説明

遺伝子改変した弱毒化水疱性口内炎ウイルス、組成物およびその使用方法

本発明は、免疫原性組成物の調製に使用するための、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の遺伝子改変および弱毒化した株を作製する方法に関する。より詳細には、本発明は、免疫原性組成物を調製するための、ウイルスの収量の増加および弱毒化した株の安定性の増加をもたらす弱毒化VSVの特定の遺伝子改変の同定に関する。細胞培養物の増殖方法およびVSVの大スケールの産生における使用も開示されている。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援の条項
本発明を導いた研究は、国立衛生研究所の契約番号N01−A1−25458によって少なくとも部分的に支援されたものである。したがって、政府が本発明の特定の権利を有し得る。
【0002】
本発明は、一般に、マイナス鎖RNAウイルスに関する。より詳細には、本発明は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)粒子を、産生で使用する細胞培養物中での成長に適応させる方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)とは、高度に保存された遺伝子配列順を有する一本鎖かつ非分割型のマイナスセンスRNAウイルスが含まれる、モノネガウイルス(Mononegavirales)目に属するラブドウイルス(Rhabdoviridae)科のプロトタイプウイルスである。11kbのVSVゲノムは、5つのウイルスタンパク質をコードしている5つの遺伝子を含有する:ヌクレオカプシドタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、付着糖タンパク質(G)、およびRNA依存性RNAポリメラーゼ(L)。ゲノム中の遺伝子配列順は3’−N−P−M−G−L−5’であり、いくつかの研究により、遺伝子発現は、単一の3’プロモーターから強制的に連続していることが実証されている(RoseおよびWhitt、Rhabdoviridae:The Viruses and Their Replication.「Fields Virology」、第4版、第1巻.Lippincott and Williams and Wilkins、1221〜1244、2001)。
【0004】
N遺伝子は、ゲノムのカプシド形成を司っているヌクレオカプシドタンパク質をコードしている一方で、P(リンタンパク質)およびL(大)コード配列は、RNA依存性RNAポリメラーゼのサブユニットを特定する。マトリックスタンパク質(M)は、ビリオン成熟を促進し、ウイルス(VSV)粒子の内部表面を裏打ちしている。VSVは、細胞付着タンパク質として役割を果たし、膜融合を媒介し、中和抗体の標的である、単一の外被糖タンパク質(G)をコードしている。
【0005】
西半球におけるVSVの2つの最も一般的な血清型は、インディアナ型(Indiana)(VSVin)およびニュージャージー型(New Jersey)(VSVnj)と命名されている。事実上、VSVは家畜に感染して自己限定性の疾患を引き起こす。VSVによる自然発生のヒト感染は稀であるが、VSV感染の症例は、感染した家畜に直接曝露した個体または実験室環境内で報告されている。ヒトのVSV感染は、典型的には無症候性であるか、または緩和なインフルエンザ様の疾病をもたらす(Fields,B.N.、およびK.Hawkins、N.Engl.J.Med.277:989〜94、1967)。小哺乳動物の中では、マウスは、様々な接種経路を介して容易に実験的に感染させることができ、したがって、免疫原性、病原性および神経毒性の研究の優れた小動物モデルとして役割を果たす(Bruno−Loboら、An.Microbiol.(Rio J.)15:53〜68、1968、Bruno−Loboら、An.Microbiol.(Rio J.)15:69〜80、1968、Flanagan,E.B.ら、J.Virol.77:5740〜8、2003、Wagner,R.R.、Infect.Immun.、10:309〜315、1974、Huneycuttら、J.Virol.67:6698〜706、1993)。
【0006】
過去数年で、VSVは、HIV、パピローマウイルス、RSV、C型肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルスを含めたいくつかのヒト病原体を含有する免疫原性組成物のベクターとしての見込みが実証されている。数々の特性により、VSVは、ヒトで使用するための魅力的な候補ベクターとなっている(Bukreyevら、J.Virol.80:10293〜306、2006、Clarkeら、Springer Semin Immunopathol.、28:239〜253、2006)。これらの特性には、1)VSVはヒト病原体でないこと、2)ヒトにおけるその使用を妨害し得る既存の免疫がわずかしか存在しないこと、3)VSVは多くの細胞種に容易に感染すること、4)免疫原性組成物の製造に適した細胞系中で効率的に増殖すること、5)遺伝的に安定していること、6)組換えウイルスを産生することができる方法が存在すること、7)VSVは、1つまたは複数の外来遺伝子挿入物を許容し、感染の際に高い発現レベルを指示できること、ならびに8)VSV感染は、細胞性および液性免疫の両方の効率的な誘導因子であることが含まれる。そのような研究は、rVSVをゲノムcDNAから容易に回収することを許容する逆遺伝学技術の出現によって大いに促進されている(Lawsonら、Proc Natl Acad Sci USA、92:4477〜81、1995、Schnellら、EMBO J、13:4195〜203、1994)。さらに、比較的小さくかつ単純なVSVのゲノム構成は外来遺伝子の挿入を受け入れられることが証明されており、生じるウイルスは高レベルの外来タンパク質を産生する。最初のベクターは、必須の遺伝子間転写制御エレメントと共に、外来コード配列がGおよびL遺伝子の間に挿入されて設計された。これらのプロトタイプベクターは、外来抗原に対して強力な免疫応答を誘発し、それらを試験した動物モデルにおいて良好に許容されたことが見出された(Grigeraら、Virus Res、69:3〜15、2000、Kahnら、J Virol、75:11079〜87、2001、Robertsら、J Virol、73:3723〜32、1999、Robertsら、J Virol、72:4704〜11、1998、Roseら、Cell、106:539〜49、2001、Roseら、J Virol、74:10903〜10、2000、Schlerethら、J Virol、74:4652〜7、2000)。注目すべきことに、Roseらは、一方がHIV−1 envをコードしており、他方がSIV gagをコードしている2つのベクターの同時投与により、免疫化したマカクにおいて、病原性SHIVを用いたアレルギー誘発に対して保護した免疫応答が生じたことを見出している(Roseら、Cell、106:539〜49、2001)。これらの研究のほとんどは、野生型(wt)VSV主鎖から誘導したプロトタイプVSVベクターを用いて実施し、wt VSVと比較して顕著に弱毒化されていることが示された(Robertsら、J.Virol.72:4704〜11、1998)。より最近の研究では、プロトタイプVSVベクターは、神経毒性の非ヒト霊長類モデルにおいて評価した場合に、野生型ウイルスと比較して減少したレベルではあるが、神経組織において顕著なレベルの傷害を引き起こしたことが示されている(Johnsonら、Virol.、360、36〜49、2007)。これらの観察により、プロトタイプrVSVベクターは、ヒトで使用するためには十分に弱毒化されていない可能性があるという結論が導かれた。
【0007】
ヒトに投与するための免疫原性組成物の製造を管理している規制に準拠した拡張可能な増殖方法の開発は、依然として、臨床評価を正当化できる前に対処しなければならないハードルである。ヒトに投与するためのベクターを設計する際、ウイルスの弱毒化をもたらす突然変異が安定しており、ウイルスの収量が拡張した産生に十分であることが不可避である。単一のヒト用量は少なくとも1×10IUであると予測され、したがって、ベクターの製造は、培地1mlあたり10IUより多くが産生される場合にのみ実用的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当分野では、回収された弱毒化VSV粒子の収量が大スケールの製造で有用となるのに十分である、弱毒化したVSV粒子を細胞培養物中での成長の増加に適応させる方法が必要である。望ましくは、そのような方法では、商業的生産について認定された細胞を用いる。さらに、そのような方法は、ウイルスの弱毒化をもたらした最初の突然変異を保持すると同時に、収量を拡張した産生に十分なレベルまで向上させるべきである。
【0009】
本明細書中の任意の引用文献の引用は、そのような引用文献が本発明の従来技術として利用可能であることを承認するものとみなされるべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、Vero細胞または任意の感受性のある細胞基質中における低い感染多重度(MOI)での連続継代培養による、高度に弱毒化したVSV組換え体を組織培養条件に適応させるプロセスまたは方法を提供する。複数の連続継代培養のプロセスは、ウイルスゲノム全体にわたるいくつかのヌクレオチド(NT)置換の進行性の自然増加によって特徴づけられている遺伝型の変化をもたらす。これらのヌクレオチド置換のほとんどは、VSVタンパク質中のアミノ酸(AA)置換をもたらす。このプロセスは、ウイルス収量の実質的な向上を伴った、ウイルスの表現型の適応をもたらした。Vero細胞中での継代は、遺伝型および表現型の安定性が達成されるまで、通常は10〜15回の連続継代(P10〜P15)続ける。P15を越えるウイルスのさらなる継代培養では、追加の置換がわずかしかまたはまったく示されず、ウイルス収量のさらなる増強はもたらされなかった。このプロセスは、製造収量の実質的な向上および製造の一貫性の増強をもたらす。適応的突然変異は、高感度マウス頭蓋内NV動物モデルにおいて試験した場合に、継代培養したウイルスの神経毒性(NV)に実質的に影響を与えなかった。
【0011】
したがって、本発明の一態様は、以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、単離された遺伝子改変水疱性口内炎ウイルス(VSV)を提供する:
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【0012】
本発明の一実施形態では、遺伝子改変VSVをコードしている核酸は、少なくとも1つの異種抗原をコードしている核酸またはその断片をさらに含む。1つの異種抗原またはその断片が、病原性微生物に由来することが想定される。異種抗原をコードしている核酸を得る病原性微生物は、ウイルス、細菌、原虫および真菌からなる群から選択され得る。一実施形態では、異種抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、HTLV抗原、SIV抗原、RSV抗原、PIV抗原、HSV抗原、CMV抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、水痘帯状疱疹ウイルス抗原、流行性耳下腺炎ウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ポリオウイルス抗原、ライノウイルス抗原、A型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、ノーウォークウイルス抗原、トガウイルス抗原、アルファウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、狂犬病ウイルス抗原、マールブルグウイルス抗原、エボラウイルス抗原、パピローマウイルス抗原、ポリオーマウイルス抗原、メタニューモウイルス抗原、コロナウイルス抗原、コレラ菌(Vibrio cholerae)抗原、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)抗原、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)抗原、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)抗原、二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)抗原、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)抗原、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)抗原、ピロリ菌(Helicobacter pylori)抗原、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)抗原、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)抗原、ヘモフィルス(Haemophilus)抗原、クラミジア(Chlamydia)抗原および大腸菌(Escherichia coli)抗原からなる群から選択され得る。
【0013】
本発明の一実施形態では、遺伝子改変VSVをコードしている核酸は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質である異種抗原をコードしている核酸をさらに含む。一実施形態では、HIVタンパク質は、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revおよびvpuからなる群から選択される遺伝子によってコードされている。一実施形態では、HIVタンパク質はHIV gagタンパク質である。一実施形態では、HIV gagタンパク質は、位置165、270、329、または348に少なくとも1つの突然変異を有する。
【0014】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、保存的または非保存的なアミノ酸変化を含む突然変異を有する。
【0015】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方の突然変異を有する。一実施形態では、Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異は、T→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異は、P→T突然変異またはP→Q突然変異である。
【0016】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、それぞれK→N、N→T、S→I、A→V/G→LまたはV→Iの突然変異である、Gタンパク質の位置109、224、438、477または481のアミノ酸の突然変異を有する。
【0017】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、それぞれP→L、K→E、またはL→Iである、Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸の突然変異を有する。
【0018】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、HIV gagタンパク質をコードしている核酸分子をさらに含み、HIV gagタンパク質は、位置165、270、329または348のアミノ酸のうちの少なくとも1つに突然変異を有し、突然変異は、それぞれS→G、L→S、D→NまたはT→Kである。
【0019】
一実施形態では、遺伝子改変VSVについて上述した突然変異は、ウイルスの遺伝子型および/または表現型の安定性の増加をもたらす。一実施形態では、遺伝子改変VSVについて上述した突然変異は、遺伝子改変VSVに感染した細胞からのウイルス産生の収量の増加をさらにもたらす。
【0020】
一実施形態では、遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に少なくとも2つの他の突然変異をさらに含む。一実施形態では、突然変異は、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異からなる群から選択され得る。
【0021】
本発明の第2の態様は、VSVを、感受性のある哺乳動物細胞系中で、約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)/mlの範囲の低い感染多重度(MOI)で少なくとも5〜15継代連続して継代培養することを含み、ウイルスが、少なくとも1×10PFU/mlの力価および本明細書中に記載の突然変異のうちの少なくとも1つまたは複数を有することを含む、本明細書中に記載の遺伝子改変VSVを産生する方法を提供する。
【0022】
一実施形態では、上述の方法により、少なくとも1×10PFU/mlの力価を有する、遺伝子改変および弱毒化したウイルスがもたらされる。
【0023】
一実施形態では、上述の方法は、感受性のある細胞系、すなわち、本明細書中に記載の遺伝子改変VSVに感染させることができる任意の細胞系を利用する。たとえば、感受性のある細胞系には、それだけには限定されないが、Vero細胞系、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、または293細胞系などのヒト胎児腎臓細胞系が含まれ得る。
【0024】
一実施形態では、上述の方法により、約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)/mlの範囲の低MOIで約5〜15回継代培養していないウイルス株で得られるものと比較して、5〜100倍高いウイルスの収量がもたらされる。
【0025】
一実施形態では、上述の方法により、ウイルスの遺伝子型および/または表現型の安定性の増加がもたらされる。
【0026】
本発明の第3の態様は、上述の遺伝子改変VSVのいずれか1つまたは複数と薬学的に許容できる担体とを含む免疫原性組成物を提供する。
【0027】
一実施形態では、免疫原性組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0028】
本発明の第4の態様は、免疫学的に有効な量の、本明細書中に記載の遺伝子改変VSVのいずれか1つまたは複数を投与することを含む、哺乳動物を病原性微生物による感染に対して保護する方法を提供する。
【0029】
本発明の第5の態様は、ウイルスを細胞培養物中での成長に適応させる方法であって、
a.細胞培養物を、細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)の範囲の低い感染多重度(MOI)のウイルスに感染させるステップと、
b.ウイルスを含有する細胞培地を収集するステップと、
c.細胞培地を清澄にするステップと、
d.細胞培地を凍結するステップと、
e.ステップa)からd)を約5〜約15回繰り返すステップと
を含み、ウイルスの産生/収量の5〜100倍の増加ならびにウイルスの遺伝子型および表現型の安定性の増加をもたらす方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、本明細書中に記載の方法では、弱毒化したウイルスであるウイルスを利用する。一実施形態では、この方法は、ウイルス免疫原性組成物の大スケールの産生に適応している。一実施形態では、この方法は、細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位の範囲の低い感染多重度で約5〜15回継代培養していないウイルス株で得られるものと比較して、5〜100倍高いウイルスの収量をもたらす。一実施形態では、上述の方法により、ウイルスの弱毒化に関連する任意の既存の突然変異の維持が可能となる。ウイルスの弱毒化に関連する既存の突然変異は、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異からなる群から選択され得る。一実施形態では、この方法により、ウイルスの弱毒化に関連する低い神経毒性プロフィールの維持が可能となる。一実施形態では、上述の方法で使用する弱毒化したウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の株である。一実施形態では、上述の方法では、以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、遺伝子改変VSVを利用する:
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【0031】
一実施形態では、本明細書中に記載の方法では、保存的または非保存的なアミノ酸変化を含む突然変異を有する水疱性口内炎ウイルスを利用する。一実施形態では、突然変異は、VSV Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方であり得る。一実施形態では、Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異は、T→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異は、P→TまたはP→Qの突然変異である。
【0032】
一実施形態では、突然変異は、VSV Gタンパク質の位置109、224、438、477または481であってよく、それぞれK→N、N→T、S→I、A→V/G→L、またはV→Iの突然変異であり得る。
【0033】
一実施形態では、突然変異は、VSV Lタンパク質の位置205、220または1450であり得る。
【0034】
本発明の一実施形態では、本明細書中に記載の方法では、インディアナ血清型(ATCC、VR−1238)、ニュージャージー血清型(ATCC、VR−1239)、イスファハン(Ishafan)血清型(PMID:192094)、チャンディプラ血清型(ATCC、VR−476)または他のベシクロウイルスから選択され得るVSVの株を利用する。
【0035】
本発明の一実施形態では、本明細書中に記載の方法では、少なくとも1つの異種抗原をコードしている核酸を含有するVSVの株を利用する。異種抗原は、ウイルス、細菌、原虫および真菌からなる群から選択される病原性微生物から得る。異種抗原は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、HTLV抗原、SIV抗原、RSV抗原、PIV抗原、HSV抗原、CMV抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、水痘帯状疱疹ウイルス抗原、流行性耳下腺炎ウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ポリオウイルス抗原、ライノウイルス抗原、A型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、ノーウォークウイルス抗原、トガウイルス抗原、アルファウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、狂犬病ウイルス抗原、マールブルグウイルス抗原、エボラウイルス抗原、パピローマウイルス抗原、ポリオーマウイルス抗原、メタニューモウイルス抗原、コロナウイルス抗原、コレラ菌(Vibrio cholerae)抗原、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)抗原、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)抗原、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)抗原、二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)抗原、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)抗原、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)抗原、ピロリ菌(Helicobacter pylori)抗原、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)抗原、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)抗原、ヘモフィルス(Haemophilus)抗原、クラミジア(Chlamydia)抗原、および大腸菌(Escherichia coli)抗原からなる群から選択され得る。
