説明

遠隔点灯制御システム用の無線通信装置

【課題】 設置場所により通信性能が低下しないようにする。
【解決手段】 無線通信装置2には、アンテナエレメントと、アンテナエレメントで受信した指令信号に基づいて放電灯を点灯制御する制御部が内蔵されている。無線通信装置2を取付金具21により所定の間隔を持って安定器1の安定器ケース10の側面に取り付ける。安定器ケース10の側面にはスライドレール11が形成されており、取付金具21をスライドレール11上を摺動させて無線通信装置2を金属製の安定器ケース10に取り付ける。安定器ケース10は、アンテナエレメントの反射板として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具を遠隔で制御する遠隔点灯制御システムに用いる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯等の複数の照明器具を制御するシステムとして、制御盤と、照明器具ごとに設けられた安定器とがそれぞれ有線接続されている点灯制御システムが知られている。また、有線接続することに替えて、赤外線を用いて放電灯を遠隔で制御する点灯制御システムも知られている。さらに、照明器具の遠隔制御の範囲を赤外線より広げるため、無線を利用して放電灯等の照明器具を遠隔で制御する遠隔点灯制御システムが、従来から提案されている。
【0003】
従来の照明器具を遠隔で制御する遠隔点灯制御システム100の構成の一例を図12に示す。
図12に示す遠隔点灯制御システム100の回路ブロック図において、HID(High Intensity Discharge)ランプ113,HIDランプ115,HIDランプ117は放電灯の照明器具とされ、遠隔点灯制御システム100は、これらの複数の放電灯の点灯を遠隔で制御するシステムとされている。HIDランプ113,HIDランプ115,HIDランプ117は、それぞれ対応する安定器112,安定器114,安定器116により点灯制御される。安定器112,114,116には電源ケーブルを介して電源110から電力が供給されている。安定器112,114,116はそれぞれ制御部112b、114b、116bを備えており、制御部112b、114b、116bがそれぞれHIDランプ113,115,117の点灯制御を行っている。点灯制御には、HIDランプの点灯、消灯、調光、不点灯検出後の制御、点灯回数に基づく制御、点灯累積時間に基づく制御などが含まれる。また、安定器112,114,116はそれぞれ無線部112a、114a、116aを備えており、無線部112a、114a、116aは送信装置111から送信されたHIDランプ毎の点灯制御に用いられる指令信号を受信して、受信した指令信号をそれぞれの制御部112b、114b、116bへ供給している。
【0004】
安定器112,114,116はいずれも同じ構成とされており、例として安定器112の構成を示す回路ブロック図を図13に示す。
図13に示す安定器112は、制御部112bと無線部112aとを備え、制御部112bはHIDランプ113の調光制御をPWMにより行っている。この制御部112bにおいて、電源110からの電力はノイズ除去用のフィルタ131を介して降圧チョッパ回路133に供給される。降圧チョッパ回路133は、電源110から供給された電力をデューティ比を調整することによりHIDランプ113の点灯に必要な直流電圧に変換している。この直流電圧はフルブリッジ回路134に供給されて矩形波電圧に変換され、この矩形波電圧は点灯回路135に供給される。点灯回路135は、HIDランプ113を点灯させるためにHIDランプ113の電極間に高電圧のパルスを印加して絶縁破壊を起こさせることにより放電を開始させる回路である。
【0005】
無線部112aの各部には、制御部112bに設けられた電源回路132により調整された所定の直流電圧が動作電源として供給されている。無線部112aは、送信装置111から送信された指令信号を受信するアンテナ140と、アンテナ140の受信信号が供給され、受信信号を復調して指令信号を取得する無線回路139と、無線回路139で得られた指令信号を受けて制御部112bを制御することによりHIDランプ113の点灯制御を行うCPU(Central Processing Unit)138と、安定器112に一意の識別番号を設定するDIPスイッチ137とを備えている。DIPスイッチ137により任意の識別番号を設定することができ、設定された識別番号は、CPU138に読み取られる。ここで、送信装置111から送信された指令信号には、指令情報の他に識別情報が含まれており、この識別情報と一致する識別番号の安定器に指令信号が送信装置111から送られる。すなわち、予め指令信号に識別情報を含めておくことにより、指令信号の送信先となる安定器を特定することができる。識別番号は、いわゆる安定器毎のアドレス情報になる。
【0006】
