説明

選択的アンドロゲン受容体調節剤による肥満治療

本発明は肥満の予防と治療に関するものである。より詳しくは、本発明は、次の(a)〜(j)に関するものである。(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(b)体重減少の助長、増進又は促進。(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退。(d)身体組成の改善。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善。(f)脂肪を無駄のない筋肉に変換する。(g)肥満に関連する代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減。(i)幹細胞分化の改善。(j)レプチン・レベルの改善。(a)〜(j)は、治療に効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせの投与を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥満の予防と治療に関するものである。より詳しくは、本発明は、次の(a)〜(j)に関するものである。(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(b)体重減少の助長、増進又は促進。(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退。(d)身体組成の改善。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善。(f)脂肪を無駄のない筋肉に変換する。(g)肥満に関連する代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減。(i)幹細胞分化の改善。(j)レプチン・レベルの改善。(a)〜(j)は、治療に効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせの投与を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
西洋社会では、肥満は栄養障害であるばかりではなく、成人発症の糖尿病、高血圧症、及び心臓疾患と関連するため、重大な健康上の懸念でもある(Grundy, 1990, Disease-a- Month 36:645-696)。また、世界保健機関(World Health Organization:WHO)によれば、先進工業国では肥満が蔓延していると、最近報告されている。体重は生理学的に調節されることを示唆する証拠はあるが、その分子レベルのメカニズムは依然として不明である。しかしながら、動物実験は、様々な、肥満表現型をもたらす単一遺伝子変異を有するマウス系統を作成した。そのような劣勢突然変異は、肥満マウスに見られ、肥満変異と呼ばれる。
【0003】
肥満遺伝子産物(別名レプチン)は、食事量の調節やエネルギー消費に関与する、主要な含脂肪細胞由来ホルモンである。
【0004】
肥満遺伝子の生理学的機能を理解することを目的として、様々な独立した研究グループが、生体内試験のために、細菌中に遺伝子組み換え型肥満遺伝子産物を作成した(Pelleymounter et al., 1995, Science 269:540-543; Halaas et al., 1995, Science 269:543-546; CampLield et al., 1995, Science 269:546-549)。肥満タンパク質(別名レプチン)が、2つの、肥満遺伝子の複製の変異を有する、過度に肥満したマウスに投与されると、マウスは、食欲減退と体重減少を示す。さらに、これらの研究は、動物の食事量の減退と、エネルギー消費量の増加という、レプチンの2つの作用について説明している。同様に、正常なマウスがレプチンを受け取ると、無治療対照群と比べて食事量が減少する。さらに重要なことには、キャンプフィールド(Campfield)らの研究では、レプチンを側脳室に直接的に投与すると、動物の食事量が減少することが観察されている(1995, Science 269:546-549)。このことは、レプチンが、摂食行動とエネルギー収支を調節すべく中枢神経ネットワークに作用することを示唆している。したがって、この結果は、レプチン受容体(別名OB−R)が、脳内の細胞により発現していることを証明する。さらに、様々な研究は、肥満遺伝子の発現は、実際に、肥満したヒトにおいて増加することを示している(Considine et al., 1995, J. Clin. Invest. 95.2986-2988, Lonnqttist et al., 1995, Nature Med.1:950, Hamilton etal., 1995,Nature Med. 1:953)。
【0005】
レプチンは、体重減少、食事量及びエネルギー消費の制御に効果があるので、レプチン・レベルを調節及び/又は制御することは、肥満患者の肥満を治療、予防、抑制、又は肥満の発症を減少させる上で有用な治療手段である。レプチン・レベルを制御すると、患者の食欲の減退、食事量の減少、及びエネルギー消費の増加をもたらすことができ、その結果、肥満の制御及び治療につながる。
【0006】
肥満のままでいると、成人発症型糖尿病(II型糖尿病)、高血圧、心臓疾患、変形性関節症、血圧上昇、脈拍数増加、及び発病・死亡の促進などの、悲惨な健康状態となる。肥満を治療するために、基礎科学と臨床レベルの両方において革新的なアプローチが緊急に必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は肥満の予防と治療に関するものである。より詳しくは、本発明は、次の(a)〜(j)に関するものである。(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(b)体重減少の助長、増進又は促進。(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退。(d)身体組成の改善。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善。(f)脂肪を無駄のない筋肉に変換する。(g)肥満に関連する代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減。(i)幹細胞分化の改善。(j)レプチン・レベルの改善。(a)〜(j)は、治療に効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせの投与を含んでいる。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、肥満に苦しむ患者を治療する方法に関する。この方法は、患者に、肥満を治療するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満の発生を予防、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、肥満の発生を予防、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、患者の体重減少を助長、増進又は促進する方法に関する。この方法は、患者に、体重減少を助長、増進又は促進するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、患者の食欲を抑止、抑制、又は減退させる方法に関する。この方法は、患者に、食欲を抑止、抑制、又は減退させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、患者の身体組成を改善する方法に関する。この方法は、患者に、身体組成を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。ある実施形態では、身体組成の改善は、除脂肪体重、無脂肪体重又はそれらの組み合わせを改善することを含んでいる。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、患者の除脂肪体重、無脂肪体重又はそれらの組み合わせを改善する方法に関する。この方法は、患者に、除脂肪体重又は無脂肪体重を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、患者の脂肪を無駄のない筋肉に変換する方法に関する。この方法は、患者に、脂肪を無駄のない筋肉に変換するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満に関連する代謝性疾患を治療する方法に関する。この方法は、患者に、肥満に関連する代謝性疾患を治療するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満に関連する代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、肥満が関係する代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0017】
ある実施形態では、肥満に関連する代謝性疾患は高血圧である。他の実施形態では、代謝性疾患は変形性関節症である。他の実施形態では、代謝性疾患はII型糖尿病である。他の実施形態では、代謝性疾患は血圧上昇である。他の実施形態では、代謝性疾患は脳梗塞である。他の実施形態では、代謝性疾患は心臓疾患である。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、患者の脂質生成を減少、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、脂質生成を減少、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、患者の肝細胞分化を改善する方法に関する。この方法は、患者に、肝細胞分化を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、患者のレプチンのレベルを改善する方法に関する。この方法は、患者に、レプチンのレベルを改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、患者のレプチンのレベルを減少、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、レプチンのレベルを減少、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0022】
ある実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式1で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0023】
【化1】

ただし、Gは、O又はSであり、
Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
Qは、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNである。或いは、Qは、次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFである。
【0024】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式2で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0025】
【化2】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
Qは、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNである。或いは、Qは、次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHである。
【0026】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式3で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0027】
【化3】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Gは、O又はSであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
Aは、

から選択される環であり、
Bは、

から選択される環であり、
A及びBは同時にはベンゼン環であり得ず、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
及びQは、互いに独立して、水素、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は

