説明

遮音床下地材

【課題】遮音効果をより十分発揮させることができる遮音床下地材を提供する。
【解決手段】建物の床板下に配設されて遮音を図り得る遮音床下地材において、上面1aから上方に向かって突出形成された複数の上面側凸部2及び下面1bから下方に向かって突出形成された複数の下面側凸部3がそれぞれ形成された板状のパネル体1を有して成るとともに、上面側凸部2及び下面側凸部3は、当該パネル体1の面方向に対して所定寸法t離間した位置にそれぞれ形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の建物の床板下に配設されて遮音を図り得る遮音床下地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の鉄骨を躯体とする建物のコンクリート床スラブ上に施工されるとともに、遮音を図り得る床下地材として、従来、振動を緩衝するための緩衝層を含む複数の材料層を重ね合わせて成るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の遮音床下地材は、緩衝層を構成する支持板部の上面及び下面にそれぞれ凸部が一体形成されて成り、当該凸部の間に介在する空気によって、床板に付与された振動エネルギーが下方側に伝達されるのを抑制することにより遮音を図るものとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−8588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の遮音床下地材においては、支持板部(パネル体)の上面側の凸部と下面側の凸部とが当該支持板部(パネル体)の面方向に対して等しい位置(支持板部を挟んで上面側の凸部と下面側の凸部とが対峙した位置)に形成されているため、上面側の凸部に付与された振動エネルギーが下面側の凸部に伝達され易く、遮音効果が十分発揮できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、遮音効果をより十分発揮させることができる遮音床下地材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、建物の床板下に配設されて遮音を図り得る遮音床下地材において、上面から上方に向かって突出形成された複数の上面側凸部及び下面から下方に向かって突出形成された複数の下面側凸部がそれぞれ形成された板状のパネル体を有して成るとともに、前記上面側凸部及び下面側凸部は、当該パネル体の面方向に対して所定寸法離間した位置にそれぞれ形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の遮音床下地材において、前記上面側凸部の突端側に固定された上面板と、前記下面側凸部の突端側に固定された下面板とを有し、当該上面板及び下面板の間に前記パネル体が介装されて成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の遮音床下地材において、前記パネル体と前記上面板及び下面板とは、互いに比重が異なる材質から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、上面側凸部及び下面側凸部は、パネル体の面方向に対して所定寸法離間した位置にそれぞれ形成されたので、当該上面側凸部を介して形成される空気層或いは下面側凸部を介して形成される空気層によって遮音効果を発揮し得るとともに、振動エネルギーの伝達経路を長くすることができ、遮音効果をより十分に発揮させることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、上面板及び下面板の間にパネル体が介装されて成るので、これらパネル体、上面板及び下面板をそれぞれ現場に持ち込み、その場で組み付けるものに比べ、搬送を容易に行わせることができるとともに遮音床下地材を建物の床板下に容易に施工することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、パネル体と上面板及び下面板とは、互いに比重が異なる材質から成るので、要求される遮音特性に応じた材質の選択を行うことができ、遮音性能をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る遮音床下地材を示す断面模式図
【図2】同遮音床下地材におけるパネル体を示す平面図
