遮断桿用視認性向上カバー
【課題】踏切等に用いる遮断桿に視認性を向上するカバーを取り付けるにあたり、簡便に取り付けでき、なおかつ簡便に交換可能にする。
【解決手段】円筒形である遮断桿10の長さ方向の一部分を少なくとも上側半周分に亘って覆うことができる把持部と、遮断桿10の径方向に延びる板状の表示部14を有する視認性向上カバー11を製造する。把持部を弾性変形させて把持部の他方の端部16,15と連続部13との間に遮断桿10を通すことで、遮断桿への取り付け、取り外しが出来る。
【解決手段】円筒形である遮断桿10の長さ方向の一部分を少なくとも上側半周分に亘って覆うことができる把持部と、遮断桿10の径方向に延びる板状の表示部14を有する視認性向上カバー11を製造する。把持部を弾性変形させて把持部の他方の端部16,15と連続部13との間に遮断桿10を通すことで、遮断桿への取り付け、取り外しが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断機等の遮断桿に取り付けて、側面からの認識性を向上させるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
踏切用の腕木式遮断機には、かつて竹が使用されており、現在は繊維強化プラスチック製の遮断桿が使用されるようになってきている。ただし歴史的沿革から、繊維強化プラスチック製になった今でも、円筒形の遮断桿が多い。
【0003】
しかし、円筒形の遮断桿ではその外径(上下幅)が細いので、側面からの視認性が十分ではなく、夕陽などの強い光源が観察者から遮断桿の延長線上にあると見えにくくなる場合もある。これに対し、遮断桿の径方向に突出した表示体を有するカバーを遮断桿に取り付けることにより、遮断時における遮断桿の上下幅を増加させて、視認性を向上させる方法が提案されている。例えば、遮断桿の上方向へ山形に盛り上がった表示部分を有し、遮断桿の上側を跨がせて、リベットで遮断桿に固定する、長さ方向に延びる表示板が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−53358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遮断桿用視認性向上カバーは、遮断桿の長さ方向に一体化された長尺状のものであり部材も大型である。しかも、その長尺状の部材をリベットで遮断桿に固定するため、現在使われている遮断機の遮断桿に現場で取り付けることは困難であった。このため、遮断桿を丸ごと、工場で既にカバーを取り付けたものに取り替えることになる。しかしそれでも遮断桿を丸ごと取り替えるには手間と時間がかかり、昼間の踏切が稼働する時間中に交換することは困難であった。
【0006】
また、カバーのどこか一箇所が破損した場合には、遮断桿を再利用することはできてもカバーの破損箇所だけを取り替えることはできないため、結局は遮断桿をカバーごと交換しなければならなかった。
【0007】
さらに、山形のカバーとリベットによる遮断桿の重量の増加は無視できないものである。このため、カバー付きの遮断桿に取り替えた後も遮断桿を速やかに上げ下げするには、バランスをとるために、遮断桿の開閉機構に対し支点を挟んだ逆側の重りも調整する必要があった。
【0008】
そこでこの発明は、遮断桿にカバーを取り付けて視認性を向上させるにあたり、踏切の現場で速やかに取り付けることができ、一部破損時にはその破損部分だけを容易に交換でき、かつ、軽量で重りの調整を必要としないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、遮断桿の少なくとも外面の一部を覆う凹状の把持部と、上記把持部に接続された板状の表示部とを有し、上記把持部を上記遮断桿に嵌めることにより、上記表示部が上記遮断桿から上方又は下方に向く状態にする遮断桿用視認性向上カバーにより、上記の課題を解決したのである。
【0010】
この遮断桿用視認性向上カバーでは、把持部の凹状の部分で遮断桿を掴むようにするだけで取り付けられるので、リベット留めなどの複雑な作業が不要になり、いわば、カバーを遮断桿に引っ掛けるだけで取り付けできる。これにより、取り付け時間を大幅に短縮でき、遮断桿が降りている間に手作業で取り付けることすら可能となる。また、そのような構造であるため、遮断桿の長さ方向に一体のものにする必要が無く、遮断桿の長さ方向の一部を覆うだけの個々のカバーを連ねて設置することができる。これにより、踏切の強行突破などで個々のカバーをいくつか破損させられても、その部分のカバーだけを取り外して、新しいカバーに取り替えるだけで交換可能である。これによりメンテナンス性は著しく向上する。
【0011】
水平状態の遮断桿に取り付けるには、上記把持部は遮断桿に引っ掛け、嵌めることができれば、特に固定しなくてもよい。しかし、踏切や駐車場出入口等に設ける角度を変える遮断桿に取り付けるには、固定しておかなければ遮断桿が上がったときに滑り落ちてしまう。把持部を遮断桿に固定する方式としては、両面テープなどの比較的剥がし易い接着剤を把持部の内側に貼り付ける方式や、把持部の一部に孔を空けてボルト留めする方式、把持部を弾性変形可能な素材で形成しておき、凹状の部分を開いて遮断桿に嵌め、嵌めた後は把持部が弾性変形から元に戻ろうとする力により遮断桿を掴ませて固定する方式などが挙げられる。この中でも、弾性変形可能な素材により嵌める方式が、取り付け及び取り外しにあたって最も作業を簡略化できるので好ましい。これらの方式により遮断桿に固定する際に、表示部を上方又は下方に向けることで、側面からの遮断桿の視認性を向上できる。なお、上方又は下方とは斜め上方や斜め下方も含むが、水平方向だけは含まない。
【0012】
弾性変形可能な素材としては、樹脂や金属などが挙げられるが、軽量化の点から、樹脂が好ましい。特に、繊維強化プラスチックを材料に用いた場合、強度を維持しつつ全体を軽く薄くできる。
【0013】
