説明

遺伝子発現プロファイリングによる急性骨髄性白血病の分類、診断、および予後

本発明は、急性骨髄性白血病(AML)の分類、診断、および予後のための遺伝子分析法に関する。本発明は、以下の工程を含むAMLのための分類スキームを制作するための方法を提供する:a)AMLに冒された複数の参照被検者由来の細胞試料を含む、複数の参照試料を提供する工程;b)該参照試料のそれぞれに関する遺伝子発現プロフィールを個々に確立することによって、参照プロフィールを提供する工程;c)類似性に従って、該個々の参照プロフィールをクラスタリングする工程、およびd)それぞれのクラスタにAMLクラスを割り当てる工程。本発明は、さらに、AMLに冒された被検者のAMLを分類するための方法に、被検者におけるAMLを診断するための方法に、およびAMLに冒された被検者のために予後を決定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、医学の分野内である。本発明は、特に急性骨髄性白血病の分類、診断、および予後のための遺伝分析の方法に関する。また、本発明は、AMLの異なるクラスを特徴づける複数の異なり、かつ定義されたクラスタ内の類似群によりプロファイルする、AML患者の細胞から得られる核酸発現プロフィールに関する。本発明は、AMLの診断および療法における、並びに特に予後的に重要なAMLクラスの予測における、このような発現プロフィールおよび組成物の使用に関する。
【0002】
本発明は、さらに、AMLの診断のための、およびAMLに冒された被検者の予後の決定のための方法に、並びにゲノム科学またはプロテオミクスによって本発明の方法を行うために適した核酸プローブのセットを含むパーツのキットに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
急性骨髄性白血病(AML)は、病態生理、遺伝的性質、および予後が不均一である新生物のコレクションである。細胞遺伝学および分子解析に基づいて、AML患者は、現在、著しく対照的な予後をもつAMLの群またはサブセットに分類されている。たとえば、inv(16)、t(8;21)、およびt(15;17)の遺伝子の転位置は、比較的有利な予後であるAMLを特徴づけるが、ところが、細胞遺伝学的に悪いリスクの白血病のものでは、11q23、5(q)または7(q)の喪失、t(6;9)、およびt(9;22)を含む異常をもつ患者を含む(Lowenberg et al., 1999)。
【0004】
AMLにおいて最も共通する分子異常は、造血成長因子受容体であるfms様チロシンキナーゼ-3遺伝子(FLT3)の内部直列型複製(ITD)である(Levis & Small, 2003)。FLT3 ITD突然変異は、AML患者に悪い予後を与える(Levis & Small, 2003)。転写因子cEBPαの突然変異をもつAML患者は、良好な結果と関連していたが(Preudhomme et al., 2002;van Waalwijk van Doorn-Khosrovani et al., 2003)、一方、転写因子EVI1の発現の上昇は、よく知られているように、生存が不振であることを予測する(van Waalwijk van Doorn-Khosrovani et al., 2003)。これらの新規分子予後マーカーの例は、AMLにおける分子解析の拡大の重要性を強調する。
【0005】
急性骨髄性白血病(AML)である全ての患者の約30パーセントは、現在、特異的な異常核型に基づいて、良好な、または悪い予後のいずれかをもつ群に分類されている。しかし、患者の残りの70パーセントは、細胞遺伝学的マーカーを欠いているため分類することができない。
【0006】
本発明の目的のうちの一つは、AMLの診断のためのより正確なリスク評価ツールを提供することである。特異的な異常核型が見いだされなかったAML患者を分類すること、および分子的に明確に定義されたAMLクラスからこれらの群を区別することだけでなく、これらの分類されていないAML型の予後の分群を定義することも、もう一つの目的である。現在利用可能な方法では認識できないAMLにおけるさらなる予後のクラスの存在は、これらの病態生理に対する重要な洞察をもたらし得る。したがって、AML患者に対してより完全な予後判定方法を提供することも本発明の目的である。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、遺伝子発現プロフィール内における独特の相関、さらに細胞遺伝学的異常との独特の相関を、AML患者の代表的コホート内において高い精度で認識することができるという発見に基づく。たとえば、多くのAML患者から得られる遺伝子発現プロフィールは、類似性によってクラスタ形成し得ることが見いだされた。これにより、このようなクラスを特徴づける同様の発現プロフィールをもつAMLの別々のクラスを認識することができる。したがって、AMLは、それぞれのサブクラスが遺伝子発現プロフィールの特定のクラスタリングによって特徴づけられる別々のサブクラスに分類することができることが見いだされた。さらに、大部分のこれらのクラスまたはクラスタについて、真に判別可能な遺伝子を同定することができ、たとえば、クラスタは、そのクラスタにおける複数の遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、またはダウンレギュレートされているが、一方、別のクラスタにおけるこれらの発現は、影響を受けないことで特徴づけられることが判明した。
【0008】
これらの知見に基づいて、本発明は、今回、第一の局面において、以下の工程を含むAMLのための分類スキームを制作するための方法を提供する:
a)AMLに冒された複数の参照被検者由来の細胞試料を含む、複数の参照試料を提供する工程;
b)該参照試料のそれぞれに関する遺伝子発現プロフィールを個々に確立することによって、参照プロフィールを提供する工程;
c)類似性に従って、該個々の参照プロフィールをクラスタリングする工程:
d)それぞれのクラスタにAMLクラスを割り当てる工程。
【0009】
このような方法の好ましい態様において、参照プロフィールのクラスタリングは、プロフィール間で差動的に発現された遺伝子の情報に基づいて行われ、このような方法のより好ましい態様において、該参照プロフィールのクラスタリングは、表1の遺伝子の、さらにより好ましくは表2の遺伝子の情報に基づいて行われる(表は、以下に提供してある)。さらなる局面において、本発明は、以下の工程を含む、AMLに冒された被検者のAMLを分類するための方法を提供する:
a)AMLのための分類スキームを、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法に従ってこのようなスキームを制作することによって提供する工程;
b)該被検者についての遺伝子発現プロフィールを確立することによって、被検者プロフィールを提供する工程;
c)参照プロフィールと共に被検者プロフィールをクラスタリングする工程;
d)該スキームにおいて、参照プロフィールの中で該被検者プロフィールにおいてクラスタ形成した位置を決定する工程、および
e)該被検者プロフィールが参照プロフィールの任意クラスタ内にある場合は、該クラスタ形成した位置に対応するAMLクラスを該被検者の該AMLに割り当てる工程、または該被検者の該AMLに新たなAMLクラスを割り当てる工程。
【0010】
なおさらなる局面において、本発明は、以下の工程を含む、AMLに冒された被検者のAMLを診断するための方法を提供する:
a)本発明の方法に従ってAMLのための分類スキームを制作する工程;
b)その発現レベルが、該スキーム内の種々のAMLクラスの中の対応するAMLクラスのクラスタ形成した位置を特徴づける遺伝子を選択することによって、それぞれのクラスタについてクラスタ特異的遺伝子を定義する工程;
c)AMLに冒された被検者における、該クラスタ特異的遺伝子の十分な数の発現レベルを決定する工程;
d)該被検者における該クラスタ特異的遺伝子の発現レベルが、個々のAMLクラスを特徴づける発現レベルに対して十分な類似性を共有するどうかを証明し、これにより該被検者における該クラスに対応するAMLの存在を決定する工程。
【0011】
AMLを診断するためのこのような方法の一つの態様において、該クラスタ特異的遺伝子は、該遺伝子発現プロフィールに含まれる全ての遺伝子を含んでいてもよい。このような方法の好ましい態様において、該クラスタ特異的遺伝子は、表1の遺伝子の1〜3000遺伝子、より好ましくは表1の遺伝子の1〜600遺伝子、さらに好ましくは表1の遺伝子の1〜50遺伝子のセットを含む。より好ましい態様において、該クラスタ特異的遺伝子は、表2の遺伝子の1〜600遺伝子、さらにより好ましくは表2の遺伝子の1〜50の遺伝子、およびさらに好ましくは表2の遺伝子の1〜25遺伝子のセットを含む。このような方法において最も好ましくは、被検者において特定のAMLクラスを診断するための、表3に示したような差動的に発現された遺伝子の使用である。
【0012】
さらにもう一つの局面において、本発明は、以下の工程を含む、AMLに冒された被検者についての予後を決定するための方法を提供する:
a)AMLのための分類スキームを、本発明の方法に従ってこのようなスキームを制作することによって提供する工程;
b)該クラスに含まれるAML被検者に関するカルテに基づいて該スキームにおけるそれぞれのAMLクラスについての予後を決定する工程;
c)本発明の方法に従って該被検者におけるAMLを診断することによって、および/または分類することによって、AMLに冒された被検者のAMLクラスを証明する工程;並びに、
d)該AMLに冒された被検者において証明されたAMLクラスに対応する予後を該被検者に割り当てる工程。
【0013】
本発明は、AMLに冒された複数の参照被検者から得られる遺伝子発現プロフィールの類似性クラスタリングに基づいて区別された複数の異なるAMLクラスを含む、AMLのための分類スキームをさらに提供する。
【0014】
該分類スキームは、たとえば、このようなスキームを制作するための本発明の方法によって入手できる。好ましくは、該分類スキームは、たとえばAffymetrix遺伝子チップを使用することにより入手できるものなどの、たとえば、それぞれの遺伝子についてハイブリダイゼーション強度に関して遺伝子チップアレイで取得した値に基づいた遺伝子発現プロフィールのK平均クラスタリングを含む方法によって得られる。
【0015】
このような遺伝子チップを使用することにより得られた遺伝子発現プロフィールの解析には、種々の遺伝子間の微妙な変調を検出するために、好ましくは全ての強度値のlog2変換を含む。それぞれの遺伝子について、幾何平均(すなわち、解析した全てのプロフィールにおける全ての個々の遺伝子について決定した平均発現値)が算出される。この幾何平均からの偏差が、差動的発現と呼ばれる。差動的に発現されたものを割り当てることができる値にて発現された遺伝子を階層的クラスタリングのために使用する。その後、全ての試料/患者の遺伝子サイン(特徴的発現プロフィール)を、総患者集団の臨床的に異なった郡内で(経路)類似を示すピアソン相関係数解析によって互いに比較する。
【0016】
本発明は、さらに、全ての患者から算出される幾何平均と比較して、AMLにおいて調節される(アップレギュレートおよびダウンレギュレートされた)遺伝子を提供する。このような遺伝子およびこれらがコードするタンパク質は、診断および予後の目的のために有用であり、さらに抗体などのAMLを調整する治療的化合物をスクリーニングするための標的として使用してもよい。本発明の核酸またはこれらのコードされるタンパク質を検出する方法は、多くの目的のために使用することができる。例には、AMLの早期検出、AMLの治療後の再発のモニタリングおよび早期検出、AMLの療法に対する応答のモニタリング、AMLの予後の決定、AML療法の指揮、手術後の化学療法または放射線療法のための患者の選択、療法の選択、腫瘍予後の決定、治療、または治療に対する応答、並びに前癌状態の早期検出を含む。その他の本発明の態様も、本発明の以下の記述によって当業者にとって明らかになるであろう。
【0017】
一つの局面において、本発明は、患者由来の生体試料を、表1または2に示したような遺伝子の配列と少なくとも80%同一の配列に対して選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドなどのポリヌクレオチドと接触させることを含む、患者由来の1つまたは複数の細胞におけるAML関連転写物を検出する方法を提供する。一つの態様において、ポリヌクレオチドは、表1または2に示したような遺伝子の配列と少なくとも95%同一の配列に対して選択的にハイブリダイズする。もう一つの態様において、ポリヌクレオチドは、表1または2に示したような一連の遺伝子を含む。
【0018】
一つの態様において、このような検出方法に使用される生体試料は、組織試料である。もう一つの態様において、生体試料は、単離された核酸、たとえばmRNAを含む。一つの態様において、ポリヌクレオチドは、たとえば蛍光標識で標識されている。一つの態様において、ポリヌクレオチドは、固体表面上に固定されている。
【0019】
発明の詳細な説明
「分類すること」という用語は、その技術分野において認識される意味で使用され、したがって、クラスもしくはカテゴリによって、項目を、すなわち遺伝子発現プロフィールを配置すること、もしくは順序よく並べること、またはこれらが一般に有するか、および/またはこれらを区別する特徴に基づいて、これらを論理的に階層的クラス、サブクラス、およびサブサブクラスに分けることをいう。特に、「分類すること」は、分類されていない項目をクラスまたは種類に割り当てることをいう。次いで、「クラス」を、確立された系またはスキームに従ってこれらを分類するために、これらが一般に有する1つまたは複数の特徴、性状、特性、品質、効果、パラメーター、その他に基づいて項目のグループ分けがなされる。
