説明

遮熱部材の取付構造

【課題】放熱系部材及び遮熱部材における熱収縮及び熱膨張の差を無理なく吸収することができる遮熱体の取付構造の提供にある。
【解決手段】放熱系部材を覆う遮熱部材が、複数の連結手段を介して放熱系部材及び放熱系部材と対向する対向側部材のいずれか一方に取り付けられる遮熱部材の取付構造において、複数の連結手段の少なくとも一つは、磁性材料を含む放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方と遮熱部材との間に介在される磁石25であり、遮熱部材は、磁石25の吸着により放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エキゾーストマニホールドや排気管等の放熱系部材を覆う遮熱部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エキゾーストマニホールドや排気管等の放熱系部材の周りには、放熱系部材から放熱される熱の悪影響を周囲に及ぼさないようにするため、遮熱部材を設ける場合がある。
例えば、図7に示すように、放熱系部材としてのエンジン60のエキゾーストマニホールド61には、遮熱部材としてのヒートインシュレータ62が備えられることが多い。
この場合、連結手段としての締結ボルト63を用いることにより、ヒートインシュレータ62をエキゾーストマニホールド61に取り付けている。
【0003】
ところで、エンジン60の運転・停止を繰り返されるとエキゾーストマニホールド61及びヒートインシュレータ62は熱膨張と熱収縮を繰り返す。
ヒートインシュレータ62とエキゾーストマニホールド61の材質が異なると、両者の線膨張係数も異なることから、両者61、62の熱膨張及び熱収縮の差が両者の相対移動を招く。
ヒートインシュレータ62とエキゾーストマニホールド61との間にて相対移動が生じると、締結ボルト63への荷重が作用する。
締結ボルト63への荷重が繰り返されることにより、締結ボルト63の回転が生じたり、締結ボルト63と当接するボルト座面の磨耗が生じたりして締結ボルト63の締結力が低下しやすい。
【0004】
そこで、従来では、例えば、特許文献1に開示された技術により、放熱系部材と遮熱体の熱収縮の差を吸収することが知られていた。
この種の技術では、遮熱板が放熱系部材に固定したブラケットに取り付けられるが、ブラケットと遮熱板に取付用ボルト孔が形成されている。
遮熱板の取付用ボルト孔が長孔に形成され、ボルト、ナット及び皿ばねを用いてブラケットに対して遮熱板を長孔方向に相対的にスライド可能に装着し、両者の相対移動を許容することによりブラケットと遮熱板の熱膨張及び熱収縮の差を吸収する。
【0005】
さらに、別の関連する技術としては、例えば、特許文献2に記載されたエキゾーストマニホールドカバーが存在する。
この技術では、エキゾーストマニホールドカバーに熱収縮吸収用の凹部が形成されており、凹部が熱収縮を吸収してボルトへの荷重を軽減する。
【特許文献1】実開昭53−132520号公報
【特許文献2】特開2003−35137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、取付用ボルト孔を長孔とすることから、長孔の向きや長さを熱収縮に応じて設定する必要があり、予め熱収縮による遮熱板とブラケットとの両者の相対移動量や移動の向きを把握しなければならないという。
また、ボルトによる取付箇所の数が増えると、ボルト締結に手間を必要とし遮熱板の着脱に時間が掛かるという問題がある。
さらに、ボルト、ナット及び皿ばねを必要とするから部品点数が多くなりがちであるほか、遮熱板やブラケットの両方にボルト孔を加工する必要がある。
【0007】
一方、特許文献2に開示された技術では、遮熱体を締結する締結ボルトに対して熱膨張や熱収縮による荷重が軽減されても解消されることはない。
また、熱収縮吸収用の凹部を設ける必要があることから、遮熱体の設計自由度が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、放熱系部材及び遮熱部材における熱収縮及び熱膨張の差を無理なく吸収することができる遮熱体の取付構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明は、放熱系部材を覆う遮熱部材が、複数の連結手段を介して前記放熱系部材及び前記放熱系部材と対向する対向側部材のいずれか一方に取り付けられる遮熱部材の取付構造において、複数の前記連結手段の少なくとも一つは、磁性材料を含む前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方と前記遮熱部材との間に介在される磁石であり、前記遮熱部材は、前記磁石の吸着により前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
