説明

遺伝子改変された非ヒト哺乳動物および非ヒト細胞

遺伝子改変された哺乳動物が、記載される。この哺乳動物は、マンナン結合レクチン会合型セリンプロテアーゼであるMASP−2を欠く。その哺乳動物の生成のための方法および構築物もまた、記載される。そのような哺乳動物は、補体系の障害のためのモデルとして有用であり、そしてそのような障害のための処置の同定において有用である。会合型タンパク質Map19を欠く哺乳動物もまた、記載される。そのような哺乳動物は、MASP−2もまた欠き得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物(特に、遺伝子改変された非ヒト齧歯類(例えば、マウス))に関し、これらは、いかなる内因性のマンナン結合レクチン会合型(mannan−binding lectin associated)セリンプロテアーゼ2(MASP−2)ポリペプチドも生成しない。本発明はまた、遺伝子改変された非ヒト細胞(特に、胚性幹細胞)(特に、齧歯類細胞(例えば、マウス細胞))に関し、これらは、いかなる内因性MASP−2ポリペプチドも生成しない。本発明はまた、遺伝子改変された非ヒト細胞(特に、胚性幹細胞)およびそれらから生成される遺伝子改変された非ヒト哺乳動物、ならびに内因性MASP−2遺伝子がゲノムから欠失しているかまたは破壊されている非ヒト哺乳動物および非ヒト細胞の生成における上記の使用に関する。本発明の局面はまた、いかなる内因性のマンナン結合レクチン会合型タンパク質19(MAp19)タンパク質も生成しない、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物および非ヒト細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
補体系は、微生物感染および他の急性傷害に対する炎症性応答を開始して増幅するための早期作用機構を提供する(Liszewski,M.K.およびJ.P.Atkinson,1993,Fundamental Immunology,Third Edition(W.E.Paul編)Raven Press,Ltd.,New York)。補体活性化は、潜在的病原体に対する有益な最前線の防御を提供するが、防御的炎症性応答を促進する補体の活性化はまた、宿主に対して潜在的な脅威も示し得る(非特許文献1;非特許文献2)。例えば、C3タンパク質分解性産物およびC5タンパク質分解性産物は、好中球を動員して活性化する。これらの活性化された細胞は、破壊的酵素を無差別に放出して、器官損傷を引き起こし得る。さらに、補体活性化は、近傍の宿主細胞上および微生物標的上における溶解性補体成分の沈着を引き起こし得、これによって、宿主細胞の溶解が生じる。
【0003】
補体系は、多数の急性疾患状態および慢性疾患状態(心筋梗塞、脳卒中後の血管再生、ARDS、再灌流傷害、敗血症性ショック、熱傷後の毛細血管漏出、心肺バイパス後の炎症、移植拒絶、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、重症筋無力症、およびアルツハイマー病が挙げられる)の病因に寄与すると関係付けられている。これらの状態のほぼすべてにおいて、補体は、原因ではないが、病因に関与するいくつかの要因のうちの1つではある。それにも関わらず、補体活性化は、主要な病理学的機構であり得、これらの疾患状態のうちの多くにおける臨床的コントロールのための有効な目標を示す。種々の疾患状態における補体媒介性組織傷害の重要性について高まりつつある認識は、有効な補体阻害薬物についての必要性を明確に示す。補体活性化を特異的に標的化して阻害する薬物は、ヒトのための使用について認可されていない。
【0004】
現在、補体系は、3つの別個の経路(古典的経路、レクチン経路、および副経路)を介して活性化され得ることが、広く受け入れられている。古典的経路は、通常は、外来粒子(すなわち、抗原)に結合している抗体によって誘発され、従って、これには、特定の抗体の生成のためにその抗原に前もって曝露されていることが必要である。古典的経路の活性化は、免疫応答の発生に関係するので、古典的経路は、後天的免疫系の一部である。対照的に、レクチン経路および副経路は、クローン性(clonal)免疫とは独立しており、先天性免疫系の一部である。
【0005】
古典的経路の活性化における第一の段階は、抗原結合型IgGおよび抗原結合型IgMに対する、特異的認識分子C1qの結合である。補体系の活性化は、セリンプロテアーゼであるチモーゲンの連続的活性化を生じる。C1qは、C1と呼ばれる複合体として、C1rおよびClsというセリンプロテアーゼプロ酵素と会合する。免疫複合体に対するC1qの結合の際に、C1rのArg−Ile部位の自己タンパク質分解性切断の後に、C1sのC1r活性化が生じ、これによって、C4およびC2を切断する能力を獲得する。C4が2つのフラグメント(C4aおよびC4bと呼ばれる)へと切断されると、C4bフラグメントは、隣接するヒドロキシル基またはアミノ基と共有結合を形成することが可能になり、その後、活性化したC2のC2bフラグメントとの非共有結合を介してC3コンバターゼ(C4b2b)が生成する。C3コンバターゼ(C4b2b)は、C3を活性化して、C5コンバターゼ(C4b2b3b)の生成と、微生物溶解を引き起こし得る膜攻撃複合体(C5b−9)の形成とをもたらす。活性化形態のC3およびC4(C3bおよびC4b)は、外来標的表面上に共有結合的に沈着され、これらは、複数の食細胞上の補体レセプターによって認識される。
【0006】
独立して、レクチン経路による補体系の活性化における第一の段階もまた、特定の認識分子の結合であり、この後に、会合型セリンプロテアーゼが活性化する。しかし、C1qによる免疫複合体の結合ではなく、レクチン経路における上記認識分子は、血清糖質結合タンパク質(マンナン結合レクチン(MBL)、H−フィコリン、M−フィコリン、およびL−フィコリン)である(非特許文献3)。Ikedaらは、C1qと同様に、MBLが、酵母のマンナンで覆われた赤血球に結合する際にC4依存的様式で補体系を活性化し得ることを、初めて実証した(非特許文献4)。MBL(コレクチンタンパク質ファミリーのメンバーである)は、ピラノース環の赤道面において方向付けられた3−ヒドロキシル基および4−ヒドロキシル基によって糖質と結合する、カルシウム依存性レクチンである。従って、MBLに対する著名なリガンドは、D−マンノースおよびN‐アセチル−D−グルコサミンであるが、この立体的要件に適合しない糖質は、MBLに対して検出可能な親和性を有さない(非特許文献5)。MBLと一価糖との間の相互作用は、非常に弱く、解離定数は、代表的は、2mMの範囲にある。MBLは、複数の単糖残基と同時に相互作用することによって、グリカンリガンドへの緊密な特異的結合を達成する(非特許文献6)。MBLは、微生物(例えば、細菌、酵母、寄生生物、および特定のウイルス)を共通して飾る糖質パターンを認識する。対照的に、MBLは、D−ガラクトースおよびシアリン酸(哺乳動物の血漿および細胞表面糖タンパク質上に存在する「成熟」複合糖結合体を通常は飾る、最後から2番目の糖および最後の糖である)を認識しない。この結合特異性は、自己活性化から防御するのを助けると考えられる。しかし、MBLは、哺乳動物細胞の小胞体およびゴルジ装置中に封鎖されているN結合型糖タンパク質および糖脂質上にある高マンノース「前駆体」グリカンのクラスターに対して、高い親和性で結合する(非特許文献7)。従って、損傷した細胞は、MBL結合を介するレクチン経路活性化のための潜在的標的である。
【0007】
フィコリンは、MBLとは異なる型のレクチンドメイン(フィブリノーゲン様ドメインと呼ばれる)を保有する。フィコリンは、Ca++非依存性様式で糖残基に結合する。ヒトにおいて、3種類のフィコリン(L−フィコリン、M−フィコリン、およびH−フィコリン)が、同定されている。血清フィコリンであるL−フィコリンおよびH−フィコリンの両方が、N−アセチル−D−グルコサミンに対して特異性を共通して有するが、H−フィコリンはまた、N−アセチル−D‐ガラクトサミンにも結合する。L−フィコリン、H−フィコリン、およびMBLの糖特異性の差は、種々のレクチンが、相補的でありかつ標的が異なるが重複する、糖結合体であり得ることを意味する。この概念は、レクチン経路における公知のレクチンのうち、L−フィコリンのみが、リポテイコ酸(すべてのグラム陽性細菌において見出される細胞壁糖結合体である)に特異的に結合するという、最近の報告によって支持される(非特許文献8)。コレクチン(すなわち、MBL)およびフィコリンは、アミノ酸配列の有意な類似性を有さない。しかし、この2つのタンパク質群は、類似するドメイン構成を有し、C1qと同様に、オリゴマー構造体になるようにアセンブルする。このオリゴマー構造体は、多部位結合の可能性を最大にする。MBLの血清濃度は、健常集団において大きく変動し、これは、MBL遺伝子のプロモーター領域およびコード領域の両方における多型/変異によって遺伝的に制御される。急性期タンパク質として、MBLの発現は、炎症の間にさらにアップレギュレートされる。L−フィコリンは、MBLと同様の濃度で血清中に存在する。従って、レクチン経路のL−フィコリン部門は、潜在的には、MBL部門と強さが匹敵する。MBLおよびフィコリンはまた、オプソニンとして機能し得る。オプソニンは、これらのタンパク質と食細胞レセプターとの相互作用を必要とする(非特許文献9;非特許文献10)。しかし、食細胞上のレセプターの正体は、確立されていない。
【0008】
ヒトMBLは、そのコラーゲン様ドメインを介して、独特なC1r/C1s様セリンプロテアーゼ(MBL会合型(associated)セリンプロテアーゼ(MASP)と呼ばれる)と特異的かつ高親和性の相互作用を形成する。現在までに、3種のMASPが、記載されている。まず、1つの酵素「MASP」が、同定されており、補体カスケードの開始を担う(すなわち、C2およびC4を切断する)酵素として特徴付けられている(非特許文献11)。後に、MASPは、実際には、2つのプロテアーゼ(MASP−1およびMASP−2)の混合物であることがわかった(非特許文献12)。しかし、MBL−MASP−2複合体のみで、補体活性化のためには十分であることが、実証された(非特許文献13)。さらに、MASP−2のみが、高い割合でC2およびC4を切断した(非特許文献14)。従って、MASP−2は、C4およびC2を活性化してC3コンバターゼであるC4b2aを生成することを担う、プロテアーゼである。このことが、C1複合体との重要な差異である。C1複合体において、2つの特定のセリンプロテアーゼ(C1rおよびC1s)の協働作用が、補体系の活性化をもたらす。最近、第三の新規なプロテアーゼであるMASP−3が、単離された(非特許文献15)。MASP−1およびMASP−3は、同じ遺伝子の選択的スプライス産物である(非特許文献16)。MASP−1およびMASP−3の生物学的機能は、解明されるべきままの状態である。
【0009】
MASPは、C1rおよびC1s(C1複合体の酵素成分である)と同じドメイン構成を共有する(非特許文献17)。これらのドメインとしては、N末端C1r/C1s/ウニ(sea urchin)Uegf/骨形成タンパク質(CUB)ドメイン、上皮増殖因子様ドメイン、第二CUBドメイン、直列型補体制御タンパク質ドメイン、およびセリンプロテアーゼドメインが挙げられる。C1プロテアーゼにおいてと同様に、MASP−2の活性化は、セリンプロテアーゼドメインに隣接したArg−Ile結合の切断を介して生じ、これによって、この酵素は、ジスルフィド結合したA鎖およびB鎖へと分割される。後者は、セリンプロテアーゼドメインからなる。最近、MASP−2の遺伝的に決定された欠損が、記載された(非特許文献18)。一ヌクレオチドの変異が、CUB1ドメインにおけるAsp−Gly交換をもたらし、MAPS−2がMBLに結合できないようにする。
【0010】
MBLはまた、19kDaのMBL会合型(associated)タンパク質(MAp19)(非特許文献19)または小MBL会合型(associated)タンパク質(sMAP)(非特許文献20)と呼ばれる、非酵素タンパク質と会合する。MAp19は、MASP2遺伝子産物の選択的スプライシングによって形成される。これは、MASP−2の最初の2つのドメインの後に、4つの独特のアミノ酸からなる余分な配列を含む。MAp19の生物学的機能は、未知である。MASP−1遺伝子およびMASP−2遺伝子は、それぞれ、第3染色体および第1染色体に位置する(非特許文献21)。
【0011】
数種の証拠によって、種々のMBL−MASP複合体が存在し、血清中の全MASPの大部分は、MBLと複合体形成していないことが、示唆される(非特許文献22)。H−フィコリンおよびL−フィコリンの両方が、MASPと会合し、レクチン補体経路を活性化する。MBLも同様である(非特許文献23;非特許文献24)。レクチン経路および古典的経路の両方が、共通するC3コンバターゼ(C4b2a)を形成し、この2つの経路は、この段階で合流する。
【0012】
レクチン経路は、感染に対する宿主防御において主要な役割を有すると広く考えられている。宿主防御にMBLが関与することについての強力な証拠は、機能的MBLの血清レベルが減少した患者の分析に由来する(非特許文献25)。そのような患者は、再発性の細菌感染および真菌感染に対する感受性を示す。これらの症状は、通常は、人生の初期において、母体由来抗体力価が弱まる見かけ上脆弱な期間の間であるが、すべての抗体応答レパートリーが発達する前に、明らかである。この症状は、しばしば、MBLのコラーゲン性部分中のいくつかの部位における変異から生じ、これは、MBLオリゴマーの適切な機能を妨害する。しかし、MBLは、補体とは独立してオプソニンとして機能し得るので、感染に対する感受性の増加が、どの程度まで、補体活性化の減損に起因するのは、わからない。
