられる。図示例では、電力会社あるいは電力量の集計サービスを行うサービス事業者が管理する集計装置4と、集合住宅1に設けた親機14との間で通信するための広域網NT2には、たとえば光ケーブルを伝送媒体とした伝送経路L2を用いる。ここに、各住戸11に設けたルータ13が接続される広域網NT1と、管理人室14に設けたルータ15が接続される広域網NT2とを区別して記載しているのは、両広域網NT1,NT2において、インターネットサービスプロバイダ、通信媒体、通信方式などが相違する場合があるからである。
【0028】
ところで、管理人室14に設けるルータ15は、HUBの機能を備えており、ルータ15により集合住宅1内の構内網を構築している。したがって、親機3にはルータ15に接続するための通信制御部17が設けられる。また、ルータ15には、親機3が接続されるほか、構内網において端末として機能する設備機器12との通信を行う制御装置16が接続される。制御装置16と設備機器12とは、構内網を構築する通信路L3を介して接続される。制御装置16の機能は後述する。
【0029】
親機3、ルータ15、制御装置16は、必ずしも管理人室14に配置する必要はなく、集合住宅1の電気室などに配置することも可能である。また、親機3および制御装置16とルータ15との間の通信、設備機器12とルータ13との間の通信には、IEEE802.3標準の仕様を用いている。
【0030】
次に、各住戸11の使用電力量を計測している電力メータ2から検針値データを集計装置4に送信する動作について説明する。各住戸11に対応してそれぞれ設けられている電力メータ2は、それぞれ各住戸11において使用している瞬時電力を計測し、一定時間毎(たとえば、5分毎、30分毎)の電力量を電力量データとして蓄積する。一方、親機3は、電力メータ2のポーリングを定期的(たとえば、90分毎)に行うことにより、電力メータ2に蓄積された電力量を取得する。すなわち、電力メータ2による検針値データは、通信経路L1を通して親機3に取得される。
【0031】
親機3が電力メータ2から収集した検針値データを集計装置4に送信する際には、親機3の通信制御部17は、広域網NT2の通信経路L2で集計装置4との通信が可能か否かを判断する。通信可能と判断した場合は、通信経路L2を通して検針値データを集計装置4に送信する。一方、通信制御部17において通信経路L2での通信ができないと判断した場合は、ルータ15−制御装置16−通信経路L3−設備機器12−ルータ13−広域網NT1の経路で、検針値データを集計装置4に送信させる。
【0032】
すなわち、親機3の通信制御部17は、検針値データを送信できる経路を判断し、送信可能な経路を用いるようにルーティング情報を検針値データに付加してルータ15に経路の指示を与える。したがって、ルータ15は、ルーティング情報により、通信経路L2と通信経路L3とのいずれかを用いて集計装置4に検針値データを送信する。
【0033】
通信経路L3を用いる場合には、制御装置16に検針値データが引き渡され、さらに、構内網を構築している通信経路L3を通して、制御装置16からいずれかの住戸11の設備機器12に検針値データが引き渡される。親機3から通信経路L3を通して集計装置4に検針値データを送信する際に、どの住戸11の設備機器12を経由させるかは、とくに制約はない。ただし、送信する検針値データを収集した電力メータ2により使用電力量を計測している住戸11の設備機器12を経由させることが望ましい。
【0034】
集計装置4では、通信経路L2または通信経路L3を経由して検針値データを受信すると、検針値データを用いて各住戸11の電力使用量の対価(電力料金)を計算する。ここに、親機3から集計装置4に検針値データを送信するタイミングは親機3が決めており、検針値データは定期的(たとえば、1日毎、1週間毎、1ヶ月毎)に送信される。
【0035】
以上説明したように、親機3と集計装置4との間で通常使用している通信経路L2が使用できない場合には、集合住宅1の構内網を構築する通信経路L3を用い、住戸11に設けている設備機器12を通して集計装置4に検針値データを送信することができる。このように、親機3から集計装置4に検針値データを送信する経路を二重化することにより、検針値データの送信の信頼性を高めることになる。しかも、経路の二重化のために、通信用の設備を新たに設けるのではなく、集合住宅1において既設である構内網の通信経路L3や設備機器12を兼用するから、二重化のためのコスト増を抑制することができる。
【0036】
本実施形態の要点をまとめる。すなわち、親機3と集計装置4との間に経路選択装置としてのルータ15を設けていることにより、親機3から構内通信網を通らない通信経路L2と、親機3から構内通信網を通る通信経路L3との一方を選択することができる。すなわち、親機3と集計装置4との間の通信経路を、複数の通信経路L2,L3から選択することが可能になる。したがって、構内通信網を通らない通信経路L2が不通になっても、構内通信網を通る通信経路L3が利用可能であれば親機3と集計装置4との間の通信を行うことができ、検針の信頼性が高くなる。