であり、
及びQは、互いに独立して、水素、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNであり、
は、O、NH、NR、NO又はSであり、
は、N又はNOである。
【0028】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式4で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0029】
【化4】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Gは、O又はSであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFであり、
は、F、Cl、Br、I、CH、CF、OH、CN、NO、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、アルキル、アリールアルキル、OR、NH、NHR、NR又はSRであり、
は、F、Cl、Br、I、CN、NO、COR、COOH、CONHR、CF、SnR又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
Zは、NO、CN、COR、COOH又はCONHRであり、
Yは、CF、F、Br、Cl、I、CN又はSnRであり、
Qは、H、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OH、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
nは、1〜4の整数であり、
mは、1〜3の整数である。
【0030】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式5で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0031】
【化5】

ただし、Rは、F、Cl、Br、I、CH、CF、OH、CN、NO、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、アルキル、アリールアルキル、OR、NH、NHR、NR又はSRであり、
は、F、Cl、Br、I、CN、NO、COR、COOH、CONHR、CF、SnR又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
Zは、NO、CN、COR、COOH又はCONHRであり、
Yは、CF、F、Br、Cl、I、CN又はSnRであり、
Qは、H、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OH、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

nは、1〜4の整数であり、
mは、1〜3の整数である。
【0032】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式6で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0033】
【化6】

他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式6で表される化合物、又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0034】
【化7】

他の実施形態では、SARMは、アンドロゲン受容体作動薬である。他の実施形態では、SARMは、アンドロゲン受容体拮抗薬である。
【0035】
本発明は、肥満の発生及び/又は肥満に関連する代謝性疾患を治療、予防、抑止、抑制、又は軽減し、食欲の制御と体重減少の助長をし、除脂肪体重及び無脂肪体重を含む身体組成を改善し、脂肪を無駄のない筋肉に変換し、脂質生成を妨げ、幹細胞分化を改善する安全で効果的な方法を提供する。また、本発明は、肥満、過剰な食欲、過体重、並びに、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患のような肥満に関連する代謝性疾患により引き起こされる症状や徴候に苦しむ患者を治療するのに特に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は肥満の予防と治療に関するものである。より詳しくは、本発明は、次の(a)〜(j)に関するものである。(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(b)体重減少の助長、増進又は促進。(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退。(d)身体組成の改善。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善。(f)脂肪を無駄のない筋肉に変換する。(g)肥満に関連する代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減。(i)幹細胞分化の改善。(j)レプチン・レベルの改善。(a)〜(j)は、治療に効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせの投与を含んでいる。
【0037】
選択的アンドロゲン受容体調節剤(Selective Androgen Receptor Modulator:SARM)化合物は、アンドロゲン受容体標的物質(Androgen Receptor Targeting Agent:ARTA)の新しい種類である。SARM化合物は、次の(a)〜(h)に有効であることが知られている、(a)男性の避妊。(b)様々なホルモンに関連する病気(例えば、高齢男性におけるアンドロゲン減少(Androgen Decline in Aging Male:ADAM)に関連する病気)の治療。ADAMに関連する病気としては、例えば、倦怠感、憂うつ、性欲減退、性的機能不全、勃起不全、性腺機能低下症、骨粗鬆症、脱毛症、貧血、肥満、筋肉減少症、骨減少症、良性前立腺肥大症、気分・認識力の変調、及び前立腺癌などがある。(c)女性におけるアンドロゲン減少(Androgen Decline in Female:ADIF)に関連する病気の治療。ADIFに関連する病気としては、例えば、性的機能不全、性欲減退、性腺機能低下症、筋肉減少症、骨減少症、骨粗鬆症、気分・認識力の変調、憂うつ、貧血、脱毛症、肥満、子宮内膜症、乳ガン、子宮癌、及び卵巣癌などがある。(d)急性及び/又は慢性の筋萎縮症の治療及び/又は予防。(e)ドライアイの治療及び/又は予防。(f)経口アンドロゲン補充療法。(g)前立腺癌の発病率の減少、又は前立腺癌の停止又は退行。(h)癌細胞のアポトーシスの促進。
【0038】
ここに実証されるように、SARM化合物は、肥満の発現、及び/又は、肥満に関連する代謝性疾患の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、食欲の制御及び体重減少の助長、除脂肪体重及び無脂肪体重を含む身体組成の改善、脂肪の無駄のない筋肉への変換、脂質生成の阻止、幹細胞分化の改善、及び/又は、レプチン・レベルの改善に有効である。SARM化合物は肥満、過剰な食欲、過体重、並びに、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患のような肥満に関連する代謝性疾患により引き起こされる症状や徴候に苦しむ患者を治療するのに特に効果的である。
【0039】
したがって、ある実施形態では、本発明は、肥満に苦しむ患者を治療する方法に関する。この方法は、患者に、肥満を治療するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満の発生を予防、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、肥満の発生を予防、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0041】
他の実施形態では、本発明は、患者の体重減少を助長、増進又は促進する方法に関する。この方法は、患者に、体重減少を助長、増進又は促進するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、患者の食欲を抑止、抑制、又は減退させる方法に関する。この方法は、患者に、食欲を抑止、抑制、又は減退させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0043】
他の実施形態では、本発明は、患者の身体組成を改善する方法に関する。この方法は、患者に、身体組成を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。ある実施形態では、身体組成の改善は、除脂肪体重、無脂肪体重又はそれらの組み合わせを改善することを含んでいる。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、患者の除脂肪体重、無脂肪体重又はそれらの組み合わせを改善する方法に関する。この方法は、患者に、除脂肪体重又は無脂肪体重を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0045】
他の実施形態では、本発明は、患者の脂肪を無駄のない筋肉に変換する方法に関する。この方法は、患者に、脂肪を無駄のない筋肉に変換するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0046】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満に関連する代謝性疾患を治療する方法に関する。この方法は、患者に、肥満に関連する代謝性疾患を治療するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0047】
他の実施形態では、本発明は、患者の肥満に関連する代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、肥満が関係する代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0048】
ある実施形態では、肥満に関連する代謝性疾患は高血圧である。他の実施形態では、代謝性疾患は変形性関節症である。他の実施形態では、代謝性疾患はII型糖尿病である。他の実施形態では、代謝性疾患は血圧上昇である。他の実施形態では、代謝性疾患は脳梗塞である。他の実施形態では、代謝性疾患は心臓疾患である。
【0049】
他の実施形態では、本発明は、患者の脂質生成を減少、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、脂質生成を減少、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM))、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、患者の肝細胞分化を改善する方法に関する。この方法は、患者に、肝細胞分化を改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0051】
他の実施形態では、本発明は、患者のレプチンのレベルを改善する方法に関する。この方法は、患者に、レプチンのレベルを改善するのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0052】
他の実施形態では、本発明は、患者のレプチンのレベルを減少、抑止、抑制、又は軽減させる方法に関する。この方法は、患者に、レプチンのレベルを減少、抑止、抑制、又は軽減させるのに効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、プロドラッグ或いはそれらの任意の組み合わせを投与する過程を含んでいる。
【0053】
ある実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式1で表される化合物である。
【0054】
【化1】