【0013】
非感染性ヒト疾患の病因に古典的補体経路および第二補体経路の両方を関連付ける広範な証拠が存在するが、レクチン経路の役割は、ちょうど解明され始めたばかりである。最近の研究は、レクチン経路の活性化が、虚血/再灌流傷害における補体活性化および関連する炎症を担い得るという証拠を提供する。Collardら(2000)は、酸化的ストレスに供された培養内皮細胞が、MBLに結合して、ヒト血清に曝露された際にC3の沈着を示すことを報告した(非特許文献26)。さらに、遮断性抗MBLモノクローナル抗体によるヒト血清の処理は、MBLの結合および補体活性化を阻害した。これらの所見は、ラットMBLに対する遮断抗体で処理されたラットが、コントロール抗体で処理されたラットよりも冠状動脈の閉塞に際して有意に少ない心筋損傷を示した、心筋虚血−再灌流ラットモデルに拡張された(非特許文献27)。酸化的ストレスの後の脈管内皮に対するMBL結合の分子機構は、不明である。最近の研究は、酸化的ストレス後のレクチン経路の活性化が、糖結合体へのMBLの結合によってではなく、脈管内皮サイトケラチンへのMBLの結合によって媒介され得ることを示唆する(非特許文献28)。他の研究は、虚血/再灌流傷害の病因に、古典的経路および副経路を関係付けた。この疾患におけるレクチン経路の役割は、意見が分かれる状態のままである(非特許文献29)。
【0014】
古典的経路およびレクチン経路とは対照的に、他の2つの経路においてC1qおよびレクチンが実施する認識機能を満たす副経路のイニシエーターは、見出されていない。現在、副経路は、外来表面または他の異常な表面(細菌、酵母、ウイルス感染細胞、または損傷組織)によって自発的に誘発されることが、広範に受け入れられている。副経路に直接関与する4種の血漿タンパク質(C3、B因子、D因子、およびプロペルジン)が、存在する。ネイティブC3からのC3bのタンパク質分解性生成が、副経路が機能するために必要である。副経路のC3コンバターゼ(C3bBb)は、C3bを必須サブユニットとして含むので、副経路を介する第一のC3bの起源に関する疑問は、難解な問題を提示し、かなりの研究を刺激した。
【0015】
C3は、チオエステル結合として公知である希少な翻訳後修飾を含む、タンパク質ファミリーに(C4およびα−2マクログロブリンとともに)属する。そのチオエステル基は、システインから3アミノ酸離れたスルフヒドリル基にその末端カルボニル基が結合している、グルタミンから構成される。この結合は、不安定であり、グルタミンの電気誘引性カルボニル基は、ヒドロキシル基またはアミノ基を介して、他の分子と共有結合を形成し得る。このチオエステル結合は、インタクトなC3の疎水性ポケット中に封鎖された場合には、かなり安定である。しかし、C3からC3aおよびC3bへのタンパク質分解性切断は、C3b上の非常に反応性が高いチオエステル結合の露出をもたらし、この機構によって、標的に対してC3bが共有結合する。補体標的に対するC3bの共有結合におけるその十分に記載された役割に加えて、C3チオエステルはまた、副経路を誘発する際に中心的役割を果たすと考えられている。広く受け入れられている「緩慢進行(tick−over)理論」に従うと、副経路は、液相のコンバターゼであるC3bBbの生成によって開始される。このコンバターゼは、C3と、加水分解されたチオエステル(C3b;C3H20)およびB因子とから形成される(非特許文献30)。C3b様iC3が、ネイティブC3から、このタンパク質中の内部チオエステルの緩徐な自発的加水分解によって生成される(非特許文献31)。C3bBbコンバターゼの活性を介して、C3b分子が、標的表面上に沈着され、それによって、副経路が開始される。
【0016】
副経路の活性化のイニシエーターに関して、ほとんど知られていない。アクチベーターとしては、酵母細胞壁(ザイモサン)、多くの純粋な多糖、ウサギ赤血球、特定の免疫グロブリン、ウイルス、真菌、細菌、動物腫瘍細胞、寄生生物、および損傷細胞が挙げられると考えられる。これらのアクチベーターに共通する唯一の特徴は、糖質の存在であるが、糖質構造の複雑性および多様性は、共有される分子機構を確立することを困難にする。このことが、認識される。
【0017】
副経路はまた、レクチン/古典的経路のC3コンバターゼ(C4b2b)に、強力な増幅ループを提供し得る。なぜなら、生成されるどのC3bも、B因子とともに、さらなる副経路C3コンバターゼ(C3bBb)の形成に関与し得るからである。副経路C3コンバターゼは、プロペルジンの結合によって安定化される。プロペルジンは、副経路のC3コンバターゼの半減期を、6〜10倍に延長する。C3コンバターゼにC3bを添加すると、副経路のC5コンバターゼの形成をもたらす。
【0018】
3つすべての経路(すなわち、古典的経路、レクチン経路、および副経路)は、C5にて合流すると考えられている。C5は、切断されて、複数の炎症促進効果を有する産物を形成する。合流した経路は、終末(terminal)補体経路と呼ばれる。C5aは、最も強力なアナフィラトキシンであり、平滑筋および脈管の緊張の変化、ならびに脈管透過性を誘導する。これはまた、好中球および単球の両方の強力なケモタキシンおよびアクチベーターである。C5a媒介性細胞活性化は、複数のさらなる炎症メディエーター(サイトカイン、加水分解性酵素、アラキドン酸代謝産物、および反応性酸素種が挙げられる)の放出を誘導することによって、炎症性応答を有意に増幅し得る。C5の切断は、C5b−9(膜攻撃複合体(MAC)としても公知である)の形成をもたらす。部分溶解性(sublytic)MAC沈着が、溶解性孔形成複合体としてのその役割に加えて、炎症において重要な役割を果たし得るという、強力な証拠が、現在存在する。
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【非特許文献2】Morgan,B.P.,Eur.J.Clinical Investig.(1994)24:219〜228
【非特許文献3】Lu,J.ら、Biochim.Biophys.Acta(2002)1572:387〜400
【非特許文献4】Ikeda,K.ら、J.Biol.Chem.(1987)262:7451〜7454
【非特許文献5】Weis,W.I.ら、Nature(1992)360:127〜134
【非特許文献6】Lee,R.T.ら、Archiv.Biochem.Biophys.(1992)299:129〜136
【非特許文献7】Maynard,Y.ら、J.Biol.Chem.(1982)257:3788〜3794
【非特許文献8】Lynch,N.J.ら、J.Immunol(2004)172:1198〜1202
【非特許文献9】Kuhlman,M.ら、J.Exp Med.(1989)169:1733
【非特許文献10】Matsushita,M.ら、J.Biol.Chem.(1996)271:2448〜54
【非特許文献11】Ji,Y.H.ら、J.Immunol.(1993)150:571〜578
【非特許文献12】Thiel,S.ら、Nature(1997)386:506〜510
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【非特許文献21】Schwaeble,W.ら、Immunobiology(2002)205:455〜466
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【非特許文献25】Kilpatrick,.D.C.,Biochim.Biophys.Acta(2002)1572:401〜413
【非特許文献26】Collard,C.D.ら、Am.J.Pathol.(2000)156:1549〜1556
【非特許文献27】Jordan,J.E.ら、Circulation(2001)104:1413〜1418,2001
【非特許文献28】Collard,C.D.ら、Am.J.Pathol.(2001)159:1045〜1054
【非特許文献29】Riedermann,N.C.ら、Am.J.Pathol.(2003)162:363〜367
【非特許文献30】Lachmann,P.J.ら、Springer Semin.Immunopathol.(1984)7:143〜162
【非特許文献31】Pangburn,M.K.ら、J.Exp.Med.(1981)154:856〜867
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、MASP−2遺伝子の標的化破壊を含み、かつレクチン補体経路が欠損している、ノックアウト生物をここに作製した。そのような生物は、健康および疾患における、レクチン経路欠損の役割を研究するためのモデルとして有用である。その生物は、再灌流傷害、心筋梗塞、脳卒中、および移植などの障害についての実験モデルとして、潜在的に有用である。その生物はまた、治療ツールとして使用するための、ヒトMASP−2に対する抗体の生成のためにも有用であり得る。本発明者らはまた、MAp19の生成が欠損した生物を作製した。
【0020】
従って、本発明は、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または遺伝子改変された非ヒト細胞を提供し、これらは、内因性MASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない。本発明はまた、遺伝子改変されたマウスまたはトランスジェニックマウスを提供し、その生殖細胞は、破壊されたMASP−2遺伝子を含む。本発明はさらに、遺伝子改変されたトランスジェニックマウスまたはその子孫を提供し、その体細胞および生殖細胞は、内因性MASP−2を含まない。
【0021】
本発明の一局面において、上記の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞は、MASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない。
【0022】
本明細書において、内因性とは、真正であり(atuthentic)、ネイティブであり、異種(foreign)ではなく、そして遺伝子操作(例えば、遺伝子標的化または遺伝子導入)によって改変されていないものとして、定義される。
【0023】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞は、すべての内因性MASP−2遺伝子配列または本質的にすべての内因性MASP−2遺伝子配列の標的化欠失によって取得可能である。この欠失は、すべての内因性MASP−2遺伝子と介在配列(完全なエキソン/イントロンの除去もしくは完全な(clean)欠失)の欠失であっても、MASP−2遺伝子の発現が防止されるような内因性MASP−2遺伝子配列の広範な部分の欠失による本質的にすべての内因性MASP−2配列の欠失であってもよい。標的化破壊は、相同組換えプロセスによって、または組換え−切り出しプロセス(例えば、Cre−loxP組換え)によって、実施され得る。従って、本発明は、相同組換え法によって取得可能な、本明細書中に記載されるような遺伝子改変された非ヒト哺乳動物もしくはトランスジェニック非ヒト哺乳動物、または遺伝子改変された非ヒト哺乳動物細胞もしくはトランスジェニック非ヒト哺乳動物細胞(好ましくは、本明細書中に記載されるような、胚性幹細胞)をさらに提供する。
【0024】
Cre−loxP組換え系は、Zouら(Science,1993;262,1271〜1274)に記載される。これは、哺乳動物細胞において作動し、かつマウスにおいて遺伝子標的化実験のために使用されて生殖系列中の標的遺伝子の「完全な(clean)」欠失を生成し、そして(Creリコンビナーゼの調節された発現に基づく)条件付き様式で遺伝子を不活化した、系を記載する。
【0025】
Creは、バクテリオファージP1に由来する38kDaのリコンビナーゼタンパク質であり、これは、loxP部位の間にある分子内(切除的もしくは反転的)および分子間(組込み的)での部位特異的組換えを媒介する。この系の概説について、Sauer、Methods of Enzymology;1993、Vol.225,890〜900を参照のこと。loxP部位(クロスオーバーする座)は、8bpの非対称スペーサー領域によって隔てられた2つの13bp逆方向反復からなる。1分子のCreが、1つの逆方向反復に結合するか、または2つのCre分子が、1つのloxP部位と整列する。この組換えは、上記の非対称スペーサー領域において生じる。その8塩基はまた、この部位の方向性を担う。互いに反対方向を向く2つのloxP配列は、介在DNA片を逆向きにし、順(direct)方向にある2つの部位は、それらの部位の間にある介在DNAの切除を指令し、1つのloxP部位を後ろに残す。この正確なDAN除去は、遺伝子を排除するため(遺伝子欠失)または遺伝子を活性化するために、使用され得る。Cre−loxP系はまた、遺伝子を導入するために(遺伝子導入)、使用され得る。順(direct)方向にある2つのloxP部位が両方から隣接する遺伝子は、「フロックス(floxed)遺伝子」と呼ばれる。
【0026】