無線部112aが自己の安定器112への指令信号を受信した際に、指令信号が調光制御の信号である場合は、CPU138は調光制御の信号を降圧チョッパ回路133に印加する。降圧チョッパ回路133では、デューティ比を変更したPWMの波形信号によって電源110からの電力を適正な値のランプ電流に制限し、これによってHIDランプ113の調光制御を行う。指令信号は、調光に限らず、通常の点灯・消灯制御を行う指令信号などの各種の点灯制御用の指令信号とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−75683号公報
【特許文献2】特開2010−244985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の無線を利用した遠隔点灯制御システム100における安定器は無線部と制御部とを備えているが、安定器のケースは放熱を兼ねて金属製とされていることから、アンテナを備える無線部を内蔵させることができない。そこで、安定器には制御部だけを内蔵するようにして、無線部は別体の無線通信装置として安定器とは別に設けるようにしている。この場合、無線通信装置は制御部を内蔵した安定器とケーブルを介して接続され、この安定器はHIDランプとケーブルを介して接続されることから、無線通信装置および安定器はHIDランプの近傍に設置される。HIDランプは例えば天井、側壁、建物の鉄骨等に設置されることから、安定器と無線通信装置は天井、側壁内のH鋼やL型アングル、あるいは、建物の鉄骨等に設置されることになる。このため、無線通信装置のアンテナが設置場所における金属の影響を受け、通信性能が著しく低下することがあった。また、無線通信装置は、設置されるH鋼及びL型アングル等の鉄骨によって設置位置や取付方法が異なるようになるので作業効率が悪く、取付工数が増加しコスト高になっていた。このように、従来の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置は、設置場所により通信性能が低下する恐れがあると共に取り付けのコストが高いという問題点があった。
そこで、本発明は、設置場所により通信性能が低下することがないと共に取り付けのコストを安価にすることのできる遠隔点灯制御システム用の無線通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置は、受信した指令信号を安定器に供給して、該安定器に接続されている照明器具の遠隔点灯制御を行える無線通信装置において、無線部ケースと、該無線部ケースの下面を閉塞するよう取り付けられる底板と、前記無線部ケースと前記底板とで形成される収納空間内に収納される指令信号を受信するアンテナエレメントと、前記収納空間内に収納される無線通信部とを備え、前記無線部ケースに取り付けられた前記底板が、前記安定器における金属製の安定器ケースに、前記安定器ケースが前記アンテナエレメントの反射板として機能するよう所定の間隔を持って取り付けられていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定器ケースがアンテナ部の反射板として機能するよう所定の間隔をもって、安定器ケースに無線通信装置を取り付けるようにしたので、無線通信装置をH鋼及びL型アングル等の鉄骨に設置する必要性をなくすことができる。このため、無線通信装置の設置場所は安定器に固定されることから、設置場所により無線通信装置の通信性能が低下することがないと共に、無線通信装置の取り付けのコストを安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例にかかる無線通信装置が取り付けられた安定器の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかる無線通信装置が取り付けられた安定器の構成を断面図で示す正面図である。
【図3】本発明にかかる無線通信装置を安定器に取り付ける態様を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかる無線通信装置が取り付けられる安定器の安定器ケースの一部の構成を拡大して示す図である。
【図5】本発明にかかる無線通信装置の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明にかかる無線通信装置において、無線部ケースを取り外した内部構成を示す斜視図である。
【図7】本発明にかかる無線部ケースを取り外した無線通信装置が取り付けられた安定器の構成を断面図で示す正面図である。
【図8】本発明にかかる無線通信装置の取付金具の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例にかかる無線通信装置が異なる態様で取り付けられた安定器の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明にかかる無線通信装置の安定器との間隔に対する利得特性を示す図である。
【図11】本発明にかかる無線通信装置の指向特性を示す図である。
【図12】従来の遠隔点灯制御システムの構成を示す回路ブロック図である。
