説明

遮蔽式集積所内の石油コークス貯蔵、脱湿、再採取自動システム

本発明は、高含有湿度の石油コークス燃料を遮蔽式集積所内に貯蔵し、設定湿度値まで自然脱湿し、次いで、熱ユニットに供給するサイロへ搬送するために再採取する自動プラントおよび方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
石油化学プラントから生じるコークスであり、分留プラントから出て来る石油コークスは、通常、流体混合物として発電所構内の近くに搬送され、そこで、石油コークスの水含有量を20%未満に減少させるために、Hydrobin(登録商標)として知られている脱水サイロ内に貯蔵される。
【0002】
Hydrobin(登録商標)サイロから、石油コークスは、全体的に開放された集積所に移され、そこで、スクレーパおよび適切な滞留時間により、約10〜12%まで自然に水分を失う。その後、石油コークスは、積載システムのグリッド上に押し出されて、次いで、動作中の熱ユニットの供給サイロへ搬送される。
【0003】
この従来の開放集積所システムは、石油コークスを周囲環境内に飛散させること、石油コークスの採取が天候状態に左右されること、期待値より大きな湿気含有量を有する燃料をボイラに供給せざるを得ないことがどうしても起こり、それにより出力が低下することなど、いくつかの不都合を有する。高湿度で固まり易い燃料を移動させると、いくつかの他の問題が発生し、ボイラへの燃料供給を阻害するリスク、および/または、適切な非充填装置(anti-packing device)を必要とするが、しばしば不確実な結果になるリスクがある。しかし、遮蔽式集積所を使用すると、前記の不都合は取り除かれるが、操作員が高塵埃含有領域に留まることによる他の問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これら全ての問題を解決し、そのために使用する装置および方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、石油コークスを要求される湿度で移動させるプログラム式回転技法を採用することによって、連続的、定常的態様で、石油コークスを区画化された遮蔽式集積所に貯蔵し、脱湿し、再採取する自動システムを備える。
【0006】
本発明の主要な利点は以下の通りと考えてよい。すなわち、
・石油コークス塵埃を周囲環境に飛散させることが回避され、
・一定湿度の石油コークスが集積所から再採取され、
・プロセスが自動化され、
・集積所内の石油コークスを移動させる機械的積載装置が無くなる、
ことである。
【0007】
さらに、例えば、様々な硫黄含有量など様々な品質の石油コークスの製造が要求された場合、独立した供給および再採取システムを有する個別の区画を設けることが可能である。
【0008】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明を要約すると、本発明は、下記の構成要素を備える自動システムに関する。それら構成要素は、
・Hydrobin(登録商標)サイロから遮蔽式貯蔵および再採取集積所への機械的搬送および集積所貯蔵システムと、
・区画と、残留物が地下に浸出するのを回避するためのセメントまたは他の防水材質の床と、ならびに、石油コークスから排出された水分を収集する、傾斜底面を有する適切なシステムとを備える石油コークス貯蔵構造を具備する遮蔽式集積所と、
・貯蔵および再採取構造の区画内へ自動的に石油コークスを分配する機械システムであって、
コンベヤベルトと、
シャトルベルトと、
固定式ベルトおよびシャトルベルトがその上に取り付けられている、長手方向に移動するブリッジクレーンと、
を備える機械システムと、
・貯蔵および再採取構造の区画から自動的に石油コークスを再採取する機械システムであって、長手方向に移動するブリッジクレーン上に取り付けられた横方向に移動可能なリフト式浚渫エレベータの形態の単一機械を備える機械システムと、
・浚渫エレベータから粉砕ラインへ、次いで、熱ユニットに供給するサイロ向けの投入ラインへ石油コークスを供給する機械的搬送システムと、
・動作の説明において以下に例示されるように、前記動作を確実に自動的に進行させるように適合された調節および制御システムと、
・塵埃が外部に飛散するのを回避するために環境を僅かに負圧下に保つことを可能にする貯蔵および再採取構造の換気システムと、
である。
【0009】
本発明の他の利点、特徴、および動作モードは、例示的かつ非限定的例として提示される以下のいくつかの好ましい実施形態の詳細な説明から明瞭に明らかになるであろう。
【0010】
添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のプラントの好ましい実施形態の例示的全体構成図であり、例えば、硫黄含有量が異なる2つの異なる品質の石油コークスAおよびBを貯蔵でき、各品質に対して3つの貯蔵区画を備える図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を参照すると、石油コークスの搬送、貯蔵および再採取プラントが、全体を符号1によって示されている。以下の説明から理解されるように、プラント1は、特に、Hydrobin(登録商標)サイロから出た石油コークスの貯蔵および再採取構造への搬送を実施するように適合され、対応する区画内に自動的に配置し、適切な貯蔵時間後脱湿された石油コークスを再採取して動作中の熱ユニットに供給することを可能にする。
【0013】
本明細書の概要部分で述べたように、本発明の自動プラントは、プログラム式回転技法を用いることによって、ちょうど空になった、またはまだ湿っている石油コークスが入っている区画内に湿った石油コークスを配置し、設定貯蔵時間が終わり、したがって再採取してよい含有湿度を有する石油コークスが入った区画から石油コークスを取り出すことができる。