Zouら(Current Biology 1994;4(12)1099〜2003)は、マウス胚性幹細胞においてCre−loxP系を使用して、マウス遺伝子Cg1を対応するヒト遺伝子Cg1で置換することを記載する。Cg1は、IgG1抗体の重鎖の定常領域をコードする。loxP部位が標的遺伝子配列(この場合は、マウスCg1)の3’末端にクローン化されており、標的遺伝子の5’側の位置に、目的の変異体遺伝子(この場合は、ヒトCg1)、loxP部位、ネガティブ選択マーカー(HSV−tk)、およびポジティブ選択マーカー(neor)からなる挿入が、なされた、標的化構築物が、作製された。この構築物において、loxP部位は、順(direct)方向にあった。この標的化構築物は、ES細胞中へのトランスフェクションによって導入され、形質転換体が、ネオマイシン耐性によってG418において選択された。Cre構築物が、形質転換細胞中に導入されて、Creの一過性発現が達成された。組換え(これは、2つのloxP部位の間の配列(HSV−tk、neor、および内因性標的遺伝子であるマウスCg1をコードする)の切除である)が、Creリコンビナーゼを発現する細胞においてのみ、生じた。ヒトCg1配列が、loxP部位の外側に位置し、従って、マウスゲノム中に挿入された状態のままであった。アシクロビルまたはガンシクロビルを使用するネガティブ選択が、欠失が生じた細胞を同定するために使用された。なぜなら、HSV−tkを発現しない細胞(すなわち、内因性マウスCg1遺伝子もまた欠失している細胞)のみが、その培地において生存可能であったからである。
【0027】
従って、Zouら(1994)は、ヒトCg1遺伝子を導入し、その後に1つの内因性Ig重鎖定常領域遺伝子Cg1を欠失させるために、Cre−loxP系を使用した。IgHマウスCg1の膜貫通部分および細胞質部分をコードするエキソンは、ヒト配列によって置換されなかった。これらは、マウスにおけるヒト化IgG1の膜発現およびシグナル伝達を破壊する危険を最小限にするために、保持された。導入されたヒトCg1遺伝子は、マウス生殖細胞系を介して伝達され、生じた変異体マウスは、κ軽鎖と(マウス定常領域の代わりに)ヒト定常領域とを発現するマウスと、交配させられた。両方の挿入についてホモ接合性であるマウスは、ヒト化κ鎖を保有するIgG1抗体を生成する。
【0028】
標的化欠失のための部位特異的組換え方法において、2つの部位特異的組換え配列によって両方から隣接される核酸配列領域が、切除される;この切除された領域は、外因性配列(例えば、組換え体または組換え遺伝子を同定するための選択マーカー)で置換され得る。
【0029】
本発明の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞は、そのゲノム中に組み込まれた、1つ以上の選択マーカーを含み得る。
【0030】
上記選択マーカーは、好ましくは、ネオマイシン耐性遺伝子、プロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、または単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のうちの1つ以上である。2つ以上の選択マーカーが、使用され得る。
【0031】
従って、本発明はまた、内因性MASP−2ペプチドを含まず、かつ選択マーカーをコードする1つ以上の遺伝子を含む、非ヒト哺乳動物または非ヒト哺乳動物細胞(好ましくは齧歯類細胞、より好ましくはマウス細胞、最も好ましくはマウス胚性幹細胞)を提供する。
【0032】
本発明の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物は、齧歯類、マウス、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなどであり得るが、好ましくは齧歯類であり、より好ましくはネズミ(murine)であり、最も好ましくはマウス(mouse)である。本発明の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物細胞は、胚性幹細胞または卵母細胞であり、好ましくは齧歯類、マウス、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、またはネコなどの細胞であり、好ましくは齧歯類の細胞であり、より好ましくはネズミ(murine)の細胞であり、最も好ましくはマウス(mouse)の細胞である。マウスは、取り扱いおよび育種が容易にあるので、特に好ましい。
【0033】
本発明は、内因性MASP−2遺伝子が存在しないか、またはこの遺伝子が非機能性である程度になるまで部分的に存在しない、マウスを提供する。部分的に存在しないとは、内因性MASP−2遺伝子配列が、機能的内因性MASP−2遺伝子産物をMASP−2遺伝子座にコードしない(すなわち、機能的内因性MASP−2遺伝子産物がその遺伝子座から発現され得ない)程度まで、欠失もしくは破壊されたことを、意味する。
【0034】
本発明はさらに、内因性MASP−2遺伝子が存在しないかまたは部分的に存在しない、非ヒト哺乳動物胚性幹(ES)細胞を提供する。
【0035】
上記の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物(好ましくは齧歯類、より好ましくはマウス)は、1つ以上の機能的に活性なMASP−2遺伝子(好ましくは、1つ以上の機能的に活性なヒトMASP−2遺伝子)を発現可能な適合性の非ヒト哺乳動物と交配させられ得る。例えば、欠失変異体マウスが、1つ以上の機能的に活性なヒトMAPS−2遺伝子を発現可能なマウスと交配させられ得る。この交配のヘテロ接合性子孫(F1)は、内因性MASP−2遺伝子を発現可能ではなく、代わりに外来(好ましくはヒト)MASP−2遺伝子のみを発現可能な非ヒト哺乳動物(好ましくはマウス)のヘテロ接合性子孫およびホモ接合性子孫(F2)を生成するように、同系交配させられ得る。
【0036】
本発明は、本明細書中に記載されるような遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来するか、または本明細書中に記載されるような遺伝子改変された非ヒト細胞に由来する、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を提供し、本発明は、本明細書中に記載されるような遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来する遺伝子改変された非ヒト細胞を提供する。
【0037】
本発明は、遺伝子改変された非ヒト細胞を生成するための方法を提供する。この方法は、
非ヒト細胞を、内因性MASP−2遺伝子の代わりに組込むための標的化構築物でトランスフェクトする工程(この標的化構築物は、標的化組換え配列と選択マーカーとを含む);および
上記選択マーカーが存在する細胞を選択する工程;
を包含する。
【0038】
上記の遺伝子改変された非ヒト細胞は、胚性幹細胞または卵母細胞であることが、好ましい。上記の遺伝子改変された非ヒト細胞は、齧歯類細胞(より好ましくはマウス細胞)であり得る。
【0039】
適切な任意のクローニングベクターが、上記の標的化構築物を生成するために使用され得る。クローニングストラテジーは、Sambrook,FritshおよびManiatis、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989によって記載される。望ましくは、上記の標的化構築物は、1つ以上のマーカー遺伝子を保有し得る。選択マーカーが、公知であり、特に適切なものは、ポジティブ選択を可能にするものである。特に対象とされるのは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼの遺伝子(「neo」)(これは、G418に対する耐性を付与する)の使用である。また適切なのは、プロマイシン耐性遺伝子(「puro」)またはハイグロマイシン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子および/またはプロマイシン耐性遺伝子が、好ましい。
【0040】
上記の標的化構築物において、標的遺伝子の上流および/または下流は、相同的ダブルクロスオーバーが生じたかどうかの同定(ネガティブ選択)を提供する遺伝子であり得る。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−tk)が、ネガティブ選択マーカーとして使用され得る。なぜなら、チミジンキナーゼを生成する細胞は、アシクロビルまたはガンシクロビルによって死滅させられ得るからである。
【0041】
一旦、標的化構築物が調製され、そして望ましくないあらゆる配列が除去された後には、上記構築物は、標的細胞(例えば、ES細胞または卵母細胞)中に導入され得る。標的細胞中にDNAを導入するための任意の簡便な技術が、使用され得る。従来の遺伝子標的化(通常は20kbまでの構築物)のために、DNAは、最も頻繁には、エレクトロポレーションによって導入される(Zouら、Eur.J.Immunol.25,2154〜62,1995)。一方、二次改変(例えば、Cre−loxP媒介性組込み)のためには、エレクトロポレーションは、より小さい構築物の組込みのために使用され得、他の方法(例えば、リポフェクションおよびYAC(酵母人工染色体)についての酵母スフェロプラスト/細胞融合、および染色体フラグメントもしくは哺乳動物人工染色体についてのリン酸カルシウム媒介性DNA移入(これらは、数百kb〜Mb範囲の組込みを可能にする)が、使用され得る。従って、エレクトロポレーションは、小さいDNAフラグメント(50kbまで)を標的細胞中に導入するために好ましい技術であり、列挙された他の方法は、より大きなDNA配列(>50kb)の導入のために適切でありかつおそらく有利である。
【0042】
標的細胞の形質転換またはトランスフェクションの後、これらの細胞は、ポジティブマーカーおよび/またはネガティブマーカーによって選択され得る。上記のように、ポジティブマーカー(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子および/またはプロマイシン耐性遺伝子)が、使用され得る。その後、望ましい表現型を有する細胞が、制限分析、電気泳動、サザンブロット分析、PCRなどによってさらに分析され得る。
【0043】
PCRもまた、相同組換えの存在を検出するために使用され得る。標的化構築物内の配列に対して相補的であるPCRプライマー、およびその構築物の外側かつ標的遺伝子座にある配列に対して相補的であるPCRプライマーが、使用され得る。DNA分子は、上記の両方のプライマーがその相補的配列に結合可能である場合にのみ、すなわち、相同組換えが生じた場合にのみ、PCR反応において取得される。配列決定によって確認される予期されるサイズのフラグメントの実証は、相同組換えが生じたという結論を支持する。
【0044】
ゲノム中にマーカー遺伝子が存在することは、組込みが生じたことを示すが、相同組込みが生じたかどうかを決定することが、必要である。これを達成するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、組込み位置を確立するためにサザンブロットハイブリダイゼーションによるDNA分析を使用する。インサートに対するプローブと、相同組込みが生じる隣接領域に対して遠位にある5’領域および3’領域にある配列に対するプローブとの両方を使用することによって、相同標的化が達成されたことが、示され得る。利点は、標的化DNAに隣接する外部プローブと、(例えば、選択マーカー遺伝子によって)新たに導入された制限部位に隣接する外部プローブとが、標的化された変化の同定のために使用され得ることである。
【0045】
例えば上記の方法によって取得可能な、本明細書中に記載されるような胚性幹細胞が、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物の生成のために使用され得る。
【0046】
上記のプロセスは、胚性幹細胞におけるMASP−2遺伝子座を不活化するためにまず実施され得、その後、その細胞は、宿主の胚盤胞中に注入され得、キメラ動物へと発達させられ得る。適切な方法は、例えば、Hoganら(Hogan,B.,Beddington,R.,Costantini,F.およびLacy,E.(1994)Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Press,NY)に記載される。キメラ動物は、ヘテロ接合性宿主を取得するために交配させられる。その後、そのヘテロ接合性宿主の育種によって、ホモ接合性宿主が、取得され得る。
【0047】
従って、本発明は、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法を提供し、その方法において、本明細書中に記載されるような胚性幹細胞が、宿主胚盤胞中に導入されてキメラ動物へと発達させられる。
【0048】
これは、
(a)本明細書中に記載されるような非ヒト哺乳動物胚性幹細胞を、適合性の非ヒト哺乳動物胚盤胞中に導入すること;および
(b)(a)において取得された胚盤胞を、適合性の非ヒト哺乳動物代理母(foster mother)中に移植してキメラ非ヒト哺乳動物を取得すること;そして
必要に応じて、選択マーカーについて、および/またはすべての内因性MASP−2遺伝子配列もしくは本質的にすべての内因性MASP−2遺伝子配列の欠失について、スクリーニングすること;
によって特徴付けられる方法によって、達成され得る。
【0049】
これらの方法によって生成されるキメラ非ヒト哺乳動物は、ヘテロ接合性子孫を取得するために交配させられ得る。そのヘテロ接合性子孫は、ホモ接合性子孫を取得するために同系交配させられ得る。
【0050】
本明細書中に記載される本発明の方法を使用して、それ自体が何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをコードする核酸配列は含まない、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物が、取得され得る。
【0051】
本発明は、1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法を提供する。その方法は、