【0036】
一実施形態では、異種抗原はHIVタンパク質を含む。一実施形態では、HIVタンパク質は、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revおよびvpuからなる群から選択される遺伝子によってコードされている。一実施形態では、HIVタンパク質はHIV gagタンパク質である。一実施形態では、HIV gagタンパク質は、位置165、270、329または348に少なくとも1つの突然変異を有する。
【0037】
一実施形態では、HIV gagタンパク質の位置165、270、329または348のアミノ酸の突然変異は、それぞれS→G、L→S、D→N、またはT→Kである。
【図面の簡単な説明】
【0038】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、単離された遺伝子改変水疱性口内炎ウイルス(VSV):
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【請求項2】
遺伝子改変VSVをコードしている核酸が、少なくとも1つの異種抗原をコードしている核酸またはその断片をさらに含む、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項3】
1つの異種抗原またはその断片が病原性微生物に由来する、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項4】
異種抗原をコードしている核酸を得る病原性微生物が、ウイルス、細菌、原虫および真菌からなる群から選択される、請求項3に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項5】
異種抗原が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、HTLV抗原、SIV抗原、RSV抗原、PIV抗原、HSV抗原、CMV抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、水痘帯状疱疹ウイルス抗原、流行性耳下腺炎ウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ポリオウイルス抗原、ライノウイルス抗原、A型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、ノーウォークウイルス抗原、トガウイルス抗原、アルファウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、狂犬病ウイルス抗原、マールブルグウイルス抗原、エボラウイルス抗原、パピローマウイルス抗原、ポリオーマウイルス抗原、メタニューモウイルス抗原、コロナウイルス抗原、コレラ菌(Vibrio cholerae)抗原、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)抗原、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)抗原、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)抗原、二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)抗原、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)抗原、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)抗原、ピロリ菌(Helicobacter pylori)抗原、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)抗原、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)抗原、ヘモフィルス(Haemophilus)抗原、クラミジア(Chlamydia)抗原および大腸菌(Escherichia coli)抗原からなる群から選択される、請求項4に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項6】
異種抗原がHIVタンパク質を含む、請求項5に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項7】
HIVタンパク質が、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revおよびvpuからなる群から選択される遺伝子によってコードされている、請求項6に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項8】
HIVタンパク質がHIV gagタンパク質である、請求項6に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項9】
HIV gagタンパク質が、位置165、270、329、または348に少なくとも1つの突然変異を有する、請求項8に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項10】
突然変異が保存的または非保存的なアミノ酸変化を含む、請求項1から9のいずれかに記載の遺伝子改変VSV。
【請求項11】
突然変異が、Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方である、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項12】
Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異がT→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異がP→T突然変異である、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項13】
Gタンパク質の位置109、224、438、477または481のアミノ酸の突然変異が、それぞれK→N、N→T、S→I、A→V/G→L、またはV→Iの突然変異である、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項14】
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸の突然変異が、それぞれP→L、K→E、またはL→Iである、請求項1に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項15】
HIV gagタンパク質の位置165、270、329または348のアミノ酸の突然変異が、それぞれS→G、L→S、D→NまたはT→Kである、請求項9に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項16】
アミノ酸のいずれか1つまたは複数の突然変異が、ウイルスの遺伝子型および/または表現型の安定性の増加をもたらす、請求項1から15のいずれか一項に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項17】
アミノ酸のいずれか1つまたは複数の突然変異が、前記ウイルスに感染した細胞からのウイルス産生の収量の増加をさらにもたらす、請求項16に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項18】
そのゲノム中に少なくとも2つの他の突然変異をさらに含み、突然変異が、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異からなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の遺伝子改変VSV。
【請求項19】
VSVを、連続哺乳動物細胞系中で、約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)/mlの範囲の低い感染多重度(MOI)で少なくとも5〜15継代連続して継代培養することを含み、ウイルスが、少なくとも1×10PFU/mlの力価および請求項1から14のいずれか一項に記載の突然変異のうちの少なくとも1つまたは複数を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の遺伝子改変VSVを産生する方法。
【請求項20】
ウイルスが少なくとも1×10PFU/mlの力価を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細胞系が、Vero、BHK、または293細胞系である、請求項19または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)の範囲の低MOIで約5〜15回継代培養していないウイルス株で得られるものと比較して、5〜100倍高いウイルスの収量をもたらす、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
遺伝子改変VSVにより、ウイルスの遺伝子型および/または表現型の安定性の増加が実証される、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の遺伝子改変VSVのいずれか1つまたは複数と、薬学的に許容できる担体とを含む免疫原性組成物。
【請求項25】
アジュバントをさらに含む、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
免疫学的に有効な量の、請求項1から15のいずれか一項に記載の遺伝子改変VSVを投与することを含む、哺乳動物を病原性微生物による感染に対して保護する方法。
【請求項27】
免疫学的に有効な量の、請求項24または25のいずれかに記載の免疫原性組成物を投与することを含む、哺乳動物を病原性微生物による感染に対して保護する方法。
【請求項28】
ウイルスを細胞培養物中での成長に適応させる方法であって、
a.細胞培養物を、細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)の範囲の低い感染多重度(MOI)のウイルスに感染させるステップと、
b.ウイルスを含有する細胞培地を収集するステップと、
c.細胞培地を清澄にするステップと、
d.細胞培地を凍結するステップと、
e.ステップa)からd)を約5〜約15回繰り返すステップと
を含み、ウイルスの産生/収量の5〜100倍の増加ならびにウイルスの遺伝子型および表現型の特徴の安定性の増加をもたらす方法。
【請求項29】
ウイルスが弱毒化したウイルスである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ウイルスの弱毒化に関連する任意の既存の突然変異の維持が可能となる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ウイルスの弱毒化に関連する低い神経毒性プロフィールの維持が可能となる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
免疫原性組成物の大スケールの産生に使用する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位の範囲の低い感染多重度で約5〜15回継代培養していないウイルス株で得られるものと比較して、5〜100倍高いウイルスの収量をもたらす、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ウイルスの弱毒化に関連する既存の突然変異が、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
弱毒化したウイルスが水疱性口内炎ウイルス(VSV)の株である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
VSVが、以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、請求項30に記載の方法:
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【請求項37】
突然変異が保存的または非保存的なアミノ酸変化を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
突然変異が、Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異がT→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異がP→T突然変異である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
Gタンパク質の位置109、224、438、477または481のアミノ酸の突然変異が、それぞれK→N、N→T、S→I、(A→V/G→L)、またはV→Iの突然変異である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸の突然変異が、それぞれP→L、K→E、またはL→Iである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
VSVの株が、インディアナ株またはニュージャージー株またはイスファハン血清型または他のベシクロウイルスから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
VSVの株が、少なくとも1つの異種抗原をコードしている核酸を含有する、請求項36または42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
異種抗原が、ウイルス、細菌、原虫および真菌からなる群から選択される病原性微生物から得られる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
異種抗原が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、HTLV抗原、SIV抗原、RSV抗原、PIV抗原、HSV抗原、CMV抗原、エプスタイン−バーウイルス抗原、水痘帯状疱疹ウイルス抗原、流行性耳下腺炎ウイルス抗原、麻疹ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ポリオウイルス抗原、ライノウイルス抗原、A型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、ノーウォークウイルス抗原、トガウイルス抗原、アルファウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、狂犬病ウイルス抗原、マールブルグウイルス抗原、エボラウイルス抗原、パピローマウイルス抗原、ポリオーマウイルス抗原、メタニューモウイルス抗原、コロナウイルス抗原、コレラ菌(Vibrio cholerae)抗原、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)抗原、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)抗原、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)抗原、二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)抗原、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)抗原、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)抗原、ピロリ菌(Helicobacter pylori)抗原、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)抗原、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)抗原、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)抗原、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)抗原、破傷風菌(Clostridium tetani)抗原、百日咳菌(Bordetella pertussis)抗原、ヘモフィルス(Haemophilus)抗原、クラミジア(Chlamydia)抗原、および大腸菌(Escherichia coli)抗原からなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
異種抗原がHIVタンパク質を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
HIVタンパク質が、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revおよびvpuからなる群から選択される遺伝子によってコードされている、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
HIVタンパク質がHIV gagタンパク質である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
HIV gagタンパク質が、位置165、270、329または348に少なくとも1つの突然変異を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
HIV gagタンパク質の位置165、270、329または348のアミノ酸の突然変異が、それぞれS→G、L→S、D→N、またはT→Kである、請求項49に記載の方法。

【図1】wt VSVおよびattn VSVN4CT1−gag1(INおよびNJ血清型)のゲノム構成を示す模式図である。
【図2】ウイルスをVero細胞中で連続継代培養するために使用した実験プロトコルの概要を示す図である。5継代ごとのウイルスを、示したアッセイによって分析した。
【図3】連続Vero細胞中での継代後にIN血清型の弱毒化したVSV(rVSVinN4CT1−gag1)ウイルスで生じた適応的アミノ酸置換を示す図である。
【図4】連続Vero細胞中での継代後にNJ血清型の弱毒化したVSV(rVSVnjN4CT1−gag1)ウイルスで生じた適応的アミノ酸置換を示す図である。
【図5】IN血清型の弱毒化したrVSVinN4CT1−gag1ウイルスの成長動態に対する継代レベルの効果を示す図である。連続継代培養により、≧10PFU/mlの製造目標を超える、収量の顕著な増加がもたらされた。継代15回目より後では、顕著な成長の変化がなかった。
【図6】NJ血清型の弱毒化したrVSVnjN4CT1−gag1ウイルスの成長動態に対する継代レベルの効果を示す図である。
【図7】Cooperら、J Virology、82、207−29、2008に記載のように、マウス頭蓋内(IC)LD50動物モデルにおけるrVSVinN4CT1−gag1継代培養ウイルスP0〜P25の神経毒性(NV)試験の結果を示す図である。
【図8−1】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−2】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−3】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−4】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−5】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−6】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−7】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−8】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−9】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−10】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−11】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図8−12】VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−1】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−2】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−3】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−4】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−5】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−6】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−7】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−8】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−9】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−10】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−11】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−12】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図9−13】VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す図である。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。
【図10】低および高継代のウイルスを用いた、VSVinN4CT1−gag1のバイオリアクターの実行の成長動態を示す図である。
【図11】低および高継代のウイルスを用いた、VSVnjN4CT1−gag1のバイオリアクターの実行の成長動態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本方法および治療方法を記載する前に、方法および条件は変動し得るため、本発明は特定の方法および記載した実験条件に限定されないことを理解されたい。また、本明細書中で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみが目的であり、限定することを意図しないことを理解されたい。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲中で使用する単数形「a」、「an」、および「the」には、内容により明らかにそうでないと指示される場合以外は、複数形の言及が含まれる。したがって、たとえば、「方法(the method)」への言及には、1つまたは複数の、方法、および/または本明細書中に記載した種類のステップ、および/または本開示を読むことによって当業者に明らかとなるものなどが含まれる。
【0041】
したがって、本出願中では、当分野の技術範囲内にある慣用の分子生物学、微生物学、および組換えDNAの技術を用い得る。そのような技術は、文献中に十分に説明されている。たとえば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州Cold Spring Harbor(本明細書中で「Sambrookら、1989」)、DNA Cloning:A Practical Approach、第IおよびII巻(D.N.Glover編、1985)、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985))、Transcription And Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984))、Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(1986))、Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、(1986))、B.Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0042】
