説明

遺伝子導入剤

【課題】細胞内に取り込まれた後、酵素作用で分解されることが可能な遺伝子導入剤を提供する。
【解決手段】ゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入したカチオン性ゼラチンよりなる遺伝子導入剤。ゼラチンのアミノ基に芳香環を介してカチオン性高分子鎖としてポリアクリルアミド系高分子ブロック鎖が結合している。マイナス電荷を帯びた遺伝子が静電的に結合してポリプレックスを形成する。主鎖がゼラチンよりなるため、生体内で酵素の作用によって分解される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入剤に係り、特に、細胞内において酵素作用で分解されて細胞外へ排泄されることが可能な遺伝子導入剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒト疾患の分子遺伝学的要因が明らかになるにつれ、遺伝子治療研究がますます重要視されている。遺伝子治療法は標的とする部位でのDNAの発現を目的としており、いかにDNAを標的部位に到達させるか、いかにDNAを標的部位に効率的に導入し、当該部位で機能的に発現させるかということが重要となる。
【0003】
従来、目的とする特定の細胞種へ遺伝子を導入する技術としてはウイルスベクター法が知られているが、以下に述べるような欠点がある。
【0004】
(1) ウイルスベクターは、一般に、合成工程が複雑で感染の危険性がある。また、ウイルス内には挿入できないような大きな核酸が導入できない。例えばアデノウイルスでは、導入サイズは9000b以下である。
【0005】
(2) レセプターを介して細胞へ侵入するタイプのウイルスの場合、レセプターが発現されていない細胞へは導入できない。目標の細胞のレセプターが陽性でなければ、ウイルスベクター側の改変が必要である。また、レセプター自体はCAR,CD46など種々の細胞で共通して発現しているため、細胞選択性としては非特異的な面もある。また、遺伝子治療を目指して研究をする場合に、マウスなど小動物での実験が必須であるが、ヒト細胞に存在するレセプターがマウスに存在しなければ実験が成立しない;細胞の種類によってレセプター発現量が異なり、これが導入効率に影響してしまう;アデノウイルスの設計には主としてCAR(コサッキーアデノウイルスレセプター)を利用するが、疾病によってCARの発現量が少ない患者も多く、遺伝子治療への応用に制約を受けることもある;といった欠点がある。
【0006】
(3) レトロウイルスの場合は、分裂期の細胞にのみ導入が可能で、休止期の細胞へは応用できない;染色体への組み込みが可能で、免疫原性はないが、不安定で生体内使用には不適である;といった欠点がある。
【0007】
そこで、近年、下記特許文献1などの如く非ウイルス系のベクターが種々提案されているが、いずれも細胞内に取り込まれた後に分解されにくい。
【特許文献1】特開2004−81039号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、細胞内に取り込まれた後、酵素作用で分解されることが可能な遺伝子導入剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遺伝子導入剤は、ゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入したカチオン性ゼラチンよりなる。
このゼラチンのアミノ基に前記カチオン性高分子鎖が導入されていることが好ましい。
このアミノ基に対し芳香環が結合し、この芳香環にカチオン性高分子鎖が結合していることが好ましい。
この芳香環は、ベンゼン環が好ましい。
この高分子鎖は、ベンゼン環に対して1〜2個導入されていることが好ましい。
このベンゼン環は、ゼラチン1分子に対して1〜30個導入されていることが好ましい。
このカチオン性高分子鎖は、ポリアクリルアミド系高分子ブロック鎖又はポリアクリレート系高分子ブロック鎖であることが好ましい。
このカチオン性高分子鎖は、ポリ3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドであり、その分子量は500〜50,000であることが好ましい。
この場合、ゼラチン分子にN,N−ジエチルジチオカルバメート基を導入した後、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを重合することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遺伝子導入剤は、ゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入したものである。DNAはマイナスの電荷を帯びているため、このカチオン性高分子鎖と静電的に結合し、遺伝子を保持したベクターとなる。