それ自体が何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをコードする核酸配列は含まない遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を、1つ以上の外因性遺伝子をコードしかつその外因性遺伝子を発現可能な適合性の非ヒト哺乳動物と交配させて、1つ以上の外因性遺伝子についてヘテロ接合性である子孫を取得すること;および
必要に応じて、そのヘテロ接合性子孫を同系交配させて、上記の1つ以上の外因性遺伝子についてホモ接合性の子孫を生成すること;
によって特徴付けられる。
【0052】
外因性遺伝子とは、宿主の非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞に対して外来性(すなわち、非ネイティブ)である遺伝子である。
【0053】
従って、本発明は、外来(好ましくはヒト)MASP−2遺伝子を発現可能な非ヒト哺乳動物(好ましくは齧歯類、より好ましくはマウス)を生成するために使用され得、この生成は、機能的に活性な(内因性)MASP−2遺伝子を発現不能な本明細書中に記載されるような遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を、1つ以上の機能的に活性な外来(好ましくはヒト)MASP−2遺伝子を発現可能な適合性の非ヒト哺乳動物(好ましくは齧歯類、より好ましくはマウス)と交配させることによる。これによって、1つ以上の機能的に活性な望ましい形質の外因性(好ましくはヒト)遺伝子を有する選択された子孫(ヘテロ接合性またはホモ接合性)を生成するための種間遺伝子交換/遺伝子座交換が、その非ヒト哺乳動物の対応する遺伝子がサイレント化されているかまたは除去されているバックグラウンドにおいて可能になる。そのような非ヒト哺乳動物は、上記の外因性遺伝子に対する抗体の生成において有用であり得る。本発明は、そのような抗体の生成方法、およびそのような方法において生成された抗体を、さらに提供する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、MASP−2ポリペプチドまたはその部分に対して特異的に結合する、抗体産生哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、および霊長類(ヒトを包含する))由来の抗体およびその抗体フラグメントを包含する。例示的抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および組換え抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ抗体、マウス−ヒト抗体、マウス−霊長類抗体、ヒトモノクローナル抗体、および抗イディオタイプ抗体が挙げられ、これらは、インタクトな分子であっても、そのフラグメントであってもよい。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「抗体フラグメント」とは、全長抗MASP−2抗体に由来する部分または全長抗MASP−2抗体に関連する部分を指し、一般的には、その抗原結合領域または可変領域を包含する。抗体フラグメントの例示的例としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)2フラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメント、scFvフラグメント、ディアボディ(diabody)、直鎖状(linear)抗体、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「scFv」抗体フラグメントとは、抗体のVHドメインおよびVLドメインを包含し、これらのドメインは、一本のポリペプチド鎖中に存在する。一般的には、Fvポリペプチドは、そのVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、これによって、そのscFvは、抗原結合のために望ましい構造を形成することが可能である。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「キメラ抗体」とは、非ヒト種(例えば、齧歯類)抗体に由来する可変ドメインおよび相補性決定領域を含む組換えタンパク質であり、一方、その抗体分子の残りは、ヒト抗体に由来する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体フレームワーク中に移植された非ヒト免疫グロブリン由来の特定の相補性決定領域と適合する最小限の配列を含む、キメラ抗体である。ヒト化抗体は、代表的には、その抗体の相補性決定領域のみが非ヒト起源である、組換えタンパク質である。
【0059】
MASP−2に対するポリクローナル抗体は、当業者にとって周知である方法を使用して、MASP−2ポリペプチドまたはその免疫原性部分で動物を免疫することによって、調製され得る。例えば、Greenら、「Production of Polyclonal Antisera」Immunochemical Protocols(Manson編),105pを参照のこと。MASP−2ポリペプチドの免疫原性は、アジュバント(無機質ゲル(例えば、水酸化アルミニウムまたはフロイントアジュバント(完全もしくは不完全))、界面活性剤(例えば、リゾレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールが挙げられる)の使用を介して、増加させられ得る。ポリクローナル抗体は、代表的には、動物(例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ニワトリ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ、またはヒツジ)において惹起される。あるいは、本発明において有用な抗MASP−2抗体はまた、類人霊長類に由来し得る。ヒヒにおいて診断的に有用な抗体および治療的に有用な抗体を惹起するための一般的技術は、例えば、Goldenbergらの国際特許出願公開番号91/11465およびLosmanら、Int.J.Cancer 46:310,1990において見出され得る。その後、免疫学的に活性な抗体を含有する血清が、当該分野で周知の標準的手順を使用して、そのような免疫された動物の血液から生成される。
【0060】
いくつかの実施形態において、MASP−2抗体は、モノクローナル抗体であり得る。抗MASP−2モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つのMASP−2エピトープに対する。本明細書中で使用される場合、修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、この修飾語は、特定の何らかの方法によるその抗体の生成を必要とするものとは解釈されるべきではない。モノクローナル抗体は、培養中の連続的細胞株による抗体分子の生成を提供する任意の技術(例えば、Kohlerら、Nature 256:495,1975によって記載されるハイブリドーマ方法)を使用して取得され得るか、またはそれらは、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって生成され得る。モノクローナル抗体はまた、Clacksonら、Nature 352:624〜628,1991およびMarksら、J.Mol.Biol.222:581〜597,1991において記載される技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。そのような抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスが挙げられる)であり得る。
【0061】
例えば、モノクローナル抗体は、適切な哺乳動物(例えば、BALB/cマウス)に、MASP−2ポリペプチドまたはその部分を含む組成物を注射することによって、取得され得る。所定の期間の後、脾細胞が、そのマウスから回収され、細胞培地中に懸濁される。その後、その脾細胞は、不死細胞株と融合されて、ハイブリドーマを形成する。形成されたハイブリドーマは、細胞培養にて増殖させられて、それがMASP−2に対するモノクローナル抗体を生成する能力についてスクリーニングされる。
【0062】
ヒトモノクローナル抗体は、抗原性チャレンジに応答して特異的ヒト抗体を生成するように操作されたトランスジェニックマウスの使用を介して、取得され得る。この技術において、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子座のエレメントが、内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的化破壊を含む胚性幹細胞に由来するマウス系統中に導入される。そのトランスジェニックマウスは、ヒト抗原(例えば、本明細書中に記載されるようなMASP−2抗原)に対して特異的なヒト抗体を合成し得る。そのマウスは、そのような動物に由来するB細胞を、適切な骨髄腫細胞株に、従来のKohler−Milstein技術を使用して融合することによって、ヒトMASP−2抗体分泌ハイブリドーマを生成するために使用され得る。ヒト免疫グロブリンゲノムを有するトランスジェニックマウスが、(例えば、Abgenix,Inc.,Fremont,CA、およびMedarex,Inc.,Annandale,N.J.から)市販されている。トランスジェニックマウスからヒト抗体を取得するための方法は、例えば、Greenら、Nature Genet.7:13,1994;Lonbergら、Nature 368:856,1994;およびTaylorら、Int.Immun.6:579,1994によって記載されている。
【0063】
モノクローナル抗体は、種々の充分に確立された技術によって、ハイブリドーマ培養物から単離および精製され得る。そのような単離技術としては、プロテインA Sepharoseを用いるアフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィー(例えば、Coligan、2.7.1〜2.27.12頁、および2.9.1〜2.9.3頁;Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」Methods in Molecular Biology,vol.10,p.79〜104(The Humana Press,Inc.、1992)を参照のこと)が挙げられる。
【0064】
本発明の方法において有用なモノクローナル抗体としては、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体中の、対応する配列と同じであるかもしくは相同であり、それらの鎖の残りは、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体中の、対応する配列と同じであるかもしくは相同である、キメラ抗体;ならびにそのような抗体のフラグメントが挙げられる(米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 81:6851〜6855,1984)。本発明において有用なキメラ抗体の一形態は、ヒト化モノクローナル抗MASP−2抗体である。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、キメラ抗体であり、これは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの可変重鎖および可変軽鎖に由来する非ヒト(例えば、マウス)相補性決定領域(CDR)を、ヒト可変ドメイン中に移入することによって、生成される。代表的には、その後、ヒト抗体の残基が、非ヒト対応物のフレームワーク領域中で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中でもドナー抗体中でも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるためになされる。一般的には、上記ヒト化抗体は、少なくとも1つ(代表的には2つ)の可変ドメインのうちの実質的にすべてを含み、その超可変ループのうちのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そのFvフレームワーク領域のうちのすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)(代表的には、ヒト免疫グロブリンのFc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525,1986;Reichmanら、Nature 332:323〜329,1988、およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596,1992を参照のこと。
【0065】
ヒト化モノクローナル抗体を生成するための技術はまた、例えば、Jonesら、Nature 321:522,1986;Carterら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 89:4285,1992;Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437,1992;Singerら、J.Immun.150:2844,1993;Sudhir編,Antibody Engineering Protocols(Humana Press,Inc.,(1995);Kelley「Engineering Therapeutic Antibodies」Protein Engineering:Principles and Practice,Clelandら編,p399〜434(John Wiley & Sons,Inc.、1996);ならびにQueenら、米国特許第5,693,762号(1997)によって、記載されている。さらに、特定のマウス抗体領域に由来するヒト化抗体を合成する商業的実体(例えば、Protein Design Labs(Mountain View CA)が、存在する。
