説明

選択的COX−2阻害剤としての2−フェニルピラン−4−オン誘導体

本発明は、一般式(I)の2−フェニルピラン−4−オン誘導体、それらの作成方法、それらを含有する医薬組成物、およびそれらの医学的使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、治療的に有用な新しい2−フェニルピラン−4−オン誘導体に、それらの作成方法に、それらを含有する医薬組成物に、および医薬品としてのそれらの使用に関する。
【0002】
酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)の非選択的阻害が、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)により媒介される、炎症に関連するプロスタグランジンの過剰生産を防止するが、同時に、シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)により大きく媒介される特定の組織の健康に必要なプロスタグランジンの基底量を組織から奪い取ることが知られている。非ステロイド性抗炎症薬物は、COXの非選択的阻害剤であって、その理由のために、減少した腎血流、減少した血小板機能、消化不良および胃潰瘍形成の副作用を有する。
【0003】
我々は、特定の2−フェニルピラン−4−オン誘導体がCOX−1に優先して選択的にCOX−2を阻害しそしてCOX−2媒介性疾患ならびに、炎症、疼痛、発熱、および喘息のような、それらの症状を、さらに少ない副作用をもって、処置するのに有用であることを今や見出してきている。
【0004】
したがって、本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
はアルキル基を表し;
は、アルキル、C−Cシクロアルキル、ピリジル、チエニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルもしくはインダニルの基、または未置換であるか、またはハロゲン原子またはアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチルチオ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルもしくはヒドロキシカルボニルの基により一つもしくはそれ以上置換され得るフェニル基を表し;
同一であるかもしくは異なり得る、RおよびRは、水素原子、または未置換であるかまたは一つもしくはそれ以上のハロゲン原子により置換され得るアルキル、アルケニルまたはアルキニルの基を表し;そして
Xは、単結合、酸素原子もしくはメチレン基、さらに好ましくは酸素原子を表す]
の2−フェニルピラン−4−オン化合物もしくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0005】
式(I)の化合物は、式中で星印()により示される、スルフィニル基の硫黄原子においてキラル中心を有して、その結果として、もし化合物の中に他のキラル中心がなければ、二つの異なる鏡像異性体の形で、もしくはもし化合物の中に他のキラル中心があれば、種々のジアステレオマーの形で存在する。すべてのこれらの立体異性体化合物およびそれらの混合物は、本発明の中に包含される。本明細書中で使用される式は、全ての可能な立体異性体もしくはそれらの任意の混合物を表すことを意図する。
好ましい実施態様では、本発明は、Rが未置換のアルキル基、さらに好ましくはメチル基を表す、式(I)の化合物を提供する。
【0006】
もう一つの実施態様では、本発明は、Xが単結合もしくは酸素原子、さらに好ましくは酸素原子、を表す、式(I)の化合物を提供する。
さらにもう一つの実施態様では、本発明は、Rが水素原子もしくは未置換のC1〜3アルキル基、好ましくは水素原子、を表す、式(I)の化合物を提供する。
【0007】
なおもう一つの実施態様では、本発明は、Rが、枝分れアルキル、C3〜7シクロアルキル、ナフチル、テトラヒドロナフチルもしくはインダニルの基、未置換のフェニル基または一つもしくはそれ以上のハロゲン原子、アルキル基および/またはアルコキシ基により置換されるフェニル基;さらに好ましくは未置換のフェニル基またはハロゲン原子、メトキシ基もしくはメチル基から独立して選択される1、2または3個の置換基により置換されるフェニル基;なおさらに好ましくはハロゲン原子およびメチル基から独立して選択される1もしくは2個の置換基により置換されるフェニル基を表す、式(I)の化合物を提供する。
【0008】
最も好ましくは、Rは、式:
【化2】

