説明

遺伝子発現のステロイド受容体調節

本発明は、代謝および発現調節に影響されない非哺乳類宿主細胞(例えば、真菌)における新規ステロイド誘導発現系を提供する。Aspergillus属で発現されるヒト・エストロゲン受容体遺伝子が、構成的プロモータ下で、機能的であることが示された。アスペルギルス、酵母、およびエストロゲン受容体結合部位(ERE)を含む合成配列からの調節配列を有するレポーター遺伝子は、ホルモン誘導体誘導因子に応答して発現される。その誘導因子が存在しない場合、プロモータはサイレントであり、コンストラクトおよび誘導因子の濃度に依存して、発現レベルが中等度から非常に高いものに変えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概ね誘導性発現系の分野に関する。特に、本発明は遺伝子発現の調整または調節に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ステロイド・ホルモンは、原形質膜を透過して拡散し、標的受容体に結合して活性化させる。活性化に応じて、ステロイド受容体が結合することでDNAの転写が調節される。このような生理学的遺伝子調節方法が、多数の遺伝子発現系の青写真として使われていた。
【0003】
ステロイド・ホルモンが特定の細胞型で一部の遺伝子の転写を誘導可能であることは、周知である。ステロイド反応性遺伝子(ホルモン・レセプター/ホルモン複合体によるクロマチンとの相互作用を介して)の転写活性化は、遺伝子に付随するエンハンサー配列に対する複合体の結合を介してもたらされる。
【0004】
多数のステロイド・ホルモンおよび甲状腺ホルモン反応性転写調節単位が同定されている。これらの例として、糖質コルチコイド、アルドステロン、およびアンドロゲン・ホルモンに反応するマウス乳癌ウイルス5’末端の長い反復配列(MTV LTR)と、糖質コルチコイド、エストロゲン、および甲状腺ホルモンに反応にする哺乳類の成長ホルモン遺伝子のための転写制御単位と、エストロゲンに反応する哺乳類のプロラクチン遺伝子およびプロゲステロン受容体遺伝子のための転写制御単位と、プロゲステロンに反応する鳥類のオボアルブミン遺伝子のための転写制御単位と、糖質コルチコイドに反応する哺乳類のメタロチオネイン遺伝子転写調節単位とが挙げられる。
【0005】
活性転写複合体がプロモータ部位で集合すると転写の開始が起こり、次に転写が開始されるところを指示する。プロモータ領域はいくつかのドメインを含み、それらの領域はプロモータの全機能にとって必要である。これらのドメインの最初のものは、構造遺伝子の直上流にあり、一般にコード領域の直ぐ上流の約70塩基対(bp)であるコンセンサス配列を含むコア・プロモータ領域を形成している。コア・プロモータ領域は特徴的なCAATおよびTATAボックスに加えて周辺配列を含んでおり、構造遺伝子の転写開始点を定める転写開始配列を表す。コア・プロモータ領域の正確な長さは可変的ではあるが、当業者によってかなり認識され得る。この領域は、ある程度の違いはあるが、すべてのプロモータに存在する。
【0006】
コア・プロモータ領域は、完全プロモータ活性を与えるには不十分である。調節配列は、通常コアから上流で、プロモータの残りの部分を構成する。調節配列は、発現レベルと、発現の空間的および時間的パターンと、プロモータの重要なサブセットについて誘導可能な発現とを決定する。これらは、細胞内および細胞外シグナルに反応する。
【0007】
上流側エレメント(「ホルモン反応エレメント」または「HRE」)に結合した場合、ステロイド受容体によって転写が活性化または抑制される。これらのHREは特異的なエンハンサー配列であって、特定のホルモン受容体によって認識されることから、異なった反応が異なったホルモン類によって引き起こされることを確実にする。例えば、17β−エストラジオールまたはエストロゲン誘導体(例えばジエチルスチルベストロールまたはゼラレノン)等のリガンドは、エストロゲン受容体のリガンド結合部位に結合する。この結合イベントは、受容体の構造変化と細胞質から核へのリガンド−受容体複合体の移動を誘発するもので、受容体が上記特異的HREを認識し、HIRE拡散配列に結合し、転写機構とポジティブまたはネガティブに相互作用することで、遺伝子発現に影響を及ぼす。
【0008】
各ステロイド受容体は、DNA上のHRE部位に結合するDNA結合ドメインを包含する。これらの結合ドメインの特徴は十分に調べられている((Evans,R.M.,Science 240,889−895(1988);Giguere,V.ら、Cell 46,645−652(1986))。ステロイド受容体は、さらに、構造的および/または機能的相同性の領域を共有する。これらの領域の各々の較正は、異なるドメインに分けられ、各ドメインがホルモン遺伝子スーパーファミリーの全てのメンバーで保存されている。これらのドメインは、可変N末端領域(ドメインA/B)、亜鉛フィンガーDNA結合領域(ドメインC)、ヒンジ領域(ドメインD)、C末端リガンド結合領域(ドメインE)、および可変C末端(ドメインF)に対応する。Evans,Science,240,889−895(1988)を参照せよ。
【0009】
N末端ドメインは、大きさおよび配列が高度に可変であり、スーパーファミリーのメンバー間で十分に保存されていない。この特定のドメインは、転写活性化の修飾で機能する(Bocquelら、Nucl.Acid Res.,17,2581−2595(1989);Toraら、Cell,59,477−487(1989))。
【0010】
DNA結合ドメイン(DBDは)クロマチン上の特異的な標的遺伝子の転写制御単位内で特異的なHREに対する受容体を標的にする(Martinez and Wahli,Nuclear Hormone Receptors,Acad.Press,125−153(1991))。
【0011】
リガンド結合ドメイン(LBD)は、受容体同族リガンドの認識および結合にとって不可欠である。リガンド結合ドメインも、転写活性化機能を備えている。要するに、LBDは受容体のホルモン反応の特異性および選択性の決定を補助する。LBDは、核ホルモン受容体スーパーファミリーの個々のメンバー間で相同性がかなり変化することが周知である。(Evans,Science,240,889−895(1988);P.J.Fuller,FASEB J.,5,3092−3099(1991);Mange]sdorf etら、Cell,Vol.83,835−839(1995))。
【0012】
N末端領域に存在する機能(LBDおよびDBD)は、互いに独立している。これらのドメインが核受容体間で交換されうることが示されている(Greenら、Nature,Vol.325,75−78(1987))。そのような交換の結果が「キメラ核ホルモン受容体」である。
【0013】
十分に特徴づけられ、かつ細菌に存在する天然の調節系がいくつか存在する。そのような系は、DNA結合タンパク質とその標的DNA配列との相互作用を利用して、遺伝子発現の誘導、強化、減衰、または抑制をおこなう。十分に特徴づけられた遺伝子活性系は、偽巣性コウジ菌(Aspergillus nidulans)の硝酸同化系である。経路誘導および窒素代謝産物抑制は、偽巣性コウジ菌での窒素代謝を調整する。経路特異的転写活性因子NirAは、経路導入を媒介する(総説として、Scazzocchio and Arst,Regulation of nitrate assimilation in Aspergillus nidulans;Molecular and Genetic Aspects of Nitrate Assimilation,Wray,J.L.,and Kinghom,J.R.(eds.),Oxford:Oxford Science Publications,pp.299−313(1989)を参照せよ)。硝酸還元酵素(niaD)と亜硝酸レダクターゼ(niiA)をコードする遺伝子が硝酸塩の有用性に応じて同時制御されることがすでに示されている(Punt,P.J.ら、Mol.Cell.Biol.15,5688−5699(1995))。NirAの結合が細胞内硝酸塩と転写因子のいわゆるGATA因子ファミリーである機能的なAreAタンパク質とに依存していることが示されている(Narendja,F.