【図13】従来の遠隔点灯制御システムにおける安定器の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例にかかる無線通信装置2が取り付けられた安定器1の構成を示す斜視図を図1に、安定器1を断面図で示すその正面図を図2に示す。
これらの図に示す本発明の実施例にかかる無線通信装置2は、安定器1の金属製とされた安定器ケース10の側面上に所定の間隔を持ってほぼ平行に取り付けられている。安定器1は、HIDランプ等の放電灯の点灯制御を行う安定器であり、図13に示す制御部112bと同様の構成とされた制御部が安定器ケース10に内蔵されている。放電灯の点灯制御を行う制御部は発熱することから、金属製の安定器ケース10に内蔵されて、安定器ケース10は制御部の放熱器も兼ねている。この安定器ケース10の前面と後面とにそれぞれL字状に折曲された取付板3が設けられており、安定器ケース10を取り付ける取付板3は安定器1が点灯制御する放電灯の近傍のH鋼及びL型アングル等の鉄骨に固着される。これにより、安定器1が放電灯の近傍に設置されるようになる。
【0013】
細長い直方体状とされた安定器ケース10には、図2に示すようにその4側面の長手方向にそれぞれスライドレール11が形成されている。無線通信装置2は4側面のいずれの側面に形成されているスライドレール11にも取り付けることができるが、図2に示す例では、取付板3の上側の側面に形成されているスライドレール11に取付金具21を介して無線通信装置2が取り付けられている。安定器ケース10は、鉄、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、真鍮などの金属製とされる。安定器ケース10の内側の4隅には取付板3を固着するためのネジ孔10aがそれぞれ形成されている。
スライドレール11は、図2に示すように安定器ケース10の側面に内側に若干凹んで形成された摺動面11aと、摺動面11aと側面との間に形成された溝部11bとにより構成されている。この溝部11bは、摺動面11aと重なるように平行にわずかに突出された側面と摺動面11aとにより形成されている。安定器ケース10の側面の一部を拡大することによりスライドレール11の詳細構成を図4に示す。図4において溝部11bは断面図で示されており、2本の溝部11bは安定器ケース10の長手方向にほぼ平行に形成されている。この溝部11bの入り口には奥に行くほど摺動面11aの幅(2本の溝部11bの内縁間隔)が狭くなるように第1テーパ部11aが形成されており、第1テーパ部11aより若干奥の摺動面11a上に凹部10bとネジ部10cとが並んで形成されている。凹部10bは、さらに奥の摺動面11a上にも形成されて、2つの凹部10bが摺動面11a上に形成されている。
【0014】
次に無線通信装置2の構成を示す斜視図を図5に、無線通信装置2の内部構成を図6に示す。これらの図に示すように、無線通信装置2は合成樹脂製の無線部ケース20と、無線部ケース20の底面を閉塞するよう無線部ケース20の底面に固着されている金属製の底板22とから構成されている。図6に示すように底板22の4隅にはそれぞれ立設部22aが切り起こして形成されており、4つの立設部22aの先端部が基板23の4隅に形成された取付孔に挿入されてハンダ付け等により固着されている。基板23はプリント基板とされており、図13に示す無線部112aと同様の構成の無線通信部の回路が組まれている。すなわち、基板23には図示しない回路部品が設けられていると共にコネクタ24が設けられている。このコネクタ24には、安定器1の制御部と無線通信装置2とを接続するためのハーネスが接続される。このハーネスを介して、無線通信部で受信された指令信号が安定器1の制御部に送られると共に、安定器1から電源が無線通信部に供給される。また、基板23の一縁部にアンテナ基板12が立設されて固着されている。アンテナ基板12には、アンテナエレメント25bがプリントされており、アンテナエレメント25bは例えば逆Fアンテナとされている。なお、安定器ケース10に無線通信装置2が取り付けられた際に、アンテナエレメント25bは安定器ケース10の取付面にほぼ平行に配置される。
【0015】
上記したように、無線部ケース20と底板22とにより形成される収納空間にプリント基板に組まれた無線部とアンテナ基板25aに形成されたアンテナエレメント25bとが収納されている。底板22の対向する縁部にはそれぞれ取付穴22bが形成されており、この取付穴22bを利用して取付金具21が固着されている。取付金具21の構成を示す斜視図を図8に示す。