ただし、Gは、O又はSであり、
Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
Qは、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNである。或いは、Qは、次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFである。
【0055】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式1の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0056】
ある実施形態では、SARM化合物は、XがOである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、GがOである化学構造式1の化合物である。ある実施形態では、SARM化合物は、ZがNOである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがCNである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、YがCFである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがNHCOCHである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、TがOHである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、RがCHである化学構造式1の化合物である。
【0057】
置換基Z及びYは、それらの置換基を有する環(以下、「環A」という)の任意の場所に位置することができる。ある実施形態では、置換基Zは、環Aのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基Yは、環Aのメタ位置にある。他の実施形態では、置換基Zは環Aのパラ位置にあり、置換基Yは環Aのメタ位置にある。
【0058】
置換基Qは、その置換基を有する環(以下、「環B」という)のどの位置にあってもよい。ある実施形態では、置換基Qは、環Bのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基QはNHCOCHであり、環Bのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基QはFであり、環Bのパラ位置にある。
【0059】
ある実施形態では(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式2で表される化合物である。
【0060】
【化2】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
Qは、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNである。或いは、Qは、次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

【0061】
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHである。
【0062】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式2の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0063】
ある実施形態では、SARM化合物は、XはOである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZはNOである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZはCNである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、YはCFである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QはNHCOCHである化学構造式1の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QはFである化学構造式1の化合物である。
【0064】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式3で表される化合物である。
【0065】
【化3】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Gは、O又はSであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
Aは、

から選択される環であり、
Bは、

から選択される環であり、
A及びBは同時にはベンゼン環であり得ず、
Zは、NO、CN、COOH、COR、NHCOR又はCONHRであり、
Yは、CF、F、I、Br、Cl、CN、CR又はSnRであり、
及びQは、互いに独立して、水素、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は

であり、
及びQは、互いに独立して、水素、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO又はOCNであり、
は、O、NH、NR、NO又はSであり、
は、N又はNOである。
【0066】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式3の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0067】
ある実施形態では、SARM化合物は、XがOである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、GがOである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、TがOHである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、RがCHである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがNOである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがCNである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、YがCFである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがNHCOCHである化学構造式3の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFである化学構造式3の化合物である。
【0068】
置換基Z及びYは、それらの置換基を有する環(以下、「環A」という)の任意の場所に位置することができる。ある実施形態では、置換基Zは、環Aのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基Yは、環Aのメタ位置にある。他の実施形態では、置換基Zは環Aのパラ位置にあり、置換基Yは環Aのメタ位置にある。
【0069】
置換基Q及びQは、その置換基を有する環(以下、「環B」という)の任意の場所に位置することができる。ある実施形態では、置換基Qは、環Bのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基QはHである。他の実施形態では、置換基Qは、環Bのパラ位置にあり、置換基QはHである。他の実施形態では、置換基Qは、NHCOCHであり、環Bのパラ位置にあり、置換基QはHである。他の実施形態では、置換基QはFであり、環Bのパラ位置にあり、置換基QはHである。
【0070】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式4で表される化合物である。
【0071】
【化4】

ただし、Xは、結合部、O、CH、NH、Se、PR、NO又はNRであり、
Gは、O又はSであり、
Tは、OH、OR、−NHCOCH又はNHCORであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH又はCFCFであり、
は、F、Cl、Br、I、CH、CF、OH、CN、NO、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、アルキル、アリールアルキル、OR、NH、NHR、NR又はSRであり、
は、F、Cl、Br、I、CN、NO、COR、COOH、CONHR、CF、SnR又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
Zは、NO、CN、COR、COOH又はCONHRであり、
Yは、CF、F、Br、Cl、I、CN又はSnRであり、
Qは、H、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OH、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
nは、1〜4の整数であり、
mは、1〜3の整数である。
【0072】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式4の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0073】
ある実施形態では、SARM化合物は、XがOである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、GがOである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがNOである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがCNである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、YがCFである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがNHCOCHである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、TがOHである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、RがCHである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFであり、RがCHである化学構造式4の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFであり、RがClである化学構造式4の化合物である。
【0074】
置換基Z、Y及びRは、それらの置換基を有する環(以下、「環A」という)の任意の場所に位置することができる。ある実施形態では、置換基Zは、環Aのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基Yは、環Aのメタ位置にある。他の実施形態では、置換基Zは環Aのパラ位置にあり、置換基Yは環Aのメタ位置にある。
【0075】
置換基Q及びRは、その置換基を有する環(以下、「環B」という)の任意の場所に位置することができる。ある実施形態では、置換基Qは、環Bのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基Qは環Bのパラ位置にある。他の実施形態では、置換基Qは、NHCOCHであり、環Bのパラ位置にある。
【0076】
ここに考察するように、整数m及びnが1より大きいときに、置換基R及びRは1つの特定の置換基に限定されず、前記した置換基の任意の組み合わせであってよい。
【0077】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式5で表される化合物である。
【0078】
【化5】

ただし、Rは、F、Cl、Br、I、CH、CF、OH、CN、NO、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、アルキル、アリールアルキル、OR、NH、NHR、NR又はSRであり、
は、F、Cl、Br、I、CN、NO、COR、COOH、CONHR、CF、SnR又は構造式

で表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル又はOHであり、
Zは、NO、CN、COR、COOH又はCONHRであり、
Yは、CF、F、Br、Cl、I、CN又はSnRであり、
Qは、H、アルキル、F、Cl、Br、I、CF、CN、CR、SnR、NR、NHCOCH、NHCOCF、NHCOR、NHCONHR、NHCOOR、OCONHR、CONHR、NHCSCH、NHCSCF、NHCSR、NHSOCH、NHSOR、OH、OR、COR、OCOR、OSOR、SOR、SR、NCS、SCN、NCO、OCN又は次の構造式A、B又はCで表される縮合環システムのベンゼン環と結合するようなものからなる。

nは、1〜4の整数であり、
mは、1〜3の整数である。
【0079】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式5の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0080】
他の実施形態では、SARM化合物は、ZがNOである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、ZがCNである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、YがCFである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがNHCOCHである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFであり、RがCHである化学構造式5の化合物である。他の実施形態では、SARM化合物は、QがFであり、RがClである化学構造式5の化合物である。
【0081】
化合物4において前述したように、置換基Z、Y及びRは、環Aの任意の場所に位置することができ、置換基Q及びRは、環Bの任意の場所に位置することができる。さらに、前述したように、整数m及びnが1より大きいとき、置換基R及びRは1つの特定の置換基に限定されず、前記した置換基の任意の組み合わせであってよい。
【0082】
(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式6で表される化合物である。
【0083】
【化6】

【0084】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式6の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0085】
他の実施形態では、(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(b)体重減少の助長、増進又は促進、(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退、(d)身体組成の改善、(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善、(f)脂肪の無駄のない筋肉への変換、(g)代謝性疾患に関連する肥満(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減、(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減、(i)幹細胞分化の改善、(j)レプチンのレベルの改善、に有効なSARMは、次の化学構造式6で表される化合物である。
【0086】
【化7】