ら、Molecular Microbiology,44(2),573−583(2002);Wilson and Arst Microbiol.Mot.Biol.Rev.,62,586−596(1998);およびScazzocchio,C.,Curr.Opin.Microbiol.3,126−131(2000)、さらにその中で引用された文献)。GATA因子は、ヒトから糸状菌に至るまでの真核生物界に存在し、脊椎動物の細胞分化(Patient R.K.ら、Curr.Opin.Genet.Dev.,12(4),416−422(2002))、植物病原性菌類における病原因子(Voisardら、Mol.Cell.Biol.13,7091−7100(1993))、または菌類および酵母の一次代謝(Gomezら、Mol Microbial.,50(1),277−89(2003),Magasanik and Kaiser,2002,Gene,290:1−18)の多様化プロセスを調整する。例として、偽巣性コウジ菌(A.nidulants)のAreA、アカパンビ(N.crassa)Nit2、さらに酵母(S.cerevisiae)Da180、GIn3、Nill、およびNi12の相同体が挙げられる。前述した全ての遺伝子が窒素獲得の調節に関与している。さらなる例として、いくつかの菌類でのシデロホア生合成のアカパンカビ属(Neurospora)での光シグナル伝達の調節因子が挙げられ、また植物GATA因子もあるが、その機能はまだ知られていない。
【0014】
これら天然の調節系のいくつかは、酵母または他の微生物系で利用され、代謝産物に依存するヘテロ遺伝子発現系を構築することで、活性化または抑制遺伝子発現応答を生ずる。これらの系が、標的配列の発現に対して一定の制御レベルを与える一方で、それらの系は宿主細胞の代謝系に究極的に影響を及ぼし、宿主細胞遺伝子に対して不要な多面的発現効果を示す。重金属または炭素源を特定の生理学的活性および遺伝子発現の誘導因子として用いることで、付加的な負荷を宿主細胞にかける。なぜなら、該細胞が並外れて高レベルの誘導因子を代謝して、そこから回復しようとするからである。
【0015】
レトロウイルス・ベクターは、テトラサイクリン誘導系を哺乳類細胞宿主に導入するために用いられ、目的とする遺伝子を発現させる。しかし、酵母および微生物株は、レトロウイルス・ベクター送達法を受け入れない。
【0016】
哺乳類および微生物細胞での代謝産物誘導をベースとした系の多くは、誘導因子による遺伝子発現の活性化が相対的に遅く、かつ不十分であることから制限される。
【0017】
典型的な生物薬剤学的プロセスは、細胞増殖と生産とがカップリングされた構成的プロモータを使用する。発酵プロセスを通じて、可能な限り最大限の数の細胞が可能な限り最も短時間で治療的なタンパク質を産生することが直感的に考えられる。このように、高力価の優良なタンパク質を産生するために、生産相から増殖相を脱カップリングさせることが有利である。旺盛的プロモータ下で産生されるタンパク質は、以下に詳しく述べるように、分解、共有結合修飾、および宿主細胞の代謝による干渉を受けうる。したがって、酵母および他の微生物株等、複合的な遺伝的環境における遺伝子の発現は、空間的および時間的に、インビボで操作される目的とするタンパク質を生成するために個々の遺伝子の発現をストリンジェントに制御することを可能とする系から大きな利益を得ると思われる。
【0018】
一般に、時間的および空間的な、治療的タンパク質のストリンジェントな遺伝子発現制御の重要な態様は、所定の最小培地、安価な成分、低濃度の誘導因子での使用を含む(例えば、誘導因子の保存および取り扱いは一般に危険な操作(メタノールの除去等)をほとんど必要としない)。誘導プロセスがすばやく開始され(好ましくは誘導後数分以内)、誘導因子は化学的に安定でなければならず、培地中で長時間インキュベートした後に生物学的活性がなければならない。また、誘導因子は、化合物と拮抗可能であり、発酵ブロスから容易に除去可能なものでなければならない。
【0019】
誘導可能な遺伝子発現を、優先的に異種タンパク質発現に対して用いることが可能である。これらのタンパク質を治療的なものとすることが可能である。
【0020】
誘導可能な遺伝子発現は、増殖細胞を増殖させて十分な密度にする。それに続く遺伝子発現の誘導によって、生産相が開始される。また、所望のタンパク質産物の産生速度は、発酵中に加えられる誘導因子の濃度による直接的修飾を受けることができる。誘導因子が存在しない場合、目的とする遺伝子が発現されないことから、産物の発現が誘導されるまで、異種タンパク質発現の潜在的毒性効果が回避される。
【0021】
発現の間、該発現の駆動に必要な誘導因子化合物による変化によって毒性がもたらされ、炭素源の取り込みが制限される可能性がある。例えば、メチル栄養要求性酵母(例えばピチア(Pichia)sp)のAoxプロモータは炭素利用度を制限することが可能である。さらに、発現を可能にするのに必要な特定の媒体組成物は、一般に効率的な生物体量蓄積を妨げる。例えば、alcプロモータ発現系は、通常、低グルコース濃度下でのみ機能する。これらの発現系は、alc系等の代謝活性に由来するGAPDHまたは誘導系等の強力な構成的プロモータに依存する。したがって、必要なことは、代謝および発現調節に影響されない安価な誘導因子の存在下で遺伝子発現を調節する誘導可能な発現系である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の要約)
標的ホルモン反応性配列に対するステロイド受容体(例えば、エストロゲン受容体)の特異性、同様に同族受容体に対するステロイド類(例えば、エストロゲンおよびエストロゲン様分子)の高親和性と、ステロイド受容体およびリガンドの十分研究された化学的および生理学的特性は、非哺乳類宿主細胞での高効率的に調整された誘導可能な発現系に対する基礎を構成する。さらに、ホルモン類(例えば、ジエチルスチルボエストロール(DES))を容易に拮抗させること、または生化学的方法によって培地から取り除くことができる。したがって、糸状菌のステロイド誘導プロモータ発現系が得られる。一実施形態では、系は、
(i)宿主細胞での発現に応じて、コードされた核ホルモン・ステロイド受容体を産生する核ホルモン・ステロイド受容体または第1の核酸と、
(ii)(a)転写されうる標的ヌクレオチド配列、(b)プロモータ・コア、(c)少なくとも一つのホルモン・ステロイド反応エレメント、および(d)スタッファー・フラグメントを有する第2の核酸であって、(a)標的ヌクレオチド配列が(b)プロモータ・コアに作動可能に結合し、また(d)スタッファー・フラグメントが(b)と(c)との間に並列することで、核ホルモン・ステロイドの存在下で、プロモータ・コアからの標的ヌクレオチド配列の発現を誘導する、第2の核酸
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
一実施形態では、本発明は、調節タンパク質((ステロイド・タンパク質等の核ホルモン))に作動可能に結合した第1のプロモータと、標的核酸分子(例えば、遺伝子)に作動可能に結合した調節可能(例えば誘導可能)なプロモータとを含む調節された遺伝子発現カセットであって、上記調節可能なプロモータは効果的外来性誘導因子の存在下で調節タンパク質によって活性化され、誘導因子の投与が標的遺伝子の発現を引き起こし、誘導因子のアンタゴニストの除去または添加が発現を停止させる、遺伝子発現カセットを提供する。別の実施形態では、上記調節タンパク質は、調節タンパク質が結合するプロモータ領域を含まない核酸分子に物理的に結合している核酸コントラストから発現される。しかし、調節タンパク質をコードする遺伝子と発現されうる標的遺伝子または配列が同じ核酸コンストラクトにあってもよいことは、理解される。この場合、第1のカセットによって産生された調節タンパク質である適当な誘導因子の存在は、第2のカセットで誘導プロモータからの転写を刺激することで、標的遺伝子の発現を活性化させる。あるいは、一方または両方のコンストラクトを安定的に宿主細胞ゲノムに組み込ませることが可能である。
【0024】