図8に示すように取付金具21は、平板状の取付面部21aと、取付面部21aの両側に折曲されて形成されたL字状の折曲部21bとから構成されている。取付面部21aにおける折曲部21bが形成されている側と直交する側の両縁部にそれぞれ挿通穴21fが形成されている。この挿通穴21fにそれぞれネジを挿通して無線通信装置2の底板22の取付穴22bに螺着することにより、取付金具21が底板22の下面に固着される。また、取付金具21における取付面部21aとほぼ平行に配置された折曲部21bの支持面部21c,21c’のそれぞれには、ほぼ中央に挿通孔21dが形成されていると共に、挿通孔21dの近傍に下面から下方へ突出しているほぼ円形のエンボス21eが形成されている。また、図8における紙面の向こう側の支持面部21c’の幅は、溝部11bの内縁の幅よりわずかに狭い幅とされており、紙面の手前側の支持面部21cの両縁に取付面部21aに向かって次第に幅が狭くなる第2テーパ部21gが形成されている。第2テーパ部21gの終端における支持面部21cの幅は、溝部11bの内縁の幅よりわずかに狭い幅とされており、第2テーパ部21gより前側の支持面部21cの幅は、溝部11bの第1テーパ部11aの始端の幅よりわずかに狭い幅とされている。
【0016】
ここで、取付金具21が底板22に固着されている無線通信装置2を、安定器1に取り付ける態様が図3に示されている。取り付ける場合は、無線通信装置2に固着された取付金具21の支持面部21c’を先にして安定器ケース10のスライドレール11における溝部11bに挿通していく。支持面部21c’の幅は溝部11bの内縁の幅よりわずかに狭い幅とされていることから、支持面部21c’は第1テーパ部11aにガイドされながら摺動面11a上を摺動していく。そして、取付金具21の支持面部21cが溝部11bに挿通されていくと、支持面部21cに形成されている第2テーパ部21gが溝部11bに形成されている第1テーパ部11aに係合して、それ以上は奥に挿通されないようになる。この時に、支持面部21cの挿通孔21dの位置が摺動面11aにおけるネジ部10cの位置に一致すると共に、支持面部21c,21c’のそれぞれのエンボス21eの位置が摺動面11aにおけるそれぞれの凹部10bにほぼ一致して、それぞれのエンボス21eがそれぞれの凹部10bに嵌合するようになる。嵌合する際には、クリック感が得られるようになる。次いで、挿通孔21dから挿通したネジをネジ部10cに螺着する。これにより、無線通信装置2を安定器1に固着することができる。このように、第1テーパ部11aと第2テーパ部21gおよびエンボス21eと凹部10bにより、無線通信装置2の位置決めをすることができる。
なお、無線通信装置2を安定器1に取り付ける場合に、支持面部21cを先にして安定器ケース10のスライドレール11における溝部11bに挿通しようとしても、支持面部21cの端部の幅は、溝部11bの内縁の幅より広くされていることから、溝部11bの第1テーパ部11aを超えて挿入することができず、支持面部21cの幅により逆入れ防止の機能を果たしている。
【0017】
無線通信装置2が安定器1の安定器ケース10の側面上に固着されている構成が図2および図7に示されている。これらの図では安定器ケース10は断面図で示されており、取付金具21の支持面部21cがスライドレール11の溝部11bから抜け出ないように固着されていることが分かる。また、図7においては無線部ケース20が省略されて示されており、基板23と安定器ケース10の側面との所定間隔が間隔gapとされている。ここで、基板23上にアンテナエレメント25bが形成されているアンテナ基板25aが立設されていることから、この間隔gapはアンテナエレメント25bの下端と安定器ケース10の側面との間隔となる。安定器ケース10上に無線通信装置2を取り付けた際に、安定器ケース10はアンテナエレメント25bの反射板として機能するようになり、間隔gapは反射板として効率的に機能させるためのパラメータとなる。
【0018】
ここで、無線通信装置2に設定された周波数帯は、例えば2.4GHz帯とされ、その自由空間の波長λは約125mmとなる。各部の寸法の一例を挙げると図1に示す安定器ケース10の幅W1は約100mm(約0.8λ)、高さH1は約100mm(約0.8λ)、長さL1は約350mm(約2.8λ)とされる。また、図5に示す無線通信装置2の幅W2は約60mm(約0.48λ)、高さH2は約25mm(約0.2λ)、長さL2は約52mm(約0.416λ)とされる。また、間隔gapは約19mm(約0.152λ)とされる。
次に、無線通信装置2におけるアンテナエレメント25bの電気的特性を図10および図11に示す。この場合、上記した寸法の無線通信装置2を、反射板とされる約0.5λ平方の金属板上に配置している。図10は間隔gapを0.05λから0.6λまで変化させた際のアンテナエレメント25bの最大利得(Max Gain)の特性とされており、図11は間隔gapを約0.22λとした際のY−Z面内(X,Y,Z方向は図1に示す通り)の指向特性とされている。
【0019】
図10に示すアンテナエレメント25bの最大利得(Max Gain)の特性を参照すると、間隔gapを0.05λから大きくするにつれて最大利得は上昇していき、約0.22λとした時に約4.2dBiの最大利得のピークが得られる。約0.22λを超えて間隔gapを大きくしていくと最大利得は次第に減少していくようになる。ここで、2.5dBi以上の最大利得が得られれば実用上は問題がないことから、間隔gapは約0.05λ〜約0.51λとすることができる。なお、*で示す最大利得は約0.5λ平方の反射板なしの場合であり、その最大利得は約2dBiしか得られない。