(式中、RならびにRが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および/もしくはアルコキシ基からなる群より選択される、さらに好ましくはハロゲン原子である)の任意に置換されるフェニル基を表し、そしてなおさらに好ましくはRは、2,4−ジフルオロフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニルもしくは4−ブロモ−2−フルオロフェニルの基である。
【0009】
別に指示が無い限り、本明細書中で使用される際には、アルキルという用語は、1〜20個の炭素原子もしくは、好ましくは1〜12個の炭素原子、を有する任意に置換される、直鎖のまたは枝分かれの基を包含する。さらに好ましくは、アルキル基は、1〜8個の、好ましくは1〜6個の、そしてさらに好ましくは1〜4個の、炭素原子を有する“低級アルキル”基である。
【0010】
例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、イソペンチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシルもしくは1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、イソヘキシルの基が含まれる。
【0011】
当該任意に置換されるアルキル基は、典型的には未置換であるか、または同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基から好ましく選択される。典型的には、アルキル基上の置換基は、それら自身未置換である。
【0012】
アルキル基が任意に置換され得ることが言及されるときには、それは、未置換であるかまたは一つもしくはそれ以上の置換基により、例えば1、2または3個の置換基により、任意の位置において置換され得る、上で定義されたような直鎖のまたは枝分かれのアルキル基を含むことを意味する。二つもしくはそれ以上の置換基が存在するときには、当該置換基は同一であるかもしくは異なり得る。
【0013】
本明細書中で使用される際には、アルケニルという用語は、2〜20個の炭素原子もしくは、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する、直鎖のまたは枝分かれの、モノまたはポリ不飽和の基を包含する。さらに好ましくは、アルケニル基は、2〜8個の、好ましくは2〜6個の、そしてさらに好ましくは2〜4個の、炭素原子を有する“低級アルケニル”基である。特に、アルケニル基はモノもしくはジ不飽和であることが望ましい。
例には、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニルおよび4−ペンテニルの基が含まれる。
【0014】
アルケニル基が任意に置換され得ることが言及されるときには、それは、未置換であるかまたは一つもしくはそれ以上の特記された置換基により、例えば1、2または3個の置換基により、任意の位置において置換され得る、上で定義されたような直鎖のまたは枝分かれのアルケニル基を含むことを意味する。二つもしくはそれ以上の置換基が存在するときには、当該置換基は同一であるかもしくは異なり得る。
【0015】
当該任意に置換されるアルケニル基は、典型的には未置換であるかまたは同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、から選択される。
【0016】
本明細書中で使用される際には、アルキニルという用語は、2〜20個の炭素原子もしくは、好ましくは2〜12個の炭素原子、を有する、直鎖のまたは枝分かれの、モノまたはポリ不飽和の基を包含する。さらに好ましくは、アルキニル基は、2〜8個の、好ましくは2〜6個の、そしてさらに好ましくは2〜4個の、炭素原子を有する“低級アルキニル”基である。特に、アルキニル基はモノもしくはジ不飽和であることが望ましい。
例には、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニルおよび3−ブチニルの基が含まれる。
【0017】
アルキニル基が任意に置換され得ることが言及されるときには、それは、未置換であるかまたは一つもしくはそれ以上の特記された置換基により、例えば1、2または3個の置換基により、任意の位置において置換され得る、上で定義されたような直鎖のまたは枝分かれのアルキニル基を含むことを意味する。二つもしくはそれ以上の置換基が存在するときには、当該置換基は同一であるかもしくは異なり得る。
【0018】
当該任意に置換されるアルキニル基は、典型的には未置換であるかまたは同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、から選択される。
【0019】
本明細書中で使用される際には、アルコキシ(もしくはアルキルオキシ)という用語は、それぞれが1〜10個の炭素原子のアルキル部分を有する、任意に置換される、直鎖のまたは枝分かれのオキシを含有する基を包含する。さらに好ましいアルコキシ基は、1〜8個の、好ましくは1〜6個の、そしてさらに好ましくは1〜4個の、炭素原子を有する“低級アルコキシ”基である。
【0020】
アルコキシ基は、典型的には未置換であるかまたは同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基から好ましく選択される。
【0021】
好ましいアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、ヒドロキシメトキシ、2−ヒドロキシエトキシもしくは2−ヒドロキシプロポキシが含まれる。
【0022】
本明細書中で使用される際には、モノアルキルアミノという用語は、二価のNH基に結合した1〜10個の炭素原子の任意に置換されている直鎖のもしくは枝分かれのアルキル基を含有する基を包含する。さらに好ましいモノアルキルアミノ基は、1〜8個の、好ましくは1〜6個の、そしてさらに好ましくは1〜4個の、炭素原子を有する“低級モノアルキルアミノ”基である。
【0023】
モノアルキルアミノ基は、未置換であるかまたは同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換されるアルキル基を典型的に含有する。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基から好ましく選択される。
【0024】
好ましい任意に置換されるモノアルキルアミノ基には、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、i−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、sec−ブチルアミノ、t−ブチルアミノ、トリフルオロメチルアミノ、ジフルオロメチルアミノ、ヒドロキシメチルアミノ、2−ヒドロキシエチルアミノもしくは2−ヒドロキシプロピルアミノが含まれる。
【0025】
本明細書中で使用される際には、ジアルキルアミノという用語は、それに結合している1〜10個の炭素原子の二つの任意に置換されている直鎖のもしくは枝分かれのアルキル基を持つ三価の窒素原子を含有する基を包含する。さらに好ましいジアルキルアミノ基は、それぞれのアルキル基の中に1〜8個の、好ましくは1〜6個の、そしてさらに好ましくは1〜4個の、炭素原子を有する“低級ジアルキルアミノ”基である。
【0026】
ジアルキルアミノ基は、そのそれぞれが未置換であるか、または同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される二つのアルキル基を典型的に含有する。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基から好ましく選択される。
【0027】