上記把持部の構成としては、凹状の部分の一部を遮断桿の上端に引っ掛ける型と、遮断桿の少なくとも半周分を上記凹状の部分で囲んで掴む型とがある。囲んで挟む場合、上側から挟んでも、側面側から挟んでも、下側から挟んでも良い。ただし、側面か下側から挟む場合は、上記の弾性変形可能な素材により、把持部が元に戻ろうとする力で遮断桿を掴むとよい。また、上側から挟む場合も、同様の構成であってもよい。このように掴む場合、凹状部分を断面弧状で形成させてもよい。
【0014】
上記把持部が弾性変形により遮断桿を掴む構成である場合、上記把持部の向かい合う端部同士の間隔を、定常状態では遮断桿の径よりも小さくしておく。このカバーを遮断桿に嵌める際には、把持部を弾性変形させて上記間隔を拡張してその間を通す。取り付け後も把持部が弾性変形から元に戻ろうとする力により、確実に遮断桿を掴んでおくことが出来る。このカバーを遮断桿から外す場合も、同様に把持部を弾性変形させて上記間隔を拡張してその間を通す。
【0015】
上記把持部の自由端は、嵌めるべき遮断桿から逃げる曲面を有する返し部を備えたものとすると、上記間隔を広げつつ遮断桿に嵌める際に、返し部が遮断桿を把持部へ導くガイドとなるので、取り付けをスムーズに行うことができる。
【0016】
上記表示部は上記把持部から直接繋がっていてもよいし、上記把持部と上記表示部とを繋ぐ連続部を介して繋がっていても良い。連続部を有する場合、把持部の一方の端部から連続部に繋がり、他方の端部は自由端としておき、その自由端と連続部との間隔を開いて上記の通りに遮断桿に嵌めることとなる。
【0017】
さらに、表示部の先端、すなわち上記把持部又は連続部とは反対側の端部に、固定用の棒を把持可能である凹状の第二把持部を設けると、この第二把持部に棒を通すことで、長さ方向に連続するカバーが風を受けてもバラバラに動くことがなく、一体の表示板として側面からの視認性を安定させることができる。この第二把持部の自由端は、上記表示部に対して上記把持部の自由端と同じ側に位置していると、それぞれの自由端と反対側の表示部の面は整った外観となる。
【0018】
一方で、第二把持部の内周径を上記把持部と違うものにしておくと、径の異なる遮断桿に対して一種類のカバーで対応することができ、遮断桿の径ごとの製品を個別に製造する必要が無くなり、汎用的に用いることができる。
【0019】
自由端と反対側の表示部の面(表側面)は、光を乱反射可能な凹凸を有すると好ましい。平滑な樹脂表面であると、太陽光などを反射してかえって視認性が悪くなってしまう場合があるためである。材質として繊維強化プラスチックを用いる場合には含有する繊維によってこのような凹凸を表面に生じさせることができる。それ以外の樹脂を用いる場合には、樹脂の硬化時に用いる型枠に予め形成させていてもよいし、樹脂成形後に表面を削って設けても良い。一方で、把持部の内側になる面は平滑であることが好ましい。遮断桿が平滑な表面を滑ることで、嵌めやすく、取り外ししやすくなるためである。
【0020】
この視認性向上カバーの色は、表面に塗料を塗布して着色してもよいし、樹脂製である場合は樹脂に顔料を混合することで自由に着色することができる。一般的な踏切の色に合わせて、例えば黒と黄色の二種類を製造し、これらを遮断桿長さ方向に交互に繋げて用いると、踏切としての認識性を維持したまま縦幅だけを拡大して表示させることができる。
【0021】
この視認性向上カバーは、複数のカバーを連続して、すなわち表示部が隣接するように遮断桿に嵌めてもよいし、隙間を空けて取り付けてもよい。
【0022】
なお、この視認性向上カバーを取り付ける対象は踏切の遮断桿に限定されない。駐車場の駐車券発行機及び精算機に用いる遮断桿や、工事現場等で用いるコーンを繋ぐ両端に輪を有する仕切り用の遮断桿などに対しても、遮断桿の径さえ合えば取り付けて利用可能である。その場合にも、容易に取り付け、取り外しでき、視認性を向上させる効果が得られる。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる視認性向上カバーを用いることにより、現在使用されている遮断機の遮断桿にも速やかにかつ簡便にカバーを取り付けて、表示部により遮断桿の視認性を向上させることができる。これにより踏切の安全性を向上させることができる。
【0024】
色分けした複数のカバーを連ねて利用するため、破損時には破損したカバーだけを交換すればよく、取り付け、交換の際に踏切を封鎖する必要がないため、導入、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)第一の実施形態の側面図、(b)第一の実施形態の正面図、(c)第一の実施形態の表側斜視図、(d)第一の実施形態の裏側斜視図
【図2】(a)遮断桿を嵌め始める前の断面図、(b)遮断桿を嵌める際の断面図、(c)遮断桿を嵌め終わった後の断面図
【図3】第一の実施形態に係るカバーを遮断桿に複数取り付けた際の斜視図
【図4】(a)色の異なるカバーを交互に取り付けた際の正面図、(b)その側面図
【図5】(a)第二の実施形態の側面図、(b)第二の実施形態の正面図、(c)第二の実施形態の表側斜視図、(d)第二の実施形態の裏側斜視図
【図6】第二の実施形態にかかるカバーを遮断桿に複数取り付けた際の正面図
【図7】(a)第三の実施形態の側面図、(b)第三の実施形態の正面図、(c)第三の実施形態の表側斜視図、(d)第三の実施形態の裏側斜視図
【図8】第三の実施形態にかかるカバーと第二の実施形態にかかるカバーを連続して取り付けた際の正面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明にかかるカバーの具体的な実施形態について説明する。
図1(a)〜(d)は第一の実施形態に係るカバー11の外観を示す。図1(a)は側面図であり、図1(b)は正面図であり、図1(c)(d)は角度を変えた斜視図である。
【0027】
