説明

選択的臓器冷却装置及び方法

【課題】 本発明は、患者の血管系における、選択された栄養動脈に挿入することが可能
な、可撓性同軸カテーテルを有する、選択的臓器熱伝達装置に関するものである。
【解決手段】 熱伝達エレメント(14)、並びに該熱伝達エレメント(14)に沿って
、血流の乱流を増加させるように適合された乱流増強エレメント(20−24)が、カテ
ーテルの末端部に装着されている。該熱伝達エレメント(14)は、該乱流増加エレメン
ト(20−24)を有してもよく、かつ/又は、乱流増加エレメントは、該熱伝達エレメ
ントの基部に配置されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の背景)
本発明は一般に、選択された臓器の温度の修正及びコントロールに関するものである。
特に、本発明は臓器温度をコントロールする方法及び血管内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(背景情報)
人体内の臓器、例えば、脳、腎臓及び心臓などは、ほぼ37℃の恒温に保たれている。
低体温法では臨床的に体内中心部の温度を35℃以下に限定することができる。低体温法
は時々、さらにその厳格性に従って特徴付けられることがある。体の中心部温度を33℃
乃至35℃とする場合、穏やかな低体温法と記される。体の中心部温度を28℃乃至32
℃とする場合、中程度の低体温法と記される。体の中心部温度を24℃乃至28℃とする
場合、激しい低体温法と記される。
【0003】
低体温法は数々の神経的な障害によって引き起こされる脳傷害を少なくする点で独特の
効果を有し、緊急の脳蘇生において結果的に重要な役割を果たすことができる。実験的な
証明により、脳の冷却は、包括的な虚血、限局的な虚血又は外傷性脳傷害後の結果を改善
する。こういう理由で、低体温法は、脳並びに他の臓器に対するある種の体への傷害の効
果を低下させるために、導入することができる。
【0004】
脳への低体温法は、伝統的に20℃〜30℃の範囲の全身低温の条件を作り出す全身冷
却により達成されてきた。しかしながら、全身低温法の使用は、ある種の有害な組織的血
管効果の危険がある。例えば、全身低体温法は、低心臓出力、高組織的抵抗及び心室細動
を含む、心臓血管系の激しい撹乱を引き起こす可能性がある。他の副作用として、腎臓疾
患、播種性血管内凝固及び電解質傷害がある。これらの望ましくない副作用に加えて、全
身低体温法は管理が難しい。
【0005】
全身の低体温を誘導するために、患者の血流中に挿入するカテーテルが開発されている
。例えば、ダト氏に付与された米国特許第3,425,419号は、人体の温度を低下又は上昇さ
せる方法及び装置を開示している。このダト氏の特許は、金属製のカテーテルを用い、患
者を中程度の低体温にする方法に関するものである。該金属製カテーテルは水のような液
体を循環させることができる内部経路を有する。該カテーテルを、大腿部静脈を介して挿
入し、次いで、下位大静脈を介して右心房及び上位大静脈まで挿入する。該ダト氏のカテ
ーテルは細長い円筒形であり、ステンレススチールで構成されている。例として、ダト氏
は長さ約70cmで直径6mmのカテーテルを使用することを提案している。しかし、ダト氏
のシステムの使用は、先に記載した全身低温の否定的な効果を暗示している。
【0006】
全身低体温法に伴う問題から、さらに選択的な冷却方法を提供する試みがなされて来た
。例えば、冷却ヘルメット又はヘッドギアを用いて、患者の全身を冷却するよりも頭部の
みを冷却する試みがなされて来た。しかしながら、このような方法は頭蓋骨を介し、かつ
脳内部への伝導性熱伝達に依存するものである。伝導性熱伝達を利用することの欠点に、
脳の熱低下プロセスに時間がかかるということがある。また、熱伝導を利用する場合、脳
の温度の正確なコントロールが難しい。その理由は、内部温度よりも十分に低くするため
に外部的に確立しなければならない温度勾配のためである。加えて、熱伝導を利用して脳
を冷却する場合、また患者の顔面を著しく低体温にすることになり、不快さ、及び否定な
副作用が生じる蓋然性が増加することになる。顔面の深冷却は全身冷却同様の心臓血管へ
の副作用を生じさせ得ることが知られている。さらに、実用的な立場から、冷却ヘルメッ
ト及びヘッドギアは扱い難く、かつ患者の継続的な治療を困難又は不能にすることがある

【0007】
選択的臓器低体温は体外灌流を使用して達成されており、その詳細はArthur E. Schwar
tz, M.D. らの下記論文に記載されている: Isolated Cerebral Hypothermia by Single
Carotid Artery Perfusion of Extracorporeally Cooled Blood in Baboons, (Vol. 39,
No. 3, Neurosurgery 577 (1996年9月)。この研究において、血液は大腿部動脈を介し
てヒヒから継続的に引き出された。該血液は水浴により冷却され、次いでその閉じた外部
支流から通常の頚動脈を介して注入された。この方法を使用する場合、通常の心拍、全身
の動脈血圧及び動脈血ガス価が、低体温法を実施する間、維持された。この研究は、全身
の温度を低下させることなく、脳を20℃の温度まで選択的に冷却できることを示した。
しかし、血液の外部還流はヒトの治療を行うには実用的な取り組みではない。その理由は
、感染の危険、抗凝血の必要性及び出血の危険が大き過ぎるからである。さらに、この方
法は2本の血管のカニューレ挿入を必要とし、これが該方法を実施、特に緊急装着におい
てさらに扱い難いものにしている。さらに、頚動脈の経皮カニューレ挿入は難しく、かつ
動脈壁損傷により、潜在的に致命的になることがある。最後に、この方法は腎臓など他の
臓器の冷却には効果的ではない。その栄養動脈が経皮的に直接カニューレ挿入されること
ができないからである。
【0008】
また、選択的臓器低体温法は生理食塩水又は過フッ化炭素のような冷い溶液の灌流によ
っても試みられている。この方法は一般に心臓手術中に心臓を守るために用いられ、かつ
心臓麻痺法と呼ばれている。冷い溶液の灌流は多くの欠点がある。灌流液の過剰容量集積
、コスト及び不便さに起因する管理の時間制限、並びに血液から温度が希釈化されること
による効果の欠如である。血液による温度の希釈化は、例えば脳のような高血流臓器にお
いて特に問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の要約)
発明は、脳など選択された臓器の温度をコントロールする装置及び方法に関するもので
ある。
本発明は、総合的な体の低体温状態を最小としつつ、選ばれた臓器の温度を選択的にコ
ントロールするのに使用することができるシステム提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の該装置は、その末端部に装着された熱伝達エレメントを備えたカテーテルを有
する。該熱伝達エレメントは、該流体を冷却又は加熱すべき選択された臓器の極近くにも
たらす。また、熱伝達の効果を増強するよう、乱流増強エレメントをカテーテルの末端部
に装着し、かつ熱伝達エレメントに沿って血流を乱流とするよう適合されている。
本発明のさらなる範囲には、患者の血管系において選択された血管に挿入できるカテー
テル、該カテーテルの末端部に装着された熱伝達エレメント、及び該カテーテルの末端部
に装着され、かつ前記熱伝達エレメントに沿って血流の乱れを増強するよう適合されてい
る乱流増強エレメントを有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の前記範囲の実施態様において、該熱伝達エレメントは乱流増強エレメントを有
する。
本発明の前記範囲のさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、複数の外部表
面不規則構造を有し、該表面不規則構造は該表面不規則構造が、周囲流体における流れの
方向に連続的な変化を与えるように形成され、かつ配置されており、前記表面不規則構造
は、前記熱伝達エレメントと栄養動脈の間の流れの境界層の厚さと、少なくとも同じ深さ
を有する。
本発明の前記範囲のさらなる実施態様において、該表面不規則構造は、それぞれの前記
熱伝達セグメント上に形成されたらせん状隆起とらせん状溝を有し、かつそれぞれの前記
熱伝達セグメント上のらせん状隆起が、隣接する前記熱伝達セグメント上の前記らせん状
隆起に対する逆のらせん状ねじれを有する。
本発明の前記範囲の他の実施態様において、該表面不規則構造は、前記外部表面上に突
起を有し、かつ該突起が軸上に千鳥配置され、かつ該外部表面に沿って周辺で重複する。
【0012】
本発明の前記範囲のさらなる実施態様において、内部同軸チューブが熱伝達エレメント
の内部に配置され、該内部同軸チューブがカテーテル内部で流体流れの連絡において、内
部同軸チューブと連結しており、該熱伝達エレメントは複数の熱伝達セグメントを含み、
該乱流増強エレメントは隣接する熱伝導セグメントとそれぞれの熱伝導セグメントを連結
する少なくとも1の可撓性ジョイントを有し、該少なくとも1の可撓性ジョイントは、流
体流れの連絡において、内部同軸チューブとの内部領域を含み、かつ該カテーテルを介し
て作動流体の流れで広がるように適合されている。
本発明のさらなる実施態様において、該熱伝達エレメントは送込ルーメン及び排出ルー
メンを有し、該排出ルーメンと送込ルーメンの間で作動流体が移動するように、該排出ル
ーメンと送込ルーメンが結合しており、該排出ルーメンは膨張した時に、血液又は作動流
体において乱流を生じさせる構造を有している。
【0013】
本発明のさらなる実施態様において、送込ルーメン及び排出ルーメンは可撓性の材料で
作られている。
本発明のさらなる実施態様において、該可撓性の材料はゴムである。
本発明の他の実施態様において、該可撓性の材料はラテックスゴムである。
本発明のさらなる実施態様において、該排出ルーメンは作動流体に乱流を生じさせる構
造を有している。
本発明のさらなる実施態様において、該排出ルーメンは、膨張した時に、らせん状形態
を有する。
【0014】
本発明のさらなる実施態様において、該排出ルーメンのらせん状形態は、膨張した時に
先細り状である。
本発明の他の実施態様において、該排出ルーメンのらせん状形態は、膨張した時に、分
節状に先細りである。
本発明のさらなる実施態様において、該送込ルーメンは、送込ルーメンが、膨張した時
に、先細り状になるように縮小している。
本発明のさらなる実施態様において、該排出ルーメンの半径は、膨張時に該排出ルーメ
ンが先細り状になるよう縮小している。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、熱伝達
エレメントの基部に配置されている。
【0015】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは膨張可能
なマイクロバルーンを有する。
本発明の前記範囲における、さらなる実施態様において、乱流増強エレメントは膨張可
能なマイクロリングバルーンを有する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、多重軸
で千鳥配置され、かつ前記外部表面にそって配置された、周辺で重複する突起を有する。
【0016】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、熱伝達
エレメントのフィードバックコントロールのために、前記外部表面の周りを、らせん状に
巻く温度センサーワイア、及び前記熱伝達エレメントと熱接触する温度センサーを有する

本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、温度センサーは、熱電対及びサ
ーミスタからなる群から選ばれる部材である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、カテーテルは、縦軸を有し、か
つ前記乱流増強エレメントは、該カテーテルの縦軸と同軸の軸の周りを回転するように適
合されているファンを有する。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、ファンが、該ファンを通り越してゆ
く流体の流れの周りを回転するよう適合されている。
【0017】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、駆動機構がファンを回すように
装着されている。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該ファンは、該ファンが止まっ
ている場合に、低プロフィールを有し、動いている場合に膨張しているように適合してい
る多重羽歯を有する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、熱伝達エレメントは滑らかな表
面を有する。
本発明の他の範囲には、選択的臓器熱伝達装置であって、患者の血管系において選択さ
れた血管に挿入することが可能なカテーテル、該カテーテルの末端部に装着された熱伝達
手段、及び該カテーテルの末端部に装着された、該熱伝達手段に沿って、血流の乱れを増
加させる手段を有する装置が含まれる。
本発明の前記範囲における実施態様において、該選択的臓器熱伝達装置は、前記熱伝達
手段に沿って血流の乱れを増加させる付加的手段を有する。
【0018】
本発明のさらなる範囲には、患者の選択された臓器の温度をコントロールする方法が含