本発明では、上記の構成により、放熱系部材及び遮熱部材が熱膨張と熱収縮を繰り返し、両者の熱膨張及び熱収縮の差が生じても、少なくとも一つの磁石の吸着力により放熱系部材及び遮熱部材の取付状態を維持しつつ、両者の熱膨張及び熱収縮の差に応じた放熱系部材と遮熱部材との間の相対移動が行われる。
これにより、放熱系部材及び遮熱部材における熱収縮及び熱膨張の差を無理なく吸収することができる
なお、磁石との被当接面との摩擦力が小さいほど遮熱部材や放熱系部材に作用する荷重が小さくなる。
【0011】
また、上記の遮熱体の取付構造において、前記磁石以外の連結手段のうちの少なくとも一つは、前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方に前記遮熱部材を締結する締結体であってもよい。
この場合、磁石以外の連結手段のうちの少なくとも一つである締結体が放熱系部材又は対向側部材に対する遮熱部材の脱落を防止することができる。
因みに、締結体による締結箇所は、磁石による連結箇所の数に関わらず一箇所とすることが好ましい。
【0012】
また、上記の遮熱体の取付構造において、前記遮熱部材が非磁性材料により形成され、前記磁石は前記遮熱部材に固定されるようにしてもよい。
この場合、遮熱部材が非磁性材料であっても、磁石が遮熱部材に固定されることにより、遮熱部材を磁石により放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方に取り付けることができる。
【0013】
また、上記の遮熱体の取付構造において、複数の前記連結手段は少なくとも2つの前記磁石を有してもよい。
この場合、2つの磁石は放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方と遮熱部材との間に介在され、遮熱部材が放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方に取り付けられる。
さらに、締結体を設ける場合には、締結体と2個の磁石を含む連結手段により、遮熱部材が放熱系部材及び対向側部材のいずれか一方に取り付けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱系部材及び遮熱部材における熱収縮及び熱膨張に多寡に関わらず、両者の相対移動を無理なく吸収することができる遮熱体の取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図3に基づき説明する。
本実施形態は、本発明をエンジン(内燃機関)のエキゾーストマニホールドへのヒートインシュレータの取付構造に適用した例である。
図1は遮熱カバーが取り付けられたエキゾーストマニホールドを示す概略平面図であり、図2は図1におけるA−A線矢視図であり、図3は遮熱カバーが取り付けられたエキゾーストマニホールドの要部の拡大平面図である。
【0016】
図1に示すエキゾーストマニホールド11は、エンジン10における各々の排気ポートから排出される排気ガスの排気通路となる複数の枝管12と、各々の枝管12に連結し、排気ガスを集合して排気管に排出するための集合部13と、各枝管12の開口縁から鍔状に形成されたシリンダヘッド取付け用のマニホールドフランジ部14とを含んで構成されている。
これらの枝管12、集合部13及びマニホールドフランジ部14の各部は鋳造により一体的に形成されている。
この実施形態のエキゾーストマニホールド11の材質は磁性材料である鋳鉄により形成されている。
各マニホールドフランジ部14には、エキゾーストマニホールド11をエンジン10のシリンダヘッドに取り付けるための取付け用孔(図示せず)が複数個形成されている。
【0017】
エキゾーストマニホールド11は、各取付け用孔に複数箇所に穿孔されている取付け用孔に螺挿されたボルト(図示せず)を介してシリンダヘッドに締結される。
従って、エキゾーストマニホールド11には燃焼後の高温の排気ガスが通り、エキゾーストマニホールド11は表面から高熱を放出する放熱系部材に相当する。
エキゾーストマニホールド11には、図1に示すヒートインシュレータ20が取り付けられる。
この実施形態のヒートインシュレータ20は磁性材料の金属板をプレス加工することにより形成されている。
ヒートインシュレータ20は、放熱系部材であるエキゾーストマニホールド11による熱的悪影響がエキゾーストマニホールド11に近接する他部材に及ぶのを防止する遮熱部材に相当する。
【0018】
ヒートインシュレータ20は、エキゾーストマニホールド11における集合部13を締結箇所とし、さらに、最外側の両枝管12との2箇所を連結箇所として取り付けられる。
ヒートインシュレータ20の集合部13に対応する部位にはボルト用通孔21が形成されており、エキゾーストマニホールド11においてボルト用通孔21の対応する部位にはねじ孔(図示せず)が形成されている。
ヒートインシュレータ20は、ボルト用通孔21に挿通された締結ボルト19を介してエキゾーストマニホールド11に取り付けられる。