【0020】
「分類スキーム」という用語は、その技術分野において認識される意味に使用され、したがって、これらの類似性および相違に基づいて項目をコレクションに、もしくはグループに組織化するための、事前に確立された原理に従って配置されたクラスの一覧をいう。
【0021】
「クラスタリング」という用語は、同じか、または類似のエレメントをもつ項目をクラスタに収集すること、構築すること、および/または一体化することをいい、「クラスタ」とは、特徴の類似性に基づいて共に密接に集められたか、もしくは存在している、同じかまたは類似の項目、すなわち遺伝子発現プロフィールのグループまたは数をいう。「クラスタ形成した」とは、項目がクラスタリングに供されたことを示す。
【0022】
「クラスタ形成した位置」という用語は、多数のクラスタの中の個々の項目の位置、すなわち遺伝子発現プロフィールをいい、該位置は、公知のクラスタから少なくともいくつかの項目をもつ該項目をクラスタリングすることによって決定される。
【0023】
本発明の方法に使用されるクラスタリングの方法は、特徴、性状、特性、品質、効果、パラメーターなどの類似性について、項目を比較するための公知の任意の数学的プロセスであってもよい。たとえば、多分散分析またはその他の解析の方法などの統計解析を使用してもよい。好ましくは、自己組織化マップ、階層的クラスタリング、多次元的スケーリング、原理成因分析、教師あり学習、k最近隣法、サポートベクターマシン、判別式解析、部分的最小二乗法、および/またはピアソン相関係数解析などの解析法が使用される。本発明の方法のもう一つの好ましい態様において、類似性に従ってクラスタ遺伝子発現プロフィールをクラスタ形成するために、ピアソン相関係数解析、マイクロアレイの有意性解析(SAM)、および/またはマイクロアレイの予測解析(PAM)が使用される。クラスタリングの非常に好ましい方法は、クラスタ形成した全てのプロフィールにおける全ての遺伝子について決定された幾何平均発現レベルよりも著しく低いか、またはより高い発現を有する差動的に発現された遺伝子の発現レベルをlog(2)変換し、クラスタ形成した全てのプロフィールにおける全ての差動的に発現された遺伝子の変換された発現レベルをK平均を使用することによってクラスタ形成する。次いで、階層的クラスタリングの過程に使用する遺伝子のサブセットを選択するために、数値照会を使用してもよく(Eisen et al., 1998)、したがって、階層的クラスタリングのためのより小さな遺伝子群を選択するために算出した幾何平均と比較して、差動的に発現された遺伝子を選択するために数値照会を実行してもよい。
【0024】
数値または閾値フィルタリングによって得られた遺伝子を使用する教師なし試料クラスタリングを使用して、試料の別々のクラスタ、並びにこれらのクラスタと関連する遺伝子サインを同定するために使用される。本明細書において遺伝子サインという用語は、その他の全てのクラスタから離れたクラスタの別々の位置を定義する遺伝子のセットをいうために使用され、クラスタ特異的遺伝子を含む。診断関連において最も可能性が高い解析のために遺伝子を選択するためには、数値または閾値フィルタリングが使用される。階層的クラスタリングにより、試料全体または大部分の試料に存在する遺伝子発現の大きな変異を可視化することができ、これらの遺伝子を教師なしクラスタリングに使用することができ、その結果、クラスタリング結果は、存在しないか、または変化していない遺伝子からのノイズによる影響を受けない。
【0025】
したがって、K平均クラスタリングを全ての遺伝子に対して行ってもよく、ピアソン相関は、好ましくは遺伝子と患者のサブセットに基づいて算出される。一般にいって、幾何平均からの偏差または変化を許容するための閾値が大きくなるにつれて、このフィルタリング手順によって選択される遺伝子の数は小さくなる。異なるカットオフまたは閾値を使用して、種々の数の遺伝子で一覧を調製する。このような一覧では、非白血病経路関連遺伝子の貢献が比較的大きいので、このような一覧上で選択され、および一覧に含まれる遺伝子の数が多くなるにつれて、一般にデータセット内で遭遇するノイズが多くなる。フィルタリングおよび選択手順は、好ましくは解析をできるだけ多くの遺伝子で行い、その一方で、ノイズを最小化するように最適化される。
【0026】
log(2)変換された発現値よりも1.5倍以上高い発現値に変化した全ての遺伝子およびlog(2)変換された発現値の-1.5倍以下の発現値に変化した遺伝子を階層的クラスタリングのために選択する。
【0027】
幾何平均よりも著しくより高いか、または低い発現を示す遺伝子のサブセットは、たとえば幾何平均値よりも1.5倍高く、好ましくは幾何平均値よりも2倍高く、さらにより好ましくは幾何平均値よりも3倍高い値であってもよい。同様に、幾何平均発現レベルよりも著しく低い発現は、たとえば幾何平均値よりも0.8倍未満、好ましくは幾何平均値よりも0.6倍未満、より好ましくは幾何平均値よりも0.3倍未満の値であってもよい。階層的クラスタリングのために使用されるのと同じ遺伝子の選択が、ピアソン相関係数解析による患者のクラスタリングのためにも使用される。
【0028】
遺伝子発現プロファイリングは、リンパ様悪性腫瘍に由来する骨髄、並びにこれらの疾患の範囲内のサブクラスを区別する際に有用であることが以前に証明されたが(Alizadeh et al., 2000; Armstrong et al., 2002; Debernardi et al., 2003; Ross et al., 2003; Yeoh; Schoch et al., 2002; Golub et al., 1999)、このような区別が、疾患の予後に対して何らかの関連性を有し得るかどうかは言うまでもなく、遺伝子発現単独に基づいて適切な区別をAMLの種々のタイプ間で行うことができるかどうかは、これまで未知であった。
【0029】
本発明は、今回、公知の、並びに新規の急性骨髄性白血病(AML)の診断的、予後的、および治療的に関連した分群(また、以下に、AMLクラスとして言及される)を正確に同定するためのいくつかの方法、並びに治療においてどのアプローチが有効である可能性が高いかについて予測することができる方法を提供する。これらの方法の基礎は、AMLに冒された被検者における(AML特異的)遺伝子発現の測定にある。したがって、本発明の方法および組成物は、AML患者をAMLクラスまたはAMLクラスタに割り当てるための方法、AML患者のための療法を選択する方法、AML患者における療法の有効性を決定する方法、およびAML患者のための予後を決定する方法を含む、AML患者のための療法を選択する際に有用な道具を提供する。
【0030】
本発明の方法は、種々の局面において、被検者試料の、たとえばAMLに冒された参照被検者の、またはAMLと診断されたか、もしくはAMLと分類された被検者の遺伝子発現プロフィールを確立する工程を含む。本発明の発現プロフィールは、AMLを有する被検者、AMLを有することが疑われる被検者、AMLを発症する性向を有する被検者、または以前にAMLを有した被検者、またはAMLのための療法を受けている被検者を含む、AMLに冒された被検者に由来する試料から作製される。本発明の発現プロフィールを作製するために使用される被検者からの試料は、単細胞、細胞のコレクション、組織、細胞培養、骨髄、血液、またはその他の体液を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)種々の供与源に由来することができる。組織または細胞供与源は、組織生検試料、細胞ソートされた集団、細胞培養、または単細胞を含んでいてもよい。本発明の試料のための供与源は、末梢血もしくは骨髄由来の芽球などの末梢血または骨髄由来の細胞を含む。
【0031】
試料を選択する際に、AMLクラスにおいて差動的遺伝子発現を有する細胞を構成する試料の割合が考慮されるべきである。試料は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のAMLクラスにおいて差動的発現を有する細胞を含んでいてもよく、このような細胞を高い割合で有する試料を選択する。一部の態様において、これらの細胞は、白血病性細胞などの芽球である。芽球を構成する試料の割合は、当技術分野において周知の方法によって決定してもよく;たとえば、国際公開公報第03/083140号に記述された方法を参照されたい。
【0032】
「遺伝子発現プロファイリング」または「発現プロファイリング」は、本明細書において、その技術分野において認識される意味で使用され、細胞における複数の遺伝子の転写状態(mRNA)または翻訳の状態(タンパク質)を測定するための方法をいう。使用する方法に応じて、このような測定には、ゲノム全体の遺伝子発現の評価だけでなく、選択した遺伝子の発現レベルの測定を含んでいてもよく、その結果「遺伝子発現プロフィール」または「発現プロフィール」が確立する(これらの用語は、以下にその意味に使用される)。本明細書に使用される「発現プロフィール」は、遺伝子発現産物の相対的存在量の測定値に対応する1つまたは複数の値を含む。このような値は、RNAレベルまたはタンパク質存在量の測定値を含んでいてもよい。したがって、発現プロフィールは、遺伝子の転写状態または翻訳状態の測定値を表す値を含むことができる。これらに関しては、米国特許第6,040,138号、第5,800,992号、第6,020135号、第6,344,316号、および第6,033,860号に対して参照がなされる。
【0033】
試料の転写状態には、試料中に存在するRNA種、特にmRNAの同一性および相対的存在量を含む。好ましくは、実質的に試料中の全ての構成成分RNA種の割合が測定されるが、少なくとも試料の転写状態を特徴づけるために十分な割合が測定される。転写状態は、都合よくは、任意のいくつかの既存の遺伝子発現技術により、転写物存在量を測定することによって決定することができる。
【0034】
翻訳状態には、試料中の構成成分タンパク質種の同一性および相対的存在量を含む。当業者には公知であるとおり、転写状態と翻訳状態とは、関連がある。
【0035】
本発明において決定され、および実施された発現プロフィールのそれぞれの値は、差動的に発現された遺伝子の絶対的または相対的発現レベルを表す測定値である。これらの遺伝子の発現レベルは、試料中のRNAまたはタンパク質分子の発現レベルを評価するための当技術分野において公知の任意の方法によって決定してもよい。たとえば、RNAの発現レベルは、膜ブロット(ノーザン、サザン、ドットなどハイブリダイゼーション解析に使用されるものなど)またはマイクロウェル、試料管、ゲル、ビーズ、または線維(または結合された核酸を含む任意の固体支持体)を使用してモニターしてもよい。米国特許第5,770,722号、第5,874,219号、第5,744,305号、第5,677,195号、および第5,445,934号を参照されたい(これらに対して明確に参照が作製される)。また、遺伝子発現モニタリング系は、溶液中の核酸プローブを含んでいてもよい。
【0036】
本発明の一つの態様において、発現プロフィールに含まれる値を測定するために、マイクロアレイが使用される。マイクロアレイは、種々の実験間での再現性の理由から、この目的のために特に十分に適している。DNAマイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルの同時測定のための1つの方法を提供する。それぞれのアレイは、固体支持体に付着された捕捉プローブの再現可能なパターンからなる。標識されたRNAまたはDNAをアレイ上の相補プローブにハイブリダイズさせ、次いでレーザー走査によって検出する。アレイ上のそれぞれのプローブについてのハイブリダイゼーション強度を決定し、相対的遺伝子発現レベルを表す定量値に変換する。実験の節を参照されたい。また、米国特許第6,040,138号、第5,800、992号、および第6,020,135号、第6,033,860号、および第6,344,316号を参照されたい(これらに対して明確に参照が作製される)。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、試料中の多数のRNAについての遺伝子発現プロフィールを決定するために特に有用である。
【0037】
一つのアプローチにおいて、試料から単離された総mRNAを標識cRNAに変換し、次いでオリゴヌクレオチドアレイに対してハイブリダイズさせる。それぞれの試料を別々のアレイにハイブリダイズさせる。相対的転写物レベルは、アレイ上および試料中に存在する適切な対照を参照することによって算出する。たとえば、実験の節を参照されたい。
【0038】