まれ、該方法は、その末端部に熱伝達エレメントと乱流増強エレメントを有するカテーテ
ルを準備し、該カテーテルを患者の血管系を介して挿入し、選択された臓器の栄養動脈に
、該熱伝達エレメントと乱流増強エレメントを配置し、該乱流増強エレメントにより、熱
伝達エレメント周囲の血流の乱れを作り出し、該カテーテルの内部ルーメンを介し、かつ
熱伝達エレメントの内部ルーメンを介して、該熱伝達エレメントの内部に流体を循環させ
、該熱伝達エレメントの外部ルーメンを介して、該熱伝達エレメントの外に流体を循環さ
せ、該熱伝達エレメント及び栄養動脈内の血液の間で熱を伝達させて、選択された臓器の
温度を選択的にコントロールするものであって、それにより該熱伝達エレメントの周囲に
作り出された乱流化した血流が、熱伝達エレメントと血液の間の熱の伝達を促進する。
【0019】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、前記熱伝達エレメントがらせん
回転の相互方向性を有するらせん状隆起及び溝の複数のセグメントを有し、かつ該方法が
前記隆起と溝の相互らせん回転により、らせん状血流の繰り返し相互方向性を確立するこ
とにより、前記熱伝達エレメントの周囲に乱流化した血流を作り出すステップを有する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは膨張可能
なマイクロバルーンであり、該マイクロバルーンが、前記セグメントに接触する血流の速
度ベクターの方向の変化により、乱流を増幅する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは膨張可能
なマイクロリングバルーンであり、該マイクロリングバルーンが、前記セグメントに接触
する血流の速度ベクターの方向を変化させ、乱流を増幅する。
【0020】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、前記乱流増強エレメントが、カ
テーテルの外部表面に沿って配置された、多重軸で千鳥配置され、かつ周辺で重複する突
起を有し、かつ該突起が、前記セグメントに接触する前に血流の予備的な乱流を作り出す
ことにより、乱流を増幅する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、カテー
テルの回りにらせん状に巻かれている温度センサーワイアであり、該温度センサーワイア
は、熱伝達エレメントと熱的に接触した温度センサーを有し、かつ該温度センサーワイア
は、前記セグメントの接触する血流の方向を変え、かつ該セグメントと接触する前に血流
の予備的な乱流を作り出すことにより乱流を増幅し、かつ該方法は、さらに加熱エレメン
トの温度に基づき循環する流体の温度をフィードバックコントロールすることを含む。
【0021】
本発明の前記範囲における他の実施態様において、前記乱流増強エレメントは、カテー
テルの回りをらせん状に巻く温度センサーワイアであり、該温度センサーワイアは、熱伝
達エレメントの末端部に備え付けられた温度センサーを有し、かつ該方法は、さらに加熱
エレメントの血流の下流の温度に基づき、循環する流体の温度をフィードバックコントロ
ールすることを含む。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは回転する
ファンである。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流増強エレメントは、1以上
の拍動性菅部材を有し、それぞれは内部領域を有し、かつ該方法は、さらに、それぞれの
菅部材が拍動するように、それぞれの内部領域を通って流体が循環することを含む。
【0022】
さらに本発明の範囲には、選択的臓器熱伝達装置であって、患者の血管に挿入するカテ
ーテル、該カテーテルの末端部に装着され、その表面に形成された複数の外部不規則構造
を有する熱伝達エレメント、該表面不規則構造が、周囲流体における流れの方向に連続的
な変化を与えるように形成され、かつ配置されており、前記表面不規則構造が、前記熱伝
達エレメントと血管の間の流れの境界層の厚さと、少なくとも同じ深さを有し、かつ血液
が加熱エレメントに到達する前に血液に乱流を生じさせる、前記加熱エレメントと連結さ
れた乱流増強エレメントを有する前記選択的臓器熱伝達装置がある。
本発明のさらなる範囲には、周囲の血液と異なる温度を有する作動流体を運搬するよう
に構成され、かつ配置された、送込ルーメン及び排出ルーメンを有するカテーテルシステ
ムが含まれる。該排出ルーメンは、該排出ルーメンの近くを通過する近隣流体において乱
流を誘導するように構成されている。
【0023】
本発明の他の範囲には、送込ルーメン及び排出ルーメンを有し、作動流体へ又はからの
熱伝達により、血液の温度を変えるカテーテルシステムであって、該排出ルーメンと送込
ルーメンの間で作動流体が移動するように、該排出ルーメンと送込ルーメンが結合してお
り、該排出ルーメンが、膨張したときに、血液又は作動流体において乱流を生じさせる構
造を有している、該カテーテルシステムが含まれる。
【0024】
本発明の前記範囲における実施態様において、前記送込ルーメン及び排出ルーメンは可
撓性の材料でできている。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該可撓性の材料はゴムである。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該可撓性の料は、ラテックスゴ
ムである。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該排出ルーメンは作動流体にお
いて乱流を誘導する構造を有する。
【0025】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該排出ルーメンは膨張時にらせ
ん状の形態を有する。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該排出ルーメンは、膨張時に先
細り状になる。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、排出ルーメンのらせん状形態は、膨
張時に分割的な先細り状である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、送込ルーメンの半径が、該送込
ルーメンが、膨張時に先細り状になるように小さくなる。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、排出ルーメンの半径が、該排出
ルーメンが、膨張時に、先細り状になるように小さくなる。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、ワイアが少なくとも送込ルーメン又
は排出ルーメンの一方の内部に配置されている。
【0026】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、膨張時における、該排出ルーメ
ンの厚さが約1/2ミル未満である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該送込ルーメンの長さが約5〜
30cmの間である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、排出ルーメンのらせんの直径が
、膨張時に、約8mm未満である。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、膨張時に、排出ルーメンのらせんの
直径が約2mmと8mmの間であり、かつ約1mmと2mmの間に先細りする。
【0027】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、セグメントの長さが約1cmと1
0cmの間である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、送込ルーメンと排出ルーメンの
半径が、膨張時に、約0.5mmと2mmの間である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、排出ルーメンが、さらに、少な
くとも1つの表面形態を有し、該表面形態が、該排出ルーメンに近接した流体において乱
流を生じさせるものである。
【0028】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該排出ルーメンは、さらに少な
くとも1の内部形態を有し、該内部形態が作動流体において乱流を起こさせるものである

本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該表面形態は、排出ルーメンに
形成された一連のらせん状ターンである。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、前記一連のらせん状ターンにお
ける隣接するターンの各ペアが逆らせん性を有する。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、該表面形態が、排出ルーメンに形成
されたらせん形態である。
【0029】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、該表面形態は、排出ルーメンに
形成された一連の突起である。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流誘導排出ルーメンが、動脈
内に置かれたときに、血流の自由な流れの中で、膨張時すると、乱流を起すように適合さ
れている。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流誘導排出ルーメンは、血液
の自由な流れの中で、膨張すると、0.05よりも大きい乱流強度となるよう適合されている

本発明の前記範囲における他の実施態様において、乱流誘導外部表面が、動脈に置かれ
た場合、膨張すると、心臓サイクル期間の少なくとも20%の間、膨張時に乱流を誘導す
るよう適合されている。
【0030】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流誘導排出ルーメンが、動脈
に置かれた場合、膨張すると、心臓サイクル期間を通して、乱流を誘導するよう適合され
ている。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、内部カテーテルルーメンを有す
る同軸提供カテーテルが送込ルーメンと結合しており、かつ作動流体供給装置が作動流体
を分配するよう形成され、かつ内部カテーテルルーメンと連結した出力を有する。
【0031】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、前記作動流体供給装置は、約−
3℃から36℃の温度で、かつ約5気圧より下の圧力で加圧された作動流体を生み出すよ
う構成されている。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、乱流誘導排出ルーメンが凝固形
成を妨げるようコーティング又は処理されている。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、前記表面コーティング又は処理がヘ
パリンを含む。
【0032】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、ステントが送込ルーメンの末端
部と連結している。
本発明のさらなる範囲には、送込ルーメン及び排出ルーメンを有し、作動流体への又は
からの熱伝達により、血液の温度を変えるカテーテルシステムが含まれ、該システムにお
いて、該排出ルーメンは、膨張時に、第1半径から第2半径に先細りになり、該排出ルー
メンは、排出ルーメンと送込ルーメンの間で該作動流体が移動するように、送込ルーメン
と連結しており、それにより、排出ルーメンの先細り状により、膨張時に該排出ルーメン
を第1半径よりも小さな半径を持つ動脈内に配置することが可能になっている。
【0033】
本発明の他の範囲には、送込ルーメン及び排出ルーメンを有し、作動流体への又はから
の熱伝達により、血液の温度を変えるカテーテルシステムが含まれ、該システムにおいて
、該排出ルーメンは、膨張時に、第1半径から第2半径に分割的に先細りになり、該排出
ルーメンは、排出ルーメンと送込ルーメンの間で該作動流体が移動するように、送込ルー
メンと連結しており、それにより、該排出ルーメンの隣接セグメントがジョイントにより
分割され、該ジョイントは他の隣接するセグメントの半径よりも小さな半径を有し、かつ
該排出ルーメンの先細りにより、膨張時に該排出ルーメンを第1半径よりも小さな半径を
持つ動脈内に配置することが可能になっている。
【0034】
本発明のさらなる範囲には、作動流体を配送する実質的に直線の送込ルーメン、及び膨
張した時に、実質的にらせん状に送込ルーメンを囲み、作動流体を除去する排出ルーメン
を有する、作動流体に熱伝達することにより血液の温度を下げるカテーテルシステムが含
まれ、該システムでは、該排出ルーメンのらせん状形態が、作動流体、血液又は双方にお
いて乱流を形成するものであり、これは、該排出ルーメンのらせん状形態が、約0.05
よりも高い、血液における乱流強度を誘導するのに十分なものである。
【0035】
本発明のさらなる範囲には、作動流体への熱伝達により、血液の温度を下げるカテーテ