締結ボルト19は連結手段に相当し、かつ、締結体であり、ヒートインシュレータ20のエキゾーストマニホールド11からの脱落を防止する。
【0019】
ヒートインシュレータ20における最外側の枝管12を臨む部位には、2連の開口部22が形成されている。
開口部22の間には横断部23が形成されている。
開口部22には、エキゾーストマニホールド11に固定された断面略M字状のブラケット16の一部が挿通される。
従って、開口部22及び横断部23の寸法は、ブラケット16の寸法と、この部位におけるヒートインシュレータ20とエキゾーストマニホールド11の相対移動の距離とを考慮して設定されている。
【0020】
ブラケット16について説明すると、図2に示すように、ブラケット16は磁性材料の金属板を断面略M字状に屈曲することにより形成されるブラケットであり、連結手段としての磁石25を保持する。
この実施形態では、最外側の両枝管12側における2個の磁石25と締結ボルト19が複数の連結手段を構成していると言える。
ブラケット16の両端部は、エキゾーストマニホールド11に形成された係止部15に係止されている。
ブラケット16が有する一対の突起部17の間に形成される谷底部18には、磁石25が配置され、磁石25はかしめによりブラケットに固定されている。
【0021】
この実施形態では、ブラケット16をフェライト系ステンレス(SUS430)から形成している。
熱伝導性の低い金属であるステンレスをブラケット16に用いることにより、エキゾーストマニホールド11からの磁石25への熱伝達を抑制している。
また、断面略M字状の形態によりブラケット16の端部から磁石25までの距離を長く設定することにより、エキゾーストマニホールド11からの磁石25への熱伝達をさらに妨げるようにしている。
なお、ブラケット16の弾性力により両端部が外側へ広がる力を利用してこの両端部を係止部15に係止するから、係止されたブラケット16がエキゾーストマニホールド11から脱落することはない。
【0022】
磁石25はヒートインシュレータ20の開口部22間の横断部23と当接する当接面25aを有する。
磁石25の当接面25a及びヒートインシュレータ20における横断部23は互いに移動可能な平坦面に形成されていることが好ましい。
これは、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20の線膨張係数が異なり、両者11、20の熱膨張及び熱収縮の差を両者11、20の相対移動により吸収するためである。
なお、磁石25は公知の磁石でよいが、キュリー温度ができるだけ高く、強い磁力を持つものが好ましい。
因みに、キュリー温度が高い磁石として希土類コバルト磁石を用いることができるほか、磁力の強い磁石としてネオジム磁石を採用することができる。
【0023】
次に、この実施形態に係るヒートインシュレータ20の取付構造の作用について説明する。
この実施形態のヒートインシュレータ20は、エキゾーストマニホールド11の集合部では締結ボルト19により固定される。
最外側の両枝管12に対しては、エキゾーストマニホールド11に係止されているブラケットの磁石25にヒートインシュレータ20が吸着されることにより取り付けられる。
【0024】
エンジン10の始動、停止を含む運転状態の変化は、エキゾーストマニホールド11の温度変化を伴う。
エキゾーストマニホールド11は600℃前後まで加熱される場合もあり、ヒートインシュレータ20がエキゾーストマニホールド11の熱を遮ることから、ヒートインシュレータ20の温度も上昇する。
このため、エキゾーストマニホールド11に近接する他部材に対するエキゾーストマニホールド11に基づく熱的悪影響の波及は防止又は抑制される。
【0025】
ところで、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20は温度変化により熱膨張と熱収縮を繰り返す。
両者11、20の材質が互いに異なることにより線膨張係数は異なり、両者11、20の熱膨張と熱収縮の差は、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20の相対移動として発現する。
この実施形態では、エキゾーストマニホールド11の集合部13においては締結ボルト19によりエキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20は両者11、20の面に沿う方向に相対移動はできない。
一方、ヒートインシュレータ20において、エキゾーストマニホールド11の枝管12付近と対応する部位は、ヒートインシュレータ20が磁石25に吸着されているだけであるから、熱膨張と熱収縮の差が存在する場合、例えば、図3に示すように、磁石25とヒートインシュレータ20との当接を維持しつつ、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20との相対移動する。
なお、図3において実線で示すヒートインシュレータ20は相対移動の状態であり、2点鎖線で示すヒートインシュレータ20は相対移動後の状態を示し、図3の矢印は相対移動の方向を示している。