もう一つの態様において、発現プロフィールの値は、差動的に発現された遺伝子のタンパク質産物の存在量を測定することによって得られる。これらのタンパク質産物の存在量は、たとえば差動的に発現された遺伝子のタンパク質産物に特異的な抗体を使用して、決定することができる。本明細書に使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子またはこれらの免疫学的に活性な部分、すなわち抗原結合性部分をいう。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、ペプシンなどの酵素で抗体を治療することによって作製することができるF(ab)およびF(ab')2断片を含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、たとえばキメラもしくはヒト化、完全ヒト化、非ヒト、たとえばマウス、または単鎖抗体であることができる。好ましい態様において、これは、エフェクター機能を有し、かつ補体を固定することができる。抗体は、毒素またはイメージング剤に結合することができる。差動的に発現された遺伝子に由来する全長タンパク質産物、またはタンパク質産物の抗原性ペプチド断片は、免疫原として使用することができる。抗原性ペプチドに包含される好ましいエピトープは、タンパク質の表面上に位置する差動的に発現された遺伝子のタンパク質産物の領域、たとえば親水性領域、並びに高い抗原性をもつ領域である。抗体は、タンパク質の発現の存在量およびパターンを評価するために、差動的に発現された遺伝子のタンパク質産物を検出するために使用することができる。また、これらの抗体は、臨床試験工程の一部として組織におけるタンパク質レベルをモニターするために、たとえば所与の療法の有効性を決定するために、たとえば診断用に使用することができる。検出は、検出可能な物質(すなわち、抗体標識化)に抗体を結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によって容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光材料、生物発光材料、および放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ(3-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレッセイン、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレッセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンを含み;発光材料の例は、ルミノールを含み;生物発光材料の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、並びに適切な放射性物質の例は125I、131I、35S、または3Hを含む。
【0039】
一旦、被検者発現プロフィールおよび参照発現プロフィールに含まれる値が確立されたら、被検者プロフィールを参照プロフィールと比較して、被検者発現プロフィールが参照プロフィールと十分に類似するかどうかを決定する。または、被検者発現プロフィールを複数の参照発現プロフィールと比較して、被検者発現プロフィールと最も類似する参照発現プロフィールを選択する。被検者発現プロフィールを参照発現プロフィールと比較するためには、これらの間の類似性を検出するための2つ以上のデータセットを比較するための当技術分野において公知の任意の方法を使用してもよい。一部の態様において、被検者発現プロフィールおよび参照プロフィールは、サポートベクターマシン(SVM)アルゴリズム、出現パターンの総体的尤度による予測(PCL)アルゴリズム、k最近隣法アルゴリズム、または人工ニューラルネットワークアルゴリズムなどの教師あり学習アルゴリズムを使用して比較される。被検者発現プロフィールが、参照プロフィールに対して「統計学的に有意な類似性」または「十分な類似性」を示すどうかを決定するために、統計的検定を行って、被検者発現プロフィールと参照発現プロフィールとの類似性が、ランダムなイベントによって達成された可能性が高いどうかを決定してもよい。被検者発現プロフィールと参照プロフィールとの間の類似性がランダムなイベントから生じる可能性を算出することができる任意の統計的検定を使用することができる。差動的に発現された遺伝子の類似性に基づいて被検者をAMLクラスに割り当てる精度は、主に患者集団内の不均一性に影響を受け、同様に幾何平均からの偏差によっても反映される。したがって、より正確な診断が必要とされるときは、被検者と参照プロフィールとの間の類似性を評価する際のストリンジェンシーは、数値照会を変えることによって増大されるはずである。
【0040】
被検者発現プロフィールを1つまたは複数の参照プロフィールと比較するために使用される方法は、好ましくは、本明細書に記述したようなクラスタリング法を行うことによって、(n+1)様式でその後の解析を再び実行することによって実施される。また、被検者発現プロフィールに最も類似するAMLクラス参照プロフィールを同定するために、AMLに冒された被検者のAMLクラスを確立するための方法で行ったように、すなわち被検者におけるAMLを診断することによって、または被検者におけるAMLを分類することによって、プロフィールを類似性に従ってクラスタ形成し、被検者プロフィールが参照プロフィールの公知のクラスに対応するかどうかを決定する。たとえば、被検者AMLを特定のAMLクラスに割り当てる際に、本方法が使用され、本発明のクラスタリング解析を行った後に得られる、被検者プロフィールがクラスタ形成される位置を任意の公知のAMLクラスと比較する。クラスタ形成された被検者プロフィールの位置が、参照プロフィールのクラスタ内にある場合、すなわち類似性クラスタリング法を行った後にこれと共にクラスタを形成する場合、被検者のAMLは、参照プロフィールのAMLクラスに対応する。被検者プロフィールが、参照プロフィールのクラスタ内にない場合、すなわち類似性クラスタリング法を行った後にこれと共にクラスタを形成しない場合、新たなAMLクラスをその被検者プロフィールに割り当ててもよい(このようなクラスの1つは、AMLを有していない被検者である)。
【0041】
本発明のいくつかの態様において、発現プロフィールは、AMLクラスにおいて差動的に発現される遺伝子の発現レベルを表す値を含む。本明細書に使用される「差動的に発現された」という用語は、1人の被検者の発現プロフィールにおいて、測定された特定の遺伝子の発現レベルが、全ての患者のプロフィールから算出した幾何平均から少なくともn倍異なることを意味する。また、発現レベルは、AMLの特定の形態を有する被検者に由来する試料において、AMLの異なる形態を有する被検者に由来する試料と比較すると、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされ得る。たとえば、一つの態様において、本発明の差動的に発現された遺伝子は、異なるAMLクラスにおいて異なるレベルにて発現されていてもよい。種々のAMLクラスにおいて差動的に発現される遺伝子の例を表1および2に示してある。
【0042】
測定された発現レベルが、全ての参照プロフィールのその遺伝子についての幾何平均発現レベルから少なくともn倍異なる多くの遺伝子が生じることに注意すべきである。これは、たとえば測定した細胞の生理学的状態が異なるため、生物学的変異のため、またはその他の疾患状態の存在のためである。したがって、差動的に発現された遺伝子の存在は、異なるAMLクラスの存在を決定するために必ずしも有益であるというわけではなく、全ての差動的に発現された遺伝子が診断試験を行うために適しているわけではない。さらに、クラスタ特異的な差動的遺伝子発現は、本明細書で定義したように、AMLを有する被検者間の試験においてのみ有益である可能性が最も高い。したがって、クラスタ特異的遺伝子検出を使用することによって行われる診断試験は、好ましくはAMLの存在が確認された被検者に対して行われるべきである。この確認は、たとえば、本発明に従って、またはその他の何らかの試験によって、AMLに冒された被検者においてAMLを分類するための方法を行うことによって得られてもよい。
【0043】
本発明は、異なるAMLクラスの患者の診断用AML試料において差動的に発現されている遺伝子の群を提供する。これらの遺伝子は、286のAML試料において、13,000のプローブに対する遺伝子発現レベルに基づいて同定された。プローブによって検出される核酸分子の発現レベルを表す値は、Omniviz、SAM、およびPAM解析ツールを使用して実験の節に記載したように解析した。K平均、階層的、およびピアソン相関試験などの全てのクラスタリング工程を行うために、Omnivizソフトウェアを使用した。SAMは、具体的には、ピアソン相関分析において同定された臨床的に関連した群の根底にある遺伝子を同定するために使用した。PAMは、ピアソン相関の所与の郡内の全ての個々の患者を診断するために必要な遺伝子の最小数を決定するために使用する。
【0044】
要するに、発現プロファイリングを286人の新規AML患者からのAML芽球に対して実施した。教師なしクラスタリングは、階層的クラスタリング後にピアソン相関内の新規(分)群を同定するために使用した。ピアソン相関試験により、異なる分子サインをもつAML患者の16の群またはクラスを同定することとなった。階層的クラスタリングおよびピアソン相関により、遺伝的異質性(16クラスタ)を検出することができる。これにより、AMLの機械的サインがもたらされ得る。SAMおよびPAM解析を実行した後に、診断用遺伝子サイン(クラスタ特異的遺伝子を含む)が得られた。
【0045】
いくつかの分子的に割り当てられたクラスは、十分に認識された遺伝的病変AML1/ETO、PML/RARα、およびCBFβ/MYH11などの、都合のよい細胞遺伝的性質をもつ明確なAML分群に対応したが、本発明者らは、以前にAMLの異なるクラスとして同定されていなかったいくつかのさらなる患者の異なるクラスを同定した。たとえば、新たに同定されたAMLクラスタは、CEBPα突然変異、またはFLT3 ITD突然変異、または11q23異常などの遺伝的病変を含んだことから、これらの細胞遺伝学的マーカー単独では、AML患者の予後または最も至適な介入ストラテジー(薬物療法)を決定するほど十分ではないことを示した。
【0046】
明確なAML分群のAML1/ETO、PML/RARα、およびCBFβ/MYH11は、細胞試料中の1または2つの遺伝子のみの発現レベルの測定に基づいて同定することができるが、新たに発見されたAMLクラスの多くは、複数の遺伝子の差動的発現に基づいて定義された。AMLクラスを定義する遺伝子は、以下においてクラスタ特異的遺伝子またはサイン遺伝子とも呼ばれる。高精度でこれらの予後的に重要なクラスタを予測する最小限の遺伝子セットを決定するために、マイクロアレイにおける予測解析(PAM)を適用した。新規クラスタのうちの1つにおいて、AML患者の半分が、EVI1の発現の上昇および/または染色体7(q)喪失などの不利なマーカーを有した。面白いことに、このクラスタ(クラスタ番号10、実施例を参照されたい)の90パーセントより多くが患者は、療法に対して十分に反応しなかった。異なる遺伝子発現サインが、AML患者のこのクラスを定義するという事実は、現在未知の遺伝的または経路欠陥が存在することを示唆し、不十分な治療結果であることに一致する。
【0047】
したがって、本発明は、AMLを分類する方法を提供する。本方法を使用して、合計286のAML試料を22283のプローブ・セットからなるDNAマイクロアレイに対して解析し、約13,000の遺伝子が、少なくとも16個の異なるクラスタに分類することができることを表す。AML患者におけるこれらの16個の異なるクラスタは、2856個のプローブ・セットに対するこれらの個々の差動的発現プロフィール間の強力な相関に基づいて割り当てた(表1;図1)。差動的に発現された遺伝子を同定するための、発現レベル値を解析するために使用した方法を使用し、その結果、クラスタリングにおける最適の結果(すなわち、教師なし順序)が得られた。次いで、これにより、分子サインに基づいて参照プロフィールの16個のクラスタの定義を生じさせる。これらの16個の個々のクラスタの位置またはクラスタリングを定義した遺伝子を決定することができ、これらのクラスタに対応する予後的に重要なAMLクラスを正確に予測するために必要であった遺伝子の最小セットを引き出すことができた。本発明にしたがったAMLを分類するための方法により、その他の(多くの)被検者が参照として使用されたとき、または遺伝子発現プロフィールを確立するためのその他のタイプのオリゴヌクレオチドマイクロアレイが使用されたときに、異なるクラスタリング・パターンを生じ、したがって異なる分類スキームを生じ得ることが理解されるはずである。
【0048】
したがって、本発明は、種々の以前に同定された遺伝的に定義されたクラスをカバーするAMLの包括的な分類を提供する。これらの予後的に重要なクラスを定義し、または予測した遺伝子の最小数を決定するためのマイクロアレイにおける予測解析(PAM)によるクラスのさらなる解析により、クラス特異的遺伝子またはサイン遺伝子を確立した。新規クラスを定義する、異なる遺伝子発現プロフィールの存在は、これらのクラスのAML症例の中にいまだ未知の共通の遺伝的欠陥または経路欠陥が存在することを示唆する。いくつかのクラスでは、単一遺伝子の発現レベルに基づいて区別することができたが、その他では、20以上の差動的に発現された遺伝子に基づいて区別することができただけであった(表3)。
【0049】
本発明の方法は、いくつかの局面において、発現レベルが、本発明の分類スキーム内の種々のAMLクラスの中の対応するAMLクラスのクラスタ形成した位置を特徴づける遺伝子を選択することによって、クラスタ特異的遺伝子を定義する工程を含む。このようなクラスタ特異的遺伝子は、好ましくはPAM解析を基礎として選択される。この選択の方法には、以下を含む。
【0050】
PAMまたは分割ラウンドメドイド(partition round medoids)は、k-メドイド(k-medoids)法のうちの1つである。通常のk平均アプローチとは異なり、これは、また非類似度マトリックスを受け入れ、これが平方ユークリッド距離の合計の代わりに非類似度の合計を最小化するので、これはよりロバストである。PAMアルゴリズムは、データの構造を代表するはずであるデータセットの観測値の中の、「k」個の代数的オブジェクトまたはメドイドについての検索に基づいて形成される。「k」個のメドイドのセットを見いだした後に、それぞれの観測値を最近隣メドイドに割り当てることによって「k」個のクラスタを構築する。目標は、これらの最近隣代表的オブジェクトに対する観測値の非類似度の合計を最小化する「k」個の代表的オブジェクトを見いだすことである。観測値間の非類似度を算出するために使用されるメートル法の距離が「ユークリッド」および「マンハッタン」である。ユークリッドの距離は、相違の根平方和であり、マンハッタン距離は、絶対相違の合計である。PAMにより、一定のクラスタに属する全てのメンバー(患者)を同定するためにどれくらいの遺伝子が必要かについて算出する。