本明細書中に記載のものと類似または等価な任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書中で言及するすべての出版物は、その全体が参照により組み込まれている。
【0043】
定義
本明細書中で使用する用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、利便性および完全性のため、特定の用語およびその意味を以下に記載する。
【0044】
用語「約」とは、20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0045】
用語「アジュバント」とは、抗原に対する免疫応答を増強させる化合物または混合物をいう。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポーとして、また、免疫応答を非特異的に増強させるリンパ系活性化剤として役割を果たすことができる(Hoodら、Immunology、第2版、1984、Benjamin/Cummings:カリフォルニア州Menlo Park、ページ384)。状況次第では、アジュバントの非存在下における、抗原を単独で用いた一次アレルギー誘発は、十分な液性または細胞性免疫応答の誘発に失敗する場合がある。それだけには限定されないが、インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、12(たとえば米国特許第5,723,127号を参照)、13、14、15、16、17および18(ならびにその突然変異体)、インターフェロン−α、βおよびγ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(たとえば、米国特許第5,078,996号およびATCC受託番号39900を参照)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、腫瘍壊死因子αおよびβを含めた、いくつかのサイトカインまたはリンホカインが、免疫変調活性を有しており、したがってアジュバントとして有用であることが示されている。本明細書中に記載の免疫原性組成物と共にして有用なさらに他のアジュバントには、それだけには限定されないがMCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESを含めたケモカイン、接着分子、たとえばセレクチン、たとえば、L−セレクチン、P−セレクチンおよびE−セレクチン、ムチン様分子、たとえば、CD34、GlyCAM−1およびMadCAM−1、インテグリンファミリーのメンバー、たとえば、LFA−1、VLA−1、Mac−1およびp150.95、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー、たとえば、PECAM、ICAM、たとえば、ICAM−1、ICAM−2およびICAM−3、CD2ならびにLFA−3、共刺激分子、たとえば、CD40およびCD40L、血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、表皮成長因子、B7.2、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を含めた成長因子、Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を含めた受容体分子、カスパーゼ(ICE)が含まれる。
【0046】
免疫応答を増強させるために使用する適切なアジュバントには、それだけには限定されないが、米国特許第4,912,094号に記載されているMPL(商標)(3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A、Corixa、モンタナ州Hamilton)がさらに含まれる。また、Corixa(モンタナ州Hamilton)から入手可能であり、米国特許第6,113,918号に記載されている、合成脂質A類似体またはアミノアルキルグルコサミンリン酸化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体も、アジュバントとしての使用に適している。そのようなAGPの1つは、529としても知られる(以前はRC529として知られていた)、2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−b−D−グルコピラノシドである。この529アジュバントは、水性形態として(AF)または安定な乳濁液として(SE)配合する。
【0047】
さらに他のアジュバントには、ムラミルペプチド、たとえば、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)、水中油乳濁液、たとえば、MF59(国際PCT公開WO90/14837号)(5%のスクワレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85を含有する(様々な量のMTP−PEを任意選択で含有する)モデル110Y微小流動化装置(Microfluidics、マサチューセッツ州Newton)などの微小流動化装置を用いてサブミクロンの粒子を形成)、ならびにSAF(10%のスクワレン、0.4%のTween80、5%のプルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有し、サブミクロンの乳濁液に微小流動化するか、もしくは渦攪拌してより大きな粒子径乳濁液を作製)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、アルミニウム塩(ミョウバン)、たとえば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、Amphigen、Avridine、L121/スクワレン、D−ラクチド−ポリ乳酸/グリコシド、プルロニックポリオール、死滅させたボルデテラ(Bordetella)、サポニン、たとえば、米国特許第5,057,540号に記載のStimulon(商標)QS−21(Antigenics、マサチューセッツ州Framingham)、米国特許第5,254,339号に記載のISCOMATRIX(CSL Limited、オーストラリアParkville)、および免疫賦活複合体(ISCOMS)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、細菌リポ多糖、合成ポリヌクレオチド、たとえばCpG モチーフを含有するオリゴヌクレオチド(たとえば米国特許第6,207,646号)、欧州特許第1,296,713号および第1,326,634号に記載のIC−31(Intercell AG、オーストリアVienna)、百日咳毒素(PT)もしくはその突然変異体、コレラ毒素もしくはその突然変異体(たとえば、国際PCT公開WO00/18434号、WO02/098368号およびWO02/098369号)、または大腸菌(E.coli)熱不安定毒素(LT)、特にLT−K63、LT−R72、PT−K9/G129(たとえば、国際PCT公開WO93/13302号およびWO92/19265号を参照)が含まれる。
【0048】
用語「抗原」とは、動物において抗体の産生もしくはT細胞応答、または両方を刺激することができる化合物、組成物、または免疫原性物質をいい、動物に注射するまたは吸収される組成物が含まれる。免疫応答は、全分子に対して、または分子の一部分(たとえば、エピトープもしくはハプテン)に対して生じさせ得る。この用語は、個々の巨大分子または抗原性巨大分子の同種もしくは異種の集団をいうために使用し得る。抗原は、特異的な液性および/または細胞性免疫の産物と反応する。用語「抗原」には、タンパク質、ポリペプチド、抗原性タンパク質断片、核酸、オリゴ糖、多糖類、有機または無機の化合物または組成物などを含めた部分が、広く包含される。用語「抗原」には、すべての関連する抗原性エピトープが含まれる。所定の抗原のエピトープは、当分野で周知の任意の数のエピトープマッピング技術を用いて同定することができる。たとえば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、第66巻(Glenn E.Morris編、1996)Humana Press、ニュージャージー州Totowaを参照されたい。たとえば、直鎖状エピトープは、たとえば、タンパク質分子の部分に対応する多数のペプチドを固体担体上で同時に合成し、ペプチドが支持体に付着しているままでペプチドを抗体と反応させることによって、決定し得る。そのような技術は当分野で知られており、たとえば、すべてその全体で本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第4,708,871号、Geysenら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:3998〜4002、Geysenら、(1986)Molec.Immunol.、23:709〜715に記載されている。同様に、立体構造エピトープは、たとえば、X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴などによって、アミノ酸の空間的な立体構造を決定することによって容易に同定される。たとえば、Epitope Mapping Protocols、上記を参照されたい。さらに、本発明の目的のために、「抗原」とは、タンパク質が免疫学的応答を誘発する能力を維持している限りは、天然の配列への、欠失、付加および置換などの修飾(一般に保存的な性質であるが、非保存的であり得る)が含まれるタンパク質をいうためにも使用することができる。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発、もしくは特定の合成手順、もしくは遺伝子操作手法などによる意図的なものであってよく、または、抗原を産生する宿主の突然変異などによる偶発的なものであってもよい。さらに、抗原は、任意のウイルス、細菌、寄生生物、原虫、または真菌に由来するまたはそれから得ることもでき、全生物でもあり得る。同様に、核酸免疫化用途などにおける、抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、この定義内に含まれる。合成抗原、たとえば、ポリエピトープ、隣接するエピトープ、および他の組換えまたは合成によって誘導した抗原も含まれる(Bergmannら、(1993)Eur.J.Immunol.、23:2777〜2781、Bergmannら、(1996)J.Immunol.、157:3242〜3249、Suhrbier,A.(1997)Immunol.and Cell Biol.75:402〜408、Gardnerら、(1998)12th World AIDS Conference、スイスGeneva、1998年6月28日〜7月3日)。
【0049】
用語「弱毒化した」とは、特定の疾患を生じさせずに免疫応答が開始されるように、病原性が減少されている病原体の株をいう。ウイルスの弱毒化した株は、それが由来する親株よりも病原性が低い。化学突然変異原を加えた細胞培養物中でのウイルスの成長中の化学突然変異誘発などの慣用の手段を用いて、弱毒化突然変異を導入して改変したウイルスを作製する。弱毒化突然変異を導入する代替手段は、部位特異的突然変異誘発を用いて事前に決定された突然変異を作製することを含む。1つまたは複数の突然変異を導入し得る。その後、これらのウイルスを、細胞培養物中および/または動物モデル中において、その生物活性の弱毒化についてスクリーニングする。救済したウイルスの弱毒化された表現型が存在する場合は、アレルギー誘発実験を適切な動物モデルで実施することができる。非ヒト霊長類が、ヒト疾患の病因の適切な動物モデルとして役割を果たすことができる。これらの霊長類は、最初に、弱毒化した、組換えによって産生したウイルスを用いて免疫化し、その後、ウイルスの野生型でアレルギー誘発する。
【0050】
本明細書中で使用する用語「細胞」、「宿主細胞」、「細胞培養物」などには、ウイルス、ベクターまたは外因性の核酸分子、ポリヌクレオチドおよび/もしくはタンパク質の取り込みのレシピエントとなり得る、またはそうであった、任意の個々の細胞または細胞培養物が含まれることを意図する。また、単一の細胞の子孫も含まれることを意図する。しかし、子孫は、天然、偶発的、または意図的な突然変異が原因で、元の親細胞と必ずしも完全に同一でなくてもよい(形態学またはゲノムもしくは全DNA補体において)。細胞は、好ましくは真核であるが、原核であってもよく、それだけには限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、動物細胞、および哺乳動物細胞(たとえば、ネズミ、ラット、サルまたはヒト)が含まれる。
【0051】
本明細書中で使用する用語「清澄にすること」とは、細胞または細胞培養物を本発明のウイルスに感染させた後に細胞および細胞細片を除去する、ウイルス精製の初期ステップをいう。たとえば、ウイルス精製の初期ステップは、細胞培地を「清澄」して、低速遠心分離(≦10,000RPM)または濾過などの方法を用いて細胞細片を除去することを含む。その後、米国特許公開第20070249019号に記載されているものなどの、スクロースクッションを通した高速遠心分離(たとえば100,000×g)またはイオン交換カラムを通した単離などの当業者に知られている方法を用いて、上清中に存在するウイルスを単離および精製する。
【0052】
本開示中、「含む(comprises)」、「含んだ(comprised)」、「含むこと(comprising)」、「含有する(contains)」、「含有すること(containing)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有することができ、たとえば、これらは、「含まれる(includes)」、「含めた(included)」、「含めること(including)」などを意味することができることに注記されたい。「から本質的になる(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰属させられる意味を有し、たとえば、これらは、本発明の新規または基本的な特徴を損ねない追加の成分またはステップの包含を許容する、すなわち、これらは、本発明の新規または基本的な特徴を損ねる追加の列挙していない成分またはステップを排除し、本明細書中で引用するまたは本明細書中に参照により再組み込みされている当分野の文書などの、従来技術の成分またはステップを排除する。これは、特に、本文書の目的が、従来技術を超えて、たとえば、本明細書中で引用するまたは本明細書中に参照により組み込まれている文書を超えて、特許性のある、たとえば、新規であり、非自明であり、発明性のある、実施形態を定義することであるためである。また、用語「からなる(consists of)」および「からなる(consisting of)」は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有する、すなわち、これらの用語はクローズドエンドである。
【0053】
「保存的アミノ酸置換」とは、タンパク質のアミノ酸残基のうちの1つまたは複数を、同様の物理的および/または化学的な特性を有する他のアミノ酸残基で置換することをいう。配列内のアミノ酸の置換体は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。たとえば、無極性(疎水性)のアミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。芳香環構造を含有するアミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンである。極性の中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。そのような変更は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、または等電点によって決定する見かけの分子量には影響を与えないと予測される。特に好ましい置換は、正電荷が維持され得るようにLysでArgを、その逆、負電荷が維持され得るようにGluでAspを、その逆、遊離−OHを維持できるようにSerでThrを、ならびに遊離NHが維持できるようにGlnでAsnを置換することである。
【0054】
用語「培養液」、「細胞培養液」、「細胞培養培地」、「培地」および/または「バイオリアクター液」とは、互換性があるように使用され、細胞培養物を成長させる培地または溶液をいう。
【0055】
「によってコードされている」または「コードしている」とは、ポリペプチド配列をコードしている核酸配列をいい、ポリペプチド配列は、少なくとも3〜5個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも15〜20個のアミノ酸のアミノ酸配列を含有し、ポリペプチドは核酸配列によってコードされている。また、配列によってコードされているポリペプチドを用いて免疫学的に同定可能なポリペプチド配列も包含される。したがって、抗原の「ポリペプチド」、「タンパク質」、または「アミノ酸」の配列は、抗原のポリペプチドまたはアミノ酸配列と少なくとも70%の類似度、好ましくは少なくとも約80%の類似度、より好ましくは約90〜95%の類似度、最も好ましくは約99%の類似度を有し得る。
【0056】
「断片」とは、親タンパク質もしくはポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも4個のアミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも125個のアミノ酸残基、もしくは少なくとも150個のアミノ酸残基)のアミノ酸配列、または、親核酸のヌクレオチド配列の少なくとも10塩基対(好ましくは少なくとも20塩基対、少なくとも30塩基対、少なくとも40塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも50塩基対、少なくとも100塩基対、少なくとも200塩基対)のヌクレオチド配列を含む核酸を含む、タンパク質またはポリペプチドのどちらかをいう。任意の所定の断片は、親の核酸またはタンパク質もしくはポリペプチドの機能的活性を保有していても保有していなくてもよい。
【0057】
本発明の場面で使用する「遺伝子」とは、遺伝機能が関連している、核酸分子(染色体、プラスミドなど)中のヌクレオチドの配列である。遺伝子とは、たとえば生物の遺伝単位であり、生物のゲノム内の特定の物理的位置(「遺伝子座(gene locus)」または「遺伝子座(genetic locus)」)を占有するポリヌクレオチド配列(たとえば哺乳動物のDNA配列)を含む。遺伝子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(たとえばtRNA)などの発現産物をコードしていることができる。あるいは、遺伝子は、タンパク質および/または核酸の結合などの、特定の事象/機能のゲノムの位置(たとえばファージ付着部位)を定義していてもよく、遺伝子が発現産物をコードしていない。典型的には、遺伝子には、ポリペプチドコード配列などのコード配列、およびプロモーター配列、ポリアデニル化配列、転写調節配列(たとえばエンハンサー配列)などの非コード配列が含まれる。多くの真核遺伝子は、「イントロン」(非コード配列)によって中断された「エクソン」(コード配列)を有する。特定の事例では、1つの遺伝子が別の遺伝子(複数可)と配列を共有し得る(たとえば重複遺伝子)。用語「遺伝子」には、たとえば遺伝子が発現される条件下を決定する、プロモーター配列などの調節性DNA配列が含まれていても含まれていなくてもよい。構造遺伝子でない一部の遺伝子は、DNAからRNAへと転写されるが、アミノ酸配列へと翻訳されない場合がある。他の遺伝子が構造遺伝子の調節因子またはDNA転写の調節因子として機能し得る。
【0058】
本明細書中で定義する用語「遺伝子シャフリング」、「シャフリングした遺伝子」、「シャフリングした」、「シャフリング」、「遺伝子再配置」および「遺伝子転座」とは、互換性があるように使用され、野生型VSVゲノムの順序の変化(突然変異)をいう。本明細書中で定義する野生型VSVゲノムは、3’−NPMGL−5’の遺伝子配列順を有する。
【0059】
用語「遺伝子改変した」とは、一般に、当業者に知られている任意の手段によって、1つまたは複数の突然変異をウイルスゲノム内に導入することをいう。しかし、特定の「遺伝子改変」は、特定の欠失、挿入、もしくは置換によって、または標準の遺伝子操作技術を用いて遺伝物質をウイルスゲノム内に移すことによって行い得る一方で、本発明におけるVSVゲノムの特定の遺伝子改変は、弱毒化したVSVを低い感染多重度で連続継代培養することによって生じた。この低MOIでの連続継代培養は、ウイルスゲノム全体にわたるいくつかのヌクレオチド置換の進行性の自然増加をもたらし、また、VSVタンパク質中のアミノ酸置換ももたらした。これらの「遺伝子改変した」VSV粒子は、細胞中での増加した成長に適応していることが示されたが、神経毒性の小動物モデルにおいて神経病理の増加はなかった。本発明では、「低継代ウイルス」、「継代0回目」または「P0」、および「元のウイルス」とは、互換性があるように使用され、本発明の遺伝子改変したウイルスの出発物質として役割を果たしたrVSVN4CT1gag1ウイルスを表す。一部の事例、特にバイオリアクターの実行では、低継代ウイルスを示すために1〜3回継代培養したウイルスも含まれる。「高継代ウイルス」、「継代培養したウイルス」、「遺伝子改変したウイルス」、「組織培養に適応させた」または「細胞に適応させたウイルス」とは、互換性があるように使用され、5回より多く、一般に5〜25回、好ましくは15回継代培養したウイルスを表す。
【0060】
本明細書中で使用する用語「成長させる」または「成長」とは、様々な種類の細胞中でのウイルスのin vitro増殖をいう。実験室において細胞中でウイルスを成長させること/その成長は、細胞にウイルスを接種することと、続いてインキュベーションしてウイルス産生を可能にすることと、その後、ウイルスを含有する細胞培地を収集することとを含む。ウイルスに感染した細胞は、通常、培養容器(接着細胞にはフラスコもしくは皿または懸濁液中の細胞には常に動かすボトルもしくはフラスコなど)内の成長培地で成長させ、培養物は、一定の温度、湿度および気体組成を有する細胞インキュベーター内で維持した。しかし、培養条件は細胞種に応じて変動することができ、細胞の変化を誘導するため、または細胞によるウイルス産生を支援もしくは増強するために変更することができる。
【0061】
本明細書中で使用する用語「収集すること」とは、本明細書中に記載のウイルス株または血清型のいずれかで細胞または細胞系を感染させた後にウイルスの単離および精製に備えて、細胞または細胞培地を回収することをいう。
【0062】
用語「異種」とは、ウイルスまたは細胞中に天然で存在しないエレメントの組合せをいう。たとえば、異種DNAとは、天然で細胞内、または細胞の染色体部位内に位置しないDNAをいう。異種DNAには、細胞に外来の遺伝子が含まれ得る。本明細書中で使用する用語「異種抗原」とは、抗原がその生物に由来しないか、またはその正常な位置もしくはその天然の形態でコードされていない、核酸配列にコードされている抗原である。異種発現調節エレメントとは、それが天然で作動可能に会合しているものとは異なる遺伝子と作動可能に会合したエレメントである。
【0063】
用語「免疫原性組成物」とは、抗原、たとえば微生物を含有する任意の医薬組成物に関し、組成物は、哺乳動物において免疫応答を誘発するために使用することができる。免疫応答には、T細胞応答、B細胞応答、またはT細胞およびB細胞の応答両方が含まれ得る。組成物は、細胞表面でMHC分子と会合した抗原を提示することによって、哺乳動物を感作させるために役割を果たし得る。さらに、免疫化した宿主の将来の保護を可能にするために、抗原に特異的なTリンパ球または抗体を作製することができる。「免疫原性組成物」は、全微生物あるいは細胞媒介性(T細胞)免疫応答もしくは抗体媒介性(B細胞)免疫応答、または両方を誘導する、それに由来する免疫原性部分を含む、生きた、弱毒化した、または死滅/失活させた配合物を含有していてもよく、また、動物を微生物による感染に関連する1つもしくは複数の症状から保護するか、または動物を微生物による感染が原因の死から保護し得る。