【0014】
ボイラへ搬送される石油コークスの最終的湿度(10〜12%)は、燃料に含まれる水分を燃焼プロセス中に加熱し蒸発させるためのエネルギー消費量を低減させる必要性に依存するが、集積所からボイラ供給用の燃料貯槽へ搬送中の自然発火現象を回避するために下限(約8%)を有する。
【0015】
より良い例示を目的として、搬送水から石油コークスが分離されるHydrobin(登録商標)サイロを出てボイラ供給用燃料貯槽を充填するに至るまでの石油コークスが辿るルートに則して、プラント1の様々な構成要素が、以下に説明される。
【0016】
Hydrobin(登録商標)もしくは脱水サイロ、または同様な第1の脱水装置2の直ぐ下流で、石油コークスが、振動チャネル3を通してゴムベルトコンベヤ4などの上に排出される。
【0017】
コンベヤ4の下流で、ある種の第2のコンベヤ5が、遮蔽式集積所9内部の自動貯蔵システムに供給する。
【0018】
これらコンベヤは、物質が周囲に飛散するのを回避するカバー93を備え、また、存在し得る余分な水分をより容易に地下チャネル51へ戻らせ、その後主水浄化プラント12へ向かわせる、最初の傾斜区間を有する。
【0019】
遮蔽式集積所9は区画構造91からなり、図示された実施形態では、各燃料品質に対して3つの区画91a、91b、91cがあり、ここで小文字は、対応する区画91中の滞留時間に関連する異なる3つの石油コークス脱水段階を意味し、各区画の底部92はセメント製であり、その中に貯蔵されている石油コークス内に含まれる水分を排出して主水浄化プラント12に向かわせ易くするように傾斜している。透明カバー93、内部換気システム94などのいくつかの特徴が貯蔵燃料の脱湿を改善し、それらにより内部集積所環境が軽い真空状態に保たれ、したがって塵埃が外に出、外部に飛散する可能性が回避される。収集された凝縮物は、主水浄化プラント12に搬送して湿気および塵埃を全て除去しなければならない。
【0020】
以後、例示的非限定的例として、AおよびBは異なる2つの硫黄含有量を意味し、したがって、数組の区画91を有するプラント内に同時に含まれることもあり得る2つの品質のコークスを意味する。
【0021】
自動化石油コークス分配システムは、湿潤石油コークスを対応する区画91a、91b、91cに貯蔵することを可能にする。この自動化分配システムは、遮蔽式集積所9中で利用可能な全ての区画91a、91b、91cに届くように長手方向に動くように適合され、車輪61上に支持されたゴムベルトコンベヤ6を備える。
【0022】
コンベヤ6は、次いで、ゴムベルトコンベヤ71に供給し、ゴムベルトコンベヤ71は、第2のゴムベルトシャトルコンベヤ72上に排出し、その両方ともブリッジクレーン7に連結されている。ブリッジクレーン7の長手方向移動とシャトルベルト72の横方向移動との組合せにより、利用可能な区画内に各区画内部に一様になるように石油コークスを分配することが可能になる。
【0023】
区画91a、91b、91cは、各製造品質に対して各コーキングタワー(図示せず)から来る1日当たりの石油コークス産出量に等しい容量を有する。したがって、遮蔽式集積所で石油コークスを分配し再採取する自動システムは、プログラム式回転ルールを用いて諸区画の充填を行う。例えば、定常状態から始めて、石油コークスが第1の区画(例えば91a)内に排出されると、再採取システムは第3の区画(例えば91c)に対して動作し、それにより、再採取されたコークスが2日の貯蔵時間の間滞留したことを保証し、その時間は、平均的に約10〜12%の最終含有湿度を保証する。各区画91a、91b、91cは、排出された水分がその底部92に送られるように傾斜した底面を有し、その水分は前記底部から水浄化プラント12に送られる。
【0024】
自動化再採取システムは、区画91から取り出された石油コークスを固定式ゴムベルトコンベヤ82などに供給する浚渫エレベータ81などの形態の単一機械を備える。両方の機械ともブリッジクレーン8に取り付けられ、浚渫回収機械81には、横方向移動のための車輪がやはり設けられている。回収された後、石油コークスは、集積所全体の長さに亘るホイールベースを有するコンベヤ10に供給される。コンベヤ10を用いて、石油コークスは粉砕システム11へ、次いでボイラの燃料貯槽へ搬送される。これら粉砕手段および搬送手段は、それらが現況技術に属し、したがって本発明の一部分ではないので、例示されていない。
【0025】
本発明の自動化システムに専用の調節および制御システムが、上記の動作を確実に自動的に進行させるように適合されている。
【0026】
最終的石油コークスの湿度および貯蔵時間の前記の所定値は、プラント1を管理する操作員が選択的に設定することができる。
【0027】
本発明が、好ましい実施形態に則して記述されてきた。添付特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することはないが同じ発明主旨を含む他の実施形態を当業者が発想し得ることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高湿気含有量を有する石油コークス燃料を遮蔽式集積所(9)内に貯蔵し、所定の湿度値まで自然脱湿し、次いで再採取する自動システム(1)であり、特に、熱ユニットに接続された石油コークス製造プラントで使用するように適合された自動システム(1)であって、
・第1の脱水プラント(2)から来る含有湿度が高い石油コークスの機械的搬送手段(3、4、5)と、
・前記含有湿度が高い石油コークスを受け入れるように適合された底部(92)を有する区画(91)を備え、設定湿度値までの石油コークスの自然脱湿が前記区画内部で行われる遮蔽式集積所(9)と、
