遺伝子増幅法
【課題】 高速で遺伝子を増幅するための2本鎖DNA及びこれを用いた遺伝子増幅法及びタンパク質の製造方法を提供する。
【解決手段】 生体内での遺伝子の複製の機構(BIR)に基づいて、人為的に遺伝子増幅を高速に起こさせる系を構築した。A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。また、BとB’は省略されてもよく、この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)を有する2本鎖DNAを染色体やプラスミドに導入し、任意に特異的な配列を切断する酵素の発現を誘導すると、特異的な部位に切断が起き、それが引き金となって遺伝子増幅が高速に起こる。
【解決手段】 生体内での遺伝子の複製の機構(BIR)に基づいて、人為的に遺伝子増幅を高速に起こさせる系を構築した。A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。また、BとB’は省略されてもよく、この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)を有する2本鎖DNAを染色体やプラスミドに導入し、任意に特異的な配列を切断する酵素の発現を誘導すると、特異的な部位に切断が起き、それが引き金となって遺伝子増幅が高速に起こる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遺伝子を高速で増幅する方法及び増幅された遺伝子を用いてタンパク質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子増幅を人為的に起こさせるために動物培養細胞を用いて行う場合(特許文献1等)、(i)時間が掛かる(半年〜1年)、(ii)増幅していないクローンも多い、(iii)増幅機構が未解明で経験に頼っている、等の問題点がある。一方、酵母を用いた遺伝子増幅の系は無く、通常そのためにはプラスミドが用いられるが、一定以上のコピー数の増加は困難である。
本発明のシステムは、BIR(Break-Induced-Rep1ication)と呼ばれる生物が有する能力に基礎を置いたものである(非特許文献1、2)。これは染色体が切断されると、その切られた染色体は自分と同じ配列を見つけ、その相同性を利用してそこに侵入し、複製点を構築し、複製を開始することで、自分を救済すると考えられる。生物はすべてこの能力を有すると考えられる。
【0003】
【特許文献1】特表平8-504585 (WO94/14968)
【非特許文献1】PNAS, vol.98, no.15, 8255-8262 (July 17, 2001)
【非特許文献2】Genes Dev 12, 3831-3842 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高速で遺伝子を増幅するために特別に構成された2本鎖DNA及びこれを用いた遺伝子増幅法を提供する。本発明は、人為的に増幅系を完全に構築していること、同調して増幅出来ること、増幅期間が短い(恐らく1世代)こと、増幅機構が明らかなこと等の特徴を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、BIRと呼ばれる生体内での遺伝子の複製の機構に基づいて、人為的に遺伝子増幅を高速に起こさせる系を構築した。
本発明者らは、図1(1)に示すような、増幅目的遺伝子(B)及びその前後に増幅のために必要な領域(AとC)を有する2本鎖DNA部分(A−B−C)と、同様の構成をもつ2本鎖DNA部分(A’−B’−C’: B’は増幅目的遺伝子であってもよく、AとA’及びCとC’は互いに相同的組換え可能である。)を作成して、遺伝子増幅の試験を行った(なお、BとB’は、図1(2)のように、省略されてもよい。この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)。その結果、特異的な部位に切断が起きた場合に、それが引き金となって遺伝子増幅が高速に起こることを確認した(実施例2〜4)。
【0006】
即ち、本発明は、A−C及びA’−C’又はA’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、A及びCの少なくとも一方が増幅目的遺伝子であり、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNAである。
【0007】
また、本発明は、A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNAである。
このBとB’が、互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅目的遺伝子をそれぞれ少なくとも一種含む増幅部分を表すものであってもよい。更に、このBとB’が互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅選択遺伝子及び増幅目的遺伝子を含む増幅部分であってもよい。
【0008】
このような2本鎖DNAの好ましい例として、
(1)A−C−A’−C’の配列、
(2)A−C−D−A’−C’の配列、
(3)(i)E’−A−C及び(ii)A’−C’−E若しくはA’−C’−Eの逆方向配列、又は(iii)A−C−E及び(iv)E’−A’−C’若しくはE’−A’−C’の逆方向配列、又は
(4)D−E’−A−C−D−A’−C’−E−D、D−E’−A−C−D−E’−C’’−A’’−D、D−A−C−E−D−E’−A’−C’−D、又はD−A−C−E−D−C’’−A’’−E−Dの配列
から成る2本鎖DNAが挙げられ、更に
(5)A−B−C−A’−B’−C’の配列、
(6)A−B−C−D−A’−B’−C’の配列、
(7)(i)E’−A−B−C及び(ii)A’−B’−C’−E若しくはA’−B’−C’−Eの逆方向配列、又は(iii)A−B−C−E及び(iv)E’−A’−B’−C’若しくはE’−A’−B’−C’の逆方向配列、又は
(8)D−E’−A−B−C−D−A’−B’−C’−E−D、D−E’−A−B−C−D−E’−C’’−B’’−A’’−D、D−A−B−C−E−D−E’−A’−B’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−Dの配列
(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。C’’−A’’はA’−C’を逆方向に配列させた配列を表し、C’’−B’’−A’’はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列を表す。)から成る2本鎖DNAが挙げられる。
【0009】
例えば、(1)には、AC−C’A’−ACなどの配列も該当し、これは同じ配列(AC)を3つ並べて、真中の配列を逆配列(C’A’)とするだけでよい。更に、この真中の配列(C’A’)の中央に切断個所を挿入すれば、(2)のAC−C’DA’−ACとなる。
また、これらの例において、AとCとは同一であってもよい。例えば、この場合、(1)A−A−A’−A’、(2)A−A−D−A’−A’、(5)A−B−A−A’−B’−A’、(6)A−B−A−D−A’−B’−A’などである。
【0010】
また、本発明は、上記(1)〜(8)のいずれかの2本鎖DNAを含む組換えベクターである。
また、本発明は上記(1)(2)(5)又は(6)の2本鎖DNAが導入された形質転換体である。(1)(2)(5)又は(6)の2本鎖DNAは染色体に導入するのに適している。
更に、本発明は、この形質転換体を用意する段階、及び該遺伝子(即ち、増幅目的遺伝子)を増幅する段階から成る遺伝子増幅法である。
この配列がA−C−D−A’−C’又はA−B−C−D−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)で表される場合、前記遺伝子を増幅する段階において、形質転換体にエンドヌクレアーゼを作用させることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記(3)(4)(7)又は(8)の2本鎖DNAが導入された組換えプラスミドである。(3)(4)(7)又は(8)はプラスミドに導入するのに適している。
更に、本発明は、このプラスミドを細菌に導入する段階、及びこの細菌を培養する段階から成る遺伝子増幅法である。
更に本発明は、このいずれかの方法により得られた細胞又は細菌を培養する段階から成る、増幅目的遺伝子がコードするタンパク質を製造する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法を用いて増幅の場として通常の染色体又はプラスミドを用いて調べたところ、高度な増幅を確認した(実施例2〜4)。本発明の方法により、少なくとも数十コピーに増加したクローンを得ることができる。その中には百コピー以上増幅したものがある。プラスミドに導入した場合には、更に増幅単位の構造改変やそれを導入する宿主の変更が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の、遺伝子増幅用の2本鎖DNAは、
(i)A−B−C、及び
(ii)A’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列