【0087】
ある実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の類似体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の誘導体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の異性体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の代謝産物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の医薬品である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の水和物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物のN酸化物である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の結晶である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の多形体である。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物のプロドラッグである。他の実施形態では、SARMは、化学構造式7の化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、結晶、多形体、又はプロドラッグの任意の組み合わせである。
【0088】
《定義》
ここでは、置換基Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、F、Cl、Br、I、アルケニル、又はヒドロキシル(OH)基と定義する。
【0089】
“アルキル”基は、直鎖型、分枝型及び環状の飽和脂肪族炭化水素である。ある実施形態では、アルキル基は、1〜12個の炭素を有する。他の実施形態では、アルキル基は、1〜7個の炭素を有する。ある実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素を有する。ある実施形態では、アルキル基は、1〜4個の炭素を有する。アルキル基は、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br又はI)、水酸基、アルコキシ・カルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、チオ基、及びチオアルキル基から成る群より選択される一つ又は複数の基と置換又は無置換される。
【0090】
“ハロアルキル”基は、先に定義したアルキル基を一つ又は複数のハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br又はI)で置換したものである。“ハロゲン”は、周期表VII族の元素(例えば、F、Cl、Br又はI)である。
【0091】
“アリル”基は、少なくとも一つの炭素環式芳香族基又は複素環式芳香族基を有する芳香族基である。アリル基は、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br又はI)、ハロアルキル基、水酸基、アルコキシ・カルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、チオ基、及びチオアルキル基から成る群より選択される一つ又は複数の基と置換又は無置換される。アリル環としては、例えば、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリルなどがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0092】
“ヒドロキシル”基は、OH基である。“アルケニル”基は、少なくとも一つの炭素間二重結合を有する基である。
【0093】
“アリルアルキル”基は、アリル基と結合したアルキル基である。なお、アルキル基とアリル基は、先に定義したとおりである。アリルアルキル基としては、例えば、ベンジル基がある。
【0094】
ここに定義するように、本発明は、SARM化合物、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いは任意の組み合わせの使用に関するものである。ある実施形態では、本発明は、SARM化合物の類似体の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の誘導体の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の異性体の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の代謝産物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の薬学的に許容される塩の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の医薬品の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の水和物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物のN酸化物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の医薬品の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の水和物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物のN酸化物の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物のプロドラッグの使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の多形体の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の結晶の使用に関する。他の実施形態では、本発明は、SARM化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、不純物、プロドラッグ又は結晶の任意の組み合わせの使用に関する。
【0095】
ここに定義するように、“異性体”という用語は、光学異性体とその類似体、構造異性体とその類似体、及び配座異性体とその類似体などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0096】
ある実施形態では、本発明は、SARMの様々な光学異性体の使用を含む。本発明に係るSARMが少なくとも一つのキラル中心を有していることは、当業者にとって周知である。したがって、本発明に係る方法で使用されるSARMは、光学的活性体又はラセミ体内で存在しており、単離されている。ある化合物は、多形性を示す。当然のことながら、本発明は、前述したアンドロゲンに関連する病気の治療に有効である特性を有する、任意のラセミ体、光学活性体、多形型、立体異性形状、又はそれらの混合物を含む。ある実施形態では、SARMは、純粋な(R)異性体である。他の実施形態では、SARMは、純粋な(S)異性体である。他の実施形態では、SARMは、(R)異性体と(S)異性体との混合物である。他の実施形態では、SARMは、同量の(R)異性体と(S)異性体とを含むラセミ混合物である。当該技術分野では、光学活性体を生成する方法は周知である(例えば、再結晶法によるラセミ体の分解、光学体活体開始物質の合成、キラル合成、又はキラル固定相を使用したクロマトグラフ分離など)。
【0097】
本発明は、例えばクエン酸や塩酸のような有機酸又は無機酸を有するアミノ置換化合物の“薬学的に許容される塩”を含む。また、本発明は、ここに記載した化合物のアミノ置換基のN酸化物を含む。薬学的に許容される塩は、例えば水酸化ナトリウムのような無機塩基を処理することにより、フェノール化合物から生成することもできる。また、フェノール化合物のエステルは、脂肪酸カルボン酸と芳香族カルボン酸(例えば、酢酸エステルと安息香酸エステル)から生成することもできる。
【0098】
本発明は、さらに、SARM化合物の誘導体を含む。“誘導体”という用語は、エーテル誘導体、酸誘導体、アミノ誘導体、エステル誘導体などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。さらに、本発明は、SARM化合物の水和物を含む。“水和物”という用語は、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0099】
本発明は、さらに、SARM化合物の代謝産物を含む。“代謝産物”という用語は、代謝作用又は代謝過程によって、別の物質から生成された物質を意味する。
【0100】
本発明は、さらに、SARM化合物の医薬品を含む。“医薬品”という用語は、医薬品としての使用に適した組成物を意味する。
【0101】
本発明は、さらに、SARM化合物のプロドラッグを含む。“プロドラッグ”という用語は、加水分解、エステル化、ジエステル化、活性化、塩生成などの反応によりインビボで生物活性物質に変換される物質を意味する。
【0102】
本発明は、さらに、SARM化合物の結晶を含む。さらに、本発明は、SARM化合物の多形体を提供する。“結晶”という用語は、結晶状態の物質を意味する。“多形体”という用語は、特別な物理的性質(例えば、X線回折、IRスペクトル、融点など)を有する、物質の特別な結晶状態を意味する。
【0103】
《選択型アンドロゲン調節剤化合物の生物活性》
選択型アンドロゲン調節剤(SARM)化合物は、アンドロゲン受容体標的物質(Androgen Receptor Targeting Agent:ARTA)の新しい種類であり、次の(a)〜(g)に有効である。(a)男性の避妊。(b)様々なホルモンに関連する病気(例えば、高齢男性におけるアンドロゲン減少(Androgen Decline in Aging Male:ADAM)に関連する病気)の治療。ADAMに関連する病気としては、例えば、倦怠感、憂うつ、性欲減退、性的機能不全、勃起不全、性腺機能低下症、骨粗鬆症、脱毛症、貧血、肥満、筋肉減少症、骨減少症、良性前立腺肥大症、気分・認識力の変調、及び前立腺癌などがある。(c)女性におけるアンドロゲン減少(Androgen Decline in Female:ADIF)に関連する病気の治療。ADIFに関連する病気としては、例えば、性的機能不全、性欲減退、性腺機能低下症、筋肉減少症、骨減少症、骨粗鬆症、気分・認識力の変調、憂うつ、貧血、脱毛症、肥満、子宮内膜症、乳ガン、子宮癌、及び卵巣癌などがある。(d)急性及び/又は慢性の筋萎縮症の治療及び/又は予防。(e)ドライアイの治療及び/又は予防。(f)経口アンドロゲン補充療法。(g)前立腺癌の発病率の減少、又は前立腺癌の停止又は退行。(h)癌細胞のアポトーシスの促進。
【0104】
ここに示すように、SARM化合物は、予期せぬことに、次の(a)〜(j)に有用であることが分った。(a)肥満の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(b)体重減少の助長、増進又は促進。(c)食欲の減少、抑止、抑制、又は減退。(d)身体組成の改善。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重の改善。(f)脂肪を無駄のない筋肉に変換する。(g)肥満に関連する代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞又は心臓疾患)の治療、予防、抑止、抑制、又は軽減。(h)脂質生成の減少、抑止、抑制、又は軽減。(i)幹細胞分化の改善。(j)レプチン・レベルの改善。(a)〜(j)は、治療に効果的な量の選択的アンドロゲン受容体調節剤、及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせの投与を含んでいる。
【0105】
ここに示すように、本発明に係るSARM化合物は、患者のレプチン・レベルに変化をもたらす。他の実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、患者のレプチン・レベルを減少させる(つまり、レプチン抑制因子となる)。他の実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、患者のレプチン・レベルを増加させる。前述したように、レプチンは、肥満したマウスの食欲や体重減少に影響を及ぼすことが知られており、肥満に関与している(Pelleymounter et al., 1995, Halaas et al., 1995, 15 Campfield et al., 1995)。2つの、肥満遺伝子の複製の変異を有する、過度に肥満したマウスに投与されると、マウスは、マウスは食欲減退を示し体重が減少し始める。また、レプチンは、動物の食事量の減退させ、エネルギー消費を増加させる役割を果たす。同様に、正常なマウスがレプチンを受け取ると、無治療対照群と比べて食事量が減少する。さらに、キャンプフィールド(Campfield)らにより、レプチンは摂食行動とエネルギー収支を調節すべく中枢神経ネットワークに作用することが示唆されている。
【0106】
ここで使用される、“レプチン抑制因子”という用語は、SARM化合物による治療後のレプチン・レベルがSARM化合物を投与しないときのレプチン・レベルよりも低くなるように、レプチン・レベルを減少させるSARM化合物を意味する。ここで使用される“レプチン・レベルの増加”は、治療後のレプチン・レベルが、SARM化合物を投与しない場合のレプチン・レベルよりも高いことを意味する。ある実施形態では、“レプチン・レベル”という用語は、レプチンの血中濃度を意味する。レプチン・レベルは、当該技術分野で周知の方法(例えば、市販されているELISAキット)により測定することができる。また、レプチン・レベルは、当該技術分野で周知により、インビトロ分析又は生体内分析で測定することができる。