【0037】
また、通信経路の多重化のために別途に通信経路を設けるのではなく、建物である集合住宅1に付随して設けられる構内通信網を利用するから、通信のための基盤設備(インフラストラクチャ)を新たに敷設する必要がない。その結果、既存の集合住宅1であれば既設の基盤設備を利用することによって、通信経路の多重化のために発生するコスト増を抑制することができる。また、新築の集合住宅1であっても基盤設備として設ける必要のある通信経路L3を流用することにより、新たなコストを発生させることなく通信経路を多重化して検針の信頼性を高めることが可能になる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態1では、通信経路L3を用いる際に、どの住戸11の設備機器12を経由するかについては、とくに選択基準を設けていないが、本実施形態では、どの住戸11の設備機器12を経由するかを事前に判断する。図2に示すように、本実施形態では、住戸11ごとに広域網NT11,NT12を分けて記載しており、広域網NT11,NT12のインターネットサービスプロバイダ、通信媒体、通信方式などは、異なっていることが望ましいが、一致していてもよい。
【0039】
上述の判断を行うために、親機3と制御装置16と設備機器12とは、以下の手順で情報を授受することにより、設備機器12を通して集計装置4に検針値データを送信可能か否かを検査する。すなわち、親機3は、検針値データを集計装置4に送信していない期間において、制御装置16に対して「住戸回線確認要求」を送信し、各住戸11における回線接続状況の確認を促す。制御装置16は、「住戸回線確認要求」を受け取ると、通信経路L3を通して各住戸11の設備機器12に対して、それぞれ「接続確認要求」を送信することにより集計装置4との通信が可能か否かを問い合わせる。
【0040】
各住戸11の設備機器12は、制御装置16から「接続確認要求」を受信すると、それぞれ集計装置4との通信の可否を検査し、検査結果を「接続確認要求」に対する応答である「接続確認応答」として制御装置16に送信する。制御装置16は、設備機器12からの「接続確認応答」を受信すると、各住戸11の回線接続状況を知ることができる。したがって、制御装置16は、設備機器12から取得した各住戸11の回線接続状況を、「住戸回線確認要求」に対する応答である「住宅回線確認応答」として親機3に送信する。
【0041】
親機3では、制御装置16から「住宅回線確認応答」として受信した各住戸11の回線接続状況を表1のように、設備機器12を識別する情報である設備機器IDに回線接続状況を対応付けた形式で記憶する。本実施形態では、回線接続状態を記憶するための記憶部(図示せず)を親機3に設けている場合を想定するが、制御装置16に設けることも可能であり、親機3や制御装置16とは別に設けて参照するようにしてもよい。
【0042】
回線接続状況は、表1の例では30分毎に取得し、過去の1週間分を記憶している。つまり、記憶部には、各制御装置16を識別する情報としての制御装置IDと、曜日および時間帯と、回線接続状況とを対応付け、1週間分の履歴情報として記憶する。また、1週間分の回線接続状況は順に更新される。すなわち、親機3では、いずれかの設備機器12から新たな回線接続状況を取得すると、取得した曜日および時刻に対応するデータを上書きして更新する。
【0043】
記憶部では、過去の1週間分とは別に最新の回線接続状況も記憶している。たとえば、水曜日の20:10であれば、最新の回線接続状況として、水曜日の20:00付近の回線接続状況を記憶する。なお、回線接続状況を取得する時間間隔は適宜に選択することができる。表1において○は接続可能、×は接続不能を表す。
【0044】
【表1】

表1のように、親機3において回線接続状況を記憶しておくと、記憶している回線接続状況を用いることにより、利用可能な設備機器12の候補を抽出することができる。すなわち、親機3から集計装置4に検針値データを送信する時刻になり、かつ通信経路L2が使用できない場合に、記憶している最新の回線接続状況を参照し、集計装置4との通信が可能であった設備機器12を候補として抽出する。抽出した候補については、あらためて集計装置4と通信可能か否かを順に確認する。通信可能である設備機器12が検出されると、親機3は、当該設備機器12の設備機器IDを指定し、検針値データを制御装置16に引き渡す。
【0045】
すなわち、過去において通信可能であっても、使用時に通信可能であることが保証されるわけではないので、過去において通信可能であった設備機器12が複数台存在すれば、それらを候補として順に選択し、実際に通信可能である設備機器12を採用する。一般には、複数台の設備機器12が候補として抽出されるが、1台の設備機器12しか抽出されない場合には、当該設備機器12を採用することになる。