【0026】
エキゾーストマニホールド11は高温になるが、ブラケット16は熱伝導性の低いフェライト系ステンレスであること、また、ブラケット16の端部から磁石までの寸法が十分に設定されているから、エキゾーストマニホールド11からブラケット16の通じて磁石25へ熱伝達は抑制される。
このため、ブラケット16における磁石25の温度上昇は抑制され、磁石25の温度は磁力が消失するキュリー温度に達することはない。
なお、希土類コバルト磁石と比較してキュリー温度が低いネオジム磁石を用いる場合、磁石25の温度は200℃程度にすることが好ましい。
因みに希土類コバルト磁石の場合、磁石25の温度が350℃程度まで達しても磁力が低下することはない。
【0027】
この実施形態に係るヒートインシュレータ20の取付構造は以下の作用効果を奏する。
(1)エキゾーストマニホールド11及びヒートインシュレータ20が熱膨張と熱収縮を繰り返し、両者の熱膨張及び熱収縮の差により両者が相対移動しても、ヒートインシュレータ20における磁石との被当接面が磁石25に対して移動するだけで済み、エキゾーストマニホールド11及びヒートインシュレータ20の取付状態を維持することができる。
(2)連結手段である磁石25と別に設けた締結ボルト19がエキゾーストマニホールド11に対するヒートインシュレータ20の脱落を防止することができる。因みに、締結ボルト19による締結箇所は、磁石25による連結箇所の数に関わらず一箇所とすることが好ましい。
【0028】
(3)磁石25が固定されたブラケット16を介して磁石25にヒートインシュレータ20を吸着させるようにしたから、磁石25をエキゾーストマニホールド11に直接取り付けることがなく、エキゾーストマニホールドから磁石への熱伝達が抑制され、磁石25の温度上昇を抑制することができる。
(4)ブラケット16は熱伝導性の低いフェライト系ステンレスであること、また、ブラケット16の端部から磁石25までの寸法が十分に設定されているから、エキゾーストマニホールド11が高温になっても、エキゾーストマニホールド11から磁石25への熱伝達はさらに抑制される。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図4に基づき説明する。
第1の実施形態では、連結手段である磁石25をブラケット16に固定するようにしたが、この実施形態ではヒートインシュレータに磁石を固定するようにしている。
第2の実施形態の構成のうち、第1の実施形態と共通する要素については、説明の便宜上、先に説明した第1の実施形態で用いた符号を一部共通して用い、共通する構成についてはその説明を省略し、第1の実施形態の説明を援用する。
【0030】
図4は、エキゾーストマニホールドにおける最外側の枝管の要部を示す縦断面図である。
図4に示すように、エキゾーストマニホールド11は、第1の実施形態のエキゾーストマニホールド11と基本的に同じ形態を有し、ブラケット31を係止するための係止部15を有する。
ブラケット31は、磁性材料の金属板を折り曲げて形成されており、断面山型状の形態を呈し、平坦な頂部31aを有する。
ブラケット31は第1の実施形態と同様に熱伝導性の低いフェライト系ステンレスにより形成されている。
このブラケット31には、第1の実施形態のブラケット16と異なり、連結手段である磁石35は固定されない。
【0031】
ヒートインシュレータ32は、図示しないが第1の実施形態と同様にエキゾーストマニホールド11の集合部13に対して締結体である締結ボルト19により連結される。
締結ボルト19は、連結手段である磁石35とは別の連結手段である。
一方、最外側の枝管12では磁石によりヒートインシュレータ32がエキゾーストマニホールド11に取り付けられている。
ヒートインシュレータ32は、エキゾーストマニホールド11に設置されたブラケット31の一部と倣う断面を有する。
具体的には、ブラケット31の頂部31aを挿入することができる凹部33(図4では上向きの凹部)が形成されている。
凹部33の内側底部(図4において凹部33の内側上部)に磁石35がかしめにより固定されている。
この磁石35は第1の実施形態と同じネオジム磁石であり、ブラケット31との当接面35aを有し、磁石35の当接面35aにブラケット31の頂部31aが吸着される。
【0032】
この実施形態では、エキゾーストマニホールド11の集合部13(図示せず)においては締結ボルト19(図示せず)によりエキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ32は表面に沿う方向に相対移動はできない。
一方、エキゾーストマニホールド11の枝管12付近では、磁石35がブラケット31を吸着する。
このため、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ32との熱膨張と熱収縮の差が存在する場合、ブラケット31を介して磁石35とヒートインシュレータ32との当接を維持しつつ、エキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ32は相対移動する。