【0107】
レプチンは、体重減少、食事量及びエネルギー消費の制御に効果があるので、レプチン・レベルを調節及び/又は制御することは、肥満患者の肥満を治療、予防、抑制、又は肥満の発症を減少させる上で有用な治療手段である。レプチン・レベルを制御すると、患者の食欲の減退、食事量の減少、及びエネルギー消費の増加をもたらすことができ、その結果、肥満の制御及び治療につながる。
【0108】
“肥満”という用語は、体内に脂肪が過度に蓄積された結果として、骨格及び身体的要件の制限を超えた、体重の増加と定義される。
【0109】
“肥満に関連した代謝性疾患”という用語は、肥満に起因する病気、肥満によって悪化する病気、及び肥満によって二次的に生じる病気を意味する。限定するものではないが、そのような病気の例としては、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳梗塞、及び心臓疾患がある。
【0110】
“変形性関節症”という用語は、老人に多く生じる、関節軟骨の変性、骨及びその余白部の肥大、滑膜の変化を特徴とする非炎症性の変形性関節疾患である。変形性関節症は、特に、長時間の作業後に、痛みや硬直を生じる。
【0111】
“糖尿病”という用語は、インスリンが比較的少ないこと又は完全に欠乏していることがもたらす、炭水化物代謝の制御不良を意味する。ほとんどの患者は、インスリン依存性糖尿病(Insulin-Dependent Diabetes Mellitus:IDDM、I型糖尿病)か、インスリン依存性糖尿病(Non-Insulin-Dependent Diabetes Mellitus:NIDDM、II型糖尿病)のどちらかに、臨床的に分類することができる。
【0112】
“血圧上昇”又は“高血圧”という用語は、140/90以上で繰り返される高い血圧である。長期にわたる高血圧は、目の裏側での血管の変化、心筋の肥大、腎機能障害、及び脳障害を引き起こす可能性がある。
【0113】
“脳梗塞”という用語は、多くの場合は血管破裂又は血栓による血液供給不全が原因の、脳内での神経細胞の損傷を意味する。“心臓疾患”という用語は、心臓の正常機能及び動作の機能不全を意味し、心臓麻痺(心不全)を含む。
【0114】
また、最近、アンドロゲンは、間葉性多能性細胞の筋原性細胞系への系列決定(commitment)、及びブロック分化の脂肪細胞化細胞系への系列決定に関与することが分っている(Singh et al., Endocrinology, 2003, Jul 24)。したがって、ここで説明したように、選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物は、脂肪生成を阻止、及び/又は肝細胞分化を変化させる方法に有用である。
【0115】
“脂肪生成”という用語は、脂肪変性又は脂肪浸潤の脂肪の生成を意味する。また、通常の脂肪堆積や、炭水化物又はタンパク質の脂肪への変換も含む。
【0116】
“幹細胞”という用語は、細胞分化を生じる細胞を意味する。幹細胞分化の過程では、これらの細胞は、1つはオリジナルの幹細胞を置換し、他は別の異なる細胞系統をさらに分化して、異種の娘細胞を生成すべく分割される。
【0117】
ここに定義するように、本発明に係る肥満の予防及び治療に有効なSARM化合物は、アンドロゲン受容体アゴニスト(ARアゴニスト)又はアンドロゲン受容体アンタゴニスト(ARアンタゴニスト)に分類される。
【0118】
アンドロゲン受容体(AR)は、その内因性アンドロゲン(男性ホルモン)との活性を介して男性の性的発育及び機能の誘導を仲立ちする、リガンドが活性化された転写調節タンパク質である。アンドロゲンは、一般に、男性ホルモンとして知られている。男性ホルモンは、体内で睾丸及び副腎の皮質により生成される、又は実験室で合成されるステロイドである。アンドロゲン性ステロイドは、男性の性的特徴(例えば、筋肉や骨量)の発育及び維持、前立腺の成長、精子形成、及び男性の髪状態などの、多数の生理学的過程において重要な役割を果たす(Matsumoto, Endocrinol. Met. Gun. N. Am. 23: 857-75, 1994)。前記した内因性のステロイド性アンドロゲンとしては、テストステロンやジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone:DHT)がある。他のステロイド性アンドロゲンとしては、テストステロンのエステル類(例えば、シピオネート、プロピオン酸、フェニルプロピオン酸、シクロペンチルプロピオネート、イソカルポレート(isocarporate)、エナント酸、及びデカン酸エステル)や、他の合成アンドロゲンがある。前記合成アンドロゲンとしては、例えば、7−メチル−ノルテストステロン(7-Methyl-Nortestosterone:MENT)や、その酢酸エステルなどがある(Sundaram et al., "7 Alpha-Methyl-Nortestosterone(MENT): The Optimal Androgen For Male Contraception," Ann. Med., 25:199-205, 1993, "Sundaram")。
【0119】
受容体アゴニストは、受容体と結合し、受容体を活性化させる物質である。受容体アンタゴニストは、受容体と結合し、受容体を不活性にする物質である。ある実施形態では、本発明に係る肥満の予防及び治療に有効であり、レプチン・レベルを調節するSARM化合物はARアゴニストであり、ARと結合し活性化するのに有用である。他の実施形態では、本発明に係る肥満の予防及び治療に有効であり、レプチン・レベルを調節するSARM化合物はARアンタゴニストであり、ARと結合し活性化するのに有用である。本発明に係る化合物がARアゴニストかアンタゴニストかを判断するための分析方法は、当該技術分野では周知である。例えば、ARアゴニスト活性は、SARM化合物のARを含んでいる組織(例えば、前立腺や精嚢)の成長を維持及び/又は刺激する能力を、重量測定によりモニタリングすることで測定できる。ARアンタゴニスト活性は、AR含有組織の成長を阻害するSARM化合物の能力を、モニタリングすることで測定できる。
【0120】
また、他の実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、ARの部分的アゴニスト/アンタゴニストとして分類することもできる。SARMはある組織内ではARアゴニストであり、AR反応遺伝子の転写を増加させる(例えば、筋肉同化効果)。他の組織内では、SARM化合物はARにおいて阻止因子して機能し、天然アンドロゲンのアゴニスト作用を予防する。
【0121】
本発明に係るSARM化合物は、アンドロゲン受容体と可逆的又は不可逆的に結合する。ある実施形態では、SARM化合物は、アンドロゲン受容体と可逆的に結合する。ある実施形態では、SARM化合物は、アンドロゲン受容体と不可逆的に結合する。本発明に係るSARM化合物は、アンドロゲン受容体(すなわち共有結合構造)のアルキル化が可能な、官能基(例えば、親和性標識)を有している。この場合、SARM化合物は、受容体と不可逆的に結合する(したがって、内在性リガンドDHTやテストステロンなどのステロイドによって置換されない)。
【0122】
ここで定義されている“接触”という用語は、本発明に係るSARMが、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管などの内部にある、酵素を含有するサンプル内に導入され、SARMが酵素に結合可能な温度又は時間で培養することを意味する。サンプルに、SARM又は他の特異結合成分を接触させる方法は、当業者に周知であり、実施する分析方法の種類に応じて選択することができる。また培養方法は標準的なものであり、当業者に周知である。
【0123】
《医薬組成物》
本発明に係る治療方法は、ある実施形態では、SARM化合物及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはこれらの任意の組み合わせと、薬学的に許容される担体とを含んでいる医薬組成物を投与する過程を含む。
【0124】
ここで使用される“医薬組成物”は、薬学的に許容される担体又は希釈液と、“効果的な量”の活性化成分(すなわち、SARM化合物)とを含んでいる組成物である。
【0125】
ここで使用される“効果的な量”は、与条件及び投薬計画について治療効果を与える量を意味する。ここで使用されるSARM化合物の“効果的な量”は、1〜500mg/日の範囲である。ある実施形態では、用量(投与量)は1〜100mg/日の範囲である。他の実施形態では、用量は100〜500mg/日の範囲である。他の実施形態では、用量は45〜60mg/日の範囲である。他の実施形態では、用量は15〜25mg/日の範囲である。他の実施形態では、用量は55〜65mg/日の範囲である。他の実施形態では、用量は45〜60mg/日の範囲である。SARM化合物は、1日1回投与してもよいし(その場合、1回で1日分投与する)、1日2回、1日3回など毎日複数回に分けて投与してもよい。また、SARM化合物は、1日おき、週に3日、週に4日、週に5日など断続的に投与してもよい。
【0126】
ここで使用される“治療”という用語は、疾患を軽減させる治療は勿論のこと、予防をも含んでいる。ここで使用される“減少”、“抑止”及び“抑制”という用語は、一般的な解釈では、「少なくする」又は「減らす」という意味である。ここで使用される“促進(facilitating)”という用語は、一般的な解釈では、割合の増加を意味する。ここで使用される“助長(promoting)”という用語は、増加を意味する。ここで使用される“進行”という用語は、範囲や重傷度の増大、進行、成長、又は悪化を意味する。
【0127】
ここで使用される“投与”という用語は、患者に、本発明に係るSARM化合物を接触させることを意味する。ここで使用される投与は、インビトロ(試験管内)又はインビボ(例えばヒトなどの生体の細胞又は組織内)で実施される。ある実施形態では、患者は、哺乳類である。他の実施形態では、患者は、ヒトである。
【0128】
SARM薬剤を含んでいる医薬組成物は、当業者に周知の方法(例えば、非経口、側癌的(paracanceraly)、経粘膜的、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹膜内、脳室内、脳内、膣内又は腫瘍内)によって、患者に投与される。
【0129】
ある実施形態では、医薬組成物は、経口投与されるので、経口投与に適した形状(すなわち、固体又は液体製剤)に形成される。適切な固形の経口製剤としては、錠剤、カプセル、ピル、顆粒、ペレットなどがある。適切な液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などなどがある。本発明のある実施形態では、SARM化合物はカプセル状に形成される。この実施形態では、本発明に係る組成物は、SARM活性化合物及び不活性担体(又は希釈液)に加えて、硬ゲル化カプセルを含む。
【0130】
さらに、他の実施形態では、医薬組成物は、液体製剤の静脈内注射、動脈内注射又は筋肉内注射によって投与される。適切な液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などがある。ある実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与に適した形状に形成され、静脈内に投与される。他の実施形態では、医薬組成物は、動脈内投与に適した形状に形成され、動脈内に投与される。他の実施形態では、医薬組成物は、筋肉内投与に適した形状に形成され、筋肉内に投与される。
【0131】
さらに、他の実施形態では、医薬組成物は、局所性投与に適した形状に形成され、体の表面に局所的に投与される。適切な局所性製剤としては、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、液滴などがある。局所的な投与のためには、SARM薬剤又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば、塩、エステル、N酸化物など)が調製され、薬品担体を用いて、又は用いることなく、生理学的に認容されている希釈液として、水溶液、懸濁液、又は乳状液として投与される。
【0132】
さらに、他の実施形態では、医薬組成物は、直腸座薬や尿道座薬などの座薬として投与される。さらに、他の実施形態では、医薬組成物は、ペレットの皮下埋め込みによって投与される。さらなる実施形態では、ペレットは、長時間にわたるSARM薬剤の徐放をもたらす。
【0133】
他の実施形態では、活性化合物は、小胞(特にリポソーム)に送達してもよい(Langer, Science 249:1527-1533 (1990)、Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, ibid, pp. 317-327)。
【0134】
ここで使用される“薬学的に許容される担体又は希釈液”は、当業者に周知である。担体又は希釈液としては、固体製剤のための固体担体又は希釈液、液体製剤のための液体担体又は希釈液、又はその混合物がある。
【0135】
固体担体/希釈液として、ガム、デンプン(例えば、コーンスターチ、予めゲル化された(pregeletanized)デンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖)、セルロース系材料(例えば、微結晶性セルロース)、アクリル酸塩(例えば、ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、滑石、又はこれらの混合物がある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0136】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体としては、水溶性又は非水性の溶液、懸濁液、乳濁液、又は油がある。非水溶媒の例としては、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコールや、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水溶性担体としては、水、アルコール性/水溶性の溶液、乳濁液、又は生理食塩水及び緩衝培地を含む懸濁液がある。油の例としては、石油、動物性、植物性、又は合成されたものがある(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ひまわり油、魚肝油)。
