説明

適応型である点ベースの弾性的画像照合

本発明は、点ベースの弾性的照合パラディグムを改善することを目的とする。本発明によれば、例えば、正規分布形状の力を伴う力場が、変形される画像に対していくつかの点において適用される。この場合、ランドマークの一致が必要とされることはなく、ソース画像とターゲット画像との差を最小にする、力の適用点の最適な位置が自動的に見つけられる。有利には、これは個別の制御点の局所的な影響を制御することを可能にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル画像化の分野に関する。特に、本発明は、第1の画像と第2の画像とを照合する方法、並びに第1の画像と第2の画像とを照合する画像処理デバイス及びソフトウェアプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像照合の目的は、例えば、医療画像化の用途においては、画像間の差分を補間することにある。その差分は、例えば、患者の身じろぎ、異なるスキャナモダリティ(scanner modality)、生体構造における変化などが原因で生じる。剛体変換又はアフィン変換のようなグローバル照合法は、しばしば局所的な差分に対処することができない。斯かる状況に対するソリューションは、弾性的(elastic)照合である。医療画像に関する堅牢な弾性的照合は、困難な課題であり、それは、現在取り組みが強化されている研究対象である。一般的に、弾性的照合に対する3つのアプローチに大別することができる:点ベースの弾性的照合、表面ベースの弾性的照合及びボクセルベースの弾性的照合である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、堅牢な弾性的画像照合を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載される本発明の例示的な実施形態によれば、上記目的は、第1の画像と第2の画像とを照合する方法により解決されることができる。そこでは、第1の画像が、弾力性を持つ弾性的な材料の存在として仮定される。第1の画像と第2の画像との間の類似度が決定される。それから、第1の画像に適用されるとき、その類似度を増加させる力場(force field)が決定される。言い換えると、第1の画像が弾性的であると仮定され、第1及び第2の画像における対応する点がお互いに関して本質的に照合されるよう、この第1の画像における点又は部分に力が適用される。こうして、画像間の類似度が増加される。
【0005】
有利には、これは、第1及び第2の画像の堅牢で自動化された照合を可能にすることができる。
【0006】
請求項2に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、前述の類似度が最大化されるよう、この力場の少なくとも1つのパラメタが決定される。
【0007】
有利には、その力場のパラメタを最適化することにより、例えば、個別の制御点、即ち、力場における力が力場上で作用する点の局所的な影響が最適化される。ランドマークベースの補間スキームに比べれば、斯かる制御点は、相互に依存するものではない。
【0008】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、前述の類似度が最大化されるよう、第1の画像の弾力性に関する少なくとも1つのパラメタが決定され、又は変化される。
【0009】
請求項4に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、力場における少なくとも1つの力の少なくとも1つの力強度と、力場における力のうち少なくとも1つの力の力方向と、力場における少なくとも1つの力が第1の画像に作用する少なくとも1つの位置と、力場における少なくとも1つの力の形態と、力場における力のうち少なくとも1つの力として適用されるガウシアンフォース(Gaussian force:正規分布状の力)の標準偏差と、ポアソン比とが、前述の類似度が最大化されるよう、最適化される。
【0010】
言い換えると、照合の問題は、力場におけるパラメタの最適化問題に帰する。
【0011】
請求項5に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、前述の類似度に関するとても効率的な最大化が与えられ、それは、堅牢な照合を可能にすることができる。
【0012】
請求項6に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、その方法は、放射線治療計画(適応型RTP)における追跡研究に基づきコンピュータ断層撮影法のスライス(CTスライス)に適用される。
【0013】