遮断桿を嵌めることになる断面弧状の把持部12があり、そこから径方向に延びる板状の表示部14を有する。把持部12の断面弧状とは具体的には、半円周を超えて、約四分の三周分の円筒となっている。把持部12と表示部14との間は、把持部12の一の接線側から表示部14までを滑らかに繋ぐ断面円弧状の連続部13によって繋がり、一体となっている。以下、便宜上、把持部12側を上方、表示部14側を下方とする。一般的に遮断桿に取り付ける場合、表示部14を垂れ下げるように取り付けるためである。また、把持部12の外周面から連続する面を表側面14a、反対側の面を裏側面14bとする。図1(c)が表す面が表で、図1(d)が表す面が裏である。表側面14aを遮断桿に対面する人に向けて設置して利用することになる。
【0028】
カバー11の下方側は、断面円弧状の第二把持部17を形成して下端部18に至る。第二把持部17の端部18の位置は、下側の半円から約60度円周を上側へ進めた位置となる。
【0029】
また、把持部12の連続部13と反対側は、外側へ逃げる曲面の返し部15を経て端部16に繋がっている。この返し部15の位置は、上側半円から約30度円周を下側へ進めた位置となる。この返し部15と、連続部13との間が最も短くなった箇所の間隔は、このカバーを取り付ける遮断桿10の直径よりも10〜20%程度短い。この返し部15及び端部16の位置は把持部12の形状によって位置が決まるものの、把持部12の弾性変形によりある程度動く自由端となっている。
【0030】
この発明にかかるカバー11の全体は可撓性があり、弾性変形可能な樹脂で形成されている。このカバー11の把持部12に、遮断桿10を嵌める際の変遷を図2(a)〜(c)に示す。図2(a)に示すように、遮断桿10の直径は、返し部15と連続部13との間隔の最短部分より大きい。ここで力を加えると、連続部13の円弧の外側の曲線と、返し部15の外側の曲線に沿って、図2(b)のように遮断桿10がこの間に入り込む。このとき、当然に、把持部12全体が弾性変形して上記間隔が僅かに広がる。遮断桿10が最短部分を通過すると、把持部12は弾性変形からほぼ元に戻り、上記間隔もほぼ元に戻る。この状態を図2(c)に示す。
【0031】
ただし、踏切の遮断桿などの、持ち上げられて角度が変わる遮断桿10に用いる場合には、図2(c)の状態でも、遮断桿10によって把持部12が僅かに拡径されていることが必要である。拡径されていると、把持部12が弾性変形から元に戻ろうとする力によって、把持部12が遮断桿10をほぼ全周に亘って抑え込むため、遮断桿10が持ち上がったときに、摩擦力によってカバー11が落ちないようになる。このように、把持部12が遮断桿10を抑え込むようにするには、定常状態、すなわち力を加えていない状態における把持部12の断面弧状部分の内径を、取り付ける遮断桿10の外径に対して、80%以上100%以下とすると好ましい。
【0032】
このような手順で、複数のカバー11を遮断桿10に隣接させて取り付けていく。この際、上記の表側を、遮断桿が遮ろうとする交通の進行方向に相対する向きに揃える。この状態を図3に示す。これらのカバー11は、把持部12が遮断桿10を強く抑えているので、それぞれの表示部14の向きを個別に固定することもできる。連続させて取り付けて、遮断桿10の全体を覆うことで表示部14を側面から見えるように連続して取り付けることで、遮断桿10の視認性を向上させる。このため、カバー11の個々の長さ方向幅は10cm以上30cm以下が好ましい。短すぎると、遮断桿10全体を覆うために必要なカバー11の数が多くなりすぎてしまい、取り付け回数が増えすぎて手間となってしまう。一方で長すぎると、取り扱いにくく、破損したときに一度に取り替えるべき幅が長くなって無駄が多くなってしまう。
【0033】
把持部12の最上部と第二把持部17の最下部との間の長さは10cm以上20cm以下が好ましい。10cm未満では表示部14により視認性を向上させる効果が不十分となってしまう。一方で20cmを超えると嵩張りすぎて扱いにくくなってしまう。
【0034】
この発明にかかるカバー11は、構成する樹脂に顔料を入れることで自在に色を決定することができるが、特に黒と黄色の二色のカバー(11a,11b)を製造し、図4のように交互に取り付けると、踏切が有する本来の警告色を損なうことなく表示部分を拡張して視認性を向上できるので好ましい。
【0035】
また、表示部14が向く角度がばらばらにならないように、図4(a)(b)に示すように、第二把持部17に固定用の棒である固定軸30を通しておいてもよい。この固定軸30は表示部14の裏側面14bと端部18との間を弾性変形により拡径させつつ上方向から嵌めるとよい。また、固定軸30を側面から第二把持部17へ挿入する作業を、端にあるカバー11から順に行っていってもよい。いずれの場合も、第二把持部17の内周径が、固定軸30の外径に対して80%以上100%以下であるとよい。
【0036】
このカバー11の製造法としては、カバー11の形の枠型を作成し、そこに流動状態の樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させて固める、型枠による成形方式や、熱可塑性樹脂製の平面板を加熱して軟化させた後、図で示すカバー11の形状となるように両端を変形させて把持部12等を形成させ、冷却して樹脂を固めるプレス成形方式などが挙げられる。また、樹脂とともにガラス繊維などの繊維材料を混合した繊維強化プラスチックを用いてもよい。型枠を用いる場合、先に枠内に強化材などを設置した後で樹脂を投入するRTM(Resin Transfer Modeling)成形などの方式を選択できる。また、型枠を用いる場合は予め型枠に離形剤を塗布しておき、樹脂の硬化後に型枠から剥がし易くしておくとよい。
【0037】
なお、カバー11を個々に製造するのではなく、長さ方向複数個分のカバー11を一体の成形品として一旦製造した後、適切な幅に切断してもよい。
【0038】