【0137】
非経口賦形剤(皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、又は筋肉内注射用)としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガーオイル及び固定油がある。経静脈賦形剤としては、液体及び栄養補充薬、電解質補充薬(例えば、リンガーブドウ糖に基づくもの)などがある。一例としては、界面活性剤及び他の薬学的に許容されるアジュバントを添加した、又は添加しない、水や油などの無菌液がある。一般に、水、生理食塩水、水溶性ブドウ糖や関連糖液、及びプロピレン・グリコール又はポリエチレン・グリコールなどのグリコールは、特に、注射用溶液に適した液体担体である。油の例としては、石油、動物性、植物性、又は合成されたものがある(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ひまわり油、魚肝油)。
【0138】
また、組成物は、結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアールガム、澱粉グリコール酸エステルナトリウム)、種々のpH及びイオン強度の緩衝液(例えば、トリス−HCI、アセテート、リン酸塩)、界面に対する吸収を予防するためのアルブミン又はゼラチンのような添加物、洗剤(例えば、トウィーン20、トウィーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透エンハンサー、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度上昇剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアールガム)、甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル類)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレン・グリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)、被覆及び膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)、及び/又はアジュバントをさらに含むことができる。
【0139】
ある実施形態では、ここで提供される医薬組成物は、投与後にSARM化合物を長時間に渡って放出する徐放組成物である。徐放又は持続放出組成物としては、脂溶性の持続性薬剤(例えば、脂肪酸、ワックス、オイル)がある。他の実施形態では、医薬組成物は、投与後の全てのSARM化合物を直ちに放出する即放組成物である。
【0140】
さらに他の実施形態では、医薬組成物は、徐放システムによって送達される。例えば、薬剤は、静脈内注入、植込型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又は他の投与形態により投与される。ある実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987)、Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989))。他の実施形態では、高分子材料を使用することができる。さらに他の実施形態では、徐放システムは、治療ターゲットすなわち脳に近接して設けられることが可能である。その場合、必要とされるのは全身投与量のほんの一部である(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp.115-138 (1984)を参照)。他の徐放システムは、Langer(Science 249:1527-1533 (1990))によるレビューに記載されている。
【0141】
また、医薬組成物は、ポリマー化合物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの粒子状製剤や、リポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層又は多層状の小胞、赤血球ゴースト、又はスフェロプラストへの活性物質を取り込むことができる。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでの排出速度に影響を与える。
【0142】
また、ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)で被覆された粒子状組成物も本発明に含まれる。また、組織特異受容体、リガンド又は抗原に対する抗体と結合した、或いは組織特異受容体のリガンドと結合した化合物も本発明に含まれる。
【0143】
また、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレン・グリコール、ポリエチレン・グリコールとポリプロピレン・グリコールのコポリマー、カルボキシメチル・セルロース、デキストラン、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリドン又はポリプロリン)の共有結合によって修飾された化合物も本発明に含まれる。なお、調整剤化合物は、対応する無調整剤化合物の場いと比較して、静脈注射後、血液中で著しく長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1982; and Katre et al., 1987)。また、そのような修飾は、水溶液中における化合物の溶解度を高め、凝集を予防し、化合物の物理的及び化学的安定性を向上させ、化合物の免疫原性及び反応性を著しく低下させる。そのため、無調整剤化合物の場合よりも低い頻度又は少ない投与量でポリマー化合物付加物を投与することにより、インビボでの望ましい生物学的活性が得られる。
【0144】
活性化要素を有する医薬組成物の作成は、当該技術分野で周知である(例えば、混合、顆粒化又は錠剤形成によって作成する)。活性治療成分はしばしば、薬学的に許容され活性化成分と適合する賦形剤と混合される。経口投与の場合、SARM薬剤又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば、塩、エステル、N酸化物など)は、この目的に使用されることが慣例となっている添加物(例えば、賦形剤、安定剤又は不活性希釈液など)と混合され、慣例的な方法によって投与に適した形状(例えば、錠剤、コート錠、硬又は軟ゼラチンカプセル、水溶性、アルコール性又は油性溶液)に変更される。非経口投与の場合は、SARM薬剤又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば、塩、エステル、N酸化物など)は、所望であればこの目的に用いられることが慣例になっている適切な物質(例えば、可溶化剤など)によって、溶液、懸濁液又は乳濁液に変更される。
【0145】
活性化要素は、中和された薬学的に許容される塩の形で、医薬組成物内に配合することができる。薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸)や有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸)によって形成される酸付加塩(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基で形成される)がある。遊離カルボキシル基から形成された塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄や、有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)などからも得られる。
【0146】
医学的に使用するために、SARMの塩は、薬学的に許容される塩になり得る。また、他の塩は、本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩の作成に使用される。本発明に係る化合物の適切な薬学的に許容される塩としては、例えば、本発明に係る化合物の溶液と、薬学的に許容される酸(例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸)の溶液とを混合することによって形成した酸付加塩がある。
【0147】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、唯一の活性化成分としてSARM化合物を投与することを含む。また一方、1つ又は複数の治療物質と一緒にSARM化合物を投与することも、本発明に係る方法(肥満の治療)の範囲に含まれる。前記治療物質としては、HRH類似体、可逆的抗アンドロゲン、抗エストロゲン、抗癌剤、5−αレダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチン、又は別の核ホルモン受容体を介して作用する薬剤がある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0148】
したがって、ある実施形態では、本発明は、LHRH類似体と一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、可逆的抗アンドロゲンと一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、抗エストロゲンと一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、抗癌剤と一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、5−αレダクターゼ阻害剤と一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、アロマターゼ阻害剤と一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、プロゲスチンと一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、他の核ホルモン受容体を介して作用する薬剤と一緒に投与される、選択的アンドロゲン受容体調整剤化合物を含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。
【0149】
次の実施例は、本発明の実施形態をより詳細に説明するためのものである。ただし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0150】
《実施例1》化合物VI及び化合物VIIの臓器重量及びレプチン濃度に対する影響
最近の薬理研究で、本出願人は、インビトロで高いアンドロゲン受容体(AR)結合親和力を有し、インビボで高いアンドロゲン活性及びタンパク同化作用を有する2つのSARM化合物(化合物VI及び化合物VII)の存在を確認した。化合物VI及び化合物VIIは、組織選択的タンパク同化作用を示す。そこで、これらの化合物について、短期及び長期の薬物投与後の無損傷のオスのラットにおいて、臓器重量及びレプチン濃度、脂質バイオマーカー(タンパク同化作用の標識として役立つ)、及び肥満に関与する事項に対する作用について試験が行われた。
【0151】
〈実験方法〉
この実験には、未成熟なオスのスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley:SD)ラット(体重195〜205g)を使用した。次の(1)〜(4)の治療をそれぞれ実施するために、動物を15匹づつ4つの群(各時点は5匹となる)に分けた。(l)媒体対照(vehicle control)。(2)媒体溶液(vehicle solution)に溶解したテストステロン・プロピオン酸塩(testosterone propionate:TP)(投与量500μg/日)。(3)媒体溶液に溶解した化合物VI(投与量500μg/日)。又は(4)媒体溶液に溶解した化合物VII(投与量500μg/日)。全ての投与は、アルゼット(Alzet)浸透圧ポンプを皮下へ埋め込むことによって行った。毎日の食糧摂取量を1週間及び2週間の研究用に記録した。
【0152】
ポンプの埋め込みから7日、14日及び28日後、ケタミン/キシラジン麻酔をして動物から全血を採った。血清を回収し、10のアリコートへ分け、−80℃で保存した。主要な臓器を集め、重量を測定し、−80℃で保存した。
【0153】
テストステロン(testosterone:T)、レプチン、インシュリン及びIGF−1の血清濃度は、市販のELISAキットにより測定した。化合物VI及び化合物VIIの血清濃度はHPLCにより測定した。
【0154】
〈結果〉
レプチン試験の結果を表1に示す。媒体対照と比べると、化合物VIIは、血清のレプチン濃度を2週で36%、4週で22%減少させた。
【0155】
臓器重量において観測された変化は、本出願人による以前の研究と一致しており、化合物VI及び化合物VIIの組織選択的タンパク同化作用が確認された。化合物VIIが血清レプチン濃度に大きな影響を与えるということは、化合物VIIが動物の身体組成及び他の内分泌系(例えば、視床下部脳下垂体IGF−1の軸椎や再生する軸椎)に影響を与えることを示唆している。
【0156】
【表1】