請求項7に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、例えば、正規分布形状の力が存在する力場が第1の画像に対していくつかの点において適用されるという仮定と、この力場のパラメタの最適化とに基づき、第1及び第2の画像の堅牢な照合を可能にする画像処理デバイスが与えられる。
【0014】
請求項8に記載される本発明の別の例示的な実施形態によれば、第1の画像及び第2の画像の改善された照合を可能にするコンピュータプログラムが与えられる。そのコンピュータプログラムは、例えば、C++のようないずれかの適切なプログラミング言語で書かれ、例えば、CD-ROMのようなコンピュータ読み出し可能なデバイスに格納されることができる。しかしながら、本発明によるコンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して、例えばそれがプロセッサの内部メモリにダウンロードされて与えられることもできる。
【0015】
本発明の例示的な実施形態の主旨として、ソース画像が弾性的な材料であると仮定される事と、局所的に分布する力場、例えば、正規分布形状の力の力場がそのソース画像におけるいくつかの点に適用される事とが理解されることができる。そして、例えば、力がその画像に作用する点やその強度といった、その力場のパラメタの変化又は最適化が、第1及び第2の画像間の類似度が増加又は最大化されるように行われる。有利には、これは、個別の制御点の局所的な影響を最適化するだけでなく、力が画像に作用する点である制御点の最適な位置を、画像において同時に発見することにより、点ベースの照合パラディグムを改善することを可能にすることができる。ランドマークベースの補間スキームと比較して、本発明の例示的な実施形態による制御点は相互に依存することがなく、このことが、可能性として計算機的に一層効率的な照合手法を結果としてもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のこれら及び他の側面は、本書において述べられる実施形態から明らかとなり、及び実施形態を参照して説明されることになる。
【0017】
本発明の例示的な実施形態が、以下の図面を参照して以下に説明されることになる。
【0018】
図1は、本発明に基づく方法の例示的な実施形態を実行する、本発明による画像処理デバイスの例示的な実施形態を表す。図1に表される画像処理デバイスは、第1及び第2の画像と、力場のパラメタと、類似度の値と、例えば基準画像と照合されるソース画像に求められる変形(deformation:歪み)とを格納するメモリ2に接続される中央処理ユニット(CPU)、言い換えると画像プロセッサ1を有する。画像プロセッサ1は、複数の入力/出力ネットワーク、又はMRデバイス、CTデバイス若しくは超音波スキャナなどの診断デバイスに接続されることができる。画像プロセッサは、更に、画像プロセッサ1において計算又は適合される情報又は画像を表示する表示デバイス4(例えば、コンピュータモニタ)に接続される。操作者は、キーボード5及び/又は図1に表されていない他の入力/出力デバイスを介して、画像プロセッサ1と相互作用することができる。
【0019】
本方法は以下において医療用途、特に、適応型放射線治療計画(RTP)における用途を参照して説明されるが、本発明は、照合されることが求められるいずれの多次元データセット又は画像に適用されることができることに留意されるべきである。例えば、本発明は、製品の品質検査に適用されることができる。そこでは、実際の製品の画像が、基準製品の画像と比較される。また、その方法は、例えば、興味ある対象に対する変化を特定の時間期間監視する、材料検査に対して適用されることができる。
【0020】
図2は、本発明による第1及び第2の画像を照合する方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【0021】
図2からわかるように、ステップS1における開始の後、ステップS2において、ソース画像は、特定の弾力性を持ち、弾性的であると仮定される。そして、続くステップS3において、ソース画像と基準画像との間の類似度が決定される。そして、続くステップS4において、力場がそのソース画像に適用される。力場のパラメタは、続くステップS5において、ソース画像と基準画像との間の類似度が最大化されるよう、連続的に変化される。そして、続くステップS6において、基準画像と照合されるソース画像に求められる変形が、その力場に関し最適化されたパラメタに基づき決定される。そして、その方法はステップS7に続き、そこで終了する。
【0022】
上述した方法は、以下、更に詳細に説明される。
【0023】
上述したように、ステップS2において、ソース画像は、弾性的な媒体であると仮定される。画像を変形するのに適用されることができる最も簡単なモデルは、線形弾力性の式(ナビエ(navier)の式):