(なお、BとB’は省略されてもよい。この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)を有する2本鎖DNAであり、好ましくは上記(1)〜(8)のいずれかの2本鎖DNAである。具体例のいくつかを図2に示す。
なお、本明細書において、これらは5’末端から3’末端に左から右へ記載された塩基配列に基づく。各要素の結合は遺伝子工学の常法に従って行うことができる。
【0014】
このAとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNA、好ましくは同一配列の2本鎖DNAである。AとA’は相同性が90%以上であることが好ましい。更に、AとA’のうち特に切断部分(例えば、C−A’間又はD)に近い部分(例えば、10〜30bp)の相同性が高いことがより好ましい。また、AとA’はその長さが500bp以上であることが好ましい。短いと、増幅の結果副産物が多く生成したり、意図しない箇所に相同的組換えが起こる可能性がある。
またAとA’は、一方を他方に対して逆方向に配列させる。
CとC’はAとA’と同様の関係にある。更に、AとCとは同じであってもよい。
【0015】
BとB’の少なくとも一方、好ましくはBとB’の両方は増幅部分であり、それぞれ一種の増幅目的遺伝子のみを含んでもよいが、複数の増幅目的遺伝子を含んでもよい。BとB’に含まれる増幅目的遺伝子のうち少なくとも一種は、互いに相同的組換え可能であることが好ましく、同一の遺伝子であることがより好ましい。
この増幅目的遺伝子としていかなる遺伝子を用いることができる。安定に増幅できる遺伝子長は原理的に制限は無く、10kbを超えても増幅が可能である。
更に、この部分は増幅選択遺伝子を少なくとも一つ含むことがより好ましく、BとB’が更に同一方向に配列した増幅選択遺伝子を含むことがより好ましい。この増幅選択遺伝子としては、後述のleu2d、プロモーター欠損型trp1、ura3、DFR1遺伝子などが挙げられる。
このBとB’は省略されてもよい。この場合にはAとCの少なくとも一方を増幅目的遺伝子とすればよい。
【0016】
DはHOエンドヌクレアーゼの切断認識配列(以下「HOcs」ともいう。)であり、この切断箇所を少なくとも一つ有する。ゲノム中に認識配列が存在しない(または少数存在するが欠失させることが可能な)他のendonuclease(I-SceI等)とその切断認識配列でも代用できる。これにより増幅反応の効率を著しく高めることが出来る。Dは切断箇所を2ヶ所有し、その間にマーカーとなりうる遺伝子を含んでもよい。
エンドヌクレアーゼは、通常の5bp程度の配列を認識して切断する酵素よりも、より長い配列を認識して切断するHOエンドヌクレアーゼやI-Sce1酵素などが好ましい。
【0017】
Eはテロメア配列(以下「TEL」ともいう。)を表す。テロメア配列とはtelomereを形成させることが出来る単純反復配列であり、同一の記号Eであっても同一の配列である必要はない。これにより増幅産物が酵母細胞内で線状染色体として維持されることが可能になる。E’はEの逆方向配列を表す。
【0018】
また本発明の2本鎖DNAにおいて、増幅の効率の観点からA〜C間とA’〜C’間とがほぼ同じ長さであることが好ましい。そのため又は他の理由から、上記各要素の間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。このような配列として、centromere(以下「CEN」という。)、autonomously replicating sequence(以下「ARS」という。)、選択マーカー等が挙げられる。
CEN配列は、どの染色体上のcentromere配列でも良い (後記の実施例では4番染色体)。これにより増幅の選択圧が強くかかる状況となり、また増幅産物が安定に維持される。A-B-C(又はA-C)とTELの間、又はA'-B'-C'(又はA'-C')或いはその逆向きの配列とTELの間、のいずれかに1つ挿入されることが望ましい。このCENとARSが挿入される場合は、vector上にはこれらは含まれるべきではないので、一般的な汎用vector (例pBR322、pUC series、pBluescript series、pGEM series等)を用いることが望ましい。
【0019】
ARS配列は、酵母複製起点であり、どの染色体上のどのARS配列でもよい。これにより増幅産物が維持される。A-B-C(又はA-C)とTELの間か、A'-B'-C'(又はA'-C')或いはその逆向きの配列とTELの間、のいずれかに1つ挿入されることが望ましい。
選択マーカーとしては、URA3、HIS3、TRP1、ADE2、LYS2等が挙げられる。Bの増幅選択遺伝子と選択方法が異なるマーカーであることが好ましい。これにより増幅開始前にplasmidを保有した細胞を選択でき、増幅反応を効率よく起こすことが出来る。A-B-CとTEL、A'-B'-C'或いはその逆向きの配列とTEL、という2種類の構造単位とHO csの間には挿入されないことが望ましい。
【0020】
遺伝子を増幅させるためには、上記のように構成された2本鎖DNAを実際遺伝子増幅の起きる微生物、細胞又は動物個体等に導入する。この宿主として、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞及び哺乳動物個体等が挙げられるが、特に酵母や動物細胞が好ましい。本発明の2本鎖DNA及び、必要に応じてプロモーターやエンハンサー等の転写開始シグナル、更にターミネ−ター配列を組み込んだベクターにより、通常の遺伝子工学的手法に従って、この宿主細胞を形質転換すればよい。
【0021】
また、遺伝子増幅のために2本鎖DNAを導入するプラスミドとしては、mono copy plasmidを用いることが好ましい。このmono copy plasmidとは、CEN配列及びARS配列を有するplasmidを意味し、例えば、酵母mono copy vector (例えば、YCp50、pRS313、pRS314、pRS315、pRS316、pRS317、pRS412、pRS413、pRS414、pRS415、pRS416、pAUR112、pAUR123等)等が挙げられ、また酵母複製起点ARS配列と酵母CEN配列を別途挿入する場合は、種々の汎用vector(例えばpBR322、pUC series (pUC18、pUC19)、pBluescript series (pBluescript II)、pGEM series (pGEM-3Zf)等)を用いることができる。
このプラスミドを細菌等に導入して遺伝子増幅をすることができる。この細菌として大腸菌、真核生物として酵母等を用いることができる。
【0022】
2本鎖DNAとして例えば上記配列(1)や(5)を染色体に導入した場合には、このまま遺伝子増幅が起こる。この場合、自然に2本鎖切断がランダムに起こると考えられ、偶然にC−A’間に切断が起きた場合には、露出した相同配列同士(AとA’、CとC’)が対合することにより、同時に2ヶ所でBIRと呼ばれる反応が起こり、複製フォークが2ヶ所ある環(ローリングサークル)が形成され、遺伝子の複製が起こる。
【0023】
一方、例えば上記配列(2)や(6)を染色体に導入した場合にはエンドヌクレアーゼを導入することが好ましい。エンドヌクレアーゼを導入すると、切断箇所(D)において2本鎖DNAが切断され、露出した相同配列同士(AとA’、CとC’)が対合することにより、同時に2ヶ所でBIRと呼ばれる反応が起こり、複製フォークが2ヶ所ある環(ローリングサークル)が形成され、遺伝子の複製が起こる。その様子を図3に示す。エンドヌクレアーゼを作用させるためには、この酵素を直接細胞に導入してもよいし、この酵素をコードする遺伝子を細胞内で発現させてもよい。増幅時間は、12〜24時間程度である。
【0024】
なお、2本鎖DNAに配列(1)や(5)を用いる場合、その増幅クローンの出現頻度は、2本鎖DNAに配列(2)や(6)とエンドヌクレアーゼを用いる場合よりも低く、5分の1程度であるが、増幅時間は同程度である。
【0025】
上記配列(3)(4)(7)又は(8)をプラスミドに導入した場合も原則的に上記と同様の反応が起こる。配列(4)や(8)をプラスミドに導入した場合の増幅時間は1〜24時間程度である
【0026】
この反応の終了段階においては、それぞれ2ヶ所で増幅された遺伝子(BとB’)が組換えを起こして、上記サークルが除去され、増幅された遺伝子を含む2本鎖DNAが得られると考えられる(図4)。従って、BとB’とが逆向きの場合や、いずれか一方を含まない場合には、このようなサークルを切断除去する終了反応が起きないと考えられる。
また、この細胞を培養し、その培地若しくはその上清から、又はこれらを精製することにより、目的の増幅遺伝子がコードするタンパク質を大量に製造することができる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0027】
図3上部に示すように、2個のHO配列(DSB、配列番号1)に挟まれたURA3遺伝子(配列番号2)、2種類の出芽酵母ゲノム相同配列(YF257394-YF258454(配列番号3)及びYF267165-YF268121(配列番号4), GeneBank Accession ID; NC 001138)、増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を構築した。この増幅選択マーカー遺伝子leu2dは増幅目的遺伝子を兼ねる。
