説明

選択的吸着するコーティング液

【課題】
洗車機、スプレー洗車機等にてコーティンク液の塗布の際、親水状態を維持したいフロントガラス等の部位への吸着が起こらず、ある程度撥水状態を維持している部位だけに吸着し従来の撥水持続性を大幅に改善するコーティング法を提供する。
【解決手段】
コーティング施工面が一定以上の接触角を保持している部位だけに吸着する湿気硬化MQレジンシリコンのエマルションを洗車機、スプレー洗車機等やエアゾール、トリガースプレーまたは水道の蛇口にホースを連結し水道水で希釈する水ポンプ式の専用容器付散水スプレーで10〜1000重量倍に希釈され使用されるコーティング液およびコーティング法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一定の接触角以上を有する部位のみに選択的に吸着し、かつ持続性を有する撥水処理が可能なコーティング液およびコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両塗装面のコーティング方法は、コーティング液を直接、刷毛塗り、スポンジで塗布した後塗り延ばしたり、トリガースプレーで噴霧後拭き上げをする煩雑な作業であったが、洗車機やスプレー洗車等で機械的にコーティング処理が出来るようになり大幅に作業性が改善された。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)
【0003】
しかし、洗車機やスプレー洗車では、コーティングが必要でないフロントガラスやサイドガラスへもコーティング液が同時に付着し、その除去作業が必要となった。また、ここで多く使用されているコーティング液は従来からアミノ変性シリコーンが使用されており、持続性が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−188745公報
【0005】
【特許文献2】特開平2001−49189公報
【0006】
【特許文献3】特開2002−6381公報
【0007】
【特許文献4】特開2005−29695公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一定以上の撥水が保持された状態の車両塗装面とフロントガラス等の箇所が混在する車両に、一定の接触角を持つ部位だけに選択的に撥水処理を施し、さらに良好な持続性を有するコーティング処理を可能にするコーティング液とコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は下記第一の発明から第三の発見によって達成される。
【0010】
<第一の発見>
シリコーンレジンを含有する水性シリコーンレジンエマルジョンを接触角が50度以上の部位に塗布することを特徴とするコーティング液。
【0011】
<第二の発見>
上記水性シリコーンレジンエマルジョンが水に希釈されて塗布されることを特徴とするコーティング方法。
【0012】
<第三の発見>
水に希釈されて塗布されるときの上記水性シリコーンエマルジョンのシリコーンレジンの濃度が0.05重量%から50重量部%であることを特徴とする第一の発見のコーティング液。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーティング液とコーティング方法により、撥水持続性が大幅に改善され、また接触角が小さい親水部位へのコーティング液の付着が阻止出来たことにより、撥水性を必要としない部位のコーティング被膜の除去作業がなくなり大幅に作業が改善された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコーティング液は、コーティング施工面が50度、好ましくは60度以上の接触角を有する部位のみ選択的に吸着する湿気硬化型MQレジンシリコーンエマルションを用いることができる。
【0015】
市販の湿気硬化MQレジンシリコーンエマルションとしては、東レ・ダウコーニング社のBY22−736 EXや旭ワッカー社のSILRES BS97などが挙げられる。
【0016】
本発明のコーティング液には、アミノ変性シリコーンを含有しないことが好ましい。
【0017】
アミノ変性シリコーンは吸着性に優れていることから、本発明のコーティング液が吸着する前に優先的に塗装面へ吸着するために吸着阻害因子となることから添加しないことが好ましい。
【0018】
本発明のコーティング液は特に限定されないが、脱イオン水、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、色素、顔料等の着色剤、香料、防錆剤、金属封鎖剤、pH調整剤、低級アルコール、水性溶剤等を本発明の目的を損なわない範囲でコーティング液に更に添加させることができる。
【0019】
本発明のコーティング方法は、水に10〜1000重量倍、好ましくは50〜500重量倍、更に80〜200重量倍に希釈使用されることが好ましい。
【0020】
本発明のコーティング方法としては、上記希釈が可能な機器、例えば洗車機、スプレー洗車機等、またエアゾール、トリガースプレーは散水ノズルから噴霧される水の中にスプレーすればよく、または水道の蛇口にホースを連結し水道水で希釈する水ポンプ式の専用容器付散水スプレーで使用することが出来る。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0022】
[実施例1〜4]
下記の表1に示したコーティング液組成にて、親水面への吸着性の試験、撥水面への選択的吸着性の試験、持続性試験を実施し、結果を表1に示す
[比較例1〜3]
下記の表1に示したコーティング液組成にて、親水面への吸着性の試験、撥水面への選択的吸着性の試験、持続性試験を実施し、結果を表1に示す
【0023】
<親水面への吸着試験>
13cm×18cmガラス板を接触角が25度以下になるように洗浄し、コーティング液を水流ポンプ式の専用容器付希釈散水スプレー(ギルモア社製)にいれ、水道水で128倍希釈にて3秒間噴霧し水すすぎ後、接触角を測定し下記の評価指標により親水箇所への吸着性を評価した。
接触角が25度以下を○、25度以上×
<撥水面への吸着試験>
30cm×30cmの黒色ソリッド塗装板の接触角が約45度、約50度、約60度になるように調整し、コーティング液を水流ポンプ式の専用容器付希釈散水スプレー(ギルモア社製)にいれ、水道水で128倍希釈にて5秒間噴霧し水すすぎ後、接触角を測定し下記の評価指標により撥水面への選択吸着性を評価した。
接触角約45度塗板の場合、接触角50度以下を○、60度以上を×
接触角約50度塗板の場合、接触角95度以上を○、95度以下を×
接触角約60度塗板の場合、接触角95度以上を○、95度以下を×
<持続性試験>
撥水面へ吸着試験における接触角約60度の塗板にコーティング液を塗布した試験板を、1メートルの高さから1分間に10cc/平方cmの40度の温水を1時間、2時間シャワーリング後の接触角を測定し下記の評価指標により撥水持続性を評価した。
1時間後の場合、初期接触角の90%以上を○、90%以下を×
2時間後の場合、初期接触角の80%以上を○、80%以下を×
<接触角測定方法>
測定面に水を2マイクルリットルをマイクロシリンジにて滴下し、上方からメジャー機能付マイクロスコープにて射影直径を測定し下記一般式で算出した。