図示しないが、表示部14は、表側面14aに、光を乱反射させうる凹凸を、繊維強化プラスチックが含有する繊維により生じさせていることが望ましい。この凹凸により、太陽光線を直接受ける場合でも、表示部14が光過ぎて視認できなくなり、視認性を低下させてしまうことを防ぐ。一方、裏側面14bは凹凸をできるだけ少なくし、平滑な面を有することが好ましい。連続部13の裏側面を遮断桿10が滑りやすくすることで、取り付け、取り外しが容易になるからである。このため、裏側面14bにあたる型枠の表面も平滑であることが好ましい。一方、プレス成形による場合は、材料の樹脂板をプレス加工する際に表側面14aに凹凸を付けるとよい。
【0039】
次に、この発明の第二の実施形態にかかるカバー21について図5を用いて説明する。図5(a)は側面図、図5(b)は正面図、図5(c)は表側斜視図、図5(d)は裏側斜視図である。第一の実施形態にかかるカバー11との違いは、表示部14と把持部22の長さ方向幅が同じではなく、把持部22の上半周分が一の端部方向に延びた拡張部29を有することである。上記第一の実施形態にかかるカバー11と同様に遮断桿10に対して把持部22と連続部13との間隔を広げつつ取り付け、取り外すことができる。
【0040】
この第二の実施形態にかかるカバー21を遮断桿10に連続して取り付けた形態を図6に示す。ただし、取り付ける順番は、一のカバー21を取り付けた後、そのカバー21の拡張部29に覆い被さるように、次のカバー21を取り付ける。表示部14同士は隣接しており、重なることはない。このように取り付けることで、一のカバー21が隣のカバー21を押さえつけるので、強風や衝撃を受けても個々のカバー21が外れて落下する可能性を抑えることができ、第一の実施形態にかかるカバー11と比べて、取り付け後の安定性が増す。反面、一つのカバー21を交換するには、取り付ける際の順序とは逆にそのカバー21までの全てのカバー21を取り外さなければならず、第一の実施形態にかかるカバー11と比べて若干手間がかかることになる。ただし、交換すべきカバー21に至るまでの全てのカバー21を取り外し、一つのカバー21を交換した後、一旦取り外したカバー21を取り付け直すとしても、この発明にかかるカバーは人手により容易に取り付け、取り外しできるため、数分間で交換可能である。
【0041】
次に、この発明の第三の実施形態にかかるカバー31について図7を用いて説明する。図7(a)は側面図、図7(b)は正面図、図7(c)は表側斜視図、図7(d)は裏側斜視図である。第一の実施形態にかかるカバー11との違いは、表示部14と把持部32の長さ方向幅が同じではなく、把持部32の上半周分が、両端方向に延びた拡張部29、29を有することである。すなわち、第二の実施形態にかかるカバー21では片方のみだった拡張部29が両方に設けられている。上記のカバー11、21と同様に遮断桿に対して、把持部32と連続部13との間隔を広げつつ取り付け、取り外すことができる。
【0042】
この第三の実施形態にかかるカバー31と、第二の実施形態にかかるカバー21とを併用して遮断桿10に取り付けた形態を図8に示す。まず、カバー31を遮断桿10の端部近傍に取り付け、両端方向に延びた拡張部29,29の上から、粘着テープ34を一周以上に亘って巻き付けて固定する。次に、拡張部29を片方にのみ有するカバー21を、拡張部29の無い側の端部で、隣接するカバー31又はカバー21の拡張部29を上から押さえつけるようにして取り付ける。それから、取り付けたカバー21の拡張部29の上から粘着テープ34を巻き付けて固定する。これを必要な幅に到達するまでカバー21を連ねて繰り返す。これにより、個々のカバー31及びカバー21は隣のカバー21によって上から押さえられるため、意図しない落下が起こりにくくなる。なお、粘着テープ34で貼り付けても、ボルト留めしたものよりは容易に剥がすことが出来るので、交換の際の作業時間がそれほど長引くわけではない。
【0043】
上記の第二及び第三の実施形態にかかるカバー21、31の場合も、上記の第一の実施形態にかかるカバー11と同様に、型枠による成形やプレス成形などにより同様の製造が可能である。ただし、長さ方向に連続した複数のカバーを一体のものとして成形することは出来ないため、個々に成形する必要がある。
【符号の説明】
【0044】
10 遮断桿
11、21、31 カバー
12、22、32 把持部
13 連続部
14 表示部
14a 表側面
14b 裏側面
15 返し部
16 端部
17 第二把持部
18 端部
29 拡張部
30 固定軸
34 粘着テープ
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断機等の遮断桿に取り付けて、側面からの認識性を向上させるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
踏切用の腕木式遮断機には、かつて竹が使用されており、現在は繊維強化プラスチック製の遮断桿が使用されるようになってきている。ただし歴史的沿革から、繊維強化プラスチック製になった今でも、円筒形の遮断桿が多い。
【0003】
しかし、円筒形の遮断桿ではその外径(上下幅)が細いので、側面からの視認性が十分ではなく、夕陽などの強い光源が観察者から遮断桿の延長線上にあると見えにくくなる場合もある。これに対し、遮断桿の径方向に突出した表示体を有するカバーを遮断桿に取り付けることにより、遮断時における遮断桿の上下幅を増加させて、視認性を向上させる方法が提案されている。例えば、遮断桿の上方向へ山形に盛り上がった表示部分を有し、遮断桿の上側を跨がせて、リベットで遮断桿に固定する、長さ方向に延びる表示板が特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−53358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遮断桿用視認性向上カバーは、遮断桿の長さ方向に一体化された長尺状のものであり部材も大型である。しかも、その長尺状の部材をリベットで遮断桿に固定するため、現在使われている遮断機の遮断桿に現場で取り付けることは困難であった。このため、遮断桿を丸ごと、工場で既にカバーを取り付けたものに取り替えることになる。しかしそれでも遮断桿を丸ごと取り替えるには手間と時間がかかり、昼間の踏切が稼働する時間中に交換することは困難であった。