ルシステムが含まれ、該システムは、分割的に先細りし、かつ実質的に真直ぐで、作動流
体を配送する送込ルーメン及び排出ルーメンを含み、該排出ルーメンは、膨張時に、分割
的に先細り状になり、かつ前記送込ルーメンをらせん状に囲んで作動流体を除去し、該排
出ルーメンのらせん状かつ分割的な先細り形状は、作動流体において、及び血液において
乱流を誘導するものであって、該排出ルーメンの形態は、血液において約0.05よりも
高い乱流強度を誘導するのに十分なものである。
【0036】
本発明のさらなる範囲には、作動流体への熱伝達により、血液の温度を下げる医療用カ
テーテルシステムが含まれ、該システムは、実質的に真直ぐで、作動流体を配送する膨張
可能な送込ルーメン、及び実質的に送込ルーメンを囲み、作動流体を除去する、先細り状
で拡張可能な排出ルーメンを含み、該排出ルーメンの外部表面は、作動流体において、か
つ血液において乱流を誘導する表面特性を有し、該表面特性は、血液において約0.05
よりも高い乱流強度を誘導するのに十分なものである。
【0037】
本発明のさらなる範囲には、作動流体への熱伝達により、血液の温度を下げる医療用カ
テーテルシステムが含まれ、該システムは、実質的に真直ぐで、作動流体を配送する膨張
可能な送込ルーメン、及び実質的に送込ルーメンを囲み、作動流体を除去する、先細り状
で拡張可能な排出ルーメンを含み、該排出ルーメンの外部表面は、作動流体において、か
つ血液において乱流を誘導する、そのうえに形成されたらせん構造を有し、該らせん状表
面特性は、血液において約0.5よりも高い乱流強度を誘導するのに十分なものである。
【0038】
本発明のさらなる範囲には、作動流体への熱伝達により、血液の温度を下げる医療用カ
テーテルシステムが含まれ、該システムは、実質的に真直ぐで、作動流体を配送する膨張
可能な送込ルーメン、及び実質的に送込ルーメンを囲み、作動流体を除去する、先細り状
で拡張可能な排出ルーメンを含み、該排出ルーメンの外部表面は、作動流体において、か
つ血液において乱流を誘導する、そのうえに形成された千鳥配置の突起物を有し、該千鳥
配置の突起物は、血液において約0.05よりも高い乱流強度を誘導するのに十分なもの
である。
【0039】
本発明のさらなる範囲は、熱伝達により血液の温度を変える方法を含み、該方法は、動
脈又は静脈に膨張可能な熱伝達エレメントを挿入し、作動流体を膨張可能な熱伝達エレメ
ントに配送することにより、該エレメントを膨張させ(該作動流体の温度は血液の温度と
相違する。)、かつ乱流誘導経路を介して作動流体を通過させることにより、該作動流体
に乱流を誘導することを含み、ここで該乱流は、血液の自由な流れの実質的な部分で誘導
されるようになっている。
【0040】
本発明のさらなる範囲は、熱伝達により血液の温度を変える方法を含み、該方法は、動
脈又は静脈の血流に膨張可能な熱伝達エレメントを挿入し、血液の温度と異なる作動流体
を膨張可能な熱伝達エレメントに配送することにより、該エレメントを膨張させることを
含み、前記膨張可能な熱伝達エレメントは膨張時に乱流誘導構造を有し、ここで該乱流は
、血液の自由な流れの実質的な部分で誘導されるようになっている。
本発明の前記範囲における実施態様において、さらに該方法は約−3℃と36℃の間の
温度の作動流体を配送することを含む。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は約5気圧よりも
小さな圧力で作動流体を配送することを含む。
【0041】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は約1と5気圧の
間の圧力で作動流体を配送することを含む。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は血液から約75
ワットよりも熱を吸収することを含む。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は頚動脈において
約0.05よりも大きな乱流強度で血液の乱流を誘導することを含む。
本発明の前記範囲における他の実施態様において、さらに膨張がらせん状形態の構造を
介して作動流体が通過することを含む。
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は、頚動脈内にお
いて、心臓サイクルの期間の20%より長く血液の乱流を誘導する。
【0042】
本発明の前記範囲におけるさらなる実施態様において、さらに該方法は、頚動脈内にお
いて心臓サイクルの期間を通して血液の乱流を誘導する。
本発明のさらなる範囲には、患者の体において臓器を選択的に冷却する方法を含み、該
方法は膨張可能な熱伝達エレメントを有するカテーテルを血管を通して臓器に導入し、該
熱伝達エレメントを膨張させ、かつ該熱伝達エレメントを超えて血流中に自由な流れの乱
流を誘導することを含み、ここで熱を血液から除くことにより、全身を実質的に冷やすこ
となく臓器を冷却することができる。
【0043】
本発明の他の範囲には作動流体へ、又はからの熱伝達により近接する物質の温度を変え
るカテーテルシステムが含まれ、該システムは、送込ルーメン及び排出ルーメンを含み、
該排出ルーメンは、排出ルーメンと送込ルーメンの間で作動流体が移動するように、送込
ルーメンに結合されており、該排出ルーメンは該作動流体において乱流を誘導する構造を
有している。
本発明の他の利点、特徴及び目的は以下の詳細な記載に述べられている。
【0044】
選択された臓器の温度を血管内を介して制御するために、熱伝達エレメントを臓器の栄
養動脈に入れて、臓器内に流れる血液から熱を吸収し、又は血液に熱を与えることができ
る。熱の伝達は選択された臓器の冷却又は過熱を起こすことができる。該熱伝達エレメン
トは栄養動脈内に固定できるくらいに小さくなければならないが、一方、虚血性の臓器損
傷を避けるために、臓器に十分な血流が届くようなものでなければならない。また、該熱
伝達エレメントは臓器内で所望の冷却又は加熱効果を発揮するように必要な熱伝達速を提
供するものでなければならない。臓器の栄養動脈内に該熱伝達エレメントを入れることに
より、臓器の温度を、体の残りの部分に重大な影響を与えることなく、コントロールする
ことができる。これらの点を、例として脳の冷却を用いて詳細に説明することができる。
【0045】
総頚動脈は血液を心臓と脳に供給する。内頚動脈は総頚動脈から枝分かれし、脳に血液
を直接供給する。脳の選択的な冷却を行うため、熱伝達エレメントを前記総頚動脈、内頚
動脈又はその双方に配置することができる。総頚動脈の内径は6〜8mmの範囲で、その長
さは80〜120mmの範囲である。したがって、これらの動脈の一つに配置する熱伝達エ
レメントは、血管の閉塞を防ぐため、直径4mmよりも大きくしてはならない。
【0046】
臓器の小さな栄養動脈内に配置するためには、熱伝達エレメントを可撓性にするのが有
益である。前記頚動脈のような栄養動脈はさまざまなレベルで大動脈から枝分かれしてい
る。従属する動脈は続いて最初の枝から枝分かれしている。例えば、内頚動脈はその下顎
角近くで総頚動脈から枝分かれする、直径の小さな動脈である。前記熱伝達エレメントは
通常、末梢の動脈、例えば、大腿動脈に挿入され、最初、一連の1以上の栄養動脈の支流
を通って栄養動脈に侵入することから、熱伝達エレメントが可撓性であることは極めて有
利である。さらに、該熱伝達エレメントは、熱伝達を促進するために、例えば金属のよう
な高度の熱伝達性材料を使って構成することが理想的である。高度な熱伝達性材料の使用
は、熱伝達エレメント内の熱伝達物質(例えば、クーラント)と血液との所定の温度差に
おける熱伝達速度を速める。このことは、該熱伝達エレメント内でより温度が高いクーラ
ント、例えば水ようなより安全なクーラントを使用することを容易にする。例えば金属の
ような、高度に熱伝達性の材料は硬くなる傾向がある。したがって、金属のようなより硬
い材料を使用する場合、熱伝達エレメントの設計は固有の非可撓性材料において可撓性を
促進するようなものでなければならない。
【0047】
前記の低体温法の利点を得るためには、脳に流れる血液の温度を30℃と32℃の間に
下げるのが望ましい。通常の脳では、各頚動脈(右及び左)を通る血流速度が、ほぼ25
0〜375cm3 /分であるとすると、熱伝達エレメントは、所望の冷却効果を得るために
は、頚動脈の1つに配置された場合、75〜175ワットの熱量を吸収するものであるこ
とが望ましい。ここで注意すべきことは、より小さな臓器は栄養動脈における血流はより
小さなものになり、例えば、25ワットといったより小さな熱伝達を必要とすることであ
る。
熱伝達エレメントを動脈に同軸方向に挿入する場合、熱伝達エレメントの表面と、血液
の間における熱伝達の主な機構は強制対流である。対流は液体の動きに依存して熱を伝達
する。外部の力がかかる場合、強制対流は血流内部に動きを起こさせる。動脈血の場合、
その鼓動する心臓が熱伝達エレメントの回りの血液の動きを起こさせる。
【0048】
熱伝達速度の大きさは、熱伝達エレメントの表面積、温度差、及び熱伝達エレメントの
熱伝達係数に比例する。
先に記載したように、熱伝達エレメントを配置する受取り動脈は直径と長さが限られて
いる。したがって、熱伝達エレメントの表面領域(面積)は、動脈の重大な障害を避け、
かつ熱伝達エレメントが血管系を抜けて容易に通過できるように限定されたものでなけれ
ばならない。前記内部及び総頚動脈内に配置するためには、該熱伝達エレメントの横断面
の直径は約4mmに、かつその長さはほぼ10cmに限定される。
【0049】
温度差は、冷却の場合、熱伝達エレメントの表面温度を下げることにより大きくするこ
とができる。しかし、その最小許容表面温度は血液の特性により限定されている。血液は
約0℃で凍結する。血液が凍りつつある場合、下流を止め得る氷の寒栓が形成され、重大
な虚血性傷害を引き起こすことがある。さらにまた、血液の温度の低下がその粘度を高め
、それにより対流熱伝達係数の値を少し低下させる。加えて、血液の粘度増加が動脈内の
血圧低下を強め、それにより脳への血流を危険にさらすことになる。前記の条件を前提と
すると、熱伝達エレメントの最低許容表面温度をほぼ5℃とするのが有益である。これに
より、患者が通常の37℃である場合、血液の流れと熱伝達エレメントの間の最大温度差
はほぼ32℃となる。
【0050】
対流熱伝達係数の値を増加させることができる機構は複雑である。
しかし、対流熱伝達係数は流体流れにおける乱流運動エネルギーのレベルにより増加す
ることが良く知られている。したがって、乱流の血流を前記熱伝達エレメントに接触させ
ることは有益である。
図1は安定状態の乱流を示すグラフである。この縦軸は該流れの速さである。水平軸は
時間を表す。該乱流の平均速度はライン100により示されている。該流れの実際の瞬間
速さは曲線102により示されている。
【0051】
定圧条件の下で、パイプにおける該流れはポアズイユである。図3Aは定圧により誘導
される典型的な安定状態ポアズイユの流れを示す速度プロフィールダイアグラムである。
該パイプを横切る流れの速度は、放物線状の曲線と対応する速度ベクターにより図3Aに
示されている。該パイプの壁に接触する該流体の速度はゼロである。境界層は、粘性スト
レスが優性である、パイプ表面に接触する流れの領域である。安定状態のポアズイユの流
れにおいて、境界層は、それがパイプ中心線に達するまで展開する。例えば、図3Aにお
ける境界層の厚さは、パイプの直径の2分の1である。
【0052】
ポアズイユの流れの条件下において、レイノルズ数、(例えば、慣性力に対する粘性力
の割合)を用いて、乱れの動的エネルギーの水準を特徴付けることができる。ポアズイユ
の流れに関し、該落層に乱れの転移を生じさせるために、レイノルズ数は、約2300よ
りも大きくなければならない。さらに、レイノルズ数が約2000よりも大きな場合、前
記境界層は“トリッピング”に対し受容的である。トリッピングは、境界層における小さ
な摂動が乱れの条件を作り出すことができるプロセスである。トリッピングに対する境界
層の受容性は、レイノルズ数に比例し、かつレイノルズ数が2000未満であればほぼ0
に近いものである。
【0053】
動脈における血流は、拍動する心臓により誘発され、従って、拍動性であり、流れの機
構分析を複雑なものにしている。図2Aは時間の関数として、動脈内の血流の速度を示す
グラフである。拍動する心臓は、ほぼ0.5〜1秒の期間で拍動する流れを与える。これ
は心臓サイクルの時間として知られている。図2Aにおける水平軸は秒単位の時間を表し
、縦軸は1秒当たりのcm単位の血液の平均速度を表す。パルスの頂点で非常に高い速度に
達するけれども、該高い速度は心臓サイクルの小さな部分でのみ生じる。事実、図2Aに
示されるように、血液の速度はパルスの終りでは頚動脈内でゼロになり、かつ一時的に逆
転する。
【0054】
心臓パルスの持続時間が比較的短いという理由で、動脈の血流は典型的なポアズイユの
流れを発達させない。図3Bは前記心臓パルスの間の、動脈内における平均の血流速度を
示す速度プロフィールダイアグラムである。動脈内の血流の大部分は同じ速度である。血
流速度が自由な流れからゼロに減衰する場合、該境界層は非常に薄く、通常動脈の直径の
1/6〜1/20であり、逆にポアズイユの流れ条件においては動脈の直径の1/2であ
る。
【0055】
先に記述したように、動脈内の血流が拍動よりもむしろ安定であるならば、レイノルズ
数の値が約2000を超える場合に、層状から乱流への変化が生じる。しかしながら、拍