【0033】
この実施形態は、第1の実施形態の作用効果(1)〜(4)とほぼ同等の作用効果を奏する。
さらに言うと、磁石35をヒートインシュレータ32に固定することができるから、ヒートインシュレータ32を非磁性材料により形成することが可能となる。
【0034】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図5に基づき説明する。
この実施形態は、ヒートインシュレータをエキゾーストマニホールドへ取り付けず、対向側部材としてのボディにヒートインシュレータを取り付ける例である。
図5は最外側の枝管に対応するヒートインシュレータの破断図である。
図5に示すエキゾーストマニホールド41は、第1、第2の実施形態に係るエキゾーストマニホールド11とほぼ同じ構成である。
エキゾーストマニホールド41は、集合部(図示せず)、枝管42、マニホールドフランジ部43を備えているが、係止部は形成されていない。
【0035】
ヒートインシュレータ45において、エキゾーストマニホールド41の最外側の枝管42に対応する部位の形状は、第2の実施形態のヒートインシュレータ32とほぼ同じであり凹部46を有する。
この実施形態では、ヒートインシュレータ45の外側(上方)に設けられたボディ40と、ヒートインシュレータ45がともに磁性材料により形成されている。
凹部46の外側表面である頂部47とボディ40との間に連結手段としての磁石48を位置させることにより、磁石48がボディ40及びヒートインシュレータ45に吸着し、ヒートインシュレータ45はボディ40に取り付けられる。
なお、図示はしないものの、ヒートインシュレータ45において、エキゾーストマニホールド41の集合部付近に対応する部位は、連結手段であって締結体としての締結ボルト(図示せず)を介してボディ40に取り付けているが、例えば、第1、第2の実施形態のように、エキゾーストマニホールド41と締結ボルト19により締結するようにしていもよい。
【0036】
この実施形態では、ヒートインシュレータ45をエキゾーストマニホールド41に直接取り付けないようにして設置することができる。
磁石48がエキゾーストマニホールド41からより離れた位置で用いられるため、磁石48の加熱が抑制され、磁石48のキュリー温度による悪影響を受けにくくなる。
【0037】
(締結体の別例)
次に、連結手段である締結体の別例について図6に基づき説明する。
第1〜第3の実施形態では、図7に示す締結ボルト63と同じ構成の締結ボルト19を連結手段である締結体として、エキゾーストマニホールドの集合部に対するヒートインシュレータの取り付けを図るようにしたが、締結体の別例として、例えば、図6に示す締結体を用いてよい。
なお、説明の便宜上、エキゾーストマニホールドとヒートインシュレータは第1の実施形態の符号を用いる。
【0038】
図6は集合部におけるエキゾーストマニホールド11とヒートインシュレータ20を破断して別例に係る締結体を示した図である。
この別例に係る締結体は、ピン51と、割ピン52と、板ばね53により主に構成されている。
【0039】
エキゾーストマニホールド11の表面には、ロウ付けあるは溶接により植設されたピン51が設けられている。
ピン51の基端と反対の先端付近には、割ピン52を挿通するピン孔51aが形成されている。
割ピン52は金属線を屈曲して形成された公知のものである。
一方、ヒートインシュレータ20にはピン51の挿入を許容する径のピン用通孔54が形成されている。
【0040】
板ばね53は、ピン51の径にほぼ対応する通孔53aを有し、ヒートインシュレータ20とエキゾーストマニホールド11の間に介在するように、ピン51に挿入される。
板ばね53はピン51の軸方向に荷重を受けると一定の距離だけ圧縮し、荷重の解放により復元する機能を有する。
板ばね53にヒートインシュレータ20を重ね、ヒートインシュレータ20から突出するピン51先端のピン孔に割ピン52を挿通することにより、集合部13においてヒートインシュレータ20がエキゾーストマニホールド11に締結される。
【0041】
なお、ヒートインシュレータ20とエキゾーストマニホールド11の集合部13における相対移動を考慮して、ヒートインシュレータ20に形成したピン用通孔54をピン51の径よりも大きく設定してもよい。
この別例によれば、ピン51への割ピン52の装脱によりヒートインシュレータ20のエキゾーストマニホールド11への締結と締結解除が簡単に行える。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の第1〜第3の実施形態では、エンジンのエキゾーストマニホールドを放熱系部材とし、遮熱部材をヒートインシュレータとして説明したが、放熱系部材はエキゾーストマニホールドに限定されない。放熱系部材は、エンジンではエキゾーストマニホールドの他にターボやマフラー等の排気系部材でもよい。また、放熱系部材は、エンジン以外では、例えば、ボイラー、暖房設備、タービン等のように高温となり、熱の遮断を必要とする部材であればよい。