別の実施形態では、ステロイド受容体結合部位がnirA遺伝子のプロモータに導入される。コア誘導プロモータは、作動可能に標的遺伝子または配列と結合されている。そのような配列がcDNAまたはDNAであってもよいことが理解される。コア・プロモータは、特徴的なCAATおよびTATAボックス、それに加えて周辺配列によって定義され、構造遺伝子のための転写開始点を定義する転写開始配列を表す。コア・プロモータ領域の直上流は、「スタッファー・フラグメント」であり、その長さは約75〜250bpのあいだ、好ましくは約100〜200bp、さらに好ましくは約100〜150bpのあいだにあり、コア・プロモータに機械的に結合した転写機構とさらに上流のHIRE結合ステロイド受容体とのあいだに最適空間を設ける。この間隔およびスペーサーのヌクレオチド組成物は、標的核酸、例えば目的とする遺伝子の発現の調節(すなわち、活性化または抑制)にとってクリティカルである。異なる間隔で複数のEREを含むプロモータ・フラグメントは、機能的ではないと考えられる(図8)。
【0025】
転写活性化タンパク質が影響を及ぼすために使用することができる遺伝子活性化のいくつかの十分確立されたモードが存在する。例えば、活性因子は、転写の効率的な開始が可能となるヒストンのシフティングまたはクロマチン構造の変更を介して、コア・プロモータですでに組み立てられた転写機構と直接接触することを介して、転写にとって必須な因子の動員を介して、転写因子とポリメラーゼとが適当に接触できるようにDNA内の一カ所または複数箇所に屈曲またはねじれを設けることを介して、またはDNAに1つまたは複数の屈曲もしくはねじれを設けることで、転写に必要な構成要素の効率的な結合を可能にすることを介して、影響を及ぼすことが可能である。これらのモードのいずれかが、遺伝子がここで活性化および発現されるメカニズムを表すことが可能であると理解される。
【0026】
一実施形態では、本発明の系および方法で用いられる宿主細胞は、非哺乳類宿主細胞、好ましくは真菌(例えば酵母)または細菌細胞である。哺乳類細胞系よりも複雑であることがわかっている内因性核受容体および他の受容体共同調節タンパク質を欠いていることから、酵母、真菌、および/または細菌細胞系を用いる。それは、当業者がパラメータを変えて、巨大な母集団から所望の方法でふるまう珍しい細胞を選択させる遺伝学的および生化学的スクリーニングおよび選択技術に対して、容易に修正可能であることから、有利でもある。酵母および糸状菌は、両方とも、組換えタンパク質(細胞内型および分泌型)の生産に首尾良く使われている(Cereghino,J.L.およびJ.M.Cregg,FEMS Microbiology Reviews 24(1),45−66(2000);Harkki,A.ら、Bio−Technology 7(6),596(1989);Berka,R.M.ら、Abstr.PapersAmer.Chem.Soc.203,121−BIOT(1992);Svetina,M.ら、J.Biotechnol.76(2−3),245−251(1992))。
【0027】
別の実施形態では、本明細書中に開示されたステロイド誘導プロモータ発現系は、当業者によって、単細胞酵母、例えば限定されるものではないが、ピチア属種(Pichia sp.)(例えば、P.pastoris)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)(例えば、S.cerevisiae)、およびクルイベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)(例えば、K.lactis)に容易に移される。一実施形態において、エストロゲン誘導プロモータ・エレメントは、酵母(P.pastoris)URA5遺伝子が欠損しているウラシル栄養素要求株である酵母(P.pastoris)YJN165株で操作される(Nettら、Yeast,20(15),1279−90(2003))。酵母(P.pastoris)URA5、または他の適当な選択マーカーを持つ1組のプラスミドと、pERE−URA−nirA、pERE−JUNK−nirA、およびpERE−URA−JUNK(図13)等の誘導プロモータ・カセットのライブラリー、あるいは本明細書に記載もしくは当業者に周知のそのようなエレメントの別の組み合わせとによって、本発明の誘導プロモータ発現系が作られる。好ましくは、誘導エレメントが目的とする遺伝子の上流でクローニングされ、誘導エレメントを目的とする遺伝子と相同的組み込み(相同的組み込みが選択された場合)の標的エレメントを含む全DNAエレメント(例えばHIS3およびHIS4遺伝子(Cosanoら、Yeast,14(9),861−7(1998)))、適当な選択マーカー、誘導プロモータ・エレメント、ならびに目的とする遺伝子を含む全DNAエレメントが、当業者に周知の方法、例えばキメラ的コンピテント細胞を用いることで、形質転換され、さらに好ましくは宿主細胞ゲノムに組み込まれる(Hanahanら、Methods Enzymol,204,63−113(1991))。
【0028】
別の実施形態では、選択マーカーと、強力なGAPDHプロモータ、または当業者に周知の他のプロモータによって駆動されるステロイド(例えば、エストロゲン)受容体をコードする遺伝子と、好ましくは、HIS3およびHIS4遺伝子等の組み込み遺伝子座、または他の適当な遺伝子座に対して標的するための宿主細胞のゲノムに由来する配列(Cosanoら、Yeast,14(9),861−7(1998))とを、目的とする細胞に形質転換させることができ、相同組かえによって宿主ゲノムに組み込むことができる。
【0029】
本発明の誘導系は、いくつかの利点を提供する。すなわち、非哺乳類宿主で転写を完全にスイッチ・オンまたはスイッチ・オフすることが可能であることである。誘導系は、安価な誘導因子(例えばDES)を低濃度(10pM〜10nM)で用いるのに適している。さらに、誘導系は誘導中に何ら代謝的なスイッチを持たない。発酵条件を最適化する能力、安価な培地の使用、異種タンパク質分泌能力、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)、封入小体の欠失、導入遺伝子の遺伝学的安定性を含む他の利点によって、糸状菌最適宿主でタンパク質を産生する。
【0030】
本発明の核酸(例えば、同族核ホルモン受容体をコードする核酸、コア・プロモータおよび標的遺伝子コンストラクトと作動可能に結合したホルモン反応性エレメントとを含む核酸)を宿主細胞のゲノム(染色体)に組み込むことが可能である。組み込みは、十分確立された技術にしがたって、ゲノムによる組み換えを促進する配列の含有によって、促進することができる。あるいは、DNA配列(別個にゲノム(染色体)から複製される)を用いて、目的とする遺伝子(ホルモン受容体および/または作動可能に結合した標的遺伝子)を染色体外遺伝子座(例えば、複製プラスミド)から発現させることが可能である。
【0031】
核酸コンストラクトの導入は、限定されることなしに、本明細書中では「形質転換(transformation)」のことをいう。形質転換は、任意の入手可能な技術によって達成することが可能である。そのような技術として、塩化カルシウムまたは酢酸リチウム形質転換、電気穿孔法、ファージ・トランスフェクション、および直接注入が挙げられる。当業者は、選択した宿主細胞に応じて、該宿主細胞に核酸を導入するための適当な方法を選択することが可能である。
【0032】
栄養素要求性、抗生物質抵抗性、または感受性遺伝子とまたは感度が高い遺伝子と相補的な遺伝子等のマーカー遺伝子を、目的の核酸コンストラクトを含んでいるクローンを同定する際に使うことが可能である。例えば、マーカーの存在は、その後の形質転換体の選択に有用である。例えば、酵母では、URA3、HIS4、SUC2、G418、BLA、またはSH BLE(および、アスペルギルス属(Aspergillus)では、argB、pyrG、riboB、niaD、hygB遺伝子)遺伝子をもちいてもよい。または、周知の遺伝子操作技術を用いて、ステロイド感受性の増加または減衰を行うことも可能である(例えば、所望の表現型または形質を持つ宿主細胞に対する適当なスクリーニングまたは選択と併せて、ランダムまたは直接的な化学または酵素的突然変異技術を用いた多剤耐性遺伝子欠失、ABC輸送対欠失、またはノックアウト)。
【0033】