動性動脈流において、まさに流れの速度の変化に伴って、レイノルズ数の値は心臓サイク
ルの間変化する。拍動性の流れにおいて、自由な流れの加速に伴い安定性が高まることか
ら、運動の不安定な形態が乱流に育ってゆくレイノルズ数の臨海的な値は、おそらく90
00にも高まる、より高いものであることが見出された。
【0056】
対象となる動脈内の血流は心臓サイクルの80%よりも長い間、層状に保たれている。
再度、図2Aを参照すると、該血流は、下降する心収縮期性の流れの小さな部分の間で、
ほぼ時間tからtまでの間、乱れており、それは心臓サイクルの期間の20%未満で
ある。熱伝達エレメントが動脈内部に配置されるとすると、熱伝達はこの短い時間に促進
されることになる。しかしながら、必要な熱を伝達し脳を冷却するためには、乱れた動的
エネルギーを生み出し、心臓サイクルの全期間を通して持続するようにしなければならな
い。
【0057】
薄い境界層が心臓サイクルの間形成されることが示されている。この境界層は滑らかな
熱伝達エレメントの表面に形成される。図3Cは、動脈に滑らかな熱伝達エレメントを挿
入した後、心臓パルスの間の、動脈内における平均の血流速度を示す速度プロフィールダ
イアグラムである。図3Cにおいて、熱伝達エレメントの直径は動脈の直径の約1/2で
ある。境界層は動脈の壁に隣合い、さらに熱伝達エレメントに隣接するように展開する。
それぞれこれらの境界層は、熱伝達エレメントなしに、動脈の壁に展開する境界層とほぼ
同じ厚さを持っている。自由な流れの領域は熱伝達エレメントの回りの環状リングに発達
している。
【0058】
熱伝達速度を高める方法の一つに、熱伝達エレメント表面上に乱れた境界層を作ること
がある。しかしながら、非常に薄い境界層における乱流は、必要とされる熱伝達を起こす
十分な動的エネルギーを生み出さない。したがって、脳を冷却するのに十分な熱伝達速度
に増加する十分な乱れ動的エネルギーを生み出すために、速度ベクターの方向を急激に変
化させる、攪拌機構を利用することができる。これは自由な流れにおける高いレベルの乱
流強度を創り出すことができ、それにより熱伝達速度を十分に高めることができる。
【0059】
この乱流強度は心臓サイクルの十分な期間、理想的に維持されなければならない。さら
に、乱れの動的エネルギーは自由な流れ全体に、かつ境界層だけではなく理想的に創り出
されなければならない。図2Bは 時間の関数として、拍動性条件下で連続的な乱流の速
度を示したグラフであり、この速度は動脈の血流において最適な熱伝達をもたらすもので
ある。乱れ速度の変動は、心臓サイクル全体に渡り見られる、逆に、変動の短い間隔が図
2Aの時間tとtの間に見られる。これらの速度変動は自由な流れにおいて見出され
る。図2Bに示されている乱流強度は少なくとも0.05である。換言すれば、瞬間的な
速度変動は平均速度から少なくとも5%外れるのである。乱流は心臓サイクルの全範囲に
渡って創り出されるのが理想であるけれども、その乱流が心臓サイクルの75%、50%
又は30%又は20%と低く維持されても、該乱流の利益を受けることができる。
【0060】
全心臓サイクルにおける、血液の自由な流れにおける乱流強度の所望のレベルを得るた
めに、本発明の一実施態様でモジューラ設計を使用する。この設計は、らせん状の血流を
創り出し、かつらせん状血流の方向の周期的、促進的な急激な変化により、自由な流れに
おける高水準の乱流を作り出す。図2Cは動脈内に熱伝達エレメントを導入するこのよう
な乱流の透視図である。乱流は自由な流れの領域においてポイント114に見出される。
この血流方向の急激な変化は、それぞれ1以上のらせん状隆起を有する、一連の2以上の
熱伝達セグメントを使用することにより達成される。前記自由な流れに影響を与えるため
に、らせん状隆起の深さは、熱伝達エレメントが滑らかな円筒状表面を有する場合、展開
する境界層の厚さよりも大きくする。
【0061】
自由な流れの強い乱流を誘導するために、血流のらせん方向における周期的で、急激な
変化の利用を、共通する衣料洗濯装置を引用して説明することができる。洗濯装置のロー
ターは最初、層流を起こす方向に回転する。このローターが急激に回転を逆転する場合、
この変化する流れが、衣料と水のスラリーのなかにランダムな乱れの動きを起こすに連れ
て、十分な乱流の動的エネルギーが、全洗濯槽の中に創り出される。
【0062】
図4は、本発明の熱伝達エレメント14の一実施態様の正面図である。熱伝達エレメン
ト14は、一連の細長く、連接した熱伝達セグメント20、22、24及びベロー21及
び25を有する。このような3個のセグメントが、この実施態様に示されているが、本発
明の意図から離れることなく、2個以上のこのようなセグメントを用いることができる。
図4に見られるように、最初細長い熱伝達セグメント20は、該熱伝達エレメント14の
基部末端に配置されている。該セグメント20の乱流誘導外部表面は、4本の平行ならせ
ん状の溝26の間に4本の平行ならせん状隆起を有する。また、1、2、3又はそれ以上
の平行ならせん状隆起28を使用でき、それらは本発明の範囲内である。この実施態様に
おいて、熱伝達セグメント20のらせん状隆起28及びらせん状の溝26は、ここに示さ
れているように、逆時計回りらせん又はらせん回転といった左方向の回転を有し、これら
は熱伝達セグメント20の末端部方向に伸びるようになっている。
【0063】
最初の熱伝達セグメント20は、最初のベロー部分21によって、第2の細長い熱伝達
セグメント22に結合しており、該ベロー部分は可撓性と圧縮性を与えるものである。第
2の熱伝達セグメントは、1以上のらせん状の溝30の間に、1以上のらせん状隆起32
を有している。該隆起32及び溝30は、右回り方向、すなわち時計回りの回転を有し、
これらは熱伝達セグメント22の末端部方向に伸びるようになっている。第2の熱伝達セ
グメント22は、第2のベロー部分25によって、第3の細長い熱伝達セグメント24に
結合している。第3の熱伝達セグメント24は、1以上のらせん状の溝34の間に、1以
上のらせん状隆起36を有している。らせん状隆起36及びらせん状の溝34は、左方向
の回転、すなわち逆時計回りであり、これらは熱伝達セグメント24の末端部方向に伸び
るようになっている。このように、熱伝達エレメント14の連続する熱伝達セグメント2
0、22、24は、時計方向と逆時計方向のらせん回転とを交互に有する。どの特定のセ
グメントが実際に左又は右の回転を有するかは、隣り合うセグメントが逆のらせん回転を
有する限り、重要でない。
【0064】
加えて、また、らせん状隆起28、32、36の丸くなった輪郭により、熱伝達エレメ
ント14は比較的非外傷性の外形に保もたれ、これにより血管壁に対する損傷の可能性は
最小になる。本発明の熱伝達エレメントは1、2、3又はそれ以上の熱伝達セグメントを
有していてもよい。
ベロー部分21、25は金属のような継ぎ目がなく、かつ無多孔性の材料から形成され
ており、したがって、ガスに対し不浸透性である。このことは、熱伝達エレメント14を
通って循環する作動流体のタイプによっては特に重要なことになり得る。ベロー部分21
、25の構造は、該ベローを曲げ、伸び及び圧縮できるようにする。これは、血管を通し
てより容易に操作できるよう、熱伝達エレメント14の可撓性を増加させるものである。
また、ベロー部分21、25は熱伝達エレメント14の軸方向の圧縮性を与え、これによ
り、熱伝達エレメント14の末端部が血管壁に接する場合に、傷害を限定することができ
る。また、ベロー部分21、25は性能を劣化させることなく、冷却温度を許容する。
【0065】
熱伝達エレメント14の外部表面は金属で作ることができ、ニッケルのような非常に高
い熱伝導性材料を含んでいてもよく、これにより熱伝達を促進することができる。代わり
に、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、銀、銅などの他の金属を使ってもよく
、生体親和性を強化し又は凝血形成を防ぐ適当なコーティング又は処理を行っても、又は
行わなくともよい。適当な生体親和性コーティングには、例えば、金、白金又はポリマー
パラリンがある。熱伝達エレメント14は、心棒の上に適当なパターンを有する薄層をメ
ッキ、被金して製造することができる。この方法では、熱伝達エレメント14を、大量に
、かつ安価に製造することができる。これは使い捨て医療器具に関し、重要な性質である

【0066】
熱伝達エレメント14を24〜48時間、又はそれ以上、長時間、血管内に留まめるこ
とができるので、熱伝達エレメント14を処理して凝血形成を防ぐのが好ましいであろう
。特に、ベロー部分21、25を処理するのが望ましいであろう。その理由は、血流の澱
みが渦巻でおき、それにより凝血が形成され、かつその表面に付いて血栓を形成するから
である。血栓の形成を防ぐ手段の一つに、熱伝達エレメント14の表面に抗血栓剤を結合
せることがある。例えば、ヘパリンが凝血形成を阻止することが知られ、かつバイオコー
ティングとして有用であることも知られている。それに代わり、熱伝達エレメント14の
表面に窒素などのイオンを使って衝撃を加えてもよい。窒素による衝撃処理により表面を
硬化、かつ滑らかにすることができ、それにより表面への凝血ファクターの付着を防ぐこ
とができる。
【0067】
図5は、図4におけるライン5−5に沿った、本発明の熱伝達エレメント14の縦断面
図である。内チューブ40は、前記熱伝達エレメント14の内側に、内部同軸ルーメン4
0、及び外部同軸ルーメンを形成する。一旦、熱伝達エレメント14が血管の適所に入れ
られると、生理食塩又は他の水性溶液などの作動流体を熱伝達エレメント14を通して循
環させることができる。流体は作動流体冷却装置及びポンプから、供給カテーテルを上が
り、かつ内部同軸ルーメン40に流れる。熱伝達エレメント14の末端部において、作動
流体は内部同軸ルーメン40にあり、かつ外部ルーメン46に入る。該作動流体は外部ル
ーメン46を通って流れるにつれ、熱が、該作動流体から、熱伝達エレメント14の外部
表面37に移る。熱伝達エレメント14は高伝導性材料から構成されているので、外部表
面37の温度は作動流体の温度に非常に近くなる。該チューブ42は断熱配分部材として
形成し、内部ルーメン40を、外部ルーメン46から熱的に分離することができる。例え
ば、断熱は、断熱チューブ42の壁内部に、縦方向の空気通路を創ることにより達成する
ことができる。それに代わり、断熱チューブ42をポリテトラフルオロエチレン又は他の
ポリマーのような非熱伝導性材料により構成することができる。
【0068】
熱伝達エレメント14の外部表面37と、血液との間の熱伝達速度を支配する同じ機構
は、また、作動流体と熱伝達エレメント14の内部表面38との間の熱伝達速度を支配す
ることに注意することが重要である。特に、内部表面38の熱伝達特性は、クーラントと
して、水、生理食塩又は液体として維持される幾つかの他の流体を使用する場合に重要で
ある。フレオンのような他のクーラントは沸騰し、かつ異なる機構を介して乱流を創り出
す。生理食塩水は安全なクーラントである。その理由は、毒性がなく、かつ生理食塩水の
漏出は、沸騰性冷却剤の使用により起こるガス塞栓を起こさないからである。クーラント
における乱流は、熱伝達エレメント14の内部表面38の形態により増幅されるので、滑
らかな内部表面に沿って運ばれたクーラントと比べ、該クーラントはより暖かい温度で熱
伝達エレメント14に配送することができ、さらに必要な熱伝達速度を達成することがで
きる。
【0069】
これは、カテーテル軸の長さに沿った断熱の必要性において、多くの有益な示唆を有す
る。断熱の必要性が少なくなるという理由で、カテーテル軸の直径を小さくすることがで
きる。熱伝達エレメント14の内部表面の熱伝達特性の強化は、また、作動流体をより低
い流速及びより低い圧力で、熱伝達エレメント14に配送することを可能にする。高圧は
熱伝達エレメントを硬くし、血管壁を押す状態を引き起こす可能性があり、これにより、
血液から熱伝達エレメント14の外部表面37の一部が覆われてしまう。交互に配置され
たらせん状隆起28、32、36により熱伝達特性が強化されるので、作動流体の圧力は
5気圧、3気圧、2気圧又はさらに1気圧未満と低くすることができる。
【0070】
図6は、図4でライン6−6に沿った、本発明の熱伝達エレメント14の横断面図であ
る。図6において、熱伝達エレメント14の同軸構造が明瞭に示されている。該内部同軸
ルーメン40は、断熱性同軸チューブ42により規定されている。外部ルーメン46は断
熱性同軸チューブ42及び熱伝達エレメント14の内部表面38により規定されている。
加えて、らせん状隆起28及びらせん状の溝26が図6で示されている。先に記載したよ
うに、好ましい実施態様において、溝の深さdiは、円筒形熱伝達エレメントが用いられる
場合、展開される境界層の厚さよりも大きい。例えば、4mmの外部直径を有する熱伝達エ
レメント14において、該溝の深さdiは頚動脈において使用するために設計されている場
合、ほぼ1mmと等しくすることができる。図6には4個の隆起と4個の溝が示されている
が、隆起及び溝の数は変えることができる。したがって、具体的には、1、2、3、4、
5、6、7、8又はそれ以上の隆起を有する熱伝達エレメントを意図する。
【0071】
図7は、血管内で使用する熱伝達エレメント14の透視図である。熱伝達エレメントの
基部末端部から開始し(図7には示されていない。)、血液が心収縮期性のパルスが続く
間、前進するにつれ、最初のらせん状熱伝達セグメント20が血液に対し逆時計方向の回