好ましい任意に置換されるジアルキルアミノ基には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチル(エチル)アミノ、ジ(n−プロピル)アミノ、n−プロピル(メチル)アミノ、n−プロピル(エチル)アミノ、ジ(i−プロピル)アミノ、i−プロピル(メチル)アミノ、i−プロピル(エチル)アミノ、ジ(n−ブチル)アミノ、n−ブチル(メチル)アミノ、n−ブチル(エチル)アミノ、n−ブチル(i−プロピル)アミノ、ジ(sec−ブチル)アミノ、sec−ブチル(メチル)アミノ、sec−ブチル(エチル)アミノ、sec−ブチル(n−プロピル)アミノ、sec−ブチル(i−プロピル)アミノ、ジ(t−ブチル)アミノ、t−ブチル(メチル)アミノ、t−ブチル(エチル)アミノ、t−ブチル(n−プロピル)アミノ、t−ブチル(i−プロピル)アミノ、トリフルオロメチル(メチル)アミノ、トリフルオロメチル(エチル)アミノ、トリフルオロメチル(n−プロピル)アミノ、トリフルオロメチル(i−プロピル)アミノ、トリフルオロメチル(n−ブチル)アミノ、トリフルオロメチル(sec−ブチル)アミノ、ジフルオロメチル(メチル)アミノ、ジフルオロメチル(エチル)アミノ、ジフルオロメチル(n−プロピル)アミノ、ジフルオロメチル(i−プロピル)アミノ、ジフルオロメチル(n−ブチル)アミノ、ジフルオロメチル(sec−ブチル)アミノ、ジフルオロメチル(t−ブチル)アミノ、ジフルオロメチル(トリフルオロメチル)アミノ、ヒドロキシメチル(メチル)アミノ、エチル(ヒドロキシメチル)アミノ、ヒドロキシメチル(n−プロピル)アミノ、ヒドロキシメチル(i−プロピル)アミノ、n−ブチル(ヒドロキシメチル)アミノ、sec−ブチル(ヒドロキシメチル)アミノ、t−ブチル(ヒドロキシメチル)アミノ、ジフルオロメチル(ヒドロキシメチル)アミノ、ヒドロキシメチル(トリフルオロメチル)アミノ、ヒドロキシエチル(メチル)アミノ、エチル(ヒドロキシエチル)アミノ、ヒドロキシエチル(n−プロピル)アミノ、ヒドロキシエチル(i−プロピル)アミノ、n−ブチル(ヒドロキシエチル)アミノ、sec−ブチル(ヒドロキシエチル)アミノ、t−ブチル(ヒドロキシエチル)アミノ、ジフルオロメチル(ヒドロキシエチル)アミノ、ヒドロキシエチル(トリフルオロメチル)アミノ、ヒドロキシプロピル(メチル)アミノ、エチル(ヒドロキシプロピル)アミノ、ヒドロキシプロピル(n−プロピル)アミノ、ヒドロキシプロピル(i−プロピル)アミノ、n−ブチル(ヒドロキシプロピル)アミノ、sec−ブチル(ヒドロキシプロピル)アミノ、t−ブチル(ヒドロキシプロピル)アミノ、ジフルオロメチル(ヒドロキシプロピル)アミノ、ヒドロキシプロピル(トリフルオロメチル)アミノが含まれる。
【0028】
本明細書中で使用される際には、ヒドロキシアルキルという用語は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、直鎖のもしくは枝分かれのアルキル基を包含して、そのいずれか一つは一つもしくはそれ以上のヒドロキシル基で置換され得る。
そのような基の例には、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびヒドロキシヘキシルが含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される際には、シクロアルキルという用語は、飽和の炭素環を包含し、そして別に指示が無い限り、シクロアルキル基は、典型的に3〜7個の炭素原子を有する。
【0030】
シクロアルキル基は、典型的に未置換であるかまたは同一であるかもしくは異なり得る、1、2または3個の置換基で置換される。置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシ基および1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基から好ましく選択される。シクロアルキル基が二つもしくはそれ以上の置換基を保持するときには、置換基は同一であるかもしくは異なり得る。
【0031】
例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルが含まれる。それは好ましくは、シクロプロピル、シクロペンチルもしくはシクロヘキシルである。シクロアルキル基が二つもしくはそれ以上の置換基を保持するときには、置換基は同一であるかもしくは異なり得る。
【0032】
本明細書中で使用される際には、ハロゲン原子という用語は、塩素、フッ素、臭素もしくはヨウ素の原子、典型的にはフッ素、塩素もしくは臭素の原子、最も好ましくは塩素もしくはフッ素を包含する。ハロという用語は、接頭語として使用されるときには、同一の意味を有する。
【0033】
本明細書中で使用される際には、薬学的に許容される塩という用語は、薬学的に許容される酸もしくは塩基との塩を包含する。薬学的に許容される酸には、無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸および硝酸)ならびに有機酸(例えばクエン酸、フマール酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸もしくはp−トルエンスルホン酸)の両方が含まれる。薬学的に許容される塩基には、アルカリ金属(例えばナトリウムもしくはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えばカルシウムもしくはマグネシウム)の水酸化物ならびに有機塩基、例えばアルキルアミン、アリールアルキルアミンおよび複素環のアミンが含まれる。
【0034】
ハロゲン原子またはアルキル、トリフルオロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチルチオ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシカルボニルの基により一つもしくはそれ以上置換されるフェニル基においては、フェニル環は、1、2、3、4もしくは5個の置換基、好ましくは1、2もしくは3個の置換基で置換され得るが、それぞれは、上で説明した可能な置換基から独立して選択される。即ち、フェニル基(1位にてXもしくはピラン−4−オン環に結合している)は、残りの位置、即ち、2位、3位、4位、5位もしくは6位のいずれかにおいて置換され得る。二つ以上の置換基を有するフェニル基は、位置の任意の組み合わせにおいて置換され得る。例えば、二つの置換基を持つフェニル基は、2位および3位、2位および4位、2位および5位、2位および6位、3位および4位、もしくは3位および5位において置換され得る。
【0035】
本発明の2−フェニルピラン−4−オン誘導体の具体的な例には:
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−エチル−5−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−フルオロ−2−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−クロロ−4−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−ブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(3−ブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−ブロモ−2−クロロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2,4−ジブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(エチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
6−メチル−3−(2−メチルフェノキシ)−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
6−メチル−3−(3−メチルフェノキシ)−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−フルオロ−4−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
の全ての可能な鏡像異性体の形およびそれらの混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0036】
顕著な興味があるのは式:
【化3】