【0064】
本明細書中で使用する「免疫学的に有効な量」または「免疫原性的に有効な量」とは、当業者に知られている標準のアッセイによって測定した、細胞性(T細胞)または液性(B細胞もしくは抗体)の応答のどちらかの免疫応答を誘発するために十分な、抗原または配合物の量をいう。たとえば、本発明に関して、「免疫学的に有効な量」とは、≧5.0〜7.0Log10pfu/mLの最小の保護用量(力価)である。免疫原としての抗原の有効性は、増殖アッセイによって、その特異的な標的細胞を溶解するT細胞の能力を測定するためのクロム放出アッセイなどの細胞溶解アッセイによって、または、抗原に特異的な循環抗体の血清中のレベルを測定することによってB細胞活性のレベルを測定することによって、測定することができる。さらに、免疫応答の保護のレベルは、免疫化した宿主を、注射した抗原でアレルギー誘発することによって測定し得る。たとえば、免疫応答が所望される抗原がウイルスまたは腫瘍細胞である場合、「免疫学的に有効な量」の抗原によって誘導される保護のレベルは、動物のウイルス、細菌、原虫、または真菌のアレルギー誘発後の%生存または%死亡率を検出することによって測定する。
【0065】
用語「単離した」または「精製した」とは、物質が、その元の環境(たとえば、それが天然に存在するものである場合は天然の環境)から取り除かれていることを意味する。たとえば、「単離した」または「精製した」ペプチドまたはタンパク質は、タンパク質が由来する細胞もしくは組織源からの細胞物質もしくは他の汚染タンパク質を実質的に含まない、または、化学合成の場合は化合物前駆体もしくは他の化合物を実質的に含まない。本発明では、免疫原性組成物の製造に有用な形態で提供されるように、ウイルスを感染した細胞または細胞細片から単離または精製する。言葉「細胞物質を実質的に含まない」には、ウイルスまたはポリペプチド/タンパク質が、それが単離されたまたは組換えによって産生された細胞の細胞成分から分離された、ウイルスまたはポリペプチド/タンパク質の調製物が含まれる。したがって、細胞物質を実質的に含まないウイルスまたはポリペプチド/タンパク質には、約30%未満、20%、10%、5%、2.5%、または1%(乾重量)の汚染タンパク質を有する、ウイルスまたはポリペプチド/タンパク質の調製物が含まれる。ウイルスまたはポリペプチド/タンパク質を組換えによって産生する場合は、培地を実質的に含まないことも好ましい、すなわち、培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、10%、5%、1%、0.5%、または0.2%を表す。ポリペプチド/タンパク質を化学合成によって生成する場合は、化合物前駆体または他の化合物を実質的に含まないことが好ましい、すなわち、これは、タンパク質の合成に関与している化合物前駆体または他の化合物から分離されている。したがって、そのようなポリペプチド/タンパク質の調製物は、約30%未満、20%、10%、5%(乾重量)の、化合物前駆体または目的のポリペプチド/タンパク質断片以外の化合物を有する。「単離した」または「精製した」核酸分子とは、核酸分子の天然源中に存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、cDNA分子またはRNA分子などの「単離した」核酸分子は、他の細胞物質を実質的に含まないことができ、あるいは、組換え技術によって産生する場合は培地、または化学合成する場合は化合物前駆体もしくは他の化合物を実質的に含まない。
【0066】
用語「感染多重度」または「MOI」とは、単一の細胞に感染するウイルス粒子の平均数をいう。「MOI」は、ウイルスのプラーク形成単位(PFU)の合計数を、感染させる細胞の合計数で除算することによって計算する。
【0067】
本明細書中で以下に定義する用語「突然変異クラス」、「複数の突然変異クラス」または「突然変異のクラス」とは、互換性があるように使用され、当分野において、単独で使用した場合にVSVを弱毒化することで知られている突然変異をいう。たとえば、本発明の「突然変異クラス」には、それだけには限定されないが、VSV温度感受性N遺伝子突然変異(本明細書中で以降「N(ts)」)、温度感受性L遺伝子突然変異(本明細書中で以降「L(ts)」)、点突然変異、G−stem突然変異(本明細書中で以降「G(stem)」)、非細胞変性性M遺伝子突然変異(本明細書中で以降「M(ncp)」)、遺伝子シャフリングまたは再配置突然変異、G遺伝子切断突然変異(本明細書中で以降「G(ct)」)、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子挿入突然変異、遺伝子欠失突然変異などが含まれる。本明細書中で以下に定義する「突然変異」には、当分野において挿入、欠失、置換、遺伝子再配置またはシャフリングの修飾として知られている突然変異が含まれる。
【0068】
「非保存的アミノ酸置換」とは、タンパク質のアミノ酸残基のうちの1つまたは複数を、上記定義した特徴を用いて、異なる物理的および/または化学的特性を有する他のアミノ酸残基で置換することをいう。
【0069】
本明細書中で使用する語句「核酸」または「核酸分子」とは、DNA、RNA、ならびにDNAおよびRNAの既知の塩基類似体またはそれから形成されたキメラのいずれかをいう。したがって、「核酸」または「核酸分子」とは、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンもしくはシチジン、「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン、「DNA分子」)のリン酸エステル重合体をいう。二本鎖のDNA−DNA、DNA−RNAおよびRNA−RNAのヘリックスが可能である。用語、核酸分子、特にDNAまたはRNA分子とは、分子の一次および二次構造のみをいい、任意の特定の三次形態には限定されない。したがって、この用語には、とりわけ、直鎖または環状のDNA分子(たとえば制限断片)、プラスミド、および染色体中に見つかる二本鎖DNAが含まれる。特定の二本鎖DNA分子の構造を議論するにあたって、配列は、配列を、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同的な配列を有する鎖)に沿って5Nから3Nの方向でのみ示す、通常の習慣に従って記載し得る。「組換えDNA分子」とは、分子生物学的操作を受けたDNA分子をいう。
【0070】
用語「病原性」とは、細菌またはウイルスなどの任意の感染因子の、疾患を引き起こす能力をいう。「非病原性」微生物とは、微生物の「病原性」株の、疾患を引き起こす特徴を欠く微生物をいう。
【0071】
用語「薬学的に許容できる担体」とは、連邦政府の規制機関、州政府、もしくは他の規制機関によって認可された担体、またはヒトおよび非ヒト哺乳動物を含めた動物での使用において、米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に記載されている担体を意味する。用語「担体」とは、医薬組成物と共に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルをいう。そのような薬学担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、野菜または合成起源のものを含めた、水および油などの無菌的な液体であり得る。医薬組成物を静脈内投与する場合は、水が好ましい担体である。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液も、特に注射用液剤のために、液体担体として用いることができる。適切な薬学賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。組成物は、所望する場合は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。これらの組成物は、液剤、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、持続放出配合物などの形態をとることができる。組成物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤および担体と共に、坐薬として配合することができる。経口製剤には、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体が含まれ得る。適切な薬学担体の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、E.W.Martinに記載されている。配合物は投与様式に適しているべきである。
【0072】
用語「プラーク」または「ウイルスプラーク」とは、それ以外は不透明な細胞培養物の層中の、溶解細胞の、透明な、しばしば円形のパッチをいう。「プラーク形成単位」または「PFU」とは、単位体積あたりの感染性ウイルス粒子の平均数をいう。たとえば、ウイルス溶液が100PFU/mlを有する場合、これは、1ミリリットルのこのウイルス溶液が、それぞれプラークを形成することができる100個のウイルス粒子を有することを意味する。PFU/mlは、プラークを形成するウイルス調製物の濃度に言及するための慣用の手段である。しかし、PFUは、一般に、「感染単位」または「IU」と互換性があるように使用され、ウイルス調製物中の感染性ウイルスの単位を表す。
【0073】
用語「保護する」とは、特定の病原体に対する免疫応答を誘導することによって、たとえば哺乳動物を、感染症または疾患から遮蔽することをいう。そのような保護は、一般に、哺乳動物を免疫原性組成物で治療した後に達成される。もたらされる保護は絶対的である必要はない、すなわち、哺乳動物の対照集団、たとえば、免疫原性組成物を投与しない感染動物と比較して統計的に有意な向上が存在する場合は、感染症は完全に予防または根絶される必要はない。保護は、感染症の症状の重篤度または発症の速度を和らげることによって達成し得る。
【0074】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」とは、アミノ酸残基のポリマーをいい、生成物の最小の長さに制限されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体などがこの定義内に含まれる。完全長のタンパク質およびその断片の両方が、この定義によって包含される。また、この用語には、好ましくは、タンパク質が、タンパク質を投与する動物内において免疫学的応答を誘発する能力を維持するような、天然の配列への欠失、付加および置換などの修飾(一般に保存的な性質であるが、非保存的であってもよい)も含まれる。また、発現後の修飾、たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化なども含まれる。用語「アミノ酸」とは、DまたはL光学異性体、およびアミノ酸類似体をどちらも含めた、天然および/または非天然の合成アミノ酸をいう。天然のアミノ酸のそれぞれの1文字および3文字のコードは、当業者に知られている。
【0075】
組換えRNAウイルスを産生する方法は、当分野において「救済」または「逆遺伝学」方法と呼ばれる。VSVの例示的な救済方法は、それぞれ本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,033,886号、米国特許第6,596,529号およびWO2004/113517号に記載されている。マイナスセンスの一本鎖かつ非分割型のRNAウイルスゲノムの転写および複製は、リボ核タンパク質核(ヌクレオカプシド)に作用する多量体タンパク質複合体の酵素活性によって達成される。裸のゲノムRNAは鋳型として役割を果たすことができない。その代わり、これらのゲノム配列は、Nタンパク質によってヌクレオカプシド構造へと完全にカプシド形成された際にのみ、認識される。この場面においてのみ、ゲノムおよびアンチゲノムの末端プロモーター配列が認識されて転写または複製経路が開始される。
【0076】
本明細書中で以下に定義する用語「相乗的な」弱毒化とは、相加的なものよりも大きい、VSVの弱毒化のレベルをいう。たとえば、本発明によるVSVの相乗的な弱毒化は、同じVSVゲノム中の少なくとも2つの突然変異のクラスを組み合わせ、それにより、それぞれのVSV突然変異クラス単独で観察される相加的な弱毒化レベルよりもはるかに大きな、VSVの病原性の減少をもたらすことを含む。したがって、特定の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、それぞれの突然変異クラス単独で観察される相加的な弱毒化レベル(すなわち、2つの突然変異クラスの合計)よりも少なくとも高いLD50として定義され、弱毒化レベル(すなわちLD50)は、小動物神経毒性モデルにおいて決定する。VSVの相乗的な弱毒化の例は、本明細書中に参照により組み込まれているWO2005/098009号に記載されている。
【0077】
本明細書中で以下に定義するVSV「温度感受性」(「ts」)突然変異とは、非許容的な温度でのVSVの成長を制限する、VSVゲノム中の突然変異である。たとえば、本発明のVSV ts突然変異体は、許容的な温度(たとえば31℃)で正常かつ高い力価まで成長するが、その成長または繁殖は、非許容的な温度(たとえば、37℃または39℃)で制限される。
【0078】
用語「免疫原性組成物」とは、動物において免疫応答を誘導する医薬組成物をいう。免疫原性組成物は、動物を感染症が原因の疾患または場合によっては死から保護する場合があり、活性構成要素の免疫学的活性を増強させる1つまたは複数の追加の構成要素が含まれていても含まれていなくてもよい。免疫原性組成物は、たとえば、アジュバントまたは免疫調節物質を含めた、免疫原性組成物に典型的なさらなる構成要素をさらに含み得る。免疫原性組成物の免疫原性的に活性のある構成要素は、その元の形態もしくは弱毒化した生物としての完全な生きた生物、または死滅もしくは失活させた免疫原性組成物中の適切な方法によって失活させた生物、またはウイルスの1つもしくは複数の免疫原性構成要素を含むサブユニット免疫原性組成物、または当業者に知られている方法によって調製した遺伝子操作、突然変異もしくはクローニングした免疫原性組成物を含み得る。免疫原性組成物は、上述のエレメントのうちの1つまたは複数を同時に含み得る。
【0079】
一般的な説明
本発明によれば、Vero細胞または任意の感受性のある細胞基質中における低い感染多重度(MOI)での連続継代培養による、高度に弱毒化した組換えVSVを組織培養条件に適応させるプロセスまたは方法を提供する。複数の連続継代培養のプロセスは、ウイルスゲノム全体にわたるいくつかのヌクレオチド置換の進行性の自然増加によって特徴づけられている遺伝型の変化をもたらす。これらのヌクレオチド置換のほとんどは、VSVタンパク質中のアミノ酸(AA)置換をもたらす。このプロセスは、ウイルス収量の実質的な向上を伴った、ウイルスの表現型の適応をもたらした。Vero細胞中での継代は、遺伝型および表現型の安定性が達成されるまで、通常は10〜15回の連続継代(P10〜P15)続ける。P15を越えるウイルスのさらなる継代培養では、追加の置換がわずかしかまたはまったく示されず、ウイルス収量のさらなる増強はもたらされなかった。このプロセスは、製造収量の実質的な向上および製造の一貫性の増強をもたらす。適応的突然変異は、高感度マウス頭蓋内NV動物モデルにおいて試験した場合に、継代培養したウイルスの神経毒性(NV)に実質的に影響を与えなかった。
【0080】
米国特許公開第2007/0218078A1号によれば、HIV−1 gag遺伝子を発現する高度に弱毒化したVSVベクター、rVSVN4CT1−gag1を作製し、これは、3つのウイルス弱毒化手法を組み合わせることによって作製した:HIV−1 gag遺伝子をゲノムの最初の位置(gag1)中に挿入し、それにより、すべてのVSV遺伝子を3’−プロモーターから1つの位置シフトすること、VSV N遺伝子を第4位置(N4)に転座すること、およびその細胞質側末端が1つのアミノ酸にまで切断された(CT1)VSV Gを使用すること(Schnellら、The EMBO Journal、17:1289〜1296、1998)。プロトタイプrVSVと比較して、このベクターは、より小さなプラークの表現型、遅延された成長動態および細胞培養物中の大きく減少したピーク力価によって特徴づけられるように、in vitroで弱毒化の顕著な増加を示した。高感度ネズミ頭蓋内(IC)動物モデルで試験した場合に同様の弱毒化パターンが示され、プロトタイプと弱毒化したVSVとの間で何桁ものLD50の差が示された(Cooperら、J.Virology、82:207〜229、2008)。さらに、プロトタイプVSVと比較して、弱毒化したウイルスは、非ヒト霊長類において最小限から検出不可能な神経病理を示した。このベクターはマウスおよびマカクにおいて、プロトタイプベクターで得られたものに匹敵する強力な免疫応答を誘導するが、細胞培養物中での複製が乏しく、スケールアップおよび製造には最適以下となる。
【0081】
奨励する前臨床の安全性および免疫原性プロフィールに基づくと、このベクターは、ヒトにおける試験の有望なベクター候補となる。ヒトにおけるこのベクターの試験に重要な2つの要素は、上述の3つの弱毒化突然変異の安定性および製造収量の増加である。本研究では、Vero細胞中のrVSVベクターの連続継代からなる、遺伝的安定性研究を実施した。ウイルスを、Vero細胞中、低い感染多重度(MOI、0.01)で継代培養した。25回継代培養したウイルスから得られたデータにより、ベクターを弱毒化する3つすべての突然変異が保持された一方で、追加のアミノ酸(AA)置換が早くも継代5回目(P5)で現れたことが明らかとなった。ウイルスをさらに継代培養するにつれて、突然変異は継代15回目(P15)までに固定された。さらに、Vero細胞中で継代培養したウイルスの成長動態は、P15までウイルス収量の進行性の向上を示し、これは、AA置換の自然増加が、ウイルスのVero細胞への継続適応を表していることを示唆している。ウイルス収量のさらなる増強は、P15以降は見られなかった。継代培養したウイルスを用いた成長動態の結果により、P15ウイルスを用いたウイルス収量がP0で得られたものよりも5〜100倍高かったことが示された(図3〜6を参照)。
【0082】
したがって、本発明により、P15ウイルスが遺伝型および表現型の安定性を示し、毒性および臨床評価に適切な臨床治験材料の大スケールの製造に適したレベルまで成長することが実証される。
【0083】
VSVの成長/増殖に適切な細胞
本発明内で使用するための適切な宿主細胞は、遺伝子改変した弱毒化VSVの生産的な感染を支援することができ、ウイルスの産生を支援するために必要な、必須のベクターおよびそのコードされている産物の発現を可能にする。本発明の方法で使用するための宿主細胞の例には、それだけには限定されないが、Vero細胞、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、および293細胞などのヒト胚性腎臓(HEK)細胞が含まれる。本明細書中に記載の遺伝子改変した弱毒化VSV株または血清型による感染に感受性のある任意の他の細胞を、本発明の方法で使用し得る。
【0084】
哺乳動物細胞培養物中でのVSVの産生
哺乳動物細胞培養物中でのVSVの産生は当業者に周知であり、一般に、細胞培養物(宿主細胞)をVSVに感染させること、VSVを細胞培養物中で成長させること、および適切な時に細胞培養物を収集することが含まれる。VSVは、宿主細胞から培地中へと分泌されるため、VSV産物は細胞培養液から回収される。
【0085】
哺乳動物細胞培養物からのVSVの産生では、当分野で知られている、VSVを増殖(または成長)させるために使用する適切な哺乳動物細胞培養物を用いる。そのような細胞培養物には、それだけには限定されないが、HEK293細胞などのヒト胚性腎臓(HEK)細胞、Vero細胞などのアフリカミドリザル腎臓(AGMK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびベビーハムスター腎臓(BHK)細胞が含まれる。
【0086】
さらに、細胞培養の材料、方法および技術は、当業者に周知である。たとえば、組換えVSVの種ストックを用いて、コンフルエントな宿主細胞集団または特定の密度の宿主細胞集団(たとえばVero細胞培養物)を、バイオリアクター中、所定の感染多重度で感染させ、VSVを所定の時間および温度において細胞培養物中で成長させ、新生のVSV子孫を細胞培養物液中で収集する。本明細書中で以下に定義する用語「培養液」、「細胞培養液」、「細胞培養培地」、「培地」および/または「バイオリアクター液」とは、互換性があるように使用され、細胞培養物を成長させる培地または溶液をいう。
【0087】
哺乳動物細胞培養物からのVSVの精製
VSVに感染した哺乳動物細胞培養物の細胞培養液からVSVを精製するプロセスは、一般に当業者に知られている。たとえば、Millerら、(Protein Expression and Purification、第33巻、第1号、2004年1月、ページ92〜103)に記載されているように、ウイルスを含有する培養上清を回収し、低速遠心分離(たとえば1000×g)に供して細胞および細片を除去し、続いて20%のスクロースクッション上の高速遠心分離(たとえば100,000×g)に供してウイルスを除去し得る。
【0088】
細胞培養物からVSVを精製する別の方法は、米国特許公開第2007/0249019号に記載されている。手短に述べると、この手順には、(a)一次清澄、(b)二次清澄、(c)陰イオン交換膜吸着、(d)接線流濾過および(e)濾過のステップが含まれる。より詳細には、そのようなステップは、(a)細胞培養液を低速遠心分離によって清澄にすること、(b)0.2〜0.45ミクロンのフィルターを通した濾過によって上清をさらに清澄にすること、(c)VSVの濾過した溶液を陰イオン交換膜吸着剤上で精製すること、(d)緩衝液を交換し、VSVを接線流濾過(TFF)によって濃縮すること、および(e)0.2〜0.22ミクロンのフィルターを通してVSV濃縮水の最終濾過を行うことを含む。上記の精製プロセスのステップ(a)〜(e)は室温で行う。
【0089】
清澄手順
一次清澄
また、米国特許公開第2007/0249019号には、ウイルスを単離および精製するための、細胞培養液の一次清澄の方法も記載されている。たとえば、VSVに感染した哺乳動物細胞培養物の細胞培養液を低速遠心分離によって(またはデプスフィルターによって)清澄にし、VSVを上清中で回収してもよく、これは本明細書中で細胞培養物液の「一次清澄」とも呼ばれる。特定の実施形態では、細胞培養液の一次清澄は室温で実施する。
【0090】
遠心分離方法および細胞培養液の一次清澄で使用する装置は当業者で周知である。本明細書中で以下に定義する「低速」遠心分離とは、10,000rpm以下の遠心分離速度である。
【0091】
上述のように、VSVに感染した哺乳動物細胞培養物の細胞培養液は、代わりに、デプスフィルターによって(すなわち、低速遠心分離の代わりに)清澄にし得る。デプスフィルターは、ステップ(a)の一次清澄から低速遠心分離を省略する場合に使用することができる。デプスフィルター(表面濾過とは対照的)とは、一般に、その構造内に汚染物質を捕捉する「厚い」フィルターをいう。デプスフィルター材料および方法は当業者に周知である。たとえば、フィルター材料は、典型的には、珪藻土粒子などの無機濾過助剤が繊維の開口部に包埋されている、厚く繊維状のセルロース構造からなる。このフィルター材料は大きな内部表面積を有し、これが粒子の捕捉およびフィルターの能力のキーである。そのようなデプスフィルターのモジュールは、1.0ミクロン〜4.5ミクロンの孔を含有する。例示的なデプスフィルターのモジュールには、それだけには限定されないが、Whatman(登録商標)Polycap(商標).HDモジュール(Whatman Inc.、ニュージャージー州Florham Park)、Sartorius Sartoclear(商標)Pモジュール(Sartorius Corp.、ニューヨーク州Edgewood)およびMillipore(登録商標)Millistak+(登録商標)HCモジュール(Millipore、マサチューセッツ州Billerica)が含まれる。細胞培養液をデプスフィルター(室温で行う)によって清澄にしてよく、VSVが濾液中に回収される。
【0092】
二次清澄