【0006】
また、カバーのどこか一箇所が破損した場合には、遮断桿を再利用することはできてもカバーの破損箇所だけを取り替えることはできないため、結局は遮断桿をカバーごと交換しなければならなかった。
【0007】
さらに、山形のカバーとリベットによる遮断桿の重量の増加は無視できないものである。このため、カバー付きの遮断桿に取り替えた後も遮断桿を速やかに上げ下げするには、バランスをとるために、遮断桿の開閉機構に対し支点を挟んだ逆側の重りも調整する必要があった。
【0008】
そこでこの発明は、遮断桿にカバーを取り付けて視認性を向上させるにあたり、踏切の現場で速やかに取り付けることができ、一部破損時にはその破損部分だけを容易に交換でき、かつ、軽量で重りの調整を必要としないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、遮断桿の少なくとも外面の一部を覆う凹状の把持部と、上記把持部に接続された板状の表示部とを有し、上記把持部を上記遮断桿に嵌めることにより、上記表示部が上記遮断桿から上方又は下方に向く状態にする遮断桿用視認性向上カバーにより、上記の課題を解決したのである。
【0010】
この遮断桿用視認性向上カバーでは、把持部の凹状の部分で遮断桿を掴むようにするだけで取り付けられるので、リベット留めなどの複雑な作業が不要になり、いわば、カバーを遮断桿に引っ掛けるだけで取り付けできる。これにより、取り付け時間を大幅に短縮でき、遮断桿が降りている間に手作業で取り付けることすら可能となる。また、そのような構造であるため、遮断桿の長さ方向に一体のものにする必要が無く、遮断桿の長さ方向の一部を覆うだけの個々のカバーを連ねて設置することができる。これにより、踏切の強行突破などで個々のカバーをいくつか破損させられても、その部分のカバーだけを取り外して、新しいカバーに取り替えるだけで交換可能である。これによりメンテナンス性は著しく向上する。
【0011】
水平状態の遮断桿に取り付けるには、上記把持部は遮断桿に引っ掛け、嵌めることができれば、特に固定しなくてもよい。しかし、踏切や駐車場出入口等に設ける角度を変える遮断桿に取り付けるには、固定しておかなければ遮断桿が上がったときに滑り落ちてしまう。把持部を遮断桿に固定する方式としては、両面テープなどの比較的剥がし易い接着剤を把持部の内側に貼り付ける方式や、把持部の一部に孔を空けてボルト留めする方式、把持部を弾性変形可能な素材で形成しておき、凹状の部分を開いて遮断桿に嵌め、嵌めた後は把持部が弾性変形から元に戻ろうとする力により遮断桿を掴ませて固定する方式などが挙げられる。この中でも、弾性変形可能な素材により嵌める方式が、取り付け及び取り外しにあたって最も作業を簡略化できるので好ましい。これらの方式により遮断桿に固定する際に、表示部を上方又は下方に向けることで、側面からの遮断桿の視認性を向上できる。なお、上方又は下方とは斜め上方や斜め下方も含むが、水平方向だけは含まない。
【0012】
弾性変形可能な素材としては、樹脂や金属などが挙げられるが、軽量化の点から、樹脂が好ましい。特に、繊維強化プラスチックを材料に用いた場合、強度を維持しつつ全体を軽く薄くできる。
【0013】
上記把持部の構成としては、凹状の部分の一部を遮断桿の上端に引っ掛ける型と、遮断桿の少なくとも半周分を上記凹状の部分で囲んで掴む型とがある。囲んで挟む場合、上側から挟んでも、側面側から挟んでも、下側から挟んでも良い。ただし、側面か下側から挟む場合は、上記の弾性変形可能な素材により、把持部が元に戻ろうとする力で遮断桿を掴むとよい。また、上側から挟む場合も、同様の構成であってもよい。このように掴む場合、凹状部分を断面弧状で形成させてもよい。
【0014】
上記把持部が弾性変形により遮断桿を掴む構成である場合、上記把持部の向かい合う端部同士の間隔を、定常状態では遮断桿の径よりも小さくしておく。このカバーを遮断桿に嵌める際には、把持部を弾性変形させて上記間隔を拡張してその間を通す。取り付け後も把持部が弾性変形から元に戻ろうとする力により、確実に遮断桿を掴んでおくことが出来る。このカバーを遮断桿から外す場合も、同様に把持部を弾性変形させて上記間隔を拡張してその間を通す。
【0015】
上記把持部の自由端は、嵌めるべき遮断桿から逃げる曲面を有する返し部を備えたものとすると、上記間隔を広げつつ遮断桿に嵌める際に、返し部が遮断桿を把持部へ導くガイドとなるので、取り付けをスムーズに行うことができる。
【0016】
上記表示部は上記把持部から直接繋がっていてもよいし、上記把持部と上記表示部とを繋ぐ連続部を介して繋がっていても良い。連続部を有する場合、把持部の一方の端部から連続部に繋がり、他方の端部は自由端としておき、その自由端と連続部との間隔を開いて上記の通りに遮断桿に嵌めることとなる。
【0017】
さらに、表示部の先端、すなわち上記把持部又は連続部とは反対側の端部に、固定用の棒を把持可能である凹状の第二把持部を設けると、この第二把持部に棒を通すことで、長さ方向に連続するカバーが風を受けてもバラバラに動くことがなく、一体の表示板として側面からの視認性を安定させることができる。この第二把持部の自由端は、上記表示部に対して上記把持部の自由端と同じ側に位置していると、それぞれの自由端と反対側の表示部の面は整った外観となる。
【0018】
一方で、第二把持部の内周径を上記把持部と違うものにしておくと、径の異なる遮断桿に対して一種類のカバーで対応することができ、遮断桿の径ごとの製品を個別に製造する必要が無くなり、汎用的に用いることができる。
【0019】