【0037】
【表1】

の化合物の全ての可能な鏡像異性体の形およびそれらの混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩である。
【0038】
本発明はまた、式(II):
【化4】

(式中、R、R、R、RおよびXは上で定義したようである)のメルカプト誘導体を酸化剤と、化合物のラセミ混合物を得ることが望まれるときには、好ましくはメタ過ヨウ素酸ナトリウムと、またはスルフィニルのキラル中心において特異的立体配置を有する化合物で富化されている式(I)の化合物の混合物を得ることが望まれるときには、チタニウム テトライソプロポキシド、t−ブチル ヒドロペルオキシドおよび酒石酸ジエチルの(R,R)のもしくは(S,S)の型のどちらかの混合物を用いて反応させることにより式(I)
【化5】

(式中、R、R、R、RおよびXは上で定義したようである)の化合物を作成する方法を提供する。
【0039】
式(II)のメルカプト誘導体および酸化剤との間の反応は、有機溶媒、好ましくは塩素化溶媒もしくは塩素化溶媒およびC−Cアルコールの混合物、の中で−25℃〜40℃の温度で好ましく行われる。塩素化溶媒は、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルムおよびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。C−Cアルコールは、メタノールおよびエタノールから好ましく選択される。好ましい溶媒系は、1,2−ジクロロエタンまたは塩化メチレンのメタノールもしくはエタノールとの混合物である。
式(II)のメルカプト誘導体は公知であって、WO 01/68633 A1の教えに従い作成され得る。
【0040】
塩基性の基が存在する式(I)の2−フェニルピラン−4−オン誘導体は、それ自身で公知の方法により薬学的に許容される塩、好ましくはフマール酸、酒石酸、コハク酸もしくは塩酸のような有機のまたは無機の酸との処理により酸付加塩に変換され得る。
【0041】
以下の生物学的試験およびデータは本発明をさらに例示する。
ヒト全血中のCOX−1およびCOX−2の活性
血液の採取の前の少なくとも7日間はいかなる非ステロイド性抗炎症薬物も摂取していなかった健康なボランティアからの新鮮な血液をヘパリン化チューブ(1ml当り20単位のヘパリン)の中に収集した。COX−1活性の測定のためには、500μlアリコートの血液を5μlのビークル(ジメチルスルホキシド)もしくは5μlの試験化合物のいずれかと共に24時間37℃でインキュベートした。カルシウムイオノホアのA23187(25μM)を、インキュベーションを停止する20分前に加えた。血漿を遠心分離(13000rpmで10分)により分離して、TXBレベルをエンザイムイムノアッセイキット(EIA)を用いて測定するまで、−30℃に保った。
【0042】
5〜6種の異なる濃度においてそれぞれの化合物をインキュベートすることにより、3回の測定で、化合物の効力を評価した。IBMコンピューターでInPlot, GraphPadソフトウェアを用いた非線形回帰により、IC50値を得た。
【0043】
COX−2活性の測定のためには、500μlアリコートの血液を、COX−2の発現を誘発するために、LPS(10μg/ml)の存在下で24時間37℃でインキュベートした(Patriagnani et al., J. Pharm. Exper. Ther. 271; 1705-1712 (1994))。血漿を遠心分離(13000rpmで10分)により分離して、PGEレベルをエンザイムイムノアッセイキット(EIA)を用いて測定するまで、−30℃に保った。5〜6種の異なる濃度においてそれぞれの化合物(5μlアリコート)をLPSの存在下で24時間インキュベートすることにより、2回の測定で、阻害剤の効力を調べた。IBMコンピューターでInPlot, GraphPadソフトウェアを用いた非線形回帰により、IC50値を得た。
【0044】
生物学的アッセイから得られた結果を表1に示す。
【表2】