また、米国特許公開第2007/0249019号には、ウイルスを単離および精製するための、細胞培養液の二次清澄の方法も記載されている。遠心分離(またはデプスフィルター)による一次清澄の後、VSVの上清(または濾液)を、濾過または0.2〜0.25ミクロンのフィルターを通した微量濾過、および濾過した溶液中のVSVの回収によってさらに清澄にする。微量濾過は、上記定義したように室温で行い得る。濾過/微量濾過の媒体は、様々な材料および製造方法が利用可能であり、当業者に知られている。例示的な微量濾過フィルター単位には、それだけには限定されないが、Millipore Millex.(登録商標).−GVフィルター単位(Millipore、マサチューセッツ州Billerica)、Millipore Millex.(登録商標)−GPフィルター単位、Pall Supor(登録商標)フィルター単位(Pall Corp.、ニューヨーク州East Hills)、Sartorius Sartobran(商標)フィルター単位(Sartorius Corp.、ニューヨーク州Edgewood)およびSartorius Sartopore(商標)2フィルター単位が含まれる。特定の実施形態では、これらのフィルター単位は、0.2〜0.45ミクロンの大きさのフィルターを保有する。濾過したVSVは、濾過した溶液中で回収される。
【0093】
陰イオン交換膜吸着
清澄後にVSVを回収した後、VSVを陰イオン交換膜吸着剤上でさらに精製し得る。膜吸着剤の材料は当業者に周知であり、Sartorius Corp.(ニューヨーク州Edgewood)、Pall Corp.(ニューヨーク州East Hills)およびSigma−Aldrich Corp.(モンタナ州St.Louis)などの販売業者から入手可能である。例示的な陰イオン交換膜吸着剤には、それだけには限定されないが、Sartobind(商標)Q膜吸着剤(Sartorius Corp.)およびMustang(商標)Q膜吸着剤(Pall Corp.)が含まれる。特定の一実施形態では、陰イオン交換膜吸着剤はPall Mustang(商標)Q膜吸着剤である。一般に、当業者に知られている慣用のイオン交換クロマトグラフィーから知られている方法および緩衝液を、膜吸着剤クロマトグラフィーに直接適用することができる。特定の実施形態では、陰イオン交換膜吸着剤クロマトグラフィーは、上記定義したように室温で行う。
【0094】
したがって、VSVは陰イオン交換膜吸着剤によって精製してもよく、二次清澄からのVSVの濾過した溶液を、第1のpH緩衝塩溶液(「平衡化緩衝液」またはVSV「結合緩衝液」とも呼ぶ)で平衡化した陰イオン交換膜吸着剤上に載せる。VSVを第2のpH緩衝塩溶液(「溶出緩衝液」)で陰イオン交換膜吸着剤から溶出させ、溶出されたVSV画分を回収する(たとえば、米国特許公開第2007/0249019号を参照)。
【0095】
第1のpH緩衝塩溶液または平衡化緩衝液は、NaClまたはKCL塩溶液であり得る。NaClまたはKClは、少なくとも約0.1M〜約0.4Mのイオン強度(その間の分数のイオン強度が含まれる)で溶液中に存在し得る。緩衝溶液は、リン酸緩衝液、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)緩衝液であり得る。これらの緩衝液は、約6.0〜約8.0のpHを有し得る。
【0096】
平衡化緩衝液は、約1%のスクロース〜約5%のスクロースをさらに含み得る。また、第2のpH緩衝塩溶液(「溶出緩衝液」)も、第1の(平衡化)緩衝液と同じ緩衝構成要素を含み得る。溶出緩衝液は、約1%のスクロース〜約5%のスクロースをさらに含み得る。
【0097】
VSVを膜から溶出させるために、溶出緩衝液の塩(NaClまたはKCl)濃度(イオン強度)を、直線勾配または単一ステップの溶出プロセスで増加し得る(やはり米国特許公開第2007/0249019号に記載されている)。どちらのステップも、VSVを陰イオン交換膜吸着剤から溶出させるために同等に有効である。第2のpH緩衝塩溶液中のNaClのイオン強度は、0.5M〜0.75Mであるべきである。
【0098】
第2のpH緩衝塩溶液中のNaClのイオン強度は、0.001Mから0.75Mまで、約10CV/分〜30CV/分の溶出流速で直線的に増加するべきである。
【0099】
接線流濾過(TFF)
陰イオン交換膜吸着剤クロマトグラフィーによるVSVの精製の後、VSVを接線流濾過(TFF)によってさらに精製し得る。一般に、TFFとは、液体の溶液(または懸濁液)中の構成要素を分離するために膜(複数可)を使用する圧力駆動のプロセスであり、液(供給流)を膜の表面に沿って接線方向にポンピングし、かけられる圧力が、液の「一部分」を(膜の)濾液側へと膜に押し通す役割を果たす。TFFは、室温で行い得る。このプロセスでは、緩衝液を交換し、VSVを濃縮する。TFFステップは、陰イオン交換膜吸着ステップから回収されたVSVを少なくとも5回濃縮し、続いて少なくとも1回の緩衝液交換を行うことを含み得る。
【0100】
TFF材料(たとえば、中空繊維、渦巻き形の平板)および方法(たとえば、限外濾過(UF)、ダイアフィルトレーション(DF)、微量濾過)は、当業者に周知である。TFF膜は、300〜750kDaの分子量カットオフを有し得る。
【0101】
TFFの緩衝液交換に使用する緩衝液は、上述のリン酸緩衝液、HEPES緩衝液またはトリス緩衝液であり得る。しかし、緩衝液は、約5mM〜15mMの濃度(その間のmM濃度が含まれる)を有し得る。緩衝液交換の緩衝液は、0.10M〜0.20MのNaClおよび3.5%〜4.5%のスクロースをさらに含み得る。
【0102】
陰イオン交換膜吸着剤の精製からのVSV画分をプールし、プールした溶液を濃縮し、約750kDaの分子量カットオフを有する中空繊維TFF膜カートリッジ(GE Healthcare Bio−Sciences Corp.、ニュージャージー州Piscataway)を用いて、TFFによって緩衝液を交換し得る。
【0103】
濾過
米国特許公開第2007/0249019号に記載の方法では、ウイルス精製における最後のプロセスステップは、TFFからVSV濃縮水の最終微量濾過を行うことであり、濃縮水は、微量濾過による二次清澄について上述したように、0.2〜0.25ミクロンのフィルターを通して濾過する。
【0104】
組換えまたは遺伝子改変水疱性口内炎ウイルス(VSV)
本明細書中に記載のように、VSVは、上述の精製方法のいずれかを用いることによって、哺乳動物細胞培養物から得て精製し得る。「向上した純度」とは、精製したVSVが、細胞培養物のタンパク質および核酸汚染物質を少なくとも90.0%含まず、好ましくは細胞培養物のタンパク質および核酸汚染物質を99.0%〜99.8%含まないことを意味する。
【0105】
特定の実施形態では、上述のプロセスのいずれかによって哺乳動物細胞培養物の細胞培養液から精製したVSVは、組換えもしくは遺伝子改変および/または弱毒化VSVである。VSVなどの組換えRNAウイルスを産生する方法は周知であり、当分野において「救済」または「逆遺伝学」方法と呼ばれる。VSVの例示的な救済方法には、それだけには限定されないが、それぞれ本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,033,886号および米国特許第6,168,943号に記載の方法が含まれる。VSVなどのウイルスの救済を実施するためのさらなる技術は、本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,673,572号およびWO2004/113517号に記載されている。
【0106】
VSVは、特定の血清型のVSVであり得る。特定の実施形態では、精製したVSVは、インディアナ血清型、ニュージャージー血清型、イスファハン血清型、チャンディプラ血清型、または他のベシクロウイルスである。特定の実施形態では、VSVは、複数のそのような血清型由来の配列を含有し得る。
【0107】
VSVベクター(およびその免疫原性組成物)は、しばしばVSVゲノム中に1つまたは複数の弱毒化突然変異を含む。特定の実施形態では、精製したVSVは、VSVの病原性を弱毒化する少なくとも1つの突然変異を含むゲノム配列を有する。他の実施形態では、精製したVSVは、VSVの病原性を弱毒化する少なくとも2つの突然変異を含むゲノム配列を有する。たとえば、弱毒化したVSVは、本明細書中に参照により組み込まれている、国際出願PCT/US2005/011499号(国際公開WO2005/098009号)および米国特許公開第2007/0218078A1号に記載の弱毒化突然変異などの、2つ以上の既知の弱毒化突然変異を含み得る。たとえば、既知のVSV弱毒化突然変異には、それだけには限定されないが、それぞれ国際公開WO2005/098009号に詳述されている、遺伝子シャフリング突然変異(VSVゲノムを形成し、N、P、M、GおよびLと命名されたVSV遺伝子の遺伝子シャフリングが含まれる)、Gタンパク質挿入突然変異、Gタンパク質切断突然変異、温度感受性(ts)突然変異(および他の点突然変異)、非細胞変性性M遺伝子突然変異、G−stem突然変異、アンビセンスRNA突然変異ならびに遺伝子欠失突然変異が含まれる。したがって、特定の実施形態では、精製したVSVは、それだけには限定されないが、温度感受性(ts)突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異を含めた、1つまたは複数の弱毒化突然変異を含む。
【0108】
特定の実施形態では、上述の精製プロセスのいずれかによって精製したVSVは、ウイルスの弱毒化をもたらす1つまたは複数の突然変異、ならびに哺乳動物細胞または細胞系からの成長の増加およびウイルス収量の増加をもたらす1つまたは複数の突然変異を有する。たとえば、本発明は、Vero細胞または任意の感受性のある細胞基質中における低い感染多重度(MOI)での連続継代培養による、高度に弱毒化したVSV組換え体を組織培養条件に適応させるプロセスまたは方法を提供する。複数の連続継代培養のプロセスは、ウイルスゲノム全体にわたるいくつかのヌクレオチド(NT)置換の進行性の自然増加によって特徴づけられている遺伝型の変化をもたらす。これらのヌクレオチド置換のほとんどは、VSVタンパク質中のアミノ酸(AA)置換をもたらす。本明細書中に記載のプロセスは、ウイルス収量の実質的な向上を伴った、ウイルスの表現型の適応をもたらした。Vero細胞中での継代は、遺伝型および表現型の安定性が達成されるまで、通常は10〜15回の連続継代(P10〜P15)続けた。P15を越えるウイルスのさらなる継代培養では、追加の置換がわずかしかまたはまったく示されず、ウイルス収量のさらなる増強はもたらされなかった。このプロセスは、製造収量の実質的な向上および製造の一貫性の増強をもたらす。適応的突然変異は、高感度マウス頭蓋内NV動物モデルにおいて試験した場合に、継代培養したウイルスの神経毒性(NV)に実質的に影響を与えなかった。
【0109】
本発明の一実施形態は、以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、単離された遺伝子改変水疱性口内炎ウイルス(VSV)を提供する:
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【0110】
特定の実施形態では、突然変異は、Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方である。他の特定の実施形態では、Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異は、T→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異は、P→T突然変異またはP→Q突然変異である。
【0111】
一実施形態では、Gタンパク質の位置109、224、438、477または481のアミノ酸の突然変異は、それぞれK→N、N→T、S→I、A→V/G→LまたはV→Iの突然変異である。
【0112】
一実施形態では、Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸の突然変異は、それぞれP→L、K→E、またはL→Iである。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の遺伝子改変および弱毒化したVSVは、外来RNAのオープンリーディングフレーム(ORF)などの、1つまたは複数の外来または異種(もしくは外来)ポリヌクレオチド配列を含むゲノム配列を有する。異種ポリヌクレオチド配列は所望に応じて変動させることができ、それだけには限定されないが、サイトカイン(インターロイキンなど)をコードしている遺伝子、T−ヘルパーエピトープをコードしている遺伝子、CTLエピトープをコードしている遺伝子、アジュバントをコードしている遺伝子および補因子をコードしている遺伝子、制限マーカーをコードしている遺伝子、治療タンパク質または様々な微生物病原体(たとえば、ウイルス、細菌、寄生生物もしくは真菌)のタンパク質、特に望ましい免疫応答を誘発することができるタンパク質をコードしている遺伝子が含まれる。たとえば、様々な微生物病原体のタンパク質をコードしている異種ポリヌクレオチド配列は、HIV遺伝子、HTLV遺伝子、SIV遺伝子、RSV遺伝子、PIV遺伝子、HSV遺伝子、CMV遺伝子、エプスタイン−バーウイルス遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルス遺伝子、流行性耳下腺炎ウイルス遺伝子、麻疹ウイルス遺伝子、インフルエンザウイルス遺伝子、ポリオウイルス遺伝子、ライノウイルス遺伝子、A型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、ノーウォークウイルス遺伝子、トガウイルス遺伝子、アルファウイルス遺伝子、風疹ウイルス遺伝子、狂犬病ウイルス遺伝子、マールブルグウイルス遺伝子、エボラウイルス遺伝子、パピローマウイルス遺伝子、ポリオーマウイルス遺伝子、メタニューモウイルス遺伝子、コロナウイルス遺伝子、コレラ菌(Vibrio cholerae)遺伝子、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)遺伝子、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)遺伝子、ピロリ菌(Helicobacter pylori)遺伝子、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)遺伝子、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)遺伝子、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)遺伝子、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)遺伝子、破傷風菌(Clostridium tetani)遺伝子、百日咳菌(Bordetella pertussis)遺伝子、ヘモフィルス(Haemophilus)遺伝子、クラミジア(Chlamydia)遺伝子、および大腸菌(Escherichia coli)遺伝子のうちの1つまたは複数であり得る。特定の実施形態では、精製したVSVは、HIV遺伝子の配列を含み、HIV配列は、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revまたはvpuからなる群から選択される。具体的な一実施形態では、HIV遺伝子はgagまたはenvである。
【0114】
特定の他の実施形態では、精製したVSVは、上述のように、少なくとも1つの弱毒化突然変異および少なくとも1つの異種タンパク質をどちらも含有する。他の特定の実施形態では、VSV免疫原性組成物は、遺伝子改変VSVは、2つの弱毒化突然変異およびHIV−1 gagタンパク質をコードしているorfを含む。一実施形態では、遺伝子改変VSVは、HIV gagタンパク質をコードしている核酸分子をさらに含み、HIV gagタンパク質は、位置165、270、329または348のアミノ酸のうちの少なくとも1つに突然変異を有し、突然変異は、それぞれS→G、L→S、D→NまたはT→Kである。
【0115】
他の実施形態では、本明細書中に記載した遺伝子改変VSVは、HIV gag遺伝子をコードしており、gag遺伝子は、VSVゲノム内の位置1(3’−gag−NPMGL−5’)、位置2(3’−N−gag−PMGL−5’)、位置3(3’−NP−gag−MGL−5’)、位置4(3’−NPM−gag−GL−5’)、位置5(3’−NPMG−gag−L−5’)または位置6(3’−NPMGL−gag−5’)に挿入される。他の実施形態では、本明細書中に記載のVSVは、HIV env遺伝子をコードしており、env遺伝子は、VSVゲノム内の位置1(3’−env−NPMGL−5’)、位置2(3’−N−env−PMGL−5’)、位置3(3’−NP−env−MGL−5’)、位置4(3’−NPM−env−GL−5’)、位置5(3’−NPMG−env−L−5’)または位置6(3’−NPMGL−env−5’)に挿入される。
【0116】
当業者は、上記説明から、細胞培養物中、低MOIでウイルスを連続継代培養する間に、VSVゲノム中の様々な遺伝子改変が起こったことを理解されよう。これらの遺伝子改変により、感染した細胞からのウイルス収量の増加がもたらされた。さらに、ウイルスの他の遺伝型または表現型の変化は存在せず、ウイルスの弱毒化の変更も存在しなかった。これらの遺伝子改変は、ウイルス収量をウイルスベクター産生のスケールアップに有用なレベルまで増加させることに関して、顕著な利点であることが証明された。
【0117】
本明細書中で以降記載する本発明は、当分野における、哺乳動物において顕著に弱毒化された病原性を有する、特に、動物神経毒性モデルにおいて明らかとなる弱毒化した神経病理を有する水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクターの必要性に対処している。上述のように、VSVは多くの特徴を有し、それにより、これが免疫原性組成物の適切なベクターとなる。たとえば、ヒトのVSV感染症は稀であり、無症候性であるか、または合併症なしに3〜8日間で回復する緩和なインフルエンザ様の症状によって特徴づけられており、したがって、VSVはヒトの病原体とみなされていない。VSVを魅力的なベクターにするの他の特徴には、(a)細胞培養物中で頑強に複製する能力を有すること、(b)宿主細胞DNA内に組み込まれないこと、または遺伝的組換えを受けることができないこと、(c)複数の血清型が存在し、プライム−ブースト免疫化戦略の可能性が許容されること、(d)目的の外来遺伝子をVSVゲノム内に挿入し、ウイルス転写酵素によって豊富に発現させることができること、(e)ウイルスゲノムのcDNAコピーから感染性ウイルスを救済するための高度に特化した系の開発(米国特許第6,033,886号、米国特許第6,168,943号)および(f)ヒト集団におけるVSVに対する既存の免疫が稀であることが含まれる。
【0118】
弱毒化した水疱性口内炎ウイルス
特定の実施形態では、本発明で使用するための弱毒化したVSVは、以下に記載の突然変異のクラスからの1つまたは複数の突然変異を含む。さらに、これらの弱毒化したウイルスは、本発明の方法、たとえば、低MOIを用いた約5〜15回の連続継代培養を用いて、さらに遺伝子改変する。この方法は、弱毒化したの遺伝子型および表現型の保持をもたらすが、細胞培養物中での成長により良好に適応しているVSVをもたらす、本明細書中に記載のさらなる遺伝子改変を提供する。これらのウイルスを使用することによって達成されるより高いウイルス収量により、これらが、ベクター産生の優れた候補となる。
【0119】
A.水疱性口内炎ウイルスの突然変異クラス
一実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVベクターは、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラスを含む。以前に注記したように、用語「突然変異クラス」、「突然変異クラス」または「突然変異のクラス」とは、互換性があるように使用され、当分野において、単独で使用した場合にVSVを弱毒化することが知られている突然変異をいう。たとえば、本発明の「突然変異クラス」には、それだけには限定されないが、VSV温度感受性N遺伝子突然変異(本明細書中で以降「N(ts)」)、温度感受性L遺伝子突然変異(本明細書中で以降「L(ts)」)、点突然変異、G−stem突然変異(本明細書中で以降「G(stem)」)、非細胞変性性M遺伝子突然変異(本明細書中で以降「M(ncp)」)、遺伝子シャフリングまたは再配置突然変異、G遺伝子切断突然変異(本明細書中で以降「G(ct)」)、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子挿入突然変異、遺伝子欠失突然変異などが含まれる。本明細書中で以下に定義する「突然変異」には、当分野において挿入、欠失、置換、遺伝子再配置またはシャフリングの修飾として知られている突然変異が含まれる。
【0120】
さらに、以前に注記したように、用語「相乗的な」弱毒化とは、相加的なものよりも大きい、VSVの弱毒化のレベルをいう。たとえば、VSVの相乗的な弱毒化は、同じVSVゲノム中の少なくとも2つの突然変異のクラスを組み合わせ、それにより、それぞれのVSV突然変異クラス単独で観察される相加的な弱毒化レベルよりもはるかに大きな、VSVの病原性の減少をもたらすことを含む。したがって、特定の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、それぞれの突然変異クラス単独で観察される相加的な弱毒化レベル(すなわち、2つの突然変異クラスの合計)よりも少なくとも高いLD50として定義され、弱毒化レベル(すなわちLD50)は、小動物神経毒性モデルにおいて決定する。
【0121】
非限定的な例として、方程式(1)がVSVの「相加的な弱毒化」を記載する場合:
(1)ΔaLD50+ΔbLD50=xLD50
[式中、ΔaLD50は、そのゲノム中に第1の突然変異クラスを有するVSVのLD50であり、ΔbLD50は、そのゲノム中に第2の突然変異クラスを有するVSVのLD50であり、xLD50は、ΔaLD50およびΔbLD50の合計である]、それぞれの突然変異クラス単独で観察される相加的な弱毒化レベルよりも少なくとも高いLD50を有する、本発明のVSVの「相乗的な弱毒化」は、方程式(2)によって説明される:
(2)Δa,bLD50>(ΔaLD50+ΔbLD50
[式中、Δa,bLD50は、そのゲノム中に2つの突然変異クラスの組合せを有するVSVのLD50であり、ΔaLD50は、そのゲノム中に第1の突然変異クラスを有するVSVのLD50であり、ΔbLD50は、そのゲノム中に第2の突然変異クラスを有するVSVのLD50である]。したがって、特定の実施形態では、VSVの弱毒化の相乗作用(すなわち、同じVSVゲノム中に2つの突然変異クラス)は、2つのVSV構築体のLD50(それぞれのVSV構築体は、そのゲノム中に単一の突然変異クラスを有する)に相対的に記載しており、そのゲノム中に2つの突然変異クラスを有するVSVの相乗的な弱毒化は、そのゲノム中に単一の突然変異クラスを有する2つのVSV構築体の相加的なLD50より少なくとも高いLD50として定義される。
【0122】
特定の他の実施形態では、VSVの弱毒化の相乗作用は、野生型VSVのLD50に相対的に記載されている。したがって、一実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。一実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも10倍高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。別の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも100倍高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。別の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも1,000倍高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。さらに他の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも10,000倍高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。特定の他の実施形態では、VSVの相乗的な弱毒化は、野生型VSVのLD50よりも少なくとも100,000倍高いLD50として定義され、LD50は、動物神経毒性モデル中で定義する。特定のVSVベクターの50%の致死的用量(LD50)の決定は、当業者によって、既知の試験方法および動物モデルを用いて容易に決定される。