自由端と反対側の表示部の面(表側面)は、光を乱反射可能な凹凸を有すると好ましい。平滑な樹脂表面であると、太陽光などを反射してかえって視認性が悪くなってしまう場合があるためである。材質として繊維強化プラスチックを用いる場合には含有する繊維によってこのような凹凸を表面に生じさせることができる。それ以外の樹脂を用いる場合には、樹脂の硬化時に用いる型枠に予め形成させていてもよいし、樹脂成形後に表面を削って設けても良い。一方で、把持部の内側になる面は平滑であることが好ましい。遮断桿が平滑な表面を滑ることで、嵌めやすく、取り外ししやすくなるためである。
【0020】
この視認性向上カバーの色は、表面に塗料を塗布して着色してもよいし、樹脂製である場合は樹脂に顔料を混合することで自由に着色することができる。一般的な踏切の色に合わせて、例えば黒と黄色の二種類を製造し、これらを遮断桿長さ方向に交互に繋げて用いると、踏切としての認識性を維持したまま縦幅だけを拡大して表示させることができる。
【0021】
この視認性向上カバーは、複数のカバーを連続して、すなわち表示部が隣接するように遮断桿に嵌めてもよいし、隙間を空けて取り付けてもよい。
【0022】
なお、この視認性向上カバーを取り付ける対象は踏切の遮断桿に限定されない。駐車場の駐車券発行機及び精算機に用いる遮断桿や、工事現場等で用いるコーンを繋ぐ両端に輪を有する仕切り用の遮断桿などに対しても、遮断桿の径さえ合えば取り付けて利用可能である。その場合にも、容易に取り付け、取り外しでき、視認性を向上させる効果が得られる。
【発明の効果】
【0023】
この発明にかかる視認性向上カバーを用いることにより、現在使用されている遮断機の遮断桿にも速やかにかつ簡便にカバーを取り付けて、表示部により遮断桿の視認性を向上させることができる。これにより踏切の安全性を向上させることができる。
【0024】
色分けした複数のカバーを連ねて利用するため、破損時には破損したカバーだけを交換すればよく、取り付け、交換の際に踏切を封鎖する必要がないため、導入、メンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)第一の実施形態の側面図、(b)第一の実施形態の正面図、(c)第一の実施形態の表側斜視図、(d)第一の実施形態の裏側斜視図
【図2】(a)遮断桿を嵌め始める前の断面図、(b)遮断桿を嵌める際の断面図、(c)遮断桿を嵌め終わった後の断面図
【図3】第一の実施形態に係るカバーを遮断桿に複数取り付けた際の斜視図
【図4】(a)色の異なるカバーを交互に取り付けた際の正面図、(b)その側面図
【図5】(a)第二の実施形態の側面図、(b)第二の実施形態の正面図、(c)第二の実施形態の表側斜視図、(d)第二の実施形態の裏側斜視図
【図6】第二の実施形態にかかるカバーを遮断桿に複数取り付けた際の正面図
【図7】(a)第三の実施形態の側面図、(b)第三の実施形態の正面図、(c)第三の実施形態の表側斜視図、(d)第三の実施形態の裏側斜視図
【図8】第三の実施形態にかかるカバーと第二の実施形態にかかるカバーを連続して取り付けた際の正面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明にかかるカバーの具体的な実施形態について説明する。
図1(a)〜(d)は第一の実施形態に係るカバー11の外観を示す。図1(a)は側面図であり、図1(b)は正面図であり、図1(c)(d)は角度を変えた斜視図である。
【0027】
遮断桿を嵌めることになる断面弧状の把持部12があり、そこから径方向に延びる板状の表示部14を有する。把持部12の断面弧状とは具体的には、半円周を超えて、約四分の三周分の円筒となっている。把持部12と表示部14との間は、把持部12の一の接線側から表示部14までを滑らかに繋ぐ断面円弧状の連続部13によって繋がり、一体となっている。以下、便宜上、把持部12側を上方、表示部14側を下方とする。一般的に遮断桿に取り付ける場合、表示部14を垂れ下げるように取り付けるためである。また、把持部12の外周面から連続する面を表側面14a、反対側の面を裏側面14bとする。図1(c)が表す面が表で、図1(d)が表す面が裏である。表側面14aを遮断桿に対面する人に向けて設置して利用することになる。
【0028】
カバー11の下方側は、断面円弧状の第二把持部17を形成して下端部18に至る。第二把持部17の端部18の位置は、下側の半円から約60度円周を上側へ進めた位置となる。
【0029】
また、把持部12の連続部13と反対側は、外側へ逃げる曲面の返し部15を経て端部16に繋がっている。この返し部15の位置は、上側半円から約30度円周を下側へ進めた位置となる。この返し部15と、連続部13との間が最も短くなった箇所の間隔は、このカバーを取り付ける遮断桿10の直径よりも10〜20%程度短い。この返し部15及び端部16の位置は把持部12の形状によって位置が決まるものの、把持部12の弾性変形によりある程度動く自由端となっている。
【0030】
この発明にかかるカバー11の全体は可撓性があり、弾性変形可能な樹脂で形成されている。このカバー11の把持部12に、遮断桿10を嵌める際の変遷を図2(a)〜(c)に示す。図2(a)に示すように、遮断桿10の直径は、返し部15と連続部13との間隔の最短部分より大きい。ここで力を加えると、連続部13の円弧の外側の曲線と、返し部15の外側の曲線に沿って、図2(b)のように遮断桿10がこの間に入り込む。このとき、当然に、把持部12全体が弾性変形して上記間隔が僅かに広がる。遮断桿10が最短部分を通過すると、把持部12は弾性変形からほぼ元に戻り、上記間隔もほぼ元に戻る。この状態を図2(c)に示す。
【0031】
ただし、踏切の遮断桿などの、持ち上げられて角度が変わる遮断桿10に用いる場合には、図2(c)の状態でも、遮断桿10によって把持部12が僅かに拡径されていることが必要である。拡径されていると、把持部12が弾性変形から元に戻ろうとする力によって、把持部12が遮断桿10をほぼ全周に亘って抑え込むため、遮断桿10が持ち上がったときに、摩擦力によってカバー11が落ちないようになる。このように、把持部12が遮断桿10を抑え込むようにするには、定常状態、すなわち力を加えていない状態における把持部12の断面弧状部分の内径を、取り付ける遮断桿10の外径に対して、80%以上100%以下とすると好ましい。