宿主細胞に対して、2種類の核酸分子(例えば、異なる2つのベクター)、すなわちステロイド受容体をコードする第1の核酸と、プロモータ・コアに作動可能に結合した転写される核酸、該プロモータ・コアの5’末端に結合したスタッファー・フラグメント、該スタッファー・フラグメントの5’末端に結合した少なくとも1つのステロイド反応エレメントを有する第2の核酸ベクターとによる共形質転換をおこなうことが可能である。これら2種類の核酸分子のいずれかもしくは両方が、宿主染色体の中に組み込まれる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、標的核酸配列は宿主細胞から分泌される糖タンパク質をコードする。それなりに、このことは細胞標的配列またはシグナル・ペプチドの存在に依存する。真核細胞では、分泌のためにタンパク質が細胞膜または多くの内部細胞小器官のうちの1つを標的にすることができる。細胞内タンパク質は、細胞質、核、または特定の細胞小器官(例えばミトコンドリアまたは葉緑体)を標的にすることができる。例えば、遺伝子工学的技術を用いてシグナル・ペプチドを細胞質タンパク質(例えばグロビン、本来そのような配列を持たない)に付加してもよい。これによって、小胞体(ER)に入り、分割されたシグナル配列を持つ改変タンパク質が得られる。よって、このタンパク質はERおよびゴルジ装置を介して細胞表面を標的にする。
【0035】
(代謝産物非依存調節発現系)
上述の通り、核ホルモン(例えば酵母、真菌、および細菌のステロイド誘導系)を使用することの大きな利点は、ステロイド受容体反応性誘導因子分子が宿主真菌、酵母、または細菌微生物の代謝経路に対して、けして影響を及ぼすことなく利用可能であるということである。異種タンパク質発現における細胞の生理学的シグナルからの独立は、当技術分野では達成困難であった。本発明は、HER存在下でネガティブおよびポジティブ・エレメントの組み合わせを含む代謝および発現調節には依存しない非哺乳類宿主細胞(例えば、真菌)での新規ステロイド調節発現系を提供する。本発明はまた、炭素および窒素調節に影響されない糸状菌および酵母での遺伝子発現を調節するための方法を提供する。本明細書中に例示したエストロゲン誘導発現系は、代謝および発育制御に影響されない(図6)。中間の発現レベル(微調整と同様に)は、異なる誘導因子濃度によるエレメントのモジュール方式の組み合わせによって、達成される。
【0036】
(誘導因子分子)
誘導因子化合物は、宿主細胞が増殖している培地または培養液中に容易に添加される。誘導因子化合物は、細胞によって取り込まれ、あるいは細胞膜を介して受動的に拡散し、その同族受容体に結合して、該受容体の形態的変化を誘導し、同族ホルモン反応エレメントへの結合が可能になる。方法は、培地から誘導因子を取り除くこと(すなわち、カラム・クロマトグラフィの使用)、または該培地から誘導因子活性を取り除くこと(すなわち、誘導因子に拮抗する化合物の添加によって)を可能にする十分に確立されたものである。このことは、下等真核および細菌宿主細胞での以前の誘導可能な発現系および方法に対する改善を示している。
【0037】
エストロゲン受容体に結合し、かつ標的核酸からの遺伝子発現を誘導または抑制するリガンドの例として、17β−エストラジオール、ジエチルスチルベンストロール(DES)、ゼアラレノン(ZON)、固定環4−ヒドロキシタモキシフェン、非ステロイド性スチルベン類似体、タモキシフェン、選択的エストロゲン受容体調節因子(SERMS)のいずれか、4−1−(p−ヒドロキシフェニル)−2−フェニレンチル]フェノキシ酢酸、ラロキシフェン、エストロゲン、IC1164384(ERアンタゴニスト)、およびIC182,780が挙げられる。他の周知のリガンド(およびその同族受容体)として、コルチゾール(CORT受容体)、アンドロゲン(アンドロゲン受容体)、プロゲステロン(プロゲステロン受容体)、アルドステロン(鉱質コルチコイド受容体)、ならびにトリヨードチロニン(T3受容体)、ジヒドロキシビタミンD3(D3受容体)、およびレチノイド(オールトランス・レチン酸および9−シス・レチン酸)受容体(各々RARおよびRXR)の2つの種類を含む非ステロイド・ホルモンが挙げられる。エストロゲン受容体基質の濃度を変えることで、同様にRIP140(遺伝子発現を経てインビボで合成または外因的に付加)等のエストロゲン受容体共同因子の添加によって、転写活性化または抑制のレベルが影響されることが、十分に理解される。
【0038】
植物および真菌由来ステロイド様化合物もまた、ステロイド受容体媒介遺伝子発現の誘導に用いることが可能である。植物由来エストロゲン化合物として、フラボン、イソフラボン、フラバノン、クマリン、カルコン、および真菌エストロゲンが挙げられる。フィトエストロゲンおよび植物リグナン(大豆製品で豊富に見つかる)は、強力なエストロゲン的性質を持つ。8−プレニルナリンゲニン(8−PN)は、ホップおよびビールに存在するフィトエストロゲンであり、その機能性はICI 182,780によって阻害され、また17β−エストラジオールの作用を模倣する。甘草粗エキス(グラブリジン)由来の主要なイソフラビンは、インビボおよびインビトロで、エストロゲン受容体アゴニストの度合いの変化を示す。グラグレンおよびイソリキリチゲニン(2’,4’,4−3ヒドロキシ・カルコン)は、エストロゲン受容体に結合することが知られており、アゴニスト活性(両方とも、甘草粗エキスに由来)を示す。植物病原性のフザリウム属(Fusarium)株、例えばデオキシニバレノール(Deoxynivalenol、DON)またはゼラレノンはエストロゲンを模倣したものであり、hERを活性化する。したがって、上記植物のいずれか、または真菌に由来するエストロゲン様化合物例を、エストロゲン受容体媒介遺伝子発現の誘導に用いることが可能である。
【0039】
(スタッファー・フラグメント)
スタッファー・フラグメントは、「活性化」ホルモン(例えばステロイド)受容体とコア・プロモータ結合ポリメラーゼとの間に最適な間隔を与える。この最適間隔は、クロマチン構造の履歴および変更が妥当にシフトすることを規定することで、転写を効率的に開始させ、コア・プロモータですでに組み立てられる転写機構との直接接触を規定し、転写のために必要な因子の動員のために、アクセスできる核酸を規定し、DNAに適当な1カ所または複数箇所の屈曲またはねじれを与えることで、転写因子とポリメラーゼとのあいだに適当な接触を可能にし、さもなければDNAに適当な1カ所または複数箇所の屈曲またはねじれを与えることで、転写に必要な構成要素の効率的な結合を可能にする。これらのモードのいずれかがスタッファー・フラグメントが働く機構を示すことができ、それによって遺伝子の発現または抑制が可能となる。
【0040】
好ましいスタッファー・フラグメントの長さは、約75〜約250ヌクレオチドである。より望ましくは、スタッファー・フラグメントの長さは、約100〜約200ヌクレオチドであり、さらに好ましくは約100〜約150ヌクレオチドである。当業者は、ランダム・スタッファー・フラグメント核酸を、当技術分野で十分に確立された方法を用いて、所望の長さおよび遺伝子発現活性についてスクリーニングすることが可能であることを認識する。好ましいスタッファー配列は、図3に示すように、URA 3核酸フラグメントを含み(配列番号1)、またnirAA.nidulansプロモータの97bpフラグメント(ATGを含む)を含む。選択されたnirAプロモータDNAフラグメントと共にURA3スタッファー・フラグメントは、DES(図1)および(図7)によって誘導されたA.nidulansでの所望の遺伝子発現を与える。URA3プロモータ・フラグメントとNirA遺伝子プロモータ・フラグメントとの特定の組み合わせは、スタッファー領域がない場合、ERの不能性をもたらし、ホルモン刺激後のレポーター遺伝子発現を活性化させる。例えば、ura3フラグメントと、CTがリッチな配列と付加的なTATA配列を含むnirAプロモータ・フラグメントとの直接融合は、DESによって誘導可能ではないコンストラクトを与える(実施例2参照)。スタッファー・フラグメントの選択および改善は、特に所望の遺伝子発現特性を与えるかどうかを基礎として、おこなうことが可能である。
【0041】