・前記区画(91)内に高湿度石油コークスを分配する自動化機械プラントと、
・設定された湿度を含有する石油コークスを前記区画(91)から再採取する自動化機械プラントと、
・貯蔵物質の脱湿を促進し、集積所の環境を軽い真空状態に保って塵埃の飛散を回避する、前記遮蔽式集積所(9)内部の換気システム(94)と、
・上記動作を自動進行させることができる調節および制御システムと、
を備える自動システム(1)。
【請求項2】
前記機械コンベヤ(3、4、5)が、物質が周囲環境に飛散するのを回避するためのカバーを備える、請求項1に記載の自動システム(1)。
【請求項3】
前記機械コンベヤ(5)は、搬送されている物質中の余分な水分を、前記コンベヤの下に配置され且つ水浄化プラント(12)に接続されているチャネル(51)を用いて回収することを可能にする、前記請求項のいずれかに記載の自動システム(1)。
【請求項4】
前記調節および制御システムが、1日当たりの石油コークスの産出量を所定の区画(91)に分配し、それを操作員によって設定された貯蔵時間後に再採取することを可能にし、前記時間が所望の最終的湿度によって決まる、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項5】
前記遮蔽式集積所(9)が、区画(91)を有する構造からなり、各区画が1日当たりの石油コークスの産出量を入れるように適合された容量を有する、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項6】
前記遮蔽式集積所の前記カバー(93)が、前記遮蔽式集積所内に貯蔵されている石油コークスの自然脱湿を促進するように、透明な材質から製作されている、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項7】
各区画(91)の前記底部(92)が防水材質から製作されている、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項8】
前記遮蔽式集積所(9)の各区画(91)の前記底部(92)が、石油コークスの貯蔵中に排出されたものが自然に前記主水浄化プラント(12)へ流出することを可能にするような傾斜を有する、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項9】
前記換気システム(94)が、前記遮蔽式集積所(9)の内部を僅かに真空状態にして、塵埃が外部に飛散するのを回避する、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項10】
前記コンベヤ(6)が、その長手方向移動を可能にする車輪(61)を備え、それにより、前記遮蔽式集積所(9)の全ての前記区画(91)に石油コークスの分配が行える、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項11】
前記機械的石油コークス分配システムが、長手方向および横方向移動を行えるように適合され、固定式ベルトコンベヤ(71)およびシャトルコンベヤ(72)がその上に取り付けられたブリッジクレーン(7)からなる、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項12】
前記遮蔽式集積所(9)の前記区画(91)からの前記機械的石油コークス再採取システムが、長手方向および横方向移動を行えるように適合され、シャトルとして動作する浚渫エレベータ(81)または同等な機械と、固定式コンベヤ(82)とがその上に取り付けられたブリッジクレーン(8)からなり、前記コンベヤ(82)は、前記遮蔽式集積所(9)の全ての前記区画(91)から再採取を行えるようなホイールベースを有する固定式コンベヤ(10)に供給する、前記請求項の一項または複数項に記載の自動システム(1)。
【請求項13】
石油コークスを遮蔽式集積所(9)内に分配し、脱湿し、そこから再採取する方法であって、
・第1の脱水プラント(2)から出た高湿度石油コークスを自動的に積載するステップと、
・前記遮蔽式集積所(9)へ高湿度石油コークスを自動的に供給するステップと、
・前記遮蔽式集積所(9)の空の区画(91)へ高湿度石油コークスを自動的に分配するステップと、
・操作員によって設定された値に相当する貯蔵滞留時間(例えば2日)の間、石油コークスが留まった前記区画から石油コークスを自動的に再採取するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記遮蔽式集積所(9)の前記区画(91)へ前記高湿度石油コークスを供給する前記ステップと、同じ区画(91)から低湿度石油コークスを再採取するステップとが、操作員によって設定された遅れ時間を考慮に入れて、プログラム式回転原則に従って調節され、前記遅れは、前記石油コークスが要求された最終湿度に達するのに必要な貯蔵時間に等しい、請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−519363(P2010−519363A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550343(P2009−550343)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001998
【国際公開番号】WO2008/139327
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(504267769)マガルディ リチェルケ エ ブレヴェッティ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (3)
【Fターム(参考)】