増幅選択マーカー遺伝子leu2dは、ロイシンを合成する一群の酵素の一つで、この遺伝子が欠損すると、ロイシンを含まない培地では生育できない。用いたleu2d欠損遺伝子は、プロモーター配列の大部分を欠くため発現量が非常に低いがごく弱い酵素活性を有しており、そのためこの遺伝子1個では、ロイシン抜き培地で生育不能だが、増幅すると、弱い活性が集まって十分な活性になり、ロイシン抜き培地で生育することができるようになる。この性質を増幅した菌の選択に用いた。
URA3遺伝子は、leu2d間の相同組換えによって欠失されてしまわずに増幅単位が維持されている細胞を選択するために用いられている。
この増幅単位内のHO配列に二本鎖DNA切断が誘導され、露出したゲノム相同配列の末端がゲノム上の配列と対合することで新しい複製フォークが形成される。このBIR反応が、図3中央のように2ヶ所で起こり、ローリングサークルタイプの複製が進行すると考えられる。サークル内の領域は1回のセルサイクルに爆発的に増幅され、増幅産物が細胞内で維持されると考えられる。
【実施例2】
【0028】
実施例1で構築した増幅単位を、HOエンドヌクレアーゼ遺伝子がGALプロモーター下流に挿入された構造を染色体上に有する出芽酵母細胞株(LS20)に導入した。マーカー遺伝子leu2d間の相同組換えによって欠失されてしまわずに、増幅単位が維持されているUra+コロニーを単離し、ロイシンを欠くガラクトース培地上に塗布してHOエンドヌクレアーゼの発現を誘導した。出現したLeu+コロニーの細胞を培養し、低融点アガロース内で染色体DNAを調整した。培養時間(増幅後、培養によってコロニーが生成する時間を含む。)は4日程度であった。
この染色体DNAをPFGE (Pulsed-field gel electrophoresis) あるいはFIGE (Field-inversion gel electrophoresis) によって分離し、また制限酵素XhoIによって消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動によって分離して、サザンブロット法にて解析した。
【0029】
ウラシルを欠くグルコース寒天培地で培養されたクローン(SD-Ura、HOエンドヌクレアーゼ発現非誘導)及びロイシンを欠くガラクトース寒天培地で培養されたクローン(SG-Leu、HOエンドヌクレアーゼ発現誘導)について、プローブとしてleu2d を用いて、PFGEによって分離された染色体DNA及びアガロースゲル電気泳動によって分離されたXhoI消化後のDNAを解析した。その結果を図5に示す。Aは染色体DNAをPFGEにて分離したもの、BはXhoI消化後のDNAをアガロースゲル電気泳動にて分離したものを示す。
また、サザンブロット法による増幅産物の構造解析を図6に示す。AはPFGEで分離された染色体DNAをRET2プローブを用いて解析したもの、BはFIGEで分離された染色体DNAをleu2dプローブを用いて解析したものを示す。
【0030】
その解析結果(図5)より、leu2d断片を用いて第3染色体が一部改変されている宿主細胞株LS20においては、約345 kbの第3染色体と8.9及び約12.5 kbのXhoI断片が検出された。一方、HOエンドヌクレアーゼ発現を誘導していない陰性対照[図5の3, 4レーン] では増幅単位が挿入された292 kbの第6染色体とそれに由来する11.6 kbのXhoI断片が検出された。
図5Bにおいては、leu2d probeで検出されるXhoI断片(4.4 kb、6.4 kb、8.2 kb、10.3 kb)が観察される。
【0031】
これに対して、HOエンドヌクレアーゼ発現が誘導されたコロニーに由来する細胞株においては、これらと異なるサイズに強いシグナルが見られた。これらの細胞株はそのシグナルのパターンにより、4群に大別できることが分かった。
第1群[レーン 35, 43, 44, 47, 54, 58, 63] は増幅過程の仮説から予測される通りのパターンを示し、そのサイズから第6染色体は5あるいは7個のleu2dを有していると思われる。
【0032】
第2群[レーン 45, 49, 56, 57, 66, 70, 72] ではPFGE解析において非常に強いシグナルが大きな分子サイズの領域に検出され、予想とは異なるXhoI断片が検出された。その後の解析により、これらは予測された配列とそれが一部逆位した配列からなる高度な反復配列を有していることが示唆され、少なくとも数十コピー以上のleu2dを保持していると考えられる。
また、増幅単位の挿入位置のセントロメア側に位置するRET2プローブを用いた解析より、これらは染色体上で増幅していると考えられる(図6A)。
これらはAにおいて約650kb以上の分離限界とウェル付近に非常に強いシグナルを示し、非常に高度に増幅していると思われる。Aの増幅産物のサイズから、clone66は13 copy、 clone49は29 copy、clone57は38〜54 copy、それ以外はそれ以上のleu2dを含んでいると思われる。またこれらはAにおいて明瞭なバンドを形成し、その構造は比較的安定であると考えらる。
【0033】
第3群[レーン 36, 38, 42, 46, 48, 50, 51, 53, 55, 59-62, 64, 65, 67-69] は、増幅単位を含む第6染色体のサイズに変動は無いが、XhoI断片のパターンには変化が見られた。FIGE解析の結果、この群に約23.5 kbの分子が検出された(図6B)。
その後の解析により、この分子は増幅単位の挿入位置のテロメア側の配列がパリンドローム様構造をとったミニ染色体として存在していることが判明した。
上記以外の細胞株を含む第4群はleu2dの増幅を伴わない再編成の結果により生じたものであると推察される。
以上のように、ゲノム上での本発明の遺伝子増幅系において、特に第2群に見られるような高度の増幅反応が観察された。
【0034】
比較例1
2種類の出芽酵母ゲノム相同配列を互いに順方向になるよう配列させ、実施例1と同様な増幅単位を構築した。この増幅単位を用いて実施例2と同様の操作を行った。
この比較例1と実施例2で生成したコロニー及びその細胞数を、図7と図8に示す。Colonyの計数の結果、実施例2は比較例1に比べ約6.3倍のcolonyを形成した。
この比較例1では、図9に示すように、BIR反応が起こらず、遺伝子複製が起きなかったものと考えられる。
【実施例3】
【0035】
実施例1で構築した増幅単位から、2個のHO配列(配列番号1)に挟まれたURA3遺伝子(配列番号2)を除いて、図10に示すような、2種類の出芽酵母ゲノム相同配列(YF257394-YF258454(配列番号3)及びYF267165-YF268121(配列番号4), GeneBank Accession ID; NC 001138)、増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を構築した。
この増幅単位を用いて実施例2と同様の操作を行った。即ち、この増幅単位を出芽酵母細胞株(LS20)に導入し、グルコース(ウラシル除いた)培地とガラクトース(ロイシン除いた)培地に塗布した。前者のプレートから2ヶ(レーン 7,8)、後者のプレートから4ヶ(レーン 77〜80)のコロニーをつり上げ、同じ培地で増殖した後、各クローンの染色体を調べるため、パルス電気泳動により解析した。培養時間は4日程度であった。
その結果を図11に示す。図中、(A)はそのまま泳動したもの、(B)はXhoI制限酵素で切断後泳動したものを示す。前者のプレートのコロニーは、元の菌と同じパターン、後者のプレートのコロニーは全てlue2dが増幅しており、特にクローン レーン78とレーン80は、染色体上でleu2dの高度な増幅が認められる。
【実施例4】
【0036】
図12(A)に示すように、プラスミドpNo42IR(from Dr. Butler DK (Montana State Univ., Genetics 161, 1065-1075 (2002))に、3個のHO配列(DSB、配列番号1)、URA3遺伝子(配列番号2)、ARS1遺伝子(配列番号6)、LUC遺伝子(配列番号7)、CEN4遺伝子(配列番号8)、GFP遺伝子(配列番号9)、及び増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を導入し、増幅用プラスミドpBIAを構築した。
このプラスミドpBIAを、酢酸リチウム法を基本としたトランスフォーメーションキット(Frozen-EZ Yeast Transformation II:ZYMO RESEARCH, Cat No. T2001)を用いて、HOエンドヌクレアーゼ遺伝子がGALプロモーター下流に挿入された構造を染色体上に有する出芽酵母細胞株(LS20)に導入した。
この菌をウラシルを除いた培地で対数増殖中期まで増殖させ、遠心して集菌し、滅菌水で2回洗浄した後、先の培地からウラシルとロイシンを除き、糖源をガラクトースとした寒天培地に様々な希釈をして塗布し、プレートを30℃または25℃で培養した。培養時間は4日程度であった。4日〜5日の後、コロニー数を数えた。生菌数は、同様に完全合成グルコース(2%)寒天培地に塗布して求めた。
【0037】