より好ましい実施形態では、JUNKエレメントに一般に結合したURA3核酸フラグメントに一般に結合したエストロゲン反応エレメントの組み合わせによって、alcAのものと等しいレベルで転写が開始される(図9)。JUNKエレメントとして、限定されるものではないが、任意のヌクレオチドの組み合わせが挙げられる。しかし、好ましくはE.coliのβ−ラクタマーゼである。その組み合わせについて驚くべきことは、JUNKエレメントの相対的位置が劇的に誘導のレベルに影響するということである(図9)。JUNKエレメントによる誘導可能な発現系をスクリーニングして修飾し、所望のレベルに発現を調節する。今日まで、他のモチーフと組み合わせたEREの活性化に対するプロモータ・セット・アップの影響は、酵母または糸状菌では決定されなかった。したがって、本発明は、相対的に簡易で、かついかなる代謝産物にも影響されずに調節しうる誘導発現系の必要について言及する。
【0042】
(ステロイド反応エレメント)
ホルモン反応エレメント(HRE)は、ホルモンによる遺伝子発現活性化に必要である短いシス作用配列(大きさが約20塩基対)である。HREを、さもなければホルモン非反応性であるコード配列に、作動可能に結合することができる。そのような結合は、現在ホルモン反応性である遺伝子を規定する。HREは、ホルモンまたはリガンドの有無に対する依存性にもとづいて、他のエンハンサー配列から区別される。
【0043】
ステロイド受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニスト・リガンドの結合は、ほとんどの場合、受容体の二量体化をもたらす。例えば、エストロゲン受容体αおよびβをホモ二量体化することができ、それほど多くはないが、ヘテロ二量体化することができる。リガンド結合受容体は、標的遺伝子の調節領域にある配列(ステロイド応答エレメント)を認識して該配列に結合する。同族反応エレメントに結合した受容体によってDNAの屈曲が誘導することが可能であり、該屈曲は重要な転写構成要素の相互作用を促進する。一旦結合すると、受容体は一般の転写因子、共同活性因子、抑制因子、およびクロマチン再構築を制御するタンパク質、標的遺伝子発現の活性化または抑制のためのシグナルとして機能することが可能である。
【0044】
一実施形態では、修飾活性因子タンパク質を用いた遺伝子抑制を達成するモードは、活性領域に突然変異を起こさせ、EREが天然のエンハンサー配列と重なっているプロモータを構築することを介する。したがって、エストロゲンによる突然変異ヒト・エストロゲン受容体(hER)遺伝子発現の活性化、hERタンパク質はEREと結合して天然の活性因子と競合する。
【0045】
十分に特徴づけられ、かつこのようにして機能するステロイド受容体の例は、エストロゲン受容体である。活性化エストロゲン受容体は、DNA配列(エストロゲン反応エレメント、またはERE)と高親和性で結合する。エストロゲン受容体は、二量体の頭合せ配列にあるパリンドローム繰り返しに結合する。最小のEREコンセンサス配列は、配列番号2によって定まる(5’−GGTCAnnnTGACC−3’、式中、nは任意のヌクレオチド)。
【0046】
本明細書中で用いられるように、改変HREとは、遺伝子工学的技術(例えば、ヌクレオチド置換および欠失)を用いて、組み換え的に産生されたHREのことをいう。また、本発明のHREは、当技術分野で十分に確立された技術(自動ヌクレオチド合成等)を用いて、インビトロで合成することが可能である。
【0047】
目的のステロイド受容体をコードする核酸コンストラクトが、天然に生ずるステロイド受容体をコードすることに限定されるものではないことが、理解されるべきである。キメラ受容体を構築して遺伝子発現系で用いることは周知である。
【0048】
(ステロイド受容体)
ホルモン(例えば、目的とするステロイド受容体)をコードしている核酸は、当業者に周知の技術を用いて構築してもよい。ステロイド受容体スーパーファミリーの分子性状に基づいて、上記したように、新規核ホルモン受容体が構築され、以前に記述されている(例えば、EP 0798 378 A2を参照せよ)。インビボで受容体タンパク質を発現する遺伝的コンストラクトを調製する方法は、周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,1989;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,(1994およびSupps.to 2002)を参照せよ)。ステロイド受容体コード化核酸コンストラクトの複数のコピーが、最適な発現のために一体化されてもよい。さらに、ステロイド受容体が構成的に、または調整された方法で、転写されてもよい。当技術分野の状況を鑑みれば、受容体の調節された発現を求めることが可能であり、またそのような調整を生成する方法は周知である。異なる受容体のLBDおよび/またはDBDを含むキメラ受容体をキメラ結合によって産生することが可能である。しかし、最も好ましくは、カップリングが、必要なステロイド受容体ドメインをコードする核酸配列を融合することで、標準的な分子生物学的方法によるDNAレベルで達成される。上記したように、ステロイド受容体は、一般的な転写因子、共同活性因子、抑制因子、クロマチン再構成を調節するタンパク質、標的遺伝子発現の活性化または抑制のためのシグナルとして機能することができる(例えば、受容体遺伝子技術を用いる)。
【0049】
(コア・プロモータ)
コア・プロモータは、任意のトランス活性化タンパク質が存在しない場合に、通常は「オフ」状態にある天然のコア・プロモータを代表するものであってもよい。言い換えれば、遺伝子発現の実質的なレベルは、RNAポリメラーゼと組み合わさって「活性化タンパク質」が存在する場合のみ、イニシエートされる。そのようなプロモータの例として、nirAプロモータがあり、該プロモータは一般的な転写因子とポリメラーゼ・タンパク質・サブユニットが集合する。当業者に周知のことは、コア・プロモータのTATA配列(転写開始部位の約25ヌクレオチド上流に位置)がTATA結合タンパク質によって認識され、またこの初期結合が他の転写結合因子と転写に必要なRNAポリメラーゼとの集合プロセスをトリガーする。しかし、プロモータの性質があれば、現在構成された設定での高レベルの転写が適当に開始される。適当な上流(5’)配列が活性ステロイド・ホルモン受容体によって結合される。一旦結合すると、これらの配列は、スタッファー・フラグメントと組み合わさって、所望の遺伝子発現活性化を与える。
【0050】
コア・プロモータは、一般の転写因子とポリメラーゼとの完全な相補体が適当に結合する上で要求される配列に依存して、長さが変えることが可能である。
【0051】
好ましいコア・プロモータは、nirAプロモータ(配列番号3)である。nirAプロモータの94bpフラグメントもまた好ましい(配列番号4)。付加的なCTリッチ配列およびTATA配列を含むnirAプロモータの287bpフラグメントまた、遺伝的コンストラクトに取り込み可能ではあるが、このコンストラクトは、活性化されたhERとEREとによって引き起こされる活性化機能が欠けている(配列番号5)。また、他の実施形態は完全長プロモータnirA(配列番号6)のフラグメントによって、382bpフラグメントを利用する。さらに、ランダム・スタッファー配列は、遺伝子発現活性化および/または抑制に基づいて選択可能である。方法は、遺伝子発現の修飾、減衰、抑制、または活性化をおこなう配列のスクリーニングまたは選択に対して、十分に開発されている。
【0052】
(目的とするタンパク質をコードしている標的遺伝子)
標的遺伝子核酸配列は、本明細書中に含まれる情報および参照文献ならびに当業者に公知の技術を用いて調整する(例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,(1994)を参照せよ)。これらの技術として、(i)目的とする配列(例えば、ゲノム源から)を増幅するためにポリメラーゼ鎖反応(PCR)を用いること、(ii)化学合成、ならびに(iii)cDNA配列の調製が含まれる。発現される配列に対して制限酵素認識部位5’および3’を同定し、そのオリジナルの源もしくはベクターから発現される配列を切り離し、該配列を系の存在下で適当なプロモータに作動可能に結合することを含む。別の組み換えアプローチは、適当なPCRプライマーによって、目的とする配列を増幅させることである。関連配列に対する修飾は、例えば、部位定方向突然変異誘発を介して、取り込まれることが理解される。