【図3】同遮音床下地材を一部破断した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る遮音床下地材は、主にマンション等の鉄骨を躯体とする建物の床板下に配設されて遮音を図り得るもので、図1〜3に示すように、コンクリートスラブDと床板6との間に介装された積層体から成り、パネル体1と、上面板4と、下面板5とから主に構成されている。本実施形態に適用される床板6は、床板ピース6a、6bに分割構成とされており、現場にてこれら床板ピース6a、6bを組み合わせて接合させるものとされており、釘や接着剤等を用いずに組付可能とされている。尚、床板6は、図1に示す如き本実加工に代えて、他の接合方法(クリック式など)としてもよい。

【0014】
パネル体1は、上面1aから上方(上面板4側)に向かって突出形成された複数の上面側凸部2及び下面1bから下方(下面板5側)に向かって突出形成された複数の下面側凸部3がそれぞれ形成された板状部材から成るものである。これら上面側凸部2及び下面側凸部3は、それぞれ円柱形状に成形されたものであり、所定間隔を有しつつ縦横方向に並んで突出形成されている。尚、当該上面側凸部2及び下面側凸部3は、円柱形状のものに限定されず、ブロック状のものであれば、他の形状のもの(例えば断面が矩形状のもの、半球状のもの、又は円錐状のもの等)であってもよい。
【0015】
ここで、パネル体1の上面側凸部2及び下面側凸部3は、図2に示すように、当該パネル体1の面方向に対して所定寸法t離間した位置にそれぞれ形成されている。即ち、上面側凸部2をパネル体1の下面1b側に投影した場合、その投影と下面側凸部3とが重ならず(勿論、両者が接することもなく)所定寸法tだけ離間しており、反対に下面側凸部3をパネル体1の上面1a側に投影した場合、その投影と上面側凸部2とが重ならず(勿論、両者が接することもなく)所定寸法tだけ離間しているのである。
【0016】
また、上面側凸部2及び下面側凸部3は、パネル体1とは別体とされ、当該パネル体1の上面1a及び下面1bに対して接着されるものとされており、例えばホットメルト等の熱硬化性樹脂を用いて接着されるものが好ましいが、ブチルゴム等のゴム系樹脂や硬質ウレタンなどの発泡スポンジ等から成る接着剤を用いて接着するようにしてもよい。熱硬化性樹脂から成る接着剤を用いれば、大量生産が可能となり、製造コストを低減させることができ、商業施設などに好適であるとともに、ゴム系樹脂から成る接着材を用いれば、耐久性に優れた遮音床下地材とすることができ、賃貸住宅などに好適である。
【0017】
更に、ウレタン系樹脂から成る接着剤を用いれば、軽量衝撃音遮音性能LL(硬貨やゴルフボールなどを当てたとき、コツコツという音に対する遮音性能)に優れた遮音床下地剤とすることができ、階下への騒音が問題となる集合住宅に好適である。尚、ウレタン系樹脂から成る接着剤を用いれば、臭いがほとんどなく扱いが容易とされるとともに、エポキシ系樹脂から成る接着剤を用いれば、強度耐久性を向上させることができる。このように、パネル本体1と上面側凸部2及び下面側凸部3とを接着する接着剤は、遮音床下地材が適用される対象に応じて任意選択されるのが好ましい。
【0018】
上面板4は、上面側凸部2の突端側に固定された板状部材から成るものであり、当該上面側凸部2の突端面に接着剤を用いて接着される。ここで使用される接着剤は、上記したパネル本体1と上面側凸部2及び下面側凸部3とを接着する接着剤と同様のものが用いられるが、他の形態の接着剤で接着するようにしてもよい。而して、上面板4とパネル本体1とが上面側凸部2を介して接着されるので、それらの間に空気層が介在することとなり、その空気層によって遮音効果を発揮することができる。
【0019】
下面板5は、下面側凸部3の突端側に固定された板状部材から成るものであり、当該下面側凸部3の突端面に接着剤を用いて接着される。ここで使用される接着剤は、上記したパネル本体1と上面側凸部2及び下面側凸部3とを接着する接着剤と同様のものが用いられるが、他の形態の接着剤で接着するようにしてもよい。而して、下面板5とパネル本体1とが下面側凸部3を介して接着されるので、それらの間に空気層が介在することとなり、その空気層によって遮音効果を発揮することができる。
【0020】
上記したように本実施形態に係る遮音床下地材によれば、空気層を有して遮音効果を発揮させることができるのに加え、上面側凸部2及び下面側凸部3がパネル体1の面方向に対して所定寸法t離間した位置にそれぞれ形成されたので、振動エネルギーの伝達経路を長くすることができ、遮音効果をより十分に発揮させることができる。即ち、床板6上に衝撃等が付与されて振動エネルギーが下方に伝達される際、上面側凸部2及び下面側凸部3の離間寸法である所定寸法tだけ伝達経路が増加するため、その過程で振動エネルギーを抑制することができ、遮音効果をより一層高めることができるのである。
【0021】