このベクターが生体の細胞に取り込まれた場合、この遺伝子導入剤の主鎖を構成するゼラチンが酵素によって分解され、分解物が細胞外へ排泄され、遺伝子が細胞内に残留する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の遺伝子導入剤の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明の遺伝子導入剤は、ゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入したカチオン性ゼラチンよりなる。このゼラチンとしては、分子量が5千〜10万、アミノ基約10〜100個/1分子程度の通常のゼラチンでよい。
【0013】
このゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入するには、ゼラチンのアミノ基にカチオン性高分子鎖を導入するのが好ましく、特にこのアミノ基に芳香環を結合させ、この芳香環にカチオン性高分子鎖を結合させるのが好ましい。この芳香環としてはベンゼン環が好適である。このベンゼン環は、ゼラチン1分子当り1〜30個導入されることが好ましい。
【0014】
この芳香環に結合したカチオン性高分子鎖としては、ビニル系ポリマー鎖、特に分子量が500〜50,000のポリアクリルアミド系高分子ブロック鎖又はポリアクリレート系高分子ブロック鎖が好適であり、具体的にはポリ3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが好適である。このポリ3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドは、1個のベンゼン環に対し1〜2個、特に1個結合させることが好ましい。
【0015】
ゼラチンにベンゼン環を導入するには、ゼラチンのアミノ基に対し芳香族カルボン酸誘導体を、該芳香族カルボン酸誘導体のカルボキシル基との縮合によって導入するのが好ましい。具体的には、ゼラチンの側鎖のアミノ基に芳香族カルボン酸誘導体のカルボキシル基を、水溶性カルボジイミドであるN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)の作用で縮合させて形成されるアミド結合によって導入するのが好ましい。
【0016】
この芳香族カルボン酸誘導体としては、ハロゲン化アルキル−フェニル酢酸誘導体、具体的には4−ブロモメチル−フェニル酢酸ナトリウムが好適である。
【0017】
なお、芳香環の導入量は、導入反応前後の反応液の最大吸収波長(4−ブロモメチル−フェニル酢酸ナトリウムの場合は245nm)における吸光度の差から計算することができる。
【0018】
反応生成物としてのハロゲン化アルキル−フェニル酢酸導入ゼラチン(以下、1次修飾ゼラチンということがある)は、透析によって精製されることが好ましい。
【0019】
この1次修飾ゼラチンに対しカチオン性高分子鎖を導入するには、1次修飾ゼラチンのハロゲン化アルキル基に対し、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団を導入して2次修飾ゼラチンとし、これにビニル系モノマーを光照射リビング重合させるのが好適である。
【0020】
なお、このN,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団は、光照射によりラジカルを発生させる重合開始剤、連鎖移動剤としての機能と共に、成長末端と結合して成長を停止する機能を有し、さらに光照射が停止すると重合を停止させる重合開始・重合停止剤として機能する。
【0021】
ビニル系モノマーとしては、アクリルアミド系モノマー又はアクリレート系モノマーが好適であり、具体的には3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドCH=CHCONHCN(CHが好ましい。
【0022】
2次修飾ゼラチンと上記ビニル系モノマーとを反応させるには、上記2次修飾ゼラチンとビニル系モノマーを含んでなる原料溶液を調製し、これに光照射することによって、N,N−ジアルキル−ジチオカルバミルメチル分子団に対しビニル系モノマーが結合した反応生成物(3次修飾ゼラチン)を生成させる。
【0023】
このビニル系モノマーの該原料溶液中の濃度は70重量%以上、例えば70〜99重量%が好適である。
【0024】
2次修飾ゼラチンの濃度は10〜1000mM/L程度が好適である。
【0025】
照射する光の波長は240〜300nmが好適である。光の照射時間は照射強度にも依存するが、1〜60分程度が好適であり、1μW/cm〜1mW/cm程度の低い照射強度で1分〜30分程度が特に好適である。
【0026】