【0045】
表1に示すように、式(I)の2−フェニルピラン−4−オン誘導体は強力でかつ選択的なCOX−2阻害剤である。かくして、本発明の化合物は、好ましくは哺乳動物のCOX−2、例えばヒトのCOX−2、の選択的な阻害剤である。
【0046】
本発明の化合物はまた好ましくは、哺乳動物のCOX−1、例えばヒトのCOX−1、に対して低度の阻害活性を有する。阻害活性は、例えば上述のように、インビトロ・アッセイにより典型的に測定され得る。本発明の化合物の幾つかはまた、予想外の薬物動態プロフィールを示した。
【0047】
本発明の好ましい化合物は、COX−2について50μM未満、好ましくは10μM未満、さらに好ましくは5μM未満、なおさらに好ましくは2.5μM未満のIC50値を有する。本発明の好ましい化合物はまた、COX−1について10μMより大きい、好ましくは20μMより大きい、IC50値を有する。COX−1に対するCOX−2の阻害についての選択性の指標として、COX−1/COX−2のIC50値の比は、好ましくは10より大きく、さらに好ましくは20より大きく、なおさらに好ましくは50より大きい。
【0048】
本発明はさらに、ヒトもしくは動物の身体の治療による処置の、特に疼痛、発熱または炎症の処置のための、プロスタノイド誘発性平滑筋収縮を阻害するためのまたは結腸直腸癌もしくは神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)の予防または処置のための方法における使用のための式(I)の化合物を提供する。
【0049】
本発明はさらに、疼痛、発熱もしくは炎症の処置のための、プロスタノイド誘発性平滑筋収縮を阻害するためのまたは結腸直腸癌の予防もしくは処置のための医薬品の製造における式(I)の化合物の使用を提供する。
【0050】
式(I)の化合物は、リウマチ熱、インフルエンザもしくはその他のウイルス感染に関連する症状、感冒、腰痛および頚部痛、月経困難症、頭痛、歯痛、捻挫および挫傷、筋炎、神経痛、滑膜炎、滑液包炎、腱炎、手術および歯科手技後の傷害、ならびに関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデスおよび若年性関節炎を含む関節炎を含む種々の症状の疼痛、発熱ならびに炎症の緩和に有用である。それらは、乾癬、湿疹、火傷および皮膚炎のような皮膚炎症性障害の処置にまた使用され得る。加えて、そのような化合物は、結腸直腸癌もしくは神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)の予防または処置に使用され得る。
【0051】
式(I)の化合物はまた、プロスタノイド誘発性平滑筋収縮を阻害するであろうし、それ故に月経困難症、早産、喘息および気管支炎の処置に使用され得る。
【0052】
式(I)の化合物は、消化性潰瘍、胃炎、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、クローン病、炎症性腸症候群および過敏性腸症候群、胃腸出血および凝固障害を含む胃腸障害、腎疾患(例えば腎機能障害)を持つ患者、手術前もしくは抗凝固剤を使用中の者、ならびに非ステロイド性抗炎症薬物誘発性喘息に感受性の者の処置のような、特にそのような非ステロイド性抗炎症薬物が禁忌とされ得る場合に、従来の非ステロイド性抗炎症薬物に対する代替品として使用されることができる。
【0053】
化合物は、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、I型糖尿病、重症筋無力症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、過敏症、結膜炎、歯肉炎および心筋虚血のような疾患における炎症を処置するのにさらに使用されることができる。
本発明の化合物はシクロオキシゲナーゼ−2酵素の阻害剤であって、それにより上で列挙されたシクロオキシゲナーゼ−2媒介性疾患を処置するのに有用である。
【0054】
したがって、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩、ならびにそのような化合物および/もしくはそれらの塩を含む医薬組成物は、ヒトの身体の障害の処置の方法に使用され得て、それはそのような処置を必要とする患者にそのような化合物もしくはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む。
【0055】
本発明はまた、担体もしくは希釈剤のような薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて少なくとも一つの式(I)の2−フェニルピラン−4−オン誘導体またははその薬学的に許容される塩を、活性成分として含む医薬組成物を提供する。活性成分は、製剤の性質および適用前にさらなる希釈がされるかどうかに依存して、組成物の重量に対して0.001重量%〜99重量%、好ましくは0.01重量%〜90重量%を含み得る。
好ましくは、組成物は、経口の、局所的の、鼻腔内の、吸入の、直腸内の、経皮のもしくは注射の投与に適する形に作り上げられる。
【0056】
活性化合物もしくはそのような化合物の塩と混合して、本発明の組成物を形成する薬学的に許容される賦形剤は、それ自体で周知であって、使用される実際の賦形剤は、意図する組成物を投与する方法にとりわけ依存する。
【0057】
本発明の組成物は、注射のおよび経口の投与に好ましく適合させる。この場合には、経口の投与のための組成物は、錠剤、遅延錠剤、舌下錠剤、カプセル剤または混合液、エリキシル剤、シロップ剤もしくは懸濁剤のような、液体製剤の形をとり得るが、全てが本発明の化合物を含有する;そのような製剤は当分野で周知の方法により作成される。
【0058】
組成物の調製に使用され得る希釈剤には、望まれれば、着色剤もしくは矯味剤と一緒に、活性成分と混和可能な液体のおよび固体の希釈剤が含まれる。錠剤またはカプセル剤は、2〜500mgの活性成分もしくは当量のその塩を便宜的に含有し得る。
【0059】
経口の使用に適合させた液体組成物は、溶液剤もしくは懸濁剤の形であり得る。溶液剤は、例えば、シロップ剤を形成するためのショ糖と組み合わせた活性化合物の可溶性塩もしくは他の誘導体の水溶液であり得る。懸濁剤は、懸濁化剤もしくは矯味剤と一緒に、水と組み合わせた本発明の不溶性活性化合物またはその薬学的に許容される塩を含み得る。
【0060】
非経口の注射用の組成物は、凍結乾燥され得るかもしくはされ得ない、かつパイロジェンフリーの水性媒体もしくは他の適切な非経口の注射液体の中に溶解され得る可溶性の塩から調製され得る。
有効な用量は、通常は一日当り10〜600mgの活性成分の範囲にある。一日投与量は、一日当り、一つもしくはそれ以上の処置、好ましくは1〜4回の処置に投与され得る。
本発明は、本発明の範囲を決して限定しない、以下の作成および実施例により例示される。
【実施例】
【0061】
<作成1>
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルチオ)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化6】