【0123】
遺伝子シャフリング突然変異
特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に遺伝子シャフリング突然変異を含む。本明細書中で定義する用語「遺伝子シャフリング」、「シャフリングした遺伝子」、「シャフリングした」、「シャフリング」、「遺伝子再配置」および「遺伝子転座」とは、互換性があるように使用され、野生型VSVゲノムの順序の変化(突然変異)をいう。本明細書中で定義する野生型VSVゲノムは、3’−NPMGL−5’の遺伝子配列順を有する。
【0124】
3’プロモーターに対するVSV遺伝子の位置により発現レベルおよびウイルスの弱毒化が決定されることは、当分野で知られている(それぞれ具体的に本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,596,529号およびWertzら、1998を参照)。発現の勾配が存在し、3’プロモーターに近位の遺伝子は3’プロモーターに遠位の遺伝子よりも豊富に発現される。VSV G、M、N、PおよびLタンパク質をコードしているヌクレオチド配列は、当分野で知られている(RoseおよびGallione、1981、Gallioneら、1981)。たとえば、米国特許第6,596,529号は、Nタンパク質の遺伝子がその野生型プロモーターから転座した(シャフリングされた)遺伝子シャフリング突然変異(Nタンパク質発現を次々に低下させるために、近位の第1の位置、次々にゲノム上のより遠位の位置へ)を記載している(たとえば、3’−PNMGL−5’、3’−PMNGL−5’、3’−PMGNL−5’、それぞれN2、N3およびN4と呼ぶ)。したがって、特定の実施形態では、遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に遺伝子シャフリング突然変異を含む。突然変異の1つのクラスでは、特定の一実施形態では、遺伝子改変VSVは、N遺伝子の転座を含む遺伝子シャフリング突然変異を含む(たとえば、3’−PNMGL−5’または3’−PMNGL−5’)。
【0125】
本明細書中では、N、P、M、GまたはL遺伝子のいずれかの3’側のVSVゲノムに外来核酸配列(たとえばHIV gag)を挿入することにより、上記定義した「遺伝子シャフリング突然変異」が有効にもたらされることに言及したい。たとえば、HIV gag遺伝子を位置1(たとえば3’−gag−NPMGL−5’)でVSVゲノム内に挿入する場合、N、P、M、GおよびL遺伝子は、それぞれ、その野生型の位置からゲノム上のより遠位の位置に移動される。したがって、本発明の特定の実施形態では、遺伝子シャフリング突然変異には、N、P、M、GまたはL遺伝子のいずれかの3’側のVSVゲノムに外来核酸配列を挿入することが含まれる(たとえば、3’−gag−NPMGL−5’、3’−N−gag−PMGL−5’、3’−NP−gag−MGL−5’など)。
【0126】
Gタンパク質の挿入および切断突然変異体
特定の他の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、突然変異したG遺伝子を含み、コードされているGタンパク質は、Gタンパク質の「細胞質側末端領域」とも呼ばれるその細胞質ドメイン(カルボキシ末端)で切断されている。細胞質ドメインのカルボキシ末端を切断するG遺伝子突然変異は、VSVの出芽に影響を与え、ウイルス産生を弱毒化することが、当分野で知られている(Schnellら、The EMBO Journal、17(5):1289〜1296、1998、Robertsら、J Virol、73:3723〜3732、1999)。野生型VSV Gタンパク質の細胞質ドメインは、29個のアミノ酸(RVGIHLCIKLKHTKKRQIYTDIEMNRLGK−COOH、配列番号1)を含む。
【0127】
特定の実施形態では、本発明の切断されたVSV G遺伝子は、細胞質ドメインの最後の28個のカルボキシ末端のアミノ酸残基が欠失している(配列番号1の29個のアミノ酸の野生型細胞質ドメインからアルギニンのみを保持)Gタンパク質をコードしている。特定の他の実施形態では、本発明の切断されたVSV G遺伝子は、細胞質ドメインの最後の20個のカルボキシ末端のアミノ酸残基が欠失している(配列番号1の29個のアミノ酸の野生型細胞質ドメインと比較して)Gタンパク質をコードしている。
【0128】
特定の他の実施形態では、本発明の切断されたVSV G遺伝子は、その細胞質ドメイン(細胞質側末端領域)中に単一のアミノ酸を含むGタンパク質をコードしており、単一のアミノ酸は、任意の天然に存在するアミノ酸である。さらに他の実施形態では、本発明の切断されたVSV G遺伝子は、その細胞質ドメイン(細胞質側末端領域)中に9個のアミノ酸を含むGタンパク質をコードしており、9個のアミノ酸は、任意の天然に存在するアミノ酸である。特定の他の実施形態では、本発明の突然変異したVSV遺伝子は、外来エピトープを表す挿入物を含有するGタンパク質をコードしている。そのような突然変異体は当分野で知られている(たとえばSchlehuberおよびRose、2003を参照)。
【0129】
本明細書中で定義する、配列番号1の野生型配列と比較して、細胞質ドメインの最後の28個のカルボキシ末端のアミノ酸残基が欠失しているGタンパク質をコードしているG遺伝子突然変異体は、「G(ct−1)」、または単に「CT1」と命名され、G(ct−1)の細胞質ドメインは、(R−COOH)のアミノ酸配列を有する。本明細書中で定義する、配列番号1の野生型配列と比較して、細胞質ドメインの最後の20個のカルボキシ末端のアミノ酸残基が欠失しているGタンパク質をコードしているG遺伝子突然変異体は、「G(ct−9)」と命名され、G(ct−9)、または単に「CT9」の細胞質ドメインは、(RVGIHLCIK−COOH、配列番号2)のアミノ酸配列を有する。したがって、本発明の特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、突然変異したG遺伝子を含み、コードされているGタンパク質は、G(ct−1)またはG(ct−9)である。
【0130】
温度感受性および他の点突然変異
本明細書中で以下に定義するVSV「温度感受性」(「ts」)突然変異とは、非許容的な温度でのVSVの成長を制限する、VSVゲノム中の突然変異である。たとえば、本発明のVSV ts突然変異体は、許容的な温度(たとえば31℃)で正常かつ高い力価まで成長するが、その成長または繁殖は、非許容的な温度(たとえば、37℃または39℃)で制限される。化学的および部位特異的突然変異誘発によるts突然変異体の作製は当分野で周知であり(たとえば、Pringle、1970、Liら、1988を参照)、数々のts突然変異体が、特徴づけられ、記載されている(たとえば、FlamandおよびPringle、1971、FlamandおよびBishop、1973、PrintzおよびWagner、1971、GopalakrishnaおよびLenard、1985、Pringleら、1981、Moritaら、1987、Liら、1988、Rabinowitzら、1977、Lundhら、1988、Dal Cantoら、1976、Rabinowitzら、1976を参照)。特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、そのゲノム中にts突然変異を含み、ts突然変異は、G、M、N、PまたはLタンパク質をコードしている核酸配列の1つまたは複数の突然変異である。
【0131】
本明細書中で定義する、VSV G、M、N、PまたはL遺伝子のいずれか1つのts突然変異は、本発明の別個の「突然変異クラス」である。たとえば、本発明の特定の実施形態では、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラスを含む遺伝子改変VSV(2つの突然変異がVSVの病原性を相乗的に弱毒化する)は、1つまたは複数のts N遺伝子突然変異(本明細書中で以降「N(ts)」)を第1の突然変異のクラスとして含み、1つまたは複数のts L遺伝子突然変異(本明細書中で以降「L(ts)」)を第2の突然変異のクラスとして含む。非限定的な例として、3’−N(ts)PMGL(ts)−5’などのゲノムを含む遺伝子改変VSVは、2つの突然変異のクラス(すなわち、(1)N(ts)遺伝子突然変異および(2)L(ts)遺伝子突然変異)を含み、3’−gag−N(ts)PMGL(ts)−5’などのゲノムを含む遺伝子改変VSVは、3つの突然変異のクラス(すなわち、(1)N(ts)遺伝子突然変異、(2)L(ts)遺伝子突然変異、および(3)gag挿入による遺伝子シャフリング突然変異)を含む。
【0132】
特定の他の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に点突然変異を含み、点突然変異は、G、M、N、PまたはLタンパク質をコードしている核酸配列の1つまたは複数の突然変異であり、突然変異は、低温適応、融合低下または細胞変性効率などの弱毒化表現型を与える(たとえば、FredericksenおよびWhitt、1998、AhmedおよびLyles、1997を参照)。たとえば、FredericksenおよびWhitt(1998)は、シフトされた融合活性のpH閾値を有する、G遺伝子の3つの弱毒化点突然変異(たとえば、D137−L、E139−LまたはDE−SS)を記載している。AhmedおよびLyles(1997)は、宿主の遺伝子発現の阻害において欠損性が高く、野生型Mタンパク質よりも迅速にターンオーバーされた、M遺伝子の弱毒化点突然変異(N163D)を記載している。したがって、特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に1つまたは複数の点突然変異を含む。
【0133】
非細胞変性性M遺伝子突然変異
特定の他の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、M遺伝子中に非細胞変性性突然変異を含む。VSV(インディアナ血清型)M遺伝子は、229個のアミノ酸のM(マトリックス)タンパク質をコードしており、NH末端の最初の30個のアミノ酸がPPPYモチーフを含む。Jayakarら、(J.Virology、74:9818〜27、(2000))により、PPPYモチーフ中の突然変異(たとえば、APPY、AAPY、PPAY、APPA、AAPAおよびPPPA)により、ウイルス出芽の後期段階を遮断することによってウイルス収量が減少されることが実証された。したがって、特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、M遺伝子中に非細胞変性性突然変異を含み、突然変異は、コードされているMタンパク質のPPPYモチーフである。
【0134】
MのmRNAがM2およびM3と呼ばれる2つの追加のタンパク質をさらにコードしていることが、最近報告されている(JayakarおよびWhitt、J.Virology、76:8011−18、2002)。M2およびM3タンパク質は、229個のアミノ酸のMタンパク質(M1と呼ぶ)をコードしているものと同じリーディングフレーム中で、下流のメチオニンから合成され、M1タンパク質の最初の32個(M2タンパク質)または50個(M3タンパク質)のアミノ酸を欠く。Mタンパク質を発現するがM2およびM3を発現しない組換えVSVに感染した細胞は、(特定の細胞種で)胞変性効果の開始の遅延を示すが、それでも正常なウイルス収量を生じることが観察されている。したがって、特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、M遺伝子中に非細胞変性性突然変異を含み、M遺伝子突然変異は、M2またはM3タンパク質を発現しないウイルスをもたらす(たとえば、JayakarおよびWhitt、2002を参照)。
【0135】
G−stem突然変異
特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、G遺伝子中に突然変異を含み、コードされているGタンパク質は、Gタンパク質外部ドメインの膜近位の基部(stem)領域中に突然変異を有し、G−stemタンパク質と呼ばれる。G−stem領域は、Gタンパク質のアミノ酸残基421〜462を含む。最近の研究により、Gタンパク質のG−stem中の挿入および/または欠失(たとえば切断)の突然変異による、VSVの弱毒化が実証されている(RobinsonおよびWhitt、J.Virol.、74、2239〜46、2000、Jeetendraら、J.Virol、76、12300〜311、2002、Jeetendraら、J.Virol、77、12807〜18、2003)。したがって、特定の実施形態では、遺伝子改変VSVは、G−stemの挿入、欠失、置換またはその組合せを含む。1つの特定の実施形態では、G−stem突然変異を含む本発明の遺伝子改変VSVベクター(およびその免疫原性組成物)は、3’−gag−NPMG(stem)L−5’のゲノムを含む。
【0136】
アンビセンスRNA突然変異
特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、5’アンチゲノムプロモーター(AGP)が3’ゲノムプロモーター(GP)の1つのコピーで置き換えられている、アンビセンスRNA突然変異を含む。VSVの5’AGP、および他の非分割型のマイナス鎖RNAウイルスは、強力な複製プロモーターとして作用する一方で、3’GPは、転写プロモーターおよび弱い複製プロモーターとして作用する。通常のVSV感染の過程では、アンチゲノムコピーよりもゲノムコピーが3〜4倍の優勢にあり、この比は、ラブドウイルス科の別のメンバーである狂犬病ウイルスでさらに高い(FinkeおよびConzelmann、J.Virology、73(5):3818〜25、1999)。狂犬病ウイルスを用いた以前の研究により、5’AGPを1つのGPのコピー(アンビセンスRNA突然変異として知られる)で置き換えることにより、同レベルのゲノムおよびアンチゲノムRNAのコピーが感染した細胞中にもたらされたことが実証された。さらに、ゲノムの5’末端に配置したGPのコピーから外来遺伝子が発現された。培養細胞物中で連続継代培養した際、アンビセンスRNA突然変異を含有する狂犬病ウイルスは、組換え野生型狂犬病ウイルスよりも10〜15倍低い力価を一貫して複製した(FinkeおよびConzelmann、J.Virology、73(5):3818〜25、1999)。そのような突然変異は、ウイルス複製の弱毒化および外来遺伝子の発現の両方のために、VSVベクター中で使用した。したがって、特定の実施形態では、遺伝子改変VSVは、アンビセンスRNA突然変異を含む。
【0137】
遺伝子欠失
特定の他の実施形態では、本発明の遺伝子改変VSVは、VSV遺伝子(GまたはMなど)がゲノムから欠失しているウイルスを含む。たとえば、Robertsら、(J.Virol.、73、3723〜32、1999)は、Gタンパク質をコードしている遺伝子全体が欠失しており(ΔG)、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質で置換されているVSVベクターを記載しており、VSVベクター(ΔG−HA)は、弱毒化した病因を実証した。
【0138】
B.弱毒化したVSVのさらなる遺伝子改変を作製する方法
特定の実施形態では、本発明は、以下に記載する少なくとも2つの異なる突然変異のクラスを含む、遺伝子改変VSVを対象とする。これらの遺伝子改変および弱毒化したVSVのいずれかを、本発明中に記載の方法によってさらに遺伝子改変し得る。すなわち、これらの弱毒化したVSVのいずれかを、感受性のある細胞または細胞系中、細胞1個あたり約0.001〜約0.1PFUの範囲の低い感染多重度で約5〜15回連続継代培養し、そのゲノムを、本明細書中に記載の突然変異のうちの少なくとも1つの存在について分析し得る。
【0139】
したがって、本発明の一態様では、ウイルスを細胞培養物中での成長に適応させる方法であって、
a)細胞培養物を、細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位(PFU)の範囲の低い感染多重度(MOI)のウイルスに感染させるステップと、
b)ウイルスを含有する細胞培地を収集するステップと、
c)細胞培地を清澄にするステップと、
d)細胞培地を凍結するステップと、
e)ステップa)からd)を約5〜約15回繰り返すステップと
を含む方法を提供する。
【0140】
この方法を使用することにより、低MOIで、細胞1個あたり約0.001〜約0.1PFUの低MOIで約5〜15回継代培養していないVSVを用いたウイルスの産生または収量と比較して、ウイルスの産生/収量の5〜100倍の増加ならびにウイルスの遺伝子型および表現型の特徴の安定性の増加がもたらされる。
【0141】
そのような方法を使用することにより、以下の位置のうちの少なくとも1つに対応する領域中に少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する、遺伝子改変した水疱性口内炎ウイルス(VSV)がもたらされる:
Mタンパク質の位置119または142のアミノ酸、
Gタンパク質の位置109、224、438、477、または481のアミノ酸、および
Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸。
【0142】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、保存的または非保存的なアミノ酸変化を含む突然変異を有する。
【0143】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、Mタンパク質の位置119もしくは142の一方またはMタンパク質の位置119および142の両方の突然変異を有する。一実施形態では、Mタンパク質の位置119のアミノ酸の突然変異は、T→N突然変異であり、Mタンパク質の位置142のアミノ酸の突然変異は、P→T突然変異またはP→Q突然変異である。
【0144】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、それぞれK→N、N→T、S→I、A→V/G→LまたはV→Iの突然変異である、Gタンパク質の位置109、224、438、477または481のアミノ酸の突然変異を有する。
【0145】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、それぞれP→L、K→E、またはL→Iである、Lタンパク質の位置205、220または1450のアミノ酸の突然変異を有する。
【0146】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、HIV gagタンパク質をコードしている核酸分子をさらに含み、HIV gagタンパク質は、位置165、270、329または348のアミノ酸のうちの少なくとも1つに突然変異を有し、突然変異は、それぞれS→G、L→S、D→NまたはT→Kである。
【0147】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVについて上述した突然変異は、ウイルスの遺伝子型および/または表現型の安定性の増加をもたらし、遺伝子改変VSVに感染した細胞からのウイルス産生の収量の増加をさらにもたらす。
【0148】
一実施形態では、本発明の方法によって産生した、遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に少なくとも2つの他の突然変異をさらに含む、上述したもののいずれかから選択される。一実施形態では、突然変異は、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異からなる群から選択され得る。
【0149】
一実施形態では、本明細書中に記載の方法では、弱毒化したウイルスであるウイルスを利用する。一実施形態では、遺伝子改変したウイルスを産生する方法は、ウイルスベクターまたは免疫原性組成物の大スケールの産生に適応している。一実施形態では、この方法は、細胞1個あたり約0.001〜約0.1プラーク形成単位の範囲の低い感染多重度で約5〜15回継代培養していないウイルス株で得られるものと比較して、5〜100倍高いウイルスの収量をもたらす。一実施形態では、上述の方法により、ウイルスの弱毒化に関連する任意の既存の突然変異の維持が可能となる。ウイルスの弱毒化に関連する既存の突然変異は、温度感受性突然変異、点突然変異、遺伝子シャフリング突然変異、G−stem突然変異、非細胞変性性M遺伝子突然変異、アンビセンスRNA突然変異、G遺伝子切断突然変異、G遺伝子挿入突然変異および遺伝子欠失突然変異から選択され得る。一実施形態では、この方法により、ウイルスの弱毒化に関連する低い神経毒性プロフィールの維持が可能となる。一実施形態では、上述の方法で使用する弱毒化したウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)の株である。
【0150】
C.組換え水疱性口内炎ウイルスベクター
特定の実施形態では、本発明は、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラス、および複製に必須でないVSVゲノムの領域内に挿入されたまたはそれを置き換える、別個の転写単位としての少なくとも1つの外来RNA配列を含む、組換えVSVベクターを提供する。この組換えVSVベクターは、上述の改変のうちの少なくとも1つを含有するようにさらに遺伝子改変してもよく、これにより、ウイルスが細胞培養物中での成長に適応することがもたらされ、したがって、細胞1個あたりのウイルスの収量が増加する。
【0151】
組換えRNAウイルスを産生する方法は、当分野において「救済」または「逆遺伝学」方法と呼ばれる。VSVの例示的な救済方法は、それぞれ本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,033,886号、米国特許第6,596,529号およびWO2004/113517号に記載されている。マイナスセンスの一本鎖かつ非分割型のRNAウイルスゲノムの転写および複製は、リボ核タンパク質核(ヌクレオカプシド)に作用する多量体タンパク質複合体の酵素活性によって達成される。裸のゲノムRNAは鋳型として役割を果たすことができない。その代わり、これらのゲノム配列は、Nタンパク質によってヌクレオカプシド構造へと完全にカプシド形成された際にのみ、認識される。この場面においてのみ、ゲノムおよびアンチゲノムの末端プロモーター配列が認識されて転写または複製経路が開始される。
【0152】
VSVゲノムと同等のクローニングしたDNAを、適切なDNA依存性RNAポリメラーゼプロモーター(たとえばT7 RNAポリメラーゼプロモーター)と自己切断リボザイム配列(たとえばデルタ型肝炎リボザイム)との間に配置し、これを適切な転写ベクター(たとえば増殖可能な細菌プラスミド)内に挿入する。この転写ベクターにより、容易に操作可能なDNA鋳型が提供され、これから、RNAポリメラーゼ(たとえばT7 RNAポリメラーゼ)が、正確またはほぼ正確な5’および3’末端を有する、VSVアンチゲノム(またはゲノム)の一本鎖RNAコピーを忠実に転写することができる。VSVゲノムDNAコピーの配向ならびに隣接するプロモーターおよびリボザイム配列により、アンチゲノムまたはゲノムRNA均等物のどちらが転写されるかが決定される。また、新しいVSV子孫の救済には、裸の一本鎖VSVアンチゲノムまたはゲノムRNA転写物を、機能的なヌクレオカプシド鋳型であるウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質、ポリメラーゼ関連リンタンパク質(P)およびポリメラーゼ(L)タンパク質へとカプシド形成するために必要な、VSVに特異的なトランス作用性支援タンパク質も必要である。これらのタンパク質は、転写および複製を達成するためにこのヌクレオカプシド鋳型と結合する必要がある、活性ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼを含む。
【0153】
したがって、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラス(たとえばセクションAを参照)を含む、本発明の遺伝子改変および弱毒化したVSVは、当分野で知られている救済方法に従って産生する。たとえば、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラスを含む、遺伝子改変VSVベクターは、(1)VSVのゲノムまたはアンチゲノムをコードしているポリヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子を含む転写ベクター、ならびに(2)カプシド形成、転写および複製に必要なトランス作用性N、PおよびLタンパク質をコードしている少なくとも1つの単離した核酸分子を含む、少なくとも1つの発現ベクターを用いて、宿主細胞中、これらのベクターの同時発現および組換えVSVの産生を許容するために十分な条件下で産生する。それだけには限定されないが、VSVインディアナ、VSVニュージャージー、VSVチャンディプラ、VSVグラスゴーなどを含めた、任意の適切なVSV株または血清型を本発明に従って使用し得る。