【0046】
設備機器12を経由した集計装置4との通信の可否をより確実に確認するには、親機3から集計装置4に対して検針値データを送信する直前に、設備機器12による回線接続状況の確認を行うことが望ましい。また、「接続確認要求」を送信する住戸11の設備機器12は、上述の構成では制御装置16が指定しているが、親機3から制御装置16に送信する「住戸回線確認要求」において住戸11の設備機器12を指定してもよい。
【0047】
なお、親機3が制御装置16に対して「住戸回線確認要求」を送信するのは、検針値データを定期的に送信している間の空き時間であるから、親機3において処理負荷が集中することはない。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【0048】
本実施形態では、どの設備機器12を通る通信経路L3を用いると集計装置4と通信可能かの回線接続状況をあらかじめ記憶部に記憶しているから、親機3から集計装置4に検針値データを送信する際に通信経路を探す時間が不要になる。すなわち、親機3から集計装置4に検針値データを送信する通信経路L3を即時に選択することができる。
【0049】
本実施形態では、同曜日かつ同時間帯であれば、集計装置4との通信可能である蓋然性が高いという予測にたって集計装置4との通信が可能か否かを確認する設備機器12を絞り込んでいるので、制御装置16が「接続確認要求」を送信する回数を低減させることになり、結果的に、構内通信網(通信経路L3)のトラフィック増を抑制することになる。
【0050】
上述した構成では、記憶部に記憶している1週間分の回線接続状況のうち同曜日かつ同時間帯において通信可能であった設備機器12について、集計装置4と通信可能か否かを順に問い合わせている。ただし、記憶部の履歴情報には曜日と時間帯との一方を回線接続状況に対応付けて記憶させておき、同曜日または同時間帯において通信可能であった設備機器12に対して、集計装置4と通信可能か否かを順に問い合わせてもよい。
【0051】
(実施形態3)
実施形態2では、表1における最新の回線接続状況を用いて設備機器12を選択しているが、最新の回線接続状況で集計装置4と通信可能であった設備機器12が、実際の通信の際にも集計装置4と通信可能であるとはかぎらない。本実施形態では、過去における回線接続状況の履歴情報に基づいて、集計装置4と通信可能である可能性がより高い設備機器12を選択する技術について説明する。
【0052】
本実施形態では、親機3が各住戸11の設備機器12の回線接続状況を確認するにあたり、記憶部に格納された1週間分の回線接続状況のうち同曜日かつ同時刻(同時間帯)において集計装置4との通信が可能であった設備機器12を指定する。すなわち、親機3では、「住戸回線確認要求」を制御装置16に送信しようとする曜日および時間帯と同じ曜日かつ時間帯において、通信可能であった設備機器12を抽出する。さらに、親機3は、制御装置16に送信する「住戸回線確認要求」において、抽出した設備機器12のうちの1ないし複数台の設備機器12を指定する。すなわち、「住戸回線確認要求」に1ないし複数台の設備機器12の設備機器IDを含める。
【0053】
上述の動作によって、制御装置16は、1週間前の同時間帯において集計装置4との通信が可能であった設備機器12に「接続確認要求」を送信することになる。つまり、当該設備機器12が、1週間前に引き続いて集計装置4と通信可能か否かを確認することが可能になる。確認結果は、最新の回線接続状況と過去の回線接続状況との両方として記憶される。「住戸回線確認要求」に設備機器IDを含めなかった設備機器12と、「住戸回線確認応答」において集計装置4との通信が不可であった設備機器12とは、最新の回線接続状況において通信が不可として扱われる。
【0054】
この手順により、最新の回線接続状況において通信可能とされている設備機器12は、集計装置4と通信が可能である可能性が高いと言える。したがって、親機3では検針値データを集計装置4に送信するにあたって、通信経路L2を用いることができない場合は、記憶部に登録された最新の回線接続状況(表1参照)を用い、集計装置4との通信が可能であった設備機器12を選択する。他の構成および動作は実施形態2と同様である。
【0055】
本実施形態では、同曜日かつ同時間帯であれば、集計装置4との通信可能である蓋然性が高いという予測にたって集計装置4との通信に用いる設備機器12を絞り込んでいるので、制御装置16が「接続確認要求」を送信する回数が低減され、結果的に、構内通信網(通信経路L3)のトラフィック増を抑制することになる。
【0056】