a) 塩化メチレン(13ml)中の2,4−ジフルオロフェノール(1.04g、8mmol)および2−ブロモ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]エタノン(1.96g、8mmol)の溶液に、水(5ml)中の炭酸カリウム(1.66g)および硫酸水素テトラブチルアンモニウム(0.14g)の溶液を加えた。混合物を室温で16時間攪拌した。水(100ml)を加え、有機相をデカントして、塩基性相を塩化メチレン(2×100ml)で抽出した。有機溶液を乾燥(NaSO)して、溶媒を減圧下に除去した。生成した固体をエチルエーテルで洗浄した。2−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−[4−(メチルチオ)フェニル]エタノンが灰白色の固体として得られた(1.69g、72%)。
【0062】
b) 上の化合物(1.68g、5.7mmol)を、95〜100℃で予め加熱した、無水酢酸(8.5ml)中のポリリン酸(19g)の溶液に加えた。混合物を同一の温度で5時間加熱した。冷却後、反応物を氷−水の中に注ぎ、酢酸エチル(3×100ml)で抽出し、有機溶液を飽和重炭酸ナトリウム(2×100ml)、水および食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)して、溶媒を減圧下に除去した。残留油状物を、シリカのカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル/n−ヘキサン(1/1)を溶出液として用いて精製した。3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルチオ)フェニル]−4H−ピラン−4−オン(0.37g、17%)が灰白色の固体として得られた。
δ (DMSO): 2.41 (s, 3H), 2.50 (s, 3H), 6.40 (s, 1H), 6.94 (m, 2H), 7.39 (m, 3H), 7.76 (d, J=8.4 Hz, 2H)。
【0063】
<作成2>
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルチオ)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化7】

作成1で記述された手順により、2−ブロモ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−エタノンおよび4−クロロ−2−フルオロフェノールから灰白色の固体(16%通算)として得られた。
δ (DMSO): 2.42 (s, 3H), 2.50 (s, 3H), 6.30 (s, 1H), 6.73 (dd, JHH=JHF=9.0 Hz, 1H), 6.94 (m, 1H), 7.14 (dd, J=10.5, 2.4 Hz, 1H), 7.27 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.82 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0064】
<作成3>
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルチオ)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化8】

作成1で記述された手順により、2−ブロモ−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−エタノンおよび4−ブロモ−2−フルオロフェノールから灰白色の固体(17%通算)として得られた。
δ (DMSO): 2.42 (s, 3H), 2.50 (s, 3H), 6.31 (s, 1H), 6.68 (dd, JHH=JHF=8.7 Hz, 1H), 7.07 (m, 1H), 7.26-7.30 (m, 3H), 7.82 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0065】
<実施例1>
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化9】