この染色体DNAをPFGE (Pulsed-field gel electrophoresis) あるいはFIGE (Field-inversion gel electrophoresis) によって分離し、また制限酵素XhoIによって消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動によって分離して、サザンブロット法にて解析した。サザンブロット法による増幅産物の構造解析を図13に示す。AはPFGEで分離された染色体DNAをRET2プローブを用いて解析したもの、BはFIGEで分離された染色体DNAをleu2dプローブを用いて解析したものを示す。SD-UraはUraを含まないグルコース培地で培養したクローン、SG- Ura, LeuはLeu-Ura-ガラクトース培地で選択したクローンを表す。
【0038】
この泳動図より、本発明のプラスミドpBIAの切断部位(DSB)を切断することにより、lue2d遺伝子を3〜5コピー増幅していることが認められる。
図13(A)のSD-Uraのサンプルにおいて、線状DNAの約17〜19kbの長さのとことろに環状プラスミドpNotBIAとpBIAが観察される。一方、図13(A)のSG-Ura, Leuの約12〜20 kbの位置に、BIAサンプルで、しかもロイシン欠乏培地に塗布したコロニーだけが有するバンドが観察される。一般に線状DNAは環状DNAに比べて濃いバンドを与えるため、上記環状プラスミドpBIAを比較することにより、このバンドが線状DNAであることが分かる。また、その長さは増幅に比例し、図14に示すように、13.39 bpのものはleu2d遺伝子が3コピー、18.85 bpのものは5コピーしたものと考えられる。
図13(B)は、ClaIカットして寒天ゲル電気泳動したものを示し、そのバンドの長さと濃さは、この結果とよく一致する。
【0039】
比較例2
実施例4と同様のプラスミド及び遺伝子を用いて図12(B)の構成のプラスミドpNotBIAを構築した。これを用いて実施例4と同様の操作を行った。
ガラクトース誘導条件下での実施例4と比較例2のプラスミド(pBIA及びpNotBIA)を保持する菌(LS20)から得られたLeu+ Ura+コロニー数を比較した。その結果を図15に示す。プラスミドpBIAを用いた場合に、増幅が多く行われていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の2本鎖DNAを用いることにより、極めて効率よく、短期間で遺伝子増幅を達成できる。この2本鎖DNAが導入された細胞を用いて有用タンパク質の大量生産が出来るため、タンパク製剤や人工抗体の生産に有用である。また、この細胞を用いて、遺伝子の発現を大量に、長期間安定に保つことが出来るため、遺伝子治療に有用である。更に、遺伝子増幅と変異誘導を共役させることで希望通りの機能を有した遺伝子を創造できる。
本発明の方法により、インスリンなど糖鎖を持たないペプチドや蛋白は勿論、エリスロポイエチン、G-CSF、抗体薬などの高生産性微生物の創製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】BIR反応のメカニズムを示す図である。
【図2】本発明の2本鎖DNAの好ましい構成を示す図である。AとA’及びCとC’は互いに相同的組換え可能な配列、BとB’は少なくとも一方に増幅目的遺伝子を含む増幅部分、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所、EとE’はテロメア配列を表す。矢印の方向は遺伝子の配列方向を示す。BとB’が省略されている場合にはA又はCが増幅目的遺伝子であってもよい。
【図3】本発明の遺伝子増幅の様子を示す図である。CENはセントロメア、TELはテロメアを示す。DSB(Double Strand Break)は2本鎖切断箇所を示す。
【図4】遺伝子増幅の終了の様子を示す図である。
【図5】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図6】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEで分離後、RET2プローブで検出したもの、Bは同様にleu2dプローブで検出したものを示す。
【図7】比較例1と実施例2で生成した細胞数を示す図である。横軸は105個の生細胞にHO誘導を行った際の出現colony数を表す。
【図8】比較例1と実施例2で生成したコロニーの写真を示す図である。
【図9】比較例1で用いた増幅単位を示す図である。
【図10】実施例3で用いた2本鎖DNAの構成を示す図である。
【図11】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図12】実施例4で用いたプラスミドpBIAとpNotBIAの構成を示す図である。
【図13】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図14】プラスミドpBIAを用いた場合の増幅生成物を示す。
【図15】プラスミド(pBIA及びpNotBIA)を保持する菌(LS20)から得られたLeu+ Ura+コロニー数を示す図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は、遺伝子を高速で増幅する方法及び増幅された遺伝子を用いてタンパク質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子増幅を人為的に起こさせるために動物培養細胞を用いて行う場合(特許文献1等)、(i)時間が掛かる(半年〜1年)、(ii)増幅していないクローンも多い、(iii)増幅機構が未解明で経験に頼っている、等の問題点がある。一方、酵母を用いた遺伝子増幅の系は無く、通常そのためにはプラスミドが用いられるが、一定以上のコピー数の増加は困難である。
本発明のシステムは、BIR(Break-Induced-Rep1ication)と呼ばれる生物が有する能力に基礎を置いたものである(非特許文献1、2)。これは染色体が切断されると、その切られた染色体は自分と同じ配列を見つけ、その相同性を利用してそこに侵入し、複製点を構築し、複製を開始することで、自分を救済すると考えられる。生物はすべてこの能力を有すると考えられる。
【0003】
【特許文献1】特表平8-504585 (WO94/14968)
【非特許文献1】PNAS, vol.98, no.15, 8255-8262 (July 17, 2001)
【非特許文献2】Genes Dev 12, 3831-3842 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高速で遺伝子を増幅するために特別に構成された2本鎖DNA及びこれを用いた遺伝子増幅法を提供する。本発明は、人為的に増幅系を完全に構築していること、同調して増幅出来ること、増幅期間が短い(恐らく1世代)こと、増幅機構が明らかなこと等の特徴を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、BIRと呼ばれる生体内での遺伝子の複製の機構に基づいて、人為的に遺伝子増幅を高速に起こさせる系を構築した。
本発明者らは、図1(1)に示すような、増幅目的遺伝子(B)及びその前後に増幅のために必要な領域(AとC)を有する2本鎖DNA部分(A−B−C)と、同様の構成をもつ2本鎖DNA部分(A’−B’−C’: B’は増幅目的遺伝子であってもよく、AとA’及びCとC’は互いに相同的組換え可能である。)を作成して、遺伝子増幅の試験を行った(なお、BとB’は、図1(2)のように、省略されてもよい。この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)。その結果、特異的な部位に切断が起きた場合に、それが引き金となって遺伝子増幅が高速に起こることを確認した(実施例2〜4)。
【0006】
即ち、本発明は、A−C及びA’−C’又はA’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、A及びCの少なくとも一方が増幅目的遺伝子であり、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNAである。
【0007】
また、本発明は、A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNAである。
このBとB’が、互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅目的遺伝子をそれぞれ少なくとも一種含む増幅部分を表すものであってもよい。更に、このBとB’が互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅選択遺伝子及び増幅目的遺伝子を含む増幅部分であってもよい。
【0008】
このような2本鎖DNAの好ましい例として、
(1)A−C−A’−C’の配列、
(2)A−C−D−A’−C’の配列、
(3)(i)E’−A−C及び(ii)A’−C’−E若しくはA’−C’−Eの逆方向配列、又は(iii)A−C−E及び(iv)E’−A’−C’若しくはE’−A’−C’の逆方向配列、又は
(4)D−E’−A−C−D−A’−C’−E−D、D−E’−A−C−D−E’−C’’−A’’−D、D−A−C−E−D−E’−A’−C’−D、又はD−A−C−E−D−C’’−A’’−E−Dの配列
から成る2本鎖DNAが挙げられ、更に
(5)A−B−C−A’−B’−C’の配列、
(6)A−B−C−D−A’−B’−C’の配列、