【0157】
《実施例2》化合物VIの除脂肪体重及び体脂肪率に対する影響
〈実験方法〉
これらの実験には、230匹のメスのSDラット(23週齢)を使用した。
【0158】
動物を、無作為に、下記の表2に示す23の治療群に分けた(各群が10匹ずつとなるように)。群6から23に割当てられた動物は、実験初日(day 0)に卵巣を切除した。
【0159】
実験初日(day 0)若しくは90日目(day 90)に開始される化合物VI、ビカルタミド(抗アンドロゲン)、及び/又はDHTの薬物投与は、皮下注射(0.20mL)を毎日行い、実験120日目若しくは210日目まで継続した。薬液は、PEG300をDMSO及び稀釈液に溶解することにより毎日作成した。DMSOの割合は、試験化合物の可溶性に基づいて決定されるため、すべての媒体で同じ(17.6%)である。
【0160】
表2に示すように、卵巣切除後120日目若しくは210日目まで、全身のDEXA映像を集めた。除脂肪体重(LBM)、脂肪質量(FM)及び総体重(TBM)を、各時点で測定した。
【0161】
全ての動物は120日目若しくは210日目に解剖された。将来の研究のために解剖されたネズミから大腿、脛骨及び腰椎を切除した。切除後、左の大腿、左の脛骨及びL2〜L4脊椎骨を10%のホルマリンに2日間漬けた後、70%のアルコールに移し、組織形態計測法による解析まで4℃で保存した。右の大腿、右の脛骨及びL5〜L6脊椎骨は、生理食塩水を浸したガーゼに入れて−20℃で機械的検査まで保存した。さらに、右の大腿、右の脛骨及び脊柱は、切除後直ちにDEXAによって走査した。
【0162】
解剖の2日及び9日前に、動物にカルセイン(Calcein)(10mg/kg)の腹腔内注入を施した。
【0163】
【表2−1】