この光照射により、反応液中に目的とする3次修飾ゼラチンが生成するので、必要に応じ透析により精製する。
【0027】
この3次修飾ゼラチンは、ゼラチンを骨格とし、それに高分子鎖が結合したものであり、その分子量は、高分子鎖の鎖数によるが、3千〜50万、特に3千〜7万、とりわけ3千〜6万程度が好ましい。
【0028】
芳香環に連なる高分子鎖を構成する単量体の数は、その単量体の種類や反応性等によっても異なるが、ポリアクリルアミド系高分子ブロック鎖を構成する単量体数は5〜1000程度であることが好ましい。
【0029】
本発明の遺伝子導入剤は、この3次修飾ゼラチンよりなる。
この遺伝子導入剤は、この高分子鎖がカチオン性であるため、アニオン性に帯電している核酸が静電的に結合し、ポリプレックスが形成される。
【0030】
以下に、この核酸について説明する。
【0031】
[核酸]
核酸は、細胞に導入されることによりその細胞内で機能を発現することができるような形態で用いる。例えばDNAの場合、導入された細胞内で当該DNAが転写され、それにコードされるポリペプチドの産生を経て機能発現されるように当該DNAが配置されたプラスミドとして用いる。好ましくは、プロモーター領域、開始コドン、所望の機能を有する蛋白質をコードするDNA、終止コドンおよびターミネーター領域が連続的に配列されている。
【0032】
所望により2種以上の核酸をひとつのプラスミドに含めることも可能である。
【0033】
この核酸としては、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチド特にDNAが好適であるが、リボ核タンパク質であってもよい。
【0034】
核酸の好ましい例としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV1−TK遺伝子),p53癌抑制遺伝子及びBRCA1癌抑制遺伝子やサイトカイン遺伝子としてTNF−α遺伝子,IL−2遺伝子,IL−4遺伝子,HLA−B7/IL−2遺伝子,HLA−B7/B2M遺伝子,IL−7遺伝子,GM−CSF遺伝子,IFN−γ遺伝子及びIL−12遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにgp−100,MART−1及びMAGE−1などの癌抗原ペプチド遺伝子が癌治療に利用できる。
【0035】
また、VEGF遺伝子,HGF遺伝子及びFGF遺伝子などのサイトカイン遺伝子並びにc−mycアンチセンス,c−mybアンチセンス,cdc2キナーゼアンチセンス,PCNAアンチセンス,E2Fデコイやp21(sdi−1)遺伝子が血管治療に利用できる。かかる一連の遺伝子は当業者には良く知られたものである。
【0036】
また、アンチセンスによるリプレッシングの他に、21〜23塩基の二本鎖RNAを使用したRNA干渉によるmRNA破壊などに利用することも可能である。
【0037】
[ポリプレックスの形成]
本発明の遺伝子導入剤と核酸とを複合させてポリプレックスを形成するには、この遺伝子導入剤の濃度1〜1000μg/mL程度の分散液に対し、常温にて核酸を添加し、混合すればよい。
【0038】
[生体への投与]
上述のような遺伝子導入剤と核酸とのポリプレックスにが生体内へ投与される。
【0039】
本発明において、核酸を導入する対象として望ましい「細胞」としては、当該核酸の機能発現が求められるものであり、このような細胞としては、幹細胞であってもよく、また、使用する核酸(すなわちその機能)に応じて、例えば心筋細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、骨格筋細胞、血管内皮細胞、骨髄細胞、骨細胞、血球幹細胞、血球細胞等であってもよい。また、単球、樹状細胞、マクロファージ、組織球、クッパー細胞、破骨細胞、滑膜A細胞、小膠細胞、ランゲルハンス細胞、類上皮細胞、多核巨細胞等、消化管上皮細胞・尿細管上皮細胞などであってもよい。
【0040】
本発明の遺伝子導入剤は任意の方法で生体に投与することができる。
【0041】
体内へ挿入するデバイスとしては、経皮的に患部付近の組織へ刺入するものや、血管カテーテル、ステントグラフトのように血管内へ留置するものなどがあるが、この限りではない。
【0042】
当該投与方法としては静脈内又は動脈内への注入が特に好ましいが、筋肉内、脂肪組織内、皮下、皮内、リンパ管内、リンパ節内、体腔(心膜腔、胸腔、腹腔、脳脊髄腔等)内、骨髄内への投与の他に病変組織内に直接投与することも可能である。
【0043】
この遺伝子導入剤を有効成分とする医薬は、更に必要に応じて製剤上許容し得る担体(浸透圧調整剤,安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等)と混合することが可能である。これら担体は公知のものが使用できる。