(7)(i)E’−A−B−C及び(ii)A’−B’−C’−E若しくはA’−B’−C’−Eの逆方向配列、又は(iii)A−B−C−E及び(iv)E’−A’−B’−C’若しくはE’−A’−B’−C’の逆方向配列、又は
(8)D−E’−A−B−C−D−A’−B’−C’−E−D、D−E’−A−B−C−D−E’−C’’−B’’−A’’−D、D−A−B−C−E−D−E’−A’−B’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−Dの配列
(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。C’’−A’’はA’−C’を逆方向に配列させた配列を表し、C’’−B’’−A’’はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列を表す。)から成る2本鎖DNAが挙げられる。
【0009】
例えば、(1)には、AC−C’A’−ACなどの配列も該当し、これは同じ配列(AC)を3つ並べて、真中の配列を逆配列(C’A’)とするだけでよい。更に、この真中の配列(C’A’)の中央に切断個所を挿入すれば、(2)のAC−C’DA’−ACとなる。
また、これらの例において、AとCとは同一であってもよい。例えば、この場合、(1)A−A−A’−A’、(2)A−A−D−A’−A’、(5)A−B−A−A’−B’−A’、(6)A−B−A−D−A’−B’−A’などである。
【0010】
また、本発明は、上記(1)〜(8)のいずれかの2本鎖DNAを含む組換えベクターである。
また、本発明は上記(1)(2)(5)又は(6)の2本鎖DNAが導入された形質転換体である。(1)(2)(5)又は(6)の2本鎖DNAは染色体に導入するのに適している。
更に、本発明は、この形質転換体を用意する段階、及び該遺伝子(即ち、増幅目的遺伝子)を増幅する段階から成る遺伝子増幅法である。
この配列がA−C−D−A’−C’又はA−B−C−D−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)で表される場合、前記遺伝子を増幅する段階において、形質転換体にエンドヌクレアーゼを作用させることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記(3)(4)(7)又は(8)の2本鎖DNAが導入された組換えプラスミドである。(3)(4)(7)又は(8)はプラスミドに導入するのに適している。
更に、本発明は、このプラスミドを細菌に導入する段階、及びこの細菌を培養する段階から成る遺伝子増幅法である。
更に本発明は、このいずれかの方法により得られた細胞又は細菌を培養する段階から成る、増幅目的遺伝子がコードするタンパク質を製造する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法を用いて増幅の場として通常の染色体又はプラスミドを用いて調べたところ、高度な増幅を確認した(実施例2〜4)。本発明の方法により、少なくとも数十コピーに増加したクローンを得ることができる。その中には百コピー以上増幅したものがある。プラスミドに導入した場合には、更に増幅単位の構造改変やそれを導入する宿主の変更が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の、遺伝子増幅用の2本鎖DNAは、
(i)A−B−C、及び
(ii)A’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列
(なお、BとB’は省略されてもよい。この場合にはA又はCを増幅目的遺伝子とすればよい。)を有する2本鎖DNAであり、好ましくは上記(1)〜(8)のいずれかの2本鎖DNAである。具体例のいくつかを図2に示す。
なお、本明細書において、これらは5’末端から3’末端に左から右へ記載された塩基配列に基づく。各要素の結合は遺伝子工学の常法に従って行うことができる。
【0014】
このAとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNA、好ましくは同一配列の2本鎖DNAである。AとA’は相同性が90%以上であることが好ましい。更に、AとA’のうち特に切断部分(例えば、C−A’間又はD)に近い部分(例えば、10〜30bp)の相同性が高いことがより好ましい。また、AとA’はその長さが500bp以上であることが好ましい。短いと、増幅の結果副産物が多く生成したり、意図しない箇所に相同的組換えが起こる可能性がある。
またAとA’は、一方を他方に対して逆方向に配列させる。
CとC’はAとA’と同様の関係にある。更に、AとCとは同じであってもよい。
【0015】
BとB’の少なくとも一方、好ましくはBとB’の両方は増幅部分であり、それぞれ一種の増幅目的遺伝子のみを含んでもよいが、複数の増幅目的遺伝子を含んでもよい。BとB’に含まれる増幅目的遺伝子のうち少なくとも一種は、互いに相同的組換え可能であることが好ましく、同一の遺伝子であることがより好ましい。
この増幅目的遺伝子としていかなる遺伝子を用いることができる。安定に増幅できる遺伝子長は原理的に制限は無く、10kbを超えても増幅が可能である。
更に、この部分は増幅選択遺伝子を少なくとも一つ含むことがより好ましく、BとB’が更に同一方向に配列した増幅選択遺伝子を含むことがより好ましい。この増幅選択遺伝子としては、後述のleu2d、プロモーター欠損型trp1、ura3、DFR1遺伝子などが挙げられる。
このBとB’は省略されてもよい。この場合にはAとCの少なくとも一方を増幅目的遺伝子とすればよい。
【0016】
DはHOエンドヌクレアーゼの切断認識配列(以下「HOcs」ともいう。)であり、この切断箇所を少なくとも一つ有する。ゲノム中に認識配列が存在しない(または少数存在するが欠失させることが可能な)他のendonuclease(I-SceI等)とその切断認識配列でも代用できる。これにより増幅反応の効率を著しく高めることが出来る。Dは切断箇所を2ヶ所有し、その間にマーカーとなりうる遺伝子を含んでもよい。
エンドヌクレアーゼは、通常の5bp程度の配列を認識して切断する酵素よりも、より長い配列を認識して切断するHOエンドヌクレアーゼやI-Sce1酵素などが好ましい。
【0017】
Eはテロメア配列(以下「TEL」ともいう。)を表す。テロメア配列とはtelomereを形成させることが出来る単純反復配列であり、同一の記号Eであっても同一の配列である必要はない。これにより増幅産物が酵母細胞内で線状染色体として維持されることが可能になる。E’はEの逆方向配列を表す。
【0018】
また本発明の2本鎖DNAにおいて、増幅の効率の観点からA〜C間とA’〜C’間とがほぼ同じ長さであることが好ましい。そのため又は他の理由から、上記各要素の間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。このような配列として、centromere(以下「CEN」という。)、autonomously replicating sequence(以下「ARS」という。)、選択マーカー等が挙げられる。
CEN配列は、どの染色体上のcentromere配列でも良い (後記の実施例では4番染色体)。これにより増幅の選択圧が強くかかる状況となり、また増幅産物が安定に維持される。A-B-C(又はA-C)とTELの間、又はA'-B'-C'(又はA'-C')或いはその逆向きの配列とTELの間、のいずれかに1つ挿入されることが望ましい。このCENとARSが挿入される場合は、vector上にはこれらは含まれるべきではないので、一般的な汎用vector (例pBR322、pUC series、pBluescript series、pGEM series等)を用いることが望ましい。
【0019】
ARS配列は、酵母複製起点であり、どの染色体上のどのARS配列でもよい。これにより増幅産物が維持される。A-B-C(又はA-C)とTELの間か、A'-B'-C'(又はA'-C')或いはその逆向きの配列とTELの間、のいずれかに1つ挿入されることが望ましい。
選択マーカーとしては、URA3、HIS3、TRP1、ADE2、LYS2等が挙げられる。Bの増幅選択遺伝子と選択方法が異なるマーカーであることが好ましい。これにより増幅開始前にplasmidを保有した細胞を選択でき、増幅反応を効率よく起こすことが出来る。A-B-CとTEL、A'-B'-C'或いはその逆向きの配列とTEL、という2種類の構造単位とHO csの間には挿入されないことが望ましい。
【0020】
遺伝子を増幅させるためには、上記のように構成された2本鎖DNAを実際遺伝子増幅の起きる微生物、細胞又は動物個体等に導入する。この宿主として、大腸菌や枯草菌等の細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞及び哺乳動物個体等が挙げられるが、特に酵母や動物細胞が好ましい。本発明の2本鎖DNA及び、必要に応じてプロモーターやエンハンサー等の転写開始シグナル、更にターミネ−ター配列を組み込んだベクターにより、通常の遺伝子工学的手法に従って、この宿主細胞を形質転換すればよい。
【0021】