本実施形態では、設備機器12の回線接続状況を確認するにあたって、同じ曜日かつ同じ時間帯に集計装置4との通信が可能であった設備機器12を指定しているが、実施形態2と同様に、曜日と時間帯との一方のみの一致としてもよい。
【0057】
(実施形態4)
実施形態2では、表1における最新の回線接続状況のみを用いて設備機器12を選択しているが、設備機器12が集計装置4と通信可能か否かは、曜日および時間帯によって変化する場合もある。すなわち、生活パターンは、1週間を周期として規則性を有しているとみなせる場合が多い。そこで、1週間を単位とし、曜日および時間帯に応じて設備機器12が集計装置4と通信可能か否かを判断すると、集計装置4と通信可能である可能性がより高くなると考えられる。
【0058】
したがって、親機3は、検針値データの送信に通信経路L3を用いる場合に、記憶部(図示せず)に格納した過去1週間分の回線接続状況(表1参照)を用い、同曜日の同時刻(同時間帯)において集計装置4との通信が可能であった設備機器12を選択する。すなわち、検針値データの送信に通信経路L2を用いることができない場合に、過去1週間の回線接続状況を参考にして、通信できる可能性が高い設備機器12を選択し、通信経路L3を通して集計装置4に検針値データを送信するのである。
【0059】
ここで、記憶部に記憶している履歴情報を参照することにより集計装置4と通信可能な設備機器12を選択するにあたっては適宜の知識を用いて推定する。たとえば、同じ設備機器12が所定の時間に亘って継続して集計装置4と通信可能であるという条件が成立しているときには、通信可能である確率が高いと推定することができる。逆に、同じ設備機器12が集計装置4と通信可能である時間が継続していなければ、通信可能である確率は低いと推定することができる。
【0060】
さらに、通信可能である設備機器12を推定するには、以下の知識を用いてもよい。
(1)記憶部に格納された各設備機器12に対応する過去の回転接続状況において、「接続可能」を含むか、「接続不能」のみであるかを比較し、「接続可能」を含む設備機器12を優先して選択する。また、「接続可能」を含む設備機器12が複数台存在する場合には、最後に「接続可能」であった設備機器12を優先して選択する。
(2)最近の所定期間において「接続可能」の期間が占有する割合の大きい設備機器12を優先して選択する。
【0061】
この種の知識を用いて通信可能性を推定し、通信可能である可能性の高い集計装置4を選択するのである。他の構成および動作は実施形態2と同様である。
【0062】
本実施形態では、親機3が検針値データの送信に通信経路L3を用いる場合に、同曜日の同時間帯において集計装置4との通信が可能であった設備機器12を選択している。ただし、実施形態2と同様に、通信可能であった曜日と時間帯との一方のみが一致する設備機器12を選択してもよい。
【0063】
(実施形態5)
上述した各実施形態では、とくに触れなかったが、集合住宅1では、6600Vで配電線を引き込み、電気室30に配置した変圧器31を用いて、需要家である各住戸11に給電する電圧に降圧させている。また、階ごとなどに独立した複数の配電網を敷設するために、変圧器31は複数台設けられている。
【0064】
一方、電力メータ2と親機3との間の通信経路L1には電力線搬送通信の技術を用いている。したがって、1台の変圧器31の二次側においては、電力線搬送通信に用いる通信信号を伝送可能であるが、異なる変圧器31の二次側間では通信信号を伝送することができない。言い換えると、電力メータ2と親機3との間では、電力線搬送通信の技術による通信ができないことになる。
【0065】
そこで、図3に示すように、本実施形態では、各変圧器31の二次側間に、電力線搬送通信の通信信号を通過させる(商用電源の電源周波数は阻止する)変圧器間信号結合器32を接続している。変圧器間信号結合器32は、電力線搬送通信に用いる通信信号(10〜450kHz)が商用電源の電源周波数よりも十分に高周波であることを利用して、通信信号と電源周波数とを分離する。この構成は、図示していないが、他の実施形態においても同様に用いられる。
【0066】
一方、管理人室14には分電盤18が設けられ、分電盤18には電力線搬送通信で用いる通信信号をシリアル信号に変換する信号変換器19が設けられる。この構成では、信号変換器19から出力されるシリアル信号は、制御装置16に入力され、電力メータ2で計測された検針値データは、制御装置16を通して親機3に入力される。
【0067】
本実施形態は、電力メータ2で計測した検針値データを親機3に送信する経路において他の実施形態との相違があるが、他の構成および動作は他の実施形態と同様である。
【0068】
(実施形態6)