ここで、本実施形態に係る遮音床下地材は、パネル体1と上面板4及び下面板5とは、互いに比重が異なる材質から成るものとされている。例えば、パネル体1は、JIS A5905で規定される繊維板から成るものとし、特に比重0.8以上のハードボードに属する木質繊維板若しくはアスファルト系遮音材、及びそれに鉄粉を含浸させた遮音シートと称されるものを用いるのが好ましい。かかる材質によれば、比重が高いパネル体1とすることができ、重量衝撃音遮音性能LH(重量物から衝撃が加えられたとき、ドシンという音に対する遮音性能)を向上させることができる。尚、一般的にLHは、床の重量を大きくすることにより床構造を撓み難く頑丈にすることで改善されることが知られている。
【0022】
一方、上面板4及び下面板5は、要求される遮音特性に応じてパネル体1よりも比重が高い材料或いは低い材料が選択的に用いられる。比重が低い材料とは、JIS A5905で規定される中比重繊維板(0.8未満)より軽いものを指し、木質に限らず廃衣料原料の硬質フェルトなどの繊維系、硬質ウレタン等の化学発泡系、或いは合板やパーティクルボードを含む木質系のものも適用可能である。比重が低い材料を用いた場合、軽量衝撃音遮音性能LL(硬貨やゴルフボールなどを当てたとき、コツコツという音に対する遮音性能)を向上させることができる。尚、一般的にLLは、床の裏面側に柔軟性を持たせ、衝撃を吸収させることで改善されることがしられている。
【0023】
本実施形態によれば、上面板4及び下面板5の間にパネル体1が介装されて成るので、これらパネル体1、上面板4及び下面板5をそれぞれ現場に持ち込み、その場で組み付けるものに比べ、搬送を容易に行わせることができるとともに遮音床下地材を建物の床板6下に容易に施工することができる。また、パネル体1と上面板4及び下面板5とは、互いに比重が異なる材質から成るので、要求される遮音特性に応じた材質の選択を行うことができ、遮音性能をより向上させることができる。
【0024】
然るに、本実施形態においては、パネル体1、上面板4及び下面板5の材料において、大小の比重(異なる比重)のものを組み合わせて構成されているので、振動の吸収と遮断効果を与えることができるとともに、上面側凸部2及び下面側凸部3を柔軟な材料で構成しているので、音の振動を効果的に減らすことができる。
【0025】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばコンクリートスラブDと床板6との間に上面側凸部2及び下面側凸部3を有したパネル体1のみを単体介装させたものとしてもよく、或いは上面板4及び下面板5とパネル体1とが略同一の比重の材質のものから構成されたものとしてもよい。尚、適用される床板6は、床板ピース6a、6bを組み合わせて接合させるものに限らず、汎用的な床板とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上面側凸部及び下面側凸部がパネル体の面方向に対して所定寸法離間した位置にそれぞれ形成された遮音床下地材であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 パネル体
2 上面側凸部
3 下面側凸部
4 上面板
5 下面板
6 床板
D コンクリートスラブ
t 所定寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床板下に配設されて遮音を図り得る遮音床下地材において、
上面から上方に向かって突出形成された複数の上面側凸部及び下面から下方に向かって突出形成された複数の下面側凸部がそれぞれ形成された板状のパネル体を有して成るとともに、前記上面側凸部及び下面側凸部は、当該パネル体の面方向に対して所定寸法離間した位置にそれぞれ形成されたことを特徴とする遮音床下地材。
【請求項2】
前記上面側凸部の突端側に固定された上面板と、
前記下面側凸部の突端側に固定された下面板と、
を有し、当該上面板及び下面板の間に前記パネル体が介装されて成ることを特徴とする請求項1記載の遮音床下地材。
【請求項3】
前記パネル体と前記上面板及び下面板とは、互いに比重が異なる材質から成ることを特徴とする請求項2記載の遮音床下地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1993(P2012−1993A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139058(P2010−139058)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(598010126)株式会社マルホン (2)
【Fターム(参考)】