【0154】
VSVの弱毒化した形態をコードしているポリヌクレオチド配列に加えて、ポリヌクレオチド配列は、1つまたは複数の異種(または外来)ポリヌクレオチド配列またはオープンリーディングフレーム(ORF)もコードしていてよい。異種ポリヌクレオチド配列は所望に応じて変動させることができ、それだけには限定されないが、補因子、サイトカイン(インターロイキンなど)、T−ヘルパーエピトープ、CTLエピトープ、制限マーカー、アジュバント、または様々な微生物病原体(たとえば、ウイルス、細菌、寄生生物もしくは真菌)のタンパク質、特に望ましい免疫応答を誘発することができるタンパク質が含まれる。特定の実施形態では、異種ORFは、HIV遺伝子(たとえば、gag、env、pol、vif、nef、tat、vpr、revまたはvpu)を含有する。1つの特定の実施形態では、HIV遺伝子はgagであり、gag遺伝子は、VSVゲノム内の位置1(3’−gag−NPMGL−5’)または位置5(3’−NPMG−gag−L−5’)に挿入される。別の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、組換えVSVの予防的または治療的特徴を向上させるために選択される、インターロイキン−12などのサイトカインをさらにコードしている。
【0155】
特定の実施形態では、本発明の遺伝子改変および弱毒化したVSVは、化学突然変異誘発などの慣用の手段によって突然変異させる。たとえば、細胞培養物中でのウイルスの成長中に化学突然変異原を加え、続いて、(a)温度感受性および/または低温適応させた突然変異を選択するために最適以下の温度での継代培養に供したウイルスを選択し、(b)細胞培養物中で小さなプラークを生じる突然変異ウイルスを同定し、(c)宿主域突然変異を選択するために異種宿主を介して継代培養する。他の実施形態では、弱毒化突然変異は、部位特異的突然変異誘発を用いて事前に決定された突然変異を作成し、その後、これらの突然変異を含有するウイルスを救済することを含む。以前に記載したように、本発明の遺伝子改変VSVは、そのゲノム中に少なくとも2つの突然変異のクラスを含む。特定の実施形態では、1つまたは複数の突然変異のクラスは、二重突然変異(たとえば、欠失、挿入、置換など)、三重突然変異などを有するG−stem突然変異クラスなどの、複数の突然変異をさらに含む。その後、これらの弱毒化したVSVベクターを、動物モデルにおけるその病原性の弱毒化についてスクリーニングする。
【0156】
救済の典型的な(ただし、必ずしも排他的ではない)状況には、T7ポリメラーゼがウイルスゲノムcDNAを含有する転写ベクターからのアンチゲノム(またはゲノム)一本鎖RNAの転写を駆動するために存在する、適切な哺乳動物細胞環境が含まれる。転写と同時にまたはそのすぐ後に、このウイルスアンチゲノム(またはゲノム)RNA転写物は、ヌクレオカプシドタンパク質によって機能的な鋳型へとカプシド形成され、必要なウイルス特異的トランス作用性タンパク質をコードしている同時形質移入した発現プラスミドから同時に産生される、必要なポリメラーゼ構成要素によって結合される。これらの事象およびプロセスは、ウイルスmRNAの必須の転写、新しいゲノムの複製および増幅、それにより、新規VSV子孫の産生、すなわち救済をもたらす。
【0157】
転写ベクターおよび発現ベクターは、典型的には、宿主細胞中での発現のために設計されたプラスミドベクターである。カプシド形成、転写および複製に必要なトランス作用性タンパク質をコードしている少なくとも1つの単離した核酸分子を含む発現ベクターは、これらのタンパク質を、同じ発現ベクターまたは少なくとも2つの異なるベクターから発現する。これらのベクターは、一般に、基本的な救済方法から知られており、本発明の向上した方法で使用するために変更する必要はない。
【0158】
VSVなどのウイルスの救済を実施するためのさらなる技術は、本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第6,673,572号および米国公開特許出願US20060153870号に記載されている。
【0159】
VSVの救済に使用する宿主細胞は、組換えVSVの産生に必要な必須の、構成要素のベクターの発現を可能にするものである。そのような宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞から選択することができる。一般に、宿主細胞は、ヒト胎児腎臓細胞(たとえば293)などのヒト細胞に由来する。Vero細胞および多くの他の種類の細胞も宿主細胞として使用される。適切な宿主細胞の非限定的な例は以下のとおりである:(1)ヒト二倍体初代細胞系(たとえば、WI−38およびMRC5細胞)、(2)サル二倍体細胞系(たとえばFRhL−アカゲザル胎児肺細胞)、(3)準初代連続細胞系(たとえばAGMK−アフリカミドリザル腎細胞)、(4)ヒト293細胞および(5)他の潜在的な細胞系、たとえば、CHO、MDCK(マディンダービーイヌ腎臓)、初代ヒヨコ胚線維芽細胞。特定の実施形態では、細胞によるDNAの取り込みを増加させるために、形質移入促進試薬を加える。これらの試薬の多くが当分野で知られている(たとえばリン酸カルシウム)。Lipofectace(Life Technologies、メリーランド州Gaithersburg)およびEffectene(Qiagen、カリフォルニア州Valencia)が一般的な例である。LipofectaceおよびEffecteneはどちらもカチオン性脂質である。これらはどちらも、DNAをコーティングし、細胞によるDNAの取り込みを増強させる。Lipofectaceは、DNAを取り囲むリポソームを形成する一方で、Effecteneは、DNAをコーティングするが、リポソームを形成しない。あるいは、プラスミドDNAの取り込みは、細胞の電気穿孔によっても増強させることができ、高圧電流を、細胞およびDNAを含有するキュベットに数ミリ秒間かける。
【0160】
その後、救済された弱毒化したVSVを、まずはin vitro手段によって、その所望の表現型(温度感度、低温適応、プラーク形態学、ならびに転写および複製の弱毒化)について試験する。また、突然変異は、必要なトランス作用性カプシド形成およびポリメラーゼ活性が、野生型もしくは改変したヘルパーウイルスによって、または遺伝子に特異的な弱毒化突然変異を保有するN、Pおよび様々なL遺伝子を発現するプラスミドによって提供されるミニレプリコン系を用いても、試験する。また、弱毒化したVSVは、動物神経毒性モデルにおける相乗的な弱毒化についてin vivoでも試験する。たとえば、マウスおよび/またはフェレットモデルは、神経毒性の検出に確立されている。手短に述べると、10匹のマウスのグループに、予測されるLD50用量(動物の50%に致死的な用量)にわたるウイルス濃度の範囲のそれぞれを頭蓋内(IC)注射する。たとえば、ウイルスの予測されるLD50が10〜10pfuの範囲である場合は、10、10、10および10pfuのウイルスを用いたIC接種を使用する。ウイルス配合物は、精製したウイルスストックをPBS中で段階希釈することによって調製する。その後、マウスの頭蓋上部に、50〜100μlのPBS中の必須の用量を注射する。動物は、重量減少、罹患率および死亡について毎日監視する。その後、試験した濃度の範囲にわたるマウスの累積死亡から、ウイルスベクターのLD50を計算する。
【0161】
異種核酸配列および抗原
特定の実施形態では、本発明は、複製に必須でないゲノムの部位内に挿入されたまたはそれを置き換える、別個の転写単位としての外来RNA配列をさらに含む、(低MOIでの本発明の連続継代培養方法を用いて)相乗的に弱毒化し、遺伝子改変VSVを提供し、外来RNA配列(マイナスのセンスである)は、VSVに感染した宿主細胞中で発現させることができるタンパク質の産生を指示する。この組換えゲノムは、タンパク質をコードしている外来DNAをVSV cDNA内に挿入することによって、最初に産生する。特定の実施形態では、疾患または障害に対する予防的または治療的免疫を生じる免疫原性抗原をコードしている任意のDNA配列は、本発明の組換え相乗的に弱毒化したVSV中で融合または非融合タンパク質として発現させた場合に、単独でまたは同じもしくは異なるVSVによって発現された他の抗原と組み合わせて単離し、本発明の免疫原性組成物で使用するためのVSVベクター中に取り込ませる。
【0162】
特定の実施形態では、相乗的に弱毒化し、(本発明の方法を用いて)さらに遺伝子改変した組換えVSVによる抗原の発現は、病原性微生物に対する免疫応答を誘導する。たとえば、抗原は、疾患または障害の原因物質である細菌、寄生生物、ウイルス、または真菌上に見つかる抗原の免疫原性または抗原性を示し得る。一実施形態では、ヒト病原体または他の目的の抗原の抗原性または免疫原性を示す抗原を使用する。
【0163】
抗体との結合を検出することによって免疫原性または抗原性を決定するために、それだけには限定されないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、免疫放射線アッセイ、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散アッセイ、in situ免疫アッセイ(たとえば、コロイド金、酵素または放射性同位体標識を用いたもの)、ウエスタンブロット、免疫沈降反応、凝集アッセイ(たとえば、ゲル凝集アッセイ、血球凝集アッセイ)、補体固定アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ、中和アッセイなどの技術を用いた、競合的および非競合的アッセイ系を含めた、当分野で知られている様々な免疫アッセイを使用する。一実施形態では、抗体結合は、一次抗体上の標識を検出することによって測定する。別の実施形態では、一次抗体は、二次抗体または試薬と一次抗体との結合を測定することによって検出する。さらなる実施形態では、二次抗体を標識する。免疫アッセイにおける結合を検出するための、多くの手段が当分野で知られている。免疫原性を検出する一実施形態では、T細胞媒介性応答を、標準方法、たとえば、in vitroもしくはin vivoの細胞毒性アッセイ、四量体アッセイ、elispotアッセイまたはin vivo遅延型過感受性アッセイによってアッセイする。
【0164】
相乗的に弱毒化したVSVによって発現されるエピトープ(抗原決定基)を発現する寄生生物および細菌(外来RNAが、寄生生物もしくは細菌の抗原またはそのエピトープを含有するその誘導体の産生を指示するもの)には、それだけには限定されないが、表1に記載のものが含まれる。
【0165】
別の実施形態では、抗原は、線虫によって引き起こされる障害に対して保護するために、線虫の抗原のエピトープを含む。別の実施形態では、組換えVSVによって発現された場合に脊椎動物宿主中で免疫原性である、プラスモジウム(Plasmodium)エピトープをコードしている任意のDNA配列を単離して、本発明によるVSV(−)DNA内に挿入する。DNA源として役割を果たすプラスモジウム(Plasmodium)の種には、それだけには限定されないが、ヒトマラリア寄生生物の熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、ならびに動物マラリア寄生生物のネズミマラリア原虫(P.berghei)、ネズミマラリア原虫(P.yoelii)、二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)、およびサルマラリア原虫(P.cynomolgi)が含まれる。さらに別の実施形態では、抗原は、コレラ毒素のβ−サブユニットのペプチドを含む。
【0166】
相乗的に弱毒化したVSVによって発現されるエピトープを発現するウイルス(外来RNAが、ウイルスの抗原またはそのエピトープを含むその誘導体の産生を指示するもの)には、それだけには限定されないが、表2に記載のものが含まれ、これは、利便性のためにそのようなウイルスを科ごとに記載し、限定するものではない。
【0167】
具体的な実施形態では、弱毒化したVSVによる宿主の感染の際に発現される、外来配列によってコードされている抗原は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素、ヒト呼吸器合胞体ウイルスG糖タンパク質(G)、麻疹ウイルス赤血球凝集素または2型単純ヘルペスウイルス糖タンパク質gDの抗原性または免疫原性を示す。
【0168】
【表1】
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【0169】
【表2−1】
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【0170】
【表2−2】
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【0171】
【表2−3】
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【0172】
弱毒化したVSVによって発現される他の抗原には、それだけには限定されないが、ポリオウイルスI VP1、HIV Iの外被糖タンパク質、B型肝炎表面抗原、ジフテリア毒素、連鎖球菌(streptococcus)24Mエピトープ、SpeA、SpeB、SpeCまたはC5aペプチダーゼ、および淋菌性ピリンの抗原の抗原性または免疫原性を示すものが含まれる。
【0173】
他の実施形態では、弱毒化し、さらに遺伝子改変VSVによって発現された抗原は、仮性狂犬病ウイルスg50(gpD)、仮性狂犬病ウイルスII(gpB)、仮性狂犬病ウイルスgIII(gpC)、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質H、仮性狂犬病ウイルス糖タンパク質E、伝染性胃腸炎糖タンパク質195、伝染性胃腸炎マトリックスタンパク質、ブタロタウイルス糖タンパク質38、ブタパルボウイルスカプシドタンパク質、セルプリナ・ハイドディセンテリア(Serpulina hydodysenteriae)保護抗原、ウシウイルス下痢糖タンパク質55、ニューカッスル病ウイルス赤血球凝集素−ノイラミニダーゼ、ブタインフルエンザ赤血球凝集素、またはブタインフルエンザノイラミニダーゼの抗原性または免疫原性を示す。
【0174】
特定の実施形態では、弱毒化し、さらに遺伝子改変VSVによって発現された抗原は、それだけには限定されないが、ネコ白血病ウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイルスなどを含めた、イヌ科動物またはネコ科動物の病原体に由来する抗原の抗原性または免疫原性を示す。
【0175】
特定の他の実施形態では、弱毒化し、さらに遺伝子改変VSVによって発現された抗原は、セルプリナ・ハイオディセンテリア(Serpulina hyodysenteriae)、口蹄疫ウイルス、ブタコレラウイルス、ブタインフルエンザウイルス、アフリカブタ発熱ウイルス、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス(たとえば、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス糖タンパク質Eもしくは糖タンパク質G)、または感染性喉頭気管炎ウイルス(たとえば、感染性喉頭気管炎ウイルス糖タンパク質Gもしくは糖タンパク質I)に由来する抗原の抗原性または免疫原性を示す。
【0176】
別の実施形態では、抗原は、ラクロスウイルス、新生子ウシ下痢ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、プンタトロウイルス、ネズミ白血病ウイルスまたはマウス乳癌ウイルスの糖タンパク質の抗原性または免疫原性を示す。
【0177】
他の実施形態では、抗原は、それだけには限定されないが、ヒトヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス−1、単純ヘルペスウイルス−2、ヒトサイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6、ヒトヘルペスウイルス−7、ヒトインフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(1型および/または2型)、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ならびに百日咳菌(Bordetella pertussis)を含めた、ヒト病原体の抗原の抗原性または免疫原性を示す。
【0178】
弱毒化したVSVによって発現される抗原として使用するための、潜在的に有用な抗原またはその誘導体は、病原体の感染力の中和における抗原の関与、種類または群の特異性、患者の抗血清もしくは免疫細胞による認識、および/または抗原に特異的な抗血清もしくは免疫細胞の保護効果の実証などの、様々な基準によって同定する。
【0179】
別の実施形態では、弱毒化したVSVの外来RNAは、エピトープを含む抗原の産生を指示し、これは、弱毒化したVSVを所望の宿主内に導入した際に、エピトープを含有する部分によって引き起こされる状態または障害に対して保護する免疫応答を誘導する。たとえば、抗原は、腫瘍(たとえば悪性腫瘍)に対する保護的免疫応答を誘導するために、腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原であり得る。そのような腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原には、それだけには限定されないが、KS1/4汎癌腫(pan−carcinoma)抗原、子宮癌抗原(CA125)、前立腺酸性ホスファターゼ、前立腺特異抗原、黒色腫関連抗原p97、黒色腫抗原gp75、高分子量黒色腫抗原および前立腺特異的膜抗原が含まれる。
【0180】
弱毒化したVSV DNAの非必須部位内に挿入される抗原をコードしている外来DNAは、弱毒化したVSVに感染した宿主において発現され、免疫応答を刺激することができるサイトカインをコードしている外来DNA配列を、さらに含んでいてもよい。たとえば、そのようなサイトカインには、それだけには限定されないが、インターロイキン1α、1β、2、4、5、6、7、8、10、12、13、14、15、16、17および18、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子ならびに腫瘍壊死因子αおよびβが含まれる。
【0181】
免疫原性および医薬組成物
特定の実施形態では、本発明は、免疫原性的な用量の、そのゲノム中に少なくとも2つの異なる突然変異のクラスおよび複製に必須でないVSVゲノムの領域内に挿入されたまたはそれを置き換える少なくとも1つの外来RNA配列を含む遺伝子改変VSVベクターを含む免疫原性組成物を対象とし、2つの突然変異は、VSVの病原性を相乗的に弱毒化する。遺伝子改変VSVは、本明細書中に記載のように、ウイルスを低MOIで約5〜15継代培養することによって、細胞培養物中での成長にさらに適応させてもよく、このさらに遺伝子改変および弱毒化したVSVを用いて、免疫原性組成物を調製し得る。
【0182】
本発明の相乗的に弱毒化し、遺伝子改変VSVベクターは、哺乳動物対象(たとえばヒト)に投与するために配合する。そのような組成物は、典型的には、VSVベクターと薬学的に許容できる担体とを含む。本明細書中で以降使用する言葉「薬学的に許容できる担体」には、薬学的投与に適合している任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれることが意図される。薬学活性のある物質用のそのような培地および薬剤の使用は、当分野で周知である。任意の慣用の培地または薬剤がVSVベクターと不適合である場合を除いて、そのような培地を本発明の免疫原性組成物中で使用する。また、補助活性化合物も組成物中に取り込ませ得る。
【0183】
したがって、本発明のVSV免疫原性組成物は、その意図する投与経路に適合するように配合する。投与経路の例には、非経口(たとえば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内)および粘膜(たとえば、経口、直腸、鼻腔内、頬側、経膣、呼吸器)が含まれる。非経口、皮内、または皮下の施用に使用する液剤または懸濁液には、以下の構成要素が含まれる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌的な希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸、クエン酸またはリン酸などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節する。非経口調節物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量のバイアルに封入することができる。
【0184】
注射使用に適した医薬組成物には、無菌的な水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌的な注射用液剤または分散液を即時調製するための無菌的な散剤が含まれる。静脈内投与では、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)またはリン酸緩衝溶液(PBS)が含まれる。すべての場合で、組成物は無菌的でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体であるべきである。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒である。たとえば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、適切な流動性が維持される。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸などによって達成する。多くの場合、組成物中に等張化剤、たとえば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされる。
【0185】
無菌的な注射用液剤は、所要量(または用量)のVSVベクターを、適切な溶媒中に、必要に応じて上記列挙した成分のうちの1つまたは組合せと共に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって調製する。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上記列挙したものの中からの所要の他の成分を含有する無菌的なビヒクル中に取り込ませることによって調製する。無菌的な注射用液剤を調製するための無菌的な散剤の場合は、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、事前に滅菌濾過したその溶液から、活性成分および任意の追加の所望の成分の散剤が得られる。
【0186】
吸入による投与では、化合物は、適切な噴霧剤(たとえば、二酸化炭素または霧化剤などの気体)を含有する圧力容器またはディスペンサーから、エアロゾルスプレーの形態で送達する。また、全身投与は、粘膜または経皮手段によるものであり得る。粘膜または経皮投与では、透過させるバリアに対して適切な浸透剤を配合物中で使用する。そのような浸透剤は一般に当分野で知られており、たとえば、粘膜投与では、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬を使用することによって達成される。また、化合物は、坐薬(たとえば、カカオ脂および他のグリセリドなどの慣用の坐薬基剤を用いて)または直腸送達のための保留浣腸の形態でも調製する。
【0187】
特定の実施形態では、投与の容易性および用量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で配合することが有利である。本明細書中で以降使用する単位剤形とは、治療する対象の単位用量として適切な、物理的に別々の単位をいい、それぞれの単位は、所望の治療効果が生じるように計算した、事前に決定された量の活性化合物を、所要の薬学担体と会合して含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物の特有の特徴および達成する特定の治療効果、ならびに個体を治療するためにそのような活性化合物を配合する分野に特有の制限によって指示され、それに直接依存する。