【0051】
本発明の方法は、いくつかの局面において、被検者におけるクラスタ特異的遺伝子の発現レベルが、個々のAMLクラスに関して特徴的である発現レベルに対して十分な類似性を共有するどうかを証明する工程を含む。この工程は、研究下で被検者にその特定のAMLクラスが存在することを決定する際に必要であり、この場合、その遺伝子の発現が疾患マーカーとして使用される。被検者におけるクラスタ特異的遺伝子の発現レベルが個々のAMLクラスにおけるその特定の遺伝子の発現レベルに対して十分な類似性を共有するかどうかは、たとえば閾値をセットすることによって決定してもよい。
【0052】
また、本発明により、全ての参照被検者の幾何平均に比較して、特定のAMLクラスにおいて高度に差動的発現レベルである遺伝子が明らかになる。これらの高度に差動的に発現された遺伝子は、表2に示した遺伝子から選択される。これらの遺伝子およびこれらの発現産物は、患者におけるAMLの存在を検出するためのマーカーとして有用である。抗体またはその他の試薬もしくはツールを使用してこれらのAMLのマーカーの存在を検出してもよい。
【0053】
また、本発明により、種々の同定されたAMLクラスにおける遺伝子の発現レベルを表す値を含む遺伝子発現プロフィールが明らかになる。好ましい態様において、これらの発現プロフィールは、差動的発現レベルを表す値を含む。したがって、一つの態様において、本発明の発現プロフィールは、定義されたAMLクラスにおいて差動的発現を有する遺伝子の発現レベルを表す1つまたは複数の値を含む。それぞれの発現プロフィールには、プロフィールが1つのAMLクラスともう一つとを区別するために使用することができるほど十分な数の値を含む。一部の態様において、発現プロフィールは、1つの値だけを含む。たとえば、AMLに冒された被検者は、MYH11 201497_x_atの発現レベルのみに基づいて、クラスタ#9(inv(16))によって定義されるAMLクラス内にあるかどうかを決定することができる(表2および31を参照されたい)。同様に、AMLに冒された被検者は、2つの遺伝子FGF13 205110_s_at並びにHGF 210997_atおよび210998_s_atのcDNAの発現レベルのみに基づいて、クラスタ#12(t(15,17))によって定義されるAMLクラス内にあるかどうかを決定することができる(表2および34を参照されたい)。この場合、発現プロフィールは、2つの差動的に発現された遺伝子に対応する2つの値を含む。その他の態様において、発現プロフィールは、差動的に発現された遺伝子に対応する1つまたは2つよりも多くの値を、たとえば少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも22個、少なくとも25個、少なくとも27個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも75個、少なくとも100個、少なくとも125個、少なくとも150個、少なくとも175個、少なくとも200個、少なくとも250個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1200個、少なくとも1500個、または少なくとも2000個、またはそれ以上を含む。
【0054】
被検者をAMLクラスに割り当てる診断の精度は、発現プロフィールに含まれる値の数に基づいて変化することが認識される。一般に、発現プロフィールに含まれる値の数は、診断精度が、本明細書において他の場所に記述した方法を使用して少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%と算出されるように選択され、診断精度の割合がより高い方が明らかに優先される。
【0055】
被検者をAMLクラスに割り当てる際の診断精度は、その特定のAMLクラス内の差動的に発現された遺伝子の発現レベル間の相関の強さに基づいて変化することが認識される。発現プロフィールの値が、その発現が特定のAMLクラスと強く相関する遺伝子の発現レベルを表すときは、発現プロフィールにおいてより少ない値(遺伝子)を使用して、なおも許容されるレベルの診断または予後の精度を得ることができるであろう。
【0056】
差動的に発現された遺伝子と特定のAMLクラスの発現レベルとの間の相関の強度は、統計的有意性の検定によって決定してもよい。たとえば、本発明のいくつかの態様において遺伝子を選択するために使用したχ二乗検定により、特定のAMLクラスに対するその遺伝子の発現の相関の強度を示すことを含む、それぞれの差動的に発現された遺伝子に対してχ二乗値を割り当てる。同様に、T-統計測定基準法およびWilkinsのメートル法は、両方とも、遺伝子の発現とその特定のAMLクラスとの間の相関の強度を指し示す値またはスコアを提供する。これらのスコアは、発現レベルが特定のAMLクラスと最も優れた相関を有し、本発明の方法の診断もしくは予後の精度を増大する遺伝子を選択するために、または発現プロフィールに含まれる値の数を減少させるが、一方で発現プロフィールの診断もしくは予後の精度を維持するために使用してもよい。好ましくは、既存の参照プロフィールの中で該新たなプロフィールがクラスタ形成した位置を提供するためなど、参照被検者の発現プロフィールが収集されており、かつ新たなプロフィールをそのデータベースに付加することができ、既存のプロフィールとクラスタ形成することができるデータベースが維持される。さらにまた、データベースに対する新たなプロフィールの付加は、本発明の方法の診断および予後の精度を改善する。好ましくは、本発明の方法において、このような相関の強度を決定するために、SAMまたはPAM解析ツールが使用される。
【0057】
本発明の方法は、AMLに冒された被検者に由来する試料から発現プロフィールを提供し、この被検者発現プロフィールを、特定のAMLクラス、予後が公知であるクラス、または療法に対して好ましい応答もつクラスと関連する1つまたは複数の参照プロフィールと比較する工程を含む。被検者発現プロフィールと最も類似するAMLクラス参照プロフィールを同定することよって、たとえばこれらのクラスタ形成した位置が共に分類に入るときに、被検者をAMLクラスに割り当てることができる。割り当てられたAMLクラスは、参照プロフィールが関連するものである。同様に、被検者からの発現プロフィールが、予後良好または予後不良などの確立された予後と関連する参照プロフィールに対して十分に類似するどうかを決定することによって、AMLに冒された被検者の予後を予測することができる。被検者の発現プロフィールは、いつでも確立されたAMLクラスに割り当てることができ、次いで好ましい介入ストラテジーまたは治療的な処置を該被検者に対して提唱することができ、該被検者を該割り当てられたストラテジーに従って治療することができる。その結果、AMLである被検者の治療を、被検者が冒されているAMLの特定のクラスに従って最適化することができる。たとえば、t(15,17)の存在によって特徴づけられるクラスタ#12に属するAMLクラスは、レチノイン酸で治療してもよい。治療または療法に対する応答者および非応答者に従って、1つのクラスまたはクラスタ内にさらなる区分を作製してもよい。このような区分は、AML被検者のさらに詳細な特徴づけをもたらし得る。もう一つの態様において、被検者発現プロフィールは、AMLを治療するための療法を受けているAMLに冒された被検者に由来する。療法の有効性をモニターするために、被検者発現プロフィールを1つまたは複数の参照発現プロフィールと比較する。
【0058】
一部の態様において、AMLクラスに対するAMLに冒された被検者の割り当ては、AMLに冒された被検者のために療法を選択する方法に使用される。本明細書に使用される、療法とは、疾患(この場合AML)の影響もしくは症候を減少させ、または排除するために企図された治療の経過をいう。治療措置には、典型的には処方された1つまたは複数の薬物の投薬量または造血幹細胞移植術を含むが、これらに限定されるわけではない。療法は、理想的には、有益であり、かつ疾病状態を減少させるが、多くの例において、療法の効果は、望ましくない効果も同様に有する。
【0059】
一つの局面において、本発明は、発明の方法に従ってこのようなスキームを制作することによってAMLのための分類スキームを提供する工程および該クラスに含まれるAML被検者に関するカルテに基づいて該スキームにおけるそれぞれのAMLクラスについての予後を決定する工程を含む、AMLに冒された被検者についての予後を決定する方法を提供する。被検者における疾患の進行を予測するためには、カルテに依存しなければならない。本発明により、本明細書で定義したような種々のAMLクラスに対して、AMLに冒された参照被検者で記録された種々の臨床データの割り当てがもたらされる。この割り当ては、好ましくはデータベース内に存在する。これは、一旦、疾患マーカーとしてクラスタ特異的遺伝子を使用して本発明の特定のAML診断法を行うことによって、または本発明に従ってAMLに冒された被検者のAMLを分類する方法を行うことによって、いずれかにより新たな被検者が特定のAMLクラスに属するとして同定されたならば、そのクラスに割り当てられた予後をその被検者に割り当ててもよいという点で利点を有する。
【0060】
本発明は、AMLに冒された被検者のために遺伝子発現プロフィールを決定し、被検者発現プロフィールに類似する参照プロフィールを選択する際に有用な組成物を提供する。これらの組成物は、AMLクラスにおいて差動的に発現される核酸分子と特異的に結合することができる捕捉プローブを有する基体を含むアレイを含む。また、主張した本発明の方法に有用なデジタルでコードされた参照プロフィールを有するコンピュータ読み取り可能な媒体も提供される。
【0061】
本発明は、本発明の差動的に発現された遺伝子を検出するために、ポリヌクレオチド(転写状態)の検出のための、またはタンパク質(翻訳の状態)の検出のための捕捉プローブを含むアレイを提供する。「アレイ」とは、ペプチドまたは核酸プローブが支持体または基体に付着された固体支持体または基体を企図する。アレイは、典型的には、基体の表面に対して、異なる公知の位置に結合された複数の異なる核酸またはペプチド捕獲プローブを含む。また、これらのアレイ(「マイクロアレイ」または口語で「チップ」としても記述される)は、当技術分野において一般に記述されており、米国特許第5,143,854号、第5,445,934号、第5,744,305号、第5,677,195号、第6,040,193号、第5,424,186号、第6,329,143号、および第6,309,831号、並びにFodor et al.(1991)Science 251:767-77に参照がなされる。これらのアレイは、一般に機械的合成法または写真平板方法と固相合成法との組み合わせを組み込んだ光直接合成法を使用して作製してもよい。典型的には、「オリゴヌクレオチドマイクロアレイ」は、転写状態を決定するために使用されるが、「ペプチド・マイクロアレイ」は、細胞の翻訳状態を決定するために使用される。
【0062】
本明細書に使用される「核酸」もしくは「オリゴヌクレオチド」もしくは「ポリヌクレオチド」または文法上同等のものは、少なくとも2つの共有結合性に連結されたヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、典型的には約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50またはそれ以上の長さ〜約100ヌクレオチドまでの長さのヌクレオチドである。核酸およびポリヌクレオチドは、たとえば200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000などよりも長い長さを含む任意の長さの重合体である。本発明の核酸は、一般にホスホジエステル結合を含むと考えられるが、いくつかの場合には、たとえばホスホロアミダート、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、またはO-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Pressを参照されたい);並びにペプチド核酸バックボーンおよび結合を含む核酸類似体が含まれ、代わりのバックボーンを有していてもよい。その他の類似体核酸は、ポジティブ・バックボーン;米国特許第5,235,033号および第5,034,506号、並びにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Sanghui & Cook, edsに記述されたものを含むものを含む非イオン性バックボーン、および非リボース・バックボーンをもつものを含む。また、1つまたは複数の炭素環式糖を含む核酸も、核酸の定義の中に含まれる。多様な理由のために、たとえば生理学的環境におけるこのような分子の安定性および半減期を増大するために、またはバイオチップ上のプローブとしてリボース-リン酸バックボーンの修飾を行ってもよい。天然に存在する核酸と類似体との混合物は、作製することができ;または、種々の核酸類似体と、天然に存在する核酸および類似体の混合物との混合物を作製してもよい。
【0063】