【0053】
好ましい実施形態では、例えば、改変下等真核宿主でステロイド誘導することで本発明の標的ヌクレオチド配列から発現した組み換えタンパク質を、WO 02/00879で開示される方法(その明細書を本明細書中に援用する)を使用して、さらに改変して「ヒト様」糖タンパク質(すなわち、ヒトの相対物に対して、実質的に同一ではない場合、類似している糖タンパク質)とすることが可能である。本明細書中に開示される単細胞および多細胞真菌は、現在開示されている調節可能な遺伝子発現系で用いられる。通常単細胞および多細胞真菌を含む下等真核生物(通常、N−グリカンを含んでいる高マンノースを生産する)を修飾して、ManGlcNAc等のN−グリカンまたはヒト・グリコシル化経路沿った他の構造を生成することが可能である。そのような真菌として、限定されるものではないが、Aspergillus nidulans,Aspergillus niger,Aspergillus oryzae,A.awamori,A.chrysogenum,A.saitoi,A.tubigensis,Trichoderma reesei、T.viridae、T.harzianum、Trichoderma sp.、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Mucor sp.、Ashbya gossipii、Penicitlium sp.、およびNeurospora crassaが挙げられる。同様に、メチロトローフ酵母が用いられ、例えば、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koctamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichi sp.、Hansenula polymorpha、Hansenula sp.、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Candida sp.、and Torulopsis sp.が挙げられる。P.pastorisが、より好ましい実施形態の宿主である。
【0054】
(構成的プロモータ)
ステロイド受容体のプロモータ駆動発現は、好ましくは構成的プロモータである。構成的プロモータのよく知られた例が存在する。構成プロモータの例として、例えば、GAPDH(TDH3)、ADH1、エノラーゼ・プロモータ、またはグルセルアルデヒド−6−ホスフェート・デヒドロゲナーゼ(gpdA)プロモータが挙げられる。構成的プロモータは、本明細書中ではプロモータとして定義されており、該プロモータは誘導因子を必要とせず、また目的とする標的遺伝子の活性化または抑制に対して有効である一定量のステロイド受容体の直接発現に対して、かなりアクティブである。
【0055】
現在開示された発明は、以下の非限定的実施例と添付の図面とによって、さらに詳しく説明する。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
(核酸コンストラクトおよび株の形質転換)
以下は、目的とする株の形質転換に用いられるプラスミドを構築するための一般的な戦略である。
【0057】
(プラスミドphERpyr4の構成(図1))
プラスミドYep90−HEGO(Pierratら、1992)のhER含有1.8kb EcoRIフラグメントを、ヒト・エストロゲン受容体1(Acc.NM00125)の発現を駆動するAspergillus nidulans(Acc.Z32524)由来の構成プロモータgpdAを有するpBKSII+主鎖(Stratagene,La Jolla,CA,USA)内のPgpd−TtrpcコンストラクトのNcoI部位にクローニングした。末端配列は、Aspergillus nidulans(Acc X02390)由来のtrpCターミネータを有する。マーカー遺伝子は、Trichoderma harzianum(Acc.U05192)由来のpyr4(オロチジン−5’−ホスフェートデカルボキシラーゼ)である。結果として生ずるPgpd−hER−Ttrpcカセットを、SpeI/ClaIフラグメントとして、Trichoderma reseeiのpyr4遺伝子を選択マーカーとして含むプラスミドにクローニングすることで、プラスミドphERpyr4が得られる。
【0058】
(lacZレポーター・コンストラクトの一般的構造)
シス作用エレメント:3つの構成エストロゲン反応エレメント(ERE)は、遺伝学的にURA3 スタッファー・フラグメントの5’末端に結合している。スタッファー・フラグメントの3’末端は、ATGを含むA.nidulansのnirAプロモータの一部の5’末端に遺伝学的に結合する(図5Aおよび5C)。
【0059】
(プラスミドpRM2124の構成(図2))
S.cerevisiae(Ace.M12926,89−205塩基)(Klein−Hitpassら、1992)とA.nidulans(Acc.M68900)のnirAプロモータの387bpフラグメントとが後に続く3xERE配列を、PCRを用いて増殖させ、BamHI/BgIIIフラグメントとして、pAN923−42BgIIIのBamHI部位に、クローニングさせた(Puntら、Gene 93,101−109(1990))。構造遺伝子はE.coli由来のレポーターlacZである(Acc.V00296)。マーカー遺伝子はA.nidulans(Ace.AB020737)由来のargBである。ターミネータ配列として、ASpergillus nidulans(Acc.X012390)由来のtrpCターミネータを含む(Acc.X012390)。
【0060】
(プラスミドpRM2119の構成(図3))
S.cerevisiae(Ace.M12926,89−205塩基)(Klein−Hitpassら、1992)とA.nidulans(Acc.M68900)のnirAプロモータの292bpフラグメントとが後に続く3xERE配列を、PCRを用いて増殖させ、BamHI/BgIIIフラグメントとして、pAN923−42BgIIIのBamHI部位に、クローニングさせた(Puntら、Gene 93,101−109(1990))。構造遺伝子はE.coli由来のレポーターlacZである(Acc.V00296)。マーカー遺伝子はA.nidulans(Ace.AB020737)由来のargBである。ターミネータ配列として、ASpergillus nidulans(Acc.X02390)由来のtrpCターミネータを含む。レポーター遺伝子発現は、誘導体が対外から供給された場合にこのコンストラクトを有する酵母細胞で、何ら観察されない。
【0061】
(プラスミドpRM2085の構成(図4))
S.cerevisiae(Ace.M12926,89−205塩基)(Klein−Hitpassら、1988)とA.nidulans(Acc.M68900)のnirAプロモータの94bpフラグメントとが後に続く3xERE配列を、PCRを用いて増殖させ、BamHI/BgIIIフラグメントとして、pAN923−42BgIIIのBamHI部位に、クローニングさせた(Van Garcomら、1986)。構造遺伝子はE.coli由来のレポーターlacZである(Acc.V00296)。マーカー遺伝子はA.nidulans(Ace.AB020737)由来のargBである。ターミネータ配列として、ASpergillus nidulans(Acc.X02390)由来のtrpCターミネータを含む。
【0062】
(pERE URA JUNKの構成)
pRM2085のnirAプロモータ・フラグメントを破棄し、pBSK+(Stratagene,La Jolla,CA,USA)のamp遺伝子のORFの94bpフラグメントで置き換えた。
【0063】
(pERE JUNK nirAの構成)
pRM2085のURA3プロモータ・フラグメントを破棄し、pBSK+(Stratagene,La Jolla,CA,USA)のamp遺伝子のORFの117bpフラグメントで置き換えた。
【0064】
(pRM alcAの構成)