転慣性を誘導する。血液が第2セグメント22に到達すると、前記慣性の回転方向が逆転
し、血液内に乱流を引き起こす。さらに、血液が第3のセグメント24に到達すると、慣
性の回転方向は、再び逆転する。血流の方向を急な変化は、速度のベクトルを活発に再方
向付け、かつランダム化し、その結果、血液の流れ全体に渡り乱流を確実に起こす。乱流
が起きている間、血液の速度ベクターはよりランダムになり、時に、動脈の軸に対し垂直
になる。加えて、動脈内の血液の速度が、心臓サイクルの間に低下し、かつ方向を逆転す
るにつれ、さらなる乱流が誘導され、かつ乱流の動きが前記の同じ機構を介し、各パルス
の持続中ずっと維持される。
【0072】
したがって、血管中の温血のかなりの容量は熱伝達エレメント14と接触するように導
入され、むしろ血液の近くの層流を介する伝導により大部分が冷却されるというよりは、
直接的な接触により冷却され得る。先に記載したように、溝26、30、34の深さは、
直ぐ壁を巡らした熱伝達エレメントを血液の流れに導入した場合、展開される境界層の深
さよりも大きい。このように、自由な流れの乱流を誘導する。好ましい実施態様において
、全心臓サイクルの間、全血液の流れにおいて望ましい乱流のレベルを創り出すため、熱
伝達エレメント14は0.05よりも高い乱流強度を創り出す。該乱流強度は0.055
、0.06、0.07、また0.10、又は0.20、あるいはそれよりも高くすること
ができる。本発明の熱伝達エレメントを、血液と同じような速度、密度、及び粘度を有し
、かつ一定の(拍動性ではない。)流れを有する液体を運ぶ、動脈とほぼ同じサイズのパ
イプに配置したとすると、1900、2000、2100、2200又は2300、24
00又は2600又はそれよりも大きなレイノルズ数となるであろう。さらに図4、5、
6及び7に示す設計は熱伝達エレメント14の内部において、作動流体に同様な混合アク
ションを起こさせる。
【0073】
熱伝達エレメント14は、前記すべての設計基準に対応するよう設計されている。第1
に、熱伝達エレメント14は可撓性であり、かつ高伝導性の材料で作られている。該可撓
性は、関節様の機構を提供するベロー断面21、25のセグメント配置により与えられる
。ベローは可撓性を付与する公知の包旋形デザインを有する。第2に、外部表面領域37
はらせん状隆起28、32、36及びらせん状の溝26、30、34の使用により大きく
なっている。また、該隆起は熱伝達エレメント14を比較的非外傷性の外形に保ち、それ
により、血管壁に対する損傷の可能性を最小にする。第3に、熱伝達エレメント14は乱
流の動的エネルギーを内部的及び外部的な双方で増強するよう設計されている。前記セグ
メントの設計はその溝の方向をセグメントの間で逆転させるようになっている。交互のら
せん状回転は、後退及び前進方向にスイッチする洗濯装置のローターにより創り出される
混合アクションと類似する様式で、血液を混合する交互の流れを創り出す。この混合アク
ションは、高いレベルの乱流の動的エネルギーを促し、熱伝達速度を速める。また、交互
するらせん状設計は有益な混合、すなわち内部を流れる作動流体の乱流の動的エネルギー
を起す。
【0074】
図8は、熱伝達エレメント50の別の実施態様の破断透視図である。熱伝達エレメント
50の外部表面52は一連の軸的な、千鳥配列である、円周上で重複する突起物54を有
している。突起物54の千鳥配列で重複することの性質は、図8におけるライン9−9に
沿った横断面図である、図9を参照することで容易に見出せるであろう。自由な流れの乱
流を誘導するためには、滑らかな熱伝達エレメントを血流に導入した場合、千鳥配列され
た突起物54の高さdpは、展開する境界層の厚さよりも厚くする。外部表面52に沿う
血液の流れは、千鳥配列の突起物54の一つと衝突し、乱れた流れを創り出す。血液は最
初の千鳥配列54の側面に沿って別れ、かつ渦を巻くので、それは、その経路内で他の千
鳥配列54と衝突し、その流れが再度層流になるのを妨げ、かつまた、さらに乱流を創り
出す。このようにして、速度ベクターはランダム化され、自由な流れの乱流が創り出され
る。もちろん、流れすぎる流体に乱流を生じさせる、他の表面形態を用いることもできる
。これらには、らせん形、らせん状、突起、様々な多角形の躯体、錐体、四面体、楔形な
どが含まれる。
【0075】
この好ましい実施態様の場合、また、幾何学的な構造が内部のクーラントの流れに乱流
効果を誘導する。作動流体は、断熱同軸チューブ58により規定される内部同軸ルーメン
56を通り、熱伝達エレメント50の末端部先端へと循環する。次いで、該作動流体は、
熱伝達エレメント50の外部表面52へ熱を伝達するために、外部同軸ルーメン60に移
動する。作動流体の乱流を誘導するために、熱伝達エレメント50の内部表面は、外部表
面50と似ている。
【0076】
図8及び9の実施態様は、約1〜50のヌセルト数(Nu)をもたらすことができる。該
ヌセルト数とは、流体の流れを伴う熱伝達速度と流体の流れを伴わない熱伝達速度の比率
で、次の式で表される:
N = Qflow/ Qno-flow =hc/ (K/d)
流体の流れによる熱伝達の増加の大きさは、ヌセルト数により評価することができる。血
液と熱伝達エレメントの表面との間の対流熱伝達に関し、ヌセルト数30〜80が人体に
おける各種臓器の選択的冷却を行う上で適当であることが判った。一般に、ヌセルト数は
幾つかの他の数値、レイノルズ数、オマースレイ数、及びプラントル数に依存する。
本発明の他の実施態様において、図4〜7に関連して記載された1以上のセグエメント
20、22、24は、図8〜9に記載されたセグメントのような、突起物54と重複する
セグメントと置き替えることができる。
【0077】
図10〜14において、臓器を選択的に加熱又は冷却する、多数の熱伝達機構の例を記
載する。図10〜14に関連して論ずる熱伝達機構は、前記図4及び8との関連で記載し
た熱伝達エレメントに類似するが、さらに前記自由な流れ及び熱伝達エレメント14の境
界層における乱れの動的エネルギーを増強する、乱流増強エレメントを有する。この後示
すように、該乱流増強エレメントは、熱伝達エレメント14の回りの乱流を(これには限
定されないが、)多くの方法で増強することができる。例えば、熱伝達エレメント14に
接触する血液の速度を速める、熱伝達エレメント14に接触する血流の通常の方向を変え
る、及び血液が熱伝達エレメント14に到達する前に血流における乱流のレベルを上げる
、例えば、予備乱流を創り出すことなどである。
【0078】
図10及び11を参照し、本発明の実施態様に基づき組み立てられた、熱伝達機構70
をここで説明する。熱伝達機構70は供給カテーテル12の末端部分に配置されている。
該熱伝達機構70は、乱流増強エレメント74の末端に配置された、熱伝達エレメント1
4を有する。該熱伝達エレメント14は、図4−7を参照して先に記載されたものと同じ
でよいので、さらに詳細な記述はしない。記述を完結にする目的で、ここで論ずる内容は
熱伝達エレメント14に関するものとするが、当業者にとり、図4−7を参照して記載さ
れている熱伝達エレメント以外のエレメントを使用することは極めて容易なことである。
例えば、図8−9を参照して記載されている熱伝達エレメント50を使用することができ
る。図10及び11に示されている実施態様において、乱流増強エレメント74は膨張可
能なマイクロバルーン76である。ルーメン78(図11)は空気のような流体で膨張し
、かつ収縮するマイクロバルーン76のために、供給カテーテル12の内部に配置されて
いる。マイクロバルーン76を空気を用いて膨張かつ収縮するように記載しているが、他
の流体、例えば生理食塩水を用いることは、当業者にとり極めて明白なことである。該ル
ーメン78は、該ルーメン78の基部末端にある流体供給源と連絡し、かつ末端部にある
マイクロバルーン76の内部82とも連絡している。本発明の他の実施態様において、カ
テーテル12はマイクロバルーン76を膨張させるために1よりも多いルーメンを含んで
いる。従来のコントロール機構は、マイクロバルーン76の膨張と収縮をコントロールす
るために、ルーメン78の基部末端部と接続させ得るものである。コントロール機構の例
を挙げると、これには限定されないが、プランジャー、スクィーズブラッダー(袋構造)
又はポンプがある。
【0079】
熱伝達機構70を用いて、ここで一般的に記載する。熱伝達機構70は、冷却する所望
の臓器の上流から、患者の血管の所望の位置に配置する。熱伝達機構70を所定の位置に
入れる間、マイクロバルーン76はガスを抜き、折畳んだ状態にして、患者の血管系を介
して行うカテーテル12と熱伝達機構70の移動を容易にする。一旦、熱伝達機構70を
血管内に配置したら、マイクロバルーン76を流体を満たすことにより膨張させる。膨張
した状態では、マイクロバルーン76は、血管のその領域で利用可能な血流の容量を制限
し、これにより、バルーン76の近くの血液は、バルーン76が折畳まれた状態のときと
比べ、より速く移動する。しかしながら、この血液がマイクロバルーン76を通りすぎる
につれて、血流の容量域はは再び膨張し、該血液は、熱伝達エレメント14が配置された
所でこの容量を溢れることになる。乱流は、セグメント20、22、24に接触する血流
の速度ベクターの方向変換により、熱伝達エレメント、特に熱伝達エレメント14の基部
86で強化される。該血液は、続く交互性らせん状の熱伝達セグメント20、22、24
に接触し、血液の混合を起こす交互性の流れを創り出す。この混合動作は高水準の乱流の
動的エネルギーを生み出し、熱伝達エレメント14と血液との熱伝達速度を高める。さら
にマイクロバルーン76は、熱伝達エレメント14と接触する血液の速度を速めることに
より、この高水準の乱流の動的エネルギーを促進し、又は強化する。
【0080】
図12に関連し、本発明の他の実施態様に基づき構成された熱伝達機構90をここで説
明する。該熱伝達機構90は、前記の同機構と類似する熱伝達エレメント14、及び乱流
増強エレメント94を、膨張可能なマイクロバルーン96の形態で有する。図11を参照
して記載された前記ルーメン78に類似する内部ルーメンは、カテーテル12内部に配置
され、マイクロリングバルーン96の膨張と収縮をコントロールするため、基部末端の流
体供給源及びコントロール機構と連絡している。供給ルーメン98は、カテーテル12か
ら放射状に広がり、マイクロリングバルーン96と、内部ルーメンの末端部で連絡してい
る。マイクロリングバルーン96は図10との関連で先に記載されているマイクロバルー
ン76と類似の様式で機能するが、マイクロリングバルーン96が、血液を血管壁から流
し取り、熱伝達エレメント14に流れ込ませて、さらに乱流を誘導するところが相違する
。マイクロリングバルーン96は単一ルーメン98と連絡するように示されているが、当
業者にとり容易に明かであるように、他の実施態様において、該バルーン96は複数のル
ーメンと連絡していてもよい。複数のルーメンはマイクロリングバルーン96にさらにサ
ポートを提供し、かつ血管84とともに、マイクロリングバルーン96の膨張と収縮を促
進する。
【0081】
図13を参照して、本発明の他の実施態様に基づき構成された熱伝達機構110を説明
する。該熱伝達機構110は、前記の同機構と類似する熱伝達エレメント14、及びカテ
ーテル12の外部表面116上に配置され、軸上に千鳥配列され、かつ円周上に重複する
突起物115の形態で、乱流増強エレメント112を有する。該突起物115は、図8及
び9に関連して記載された突起物54に類似してもよいが、熱伝達エレメント14の上で
はなく、それに代わり、熱伝達エレメント14の基部に配置するのが好ましい。血液が外
部表面116に沿って流れるにつれ、血液は千鳥配置の突起物115と衝突し、乱れた流
れ、すなわち“予備乱流”を起こす。該血液が千鳥配置の突起物115の回りで分けられ
、かつ渦巻くにつれ、その経路に有る他の千鳥配置の突起物115と衝突し、該流れの再
層状化を妨げ、かつさらに乱流を創り出す。次いで、該乱れた血流は続く他のらせん状熱
伝達セグメント20−24に接触し、血液のさらなる混合をもたらす交互の流れを創り出
すこの混合動作は、さらに高水準の乱れの動的エネルギーを生み出し、熱伝達エレメント
14と血液との間の熱伝達速度を高める。
【0082】
図14を参照して、本発明の他の実施態様により構成された熱伝達機構120を説明す
る。熱伝達機構120は、前記の同機構と類似する熱伝達エレメント14、及びカテーテ
ル12の外部表面126の回りをらせん状に巻く熱電対のような、温度センサーワイア1
24の形態で、乱流増強エレメント122を有する。温度センサーワイア124は、適当
なところにワイア124を維持する収縮包装としてもよい。温度センサーワイア124は
、熱伝達エレメント14と熱的に接触する熱電対128のような、温度センサー128を
含む。他の実施態様において、熱電対は、熱伝達エレメントの温度を測定するワイアと結
合したサーミスタ、又は類似の熱センサーと置き換えてもよい。熱電対128は作動流体
温度のフィードバックコントロールのために、熱伝達エレメント14の温度を測定するも
のである。また、熱電対128を熱伝達エレメント14の末端部に配置し、熱伝達エレメ
ント14の血液下流の温度を測定、例えば、冷却した血液の温度を測定してもよい。らせ
ん状に巻かれている熱電対ワイア124は、血液にカテーテルの外部表面126の回りで
渦を巻かせ、熱伝達エレメント14に接触する前に、血流を再度方向転換させる。さらに
この血流の再度の方向転換と渦巻は、血液が続く交互らせん状熱伝達セグメント20−2
4に接触するときに創り出される乱流の量を増加させる。本発明の他の実施態様において