メタノール(17ml)中の作成1の表題化合物(1.36g、3.8mmol)の溶液に、水(10ml)中のメタ過ヨウ素酸ナトリウム(0.80g)の溶液を0℃で滴下して、この混合物をこの温度で2時間および室温で3日間攪拌した。次いで、反応物を水に注ぎ、酢酸エチル(3×100ml)で抽出し、有機溶液を乾燥(NaSO)して、溶媒を減圧下に除去した。残渣を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン/酢酸エチル/メタノール/酢酸(78/17/3/2)を溶出液として用いて精製した。3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン(1.09g、77%)が灰白色の固体として得られた。
融点:158〜159℃
δ (DMSO): 2.44 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 6.67-6.92 (m, 3H), 7.74 (d, J=6.8 Hz, 2H), 8.08 (d, J=6.8 Hz, 2H)。
【0066】
<実施例2>
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体1a
−20℃に冷却した乾燥1,2−ジクロロエタン(25ml)中のチタニウム テトライソプロポキシド(1.05ml、3.5mmol)および(R,R)−酒石酸ジエチル(2.45ml、14.2mmol)の攪拌溶液に、ノナン中のt−ブチル ヒドロペルオキシド5.5M(1.29ml、7.1mmol)および作成1の表題化合物(1.26g、3.5mmol)を順次加えた。混合物を−20℃で5時間攪拌し、次いで、亜硫酸ナトリウムの5%水溶液(50ml)および食塩水で洗浄した。有機層を乾燥(NaSO)して、溶媒を減圧下に除去した。残渣を、フラッシュクロマトグラフィーにより、酢酸エチル/メタノール(95/5)を溶出液として用いて精製した。3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン(0.18g、17%、100%ee)が灰白色の固体として得られた。
[α]D22 = +82.3 (c 0.25, MeOH)
融点:158〜159℃
δ (DMSO): 2.44 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 6.67-6.92 (m, 3H), 7.74 (d, J=6.8 Hz, 2H), 8.08 (d, J=6.8 Hz, 2H)。
【0067】
<実施例3>
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体1b
実施例2で記述された手順により、作成1の表題化合物および(S,S)−酒石酸ジエチルから灰白色の固体として得られた(57%、88.4%ee)。
[α]D22 = -71.5 (c 0.25, MeOH)
融点:158〜159℃
δ (DMSO): 2.44 (s, 3H), 2.76 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 6.67-6.92 (m, 3H), 7.74 (d, J=6.8 Hz, 2H), 8.08 (d, J=6.8 Hz, 2H)。
【0068】
<実施例4>
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化10】

実施例1で記述された手順により、作成2の表題化合物およびメタ過ヨウ素酸ナトリウムから灰白色の固体として得られた(55%)。
融点:186〜188℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.03-7.15 (m, 2H), 7.56 (dd, J=10.8, 2.4 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.6 Hz, 2H), 7.99 (d, J=8.6 Hz, 2H)。
【0069】
<実施例5>
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体4a
実施例2で記述された手順により、作成2の表題化合物および(R,R)−酒石酸ジエチルから灰白色の固体として得られた(48%、100%ee)。
[α]D22 = +77.7 (c 0.25, MeOH)
融点:186〜188℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.03-7.15 (m, 2H), 7.56 (dd, J=10.8, 2.4 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.6 Hz, 2H), 7.99 (d, J=8.6 Hz, 2H)。
【0070】
<実施例6>
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体4b
実施例2で記述された手順により、作成2の表題化合物および(S,S)−酒石酸ジエチルから灰白色の固体として得られた(49%、98.4%ee)。
[α]D22 = -77.0 (c 0.25, MeOH)
融点:186〜188℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.03-7.15 (m, 2H), 7.56 (dd, J=10.8, 2.4 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.6 Hz, 2H), 7.99 (d, J=8.6 Hz, 2H)
【0071】
<実施例7>
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
【化11】

実施例1で記述された手順により、作成3の表題化合物およびメタ過ヨウ素酸ナトリウムから灰白色の固体として得られた(43%)。
融点:201℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.01 (dd, JHH=JHF=9.0 Hz, 1H), 7.24 (m, 1H), 7.66 (dd, J=10.8, 2.1 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.98 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0072】
<実施例8>
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体7a
実施例2で記述された手順により、作成3の表題化合物および(R,R)−酒石酸ジエチルから灰白色の固体として得られた(48%、98.8%ee)。
[α]D22 = +68.0 (c 0.25, MeOH)
融点:201℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.01 (dd, JHH=JHF=9.0 Hz, 1H), 7.24 (m, 1H), 7.66 (dd, J=10.8, 2.1 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.98 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0073】
<実施例9>
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン―鏡像異性体7b
実施例2で記述された手順により、作成3の表題化合物および(S,S)−酒石酸ジエチルから灰白色の固体として得られた(53%、98.2%ee)。
[α]D22 = -71.3 (c 0.25, MeOH)
融点:201℃
δ (DMSO): 2.43 (s, 3H), 2.78 (s, 3H), 6.47 (s, 1H), 7.01 (dd, JHH=JHF=9.0 Hz, 1H), 7.24 (m, 1H), 7.66 (dd, J=10.8, 2.1 Hz, 1H), 7.84 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.98 (d, J=8.7 Hz, 2H)。
【0074】
<実施例10>
カプセル剤
それぞれが3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン(活性成分)100mgを含有する25,000個のカプセル剤が、以下の処方にしたがって調製された:
活性成分 2.5 Kg
乳糖一水和物 5 Kg
コロイド二酸化ケイ素 0.05 Kg
トウモロコシでん粉 0.5 Kg
ステアリン酸マグネシウム 0.1 Kg
手順
上の成分を60メッシュの篩を通して篩い分けて、適当な混合機にかけて、25,000個のゼラチンカプセルの中に充填した。
【0075】
<実施例11>
錠剤
それぞれが3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン(活性成分)50mgを含有する100,000個の錠剤が、以下の処方から調製された:
活性成分 5 Kg
噴霧乾燥乳糖 19.9 Kg
微結晶性セルロース 3.9 Kg
ステアリルフマール酸ナトリウム 0.2 Kg
コロイド二酸化ケイ素 0.2 Kg
カルボキシメチルでん粉 0.8 Kg
手順
全ての粉末を0.6mmの開口部を持つ篩を通して通過させ、次いで、適当な混合機の中で20分間混合して、9mmのうす(disc)および平坦な斜面のきね(punch)を用いて300mgの錠剤に打錠した。錠剤の崩壊時間は約3分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
・Rはアルキル基を表し;
・Rはアルキル、C−Cシクロアルキル、ピリジル、チエニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルもしくはインダニルの基、または未置換であるか、またはハロゲン原子またはアルキル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、メチルチオ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルもしくはヒドロキシカルボニルの基により一つもしくはそれ以上置換され得るフェニル基を表し;
・同一であるかもしくは異なり得る、RおよびRは水素原子、または未置換であるかまたは一つもしくはそれ以上のハロゲン原子により置換され得るアルキル、アルケニルまたはアルキニルの基を表し;そして
・Xは、単結合、酸素原子もしくはメチレン基を表す]
の化合物、その鏡像異性体、それらの混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が未置換のアルキル基を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がメチル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Xが酸素原子を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが水素原子もしくは未置換のC1〜3アルキル基を表す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
およびRが水素原子を表す、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が枝分れアルキル、C−Cシクロアルキル、ナフチル、テトラヒドロナフチルもしくはインダニルの基、未置換のフェニル基、またはハロゲン原子、アルキル基および/またはアルコキシ基により一つもしくはそれ以上置換されるフェニル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
が未置換のフェニル基またはハロゲン原子、メトキシ基もしくはメチル基から独立して選択される1、2または3個の置換基により置換されるフェニル基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がハロゲン原子およびメチル基から独立して選択される1もしくは2個の置換基により置換されるフェニル基を表す、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が式
【化2】