また、遺伝子増幅のために2本鎖DNAを導入するプラスミドとしては、mono copy plasmidを用いることが好ましい。このmono copy plasmidとは、CEN配列及びARS配列を有するplasmidを意味し、例えば、酵母mono copy vector (例えば、YCp50、pRS313、pRS314、pRS315、pRS316、pRS317、pRS412、pRS413、pRS414、pRS415、pRS416、pAUR112、pAUR123等)等が挙げられ、また酵母複製起点ARS配列と酵母CEN配列を別途挿入する場合は、種々の汎用vector(例えばpBR322、pUC series (pUC18、pUC19)、pBluescript series (pBluescript II)、pGEM series (pGEM-3Zf)等)を用いることができる。
このプラスミドを細菌等に導入して遺伝子増幅をすることができる。この細菌として大腸菌、真核生物として酵母等を用いることができる。
【0022】
2本鎖DNAとして例えば上記配列(1)や(5)を染色体に導入した場合には、このまま遺伝子増幅が起こる。この場合、自然に2本鎖切断がランダムに起こると考えられ、偶然にC−A’間に切断が起きた場合には、露出した相同配列同士(AとA’、CとC’)が対合することにより、同時に2ヶ所でBIRと呼ばれる反応が起こり、複製フォークが2ヶ所ある環(ローリングサークル)が形成され、遺伝子の複製が起こる。
【0023】
一方、例えば上記配列(2)や(6)を染色体に導入した場合にはエンドヌクレアーゼを導入することが好ましい。エンドヌクレアーゼを導入すると、切断箇所(D)において2本鎖DNAが切断され、露出した相同配列同士(AとA’、CとC’)が対合することにより、同時に2ヶ所でBIRと呼ばれる反応が起こり、複製フォークが2ヶ所ある環(ローリングサークル)が形成され、遺伝子の複製が起こる。その様子を図3に示す。エンドヌクレアーゼを作用させるためには、この酵素を直接細胞に導入してもよいし、この酵素をコードする遺伝子を細胞内で発現させてもよい。増幅時間は、12〜24時間程度である。
【0024】
なお、2本鎖DNAに配列(1)や(5)を用いる場合、その増幅クローンの出現頻度は、2本鎖DNAに配列(2)や(6)とエンドヌクレアーゼを用いる場合よりも低く、5分の1程度であるが、増幅時間は同程度である。
【0025】
上記配列(3)(4)(7)又は(8)をプラスミドに導入した場合も原則的に上記と同様の反応が起こる。配列(4)や(8)をプラスミドに導入した場合の増幅時間は1〜24時間程度である
【0026】
この反応の終了段階においては、それぞれ2ヶ所で増幅された遺伝子(BとB’)が組換えを起こして、上記サークルが除去され、増幅された遺伝子を含む2本鎖DNAが得られると考えられる(図4)。従って、BとB’とが逆向きの場合や、いずれか一方を含まない場合には、このようなサークルを切断除去する終了反応が起きないと考えられる。
また、この細胞を培養し、その培地若しくはその上清から、又はこれらを精製することにより、目的の増幅遺伝子がコードするタンパク質を大量に製造することができる。
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0027】
図3上部に示すように、2個のHO配列(DSB、配列番号1)に挟まれたURA3遺伝子(配列番号2)、2種類の出芽酵母ゲノム相同配列(YF257394-YF258454(配列番号3)及びYF267165-YF268121(配列番号4), GeneBank Accession ID; NC 001138)、増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を構築した。この増幅選択マーカー遺伝子leu2dは増幅目的遺伝子を兼ねる。
増幅選択マーカー遺伝子leu2dは、ロイシンを合成する一群の酵素の一つで、この遺伝子が欠損すると、ロイシンを含まない培地では生育できない。用いたleu2d欠損遺伝子は、プロモーター配列の大部分を欠くため発現量が非常に低いがごく弱い酵素活性を有しており、そのためこの遺伝子1個では、ロイシン抜き培地で生育不能だが、増幅すると、弱い活性が集まって十分な活性になり、ロイシン抜き培地で生育することができるようになる。この性質を増幅した菌の選択に用いた。
URA3遺伝子は、leu2d間の相同組換えによって欠失されてしまわずに増幅単位が維持されている細胞を選択するために用いられている。
この増幅単位内のHO配列に二本鎖DNA切断が誘導され、露出したゲノム相同配列の末端がゲノム上の配列と対合することで新しい複製フォークが形成される。このBIR反応が、図3中央のように2ヶ所で起こり、ローリングサークルタイプの複製が進行すると考えられる。サークル内の領域は1回のセルサイクルに爆発的に増幅され、増幅産物が細胞内で維持されると考えられる。
【実施例2】
【0028】
実施例1で構築した増幅単位を、HOエンドヌクレアーゼ遺伝子がGALプロモーター下流に挿入された構造を染色体上に有する出芽酵母細胞株(LS20)に導入した。マーカー遺伝子leu2d間の相同組換えによって欠失されてしまわずに、増幅単位が維持されているUra+コロニーを単離し、ロイシンを欠くガラクトース培地上に塗布してHOエンドヌクレアーゼの発現を誘導した。出現したLeu+コロニーの細胞を培養し、低融点アガロース内で染色体DNAを調整した。培養時間(増幅後、培養によってコロニーが生成する時間を含む。)は4日程度であった。
この染色体DNAをPFGE (Pulsed-field gel electrophoresis) あるいはFIGE (Field-inversion gel electrophoresis) によって分離し、また制限酵素XhoIによって消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動によって分離して、サザンブロット法にて解析した。
【0029】
ウラシルを欠くグルコース寒天培地で培養されたクローン(SD-Ura、HOエンドヌクレアーゼ発現非誘導)及びロイシンを欠くガラクトース寒天培地で培養されたクローン(SG-Leu、HOエンドヌクレアーゼ発現誘導)について、プローブとしてleu2d を用いて、PFGEによって分離された染色体DNA及びアガロースゲル電気泳動によって分離されたXhoI消化後のDNAを解析した。その結果を図5に示す。Aは染色体DNAをPFGEにて分離したもの、BはXhoI消化後のDNAをアガロースゲル電気泳動にて分離したものを示す。
また、サザンブロット法による増幅産物の構造解析を図6に示す。AはPFGEで分離された染色体DNAをRET2プローブを用いて解析したもの、BはFIGEで分離された染色体DNAをleu2dプローブを用いて解析したものを示す。
【0030】
その解析結果(図5)より、leu2d断片を用いて第3染色体が一部改変されている宿主細胞株LS20においては、約345 kbの第3染色体と8.9及び約12.5 kbのXhoI断片が検出された。一方、HOエンドヌクレアーゼ発現を誘導していない陰性対照[図5の3, 4レーン] では増幅単位が挿入された292 kbの第6染色体とそれに由来する11.6 kbのXhoI断片が検出された。
図5Bにおいては、leu2d probeで検出されるXhoI断片(4.4 kb、6.4 kb、8.2 kb、10.3 kb)が観察される。
【0031】
これに対して、HOエンドヌクレアーゼ発現が誘導されたコロニーに由来する細胞株においては、これらと異なるサイズに強いシグナルが見られた。これらの細胞株はそのシグナルのパターンにより、4群に大別できることが分かった。
第1群[レーン 35, 43, 44, 47, 54, 58, 63] は増幅過程の仮説から予測される通りのパターンを示し、そのサイズから第6染色体は5あるいは7個のleu2dを有していると思われる。
【0032】
第2群[レーン 45, 49, 56, 57, 66, 70, 72] ではPFGE解析において非常に強いシグナルが大きな分子サイズの領域に検出され、予想とは異なるXhoI断片が検出された。その後の解析により、これらは予測された配列とそれが一部逆位した配列からなる高度な反復配列を有していることが示唆され、少なくとも数十コピー以上のleu2dを保持していると考えられる。
また、増幅単位の挿入位置のセントロメア側に位置するRET2プローブを用いた解析より、これらは染色体上で増幅していると考えられる(図6A)。
これらはAにおいて約650kb以上の分離限界とウェル付近に非常に強いシグナルを示し、非常に高度に増幅していると思われる。Aの増幅産物のサイズから、clone66は13 copy、 clone49は29 copy、clone57は38〜54 copy、それ以外はそれ以上のleu2dを含んでいると思われる。またこれらはAにおいて明瞭なバンドを形成し、その構造は比較的安定であると考えらる。
【0033】
第3群[レーン 36, 38, 42, 46, 48, 50, 51, 53, 55, 59-62, 64, 65, 67-69] は、増幅単位を含む第6染色体のサイズに変動は無いが、XhoI断片のパターンには変化が見られた。FIGE解析の結果、この群に約23.5 kbの分子が検出された(図6B)。
その後の解析により、この分子は増幅単位の挿入位置のテロメア側の配列がパリンドローム様構造をとったミニ染色体として存在していることが判明した。
上記以外の細胞株を含む第4群はleu2dの増幅を伴わない再編成の結果により生じたものであると推察される。
以上のように、ゲノム上での本発明の遺伝子増幅系において、特に第2群に見られるような高度の増幅反応が観察された。
【0034】
比較例1