、温度の測定に使用しない太いワイアで、熱伝達エレメントに近い熱電対ワイア124を
置き換えてもよい。さらに他の実施態様において、ワイア、例えば熱電対ワイア又は太い
ワイアを、図8及び9で先に示されている外部表面52のような、熱伝達エレメントの滑
らかな外部表面の回りにらせん状に巻いてもよい。このらせん状に巻かれたワイアは、熱
伝達エレメントの回りに乱れた血流を誘導し、その領域における熱伝達を強化する。
【0083】
このようなワイア巻き実施態様において、該ワイアのピッチを、血流の再層状化を起こ
すことなく乱流を維持するのに有用であろう。言い換えると、該ワイアは乱流を創り出し
、単に“トリッピング”ではない様式でとなるよう十分に近接するように巻かなければな
らない。
【0084】
図15、16A及び16Bを参照して、本発明のさらなる実施態様に従い構成された熱
伝達機構140を説明する。該熱伝達機構140は熱伝達エレメント142及び乱流増強
エレメント144を有する。該熱伝達エレメント142は血管84内で血液に接触するよ
う適合された、主に滑らかな外部表面146を有する。他の実施態様において、該熱伝達
エレメント142は前記の同機構と類似する乱流誘導特性を有する。乱流増強エレメント
144は乱流発生ファン148を備えている。ファン148はカテーテル12の軸と同軸
性の軸149の回りを回転するのが好ましい。ファン148はそこから伸びる多重羽根1
52を備えた回転中心150を有する。ファン148は血管84内で血流の勢いで回転す
るよう適合されている。羽根152は、血流の勢いで中心150(図16B)から離れ、
かつ血流が弱まり、又は止まった場合、低プロファイル構造で、中心150(図16A)
に向かうよう組み立てられている。低プロファイル構造が意味するのは、羽根152が、
カテーテルの外部表面146に十分近く位置し、熱伝達エレメント142の挿入及び除去
の際、ファン148が、脈菅構造を捉え、かつおそらく傷害を与えることを防止する構造
である。図16A及び16Bに図示されているように、中心150とカテーテル12の外
側部分154の間に配置されたベアリング153は、ファン148の回転を可能にしてい
る。中心150は、血液の汚染を防止し、かつベアリング152を守るためカテーテル1
2に関し密閉するのが適当である。回転ファン148は、滑らかな熱伝達エレメント14
2と血液との間の熱伝達速度を高める、高水準の乱れの動的エネルギーを誘導する。
【0085】
図17を参照することにより、本発明のさらなる実施態様に従って構成された熱伝達機
構160を説明する。該熱伝達機構は、図15に関連して先に記載した同機構と類似する
熱伝達エレメント142、及び乱流増強エレメント162を有する。該乱流増強エレメン
ト162は、前記ファン148と類似する乱流発生ファン164を備えており、ファン1
64は、ファン164を回転させるために内部駆動機構166を備えている点がファン1
48と相違する。
【0086】
駆動機構166は、入力ルーメン168及び出力ルーメン169を備えることができ、
該ルーメン168及び169はそれぞれの基部末端で、ポンプと流体供給装置に連絡して
おり、かつ該ルーメン168、169のそれぞれの末端部に流体移送路175を備えるこ
とができる。ファン164は、多重羽根172を備えた回転中心170を有し、該多重羽
根172はファン164の強制回転時には中心170から離れており、かつファン164
が回転を止めているときは、中心170の近くにある。ベアリング174は、中心170
とカテーテル12の外側部分154との間に配置されている。中心170は、血液の汚染
を防ぎ、かつベアリング174を保護するため、カテーテル12に関し密閉されている。
ファン164は流体移送路175内に配置された内部羽根178を有する。
空気のような、加圧された流体を入力ルーメン168を介し、流体移送路175の中に
ポンプで送りこむ。空気は流体移送路175を通って矢印の方向に流れ、内部羽根178
を介してファン164を回転させる。この空気は、出力ルーメン169を通って、流体移
送路175を出て行く。
【0087】
回転羽根164は、これは滑らかな熱伝達エレメント142と血液との間の熱伝達速度
を高める、高水準の乱れの動的エネルギー、すなわち混合を誘導する。容易に評価される
ことであるが、多くのバリエーションが熱伝達機構160に関し存在し得る。例えば、他
の実施態様において、内部駆動機構166を、作動流体が流体移送路175及び内部羽根
178を介して、ファン164を駆動させるように構成することができる。他の機械的な
駆動機構を使用して、ファン164を駆動することができる。制限を意図するものではな
いが、回転可能な駆動シャフトと連結されたモーターがある。
【0088】
図18Aから18Cを参照し、本発明のさらなる実施態様に従って構成された熱伝達機
構190を説明する。熱伝達機構190は、一連の細長い、連接した熱伝達セグメント1
92、194、196を有し、これらは、図4から7との関連で先に述べたせぐ20、2
2、24と類似するものであり、可撓性のジョイントで、チューブ状の部材198、20
0の形態で連結されている。熱伝達セグメント192、194、196は、血流と作動流
体との間の熱伝達で、熱伝達エレメント197としての役割を有する。チューブ状部材1
98、200は、継ぎ目なく、かつ無孔性である、ポリマーのような可撓性の生体適合材
料で作られている。チューブ状部材198、200は、曲げ、伸び及び圧縮に適応するよ
う作られており、熱伝達エレメント197が血管を通ってより容易に移動できるように、
該エレメント197の可撓性を高めている。また、チューブ状部材198、200は、熱
伝達エレメント197の軸の圧縮を可能にし、このことは、熱伝達エレメント197が血
管壁に接する場合の傷害を限定することを可能にしている。また、チューブ状部材198
、200は、その性能を損なうことなく、冷やされた温度に耐性を持たせることができる
。熱伝達機構190を使用する間、作動流体を、内部チューブの内部同軸ルーメンを介し
、かつ該内部チューブの外から外部ルーメン内に拍動で送る(参照 例えば、図5、内部
同軸ルーメン40、内部チューブ42、外部ルーメン46)。該作動流体が外部ルーメン
を通って拍動により送られるにつれ、熱が該作動流体から熱伝達エレメント197の外部
表面202に移る。該作動流体が内部ルーメン及び外部ルーメンを介し、拍動により送ら
れるにつれて、外部ルーメンと流体で連絡する内部領域を有する、可撓性チューブ部材1
98、200は、図18B及び18Cに示されるように、継続的に拍動し、又は膨張する
。この拍動性ベロー部材198、200は、その振動を血流に伝え、該血流が熱伝達エレ
メント197に接するので、乱れ動的エネルギーを増強する。さらに、それぞれの拍動に
より生じる、可撓性ベロー部材198、200の膨張した直径は、マイクロバルーン76
について先に記載したのと似た様式で、熱伝達エレメント197と接する血液の速度を速
めることにより、高水準の乱れ動的エネルギーを増強する。
【0089】
本発明の他の実施態様において、チューブ部材198、200は、マイクロバルーンと
置き換えてもよく、該バルーンはバルーン部材の拍動を個別にコントロールするため、分
離されたルーメンと結合するものである。
さらに追加の実施態様において、作動流体の非拍動性の流れを利用してもよい。この実
施態様において、膨張した可撓性部材、それ自体が、先と同じく血液の流れにおいて乱流
を生じさせる。
【0090】
図19−24を一般的に参照し、本発明の追加的範囲における熱伝達エレメントは、ラ
テックスゴムのような可撓性材料で作ることができる。このラッテクスゴムは、分節によ
って先に達成された、高水準の可撓性を付与する。さらに、該ラテックスゴムは熱伝達エ
レメントが、収縮するときに、それが動脈内に容易に挿入されるよう折りたたまれること
を可能にする。挿入と配置は誘導カテーテル又は誘導ワイアにより通常の方法で行うこと
ができる。所望の動脈内への挿入と配置に続き、該熱伝達エレメントは、作動流体、例え
ば、生理食塩水、水、パーフルオロカーボン、又は他の適当な流体により、使用するため
に膨張、又は拡大膨張させることができる。
【0091】
ラテックスゴムのような可撓性材料で作られた熱伝達エレメントは、一般に、有効で、
金属で作られた熱伝達エレメントよりも小さな熱伝導性を有する。該装置は、熱伝達を行
い得る表面積を大きくすることにより、これを補償している。これは2つの方法で達成す
ることができる。横断面サイズを大きくする、及び長さを伸ばすことである。前者に関し
ては、該装置は膨張時に大きくなるように構成してもよい。その理由は収縮時に、それで
も、これが動脈内に挿入できるからである。実際、該装置は、血流の経路が許す限り、動
脈壁と同じくらい大きくしてもよい。その理由は、該装置の可撓性が、例え接触しても動
脈壁に対する損傷を防ぐよう意図されているからである。このような経路を以下に説明す
る。後者に関しては、該装置を長くなるように構成してもよい。長い装置を構成する方法
の1つは、この装置が後述する方法により、半径が小さくなった末端の動脈に挿入できる
よう細長くすることである。さらに該装置は、熱伝達エレメントの壁の厚さを薄くするこ
とにより、低下した熱伝導性を補償する。
【0092】
前記装置の実施態様と同様に、下記実施態様では血液の自由な流れ及び作動流体におい
て高水準の乱流を発生する熱伝達エレメントの設計を採用する。本発明の一実施態様では
、作動流体に対しらせん状の動きを強制し、かつ血液にらせん状バリヤーを課すことによ
り、図4−7に関連付けて説明した同装置と同様に乱流を起こさせる。別の実施態様にお
いて、該らせん状バリヤーは先細り状である。他の実施態様において、先細り状に膨らま
せた熱伝達エレメントは乱流を起こす表面特性を有する。例として、該表面特性はらせん
状形態を有するものでよい。これらすべての実施態様において、該設計は、血液が動脈を
通る間、血液が曲がりくねった経路を進むようにすることで、血液の自由な流れにおいて
高水準の乱流を強制的に起こさせる。この曲がりくねった経路は、血液に、激しい加速を
与え、その結果、乱流を起こさせるものである。
【0093】
本発明の他の実施態様において、膨張性熱伝達エレメント先細り状態は、それ自体、十
分な熱伝達を起こす追加的な表面を提供する。すべての実施態様において、この膨張は、
水又は生理食塩水のような作動流体により起きる。
図19を参照し、本発明の実施態様に従った、熱伝達エレメント314のさらなる態様
の側面図を示す。熱伝達エレメント314は送込ルーメン322及び排出ルーメン320
により形成されている。この実施態様において、排出ルーメン320は、パイプ形態に形
成されている送込ルーメン322を囲み、らせん状形態に形成されている。該ルーメンの
名称は、もちろん限定されるものではない。当業者にとり明かように、送込ルーメン32
2は、 排出装置として機能し得るし、かつ排出ルーメン320は、送込装置として機能
し得る。また、明かなように、該熱伝達エレメントは、所望の領域を(熱配送により)加
熱し、かつ(熱の除去により)冷却することができる。
【0094】
該熱伝達エレメント314は硬質であるが、誘導カテーテルの使用により適当な血管に
挿入することができるように可撓性である。それに代わり、熱伝達エレメントに、それを
通じて動脈中での配置を助ける誘導ワイヤを繰り出す装置を用いることができる。熱伝達
エレメント314は、膨張長さL、らせん直径Dc 、管直径d及びらせん角αを有する。例
えば、Dc を約3.3 mm及びdを約0.9mm〜1mmとすることができる。例えば、送
込ルーメン322の直径は、排出ルーメン314の直径と違っていてもよい。
【0095】
図19の排出ルーメン320の形態は、らせん状である。このらせん形態は、横断面で
、血液の流れに対し円筒状の障害物を提供する。このような傷害物は血液の自由な流れに
乱流を創り出すことを意図している。特に、乱流の形成は、円筒状障害物の下流で起きる
、血液の流れの伴流における、フォンカールマンの渦の形成であると考えられる。
通常の膨張性材料は高度な熱伝導性を有さない。これらの材料は、先の実施態様で記載
した金属製熱伝達エレメントよりも伝導性が大変に低い。この伝導性の違いは、本装置に
おいて少なくとも2つの方法で補償する。この材料をより薄くし、かつ該熱伝達エレメン
トが大きな表面積を持つようにすることである。前者に関し、その厚さは、適切な冷却を
得るために約1/2よりも薄くしてもよい。
【0096】
薄い膨張性の材料、特に大きな表面積を有するものは、例えば、ワイアのように、その
内部で、膨張時に適当な形態となるように適切な非膨張位置を維持する構造が必要となる
。したがって、図19に示されるワイア構造367は、このような機能を発揮するため、
膨張性材料の中にその利点が得られるように配置することができる。
【0097】
他の考慮事項としてらせん構造の前記角度αがある。角度αはルーメン320及び32
2の周りの血液のらせん運動を最適化し、熱伝達を増強するように決めなければならない
。もちろん、また角度αは、ルーメン320及び322内の作動流体のらせん運動を最適
化するよう決めなければならない。ルーメン320及び322内部の作動流体のらせん運
動は、二次運動を創り出すことにより、作動流体において乱流を創り出す。特にパイプ内
の流体のらせん運動は、2つの対抗回転二次流を誘導する。
【0098】
増強度 hcをこのシステムで得ることができ、かつ該増強度は約10又はそれ以上の
ヌッセルト数Nuにより示すことができる。