【0164】
【表2−2】

【0165】
〈結果〉
除脂肪体重に対する化合物VIの影響を図1に示す。図1Aは、除脂肪体重の割合の変化を示す。図1Bは、除脂肪体重の絶対値(グラム)を示す。化合物VIにより治療した群の内、投与量の高いもの(3mg/日)は、90日の時点で卵巣を切除した(OVX)対照群と比較して、除脂肪質量で9%の増加を示した(図1A)。同様の傾向が全ての投与量群に観測された。
【0166】
また、投与量に依存する体脂肪率の変化を、90日の時点で観測した。変化を図2に示す。化合物VIにより治療した群の内、投与量の高いもの(3mg/日)は、卵巣を切除した(OVX)対照群と比較して、体脂肪で3.6%の減少を示した。同様の傾向が全ての投与量群で観察された。図3は、化合物VIの体重への影響を示す。
【0167】
当業者であれば、本発明は上記した内容に限定されるものではないことは容易に理解できるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1A】メスのラットにおける、化合物VIの除脂肪体重に対する影響(除脂肪体重の変化の割合)を示す。ラットは未治療(無傷)で、又は卵巣を切除した(OVX)状態であり、化合物VI(0、0.1、0.3、0.5、0.75、1.0、及び3.0mg/日)により治療した。又は、DHT若しくはビカルタミドにより治療した。
【図1B】メスのラットにおける、化合物VIの除脂肪体重に対する影響と(除脂肪体重の変化の割合)を示す。ラットは未治療(無傷)、又は卵巣を切除した(OVX)状態であり、化合物VI(0、0.1、0.3、0.5、0.75、1.0、及び3.0mg/日)により治療した。又は、DHT若しくはビカルタミドにより治療した。
【図2】メスのラットにおける、化合物VIの体脂肪に対する影響(体脂肪の変化の割合)を示す。ラットは未治療(無傷)、又は卵巣を切除した(OVX)状態であり、化合物VI(0、0.1、0.3、0.5、0.75、1.0、及び3.0mg/日)により治療した。又は、DHT若しくはビカルタミドにより治療した。
【図3】メスのラットにおける、化合物VIの体重に対する影響(体重)を示す。ラットは未治療(無傷)、又は卵巣を切除した(OVX)状態であり、化合物VI(0、0.1、0.3、0.5、0.75、1.0、及び3.0mg/日)により治療した。又は、DHT若しくはビカルタミドにより治療した。


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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−505563(P2006−505563A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544888(P2004−544888)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032509
【国際公開番号】WO2004/034978
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504206621)ジーティーエックス・インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】