2種類の出芽酵母ゲノム相同配列を互いに順方向になるよう配列させ、実施例1と同様な増幅単位を構築した。この増幅単位を用いて実施例2と同様の操作を行った。
この比較例1と実施例2で生成したコロニー及びその細胞数を、図7と図8に示す。Colonyの計数の結果、実施例2は比較例1に比べ約6.3倍のcolonyを形成した。
この比較例1では、図9に示すように、BIR反応が起こらず、遺伝子複製が起きなかったものと考えられる。
【実施例3】
【0035】
実施例1で構築した増幅単位から、2個のHO配列(配列番号1)に挟まれたURA3遺伝子(配列番号2)を除いて、図10に示すような、2種類の出芽酵母ゲノム相同配列(YF257394-YF258454(配列番号3)及びYF267165-YF268121(配列番号4), GeneBank Accession ID; NC 001138)、増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を構築した。
この増幅単位を用いて実施例2と同様の操作を行った。即ち、この増幅単位を出芽酵母細胞株(LS20)に導入し、グルコース(ウラシル除いた)培地とガラクトース(ロイシン除いた)培地に塗布した。前者のプレートから2ヶ(レーン 7,8)、後者のプレートから4ヶ(レーン 77〜80)のコロニーをつり上げ、同じ培地で増殖した後、各クローンの染色体を調べるため、パルス電気泳動により解析した。培養時間は4日程度であった。
その結果を図11に示す。図中、(A)はそのまま泳動したもの、(B)はXhoI制限酵素で切断後泳動したものを示す。前者のプレートのコロニーは、元の菌と同じパターン、後者のプレートのコロニーは全てlue2dが増幅しており、特にクローン レーン78とレーン80は、染色体上でleu2dの高度な増幅が認められる。
【実施例4】
【0036】
図12(A)に示すように、プラスミドpNo42IR(from Dr. Butler DK (Montana State Univ., Genetics 161, 1065-1075 (2002))に、3個のHO配列(DSB、配列番号1)、URA3遺伝子(配列番号2)、ARS1遺伝子(配列番号6)、LUC遺伝子(配列番号7)、CEN4遺伝子(配列番号8)、GFP遺伝子(配列番号9)、及び増幅選択マーカー遺伝子leu2d(配列番号5)が配置された増幅単位を導入し、増幅用プラスミドpBIAを構築した。
このプラスミドpBIAを、酢酸リチウム法を基本としたトランスフォーメーションキット(Frozen-EZ Yeast Transformation II:ZYMO RESEARCH, Cat No. T2001)を用いて、HOエンドヌクレアーゼ遺伝子がGALプロモーター下流に挿入された構造を染色体上に有する出芽酵母細胞株(LS20)に導入した。
この菌をウラシルを除いた培地で対数増殖中期まで増殖させ、遠心して集菌し、滅菌水で2回洗浄した後、先の培地からウラシルとロイシンを除き、糖源をガラクトースとした寒天培地に様々な希釈をして塗布し、プレートを30℃または25℃で培養した。培養時間は4日程度であった。4日〜5日の後、コロニー数を数えた。生菌数は、同様に完全合成グルコース(2%)寒天培地に塗布して求めた。
【0037】
この染色体DNAをPFGE (Pulsed-field gel electrophoresis) あるいはFIGE (Field-inversion gel electrophoresis) によって分離し、また制限酵素XhoIによって消化されたDNAをアガロースゲル電気泳動によって分離して、サザンブロット法にて解析した。サザンブロット法による増幅産物の構造解析を図13に示す。AはPFGEで分離された染色体DNAをRET2プローブを用いて解析したもの、BはFIGEで分離された染色体DNAをleu2dプローブを用いて解析したものを示す。SD-UraはUraを含まないグルコース培地で培養したクローン、SG- Ura, LeuはLeu-Ura-ガラクトース培地で選択したクローンを表す。
【0038】
この泳動図より、本発明のプラスミドpBIAの切断部位(DSB)を切断することにより、lue2d遺伝子を3〜5コピー増幅していることが認められる。
図13(A)のSD-Uraのサンプルにおいて、線状DNAの約17〜19kbの長さのとことろに環状プラスミドpNotBIAとpBIAが観察される。一方、図13(A)のSG-Ura, Leuの約12〜20 kbの位置に、BIAサンプルで、しかもロイシン欠乏培地に塗布したコロニーだけが有するバンドが観察される。一般に線状DNAは環状DNAに比べて濃いバンドを与えるため、上記環状プラスミドpBIAを比較することにより、このバンドが線状DNAであることが分かる。また、その長さは増幅に比例し、図14に示すように、13.39 bpのものはleu2d遺伝子が3コピー、18.85 bpのものは5コピーしたものと考えられる。
図13(B)は、ClaIカットして寒天ゲル電気泳動したものを示し、そのバンドの長さと濃さは、この結果とよく一致する。
【0039】
比較例2
実施例4と同様のプラスミド及び遺伝子を用いて図12(B)の構成のプラスミドpNotBIAを構築した。これを用いて実施例4と同様の操作を行った。
ガラクトース誘導条件下での実施例4と比較例2のプラスミド(pBIA及びpNotBIA)を保持する菌(LS20)から得られたLeu+ Ura+コロニー数を比較した。その結果を図15に示す。プラスミドpBIAを用いた場合に、増幅が多く行われていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の2本鎖DNAを用いることにより、極めて効率よく、短期間で遺伝子増幅を達成できる。この2本鎖DNAが導入された細胞を用いて有用タンパク質の大量生産が出来るため、タンパク製剤や人工抗体の生産に有用である。また、この細胞を用いて、遺伝子の発現を大量に、長期間安定に保つことが出来るため、遺伝子治療に有用である。更に、遺伝子増幅と変異誘導を共役させることで希望通りの機能を有した遺伝子を創造できる。
本発明の方法により、インスリンなど糖鎖を持たないペプチドや蛋白は勿論、エリスロポイエチン、G-CSF、抗体薬などの高生産性微生物の創製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】BIR反応のメカニズムを示す図である。
【図2】本発明の2本鎖DNAの好ましい構成を示す図である。AとA’及びCとC’は互いに相同的組換え可能な配列、BとB’は少なくとも一方に増幅目的遺伝子を含む増幅部分、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所、EとE’はテロメア配列を表す。矢印の方向は遺伝子の配列方向を示す。BとB’が省略されている場合にはA又はCが増幅目的遺伝子であってもよい。
【図3】本発明の遺伝子増幅の様子を示す図である。CENはセントロメア、TELはテロメアを示す。DSB(Double Strand Break)は2本鎖切断箇所を示す。
【図4】遺伝子増幅の終了の様子を示す図である。
【図5】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図6】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEで分離後、RET2プローブで検出したもの、Bは同様にleu2dプローブで検出したものを示す。
【図7】比較例1と実施例2で生成した細胞数を示す図である。横軸は105個の生細胞にHO誘導を行った際の出現colony数を表す。
【図8】比較例1と実施例2で生成したコロニーの写真を示す図である。
【図9】比較例1で用いた増幅単位を示す図である。
【図10】実施例3で用いた2本鎖DNAの構成を示す図である。
【図11】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図12】実施例4で用いたプラスミドpBIAとpNotBIAの構成を示す図である。
【図13】サザンブロット法による増幅産物の構造解析を示す図である。AはPFGEにより分離したもの、BはXhoI消化後のものを示す。パネルAの上の数字はクローン番号を示す。
【図14】プラスミドpBIAを用いた場合の増幅生成物を示す。
【図15】プラスミド(pBIA及びpNotBIA)を保持する菌(LS20)から得られたLeu+ Ura+コロニー数を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A−C及びA’−C’又はA’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、A及びCの少なくとも一方が増幅目的遺伝子であり、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNA。
【請求項2】
A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNA。
【請求項3】
前記BとB’が、互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅目的遺伝子をそれぞれ少なくとも一種含む増幅部分を表す請求項2に記載の2本鎖DNA。
【請求項4】
前記BとB’が更に同一方向に配列した増幅選択遺伝子を含む請求項3に記載の2本鎖DNA。
【請求項5】