【0066】
本発明は、インタクトな免疫グロブリン分子にのみならず、周知のフラグメント(Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab)2フラグメント、F(ab’)2フラグメント、およびFvフラグメント、scFvフラグメント、ディアボディ(diabody)、直鎖状抗体、単鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる)にもまた、さらに拡張される。抗体分子のほんの小さな部分(パラトープ)のみが、そのエピトープに対するその抗体の結合に関与することは、当該分野で周知である(例えば、Clark,W.R.(1986)The Experimental Foundations of Modern Immunology,Wiley & Sons,Inc.、NYを参照のこと)。その抗体のpFc’領域およびFc領域は、古典的補体経路のエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。そのpFc’領域が酵素的に切断されている抗体、またはそのpFc’領域を含まずに生成された抗体は、F(ab’)2フラグメントと呼ばれ、インタクトな抗体の抗原結合部位を両方とも保持する。単離されたF(ab’)2フラグメントは、その2つの抗原結合部位が原因で、二価モノクローナルフラグメントと呼ばれる。同様に、そのFc領域が酵素的に切断されている抗体、またはそのFc領域を含まずに生成された抗体は、Fabフラグメントと呼ばれ、これは、インタクトな抗体分子の抗原結合部位のうちの1つを保持する。
【0067】
抗体フラグメントは、(例えば、従来の方法による抗体全体のペプシン消化またはパパイン消化による)タンパク質分解性加水分解によって、取得され得る。例えば、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって生成され得て、F(ab’)2と呼ばれる5Sフラグメントを提供し得る。このフラグメントは、チオール還元剤を使用してさらに切断され得て、3.5S Fab’一価フラグメントを生成し得る。必要に応じて、その切断反応は、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基に対するブロック基を使用して、実施され得る。代替法として、ペプシンを使用する酵素的切断が、2つの一価Fabフラグメントと1つのFcフラグメントとを直接生成する。これらの方法は、例えば、Goldenberg,米国特許第4,331,647号;Nisonoffら、Arch.Biochem.Biophys.89:230,1960;Porter,Biochem.J.73:119,1959;Ederlmanら、Methods in Enzymology,1:422(Academic Press,1967);ならびにColigan,2.8.1〜2.8.10頁および2.10〜2.10.4頁によって、記載されている。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記Fc領域を欠いている抗体フラグメントの使用が、古典的補体経路の活性化(これは、Fcが上記Fcγレセプターへ結合する際に開始される)を回避するために好ましい。Fcγレセプター相互作用を回避するMAbが生成され得る方法がいくつか存在する。例えば、モノクローナル抗体の上記Fc領域は、タンパク質分解酵素(例えば、フィシン消化)による部分的消化を用いて化学的に切断され得る。それによって、例えば、抗原結合抗体フラグメント(例えば、FabフラグメントまたはF(ab)2フラグメントが生成され得る(Mariani,Mら,Mol.Immunol.28:69−71,1991))。あるいは、上記ヒトγ4 IgGアイソタイプ(これは、Fcγレセプターに結合しない)は、本明細書で記載されるヒト化抗体の構築の間に使用され得る。上記Fcドメインを欠く、抗体、単鎖抗体および抗原結合ドメインはまた、本明細書中に記載される組換え技術を用いて操作され得る。
【0069】
あるいは、上記重鎖Fv領域および軽鎖Fv領域が接続されているMASP−2に対して特異的な単一のペプチド鎖結合分子が作られ得る。上記Fvフラグメントは、単鎖抗原結合タンパク質(scFv)を形成するために、ペプチドリンカーによって接続され得る。これらの単鎖抗原結合タンパク質は、オリゴヌクレオチドによって接続されているVHドメインとVLドメインとをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。上記構造遺伝子は、発現ベクター中に挿入され、この発現ベクターは、その後、宿主細胞(例えば、E.coli)に導入される。上記組換え宿主細胞は、リンカーペプチドで上記2つのVドメインが架橋された単一ポリペプチド鎖を合成する。scFvを生成するための方法は、例えば、Whitlowら,「Methods:A Companion to Methods」 Enzymology 2:97,1991;Birdら,Science 242:423,1988;Ladnerら,米国特許第4,946,778号;およびPackら,Bio/Technology 11:1271,1993によって記載されている。
【0070】
1つ以上の外因性遺伝子を発現し得る遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または遺伝的に改変された非ヒト細胞を生成する方法が提供され、この方法は、それ自体が何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをコードする核酸配列を含まない本明細書に記載される非ヒト哺乳動物細胞へ、1つ以上の外因性遺伝子を導入することを含む。上記非ヒト哺乳動物細胞が、胚性幹細胞または卵母細胞であることが好ましい。上記非ヒト哺乳動物細胞がES細胞である場合、1つ以上の外因性遺伝子がトランスフェクションによって導入されることが望ましい。上記非ヒト哺乳動物細胞が、卵母細胞(卵細胞)である場合、1つ以上の外因性遺伝子がDNAマイクロインジェクションによって導入されることが好ましい。好ましくは、上記1つ以上の1つ以上の外因性遺伝子は、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞のゲノムに挿入され、最も好ましくは、上記1つ以上の外因性遺伝子が、非内因性の部位特異的組換え配列に挿入される。
【0071】
本発明は、本明細書中に記載の方法によって取得され得る1つ以上の外因性遺伝子を発現し得る非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞を提供し、外因性MASP−2(好ましくは、ヒトMASP−2)の生成における、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞の使用を提供する。
【0072】
それ自体が内因性MAp 19ポリペプチドをコードする核酸配列を含まないという点で特徴づけられる、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または遺伝子改変された非ヒト哺乳動物細胞もまた、本発明によって提供される。このような哺乳動物は、上記のMASP−2欠損性の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物と同じ目的でまたは類似の目的のために、かつ同じ様式でまたは類似の様式で、有用であり得る。従って、別段述べなければ、当業者は、MASP−2欠損性哺乳動物に関する、ならびにこのような哺乳動物から得ることができる抗体および他の生成物に関する、ならびにこのような哺乳動物を伴う方法に関する上記の記述が、MAp 19欠損性哺乳動物に等しく適用できることを理解する。
【0073】
本発明は、レクチン補体経路応答を欠くという点で特徴づけられる、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または遺伝子改変された非ヒト哺乳動物細胞をさらに提供する。
【0074】
本発明の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物は、齧歯類、ネズミ(murine)、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコなどであり得るが、好ましくは、齧歯類、より好ましくは、ネズミ(murine)、最も好ましくは、マウス(mouse)である。本発明の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物細胞は、胚性幹細胞または卵母細胞であり得る;そして好ましくは、齧歯類細胞、マウス細胞(murine)、ヒツジ細胞、ブタ細胞、ウマ細胞、イヌ細胞またはネコ細胞などであり、好ましくは、齧歯類細胞であり、より好ましくは、ネズミ(murine)細胞であり、最も好ましくは、マウス(mouse)細胞である。マウス(mouse)は、取り扱いおよび繁殖が容易であるので、特に好ましい。
【0075】
本発明は、機能的なレクチン補体経路応答が全く存在しないマウス(mouse)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
(図面の詳細な説明)
図1、図2および図3は、マウス(mouse)MASP−2ノックアウトおよびマウス(mouse)MAp 19ノックアウトの標的化を示すマップを、および標的化において使用される構築物を示す。図4は、ヒトMASP−2遺伝子およびヒトMAp 19遺伝子を、ノックアウトマウス(mouse)へ導入するために使用されるミニ遺伝子構築物を示す。マウス(mouse)MASP−2のmRNA配列は、GenBankアクセッション番号BC013893の下で入手可能である。
【0077】
本発明者らは、遺伝子標的化技術および/またはトランスジーン技術のいずれかによって、5つの異なるマウス(mouse)系統を生成した。これらの系統は、補体のレクチン経路のマウス(murine)MASP2遺伝子生成物MASP−2(すなわち、セリンプロテアーゼ(MW 74095 Da))および/またはMAp19(sMAPともいわれる)(すなわち、レクチン経路開始複合体と関連する19075Da MWの選択的MASP2遺伝子生成物)のいずれかについて選択的に充足性(sufficient)であるように設計される。本発明者らは、マウスMASP−2遺伝子生成物が欠損した3つの系統を記載する:1つの系統は、セリンプロテアーゼMASP−2を欠損しているが、MAp19/sMAPが充足性であり(構築物が図1に示される)、1つの系統は、MAp19/sMAPが欠損しており(構築物が図2に示される)、そして1つの系統は、MASP−2とMAp19/sMAPの両方が欠損している(構築物が図3に示される)。
【0078】
欠損の確認を、mRNA転写実験の検出および/またはウェスタンブロッティング実験によって行った。核酸検出は、LightCycler機器を使用する時間分離(time−resolved)RT−PCRによって行ったが、ウェスタンブロッティングによって発見を確認した。
【0079】
さらに、ノックアウトマウス(mouse)においてヒトMASP−2またはヒトMAp 19を発現するために、2つのヒトミニ遺伝子構築物を確立した(図4を参照のこと)。
【0080】
ここでMASP−2について言及すると、図1の構築物は、遺伝子標的化ベクターpKO−NTKV 1901(Stratagene,CA)において確立し、マウス(murine)ES細胞株E14.1a(遺伝子バックグラウンド SV129 Ola)をトランスフェクトするために使用した。染色体DNAの中に構築物を組み込んだトランスフェクトされた細胞を、ネオマイシン耐性を介して選択し、組換え事象を、pKO−NTKVに含まれるTK遺伝子によって媒介されるチミジンキナーゼ(TK)活性の喪失を介して選択した。トランスフェクション後に回収した600個のES細胞クローンから、上記遺伝子標的化構築物の単一の組み込みおよび上記マウス(murine)MASP2遺伝子内の上記標的化事象を、上記標的化構築物中に含まれるネオマイシンカセットに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブと上記標的化構築物の外側に位置するマウス(murine)MASP2遺伝子に対して特異的なプローブとを使用するサザンブロット分析によって確認した。本発明者らは、4種の異なる細胞クローンを同定した。これらクローンにおいて、選択的標的化および組換え事象が発生し、これらクローンを、University of LeicesterのTransgenic Unitの中で、胚移植技術によって、キメラを作製するために使用した。キメラを、遺伝子バックグラウンドC57/BL6に対して戻し交配し、彼らの生殖細胞系列において破壊した遺伝子が伝達されたトランスジェニックオスを作出した。このような「生殖細胞系列伝達」マウスをメス(遺伝子バックグラウンドC57/BL6)と交配させることで、F1を生成すると、その子孫のうちの50%が、破壊したMASP2遺伝子に関してヘテロ接合性を示した。これらのヘテロ接合性マウス(mouse)を異種交配させると、ホモ接合性のMASP2欠損性子孫、ヘテロ接合性マウス(mouse)および野生型マウス(mouse)が、それぞれ1:2:1の比で作出された。