(式中、RおよびRが水素原子、ハロゲン原子、アルキル基および/もしくはアルコキシ基からなる群より選択される)の任意に置換されるフェニル基を表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
およびRがハロゲン原子から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が2,4−ジフルオロフェニル、4−クロロ−2−フルオロフェニルもしくは4−ブロモ−2−フルオロフェニルの基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−エチル−5−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−フルオロ−2−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−クロロ−4−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−ブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(3−ブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(4−ブロモ−2−クロロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2,4−ジブロモフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(エチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
6−メチル−3−(2−メチルフェノキシ)−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
6−メチル−3−(3−メチルフェノキシ)−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
3−(2−フルオロ−4−メチルフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン;
それらの鏡像異性体、それらの混合物およびそれらの薬学的に許容される塩である、
請求項1、2ならびに4〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
スルフィニル基の硫黄原子が(S)立体配置を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
スルフィニル基の硫黄原子が(R)立体配置を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
3−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−クロロ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
3−(4−ブロモ−2−フルオロフェノキシ)−6−メチル−2−[4−(メチルスルフィニル)フェニル]−4H−ピラン−4−オン
の1b、4bおよび7bと命名される鏡像異性体の形、それらの混合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩である、請求項1、2ならびに4〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
方法が:
(a)式(II):
【化3】

(式中、R、R、R、RおよびXは請求項1で定義したようである)のメルカプト誘導体を、酸化剤と反応させることを含む、請求項1〜15のいずれか1項に定義したような式(I)の化合物を製造する方法。
【請求項18】
酸化剤が:
(a)ラセミのスルフィニル混合物を得ようとするときにはメタ過ヨウ素酸ナトリウム;または、
(b)鏡像異性的に富化した式(I)の化合物を得ることが望まれるときにはチタニウム テトライソプロポキシド、t−ブチル ヒドロペルオキシドおよび酒石酸ジエチルの(R,R)のもしくは(S,S)の型のどちらかの混合物
のいずれかである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
反応が塩素化溶媒もしくは塩素化溶媒およびC−Cアルコールの混合物の中で起こる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
塩素化溶媒が1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルムおよびそれらの混合物から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
薬学的に許容される担体もしくは希釈剤と混合した請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項22】
ヒトもしくは動物の身体の治療による処置の方法における使用のための請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物または請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
疼痛、発熱もしくは炎症の処置における使用のための、プロスタノイド誘発性平滑筋収縮を阻害するための、または結腸直腸癌もしくは神経変性疾患の予防または処置のための医薬品の製造のために請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または請求項21に記載の組成物の使用。
【請求項24】
処置を必要とするヒトもしくは動物の対象に請求項1〜16のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩または請求項21に記載の組成物の有効量を投与することを含む、疼痛、発熱もしくは炎症を処置する、プロスタノイド誘発性平滑筋収縮を阻害するまたは結腸直腸癌もしくは神経変性疾患を処置するかまたは予防するための方法。

【公表番号】特表2006−517560(P2006−517560A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501815(P2006−501815)
【出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001295
【国際公開番号】WO2004/072058
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598032139)アルミラル プロデスファルマ ソシエダッド アノニマ (69)
【氏名又は名称原語表記】ALMIRALL−PRODESFARMA SOSIEDAD ANONIMA
【Fターム(参考)】