本実施形態は、図4に示すように、親機3に制御装置16の機能を一体に設けたものである。すなわち、親機3は制御装置16の機能を兼用する。したがって、親機3と制御装置16との間の通信が不要になっている。この構成では、ルータ15には親機3のみが接続されるから、ルータ15におけるHUBの機能を省略することが可能である。他の構成は他の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態では、制御装置16を親機3とは別体に設ける必要がないから、省スペース化につながり、またコスト増の抑制にもつながる。
【0070】
(実施形態7)
上述した各実施形態では、電力メータ2で計測した使用電力量を集計装置4に送信する動作を説明したが、集計装置4では各住戸11(需要家)の使用電力量を取得することによって、各住戸11の電気料金を計算することができる。すなわち、集計装置4には、電気料金の明細データを作成する機能を設けることができる。
【0071】
この場合、表示装置を備える設備機器12を用い、集計装置4で作成した電気料金の明細データを設備機器12で取得することにより、設備機器12の表示装置に電気料金の明細を表示することが可能になる。ただし、集計装置4の通信相手は親機3であるから、通信経路L2を介して親機3との通信が可能であれば、集計装置4からは通信経路L2を介して親機3に電気料金の明細データを送付する。このとき、電気料金の明細データには需要家を特定する情報を付加しておく。すなわち、表2に示す内容を電気料金の明細データとして用いる。表2に示す例は、電気料金を示していないが、1ヶ月間の電力使用量を含んでいるから、この電力使用量に単価を乗じた金額が電気料金になる。
【0072】
【表2】

親機3は、集計装置4から電気料金の明細データを受信すると、通信経路L3を通して制御装置16に電力料金の明細データを送信する。制御装置16では、需要家を特定する情報から当該需要家が使用する設備機器12の設備機器IDを抽出し、設備機器IDを付加した電気料金の明細データを設備機器12に送信する。すなわち、設備機器12は、制御装置16から通信経路L3を通して電気料金の明細データを受信する。設備機器IDにより指定された設備機器12では、制御装置16から受信した明細データを表示装置に表示するのである。他の構成および動作は他の実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態の構成では、紙媒体による電力料金の明細データを需要家ごとに渡す必要がなく、紙媒体の印刷に要する費用および時間の削減につながる。
【0074】
(実施形態8)
電力使用量に対する単価が時間帯に応じて変化する契約を電力会社と締結している需要家の場合、親機3では、電力メータ2で計測した使用電力量を時間帯別に管理している。また、単価が時間帯に応じて変化しない場合でも、親機3では使用電力量を時刻毎に記憶することができる。
【0075】
集計装置4では、親機3が収集した時刻毎の電力量を取得することにより、電気料金の算出だけではなく、時間帯毎の電力使用量、時間帯毎の電気料金などを求めることが可能である。設備機器12では、この種の情報を表示可能にしてもよい。表3は、表2に示した情報に加えて、時間帯別の電力使用量と料金比率とを示している。
【0076】
【表3】

設備機器12では、表3のような情報を受信すると、その情報を表示装置に表示する。また、必要に応じて、節電のアドバイスを行う情報を生成し、どの時間帯に電力使用量をどれだけ抑制すれば、電気料金をどの程度削減できるかを表示装置に表示することも可能である。表4には、時間帯毎に10%の節電を行った場合の電気料金と、電気料金の単価が高い時間帯から単価の安い時間帯に変更しかつ10%の節電を行った場合の電気料金との例を示している。この種の情報を設備機器12に表示することにより、利用者の利便性を図ることが可能になる。
【0077】
【表4】

なお、設備機器12に設けた表示装置の1画面内に多数の情報を表示することができない場合には、画面を切り替えて各情報を表示するようにしてもよい。他の構成および動作は他の実施形態と同様である。
【0078】
本実施形態では、設備機器12の表示装置に表示された情報を参考に用いて節電を実施することができ、節電による電気料金の削減量の目安が得られているから、節電実行の動機付けができる。
【0079】
(実施形態9)
実施形態8では、集計装置4から設備機器12に対して表3に示した内容の情報が送信され、具体的な電気料金は設備機器12において計算しているが、あらかじめ集計装置4において計算を行った上で表4に示した内容の情報を送信してもよい。この場合、各設備機器12では、電気料金の計算が不要であり、ハードウェア資源の少ない設備機器12であっても、節電の情報を提示することが可能になる。他の構成および動作は実施形態8と同様である。
【符号の説明】
【0080】
1 集合住宅(建物)
2 電力メータ(子機)
3 親機
4 集計装置
12 設備機器
13 ルータ
15 ルータ(経路選択装置)
16 制御装置
19 信号変換器
20 制御部
21 計測部
22 通信部