【0081】
第1のMASP−2欠損性マウス(mouse)系統(以下、MASP2−/−CSと称する)を、図1に記載される標的化構築物を使用して樹立した。この選択されたストラテジーは、セリンプロテアーゼドメインをコードするエキソンを含め、MASP−2のC末端をコードする3つのエキソン(エキソン10、11、および12)を破壊するが、その破壊は、他のMASP2遺伝子生成物MAp19/sMAPをコードするエキソンからは非常に遠く離れている。
【0082】
図1に記載される破壊構築物で作られた、得られたマウス(murine)系統、MASP2−/−CSは、繁殖能がありかつ生存能があり、破壊された対立遺伝子に関してホモ接合性の場合、MASP−2に関して標的化された欠損を含む。MAp19/sMAP(すなわち、MASP2遺伝子の選択的遺伝子生成物)は、mRNAレベルおよびタンパク質レベル(RT−PCRおよびウェスタンブロッティングによって決定される)の両方において存在する。これらのマウス(mouse)は、他の2つのレクチン経路会合型セリンプロテアーゼ(すなわち、MASP−1およびMASP−3)を発現する。
【0083】
図5に示されるように、MASP2−/−CSマウス(mouse)の血漿は、レクチン経路特異的C4切断アッセイにおいて示される、マンナンコーティングプレート(図5A)上およびザイモサンコーティングプレート(図5B)上での、レクチン経路媒介性補体活性化を完全に欠損している。これは、MASP−1でもMASP−3でもなく、MASP−2が、補体活性化のレクチン経路のエフェクター成分であることを明らかに実証している。MASP−1およびMASP−3は、生理的条件下で、残りのレクチン経路活性を維持するために、MASP−2機能的活性の喪失を補償できない。この結果および藤田禎三教授の研究チームの以前に記載された知見(MASP−1およびMASP−3を欠損しているが、レクチン経路媒介性補体活性化における欠損はない遺伝子標的化マウス(murine)系統を作った)は、MASP−1およびMASP−3が、補体系の活性化に(あるとしても)わずかにしか関与していないことを実証する。
【0084】
MASP2−/−CSマウス(mouse)の血漿を分析することによって達成された別の基本的な知見は、図6に示される。MASP2−/−CSマウス(mouse)を、現時点での教科書的な知見に従って、補体活性化の機能的に活性な第3の経路(すなわち、ザイモサンのような活性化表面に対して他の2つの経路とは独立して、C3を切断する副経路)を形成するはずである補体因子C3、B因子、D因子、およびプロペルジンの存在について分析した。図6に示されるように、MASP−2が欠損している血漿において、マンナンコーティングプレート上で(図6A)およびザイモサンコーティングプレート上で(図6B)、C3活性化は、C3b沈着によって示されるように、全く起こらないかまたはわずかしか起こらない。このことは、MASP−2は、上記副経路を開始するために最初のC3bを与えることを要することを明らかに実証する。MASP−2の非存在下では、最初のC3bは、レクチン経路によって提供されず、ザイモサン(副経路活性化の確立したアクチベーター表面)に関しても提供されず、C3の副経路媒介性切断は観察できない。高濃度のMASP−2欠損性血清において認められるわずかな切断活性は、使用される実験条件下で、残りの古典的経路活性から生じ得る。
【0085】
図5〜図7において示されるデータを得ることにおいて使用されるC3切断アッセイおよびC4切断アッセイは、Lynch,N.J.;Roscher,S.;Hartung,T.,Morath,S.;Matsushita,M.;Maennel,D.N.;Kuraya,M.;Fujila,T.;Schwaeble WJ. L−ficolin Specifically Binds to Lipoteichoic Acid,a Cell Wall Constituent of Gram−positive Bacteria,and Activates the Lectin Pathway of Complement. J.Immunol.172:1198−1202(2004);ならびにPetersen SV,Thiel S,Jensen L,Steffensen R,Jensenius JC. An assay for the mannan−binding lectin pathway of complement activation. J Immunol Methods.257:107−116(2001)において記載されている。
【0086】
MASP−2の非存在が、MASP2−/−CSマウス(mouse)におけるレクチン経路依存性C4活性化の喪失の直接の原因であったことを確認するために、組換えMASP−2タンパク質を血清サンプルに添加することの影響を、C4切断アッセイにおいて試験した。機能的に活性なマウス(murine)MASP−2組換えタンパク質および触媒的に不活性なマウス(murine)MASP−2A(この不活性なMASP−2Aにおいて、セリンプロテアーゼドメインにおける活性部位セリン残基が、アラニン残基で置換されている)組換えタンパク質を、J.Endotoxin Res.11(1):47−50(2005)に記載されるように生成した。4匹のMASP2−/−CSマウス(mouse)からプールした血清を、漸増するタンパク質濃度の組換えマウス(murine)MASP−2または不活性な組換えマウス(murine)MASP−2Aのとともに予めインキュベートし、C4コンベルターゼ活性を、上記のようにアッセイした。図12に示されるように、機能的に活性なマウス(murine)組換えMASP−2タンパク質(白三角として示される)を、MASP2−/−CSマウス(mouse)から得られた血清に添加すると、タンパク質濃度依存性様式においてレクチン経路依存性C4活性化が回復したのに対して、触媒的に不活性なマウス(murine)MASP−2Aタンパク質(星として示す)は、C4活性化を回復させなかった。図12に示される結果は、プールされた正常マウス(mouse)血清(点線として示される)で観察されたC4活性化に対して正規化される。
【0087】
図13は、MASP2−/−CSマウス(mouse)において古典的経路が機能していることを実証する。この実験において、野生型マウス(mouse)およびMASP2−/−CSマウス(mouse)から得た未処理血清サンプルおよびC1q除去血清サンプルを、免疫複合体(BSAを添加し、次いでウサギ抗BSAを添加することによってその場で作製した)でコーティングしたプレートに各々添加した。結合したC3bを、抗C3c抗体で検出した。図13に示されるように、このC3b沈着は、野生型(C1q除去した野生型血清は、白丸として示す)およびMASP2−/−CSマウス(mouse)(C1q除去したMASP2−/−CS血清を、白三角として示す)の両方においてC1q依存性であった。この野生型コントロール血清(×として示す)およびMASP2−/−CS血清(黒三角として示す)はともに、C3b沈着によって示されるC3活性化を示す。
【0088】
第2のMASP2遺伝子標的化マウス(murine)系統を、図2において記載される遺伝子破壊構築物を使用して樹立した。MAp19/sMAPを欠損するが、MASP−2充足性のマウス(murine)系統を作出するために、エキソン5(このエキソンは、MASP2遺伝子のMAp 19/sMAP特異的mRNA転写物の生成を担う)を、loxP部位が両方から隣接するネオマイシンカセットによって置き換えた。この遺伝子標的化構築物を、BALB/cマウス(mouse)系統に由来する胚性幹細胞株をトランスフェクトするために使用した。ネオマイシン耐性に対する選択の後、形質転換体を同定するために、このCre/loxP系を、上記構築物のloxP配列間にあるマーカー遺伝子を切り出すために使用する。これは、MASP−2のエキソン5を欠きかつ残りのエキソンを破壊するマーカー遺伝子がないマウス(mouse)を生じる。従って、このマウス(mouse)は、MAp 19について欠損性である(なぜなら、エキソン5がないからである)が、MASP−2について充足性である(なぜなら、残りのエキソンは存在しており、その遺伝子は破壊されていないからである)ように設計される。しかし、本発明者らは、ウェスタンブロットによって決定されるように(データは示さず)、MASP−2のタンパク質発現がMAp19欠損性マウス(mouse)において減少していることに注目している。破壊された対立遺伝子についてホモ接合性であるときに生成したこのMAp19/sMAP欠損性マウス(murine)系統は、繁殖能がありかつ生存能があり、以降、MAp19/sMAP−/−TFと称される。
【0089】
図7は、MAp19/sMAP−/−TFマウス(mouse)が、マンナンコーティングプレート上でのレクチン経路媒介性補体活性化を欠損していることを示す実験結果を示す。図5について使用されたものと同じアッセイを、この実験において使用した。
【0090】
第3のMASP2遺伝子標的化マウス(murine)系統を、上記のMASP−2欠損性マウス(mouse)についてのものと同じ様式で、図3において記載される遺伝子破壊構築物を使用して樹立した。MAp19/sMAPおよびMASP−2を欠損するマウス(murine)系統を作出するために、エキソン5(このエキソンは、MASP2遺伝子のMAp19/sMAP特異的mRNA転写物の生成を担う)を、ネオマイシンカセットで置き換えた。図2に言及して記載される構築物とは異なり、図3の構築物は、loxP配列を含まない。従って、使用されるマーカー遺伝子は、切り出すことができない。よって、得られるマウス(mouse)系統は、MASP−2のエキソン5を欠くが、残りのMASP−2エキソンは、マーカー遺伝子の存在によって破壊される。従って、得られたマウス(mouse)は、MAp 19およびMASP−2の両方を欠損している。この構築物を用いて作出した遺伝子標的化マウス(murine)系統を、以降、MASP−2/MAp19 −/−と称する。
【0091】
欠損型のマウスMASP−2および/または欠損型のマウスMAp19のいずれかを、ヒトMASP−2またはヒトMAp19のいずれかで置き換えるために、2つのミニ遺伝子構築物を、図4に記載されるように確立した。図4Aは、ヒトMASAP−2遺伝子のプロモーター領域を用いて、ヒトMASP−2をコードするミニ遺伝子構築物を記載する。この構築物は、最初の3つのエキソン(エキソン1〜エキソン3)の後に、その後の8つのエキソンのコード配列を表すcDNA配列が続いており、それによって、MASP−2セリンプロテアーゼの全長をコードしている。遺伝子組換えにより発現されるヒトMASP−2によって欠損型マウスMASP−2遺伝子を置き換えるために、このミニ遺伝子構築物(ミニhMASP−2と呼ぶ)を、MASP−2−/−CSの受精卵に注入した。MASP−2ミニ遺伝子構築物の配列(配列番号1)を、図10に示す。
【0092】
図4Bは、ヒトMASP−2遺伝子のプロモーター領域を使用する、ヒトMAp19/sMAPをコードするミニ遺伝子構築物を記載する。この構築物は、最初の3つのエキソン(エキソン1〜エキソン3)の後に、その後の2つのエキソンのコード配列を表すcDNA配列が続いており、それによって、MAp19の全長をコードしている。遺伝子組換えにより発現されるヒトMAp19によって欠損型マウスMAp19遺伝子を置き換えるために、このミニ遺伝子構築物(ミニhMAp19と呼ぶ)を、MASP−2−/−CSの受精卵に注入した。MAp19ミニ遺伝子構築物の配列(配列番号2)を、図11に示す。
【0093】
図10および図11の両方に示される配列の最初の部分は、ヒトMASP−2のプロモーターおよび最初の3つのエキソンを表し、そして、これは、両方の構築物において同一である。各配列の第2の部分は、後に続く8つのエキソン(図10)または後に続く2つのエキソン(図11)のいずれかのcDNAコード配列を表す。関連のペプチド配列もまた、図11に示されるが、図10のコード部分は、大文字で示される。
【0094】
MASP−2阻害因子についてスクリーニングするためのモデルとして使用するための、ヒトMASP 2を発現するMASP 2−/−ノックアウトマウスは、以下のようにして作製し得る。上記のMASP 2−/−マウスと、上記のヒトMASP 2トランスジーン構築物を発現するMASP 2−/−マウス(ヒトMASP 2のノックイン)とを交配させ、そして、マウスMASP−2−/−、マウスMAp19+、ヒトMASP−2+である子孫を使用して、ヒトMASP−2阻害因子を同定する。
【0095】
このような動物モデルは、ヒト抗MASP−2抗体、MASP−2阻害性ペプチドおよびMASP−2阻害性非ペプチド、ならびに、MASP−2阻害因子を含有する組成物のような、MASP−2阻害因子の同定および効力についての、試験物質として使用され得る。例えば、動物モデルは、MASP−2依存性の補体活性化を誘発することが公知の化合物または因子に曝露され、そして、MASP−2阻害因子が、この曝露された動物における疾患症状の減少を導くのに十分な時間および濃度で、この動物モデルに投与される。
【0096】
さらに、マウスMASP−2−/−、マウスMAp19+、ヒトMASP−2+のマウスを用いて、MASP−2関連疾患に関与する1以上の細胞型を含有する細胞株を作製し得、この細胞株は、その障害についての細胞培養モデルとして使用され得る。トランスジェニック動物からの持続的な細胞株の作製は、当該分野で周知である。例えば、Smallら,MoI.Cell Biol.,5:642−48(1985)を参照のこと。