【0188】
本明細書中で引用するすべての特許および出版物は、本明細書中に参照により組み込まれている。
【0189】
VSVをベクター化した(vectored)免疫原性組成物の産生には、一般に、適切な細胞培養物(宿主)を組換えVSVに感染させることと、VSVを細胞培養物中で成長させることと、細胞培養液を適切な時に収集することと、VSVを細胞培養物液から精製することとが含まれる。臨床応用においてVSVベクターおよびその免疫原性組成物を使用することは、世界中の様々な薬物安全性の当局(たとえば、食品薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMEA)、カナダ健康製品食品局(HPFB)など)の安全性の規制に準拠するために、適切な純度のVSV試料(または用量)を必要とする。
【0190】
しかし、典型的には、VSVを細胞培養汚染物質(たとえば、細胞培養物の不純タンパク質およびDNA)から分離し、現在利用可能なVSV精製プロセス(たとえばスクロース勾配遠心分離による精製)を用いて適切な純度および収量のVSVを得ることは、困難である。たとえば、現在利用可能な精製プロセスを用いた場合、典型的には、VSV試料の純度と回収率(収量パーセント)との間には反比例の関係が存在し、これにより、十分な量の精製したVSVの製造が困難となる。さらに、現在のバイオリアクターに基づいたプロセスでは、細胞濃度の増加および培養時間の延長は、より高いVSV力価をもたらし、同時にバイオリアクター液中の細胞細片および有機構成要素の濃度を増加させ、VSV精製プロセスがさらに複雑となる。
【0191】
スクロース勾配超遠心は、1964年以降、ウイルス精製(VSV精製が含まれる)の標準方法である(Yamadaら、2003、BioTechniques、34(5):1074〜1078、1080、Brownら、1967、J.Immun.、99(1):171〜7、Robinsonら、1965、Proc。Natl.Acad.Sci.,USA、54(1):137〜44、Nishimuraら、1964、Japan.J.Med.Sci.Biol.、17(6):295〜305)。しかし、ウイルス濃度が増加するにつれて、細胞細片、宿主DNAおよびタンパク質不純物の増加も同時に起こり、これらは、高濃度ではスクロース勾配超遠心によって除去することが非常に困難である。さらに、スクロース勾配超遠心はスケールアップした場合に非常に高価であり、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿(McSharryら、1970
Virol.、40(3):745〜6)によるVSVの濃縮および精製も、高い不純物レベルの同様の問題を有する。
【0192】
比較的高品質なウイルスがサイズ排除クロマトグラフィーによって得られている(Transfiguracionら、2003、Human Gene Ther.、14(12):1139〜1153、Vellekampら、2001、Human Gene Ther.、12(15):1923〜36、Rabottiら、1971、Comptes Rendus des Seances de l’Academie des Sciences、Serie D:Sciences Naturelles、272(2):343〜6、Jacoliら、1968、Biochim.Biophys.Acta、Genl Subj.、165(2):99〜302)。しかし、プロセスの費用および稼働の困難さにより、これは、一般に大スケールのウイルス産生に実現可能でない。ヘパリン(Zolotukhinら、1999、Gene Ther.、6(6):973〜985)、レクチン(Kaarsnaesら、1983、J.Chromatog.、266:643〜9、Kristiansenら、1976、Prot.Biol.Fluids、23:663〜5)およびMatrex(商標)Cellufine(商標)スルフェート(Downingら、1992、J.Virol.Meth.、38(2):215〜228)などのアフィニティークロマトグラフィーでは、ウイルス精製においてある程度の応用が見つかっている。ヘパリンおよびレクチンは、漏出の可能性の問題があり、製品をリリースする前にさらなる試験が必要となるため、一般にcGMPウイルス産生に好ましくない(使用されない)。
【0193】
Matrex(商標)Cellufine(商標)スルフェートを用いたウイルスの親和性精製は、ウイルス精製、ウイルス品質およびカラム再生の効率が原因で、未解決の問題である。VSV精製には、非常に大きな親和性カラムが必要である(たとえば、1リットルの細胞培養物あたり0.2LのMatrex(商標)Cellufine(商標)スルフェート樹脂、Wyeth Vaccineの未発表の結果)。イオン交換クロマトグラフィーによって、単独で、またはウイルス精製で使用される他の種類の従来のクロマトグラフィー技術と組み合わせて精製した場合は、低いウイルス収量が観察された(国際公開公報WO2006/011580号、Spechtら、2004、Biotech.Bioeng.、88(4):465〜173、Yamadaら、2003、上記引用、Vellekampら、2001、上記引用、Zolotukhinら、1999、上記引用、(国際公開公報WO1997/06243号、Kaarsnaesら、1983、上記引用)。
【実施例】
【0194】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を実証する。しかし、これらの実施例は例示のためのみであり、本発明の条件および範囲に関して完全に決定的であることを意図しないことを理解されたい。典型的な反応条件(たとえば、温度、反応時間など)を与えた場合、指定した範囲を超える条件および下回る条件も、一般に利便性は低下するが、どちらも使用できることを理解されたい。別段に指定しない限りは、本明細書中で言及するすべての部および%は重量に基づいており、すべての温度は摂氏で表す。
【0195】
(実施例1)
VSVインディアナ(IN)およびVSVニュージャージー(NJ)血清型を用いたウイルスの継代培養研究
図1は、wt VSVおよびattn VSVN4CT1−gag1のゲノム構成を例示している。図2は、ウイルスをVero細胞中で連続継代培養するために使用した実験プロトコルの概要である。5継代ごとのウイルスを、示したアッセイによって分析した。図8A〜8Lは、VSVインディアナ血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。図9A〜9Mは、VSVニュージャージー血清型の元の(継代0回目またはP0)ウイルスと継代25回目とのヌクレオチド(NT)およびアミノ酸(AA)配列の比較を示す。継代培養したウイルス中のNTおよびAA置換を太字で示す。これらの配列は、表5および配列表中に要約されている。
【0196】
弱毒化したrVSVINN4CT1Gag1を、Veroの静置培養物中での継代培養の出発物質として使用した。T25フラスコ中のVero細胞に、弱毒化したウイルスを、0.01の感染多重度で、DMEM(無血清、抗生物質を含まない)中で接種した。ウイルス細胞変性効果(CPE)が細胞単層の90〜100%で明らかとなった際に、フラスコを32℃で2〜3日間インキュベーションした。培地を収集し、低速遠心分離(1500rpm、10分間)によって清澄にした。1×スクロースリン酸(SP)緩衝液(最終濃度)を加えた後、清澄にしたウイルスをドライアイスエタノール浴中でフラッシュ凍結し、≦−60℃で保存した。このウイルスを、継代1回目またはP1のrrVSVINN4CT1Gagとして標識した。このウイルスを同様に用いて、新鮮なVero細胞のT25フラスコを0.01のmoiで接種して、P2が生じた。連続継代培養と呼ばれるこのプロセスを25回繰り返して、P1〜P25のウイルスを作製した。それぞれの継代で、Vero単層上で行った感染力アッセイによってウイルスの力価決定を行った。
【0197】
VSVin血清型を用いた連続継代後のアミノ酸置換の自然増加を図3に示す。Vero細胞中、0.01のMOIで継代培養したVSVinウイルスの成長動態を図5に示す。
【0198】
VSVnj血清型を用いた連続継代後のアミノ酸置換の自然増加を図4に示す。Vero細胞中、0.01のMOIで継代培養したVSVnjウイルスの成長動態を図6に示す。
【0199】
(実施例2)
組換えVSVN4CT1gag1の産生
VSVインディアン血清型(VSVin)の組織培養に適応させたサンフアン株およびその対応するゲノムcDNAは、エール大学、コネチカット州New HavenのJohn K.Rose博士から提供され、rVSVN4CT1gag1組換え体の誘導に使用した。
【0200】
rVSVinN4CT1gag1プラスミドDNAを調製する詳細な手順は、既に記載されている(Clarkeら、J Virology、81、2056〜64、2007およびCooperら、J Virology、82:207〜29、2008)。類似体のNJ血清型の糖タンパク質ベクター、rVSVnjN4CT1gag1は、Gin遺伝子を、Gnj遺伝子の切断された形態で置き換えることによって作製し、Cooperら、2008に記載されている。図1は、wt VSVに由来する弱毒化したVSV組換え体の、ウイルスゲノム内のウイルス遺伝子の順序を模式的に示す。
【0201】
感染性ウイルスは、Vero細胞を、完全長ゲノムを含有するウイルスゲノムプラスミドならびにVSV N、P、L、MおよびGタンパク質を個別にコードしている5つの発現プラスミドで形質移入した後に、ゲノムcDNAから回収した。これらのプラスミドからの発現は、T7 RNAポリメラーゼプロモーターの制御下にある。ポリメラーゼは、ヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター/エンハンサー領域の制御下にあるT7 RNAポリメラーゼをコードしているプラスミドの電気穿孔によって供給した。救済されたrVSVは、3〜4回のクローン単離によって精製し、3回のVero細胞中での継代培養によって増幅した。ウイルス救済ならびにすべての続く精製および増幅は、Vero細胞中で行った。ウイルスの救済に使用したウシ胎児血清(FBS)は、ニュージーランド起源のものであった。救済後のすべてのステップは、無血清培地(DMEM)中で行った。クローン精製後のすべてのステップは、無血清の抗生物質を含まない培地(DMEM)中で行った。
【0202】
手短に述べると、T150フラスコからの約2.0×10個のVero細胞を、10μgのrVSVINN4CT1Gag1の完全長ウイルスcDNAプラスミド、ならびに、T7プロモーターの制御下にある、VSV N、P、L、M、およびGタンパク質をコードしている5つの支援プラスミド(それぞれ10、4、1、1、2μg)を含有するチューブ内に入れた。T7 RNAポリメラーゼを供給するために7つ目のプラスミドを50μgで加え、このプラスミドは、細胞RNAポリメラーゼIIによって制御される。懸濁液を電気穿孔に供し、細胞を再懸濁させ、T150フラスコに移した。フラスコを37℃で3時間インキュベーションし、43℃で5時間の熱ショックを与え、その後、37℃で終夜インキュベーションした。培地を翌日交換し、2日目にフラスコを32℃でインキュベーションした。フラスコはそれぞれの営業日にCPEの兆候について検査した。CPEの兆候を示すフラスコを、80〜100%のCPEに達するまで追跡した。この時点で、救済したウイルスを含有する培地(救済上清)を収集し、ウイルス安定化剤として1×SPを添加し、フラッシュ凍結し、≦−60℃で保存した。すべての救済上清を、Gagに特異的なモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット分析によって、Gag発現についてスクリーニングした。Gag発現を示す救済したウイルスを、ウイルスゲノムの配列決定に供した。正しい配列を有するそれぞれの血清型の1つまたは複数のウイルスクローンを、さらなるプラークの精製および増幅のために選択した。
【0203】
ウイルスのプラーク形成は、寒天重層を有する6ウェルプレート中のVero細胞で、ゲンタマイシンを含み、血清を含まないDMEM中で行った。≦5個のプラーク/ウェルを達成するために、感染性ウイルスを含有する救済上清をDMEMで希釈した。いくつかの十分に単離されたプラークを選択し、DMEMに懸濁させ、2〜3回のさらなるプラークの精製ラウンドに供した。4回目のクローニングからのリードプラークを選択し、DMEMに懸濁させ、その後、それぞれ6ウェルプレート、T25フラスコおよびT150フラスコ中のVero細胞での3回の連続的なウイルス増幅に使用した。増幅は、血清を含まず、抗生物質を含まないDMEMを用いて行った。このプロセスによって得られた組換えウイルスは低継代ウイルスと呼ばれ、以下に記載の細胞適応のための、Vero細胞でのさらなる継代培養に使用した。
【0204】
(実施例3)
連続継代培養の実験プロトコル
それぞれの血清型の低継代VSV組換え体(P0)を、図2に示すように、T25フラスコ中のVero細胞単層で連続25回継代培養した。無血清培地上で成長させたVero細胞を、約0.01までの感染多重度(MOI)のウイルスに感染させ、大規模なCPEが明白となるまで、通常は感染後48〜72時間まで、32℃/5%のCOインキュベーター内でインキュベーションした。それぞれの増幅後、ウイルス培養物を低速の遠心分離によって清澄にし、1×SPスクロースリン酸緩衝液で安定化させた。10×SPは、1リットルあたり、12.2gmの二塩基性リン酸カリウム、5.17gmの一塩基性リン酸カリウム、746.2gmのスクロースを含有する)。継代1〜25回目からのウイルス培養物は、以前に記載したプラークアッセイによって力価決定した(Clarkeら、J.Virol.、81:2056〜64、2007。ヌクレオチドの配列決定は5継代ごとに行った。
【0205】
(実施例4)
マウスのIC LD50研究の結果
マウスのIC LD50研究
若いマウスは、頭蓋内接種(IC)後にVSVの感染に感受性が高く、迅速な罹患および死亡が引き起こされる。マウスのIC LD50神経毒性動物モデルは、高感度であり、VSV組換え体の病原性における変化を識別可能であることが示されている(Clarkeら、J.Virol.、81、2056〜64、2007)。したがって、wt VSVinを受けたマウスは、重量が劇的に減少し、1〜2pfuのLD50の接種後2〜4日間に死亡した。他方で、CT切断または遺伝子シャッフルのどちらかを含有するウイルスは、12〜21pfuのLD50を有するwt VSVよりも弱毒化されていることが示された(Clarkeら、J.Virol.、81、2056〜64、2007)。しかし、CT1突然変異を遺伝子シャッフル(N4およびまたはgag1)突然変異と組み合わせた場合に、病原性の劇的な減少が見られた。たとえば、低継代rVSVinN4CT1gag1は、この動物モデルで試験した最高用量である>10pfuのLD50で非常に低いレベルの病原性を示した。このウイルスを接種したマウスは、接種後にその重量が最初に10〜20%減少したが、約2〜3週間以内に正常な重量まで回復した。同様の結果がウイルスのNJ血清型で見られた(Cooperら、J Virology、82、207〜29、2008)。
【0206】
それぞれの血清型(INおよびNJ)で継代15〜25回目の本発明のVeroに適応させたVSVN4CT1gag1を、ネズミIC LD50動物モデルで試験した。病原性の増加は見られず、図7に示すように、すべての継代培養したウイルスで>10pfuのLD50であった。これらの結果により、細胞培養物中で継代培養したウイルス中で生じた適応的突然変異は、ウイルスの病原性に影響を与えなかったことが示された。低い病原性、および高い力価でのその増強された複製により、継代培養したウイルスが、ヒト臨床治験における試験に適切となる。
【0207】
方法
マウスのIC LD50研究の実験の詳細は、Clarkeら(Clarkeら、J.Virol.、81、2056〜64、2007)およびCooperら(Cooperら、J Virology、82、207〜29、2008)に示されている。5週齢の雌のスイスウェブスターマウスに麻酔をし、体積30μlのウイルスの10倍希釈液をIC注射した(1つの希釈あたり10匹の動物、希釈は、ほぼ予測されるLD50の範囲となるように行った)。重量および健康状態を2週間の間毎日記録した。両側が麻痺した、または苦痛もしくは重篤な疾病の顕著な兆候を示すマウスを屠殺し、VSV疾患に屈したと記録した。LD50は、ReedおよびMuench(Am.J.Hyg.、27、493〜97、1938)の方法によって決定した。
【0208】
要約
初期継代のrVSVN4CT1−gag1ウイルス(P0)と比較して、連続継代培養したP15ウイルスは、はるかに高い力価まで成長した。これにより、臨床治験材料の(CTM)大スケールの製造が容易となった。さらに、P15による適応的突然変異の安定化により、ウイルスに、CTMの製造中に製造ロット間の一貫性がもたらされた。さらに、継代培養したウイルスの安全性プロフィールは、ネズミIC LD50動物モデルによって試験して変化しないまま保たれ、それにより、臨床評価における適切性が維持された。
【0209】
(実施例5)
ベクター化したHIVのスケールアップ
7.5グラム/LのCytodex Iマイクロキャリアを含有する10Lのバイオリアクター(8Lの作業体積)に、約5×10個の細胞/mLのVero細胞を接種した。バイオリアクターを、0.5倍の培養体積/日のGibco VP−SFM培地(フェノールレッドを含むまたは含まない)を用いて、37℃で灌流した。70〜90時間後、または細胞密度が≧2×10個の細胞/mLとなった際に、培養物を、0.001のMOI、32℃で、低継代(≦P5)または高継代(P15)のVSV N4CT1−gag1ウイルスのどちらかに感染させた。培養物を毎日2〜3回試料採取し、最終的には感染後48〜60時間に収集した。
【0210】
インディアナ血清型を10リットルのバイオリアクターにスケールアップして、低継代(≦P5)および高継代(P15)のウイルスをどちらも試験した。バイオリアクターの実行、X−BRN10−VSV−14、17、および28は、低継代のウイルス物質(実線)を用いて培養物を感染させて、完了させた。バイオリアクターの実行、X−BRN10−VSV−31、33および34は、高継代の研究ウイルス種(破線)を用いて完了させた。それぞれの実行の成長動態を図10に示す。ウイルスの継代数は、図の凡例中の角括弧内に示す。
【0211】
高および低継代の実行のどちらにおいても、それぞれの実行の組は互いに矛盾がなかった。高継代のバイオリアクターの実行は、低継代の実行よりも2logまで高い力価を生じた。高継代の物質の成長動態に基づいて、収集時点は、感染後約48時間と決定された。
【0212】
ニュージャージー血清型を10リットルのバイオリアクターにスケールアップして、低継代(≦P5)および高継代(P15)のウイルスをどちらも再度試験した。バイオリアクターの実行、X−BRN10−VSV−15、18、19、20、22および23は、低継代のウイルス物質(実線)を用いて培養物を感染させて、完了させた。バイオリアクターの実行、X−BRN10−VSV−36、および37は、高継代の研究ウイルス種(破線)を用いて完了させた。それぞれの実行の成長動態を図11に示す。
【0213】
ニュージャージー構築体の低継代および高継代の実行の間では、インディアナ構築体で観察されたよりも差異が少なかった。高継代の物質の成長動態に基づいて、VSVnjN4CT1−gag1の収集時点は、VSVinN4CT1−gag1と同様に、感染後約48時間と決定された。結論として、P15のN4CT1−gag1は、インディアナでは、バイオリアクター力価の約35倍までの増加および細胞1個あたり産生されたウイルス粒子の数の45倍の増加、ニュージャージーでは、バイオリアクター力価の約5倍までの増加および細胞1個あたり産生されたウイルス粒子の数の7倍の増加をもたらした。(表3および4を参照)
【0214】
【表3】
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【0215】
【表4】
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【0216】
【表5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図8−6】
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【図8−7】
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【図8−8】
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【図8−9】
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【図8−10】
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【図8−11】
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【図8−12】
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【図8−13】
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【図8−14】
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【図8−15】
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【図8−16】
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【図8−17】
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【図8−18】
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【図8−19】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図9−7】
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【図9−8】
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【図9−9】
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【図9−10】
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【図9−11】
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【図9−12】
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【図9−13】
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【図9−14】
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【図9−15】
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【図9−16】
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【図9−17】
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【図9−18】
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【図9−19】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−507523(P2011−507523A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539785(P2010−539785)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087375
【国際公開番号】WO2009/082664
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】