L1 通信経路(配電線)
L2 (構内通信網を通らない)通信経路
L3 (構内通史網を通る)通信経路
NT1 広域網
NT2 広域網
NT11 広域網
NT12 広域網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内通信網を有する建物において供給事業者から供給設備を通して購入した供給媒体の需要家における使用量を計測する複数台の子機と、前記建物内に配置され前記子機のそれぞれと通信可能であって前記子機ごとの計測結果を収集する親機と、前記親機と通信可能であり前記親機が収集した需要家での供給媒体の使用量を集計する集計装置と、前記構内通信網を通して前記親機と通信可能であり広域網を通して前記集計装置と通信可能である設備機器と、前記親機と前記集計装置との間で前記構内通信網を通らない通信経路と前記構内通信網を通る通信経路との一方を選択する経路選択装置とを備えることを特徴とする遠隔検針システム。
【請求項2】
前記親機は、前記集計装置との通信を行う場合に、前記構内通信網を通らない通信経路による通信が可能か判断し、通信可能であれば当該通信経路を選択するように前記経路選択装置に指示し、当該通信経路が不通であるときには前記構内通信網を通る通信経路を選択するように前記経路選択装置に指示することを特徴とする請求項1記載の遠隔検針システム。
【請求項3】
前記親機からの指示を受けることにより前記構内通信網を通して前記設備機器を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記設備機器に対して前記集計装置と通信可能か否かを問い合わせ、前記親機は、前記経路選択装置に前記構内通信網を通る通信経路の選択を指示した場合に、前記制御装置により前記集計装置と通信可能であることが確認された前記設備機器を通る通信経路を採用することを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔検針システム。
【請求項4】
前記設備機器ごとに前記集計装置と通信可能か否かの回線接続状況を確認した結果と前記設備機器を識別する情報と確認した曜日と時間帯との少なくとも一方を対応付けて履歴情報として記憶する記憶部を備え、前記親機は、前記構内通信網を通る通信経路で前記集計装置と通信する時点において、前記記憶部に記憶した履歴情報を参照し、曜日と時間帯との少なくとも一方が当該時点と同じである過去の回線接続状況において通信可能であった前記設備機器について前記集計装置と通信可能か否かを順に問い合わせることを特徴とする請求項3記載の遠隔検針システム。
【請求項5】
前記設備機器ごとに前記集計装置と通信可能か否かの回線接続状況を確認した結果と前記設備機器を識別する情報と確認した時とを対応付けて履歴情報として記憶する記憶部を備え、前記親機は、前記構内通信網を通る通信経路で前記集計装置と通信する時点において、前記記憶部に記憶した履歴情報を参照することにより前記集計装置と通信可能である前記設備機器を推定し、推定した前記設備機器を通して前記集計装置と通信することを特徴とする請求項1又は2記載の遠隔検針システム。
【請求項6】
前記子機と前記親機とは前記建物に配線された配電線を通信経路に利用した電力線搬送通信により通信し、前記子機は、計測結果を電力線搬送通信の通信信号に変換して前記配電線に出力する通信部を備え、前記親機と前記配電線との間には、前記配線線を通信経路に利用した電力線搬送通信の通信信号をシリアル信号に変換する信号変換器を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠隔検針システム。
【請求項7】
前記集計装置は、前記親機に対して各需要家ごとの供給媒体の使用量に関する明細データを送信可能であり、前記設備機器は、表示装置を備えており、前記構内通信網を通して受け取った明細データを表示装置に表示することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠隔検針システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の遠隔検針システムに用いる親機であって、前記集計装置との通信を行う場合に、前記構内通信網を通らない通信経路による通信が可能か判断し、通信可能であれば当該通信経路を選択し、当該通信経路が不通であるときには前記構内通信網を通る通信経路を選択することを特徴とする親機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−217148(P2011−217148A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83859(P2010−83859)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】