ペプチド核酸類似体を含むペプチド核酸(PNA)は、特に好ましい。これらのバックボーンは、天然に存在する核酸の高度に荷電したホスホジエステル・バックボーンとは対照的に、実質的に中性条件下で非イオン性である。これにより、2つの利点が生じる。第1に、PNAバックボーンでは、ハイブリダイゼーション動態の改善を示す。PNAが、ミスマッチ対完全にマッチした塩基対についての融解温度(Tm)により大きな変化がある。DNAおよびRNAは、典型的には内部ミスマッチについて2〜4℃のTmの低下を示す。非イオン性PNAバックボーンで、低下が7〜9℃に近くなる。同様に、これらの非イオン性の性質のため、これらのバックボーンに付着される塩基のハイブリダイゼーションは、塩濃度に対して比較的非感受性である。加えて、PNAは、細胞性酵素によって分解されず、したがって、より安定である。
【0064】
核酸は、特定したように、一本鎖でも、もしくは二本鎖でも、または二本鎖もしくは一本鎖の両方の配列の部分を含んでいてもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、一本鎖の描写は、相補鎖の配列をも定義し;したがって、本明細書に記述される配列は、配列の相補物をも提供する。核酸は、DNA、ゲノムのおよびcDNAの両方、RNA、またはハイブリッドであってもよく、核酸は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン・ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基の組み合わせを含んでいてもよい。
【0065】
「転写物」は、典型的には、天然に存在するRNA、たとえばプレmRNA、hnRNA、またはmRNAをいう。本明細書に使用される「ヌクレオシド」という用語は、ヌクレオチドおよびヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体、並びにアミノ修飾されたヌクレオシドなどの修飾されたヌクレオシドを含む。加えて、「ヌクレオシド」は、天然に存在しない類似体構造を含む。したがって、たとえば、それぞれが塩基を含むペプチド核酸内の個々のユニットは、本明細書においてヌクレオシドと称される。
【0066】
本明細書に使用される「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1つまたは複数のタイプの化学結合を介して、通常は水素結合形成を介して、通常は相補的塩基対形成を介して、相補配列の標的核酸に対して結合することができる核酸として定義される。本明細書に使用される、プローブは、天然の塩基(すなわち、A、G、C、またはT)または修飾された塩基(7-デアザグアノシン、イノシン、その他)を含んでいてもよい。加えて、プローブの塩基は、それがハイブリダイゼーションを機能的に妨害しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合で連結されていてもよい。したがって、たとえば、プローブは、構成要素の塩基がホスホジエステル結合以外のペプチド結合で連結されているペプチド核酸であってもよい。プローブは、ハイブリダイゼーション状態のストリンジェンシーによって、プローブ配列と完全な相補性を欠いた標的配列に結合してもよいことが当技術分野の当業者には十分理解されているであろう。プローブは、好ましくは、同位元素、発色団、ルミフォア(lumiphores)、色素原などで直接標識されているか、またはビオチン(ストレプトアビジン複合体が後で結合し得る)で、もしくは酵素標識などで間接的に標識されている。プローブの、その標的核酸配列に対するハイブリダイゼーションをアッセイすることよって、選択された配列または部分列の有無を検出することができる。診断または予後は、ゲノムレベルに、またはRNAもしくはタンパク質発現のレベルに基づいていてもよい。
【0067】
当業者は、本発明の診断法に使用することができるオリゴヌクレオチドプローブをデザインすることができる。好ましくは、このようなプローブは、本発明のオリゴヌクレオチドマイクロアレイを形成するために、固体表面上に固定されている。本発明の方法に有用なオリゴヌクレオチドプローブは、表1から選択される遺伝子の1つまたは複数に対して、好ましくは表2から選択される遺伝子の1つまたは複数に対して、より好ましくは表3から選択される遺伝子の1つまたは複数に対してなどの、AML関連核酸に対して、ストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる。
【0068】
たとえば、機械的合成法を使用するアレイの合成のための技術は、米国特許第5,384,261号(本明細書において参照がなされる)に記述されている。平面のアレイ表面が好ましいが、アレイは、実質的に任意の形状の表面またはさらに多数の表面上に製造してもよい。アレイは、ビーズ、ゲル、重合体表面、ファイバー・オプティックスなどの線維、ガラス、もしくはその他の任意の適切な基体上のペプチドまたは核酸であってもよく、これらのための参照が、米国特許第5,770,358号、第5,789,162号、第5,708,153号、第6,040,193号、および第5,800,992号に対してなされる。アレイは、全てを含む装置において診断法またはその他の操作を可能にするような様式でパックされていてもよい。たとえば、米国特許第5,856,174号および第5,922,591号に対して参照がなされる。
【0069】
本発明によって提供されるアレイは、AMLクラスにおいて差動的に発現される核酸分子を特異的に結合することができる捕捉プローブを含む。これらのアレイは、核酸分子の発現レベルを測定するために使用して、これにより、本明細書に他で記述したように、AML患者についての診断および予後を決定する方法に使用するための、およびこれらの患者における療法の有効性をモニターするための発現プロフィールを作製することができる。
【0070】
一部の態様において、アレイにおけるそれぞれの捕捉プローブは、表1および2に示した核酸分子から選択される核酸分子を検出する。示した核酸分子は、図1に図示したように、クラスタ#1〜クラスタ#16から選択されるAMLクラスにおいて差動的に発現されたものを含む。
【0071】
本発明のアレイは、それぞれのアドレスが、標的核酸分子を特異的に結合することができる捕捉プローブを有する複数のアドレスを有する基体を含む。基体上のアドレス数は、アレイが企図される目的で変更する。アレイは、低密度アレイまたは高密度アレイであってもよく、4以上、8以上、12以上、16以上、20以上、24以上、32以上、48以上、64以上、72以上、80以上、96以上のアドレス、または192以上、288以上、384以上、768個以上、1536以上、3072以上、6144以上、9216以上、12288以上、15360以上、または18432以上のアドレスを含んでいてもよい。一部の態様において、基体は、12、24、48、96、もしくは192、または384アドレス以下、500、600、700、800、もしくは900アドレス以下、または1000、1200、1600、2400、もしくは3600以下のアドレスを有する。
【0072】
また、本発明は、それぞれのプロフィールが、AMLクラスにおいて差動的に発現する遺伝子の発現を表す1つまたは複数の値を有する、1つまたは複数のデジタルでコードされた発現プロフィールを含むコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。このようなプロフィールの調製および使用は、十分に当業者の範囲内にある(たとえば、国際公開公報第03/083140号を参照されたい)。一部の態様において、デジタルでコードされた発現プロフィールは、データベースに含まれる。たとえば、米国特許第6,308,170号を参照されたい。
【0073】
また、本発明は、AMLに冒された被検者における疾病状態を診断し、治療し、およびモニターするために有用なキットを提供する。これらのキットは、アレイおよびコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。アレイは、それぞれのアドレスが、少なくとも1つのAMLクラスにおいて差動的に発現する核酸分子(オリゴヌクレオチドアレイを使用することにより)またはペプチド(ペプチドアレイを使用することにより)を特異的に結合することができる捕捉プローブを有するアドレスを有する基体を含む。結果は、アレイによって検出される核酸分子の発現レベルを表す値を含むデジタルでコードされた発現プロフィールを有するコンピュータ読み取り可能な媒体に変換する。
【0074】
上記したアレイを使用して、核酸試料に含まれるいろいろな核酸分子の量を同時に決定することができる。加えて、さらに少量の核酸試料で決定を実施することができるといった利点がある。たとえば、試料中のmRNAを標識するか、または標識cDNAを、鋳型としてmRNAを使用することによって調製し、標識mRNAまたはcDNAをアレイとのハイブリダイゼーションに供し、その結果、試料中に発現されているmRNAsを同時に検出することにより、これらの発現レベルを決定することができる。
【0075】
AMLのためにそれぞれの発現が変更される遺伝子は、AMLに冒された細胞における種々の遺伝子の発現レベルを決定し、上記のとおりの一定のタイプに分類して、発現レベルを対照組織中の発現レベルと比較することによって見つけることができる。
【0076】
遺伝子の発現レベルを決定するための方法は、特に限定されるわけではなく、最適には、前述の遺伝子発現の変化を確認するための任意の技術を使用することができる。多くの遺伝子の発現を同時に決定することができるので、全ての中で、アレイを使用する方法が特に好ましい。たとえば、Affymetrixから適切なアレイが市販されている。
【0077】
たとえば、mRNAを芽球から調製し、次いで、生じるmRNAを鋳型として、逆転写を実施する。この過程では、たとえば、任意の適切な標識されたプライマーまたは標識されたヌクレオチドを使用することにより、標識cDNAを得ることができる。
【0078】
標識化のために使用される標識化物質に関しては、放射性同位元素、蛍光物質、化学発光物質、および発光体をもつ物質などの物質を使用することができる。たとえば、蛍光物質は、Cy2、FluorX、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、ローダミンなどを含む。加えて、同時検出を可能にする視点から、試験される試料(本選択方法で試験される癌試料)および対照として使用される試料を、それぞれ2つ以上の蛍光物質を使用して異なる蛍光物質で標識することが望ましい。本明細書において、試料の標識化は、試料中のmRNA、mRNAに由来するcDNA、またはcDNAからの転写もしくは増幅によって産生された核酸を標識することによって実施される。
【0079】
次に、上述の標識cDNAと適切な遺伝子またはその断片に対応する核酸が固定されたアレイとの間で、ハイブリダイゼーションを実施する。ハイブリダイゼーションは、使用されるアレイと標識cDNAとに適切した条件下で、任意の公知の過程に従って行ってもよい。たとえば、ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd ed., 9.52-9. 55 (1989)に記述されている条件下で行うことができる。
【0080】
試料に由来する核酸とアレイとの間のハイブリダイゼーションを、上述のハイブリダイゼーション条件下で実施する。試料の収集から遺伝子の発現レベルの決定までの手順に必要とされる期間に、より多くの期間が必要とされるときは、リボヌクレアーゼの作用により、mRNAの分解が生じる可能性がある。試験される試料(すなわち、AML患者の細胞または組織試料)における遺伝子発現と対照試料における遺伝子発現との相違を決定するためには、発現において変化が比較的小さい標準遺伝子を使用して、これらの試料の両方のmRNAレベルを調整することが好ましい。
【0081】
その後で、試験した試料のハイブリダイゼーション結果を対照試料のものと比較することによって、両試料において差動的発現レベルを示す遺伝子を検出することができる。具体的には、使用した標識化の方法に応じて適切なシグナルをアレイについて検出し、これを上記のとおりの方法によって標識した核酸試料とのハイブリダイゼーションに供することにより、アレイ上のそれぞれの遺伝子について、試験した試料における発現レベルを、対照試料における発現レベルと比較することができる。
【0082】
こうして得られた、シグナル強度に有意差を有する遺伝子は、それぞれの遺伝子が、一定のAMLクラスについて発現が特異的に変更されている。
【0083】
また、本発明は、多数のそれぞれのプロフィールが複数の値を有する複数のデジタルでコードされた発現プロフィールを含み、それぞれの値が少なくとも1つのAMLクラスにおいて差動的に発現する遺伝子の発現を表すコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。また、本発明により、コンピュータ・データ格納装置内(これは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、DRAM、SRAM、SGRAM、SDRAM、RDRAM、DDR RAM、磁気バブル・メモリ装置、並びにCPUレジスタおよびon-CPUデータ格納アレイを含むその他のデータ記憶装置を含むことができる)の配列および発現レベルを含む、本発明のAML特異的遺伝子発現データに関する一まとまりのデータの貯蔵および検索が提供される。典型的には、データレコードは、磁化可能な媒体上の磁区のアレイにビット・パターンとして、またはDRAM装置におけるセルのアレイなどの(たとえば、それぞれのセルは、トランジスタおよび電荷貯蔵領域(これは、トランジスタ上にあってもよい)、電荷状態もしくはトランジスタゲート状態のアレイとして貯蔵されている。
【0084】