この装置の他の実施態様が、図20の側面図に示されており、表面積が拡大した熱伝達
エレメント341を説明している。膨張性材料の表面積の増加は、熱伝達を大きくする。
熱伝達エレメント314は異なるコイル直径及びチューブ直径の、一連のコイル又はらせ
ん構造を有する。チューブの直径が相違することは厳密には必要ではないが、商業的に認
識されるシステムはチューブの直径に相違があるであろう。熱伝達エレメント341は、
連続的又は幾つかに分れて先細り状としてもよい。
この異なる実施態様は2つの様式で表面積を広くしている。第1は、より小さな直径の
ルーメンを使用し、全表面積/容量割合を大きくするものである。第2は、進行的に小さ
くなる(例えば、先細り状)ルーメンを使用して、末端部369を、図19の実施態様を
用いて可能であるよりも、さらに動脈に挿入できるようにする。
【0099】
図20の実施態様において、第1のコイルセグメント342は長さL及び直径Dc1で
あることが示されている。第1のコイルセグメント342は、直径dを有する送込ルー
メン351及び直径dを有する排出ルーメン353で形成されている。他と同様に、第
1のコイルセグメントにおいて、該排出ルーメンは、送込ルーメンを直ぐに排出する必要
はない。図20において、各セグメントのための送込ルーメンは、その対応排出ルーメン
に直接供給する熱伝達エレメント341の末端部369に隣り合う送込ルーメンを除き、
続くセグメントの送込ルーメンに供給を行う。
【0100】
別の実施態様では、また、送込ルーメンがそれぞれ作動流体を、その対応する排出ルー
メンに供給するように構成されていてもよい。この実施態様において、分離ルーメンが各
排出ルーメンに排出することが必要であるか、又は各排出ルーメンが隣接する排出ルーメ
ンに排出する。この実施態様では、逆らせん性で各連続するセグメントを適応させられる
という利点がある。この交互の逆らせん性はそこを流れ過ぎた作動流体の乱流を強める。
【0101】
第2のコイルセグメント344は、長さL及び直径Dc2を有する。第2のコイルセグ
メント344は、直径dの送込ルーメン355、及び直径dの送込ルーメン357か
ら構成されている。第3のコイル346は、長さL及び直径Dc3を有する。
第3のコイルセグメント346は、直径d3の送込ルーメン359及び直径d3の送込ル
ーメン361を有する。
【0102】
同様に、第4のコイルセグメント348は、長さL4及び直径Dc4を有する。第4のコイ
ルセグメント348は、直径d4の送込ルーメン363及び直径d4の排出ルーメン365
を有する。該ルーメンの直径、特に末端部369に配置され、又は近いルーメンの直系は
、それらの内部で作動流体の流れを制限しない程度に十分大きくなければならない。もち
ろん、いかなる数のルーメンであっても、使用者の要請に基づき提供することができる。
図21は2つの隣接する送込ルーメン351と355の連結を示す。ジョイント467
は2つのルーメンの連結を示している。このジョイントの構成はストレス、硬度などで変
化することができる。
【0103】
この別の実施態様の利点は、末端セグメントのより小さな直径から得られる。図20の
熱伝達エレメントは、図19の熱伝達エレメントよりも小さな作動空間に配置することが
できる。例えば、脳傷害の治療で、患者の内部頚動脈に冷却装置を配置することを含む。
先に記載したように、通常の頚動脈に内部頚動脈を加えることができる。若干の患者では
、図19の熱伝達エレメントをその内部頚動脈に合わせることはできない。同様に、図2
0の熱伝達エレメントの第1コイルセグメントは内部頚動脈に容易には合わせることはで
きないが、その第2、第3及び第4のセグメントは合わせることができる。したがって、
図20の実施態様において、第1コイルセグメントは通常の頚動脈に残してよく、一方、
より直径の小さなセグメント(第2、第3及び第4)は内部頚動脈に配置することができ
る。実際、この実施態様において、Dc1は例えば5−6mmと大きくてよい。熱伝達エレメ
ント341の全体的な長さは、例えば、20−25cmとすることができる。
【0104】
先にさらなる利点を記載した。図20の実施態様の表面積を図19の実施態様のそれよ
りも実質的に大きくすることができ、それにより熱伝達を有意に大きくできた。例えば、
先に引用した応用の装置の表面積と比べ、3倍又はそれ以上となるよう実質的に、表面積
を大きくすることができる。両実施態様のさらなる利点は、そのらせん状丸くなった形態
により、例えば、動脈のような円筒形の腔に非外傷性挿入を可能になることである。
図20の実施態様によりNuを1から約50にすることができる。
【0105】
図22は、乱流を誘導する全体的な形態というよりも、むしろ表面特性を有する装置の
さらなる実施態様を示す。特に、図22は、送込ルーメン(図示されていない。)及び4
個のセグメント503、505、507及び521を有する、膨張性排出ルーメン520
を有する熱伝達エレメント501を示している。セグメント503は基部末端511と隣
接し、かつセグメント521は末端部513と隣接する。該セグメントは基部末端から末
端部の方向に半径が小さくなるように配置されている。図20の実施態様に類似する様式
において、半径が小さくなる特性は、小動脈のような小さな作業部位への熱伝達エレメン
トの挿入を可能にする。
【0106】
熱伝達エレメント501は、その上に配置される表面形態515を有する。表面形態5
15は、熱伝達エレメント501に適用された各種の硬化処理、又はそれに代わる射出成
形により構成することができる。該硬化処理は、熱伝達エレメント501の外側に波状の
、又は波型の表面を与えることができる。該硬化処理は、さらに熱伝達エレメント501
の内部にも、波状の、又は波型の表面を与えることができる。図23は、この実施態様の
バリエーションを示す。これは組み立て工程で使用され、らせん形、又はらせん状の形態
を表面形態に与えるものである。
図22の実施態様は、約1〜50のNuを与える。
【0107】
幾つかの状況において、拡大された表面領域だけで、付加的な乱流を創り出すことなく
、有意な熱伝達をして、血液を冷却することができる。図24を参照し、送込ルーメン6
04及び排出ルーメン606を有する、熱伝達エレメント602を示す。送込ルーメン6
04は作動流体を熱伝達エレメント602に送りこみ、かつ排出ルーメン606はそこか
ら作動流体を排出する。この機能は、もちろん逆にすることもできる。熱伝達エレメント
602は、多かれ少なかれ使用者の要求に従って、提供することはできるが、さらに5個
のセグメントに分割される。図24における5個のセグメントはセグメント608、61
0、612,614及び616と表示されている。図24においてセグメント608は第
1の大きな半径R1を、続いて対応する半径を610、612,614及び616が有する
。セグメント616は第2の、より小さな半径を有する。セグメント608の長さはL1
あり、続いて対応する長さを610、612,614及び616が有する。
【0108】
純粋な先細り状(分割なし)の形状で先細り状分割形態を起きかえることができるが、
前者は製造するのがより難しいであろう。いずれの場合においても、先細り形状は熱伝達
エレメント602を、例えばR1よりも小さな半径の動脈のような、小動脈に配置すること
を可能にする。したがって、十分な表面積を、非常に小さな動脈においても提供して所望
の熱伝達を達成できる。
該装置の表面積、及びそのサイズは、必要な熱伝達を提供するのに十分なものでなけれ
ばならない。3個の分割先細り状形態の寸法は次のようにすることができる: L1 = 10 c
m, R1 = 2.5 mm; L2 = 10 cm, R2 = 1.65 mm, L3 = 5 cm, R3 = 1 mmである。このような
熱伝達エレメントは全体の長さを25cm、かつその表面積を3 x 10-4 m2 となる。
【0109】
図24の実施態様は、その増加した表面積Sのみで約300%の熱伝達速度の増加を達
成する。
図24の実施態様のバリエーションには、排出ルーメン606の内部に少なくとも1つ
の乱流誘導表面形態を配置したものがある。この表面形態は作動流体に乱流を誘導するこ
とができ、それにより前記の様式において対流熱伝導速度を高める。
【0110】
図24の実施態様の他のバリエーションには、セグメント間のジョイント直径を小さく
したものがある(図示せず。)。例えば、その膨張性材料で、ジョイント618、620
、622及び624が送込ルーメン604の直径よりもほんのわずかだけ大きい直径を有
するように形成することができる。言い換えると、熱伝達エレメント602は先細り状の
ソーセージの形状を有する。
【0111】
これらすべての実施態様において、該膨張性材料をシームレスかつ無孔の材料、したが
って、ガスが不透過性の材料で形成することができる。不透過性は、熱伝達エレメントを
通って循環する作動流体のタイプにより、特に重要となる。例えば、膨張性又は拡大性材
料は、ラテックス、又は他のそのようなゴム材料、又は、それに代わり膨張状態で同じよ
うな性質を有する他のいかなる材料とすることもできる。この可撓性材料は熱伝達エレメ
ントを、それがより容易に小さな血管を進んでいけるように、曲げ、伸ばし、かつ圧縮す
ることを可能にする。また、該材料は、熱伝達エレメント314の末端が血管壁に触れる
場合に、傷害を限定できる、該熱伝達エレメントの軸の圧縮を与える。該材料は、その機
能を失うことなく、−1℃から37℃の間、また血液を加熱する場合のさらに高い温度に
耐えるよう選択しなければならない。
先に論じたように、熱伝達エレメントの表面を血液凝固が起こらないように処理するの
が好ましいであろう。その理由は、熱伝達エレメントは血管内にかなりの長時間、例えば
24〜48時間又はそれ以上留まることができるからである。血栓形成を妨げる方法の一
つは、熱伝達エレメントの表面にヘパリンのような抗血栓剤を結合させることである。
【0112】
図19に戻って参照することにより、本発明の範囲の方法を説明する。図20の実施態
様に関する説明に類似するものである。誘導カテーテル又はワイアを冷却又は加熱すべき
領域まで、または近くに配置する。ここでは誘導カテーテルを使った場合について論ずる
。該熱伝達エレメントは誘導カテーテルを介し、前記領域に配置することができる。それ
に代わり、該熱伝達エレメントを誘導カテーテルの一部又はその逆に形成することができ
る。例えば、該誘導カテーテルの内部の一部分を、作動流体の戻りルーメンに形成するこ
とができる。いかなる場合でも、熱伝達エレメントの動きは、これまで述べたような熱伝
達エレメントの可撓性により、効率的により容易になる。
【0113】
一旦、熱伝達エレメント314が適切に配置されると、生理食塩水又は他の水性溶液な
どの作動流体は熱伝達エレメント314を介して循環し、それを膨張させることができる
。流体は、供給カテーテルから送込ルーメン322に流れる。熱伝達エレメント314の
末端部326において、該作動流体は送込ルーメン322にあって、排出ルーメン320
に入る。
図22の実施態様の場合、図8の説明と類似しており、該作動流体は送込ルーメンにあ
って、セグメント503,505,507及び521を有する、排出膨張性又は拡張性ル
ーメン520に入る。作動流体が排出ルーメン520を流れるにつれ、熱は熱伝達エレメ
ント501の外部表面から、該作動流体に移る。該外部表面の温度は作動流体の温度に非
常に近くなる。その理由は熱伝達エレメント501が非常に薄い材料から構成されている
からである。
【0114】
該装置で使用できる作動流体には水、生理食塩水又は前記使用温度で液体である他の流
体がある。フレオンのような他のクーラントは核沸騰を受け、異なる機構を介して乱流を
作り出すことができる。生理食塩水は安全なクーラントである。その理由は非毒性で、生
理食塩水が洩れても沸騰冷媒の使用で起こり得るガス塞栓を起こさないからである。
【0115】
先に論じたように、クーラントで乱流を強化することにより、該クーラントをより暖か
い温度で熱伝達エレメントに配送することができ、かつそれで必要な熱伝達速度を達成す
ることができる。特に、該内部構造の強化された熱伝達特性は、作動流体を低い流速かつ
低い圧力で熱伝達エレメントに配送することを可能にする。この特性は有利である。その
理由は、高圧は熱伝達エレメントを硬化させ、それにより該エレメントが血管壁を突くよ
うになり、そのため血液から熱伝達ユニットの部分を遮断することになるからである。こ
のような圧力は、膨張した装置に高い可撓性を与えるので、血管壁を傷つけないであろう
。該強化された熱伝達特性は、作動流体を5気圧、3気圧、2気圧又は1気圧かそれより
も低い圧力で配送することを可能にする。
【0116】
好ましい実施態様において、該熱伝達エレメントは0.05よりも大きな乱流強度を生
み出す。全心臓サイクルの間、全血流において乱流の所望の水準を得るためである。該乱
流強度は、0.055、0.06、0.07又は0.10又は0.20又はそれ以上にま
ですることができる。
【0117】
図25は、本発明の図式による描写であり、患者の脳を冷却するのに用いるものである
。図25に示されている選択的臓器低温化装置は、好ましくは水、アルコール又はハロゲ
ン化炭化水素のような冷却流体を供給する作動流体供給装置10、供給カテーテル12及
び熱伝達エレメント14を備えている。該熱伝達エレメントは参照番号14で特定されて
いるが、当業者が容易に理解するように、以下に説明する方法では、ここに記載されてい
ない熱伝達エレメントを含め、前記のすべての熱伝達エレメントを利用することができる