【0097】
レクチン依存性のMASP−2補体活性化系が、腹部大動脈瘤の修復後の再灌流期に活性化されることを示す実験結果を、図8に示す。これは、虚血性の再灌流傷害を有する患者における、MBLレベルの変化を示すグラフである。腹部大動脈瘤(AAA)修復を受けた患者は、虚血性の再灌流傷害に供され、この虚血性の再灌流傷害は、大体において、補体の活性化により媒介される。本発明者らは、AAA修復を受けた患者における虚血−再灌流傷害において、補体のレクチン経路の役割を調べた。
【0098】
選択的な腎臓下AAA修復を受けた患者は、手順の間の4つの規定された時点(時点1:麻酔の導入期、時点2:大動脈のクランプの直前、時点3:大動脈のクランプを取り外す直前、時点4:再灌流の間)において、(動脈経路を介して)その橈骨動脈から、全身性の血液サンプルを採取した。大きな開腹手術を受けた患者をコントロールとして用い、そして、導入期と、手順の開始から2時間後に血液サンプルを採取した。ELISA技術を用いて、患者の血漿を、マンナン結合レクチン(MBL)のレベルについてアッセイした。MBLは、MBL会合型セリンプロテアーゼMASP−2の活性化を通じて、レクチン経路の活性化を開始する、血漿パターン認識分子である。本発明者らは、血漿MBLの消費を、再灌流中に生じるレクチン経路活性化についてのパラメータとして使用した。
【0099】
結果は図8に示される。AAA修復を受けている23名の患者および8名のコントロール患者を採用した。大きな腹部手術を受けているコントロール群から取得した血漿サンプルにおいてごく少量のMBLの消費が観察されたが、AAA患者は、血漿MBLレベルの有意な減少を示す(平均して約41%)。
【0100】
示されるデータは、補体系のレクチン経路がAAA修復後の再灌流段階において活性化されるという強力な指標を提供する。これは、虚血−再灌流傷害に対して二次的なものであるようである。なぜなら、大きな虚血−再灌流傷害を伴わずに大きな腹部手術を受けている患者のコントロール血清は、MBL血漿レベルのわずかな減少を示すのみであるからである。再灌流傷害における補体活性化の十分に確立された寄与の点から見ると、本発明者らは、虚血性内皮細胞におけるレクチン経路の活性化は再灌流傷害の病理において重要な因子であり、そしてレクチン経路活性の特異的な一過性の遮断は、一過性の虚血性傷害を伴う手術における疾患の結果(すなわち、心筋梗塞、腸梗塞、熱傷、移植および脳卒中)に対して有意な治療的インパクトを有すると結論付ける。これらの結果はまた、レクチン経路を欠く生物がこの経路の研究のための、または虚血性傷害に対する処置の開発のための、モデル生物として非常に有用であることを確認する。
【0101】
最後に、図9は、本明細書に記載される実験から得られた情報に基づく関連するレクチン経路を要約するフローチャートである。本発明者らは、MASP2が副補体経路活性化を惹起するために必要であることを同定した。MASP 2 −/−ノックアウトマウスモデルの使用を通して、本発明者らは、C3b沈着を阻害することが可能であることを示した。これは、古典的経路を完全なままにしながら、レクチン依存性のMASP−2経路を介する副補体経路活性化における開始段階であり、したがって、レクチン依存性のMASP 2活性化を、古典的経路の関与の非存在下での副補体活性化のための必要条件として確立する。したがって、本発明は、免疫系の古典的(C1q依存性の)経路成分を完全なままにしながら、レクチン媒介性の副補体経路活性化に関連する細胞傷害を阻害するための治療標的としてのMASP−2の使用を示唆する。
【0102】
さらに、ここで、レクチン経路を介するMASP−2媒介性補体活性化は、古典的経路の関与の非存在下での副活性化経路の惹起のための必要条件として確立されたので、本発明者らは、この知見をさらに、MAp19がMSAP−2タンパク質発現の調節および補体のレクチン経路活性化ルートにおいて生物学的役割を有し得ると拡張した。MAp19の欠損(すなわち、Map19 −/−)についての遺伝子標的化マウスモデルの使用を通して、本発明者らは、古典的経路を完全なままにしながらレクチン経路活性化とMSAP−2依存性のレクチン経路を介するC4沈着とを阻害し得ることを示した。したがって、本発明は、免疫系の古典的(C1q依存性の)経路成分を完全なままにしながら、レクチン媒介性の副補体経路活性化に関連する細胞傷害を阻害するための治療標的としてのMAp19の使用を示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従って、MASP−2ノックアウトのために使用される構築物と一緒に、ノックアウト実験のためにマウスMASP−2を標的化することを示すマップを示す。
【図2】図2は、MAp 19欠損性/MASP−2充足(sufficient)哺乳動物の生成において有用な、本発明の一実施形態に従って、ノックアウト実験のために(マウスMASP−2遺伝子のエキソン5として)MAp 19を標的化するために有用なloxP構築物を示す。
【図3】図3は、MAp 19とMASP−2とを欠損する哺乳動物の生成において有用なノックアウト実験のために、MAp 19を標的化するために有用な代替構築物を示す。
【図4】図4は、トランスジェニック動物の生成のための、(A)ヒトMASP−2ミニ遺伝子構築物および(B)ヒトMAp 19ミニ遺伝子構築物を示す。
【図5】図5は、MASP−2欠損性マウス(mouse)がレクチン経路媒介性C4活性化を欠くことを示す実験結果を示す。
【図6】図6は、MASP−2欠損性マウス(mouse)がレクチン経路媒介性C3活性化を欠くことを示す実験結果を示す。
【図7】図7は、MAp19欠損性マウス(mouse)がレクチン経路媒介性C4活性化を欠くことを示す実験結果を示す。
【図8】図8は、虚血性再灌流傷害を有する患者におけるMBLレベルの変化を示すグラフである。
【図9】図9は、図5、図6および図7に記載されるMASP−2欠損性マウス(mouse)およびMAp−19欠損性マウス(mouse)での実験から得られた結果をまとめるフローチャートである。
【図10−1】図10は、図4AのMASP−2ミニ遺伝子構築物のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図10−2】図10は、図4AのMASP−2ミニ遺伝子構築物のヌクレオチド配列(配列番号1)を示す。
【図11−1】図11は、図4BのMAp 19ミニ遺伝子構築物のヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。
【図11−2】図11は、図4BのMAp 19ミニ遺伝子構築物のヌクレオチド配列(配列番号2)を示す。
【図12】図12は、組換えMASP−2タンパク質が、MASP−2欠損性マウス(mouse)においてレクチン経路媒介性C4活性化を再構成することを示す実験結果を示す。
【図13】図13は、古典的経路が、MASP−2欠損性マウス(mouse)において機能することを示す実験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項2】
請求項1に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、何らかのMASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項3】
請求項1〜2のうちのいずれかに記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、すべてのMASP−2遺伝子配列がゲノムに存在しないかまたは部分的に存在しない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、本質的にすべての内因性MASP−2遺伝子配列の標的化欠失によって取得可能であるかまたは取得される、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、1つ以上の選択マーカーがゲノム中に存在する、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項6】
請求項5に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、前記選択マーカーは、ネオマイシン耐性遺伝子、プロマイシン耐性遺伝子、およびハイグロマイシン耐性遺伝子からなる群より選択される1つ以上の選択マーカーである、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項7】
マウスである、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項8】
マウス細胞である、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項9】
胚性幹細胞である、請求項1〜6または請求項8のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項10】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来する、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項11】
請求項1〜6または請求項8または9のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞に由来する、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項12】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来する、遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項13】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、内因性MASP−2遺伝子のエキソン10、エキソン11、およびエキソン12がゲノムから欠失されている、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項14】
遺伝子改変された非ヒト細胞を生成するための方法であって、該方法は、
非ヒト細胞を、MASP−2遺伝子の上流またはMASP−2遺伝子内に組込むための標的化構築物でトランスフェクトする工程であって、該標的化構築物は、標的化組換え配列と選択マーカーとを含む、工程;
該選択マーカーが存在する細胞を選択する工程;および
該細胞を、該組換え配列の組込みについてスクリーニングする工程;
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト細胞はマウス細胞である、方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト細胞は胚性幹細胞である、方法。
【請求項17】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物の生成のための、請求項9に記載の胚性幹細胞または請求項14〜16のうちのいずれか1項に記載の方法によって取得可能な細胞の使用。
【請求項18】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって、請求項9に記載の胚性幹細胞または請求項16に記載の方法によって取得可能な胚性幹細胞が、宿主胚盤胞中に導入されてキメラ動物へと発達させられる、方法。
【請求項19】
1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって、該方法は、
何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない請求項1〜7または請求項10または11に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を、1つ以上の外因性遺伝子をコードしかつ該1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な適合性非ヒト哺乳動物と交配させて、該1つ以上の外因性遺伝子についてヘテロ接合性の子孫を取得する工程;および
必要に応じて、該ヘテロ接合性の子孫を同系交配させて、該1つ以上の外因性遺伝子についてホモ接合性の子孫を生成する工程;
によって特徴付けられる、方法。
【請求項20】
1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞を生成するための方法であって、該方法は、
1つ以上の外因性遺伝子を、何らかの内因性MASP−2ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない請求項1〜6または請求項8、9または11に記載の非ヒト哺乳動物細胞中に導入する工程;
によって特徴付けられる、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記非ヒト哺乳動物細胞は胚性幹細胞である、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子はトランスフェクションによって導入される、方法。
【請求項23】
請求項20に記載の方法であって、前記非ヒト哺乳動物細胞は卵母細胞(卵細胞)である、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子はDNAマイクロインジェクションによって導入される、方法。
【請求項25】