上で示唆した診断、研究、および医療用途に使用するために、本発明によってキットも提供される。診断および研究適用において、このようなキットは、以下のいずれか、または全てを含んでいてもよい:アッセイ試薬、緩衝液、AMLクラス特異的核酸または抗体、ハイブリダイゼーションプローブおよび/またはプライマー、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、ドミナントネガティブAMLポリペプチドまたはポリヌクレオチド、AML関連配列の小分子阻害剤、アレイ、抗体、Fab断片、捕獲ペプチドその他。加えて、キットは、本発明の方法の実施のために説明書(すなわち、プロトコル)を含む使用説明材料を含んでいてもよい。使用説明材料は、典型的には書面またはプリント材料を含むが、これらは、このようなものに限定されるわけではない。このような説明書を格納し、およびエンドユーザにこれらを伝えることができるいずれの媒体も、本発明によって想定される。このような媒体は、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学式媒体(たとえば、CD ROM)等を含むが、これらに限定されるわけではない。このような媒体は、このような使用説明材料を提供するインターネット・サイトについてのアドレスを含んでいてもよい。このようなインターネット・サイトは該データベースに含まれるAML被検者の参照プロフィールの大きなセットで、被検者発現プロフィールを新たに決定する類似性クラスタリングを行うために有用なAML参照発現プロフィールのデータベースを提供し得る。好ましくは、データベースは、患者の予後などの臨床的に関連したデータ、良好な治療方法、およびデータベースにおける種々のAMLクラスのための細胞遺伝学的特徴を含む。
【0085】
本発明は、たとえば、本発明のアレイとアレイによって検出される核酸分子の発現を表す値をもつデジタルでコードされた参照プロフィールを有するコンピュータ読み取り可能な媒体とを含むキットを包含する。これらのキットは、AMLに冒された被検者をAMLクラスに割り当てるために、および被検者におけるAMLを診断するために有用である。
【0086】
また、本発明は、AML関連配列のモジュレーターをスクリーニングするためのキットを提供する。このようなキットは、容易に利用できる材料および試薬から調製することができる。たとえば、このようなキットは、以下の材料の1つまたは複数を含むことができる:AML関連ポリペプチドまたはポリヌクレオチド、反応チューブ、およびAML関連活性を試験するための説明書。任意に、キットは、以下を含んでいてもよい:AML関連遺伝子、具体的には、本発明によるクラスタを定義する遺伝子を検出するためのアレイ。多種多様なキットおよび構成成分を、企図されるキットの使用者および特定の使用者の要求に応じて、本発明に従って調製することができる。
【0087】
診断には、典型的には複数の遺伝子または産物の評価を含む。遺伝子は、病歴または結果データ中に同定され得る疾患における重要なパラメーターとの相関に基づいて選択される。
【0088】
好ましい態様において、本発明によるパーツのキットは、本発明に従ったオリゴヌクレオチドマイクロアレイと、該マイクロアレイをAML参照発現プロフィールのデータベースと共に使用することによって決定される遺伝子発現プロフィールを比較するための手段とを含む。本発明は、本発明の診断的または予後的方法におけるデータベース、マイクロアレイ、オリゴヌクレオチドプローブ、および分類スキームを含む、本発明の方法を行うために適したパーツのキット、並びに本発明の種々の産物の使用を含む。
【0089】
本発明の方法および組成物は、AMLの治療のために有用な治療的化合物を同定するための試験化合物をスクリーニングするために使用してもよい。一つの態様において、試験化合物は、初代細胞または特定のAMLクラスの代表的株化細胞を含む試料においてスクリーニングされる。試験化合物で処置後に、本発明の差動的に発現された遺伝子の1つまたは複数の試料中の発現レベルを、本明細書において他に記述された方法を使用して測定する。被検者発現プロフィールを作製するために、差動的に発現された遺伝子の発現レベルを表す値を使用する。次いで、被検者発現プロフィールと参照発現プロフィールとの類似点を決定するために、この被検者発現プロフィールを試料によって示されたAMLクラスと関連した参照プロフィールと比較する。被検者発現プロフィールと参照発現プロフィールとの間の相違は、試験化合物が抗白血病誘発性の活性を有するかどうかを決定するために使用してもよい。
【0090】
本発明の試験化合物は、生物学的なライブラリー;空間的にアドレス指定可能な対応する固相または溶液相ライブラリー;逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法;「1-ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法の任意の多数のアプローチを使用して得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ポリペプチド・ライブラリーに限定されるが、一方で、その他の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Res. 12: 145)。
【0091】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当技術分野において、たとえばDeWitt et al. (1993) Proc. Nad. Acad. Sci. USA 90:6909; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al. (1993) Science 261:1303; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;および in Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233において見つけることができる。化合物のライブラリーは、溶液中に(たとえば、Houghten (1992) Biotechniques 13:412-421)、またはビーズ上に(Lam (1991) Nature 354:82-84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364:555-556)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)、もしくはファージ上に(Scott and Smith (1990) Science 249:386-390; Devlin (1990) Science 249:404-406; Cwirla et al. (1990) Proc. Nad. Acad. Sci. U.S.A. 97:6378-6382; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-310)提示してもよい。
【0092】
候補化合物は、たとえば以下を含む:1)Ig尾部の融合ペプチドおよびランダム・ペプチド・ライブラリーのメンバーを含む可溶性ペプチドなどのペプチド(たとえばLam et al. (1991) Nature 354:82-84; Houghten et al. (1991) Nature 354:84-86を参照されたい)並びにDおよび/またはL-配置アミノ酸でできたコンビナトリアル・ケミストリーに由来する分子ライブラリー;2)リンペプチド(たとえば、ランダムかつ部分的に縮重した、定方向リンペプチドライブラリーのメンバー、たとえばSongyang et al. (1993) Cell 72:767-778を参照されたい);3)抗体(たとえば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプの、キメラ、および単鎖抗体、並びに抗体のFab、F(ab')Z、Fab発現ライブラリー断片、およびエピトープ結合断片);4)小有機および無機分子(たとえば、分子は、コンビナトリアルライブラリーおよび天然産物ライブラリーから得られる);5)亜鉛類似体;6)ロイコトリエンA4および誘導体;7)ベスタチン並びにアルファメニン(arphamenine)AおよびB並びに誘導体などの古典的アミノペプチダーゼ阻害剤およびこのような阻害剤の誘導体;8)並びに、本明細書に上に開示したものおよびこれらの誘導体などの人工のペプチド基体およびその他の基体。
【0093】
本発明は、AMLクラスにおいて差動的に発現する多数の遺伝子を開示する。これらの差動的に発現された遺伝子は、表1および2に示してある。これらの遺伝子の発現は、AML危険因子と関連するので、これらの遺伝子は、白血病誘発において役割を果たし得る。したがって、これらの遺伝子およびこれらの遺伝子産物は、AMLの治療のための治療的化合物を同定するための、試験化合物をスクリーニングする方法に有用である潜在的な治療標的である。多数のAMLクラス間で共通である遺伝子は、患者集団を通してより広範に作用することが予想され得るので、治療的処置のための標的として好ましい。それは、本発明において定義したように、複数のAMLクラスに存在する遺伝子は、AMLの根底にある一般的プロセスに関与する可能性が非常に高い。したがって、これらの遺伝子の発現は、AML危険因子と関連し、したがって、白血病誘発において役割を果たしている可能性が高い。したがって、いくつかのクラスまたはクラスタに存在する遺伝子は、スーパークラスタを定義し得るし、このスーパークラスタは、一般に白血病誘発において、特にAMLにおいて重要な役割を果たす過程を定義し得る。
【0094】
本発明の差動的に発現された遺伝子は、差動的に発現された遺伝子産物を発現する組換え宿主細胞を含む細胞に基づいたスクリーニングアッセイ法に使用してもよい。次いで、差動的に発現された遺伝子の産物を活性化することができる化合物(すなわち、アゴニスト)、または差動的に発現された遺伝子の産物を不活性化することができる化合物(すなわち、アンタゴニスト)を同定するために、組換え宿主細胞をスクリーニングする。
【0095】
差動的に発現された遺伝子の産物によって媒介される任意の白血病誘発性機能を、AMLの治療のための治療的化合物を同定するためのスクリーニングアッセイ法における指標として使用してもよい。このような指標アッセイ法には、細胞増殖についてのアッセイ法、細胞周期の調整についてのアッセイ法、AMLを示すマーカーの発現についてのアッセイ法、および上記のとおりのAMLクラスにおいて差動的に発現される遺伝子の発現レベルについてのアッセイ法を含む。上に提供した、これらの薬物スクリーニングアッセイ法に従って同定される差動的に発現される遺伝子産物の活性のモジュレーターは、AMLである被検者を治療するために使用される。これらの治療方法は、本明細書に記述したような薬学的組成物中の差動的に発現された遺伝子産物の活性のモジュレーターを、このような治療を必要とする被検者に投与する工程を含む。
【0096】
以下の実施例は、例証を目的として提供され、限定を目的としない。
【0097】
実施例1
使用した方法
患者および細胞試料
新規AMLの診断が確認された患者をこの研究に含めた(表4)。全ての患者は、HOVON(Dutch-Belgian Hematology-Oncology Co-operative group)のプロトコル(http://www.hovon.nl)に従って治療した。治療プロトコルは、以前にRombouts et al., 2001に記述された。診断時のAML患者(n=286)および健常ボランティア(n=5)の骨髄または末梢血吸引をインフォームドコンセント後に採取した。芽球および単核細胞をFicoll-Hypaque(Nygaard, Oslo, Norway)遠心分離によって精製し、凍結保存した。健常ボランティア(n=3)のCD34陽性細胞を、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用してソートした。細胞学的解析によれば、AML試料は、診断時の芽球計数に非依存的に、解凍後に80〜100%の芽球を含んだ。
【0098】
RNA単離および品質管理
解凍後、細胞をハンクス平衡塩類溶液で一度洗浄した。高品質総RNAを、グアニジウムイソチオシアナートでの溶解、続く塩化セシウム勾配精製によって抽出した(Chomczynski & Sacchi, 1987)。RNA濃度、品質、および純度は、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent, Amstelveen, The Netherlands)でのRNA 6000ナノアッセイ法を使用して調べた。いずれの試料も、RNA分解またはDNA混入を示さなかった(28S/18S rRNA比>2)。
【0099】
遺伝子プロファイリングおよび品質管理