pRM2085のERE URA nirAカセットを破棄し、A.nidulansのalcAプロモータの427bpフラグメントで置き換えた(Gwynne,D.1ら、Gene 51,205−216(1987))。
【0065】
(実施例2)
(培養条件)
アスペルギルス属(Aspergillus)株を、適当なサプリメントを含む最小培地(Pontecorvoら、1953)で、12〜14時間、37℃、180rpmで増殖させた。異なる誘導因子濃度を試験するために、この株を濾過して回収し、異なる誘導因子濃度を含む新鮮な培地にアリコートを移し、さらに8時間にわたって増殖をおこなった。終わりには、菌糸体を濾過によって収集し、液体窒素で凍結した。タイムカーブ実験のために、株を収集してさらに24時間増殖させ、2、4、6、8、および24時間後に試料を採取して液体窒素で凍結した。大きくなった、そして、24時間の試料はされた、そして、液体窒素で凍結した。図9は、誘導因子、エタノール(alc)またはDES(hER)のいずれかによって、活性化させた後のレポーター・コンストラクトの発現レベルを示す。等量の真菌菌体量を新鮮な培地に移し、アリコートをアゴニストによる誘導にかけた。所望の時点でサンプリングをおこなった後、湿潤細胞ペレットを記載通りに処理した。
【0066】
(実施例3)
(レポーター酵素アッセイ)
NaPO緩衝液およびガラスビーズ(0.75〜1.0mm)を凍結した菌糸に添加し、ハイベード・リボライザー(Hybaid RiboLyser)を用いて細胞の破砕をおこなった。細胞片を遠沈殿法によって分離し、上清を酵素アッセイに用いた。タンパク質濃度は、ピアス(Pierce)のBSAアッセイを用いて決定し、特異的β−ガラクトシダーゼ活性はインビトロゲン(Invitrogen)のプロトコールを用いて測定した。図10は、実験の全セットを通じて使用された反応条件下で、牛血清アルブミン(BSA)によって得たタンパク質標準曲線(表1)である。所定の試料のタンパク質濃度の決定は、これらの標準条件に基づいておこなった。また、特異的酵素活性レベル(単位β−ガラクトシダーゼ)はタンパク質1mgあたりの単位(単位/mgタンパク質)に相関した。
【0067】
較正曲線をプロットして、DES[μg/μl」の濃度とタンパク質濃度[単位/mg]との相関関係を示す。試料のタンパク質濃度は、1mgのタンパク質あたりの単位として、特異的活性の発現が決定される(表2)。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2−1】

【0070】
【表2−2】

(実施例4)
(異なるリガンド濃度でのプレート上での増殖試験/X Gal活性試験)
0.1pM、1pM、10pM、100mM、および1μMのDES誘導体を、形質転換株(A.nidulans argB2、riboA1,pyrG89、pyroA4)でのLacZに対するXgal基質を有する培地プレートに対して添加することで、エストロゲン受容体導入をおこなった。図6。結果は、20μMまでの濃度のDES濃度が野生型株の増殖に影響をおよぼさないことを示している。1nM DESでのレポーター・コンストラクトの活性化は、形質転換された真菌でみいだされる。hERによって形質転換された株の増殖抑制は、レポーター・コンストラクトによって形質転換された株で100nMのDESで示された。
【0071】
(実施例5)
(液体培養でのX Gal活性試験)
図7は、Xgal含有液体培養でのβ−Gal活性のためのアッセイを示す。1単位は、28℃で1分間あたりに1nMのONPGを加水分解する酵素の量として定義される。結果によれば、誘導体DES(1nMおよび10mM)は、βGal活性に基づいたLacZの発現を強く誘導した。実施例3を参照せよ。
【0072】
(実施例6)
(pRMコンストラクトのβ−gal活性)
異なる濃度のDESを用いてβ−gal活性を測定した。表3は、異なるpRMレセプター・コンストラクトを用いた誘導レベルを示す。図8は、表3のアッセイをグラフ表示したものである。
【0073】
【表3】

(実施例7)
(pEREコンストラクトでのβ−gal活性)
各pEREコンストラクトでのβ−gal活性を、1nM DESによる誘導後にアッセイした。alcA発現もまた、比較のためにアッセイした。実施例3を参照せよ。pERE URA Junkの組み合わせによって、最も高い誘導レベルが得られた。表4は、時間経過に伴うpEREコンストラクトでのβ−galレベルの誘導を示す。
【0074】
【表4】

(実施例8)
(異なる炭素および窒素源を用いてpERE URA nirAコンストラクトでのβGAl活性)
異なる炭素および窒素源を含む所定のAspergillus最小培地を用いて、標準的な条件下で株の増殖をおこなった。1nMのDESによる誘導8時間後に、培養物を採取し、特異的β−ガラクトシダーゼ活性を測定してタンパク質1mあたりの単位として表した。標準として、炭素源として1%グルコース上で、また窒素源として5mMアンモニア上で増殖した培養物を採取して分析し、それらの三重反復試料あたり平均してタンパク質1mgあたりの平均単位として用い、参照発現レベル(すなわち、100%)の設定に用いた。表5および6(図11および12は表5および6のグラフ表示である)は、異なる濃度ならびに異なる炭素源および窒素源で増殖させた培養物から得た参照レベルの百分率である(Glu:グルコース、Ara:アラビノース、Xyl:キシロース、MM:最小培地)
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

(参考文献)
【0077】
【表7】

(配列表)
(配列番号1)
Acc.No.M12926
S.cerevisiaeの117bp ura3 プロモータ
(配列番号2)
5’−GGTCAnnnTGACC−3’
式中、nは任意のヌクレオチド
(配列番号3)
Acc.No.M86900
A.nidulans nirA プロモータ
(配列番号4)
Acc.No.M86900
A.nidulans nirA プロモータの94bpフラグメント
(配列番号5)
Acc.No.M86900
A.nidulans nirA プロモータの287bpフラグメント
(配列番号6)
Acc.No.M86900
A.nidulans nirA プロモータの382bpフラグメント
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1はphERpyr4のプラスミド・マップを示す。
【図2】図2はpRM2124のプラスミド・マップを示す。
【図3】図3はpRM2129のプラスミド・マップを示す。
【図4】図4はpRM2085のプラスミド・マップを示す。
【図5】図5A、5B、および5Cは、URA3、nirAプロモータ(続いてレポーター・タンパク質に結合)に遺伝的に結合した3つの連続的なエストロゲン反応エレメントの構造を示す。
【図6】図6は、異なるリガンド濃度でXgalプレート上で形質転換されたA.nidulansargB2、riboA1、pyrG、pyroA4の増殖活性を示す。
【図7】Xgalを含む液体培養でのβ−Gal活性についてのアッセイの結果を示す。
【図8】pRM2085、pRM2119、および pRM2124で形質転換したA.nidulansでのβ−Gal活性についてのアッセイを示す。
【図9】alcA発現と比較して、pEREレポーター・コンストラクトにより形質転換されたA.nidulansでのβ−Gal活性のアッセイを示す。
【図10】タンパク質濃度の較正曲線を示す。
【図11】異なる代謝産物でのβ−Gal活性のアッセイを示す。
【図12】異なる代謝産物でのβ−Gal活性のアッセイを示す。
【図13】JUNKエレメント修飾タンパク質を含むプラスミドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状菌でのステロイド誘導プロモータ発現系であって、該誘導プロモータ発現系を調節することができる、ステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項2】
糸状菌でのステロイド誘導プロモータ発現系であって、
(a)調節タンパク質に作動可能に結合した第1のプロモータと、
(b)標的核酸分子に作動可能に結合した調節可能なプロモータとを有し、