また、図11には約0.5λ平方の反射板上に無線通信装置2を取り付けた場合の指向特性が実線で示されており、反射板を省略した場合の指向特性が破線で示されている。図11を参照すると、反射板上に無線通信装置2を取り付けた場合は、反射板を省略した場合に比較して上方への放射が強くなると共に下方への不要波が抑えられるようになる。特に、反射板上に無線通信装置2を取り付けた場合は、垂直方向に対して約30°〜約−90°方向への放射が強まるようになる。上記した図10および図11の電気的特性を参照すると、約0.5λ平方の金属板が反射板として機能することから、無線通信装置2が取り付けられる安定器ケース10の1辺を少なくとも0.5λ以上の大きさとすれば十分反射板として機能することが分かる。
【0020】
ところで、安定器ケース10は内蔵されている制御部の発熱によりケース温度が高くなって、この熱が無線通信装置2に伝わると無線通信装置2が誤動作することが考えられる。そこで、取付金具21の取付面部21a上面を樹脂素材の層で覆うようにする。この場合、樹脂素材の熱伝導率は一般に低いことが知られており、無線通信装置2の底板22は熱伝導率の低い樹脂層を介して安定器ケース10に接触するようになる。これにより、安定器ケース10から無線通信装置2への熱伝導が少なくなり、無線通信装置2が誤動作することを防止することができる。また、取付面部21aの表面と裏面とを樹脂素材でモールドするようにしても良い。樹脂素材としては、ポリフェニレンエーテル、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性の高い樹脂素材を用いることが好適とされる。
【0021】
また、無線通信装置2は図1に示すように安定器ケース10の側面に取り付けるようにしたが、図9に示すように安定器ケース10の前面あるいは後面に取り付けるようにしても良い。この場合は、取付金具を図9に示すコ字状取付金具30として、コ字状取付金具30を無線通信装置2の底板22に取り付ける。そして、コ字状取付金具30の両側から下方へ延伸されている部位を安定器ケース10の対向する側面にそれぞれ形成されているスライドレール11の溝部11bに挿通する。次いで、コ字状取付金具30の両側から下方へ延伸されている部位に形成されている挿通孔から挿通したネジを摺動面11aに形成されているネジ部10cに螺着する。これにより、無線通信装置2を安定器ケース10の前面あるいは後面から間隔gapを持って固着することができる。また、位置決めのためにコ字状取付金具30の両側から下方へ延伸されている部位に形成されている挿通孔の近傍にエンボスを形成して、エンボスを摺動面11aに形成されている凹部10bに嵌合するようにしてもよい。安定器ケース10の幅W1と高さH1は約0.8λとされていることから、無線通信装置2を安定器ケース10の前面あるいは後面に取り付けても、安定器ケース10は十分反射板として機能するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上の説明において、安定器1は、HIDランプ等の放電灯の点灯制御を行う電子式の安定器としたが、安定器1はこれに限るものではなくHIDランプ等の放電灯の点灯制御を行う銅鉄安定器、LED駆動電源用の安定器、蛍光灯用の電子式の安定器等とすることができる。
以上説明した安定器ケース10における溝部11bの入り口に形成された第1テーパ部11aと、支持面部21cの両縁に形成された第2テーパ部21gの角度は20°以下とするのが好適とされる。
また、取付金具21の2つの支持面部21c,21c’の内の支持面部21cにのみ第2テーパ部21gを形成したが、支持面部21cの幅を支持面部21c’の幅と同様に溝部11bの内縁の幅よりわずかに狭い幅として第2テーパ部21gを省略するようにしても良い。
本発明にかかる無線通信装置は、安定器における安定器ケースの4側面のいずれの側面にも取り付けることができると共に、コ字状取付金具に変更することにより安定器ケースの前面あるいは後面にも取り付けることができる。このように、安定器ケース10の6面のいずれに取り付けても、安定器ケース10は無線通信装置に内蔵されたアンテナエレメントの反射板として機能するようになる。