286人の新たに診断されたAMLの症例(表3)をAffymetrix U133A GeneChipを使用する遺伝子プロファイリングによって解析した。U133A GeneChipsは、約13000個の異なる遺伝子を示す22283個のプローブ・セットを含む。10マイクログラムの総RNAをアンチセンス・ビオチン化RNAの産生のために使用した。一本鎖cDNAおよび二本鎖cDNAは、T7-(dT)24-プライマー(Genset Corp, Paris France)を使用して、製品プロトコル(Invitrogen Life Technologies, Breda, The Netherlands)に従って合成した。インビトロでの転写は、ビオチン-11-CTPおよびビオチン-16-UTP(Perkin Elmer, Hoofddorp, The Netherlands)並びにMEGAScript T7標識化キット(Ambion, Cambridgeshire, UK)で行った。二本鎖cDNAおよびcRNAを精製して、GeneChip Sample Cleanup Module(Affymetrix, Santa Clara, CA)で断片化した。その後、ビオチン化されたRNAをAffymetrix U133A GeneChipにハイブリダイズさせた(45℃、16時間)。染色、洗浄、および走査手順は、GeneChip Expression Analysis Technical Manual(Affymetrix, Santa Clara, CA)に記載されているように実施した。全てのGeneChipsを、明らかな異常について視覚的に検査した。スケーリング/規準化の包括的方法を適用すると、全てのGeneChips(n=294)のスケーリング/規準化因子間の相違は、3倍未満(0.70、SD 0.26)であった。全てのさらなる品質測定法、すなわち存在する遺伝子パーセント(50.6、SD 3.8)、5'に対する3'アクチン比(1.24、SD 0.19)および5'に対する3'GAPDH比(1.05、SD 0.14)では、全体的に高い試料およびアッセイ品質を示した。
【0100】
データ規準化、解析、および可視化
全てのプローブ・セットの平均強度値は、MAS5.0を使用するスケーリング/規準化の包括的方法によって算出した。30以下の値をもつ大部分の遺伝子は存在せず(全ての不在要求の83%)、これらの値は、信頼できないと分類して、30にセットした。また、この過程により、おそらく信頼できない存在要求(全ての存在要求の10%)が排除された。測定した強度と幾何平均強度との間の比をそれぞれのプローブ・セットについて算出し、さらなるデータ解析のために使用するためにOmniviz(著作権)、SAM(著作権)、およびPAM(著作権)でlog2変換した。
【0101】
Omniviz(著作権)(Maynard, MA (version 3.6))-種々の数のプローブ・セットを、1つまたは複数の試料において、全てのAML患者の幾何平均発現レベルから少なくともn倍異なる遺伝子についてフィルタリングすることによって選択した。種々の比を使用して、種々の数の差動的に発現されたプローブ・セットを相関可視化ツールのために選択した(表2)。選択したプローブ・セットのそれぞれの数について、特異的に分子的に認識できる群のAML患者のクラスタリングをOmnivizの相関可視化ツールを使用して調査した(追加データ(図B〜H))。
【0102】
表5(下記)は、同様の分子異常をもつAML患者のクラスタリングに基づいたCorrelation View結果の評価を示す。染色体5を含む異常をもつわずかなAML症例を除外した。比:測定した強度と幾何平均強度との間の比により、プローブ・セットを選択した。
【0103】
SAM(著作権)(version 1.21)Trustees of Leland Stanford Junior University-全ての教師ありクラスの解析は、マイクロアレイの有意差解析(SAM)(Tusher et al., 2001)を使用して行った。割り当てられたクラスタについて上位40個の遺伝子を同定する基準は、以下のとおりであった:選択したクラスタと残りのAML試料との間の相違が少なくとも2倍、並びに5%未満のq値。
【0104】
PAM(著作権)(version 1.12)Trustees of Leland Stanford Junior University-全ての教師ありクラス予測解析は、マイクロアレイの予測差解析(PAM)のRのソフトウェア(version 1.7.1)(Tibshirani et al., 2002)を適用することによって行った。
【0105】
SAMおよびPAM法によって同定された全ての遺伝子は、追加データ(P1およびQに対する表A1)として利用できる。
【0106】
RT-PCRおよび配列分析
FLT3-ITD、FLT3-TKD、N-RAS、K-RAS、およびcEBPαにおける突然変異についての逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)および配列分析、並びにEVI1のためのリアルタイムPCRは、以前に記述したとおりに行った(van Waalwijk van Doorn-Khosrovani et al., 2003a; van Waalwijk van Doorn-Khosrovani et al., 2003b; Valk et al., 2004; Care et al., 2003)。
【0107】
生存の統計解析
統計解析は、Stata Statistical Software、Release. 7.0 (Stata, College Station, TX)で行った。全体の生存(OS、任意の原因による不全死)およびイベントフリー(evenet-free)生存(EFS、1日目に完全寛解がない症例における不全、最初のCRにおいて再発または死亡)の保険統計の確率は、KaplanおよびMeierの方法によって推定した。
【0108】
結果
遺伝子発現による新規AMLの相関可視化
種々の分子マーカーに関して、AML症例のOmnivizの可視化ツールを適用することによる最適な教師なし秩序化は、2856プローブ・セットを使用して達成した(2008個の注釈のついた遺伝子および146個のESTを示す)(図1Aおよび表5)。AML患者の16の異なる群を、隣接したAML患者間の、すなわち対角線に沿った1つの赤の四角内の強力な相関、並びに種々の群間の、すなわち対角線に沿った赤の四角間の相関および抗相関に基づいて割り当てた(図1Aおよび追加のデータ(図A))。2856プローブ・セットで作製した最終的なOmniviz Correlation Viewは、細胞学的、細胞遺伝学的、および分子パラメーターを本来の対角線に隣接して直接プロットすることができるように適応させた。これにより、高い相関および関連パラメーターをもつ患者群の独特の可視化方法となった(図1B)。
【0109】
AML t(8;21)、AML inv(16)およびAML t(15;17)の異なるクラスタが明らかであった(図1B)。これらの異なるクラスタは、相関ツールを使用してより少ないプローブ・セットで容易に同定されたが、FLT3もしくはcEBPαに突然変異があるか、またはEVI1を過剰発現するAML患者のクラスタでは、2856プローブ・セットのみで明らかであった(表5および図4〜10)。より多くの遺伝子を相関可視化のために使用したときに、この緻密なクラスタリングは消滅した(表5)。
【0110】
16個の同定されたクラスタのそれぞれについて特徴的な独特の遺伝子は、SAMを使用する教師付き解析によって得られた。上位40個の遺伝子の発現プロフィールは、Correlation Viewと共に図1Bにプロットしてある。SAM解析では、クラスタ#14に関して異なる遺伝子プロフィールを同定することができなかったので、599個の識別遺伝子(表23-39)のみを生じたことから、クラスタ#7および#8の遺伝子に密接した重複があることを示唆する。
【0111】
AMLおよび再発性転位置
CBFβ/MYH11-全てのinv(16)AML患者は、クラスタ#9内にクラスタ形成した(図1Bおよび追加のデータ(表I))。以前にinv(16)が潜んでいることが公知でなかった4人の患者をこのクラスタに含めたことに留意されたい。分子解析およびサザンブロット法により、これらの症例におけるCBFβ/MYH11融合遺伝子が存在することが明らかになった(図11)。SAM解析により、MYH11がこのクラスタのための最も顕著な識別遺伝子であることが明らかになった(追加のデータ(表11および図12))。面白いことに、CBFβは、このクラスタに抗相関したことから、CBFβ/MYH11融合タンパク質が、CBFβ対立遺伝子の発現をダウンレギュレートすることを示唆する。
【0112】
PML/RARα-クラスタ#12は、RT-PCRのみによってPML/RARαをもつAPLとして以前に認識された2人の患者を含む、t(15;17)をもつ急性前骨髄球性白血病(APL)の全例を含む(図1Bおよび追加のデータ(表L))。SAM解析(追加のデータ(表L1))により、肝細胞増殖因子(HGF)、マクロファージ刺激1(肝細胞増殖因子様(MST1))、および線維芽細胞成長因子13(FGF13)などの成長因子をコードする遺伝子は、このクラスタに特異的であったことを明らかにした。加えて、クラスタ#12は、は、高いまたは低い白血球数(WBC)のいずれかである2つの分群に分離することができる(追加のデータ(図13)。この細別は、FLT3 ITD突然変異状態に対応する(図1B)。
【0113】
AML1/ETO-t(8;21)(2496)のない1人の患者を含む全てのt(8;21)をもつ患者は、クラスタ#13内に分類した(図1Bおよび追加のデータ(表M))。SAMにより、このクラスタのための最も判別可能な遺伝子としてETOを同定した(追加のデータ(表M1および図14))。
【0114】
11q23異常をもつAML
11q23異常をもつAML患者は、286人のAML患者内に入り交じっていたが、2つの分群、すなわちクラスタ#1およびクラスタ#16が明らかになった(図1Bおよび追加のデータ(表AおよびP))。クラスタ#16は、t(9;11)の4人の症例およびt(11;19)の1人の症例を含む(5/11症例(45%))。SAM解析により、このクラスタの大部分の症例において特異的にアップレギュレートされる一群の遺伝子をもつ強力な特徴を同定した(図1Bおよび追加のデータ(表P1))。クラスタ#1内の14人の症例のうちの7人(50%)は、同様に第11染色体異常を有し、この分群は、相当不均一なようで、あまり均一な特徴をもたない(図1B)。
【0115】
AMLおよびcEBPα突然変異
面白いことに、2つの別々のクラスタ(クラスタ#4および#15)は、主に正常な核型およびcEBPαに高頻度で突然変異をもつAML患者を含む(図1B(クラスタ#4(8/15症例(53%))および#15(5/8症例(62%)))。クラスタ#4では、アップレギュレートおよびダウンレギュレートされた遺伝子のセットを定義することができ(追加のデータ(表D1))、これは、クラスタ#4におけるAML症例をクラスタ#15から識別するように見えた。アップレギュレートされた遺伝子は、CD7抗原(CD7)およびT細胞受容体デルタ座位(TRD@)などの一定のT細胞遺伝子を表し、これらは、同様にAMLの未成熟サブセットにも発現されることが公知である(Lo Coco et al., 1989; Boeckx et al., 2002)。クラスタ#15の上位40遺伝子の一つ以外の全てが、ダウンレギュレートされる(追加のデータ(表O1))。面白いことに、これらの遺伝子は、クラスタ#4においても同じようにダウンレギュレートされる(図1B)。をするα1カテニン(CTNNA1)、チューブリンβ-5(TUBBS)、およびNedd4ファミリー相互作用タンパク質1(NDFIP1)をコードする遺伝子は、ダウンモジュレートされる遺伝子だけであり、クラスタ#4および#15の両方において上位40内にあった。
【0116】
AMLおよびEVI1過剰発現
AMLの分離されたクラスタ(#10)が同定され、その中の44%(10/22症例(追加のデータ(表J))がEVI1の発現が増大されたことを示した。クラスタ#10における異常なEVI1の発現は、第7染色体異常と相関した(6/10 EVI1陽性の症例)。患者のこの完全な群は、遺伝子の選択に基づいて識別することができ、全ての患者が、EVI1陰性の症例でさえも、共通の経路に異常を有することを示唆する。また、クラスタ#8は、比較的多数の第7染色体異常を含むが(5/13症例、追加のデータ(表H))、これは、クラスタ#10と比較して異なる分子特徴を示した(図1B)。これは、EVI1および/またはEVI1関連タンパク質の高発現がクラスタ#10の分子プロフィールを決定することを示唆する。また、不均一なクラスタ#1内の14症例のうちの4つでは、EVI1発現が増大されていることを証明した。これらの分子特徴は、EVI1過剰発現および11q23異常の結果である可能性が最も高いため、これらの患者は、クラスタ#10外のクラスタであるかもしれない。
【0117】
FLT3突然変異をもつAML
FLT3受容体遺伝子に突然変異をもつ患者群が、Correlation View内に認識された(図1B)。実際に、クラスタ#2および#6は、単にFLT3 ITDをもつ患者からなるだけである。面白いことに、これらの患者のほぼ全員が正常な核型を有する。加えて、FLT3 ITD突然変異状態は、いくつかのクラスタを2つの群、たとえばクラスタ#3、#5およびt(15;17)をもつAML(#12)に分けるようである。FLT3 ITDをもつAMLのその他の個々の症例では、AML患者の全ての群以上に散在性であった。FLT3のチロシンキナーゼ・ドメイン(TKD)に突然変異をもつAML患者は、クラスタ形成しなかった。同様に、小GTPase RAS(N-RASおよびK-RAS)のコドン12、13、または61に突然変異をもつ患者は、明らかな特徴を有さず、Correlation Viewにおいて凝集しない(図1B)。
【0118】
その他の独特のAMLクラスタ
正常な核型をもつAML患者は、割り当てられたクラスタ(図1B)内のいくつかの分群においてクラスタ形成した。実際に、クラスタ#11の大部分の患者は、さらなる一致した異常を何らもたない正常な核型を有する。いずれの公知の細胞遺伝学的または分子異常でも注釈をつけることができなかったその他の独特のクラスタ、すなわちクラスタ#3、#5、#7、#8、および#14が同定された。クラスタ#5は、主にFrench-American-British(FAB)分類M4またはM5サブタイプに属するAML患者を含み(図1B)、形態がこの分群の中でこれらの場合を分類するための主な決定因子であったことを示唆する。クラスタ#3、#7、#8、#11、および#14は、1つのFABサブタイプに属しないが、異なる遺伝子発現プロフィールに基づいて識別することができるAML症例を含む。