。作動流体供給装置10はポンプ(図示されていない。)を介して流体を供給するもので
あることが好ましい。供給カテーテル12は同軸構造を有する。供給カテーテル12中の
内部同軸ルーメンは作動流体供給装置10からクーラントを受け取る。該クーラントは供
給カテーテル12の長さと、該カテーテルの冷却先端として働く熱伝達エレメント14と
を移動する。熱伝達エレメント14の末端部において、該クーランは内部ルーメンにあり
、熱伝達エレメント14の温度を下げるため、熱伝達エレメント14の長さを移動する。
次いで、該クーランは、適切な処理又は再循環できるよう、供給カテーテル12の外部ル
ーメンに移動する。供給カテーテル12は、その末端部が、図25に示す患者の大腿部の
動脈のような、アクセス可能な動脈に経皮的に挿入できるくらい十分に小さな直径を有す
る、可撓性のカテーテルである。供給カテーテル12は、該供給カテーテル12の末端部
にある熱伝達エレメント14が、患者の血管系を通過し、内部頚動脈又は他の小さな動脈
内に配置できるような、十分に長いものである。患者にカテーテルを挿入し、かつ選択さ
れた動脈に熱伝達エレメント14を経路付ける方法は、当該技術分野では周知である。
【0118】
作動流体供給装置10を、例示的に冷却装置として示しているが、他の装置及び作動流
体を使用することができる。例えば、冷却を行うために、フレオン、パーフルオロカーボ
ン又は生理食塩水を使用することができる。
【0119】
本発明の熱伝達エレメントは血液の流れに対し、75ワットを越える熱量を吸収し又は
提供することができ、100ワット、150ワット、170ワット又はそれ以上を吸収し
、又は提供することができる。例えば、直径4mmかつ長さ約10cmの熱伝達エレメントで
、熱伝達エレメントの表面温度がほぼ5℃で、2気圧に加圧となるように冷却された通常
の生理食塩水を用いるものは、血液の流れから約100ワットのエネルギーを吸収するこ
とができる。より小さな幾何学的熱伝達エレメントを、より小さな臓器に用いるために開
発することができ、これらは60ワット、50ワット、25ワット又はこれよりも小さな
熱伝達を提供するものである。
本発明の実施を、下記の制限的でない実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0120】
(例示的な手順)
1.患者を最初に評価し、蘇生させ、かつ安定させる。
2.この手順を、X線透視装置を備えた血管造影室又は手術室で実施した。
3.カテーテルを総頚動脈に配置するという理由から、狭窄のあるアテローム性傷害の存
在を検査することは重要である。頚動脈2倍性(ドプラー/超音波)スキャンは素早く、
かつ非侵襲的にこの検査を可能にする。該カテーテルの配置を行うのに理想的な場所はこ
れを最初にスキャンできるように、左の頚動脈内である。傷害が存在する場合、次に右頚
動脈を評価することができる。このテストを行い、心収縮期性の上昇運動の傾斜及び脈動
の形状を観察することにより、基部の総頚動脈傷害の存在を検出することができる。これ
らの傷害はまれであるけれども、これらはカテーテルの配置を阻害するものである。内部
頚動脈における最高血流速度の試験で、内部頚動脈傷害の存在を検査することができる。
該カテーテルをこのような傷害の極近くに配置するが、該カテーテルは、これらの傷害に
より、該欠陥のある血流を悪化させることがある。130cm/秒より大きな最高心収縮期
速度、及び100cm/秒より大きな最大弛緩期速度は、少なくとも70%の狭窄症を示し
ている。70%以上の狭窄症は、ステントの配置を確実に行うことで内部頚動脈の直径を
大きくすることができる。
【0121】
4.また、該超音波を使い、血管の直径と血流を測定することができ、それで適当なサイ
ズをもつ熱伝達エレメントを有するカテーテルを選択することができる。
5.動脈の評価を行った後、患者の鼡径部領域を無菌的調え、かつリドカインを浸透させ
る。
6.大腿部動脈にカニューレ挿入し、誘導ワイアを所望の頚動脈まで挿入することができ
る。該誘導ワイアの配置を、X線透視法により確認する。
7.血管造撮影カテーテルを該ワイアを介して送り込み、動脈に造影剤を注入することに
より、さらに動脈の構造を評価することができる。
【0122】
8.それに代わり、該大腿部動脈にカニューレ挿入を行い、10−12.5フレンチ誘導
針鞘を配置する。
9.誘導カテーテルを所望の総頚動脈内に配置する。誘導カテーテルを配置した場合、そ
れを用い、直接造影剤を必要な位置まで送り込み、さらに頚動脈の構造を評価することが
できる。
10.10fから12f(3.3〜4.0mm)(大よそ)の冷却カテーテルを、続いて生
理食塩水で満たし、かつすべての空気の泡を除去する。先に記載した本発明の膨張性カテ
ーテルの実施態様を用いる場合、生理食塩水充填ステップを、適当な動脈内に該カテーテ
ルを配置した後で行うことができる。
11.該冷却カテーテルを、誘導カテーテル介し又は誘導ワイアにより、頚動脈内に配置
する。配置を、X線透視検査で確認する。
【0123】
12.それに代わり、該冷却カテーテルチップを成形し(ほぼ45度に折り曲げ又は曲げ
る)、かつ該冷却カテーテルのシャフトが十分な押付け特性及びトルクを付与特性を有し
、誘導ワイア又は誘導カテーテルの補助なしに該頚動脈内に配置されるようにする。
13.該冷却カテーテルは、生理食塩水で満たされ、かつ空気の泡が無いポンプ回路と連
結している。該ポンプ回路は、水浴に浸漬された熱交換部分と蠕動性ポンプと連結した配
管を有する。該水浴はほぼ0℃まで冷やされている。
【0124】
14.冷却を、ポンプ機構をスタートすることにより開始する。冷却カテーテル内の生理
食塩水は5cc/秒で循環する。該生理食塩水は冷却された水浴内の熱交換器を通り、ほぼ
1℃まで冷却される。
15.該作動流体は、続いて冷却カテーテルに入り、そこで熱伝達エレメントに送られる
。該生理食塩水は、カテーテルシャフトの内部ルーメンに沿って熱伝達エレメントの末端
部に送られるにつれ、ほぼ5−7℃に暖められる。
【0125】
16.該作動流体は、続いて冷却カテーテルに入り、そこで熱伝達エレメントに送られる
。該生理食塩水は、カテーテルシャフトの内部ルーメンに沿って熱伝達エレメントの末端
部に送られるにつれ、ほぼ5−7℃に暖められる。
17.次いで、該生理食塩水は内部金属表面に接している熱伝達エレメントを通り流れ戻
る。さらに、該生理食塩水は熱伝達エレメント内で12〜15℃に暖められ、そのプロセ
スにおいて、血液から熱を吸収し、血液を30℃〜32℃に冷やす。
18.次に、冷却された血液は脳を冷却する。脳を30〜32℃に冷却するためには15
〜30分間必要と評価される。
【0126】
19.この暖められた生理食塩水はカテーテルシャフトの外部ルーメンに戻り、かつ冷却
された水浴に戻り、ここで1℃に冷却される。
20.前記回路の長さに沿った圧力の低下は、2〜3気圧であると評価される。
21.該冷却は生理食塩水の流速の増加又は低下により調節することができる。熱伝達エ
レメントに沿った生理食塩水の温度低下を監視することにより、その流れを所望の冷却効
果が維持されるよう調節できる。
22.該カテーテルを適切な位置に置き、12〜24時間冷却し続ける。
23.所望ならば、温かい生理食塩水を循環し、治療上の冷却期間の終わりに脳の加温を
促進することができる。
【0127】
ここまでに示し、かつ詳細に説明してきた具体的な発明は、完全にその目的を達成し、
かつ記載した利点を付与することができるものであるが、理解されるように、この記載は
本発明の現存の好ましい実施態様の単なる例示であり、添付されている特許請求の範囲に
記載されているような他の発明に関し、いかなる制限を意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、時間の関数として安定状態の乱流の速度を表すグラフである。
【図2】図2Aは、時間の関数として、動脈内における血流の速度を表すグラフである。 図2Bは、時間の関数として、拍動条件のもとで安定状態の乱流の速度を表すグラフであり、動脈血流に似ている。 図2Cは、動脈内において、本発明の実施態様に従い組み立てられた、乱流誘導熱伝達エレメントの正面図である。
【図3】図3Aは、定圧勾配によって誘導された典型的な安定状態ポアズイユの流れを示す、速度プロフィールダイアグラムである。 図3Bは、心臓パルスの持続中に平均された、動脈内における血流速度を示す、速度プロフィールダイアグラムである。 図3Cは、動脈内に滑らかな熱伝達エレメントを挿入した後の、心臓パルスの持続中に平均された、動脈内における血流速度を示す、速度プロフィールダイアグラムである。
【図4】図4は、本発明の熱伝達エレメントの一実施態様の正面図である。
【図5】図5は、線5−5に沿った図4の熱伝達エレメントの縦断面図である。
【図6】図6は、線6−6に沿った図4の熱伝達エレメントの横断面図である。
【図7】図7は、血管中で使用する図4の熱伝達エレメントの透視図である。
【図8】図8は、本発明の熱伝達エレメントの他の実施態様の外部切断透視図である。
【図9】図9は、図8の熱伝達エレメントの横断面図である。
【図10】図10は、血管中で使用されている本発明の熱伝達機構のさらなる実施態様の正面図である。
【図11】図11は、線11−11に沿った図10で示された熱伝達機構の縦横断面図である。
【図12】図12は、血管中で使用されている本発明の熱伝達機構の他の実施態様の正面図である。
【図13】図13は、血管中で使用されている本発明の熱伝達機構のさらなる実施態様の正面図である。
【図14】図14は、血管中で使用されている本発明の熱伝達機構のさらなる実施態様の正面図である。
【図15】図15は、血管中で使用されている本発明のさらなる実施態様に従って構成された熱伝達機構の透視図である。
【図16】図16A及び16Bは、図15の16−16A、16B−16Bに沿った横断面図であり、図16Aは低い位置における熱伝達機構を示し、図16Bは膨張された位置における熱伝達機構を示している。
【図17】図17は、本発明の熱伝達機構のさらなる実施態様の、図16A及び図16Bに似た、横断面図である。
【図18】図18A、18B、18Cは、操作の各状態で血管中で使用する本発明の熱伝達機構のさらなる実施態様の正面図である。
【図19】図19は、本発明のさらなる実施態様の、膨張可能な乱流誘導熱伝達エレメントの側面概略図であり、同じものが血管中に配置される。
【図20】図20は、先細り状を増強する表面域及び乱流を誘導する形態を備える、本発明の他の実施態様の、膨張可能な乱流誘導熱伝達エレメントを示している。
【図21】図21は、図20の実施態様において用いることができる先細り状ジョイントを示している。
【図22】図22は、先細り状態を強化する表面域と、乱流誘導表面特性を有する、本発明のさらなる実施態様の、乱流誘導熱伝達エレメントを示す。
【図23】図23は、図22の実施態様の熱伝達エレメントにおいて用いることができる、乱流誘導表面特性の一タイプを示す。図23において、らせん状特性が示されている。
【図24】図24は、先細り状態を強化する表面領域を有する本発明のさらなる実施態様の、熱伝達エレメントを示す。
【図25】図25は、患者の脳を冷却するのに用いられる本発明の実施態様の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系において選択された血管に挿入できるカテーテル;該カテーテルの末端部に
装着された熱伝達エレメント、及び該カテーテルの末端部に装着され、かつ前記熱伝達エ
レメントに沿って混合血流が促進されるように適合されている混合促進エレメントを含む
熱伝達装置であって、前記混合促進エレメントが前記熱伝達エレメントの基部に配置され
ている、前記熱伝達装置。
【請求項2】
前記混合促進エレメントが膨張可能なマイクロバルーンを有する、請求項1記載の熱伝達
装置。
【請求項3】
前記混合促進エレメントが、膨張可能なマイクロリングバルーンを有する、請求項1記載
の熱伝達装置。
【請求項4】
前記混合促進エレメントが、前記外部表面に沿って配置された、多重軸で千鳥配置され、
かつ周辺で重複する突起を有する、請求項1記載の熱伝達装置。
【請求項5】
前記混合促進エレメントが、該熱伝達エレメントのフィードバックコントロールのために
、前記外部表面の周りを、らせん状に巻く温度センサーワイア、及び前記熱伝達エレメン
トと熱接触する温度センサーを有する、請求項1記載の熱伝達装置。
【請求項6】
前記温度センサーが熱電対及びサーミスタからなる群から選ばれる部材である、請求項5
記載の熱伝達装置。
【請求項7】
前記カテーテルが縦軸を有し、かつ前記混合促進エレメントが前記カテーテルの縦軸と同
軸の軸の周りを回転するように適合されているファンを有する、請求項1記載の熱伝達装
置。
【請求項8】
さらに前記ファンが回転するよう適合されている駆動機構を有する、請求項7記載の熱伝
達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−131094(P2011−131094A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83463(P2011−83463)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2007−116412(P2007−116412)の分割
【原出願日】平成11年6月15日(1999.6.15)
【出願人】(500574595)インナークール セラピーズ インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】