また、無線通信装置に内蔵されるアンテナエレメントはプリントアンテナに限るものではなく、線条あるいは板状のアンテナエレメントを内蔵するようにしても良い。さらに、アンテナエレメントは逆Fアンテナに限るものではなく、種々の共振アンテナとすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 安定器、2 無線通信装置、3 取付板、10 安定器ケース、10a ネジ孔、10b 凹部、10c ネジ部、11 スライドレール、11 安定器ケース、11a 第1テーパ部、11a 摺動面、11b 溝部、12 アンテナ基板、20 無線部ケース、21 取付金具、21a 取付面部、21b 折曲部、21c 支持面部、21c, 支持面部、21d 挿通孔、21e エンボス、21f 挿通穴、21g 第2テーパ部、22 底板、22a 立設部、22b 取付穴、23 基板、24 コネクタ、25a アンテナ基板、25b アンテナエレメント、30 コ字状取付金具、100 遠隔点灯制御システム、110 電源、111 送信装置、112,114,116 安定器、112a 無線部、112b 制御部、113,115,117 HIDランプ、131 フィルタ、132 電源回路、133 降圧チョッパ回路、134 フルブリッジ回路、135 点灯回路、137 DIPスイッチ、139 無線回路、140 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した指令信号を安定器に供給して、該安定器に接続されている照明器具の遠隔点灯制御を行える無線通信装置において、
無線部ケースと、
該無線部ケースの下面を閉塞するよう取り付けられる底板と、
前記無線部ケースと前記底板とで形成される収納空間内に収納される指令信号を受信するアンテナエレメントと、
前記収納空間内に収納される無線通信部とを備え、
前記無線部ケースに取り付けられた前記底板が、前記安定器における金属製の安定器ケースに、前記安定器ケースが前記アンテナエレメントの反射板として機能するよう所定の間隔を持って取り付けられていることを特徴とする遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項2】
前記底板に所定高さの取付金具が固着されており、前記無線部ケースに取り付けられた前記底板が前記取付金具により前記安定器ケースに取り付けられることを特徴とする請求項1記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項3】
直方体状の形状とされている前記安定器ケースの1辺の長さが、遠隔制御に使用する周波数帯の波長λに対して、少なくとも0.5λ以上とされていることを特徴とする請求項1記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項4】
前記アンテナエレメントは、線状または板状またはプリント基板上に形成されたプリント導体からなるアンテナエレメントとされており、該アンテナエレメントが前記安定器ケースに対してほぼ平行となるよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項5】
前記アンテナエレメントと前記安定器ケースとの所定の間隔が、遠隔制御に使用する周波数帯の波長λに対して、約0.05λ〜約0.51λとされていることを特徴とする請求項1記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項6】
前記安定器ケースの4側面の長手方向にスライドレールが設けられており、
該スライドレールに摺動可能に前記取付金具が取り付けられることを特徴とする請求項2記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項7】
前記スライドレールの入口部に次第に幅が狭くなる第1テーパ部が形成されており、前記取付金具には次第に幅が広くなる第2テーパ部が形成されており、前記スライドレールに前記取付金具を摺動させた際に、前記第1テーパ部に前記第2テーパ部が係合することを特徴とする請求項6記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項8】
前記スライドレール上に凹部が設けられ、前記取付金具に凸状のエンボスが設けられており、前記第1テーパ部に前記第2テーパ部が係合する際に、前記凹部に前記エンボスが嵌合することを特徴とする請求項7記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項9】
前記取付金具がコ字状とされており、前記安定器ケースの4側面の長手方向に設けられた対向するスライドレールに、前記取付金具の両端部がそれぞれ挿入されることにより、前記取付金具が前記安定器ケースに取り付けられることを特徴とする請求項2記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。
【請求項10】
少なくとも前記底板と接触する前記取付金具の面が樹脂層で覆われていることを特徴とする請求項6または9記載の遠隔点灯制御システム用の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−174454(P2012−174454A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34544(P2011−34544)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【Fターム(参考)】