【0044】
また、この遺伝子導入剤を有効成分とする医薬は、含まれる核酸の種類が異なる2種以上の核酸含有複合体を含めたものも包含される。このような複数の治療目的を併せ持つ医薬は、多様化する遺伝子治療の分野で特に有用である。
【0045】
投与量としては、動物、特にヒトに投与される用量は目的の核酸、投与方法および治療される特定部位等、種々の要因によって変化する。しかしながら、その投与量は治療的応答をもたらすに十分であるべきである。
【0046】
この遺伝子導入剤は、好ましくは遺伝子治療に適用される。適用可能な疾患としては、当該複合体に含められる核酸の種類によって異なるが、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、動脈拡張術後再狭窄等の病変を生じる循環器領域での疾患に加え、癌(悪性黒色腫、脳腫瘍、転移性悪性腫瘍、乳癌等)、感染症(HIV等)、単一遺伝病(嚢胞性線維症、慢性肉芽腫、α1−アンチトリプシン欠損症、Gaucher病等)等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0048】
[実施例1]
(1) 1次修飾ゼラチン(4−ブロモメチル−フェニル酢酸化ゼラチン)の合成
ゼラチン(分子量95000、アミノ基量約37個/分子)5グラムを水60mLへ溶解し、氷冷した。4−ブロモメチル−フェニル酢酸ナトリウム0.49グラム及びN-エチル-N’(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド0.60グラムを水200mLへ溶解し、氷冷下でゼラチン水溶液と混合した。攪拌後1M NaOHで溶液のpHを9に調整し、そのまま24時間攪拌した。
【0049】
反応溶液を水で希釈して全量を1Lとし、透析膜を使用して72時間脱イオン水で透析を行い、0.2μmフィルターで濾過後に凍結乾燥してp−クロロメチル−フェニル酢酸化ゼラチンよりなる1次修飾ゼラチンを得た。誘導体化の前後の水溶液の245nmの吸光度の差から芳香環の導入量を計算し、4−ブロモメチル−フェニル酢酸の導入率は約25%と計算された(ゼラチン1分子あたりに約10個)。
【0050】
【化1】

【0051】
(2) 2次修飾ゼラチンの合成(1次修飾ゼラチンのN,N-ジエチルジチオカルバモイルメチルフェニル化)
N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム31.8gをエタノール1L中へ溶解した。ここへ(1)で合成した1次修飾ゼラチン2.5gグラム加え、室温で4日間攪拌した。
【0052】
反応溶液を水で希釈して全量を1Lとし、透析膜を使用して72時間脱イオン水で透析を行い、0.2μmフィルターで濾過後に凍結乾燥してp−(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)−フェニル酢酸化ゼラチン(2次修飾ゼラチン)を得た。
【0053】
【化2】

【0054】
(3) 3次修飾ゼラチンよりなる遺伝子導入剤の合成
モノマーの3−(N,N−ジメチルアミノ)-プロピルアクリルアミドは、減圧蒸留で精製した。上記2次修飾ゼラチンすなわちp−(N,N−ジエチルジチオカルバミルメチル)−フェニル酢酸化ゼラチン5.0gをメタノール約150mLに溶解し、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド50.0gを加えて混合し、全量をメタノールで希釈して300mLに調整した。石英セル中で激しく攪拌しながら高純度窒素ガスで5分間パージした。200W高圧水銀灯で10分間の光照射を行った。照度は照度計(UVR−1,TOPCON,Tokyo,Japan)を使用して1mW/cm(250nm)に調整した。
【0055】
重合溶液を透析膜を使用して72時間脱イオン水で透析を行い、0.2μmフィルターで濾過後に凍結乾燥して精製し、3次修飾ゼラチンを得た。
【0056】
【化3】

【0057】
(4) 遺伝子導入実験
遺伝子発現効率はホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子を組み込んだpGL3−コントロールプラスミドを用いることにより、相対発光強度を測定して求めた。
【0058】
pGL3-コントロール、3次修飾ゼラチンはそれぞれ個別にTE・EDTAバッファーへ溶解した。DNAの単位重量あたりの陰性電荷数はpGL3コントロール塩基対数(5650bp)と核酸の平均的分子量(660Da)より算出し、3次修飾ゼラチンのイオン交換容量は中和滴定により求め、カチオンとアニオンの混合比は約5.0となるよう調整して両溶液を混合してポリプレックスを形成させた。この溶液から25μLを分取して200μLのOPTI-MEMを混合した。
【0059】