A−C−A’−C’(式中、記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項1に記載の2本鎖DNA。
【請求項6】
A−C−D−A’−C’(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項5に記載の2本鎖DNA。
【請求項7】
A−B−C−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項2〜4のいずれか一項に記載の2本鎖DNA。
【請求項8】
A−B−C−D−A’−B’−C’(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項7に記載の2本鎖DNA。
【請求項9】
E’−A−C及びA’−C’−E若しくはA’−C’−Eの逆方向配列、又はA−C−E及びE’−A’−C’若しくはE’−A’−C’の逆方向配列(式中、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項1に記載の2本鎖DNA。
【請求項10】
D−E’−A−C−D−A’−C’−E−D、D−E’−A−C−D−E’−C’’−A’’−D、D−A−C−E−D−E’−A’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−D(式中、C’’−A’’はA’−C’の逆方向配列を表す。)の配列から成る請求項9に記載の2本鎖DNA。
【請求項11】
E’−A−B−C及びA’−B’−C’−E若しくはA’−B’−C’−Eの逆方向配列、又はA−B−C−E及びE’−A’−B’−C’若しくはE’−A’−B’−C’の逆方向配列(式中、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項2〜4のいずれか一項に記載の2本鎖DNA。
【請求項12】
D−E’−A−B−C−D−A’−B’−C’−E−D、D−E’−A−B−C−D−E’−C’’−B’’−A’’−D、D−A−B−C−E−D−E’−A’−B’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−D(式中、C’’−B’’−A’’はA’−B’−C’の逆方向配列を表す。)の配列から成る請求項11に記載の2本鎖DNA。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の2本鎖DNAを含む組換えベクター。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の2本鎖DNAが導入された形質転換体。
【請求項15】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の2本鎖DNAが導入された組換えプラスミド。
【請求項16】
請求項14に記載の形質転換体を用意する段階、及び該遺伝子を増幅する段階から成る遺伝子増幅法。
【請求項17】
前記配列がA−C−D−A’−C’又はA−B−C−D−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)で表される場合、前記遺伝子を増幅する段階において、形質転換体にエンドヌクレアーゼを作用させる請求項16に記載の遺伝子増幅法。
【請求項18】
請求項15に記載のプラスミドを細菌に導入する段階、及びこの細菌を培養する段階から成る遺伝子増幅法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法により得られた細胞又は細菌を培養する段階から成る、増幅目的遺伝子がコードするタンパク質を製造する方法。
【請求項1】
A−C及びA’−C’又はA’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、A及びCの少なくとも一方が増幅目的遺伝子であり、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNA。
【請求項2】
A−B−C及びA’−B’−C’又はA’−B’−C’を逆方向に配列させた配列(式中、AとA’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片、B又はB’はその少なくとも一方に増幅目的遺伝子を少なくとも一種含む増幅部分、CとC’は互いに相同的組換え可能な2本鎖DNAであって一方を他方に対して逆方向に配列させた2本鎖DNA断片を表し、これらの間に任意のDNA配列が挿入されていてもよい。)を有する2本鎖DNA。
【請求項3】
前記BとB’が、互いに相同的組換え可能な遺伝子であって同一方向に配列した増幅目的遺伝子をそれぞれ少なくとも一種含む増幅部分を表す請求項2に記載の2本鎖DNA。
【請求項4】
前記BとB’が更に同一方向に配列した増幅選択遺伝子を含む請求項3に記載の2本鎖DNA。
【請求項5】
A−C−A’−C’(式中、記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項1に記載の2本鎖DNA。
【請求項6】
A−C−D−A’−C’(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項5に記載の2本鎖DNA。
【請求項7】
A−B−C−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項2〜4のいずれか一項に記載の2本鎖DNA。
【請求項8】
A−B−C−D−A’−B’−C’(式中、Dはエンドヌクレアーゼによる切断箇所を少なくとも一つ有する2本鎖DNA断片を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項7に記載の2本鎖DNA。
【請求項9】
E’−A−C及びA’−C’−E若しくはA’−C’−Eの逆方向配列、又はA−C−E及びE’−A’−C’若しくはE’−A’−C’の逆方向配列(式中、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項1に記載の2本鎖DNA。
【請求項10】
D−E’−A−C−D−A’−C’−E−D、D−E’−A−C−D−E’−C’’−A’’−D、D−A−C−E−D−E’−A’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−D(式中、C’’−A’’はA’−C’の逆方向配列を表す。)の配列から成る請求項9に記載の2本鎖DNA。
【請求項11】
E’−A−B−C及びA’−B’−C’−E若しくはA’−B’−C’−Eの逆方向配列、又はA−B−C−E及びE’−A’−B’−C’若しくはE’−A’−B’−C’の逆方向配列(式中、Eはテロメア配列であって、E’はEの逆方向配列を表し、その他の記号は上記と同様である。)の配列から成る請求項2〜4のいずれか一項に記載の2本鎖DNA。
【請求項12】
D−E’−A−B−C−D−A’−B’−C’−E−D、D−E’−A−B−C−D−E’−C’’−B’’−A’’−D、D−A−B−C−E−D−E’−A’−B’−C’−D、又はD−A−B−C−E−D−C’’−B’’−A’’−E−D(式中、C’’−B’’−A’’はA’−B’−C’の逆方向配列を表す。)の配列から成る請求項11に記載の2本鎖DNA。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の2本鎖DNAを含む組換えベクター。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の2本鎖DNAが導入された形質転換体。
【請求項15】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の2本鎖DNAが導入された組換えプラスミド。
【請求項16】
請求項14に記載の形質転換体を用意する段階、及び該遺伝子を増幅する段階から成る遺伝子増幅法。
【請求項17】
前記配列がA−C−D−A’−C’又はA−B−C−D−A’−B’−C’(式中、記号は上記と同様である。)で表される場合、前記遺伝子を増幅する段階において、形質転換体にエンドヌクレアーゼを作用させる請求項16に記載の遺伝子増幅法。
【請求項18】
請求項15に記載のプラスミドを細菌に導入する段階、及びこの細菌を培養する段階から成る遺伝子増幅法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法により得られた細胞又は細菌を培養する段階から成る、増幅目的遺伝子がコードするタンパク質を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図8】
【図11】
【図13】
【国際公開番号】WO2005/061703
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516431(P2005−516431)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016833
【国際出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/016833
【国際出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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