【0032】
このような手順で、複数のカバー11を遮断桿10に隣接させて取り付けていく。この際、上記の表側を、遮断桿が遮ろうとする交通の進行方向に相対する向きに揃える。この状態を図3に示す。これらのカバー11は、把持部12が遮断桿10を強く抑えているので、それぞれの表示部14の向きを個別に固定することもできる。連続させて取り付けて、遮断桿10の全体を覆うことで表示部14を側面から見えるように連続して取り付けることで、遮断桿10の視認性を向上させる。このため、カバー11の個々の長さ方向幅は10cm以上30cm以下が好ましい。短すぎると、遮断桿10全体を覆うために必要なカバー11の数が多くなりすぎてしまい、取り付け回数が増えすぎて手間となってしまう。一方で長すぎると、取り扱いにくく、破損したときに一度に取り替えるべき幅が長くなって無駄が多くなってしまう。
【0033】
把持部12の最上部と第二把持部17の最下部との間の長さは10cm以上20cm以下が好ましい。10cm未満では表示部14により視認性を向上させる効果が不十分となってしまう。一方で20cmを超えると嵩張りすぎて扱いにくくなってしまう。
【0034】
この発明にかかるカバー11は、構成する樹脂に顔料を入れることで自在に色を決定することができるが、特に黒と黄色の二色のカバー(11a,11b)を製造し、図4のように交互に取り付けると、踏切が有する本来の警告色を損なうことなく表示部分を拡張して視認性を向上できるので好ましい。
【0035】
また、表示部14が向く角度がばらばらにならないように、図4(a)(b)に示すように、第二把持部17に固定用の棒である固定軸30を通しておいてもよい。この固定軸30は表示部14の裏側面14bと端部18との間を弾性変形により拡径させつつ上方向から嵌めるとよい。また、固定軸30を側面から第二把持部17へ挿入する作業を、端にあるカバー11から順に行っていってもよい。いずれの場合も、第二把持部17の内周径が、固定軸30の外径に対して80%以上100%以下であるとよい。
【0036】
このカバー11の製造法としては、カバー11の形の枠型を作成し、そこに流動状態の樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させて固める、型枠による成形方式や、熱可塑性樹脂製の平面板を加熱して軟化させた後、図で示すカバー11の形状となるように両端を変形させて把持部12等を形成させ、冷却して樹脂を固めるプレス成形方式などが挙げられる。また、樹脂とともにガラス繊維などの繊維材料を混合した繊維強化プラスチックを用いてもよい。型枠を用いる場合、先に枠内に強化材などを設置した後で樹脂を投入するRTM(Resin Transfer Modeling)成形などの方式を選択できる。また、型枠を用いる場合は予め型枠に離形剤を塗布しておき、樹脂の硬化後に型枠から剥がし易くしておくとよい。
【0037】
なお、カバー11を個々に製造するのではなく、長さ方向複数個分のカバー11を一体の成形品として一旦製造した後、適切な幅に切断してもよい。
【0038】
図示しないが、表示部14は、表側面14aに、光を乱反射させうる凹凸を、繊維強化プラスチックが含有する繊維により生じさせていることが望ましい。この凹凸により、太陽光線を直接受ける場合でも、表示部14が光過ぎて視認できなくなり、視認性を低下させてしまうことを防ぐ。一方、裏側面14bは凹凸をできるだけ少なくし、平滑な面を有することが好ましい。連続部13の裏側面を遮断桿10が滑りやすくすることで、取り付け、取り外しが容易になるからである。このため、裏側面14bにあたる型枠の表面も平滑であることが好ましい。一方、プレス成形による場合は、材料の樹脂板をプレス加工する際に表側面14aに凹凸を付けるとよい。
【0039】
次に、この発明の第二の実施形態にかかるカバー21について図5を用いて説明する。図5(a)は側面図、図5(b)は正面図、図5(c)は表側斜視図、図5(d)は裏側斜視図である。第一の実施形態にかかるカバー11との違いは、表示部14と把持部22の長さ方向幅が同じではなく、把持部22の上半周分が一の端部方向に延びた拡張部29を有することである。上記第一の実施形態にかかるカバー11と同様に遮断桿10に対して把持部22と連続部13との間隔を広げつつ取り付け、取り外すことができる。
【0040】
この第二の実施形態にかかるカバー21を遮断桿10に連続して取り付けた形態を図6に示す。ただし、取り付ける順番は、一のカバー21を取り付けた後、そのカバー21の拡張部29に覆い被さるように、次のカバー21を取り付ける。表示部14同士は隣接しており、重なることはない。このように取り付けることで、一のカバー21が隣のカバー21を押さえつけるので、強風や衝撃を受けても個々のカバー21が外れて落下する可能性を抑えることができ、第一の実施形態にかかるカバー11と比べて、取り付け後の安定性が増す。反面、一つのカバー21を交換するには、取り付ける際の順序とは逆にそのカバー21までの全てのカバー21を取り外さなければならず、第一の実施形態にかかるカバー11と比べて若干手間がかかることになる。ただし、交換すべきカバー21に至るまでの全てのカバー21を取り外し、一つのカバー21を交換した後、一旦取り外したカバー21を取り付け直すとしても、この発明にかかるカバーは人手により容易に取り付け、取り外しできるため、数分間で交換可能である。
【0041】
次に、この発明の第三の実施形態にかかるカバー31について図7を用いて説明する。図7(a)は側面図、図7(b)は正面図、図7(c)は表側斜視図、図7(d)は裏側斜視図である。第一の実施形態にかかるカバー11との違いは、表示部14と把持部32の長さ方向幅が同じではなく、把持部32の上半周分が、両端方向に延びた拡張部29、29を有することである。すなわち、第二の実施形態にかかるカバー21では片方のみだった拡張部29が両方に設けられている。上記のカバー11、21と同様に遮断桿に対して、把持部32と連続部13との間隔を広げつつ取り付け、取り外すことができる。