該調節可能なプロモータは、効果的外来性誘導因子の存在下、該調節タンパク質によって活性化され、それにより、該誘導因子の投与は該標的核酸分子の発現を生じ、該誘導因子の除去または拮抗は該標的核酸分子の発現を止める、ステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項3】
前記調節タンパク質が、該調節タンパク質が結合するプロモータ領域を含む核酸分子に対して物理的に結合しない核酸コンストラクトから発現される、請求項1または2に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項4】
前記調節可能なプロモータがエストロゲン受容体である、請求項2に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項5】
前記プロモータは、活性化または抑制のためのスタッファー・フラグメントをさらに含む、請求項1または2に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項6】
ベクターであって、糸状菌で発現されるpRM2085、pRM2124、pRM2119、pERE URA JUNK、pERE URA nirA、およびpERE JUNK nirAからなる群から選択されるベクター。
【請求項7】
前記糸状菌は、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、A.awamori、A.chrysogenum、A.saitoi、A.tubigensis、Trichoderma reesei、T.viridae、T.harzianum、Trichoderma sp.、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Mucor sp.、Ashbya gossipii、Penicillium sp.、およびNeurospora crassaからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項8】
単細胞酵母でのステロイド誘導プロモータ発現系であって、該誘導プロモータ発現系を調節することができる、ステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項9】
単細胞酵母でのステロイド誘導プロモータ発現系であって、
(a)調節タンパク質に作動可能に結合した第1のプロモータと、
(b)標的核酸分子に作動可能に結合した調節可能なプロモータとを有し、
該調節可能なプロモータは、効果的外来性誘導因子の存在下、該調節タンパク質によって活性化され、それにより、該誘導因子の投与は該標的核酸分子の発現を生じ、該誘導因子の除去または拮抗は該標的核酸分子の発現を止める、ステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項10】
前記調節タンパク質が、該調節タンパク質が結合するプロモータ領域を含む核酸分子に対して物理的に結合しない核酸コンストラクトから発現される、請求項9に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項11】
前記調節可能なプロモータがエストロゲン受容体である、請求項8または9に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項12】
前記プロモータは、活性化または抑制のためのスタッファー・フラグメントをさらに含む、請求項8または9に記載のステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項13】
ベクターであって、メチロトローフ酵母で発現されるpRM2085、pRM2124、pRM2119、pERE URA JUNK、pERE URA nirA、およびpERE JUNK nirAからなる群から選択されるベクター。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のステロイド誘導プロモータ発現系であって、該単細胞酵母は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Hansenula polymorpha、Hansenula sp.、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Candida sp.、およびTorulopsis sp.からなる群から選択される、ステロイド誘導プロモータ発現系。
【請求項15】
糸状菌または単細胞酵母での遺伝子発現を調節するための方法であって、調節された遺伝子発現カセットを用いて標的核酸分子を誘導するステップを含み、該遺伝子発現セットが、
(a)調節タンパク質に作動可能に結合した第1のプロモータと、
(b)標的核酸分子に作動可能に結合した調節可能なプロモータとを有し、
該調節可能なプロモータは、効果的外来性誘導因子の存在下、該調節タンパク質によって活性化され、それにより、該誘導因子の投与は標的遺伝子の発現を生じ、該誘導因子の除去または拮抗は発現を止める、方法。
【請求項16】
糸状菌または単細胞酵母であって、調節することができる誘導プロモータ発現系を含む、糸状菌または単細胞酵母。
【請求項17】
請求項16に記載の糸状菌または単細胞酵母であって、
標的核酸分子が調節可能な遺伝子発現カセットによって制御され、該遺伝子発現セットが、
(a)調節タンパク質に作動可能に結合した第1のプロモータと、
(b)標的核酸分子に作動可能に結合した調節可能なプロモータとを有し、
該調節可能なプロモータは、効果的外来性誘導因子の存在下、該調節タンパク質によって活性化され、それにより、該誘導因子の投与は標的遺伝子の発現を生じ、該誘導因子の除去または拮抗は発現を止める、糸状菌または単細胞酵母。
【請求項18】
請求項16または17に記載の糸状菌または単細胞酵母であって、該糸状菌は、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、A.awamori、A.chrysogenum、A.saitoi、A.tubigensis、Trichoderma reesei、T.viridae、T.harzianum、Trichoderma sp.、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、Mucor sp.、Ashbya gossipii、Penicillium sp.、およびNeurospora crassaからなる群から選択される、糸状菌または単細胞酵母。
【請求項19】
請求項16または17に記載の糸状菌または単細胞酵母であって、該単細胞酵母は、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia minuta(Ogataea minuta、Pichia lindneri)、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Hansenula polymorpha、Hansenula sp.、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Candida sp.、およびTorulopsis sp.からなる群から選択される、糸状菌または単細胞酵母。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2006−511220(P2006−511220A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562582(P2004−562582)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041357
【国際公開番号】WO2004/058947
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(503007287)グライコフィ, インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】