表−1

【0024】
表−1の試験結果より、本発明のコーティング液およびコーティンク方法を用いることにより、親水面への吸着を阻止でき、更に一定の接触角を有する部位のみにコーティング液を選択的に塗布出来た。
【0025】
また、本発明のコーティング液およびコーティンク方法を用いることにより、撥水持続性を大幅に改善出来た。
【産業上の利用可能性】
【0026】
最初洗車機等でコーティング処理しフロントガラス等の親水維持部位のコーティング被膜を除去した後は、一定の撥水状態が維持している間に、定期的に本発明のコーティング方法にてコーティング液を塗布することにより、以後フロントガラス等の親水確保部位のコーティング被膜除去作業がなくなりガソリンスタンドやカーディーラーでの大幅な作業軽減になり、またコーティング被膜の持続を大幅に改善できることから、新しいコーティングメニューを付加出来ることから、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性シリコーンレジンエマルジョンを含有する液を接触角が50度以上の部位に塗布することを特徴とするコーティング液及びコーティング方法。
【請求項2】
シリコーンレジンが水に希釈されて塗布されることを特徴とする請求項1のコーティング方法。
【請求項3】
希釈されて塗布されるときのシリコーンレジンの濃度が0.05重量%から50重量部%であることを特徴とする請求項1のコーティング液。

【公開番号】特開2012−11324(P2012−11324A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150698(P2010−150698)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(710001764)株式会社シミズ (3)
【Fターム(参考)】