請求項20〜24のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子は前記非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞のゲノム中に挿入される、方法。
【請求項26】
請求項19〜25のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト哺乳動物はマウスである、方法。
【請求項27】
請求項19〜26のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記外因性遺伝子はMASP−2遺伝子である、方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記MASP−2遺伝子はヒトMASP−2遺伝子である、方法。
【請求項29】
請求項19〜28のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記外因性遺伝子はヒト遺伝子である、方法。
【請求項30】
請求項14〜29のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記内因性MASP−2遺伝子のエキソン10、エキソン11、およびエキソン12が欠失される、方法。
【請求項31】
請求項19〜29のうちのいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項32】
抗体の生成における、請求項31に記載の非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞の使用。
【請求項33】
請求項32に記載の使用であって、前記抗体は前記外因性遺伝子により生成されるタンパク質に対する、使用。
【請求項34】
抗体の生成方法であって、
請求項31に記載の非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞の使用;
を包含する、方法。
【請求項35】
請求項32〜34のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記非ヒト哺乳動物は齧歯類である、方法または使用。
【請求項36】
請求項32〜35のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記非ヒト哺乳動物はマウスである、方法または使用。
【請求項37】
請求項34〜36に記載の方法によって取得される、抗体。
【請求項38】
医薬としての使用のための、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、内因性MAp19ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項40】
請求項39に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、何らかのMAp19ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項41】
請求項39または請求項40に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、すべてのMAp19遺伝子配列がゲノムに存在しないかまたは部分的に存在しない、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項42】
請求項39〜41のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、本質的にすべての内因性MAp19遺伝子配列の標的化欠失によって取得可能であるかまたは取得される、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項43】
請求項39〜42のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、1つ以上の選択マーカーがゲノム中に存在する、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項44】
請求項43に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、前記選択マーカーは、ネオマイシン耐性遺伝子、プロマイシン耐性遺伝子、およびハイグロマイシン耐性遺伝子からなる群より選択される1つ以上の選択マーカーである、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項45】
マウスである、請求項39〜44のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項46】
マウス細胞である、請求項39〜44のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項47】
胚性幹細胞である、請求項39〜44または請求項46のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項48】
請求項39〜45のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来する、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項49】
請求項39〜44または請求項46または47のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト細胞に由来する、遺伝子改変された非ヒト哺乳動物。
【請求項50】
請求項39〜45のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物に由来する、遺伝子改変された非ヒト細胞。
【請求項51】
請求項39〜50のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、内因性MASP−2遺伝子のエキソン5が欠失されている、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項52】
遺伝子改変された非ヒト細胞を生成するための方法であって、該方法は、
非ヒト細胞を、MAp19遺伝子の上流またはMAp19遺伝子内に組込むための標的化構築物でトランスフェクトする工程であって、該標的化構築物は、標的化組換え配列と選択マーカーとを含む、工程;
該選択マーカーが存在する細胞を選択する工程;および
該細胞を、該組換え配列の組込みについてスクリーニングする工程;
を包含する、方法。
【請求項53】
請求項53に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト細胞はマウス細胞である、方法。
【請求項54】
請求項52または53に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト細胞は胚性幹細胞である、方法。
【請求項55】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物の生成のための、請求項47に記載の胚性幹細胞または請求項52〜54のうちのいずれか1項に記載の方法によって取得可能な細胞の使用。
【請求項56】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって、請求項47に記載の胚性幹細胞または請求項54に記載の方法によって取得可能な胚性幹細胞が、宿主胚盤胞中に導入されてキメラ動物へと発達させられる、方法。
【請求項57】
1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を生成するための方法であって、該方法は、
何らかの内因性MAp19ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない請求項39〜45または請求項48または49に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物を、1つ以上の外因性遺伝子をコードしかつ該1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な適合性非ヒト哺乳動物と交配させて、該1つ以上の外因性遺伝子についてヘテロ接合性の子孫を取得する工程;および
必要に応じて、該ヘテロ接合性の子孫を同系交配させて、該1つ以上の外因性遺伝子についてホモ接合性の子孫を生成する工程;
によって特徴付けられる、方法。
【請求項58】
1つ以上の外因性遺伝子を発現可能な遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞を生成するための方法であって、該方法は、
1つ以上の外因性遺伝子を、何らかの内因性MAp19ポリペプチドをそれ自体がコードする核酸配列を含まない請求項39〜44または請求項46、47、または49に記載の非ヒト哺乳動物細胞中に導入する工程;
によって特徴付けられる、方法。
【請求項59】
請求項58に記載の方法であって、前記非ヒト哺乳動物細胞は胚性幹細胞である、方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子はトランスフェクションによって導入される、方法。
【請求項61】
請求項58に記載の方法であって、前記非ヒト哺乳動物細胞は卵母細胞(卵細胞)である、方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子はDNAマイクロインジェクションによって導入される、方法。
【請求項63】
請求項58〜62のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記1つ以上の外因性遺伝子は前記非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞のゲノム中に挿入される、方法。
【請求項64】
請求項57〜63のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記遺伝子改変された非ヒト哺乳動物はマウスである、方法。
【請求項65】
請求項57〜64のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記外因性遺伝子はMAp19遺伝子である、方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、前記MAp19遺伝子はヒトMAp19遺伝子である、方法。
【請求項67】
請求項57〜66のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記外因性遺伝子はヒト遺伝子である、方法。
【請求項68】
請求項52〜67のうちのいずれか1項に記載の方法であって、前記内因性MASP−2遺伝子のエキソン5が欠失される、方法。
【請求項69】
請求項57〜68のうちのいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項70】
抗体の生成における、請求項69に記載の非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞の使用。
【請求項71】
請求項70に記載の使用であって、前記抗体は前記外因性遺伝子により生成されるタンパク質に対する、使用。
【請求項72】
抗体の生成方法であって、
請求項69に記載の非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞の使用;
を包含する、方法。
【請求項73】
請求項70〜72のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記非ヒト哺乳動物は齧歯類である、方法または使用。
【請求項74】
請求項70〜73のうちのいずれか1項に記載の方法または使用であって、前記非ヒト哺乳動物はマウスである、方法または使用。
【請求項75】
請求項72〜74に記載の方法によって取得される、抗体。
【請求項76】
医薬としての使用のための、請求項75に記載の抗体。
【請求項77】
遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、レクチン補体経路応答を欠く、非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞。
【請求項78】
請求項39〜51のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、内因性MASP−2ポリペプチドをコードする核酸配列もまた含まない、非ヒト哺乳動物細胞または非ヒト細胞。
【請求項79】
請求項39〜51のうちのいずれか1項に記載の遺伝子改変された非ヒト哺乳動物または非ヒト細胞であって、内因性MASP−2ポリペプチドをコードする核酸配列もまた含む、非ヒト哺乳動物細胞または非ヒト細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−501357(P2008−501357A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526577(P2007−526577)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050086
【国際公開番号】WO2005/120222
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506410121)ユニバーシティ オブ レスター (4)
【Fターム(参考)】