【0042】
この第三の実施形態にかかるカバー31と、第二の実施形態にかかるカバー21とを併用して遮断桿10に取り付けた形態を図8に示す。まず、カバー31を遮断桿10の端部近傍に取り付け、両端方向に延びた拡張部29,29の上から、粘着テープ34を一周以上に亘って巻き付けて固定する。次に、拡張部29を片方にのみ有するカバー21を、拡張部29の無い側の端部で、隣接するカバー31又はカバー21の拡張部29を上から押さえつけるようにして取り付ける。それから、取り付けたカバー21の拡張部29の上から粘着テープ34を巻き付けて固定する。これを必要な幅に到達するまでカバー21を連ねて繰り返す。これにより、個々のカバー31及びカバー21は隣のカバー21によって上から押さえられるため、意図しない落下が起こりにくくなる。なお、粘着テープ34で貼り付けても、ボルト留めしたものよりは容易に剥がすことが出来るので、交換の際の作業時間がそれほど長引くわけではない。
【0043】
上記の第二及び第三の実施形態にかかるカバー21、31の場合も、上記の第一の実施形態にかかるカバー11と同様に、型枠による成形やプレス成形などにより同様の製造が可能である。ただし、長さ方向に連続した複数のカバーを一体のものとして成形することは出来ないため、個々に成形する必要がある。
【符号の説明】
【0044】
10 遮断桿
11、21、31 カバー
12、22、32 把持部
13 連続部
14 表示部
14a 表側面
14b 裏側面
15 返し部
16 端部
17 第二把持部
18 端部
29 拡張部
30 固定軸
34 粘着テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮断桿の少なくとも外面の一部を覆う凹状の把持部と、上記把持部に接続された板状の表示部とを有し、上記把持部を上記遮断桿に嵌めることにより、上記表示部が上記遮断桿から上方又は下方に向く状態にし、その遮断桿の視認性を向上させることを特徴とする遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項2】
少なくとも上記把持部は弾性変形可能な素材で形成され、その把持部の弾性変形により上記遮断桿に上記把持部が嵌められて、上記表示部の向きを固定させる請求項1に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項3】
上記把持部の端部に、上記遮断桿から離れる方向へ逃げる曲面を有する返し部を備えた請求項1又は2に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項4】
上記表示部の、上記把持部側と反対側の端部に、固定用の棒を把持可能である凹状の第二把持部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項5】
上記把持部の端部と、上記第二把持部の端部とが、上記表示部に対して同じ側に位置する請求項4に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項6】
上記把持部の外周面から連続する上記表示部の面に光を乱反射可能な凹凸を備えた請求項1乃至5のいずれかに記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項7】
上記表示部の色が異なる請求項1乃至6のいずれかに記載の遮断桿用視認性向上カバーを、遮断桿の長さ方向に交互に複数個取り付ける、遮断桿の拡大表示方法。
【請求項1】
遮断桿の少なくとも外面の一部を覆う凹状の把持部と、上記把持部に接続された板状の表示部とを有し、上記把持部を上記遮断桿に嵌めることにより、上記表示部が上記遮断桿から上方又は下方に向く状態にし、その遮断桿の視認性を向上させることを特徴とする遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項2】
少なくとも上記把持部は弾性変形可能な素材で形成され、その把持部の弾性変形により上記遮断桿に上記把持部が嵌められて、上記表示部の向きを固定させる請求項1に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項3】
上記把持部の端部に、上記遮断桿から離れる方向へ逃げる曲面を有する返し部を備えた請求項1又は2に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項4】
上記表示部の、上記把持部側と反対側の端部に、固定用の棒を把持可能である凹状の第二把持部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項5】
上記把持部の端部と、上記第二把持部の端部とが、上記表示部に対して同じ側に位置する請求項4に記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項6】
上記把持部の外周面から連続する上記表示部の面に光を乱反射可能な凹凸を備えた請求項1乃至5のいずれかに記載の遮断桿用視認性向上カバー。
【請求項7】
上記表示部の色が異なる請求項1乃至6のいずれかに記載の遮断桿用視認性向上カバーを、遮断桿の長さ方向に交互に複数個取り付ける、遮断桿の拡大表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−56458(P2012−56458A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202065(P2010−202065)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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