により支配される。ここで、uiとFiとは変位の成分と力場の成分とであり、νはポアソン比であり、Eはヤング率である。通常は、ナビエの式は、有限差分法又は有限要素法により数値的に解かれる。しかしながら、ある特殊なタイプの力に対して、本発明の別の例示的な実施形態によれば、解析的な解が適用されることができる。解析的なソリューションに基づき、本発明の例示的な実施形態において適用されることができるいくつかのスプラインベースの照合アプローチが知られている。例えば、M.H. Davis、A.Khotanzad、D.P.Flaming及びS.E.Harmsによる「A physics-based coordinate transform for 3-D image matching」、IEEE Transactions on Medical Imaging、16(3):317-328、June 1997;J.Kohlrausch、K.Rohr及びH.S.Stiehlによる「A new class of elastic body splines for non-rigid registration of medical images」、In Proc. Workshop Bildverarbeitung in der Medizin 2001、164-168頁、Lubeck、Germany、March 2001により知られている。本書では共に参照により含まれる。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば、正規分布形状の力がソース画像におけるいくつかの点で適用される。ガウシアンフォース

に対する、ナビエの式の解析的な解は、本書において参照により含まれるE.Gladilineの「Theoretische und experimentelle Untersuchung der linearelastischen Randelementmethode zur Registrierung medizinischer Bilder」、Diploma thesis、University of Hamburg、1999によれば:

として与えられる。ここで、

であり、erは、半径ベクトルrの方向を向く単位ベクトルである。
【0025】
本発明の例示的な実施形態によれば、ソース画像と基準画像との間の特定の類似度の尺度を最大化する力場が決定される。本発明を適用する1つのシナリオは、例えば、既に上述したように、処置の間における生体構造の変化を追跡するために、同じ患者に対するいくつかのCTスキャンが行われる適応型放射線治療計画(RTP)である。斯かる場合に対して、画像間の二乗差が適切な類似度の尺度となる。しかしながら、二乗差又は他の類似度の尺度、例えば相互情報若しくは相互相関が他の適用シナリオに対して使用されることもできる。
【0026】
画像間の二乗差を類似度の尺度として仮定すると、以下の式:

が、画像間の類似度の尺度Mを最大化し、パラメタを最小化することを可能にする。ここで、Vは画像ドメインであり、ItとT(Is)とは、ターゲット画像と変形されたソース画像との強度を表し、pはガウシアンフォースが適用される点のベクトルである。σは標準偏差であり、νはポアソン比であり、xは座標である。
【0027】
本発明の例示的な実施形態によれば、力は、選択された制御点の変位ur = 0を用いて規定され、次の式:

で表される。
【0028】
従って、本発明の上記例示的な実施形態によれば、最適化問題は、ソース画像において制御点piの所与の集合の最適な位置とその最適な変位とを探すこととして定式化されることができる。また、本発明のこの例示的な実施形態の変形例によれば、i番目の制御点piに適用されるガウシアンフォースの標準偏差σiとポアソン比νとが追加的なパラメタとなる。ヤング率Eは、本発明のこの例示的な実施形態の更なる変形例によれば、力と変位との間の比例係数として考えられることができる。
【0029】
上述されたアプローチは、ソース画像の弾力性に関して最適な弾性材料特性を用いることだけでなく、各制御点piの局所的な影響に対する適応型の制御を可能にする。上述されたように、上記定式化された最適化問題は、標準的な数値最適化技術を用いて解かれることができる。例えば、本書で参照により含まれる、J.A.Nelder及びR.Meadによる「A simplex method for function minimazation」、Computer Journal、(7):308-313、1965に述べられるダウンヒル・シンプレックス法などを用いて解かれる。
【0030】
図3には、RTPにおける追跡研究に基づきCTスライスに上述した方法を適用した例示的な画像が示される。初期化のため、9つの力の適用点がソース画像内に任意に配置される。図3の下段の行には、未照合及び照合された差分画像が示される。下段行の左側は、未照合の差分画像を示し、下段行の右側は照合された画像を示す。上段の行は、左側にソース画像を示し、右側にターゲット画像を示す。照合された差分画像(下段の行において右の画像)から分かるように、良好な照合結果が得られることができる。
【0031】
有利には、上述された本発明は、個別の制御点の局所的な影響を最適化するだけでなく、画像における制御点の最適な位置を同時に探すことにより、点ベースの照合パラディグムを改善する。ランドマークベースの補間スキームと比較すると、本発明による方法における制御点は、相互に依存することがなく、このことは可能性として、計算機的に一層効率的な照合アプローチを結果としてもたらすことができる。本照合コンセプトは、可能性として、代替的な物理的モデル、例えば、流体力学などを用いて実現されることができる。
【0032】
上記発明はCT画像に関して説明が行われているが、本発明は、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出画像診断(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)又は超音波モダリティ(US)にも適用されることができることに留意されるべきである。また、他のデータセットが使用されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の例示的な実施形態による方法を実行する、本発明の例示的な実施形態による画像処理デバイスの概略的な表現を示す図である。
【図2】本発明による方法の例示的な実施形態の簡略化されたフローチャートを示す図である。
【図3】本発明による方法の例示的な実施形態で達成される9つの力の適用点での照合結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像と第2の画像とを照合する方法において、
前記第1の画像を、弾力性を備える弾性的な材料の存在として仮定するステップと、
前記第1の画像と前記第2の画像との間の類似度を決定するステップと、
前記第1の画像に適用されるとき、前期類似度を増加させる力場を決定するステップとを有し、
前記力場が解析的な式に基づき決定される方法。
【請求項2】
前記類似度が最大化されるよう、前記力場の少なくとも1つの第1のパラメタを決定するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記類似度が最大化されるよう、前記第1の画像の前記弾力性に関連する少なくとも1つの第2のパラメタを決定するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1のパラメタが、前記力場における少なくとも1つの力の少なくとも1つの力強度と、前記力場における前記力のうち少なくとも1つの力の力方向と、前記力場における少なくとも1つの力が前記第1の画像に作用する少なくとも1つの位置と、前記力場における少なくとも1つの力の形態と、前記力場における前記力のうち前記少なくとも1つの力として適用されるガウシアンフォースの標準偏差と、ポアソン比とのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記力場の前記少なくとも1つのパラメタは、以下の式:

を最小化することにより最適化され、ここで、Mは類似度の尺度であり、ItとT(Is)とは前記第1及び前記第2の画像の強度を表し、pはガウシアンフォースf(p)が適用される点のベクトルを表し、σは前記ガウシアンフォースの標準偏差を表し、νはポアソン比を表し、xは座標を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、RTP、MRI、SPECT、PET及びUSの1つに関するデータセットに適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
画像処理デバイスであって、
第1の画像と第2の画像とを格納するメモリと、
前記第1の画像と前記第2の画像とを照合する画像プロセッサとを有し、
前記画像プロセッサが、
前記第1の画像を、弾力性を備える弾性的な存在と仮定する処理と、
前記第1の画像と前記第2の画像との間の類似度を決定する処理と、
前記第1の画像に適用されるとき、前記類似度を増加させる力場を決定する処理とを行い、
前記力場は、解析的な式に基づき決定される、画像処理デバイス。
【請求項8】
第1の画像と第2の画像とを照合するソフトウェアプログラムであって、前記ソフトウェアプログラムがプロセッサで実行されるとき、該ソフトウェアプログラムは前記プロセッサに:
前記第1の画像を、弾力性を備える弾性的な存在と仮定する処理と、
前記第1の画像と前記第2の画像との間の類似度を決定する処理と、
前記第1の画像に適用されるとき、前記類似度を増加させる力場を決定する処理とを行わせ、
前記力場は、解析的な式に基づき決定される、ソフトウェアプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−515714(P2007−515714A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542107(P2006−542107)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052711
【国際公開番号】WO2005/057495
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】