90%コンフェルト状態の培養COS1細胞を6×104個/mL濃度にDMEMで調整し、24Wellプレートへ1mL/Well播種し、24時間培養を行った。
【0060】
培養24時間後に培地を除去し、1mLのPBSで2回洗浄し、調製したOPTI−MEM溶液を1Wellあたりに225μLずつ滴下し、37℃で3時間インキュベートした。DNA量は1Wellあたりに0.5μgをとなるように溶液濃度を調整した。
【0061】
3時間後、24Wellプレートの各WellからOPTI−MEM培地を除去し、1mLのPBSで2回洗浄した後、DMEM培地(10%FCS及び1%AB抗生物質添加)を1mLを加え、48時間培養した。48時間後、培地を除去して1mLのPBSで2回洗浄後、プロメガ社製Luciferase
cell culture lysis液を1Wellあたりに200μLずつ加え30分間静置し、エッペンドルフ遠沈管へ移し遠心分離(4℃,15000rpm)した。
【0062】
遠心分離後、上澄を5μLずつマイクロプレートへ移し、アトー社製ルミネセンサーJNRIIで発光量を測定した。また比色分析でタンパク定量を行い、mgタンパク量あたりの発光強度で補正してルシフェラーゼ活性とした結果、6.0×10〜1.0×109
RLU/mg proteinの遺伝子導入活性があることがわかった。
【0063】
(5) ポリマー主鎖の分解挙動
(3)で合成したポリマーを4N塩酸へ2%溶液となるように溶解した。この溶液20mLを50mL滅菌ビンへ入れ、高圧蒸気滅菌処理をした。濾過により沈殿物を除去してバイアル瓶へ移し、シリカゲルを充填したデシケーター中へ入れ減圧し、7日間放置した。クエン酸緩衝溶液へ溶解し、ポストラベル法(オルトフタルアルデヒド/メルカプトエタノール発色)によるイオン交換高速液体クロマトグラフィーによりアミノ酸分析を行った結果、ゼラチン主鎖の加水分解的切断によるアミノ酸までの分解が確認され、その組成は修飾前のゼラチンのアミノ酸組成とほぼ同一のものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンの側鎖にカチオン性高分子鎖を導入したカチオン性ゼラチンよりなる遺伝子導入剤。
【請求項2】
請求項1において、前記ゼラチンのアミノ基に前記カチオン性高分子鎖が導入されていることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項3】
請求項2において、前記アミノ基に対し芳香環が結合し、この芳香環にカチオン性高分子鎖が結合していることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項4】
請求項3において、前記芳香環がベンゼン環であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項5】
請求項4において、前記高分子鎖はベンゼン環に対して1〜2個導入されていることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項6】
請求項5において、前記高分子鎖はベンゼン環に対して1個導入されていることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項7】
請求項6において、前記ベンゼン環はゼラチン1分子に対して1〜30個導入されていることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記カチオン性高分子鎖は、ポリアクリルアミド系高分子ブロック鎖又はポリアクリレート系高分子ブロック鎖であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項9】
請求項8において、前記カチオン性高分子鎖が、ポリ3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドであることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項10】
請求項9において、前記カチオン性高分子鎖の分子量が500〜50,000であることを特徴とする遺伝子導入剤。
【請求項11】
請求項9又は10において、前記ゼラチン分子にN,N−ジエチルジチオカルバメート基を導入した後、3−N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを重合したことを特徴とする遺伝子導入剤。

【公開番号】特開2007−320913(P2007−320913A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153635(P2006−153635)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】