【0043】
○ 上記の第1、第2の実施形態では、遮熱部材であるヒートインシュレータは、放熱系部材であるエキゾーストマニホールドの枝管付近において磁石及びブラケットを介して取り付けられたが、高温でもキュリー温度の影響を受けにくい磁石であれば、ブラケットを介在させることなく放熱系部材と遮熱部材との間に磁石を介在させ、放熱系部材と遮熱部材の少なくとも一方を磁石に吸着させるようにしてもよい。
【0044】
○ 上記の第1〜第3の実施形態では、遮熱部材であるヒートインシュレータ、放熱系部材であるエキゾーストマニホールド、あるいはブラケットが磁性体材料により形成されるとしたが、放熱系部材及び遮熱部材の少なくとも一方が磁性材料であればよい。因みにブラケットはエキゾーストマニホールドに取り付けられることから、放熱系部材の一部又は付属物とすればよく、遮熱部材が非磁性材料である場合、磁性材料により形成される必要がある。
【0045】
○ 上記の第1〜第3の実施形態では、1本の締結ボルトと、2個の磁石を含む要素により、ヒートインシュレータをエキゾーストマニホールドに取り付けるようにしたが、磁石の数や取り付けの位置は遮熱部材の条件に応じて適宜設定でき、少なくとも1以上とすればよい。また、連結手段でもあり脱落防止のための締結体は、放熱系部材と遮熱部材の相対移動を考慮すると1個とすることが好ましいが、両者の相対移動が比較的小さく発現する部位においては複数個の締結体を設けることを妨げるものではない。
【0046】
○ 上記の第3実施形態では、ヒートインシュレータをエキゾーストマニホールドに取り付けず、エキゾーストマニホールドと対向するボディにヒートインシュレータを取り付けるようにしたが、放熱系部材に遮熱部材を取り付けず放熱系部材と対向する対向側部材に遮熱部材を設けることは、エキゾーストマニホールド以外の放熱系部材についても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造を示す概略平面図である。
【図2】図1におけるA−A線矢視図である。
【図3】エキゾーストマニホールドとヒートインシュレータの要部を示す拡大平面図である。
【図4】第2の実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造を示す概略断面図である。
【図5】第3の実施形態に係るヒートインシュレータの取付構造を示す概略断面図である。
【図6】締結体の別例を示す概略断面図である。
【図7】従来のヒートインシュレータの取付構造を示す概略平面図と概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10、60 エンジン
11、41、61 エキゾーストマニホールド
12 枝管
13 集合部
15 係止部
16、31 ブラケット
19、63 締結ボルト
20、32、45、62 ヒートインシュレータ
22 開口部
23 横断部
25、35、48 磁石
33、46 凹部
40 ボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱系部材を覆う遮熱部材が、複数の連結手段を介して前記放熱系部材及び前記放熱系部材と対向する対向側部材のいずれか一方に取り付けられる遮熱部材の取付構造において、
複数の前記連結手段の少なくとも一つは、磁性材料を含む前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方と前記遮熱部材との間に介在される磁石であり、
前記遮熱部材は、前記磁石の吸着により前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方に取り付けられることを特徴とする遮熱部材の取付構造。
【請求項2】
前記磁石以外の連結手段のうちの少なくとも一つは、前記放熱系部材及び前記対向側部材のいずれか一方に前記遮熱部材を締結する締結体であることを特徴とする請求項1記載の遮熱部材の取付構造。
【請求項3】
前記遮熱部材が非磁性材料により形成され、前記磁石は前記遮熱部材に固定されることを特徴とする請求項1又は2記載の遮熱部材の取付構造。
【請求項4】
複数の前記連結手段は少なくとも2つの前記磁石を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の遮熱部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−190514(P2008−190514A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28956(P2007−28956)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】