【0119】
AMLにおける種々のクラスタのクラス予測
全286のAML症例を無作為化して、トレーニング・セット(n=190)およびバリデーション・セット(n=96)に分けた。AMLにおいて予後判定値1、すなわちt(8;21)、inv(16)、t(15;17)、11q23(クラスタ#16)、EVI1/一染色体性7(クラスタ#10)、cEBPα(クラスタ#4および#15)(表3)をもつ明確な異常を予測するための遺伝子の最小数を決定するために、データセットに対してPAMを適用させた。加えて、FLT3 ITD突然変異は、頻繁にAMLに異常があり、かつ不十分な結果と関連するので2、AMLにおけるFLT3 ITD突然変異を予測する遺伝子の最小のセットも同定した。
【0120】
バリデーション・セット内の好ましい細胞遺伝的性質をもつ全ての患者は、100%の精度で予測されたが、ほんのわずかの遺伝子だけであった(表3)。SAM解析から予想されるとおり、t(8;21)に対するETO、inv(16)に対するMYH11、およびt(15;17)に対するHGFも、最も予測的な遺伝子の一つであった(追加のデータ(表Q))。面白いことに、クラスタ#10(EVI1/一染色体性7)は、高い精度で予測されたが、クロス・バリデーションエラーが10倍高い。クラスタ#16(11q23)は、かなり高い精度で予測された。クラスタ#15(cEBPα)は、ほんのわずかの患者だけからなり、本発明者らは、両cEBPαクラスタを合わせた。これらの2つのクラスタは、その後、かなり高い精度でバリデーション・セット内において予測することができた。FLT3 ITDクラスタのための高度に予測的な特徴は、調査したAML患者のコホート内の発現プロファイリングによって定義することができない。
【0121】
表3(下記)は、PAMを使用するクラス予測を示す(10倍CVエラー:トレーニング・セット(n=190)に対して10倍のクロス・バリデーション予測エラー、エラーバリデーション・セット:バリデーション・セット(n=96)に対する予測エラー、#プローブ・セット:予測のために使用したプローブ・セットの数、#遺伝子:予測のために使用したプローブ・セットによって表される遺伝子の数。プローブ・セットおよび遺伝子の同一性については、追加のデータ(表Q)を参照されたい。*ランダム化後、cEBPαクラスタ#15からのAML患者は、バリデーション・セットに含めなかった。
【0122】
生存率解析
>20症例を含むクラスタ、すなわちクラスタ#5(M4/M5)、#9(inv(16))、#10(EVI1/一染色体性7)、#12(t(15;17))、および#13(t(8;21))からのAML患者の全体の生存(OS)、イベントフリー生存(EFS)、および再発率(RR)をCorrelation Viewにおいて決定した。完全な臨床データセットがある患者を生存率解析に含めた(図2)。好ましい細胞遺伝的性質をもつ患者の60ヶ月における平均保険統計のOSおよびDFS確率は、それぞれ62%(±8.7%)および50%(±2.4%)であった。クラスタ#5に含まれるAML患者は、中間の生存を有したが(OS 27%およびEFS 32%)、他方では、クラスタ#10からの患者は、再発発症率が増大された結果として、主に不十分な治療反応(OS 6%(P=0.001)およびEFS 18%(P=0.004))を示した(図2C)。
【0123】
考察
本明細書に提示した研究の結果は、発現プロファイリングの顕著な診断の影響を示す。かなりの遺伝的多様性をもつAMLの中で、発現プロファイリングは、これらの非常に変わりやすい遺伝的サブセットを異なる特徴をもつクラスタに区別するためのアプローチを提供する。AML患者は、教師なしピアソン相関係数解析によるこれらの遺伝子発現プロフィールに基づいて、16群に分類された。結果は、割り当てられたクラスタのそれぞれが、特異的な分子特徴をもつ真のAML分群を表すことを示している。
【0124】
第1に、核型分析によって認識することができない患者を含む、t(8;21)(AML1/ETO)、inv(16)(CBFβ/MYH11)、またはt(15;17)(PML/RARα)をもつ全症例を、独特の遺伝子発現プロフィールをもつ3つの別々のクラスタにクラスタ形成することができる。遺伝子発現プロフィールと好ましい細胞遺伝的性質異常との間の独特の相関は、従来技術において示されていたが(Debernardi et al., 2003; Schoch et al., 2002)、本明細書において、本発明者らは、これらの患者がAML患者の代表的コホート内で高い精度でさらに認識することができることを証明する。
【0125】
第2に、マイクロアレイの有意差解析(SAM)およびマイクロアレイの予測解析(PAM)では、種々の割り当てられたクラスタについて同定された特異的遺伝子間の強力な一致を示したことから、本発明者らは、本発明者らが割り当てた全てのクラスタについて真に判別可能な遺伝子を同定したことが証明される。たとえば、本発明者らは、重複した特徴をもつ2つの異なるクラスタ(#4および#15)を同定し、これらはいずれも、正常核型およびcEBPαに突然変異をもつ症例を含んだ。複数の遺伝子が両サブクラスにおいてダウンレギュレートされるように見えたが、その他のいかなるAML分群も影響を受けなかった。
【0126】
第3に、SAMおよびPAMによって同定される判別可能な遺伝子は、加えて、AMLの病態生理学にとって重要な特異的な機能的経路を明らかにし得る。これは、t(8;21)をもつAMLにおけるIL5Rα(Touw et al., 1991)およびFLT3 ITD突然変異をもつAMLにおける真のFLT3/STAT5標的のIL2Rα(Kim et al., 2001)およびPIM1(Lilly et al., 1992)などのAMLの特異的サブタイプに関係するいくつかの機能的に重要な遺伝子の同定によって示唆される。
【0127】
5つのクラスタ(#5、#9、#10、#12、および#13)の20症例以上を療法の結果に関して評価した。予想通りに、クラスタ#9(CBFα/MYH11)、#12(PML/RARα)、および#13(AML1/ETO)には、療法に対して好ましい応答をもつ症例を含んだ。しかし、クラスタ#10に属する症例では、異なった不十分な結果を示した。このクラスタの患者は、遺伝子の最小限のセットでの独立したバリデーション・セットにおいて高い精度で予測することができた。不十分な予後のマーカー、たとえば-7(q)、-5(q)、t(9;22)が高頻度であること、または高いEVI1は、このクラスタが悪いリスクAML群を表すという観察と一致する。しかし、クラスタには、種々の遺伝的に定義されたリスクの乏しいマーカーをもつAML症例を含むので、また症例のうちのかなりの部分がこれらの病変のいずれをも発現しなかったので、これは、AML患者のこのクラスタの分子特徴によって表される独特の経路が、悪い結果と関連することを示唆する。
【0128】
この仮説は、同じリスクの乏しいマーカーをもつ多くの症例がその他のクラスタ(#1、#2、#8、および#16)にも存在するという事実によって、さらに強化される。クラスタ#10由来のAML症例においてアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる遺伝子の解析により、経路がAML患者のこの分群の病態生理に関与することを予測し得る。また、これにより、異なった不十分な予後マーカーをもつその他の症例が、異なるクラスタにグループ化されるという知見の解明に役立つかもしれない。残念なことに、これらの後者の群は、治療結果の正確な解析のためには、あまりにも少なすぎた。
【0129】
クラスタ#5の44人のAML患者は、中間の生存評価を示した。これらの症例は、AML FAB-M4 または-M5サブタイプに属するので、単球/マクロファージ関連遺伝子が、主にこれらの症例のクラスタリングを駆動した可能性がある。正常核型をもつAML FAB-M4またはM5症例のみにおけるより多数の教師なしクラスタリングにより、独特の遺伝子発現プロフィールおよびおそらく可変性予後をもつ特異的分群が同定され得る。
【0130】
主に正常核型をもつ患者からなる3つのクラスタが同定された。また、これらのクラスタ(#2および#6)の2つのうちの大部分の患者は、FLT3 ITD突然変異によって特徴づけられるが、判別可能な分子特徴をもつクラスタ#11の患者は、何ら一貫した異常を含まなかった。
【0131】
混合系統白血病遺伝子を含む欠陥を示す11q23異常が潜む2つのクラスタ(#1および#16)が認識された。これらの2つの分群の分別についての理由は、異なったクラスタの症例において異なるさらなる遺伝子欠損が異なる遺伝子発現プロフィールを生じさせることによって生じる可能性が最も高い。クラスタ#1では、この異常により、EVI1の高発現が頻繁に観察され得るが、クラスタ#16由来のAML症例では明らかではない。同様の説明は、クラスタ#4および#15のAML症例(両方ともcEBPα突然変異体症例を含む);クラスタ#1および#10のAML患者(高いEVI1発現)、またはクラスタ#8および#10における患者(頻繁に一染色体性7をもつ)についても維持され得る。これらのクラスタのそれぞれが、このような異なった分子特徴を表すという事実を考慮すると、おそらくたいていは、特徴的な遺伝的病変のない症例では、同じ経路に影響を及ぼすその他の現在未同定の突然変異が、遺伝的プロフィールの原因となることを意味する。
【0132】
FLT3遺伝子における内部タンデム複製(ITD)は、臨床結果に悪影響を与える(Levis & Small, 2003)。構成的に活性化されたFLT3受容体によって誘導される分子特徴は、その他の症例由来のFLT3 ITDを有するAML患者を区別するほど十分に強力ではないように見える。しかし、割り当てられたクラスタ内のFLT3 ITD陽性患者のクラスタ形成は、APL分群(クラスタ#12)の症例と同様に、FLT3 ITDが存在すると、1タイプの疾患内に異なる生物学的実体を生じることを示す。
【0133】
この目的のために、本発明者らの研究は、特徴的な遺伝子発現特徴をもつAMLの細胞遺伝学的に公知のクラスタ、並びに新たなクラスタを1回の単一のアッセイ法で同定することができることを証明する。ゲノム全体の解析の品質は、配列注釈が改善された新規の完全ゲノム・アレイが入手可能性、並びにより精巧なプロトコルおよびソフトウェアの開発によりさらに進歩して、遺伝子発現の微妙な相違の解析および包括的経路予測が可能になると考えられる。これらの研究は、AMLの病態生理に関与する経路の本発明者らの理解を増大すると共に、診断法を改善して、おそらく疾患に関連した経路を妨害する抗癌剤の開発の先鞭をつけるであろう。
【0134】
実施例2
新規AML患者の解析
患者および細胞試料
一次AMLの診断を有する適格患者は、血液および骨髄の細胞診断によって確認した。芽球および単核細胞は、Ficoll-Hypaque(Nygaard, Oslo, Norway)遠心分離によって精製すべきである。1:1希釈した末梢血または1:4希釈した骨髄の両方の20〜25mlまでのPBS溶液を、15mlのFicoll-Hypaqueに添加する。1880rpmにて15分回転させる。単核細胞を含む中間層を収集し、PBS(総体積50ml、8分、2000rpm)で2回洗浄する。ペレットには、芽球を含む単核細胞を含む。その結果、AML試料は、診断における芽球カウントに関係なく、80〜100パーセントの芽球を含むはずである。30. 106細胞/mlを1vol PBS/1vol 熱不活性化FCS/0.5vol DMSO中で凍結して、液体窒素中で貯蔵すべきである。
【0135】
RNA単離および品質管理
解凍後、細胞をハンクス平衡塩類溶液で一度洗浄した。高品位の総RNAは、グアニジウムイソチオシアナートでの溶解、続く塩化セシウム勾配精製によって抽出されるはずである。RNA濃度、品質、および純度は、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent, Amstelveen, The Netherlands)でのRNA 6000ナノアッセイを使用して調べられるはずである。試料は、RNA分解(28S/18SrRNA比>2)またはDNAによる混入を示さないはずである。
【0136】
遺伝子プロファイリングおよび品質管理
アンチセンス・ビオチン化RNAを調製するためには、10μgの総RNAを使用すべきである。一本鎖cDNAおよび二本鎖cDNAは、T7-(dT)24-プライマー(Genset Corp, Paris, France)を使用して製造業者のプロトコル(Invitrogen Life Technologies, Breda, The Netherlands)に従って合成すべきである。インビトロでの転写は、ビオチン-11-CTPおよびビオチン-16-UTP(Perkin Elmer, Hoofddorp, The Netherlands)並びにMEGAScript T7標識化キット(Ambion, Cambridgeshire, UK)で行うべきである。二本鎖cDNAおよびcRNAは、GeneChip(登録商標)Sample Cleanup Module(Affymetrix, Santa Clara, CA)で精製して、分解するべきである。ビオチン化RNAは、Affymetrix U133A GeneChip(登録商標)にハイブリダイズさせるべきある(16時間、45℃)。試料は、Affymetrix U133AまたはU133 Plus2.0 GeneChips(登録商標)を使用して解析すべきである。U133A GeneChip(登録商標)は、22283個のプローブ・セットを含み、約13000個の遺伝子を示す。また、これらのプローブ・セットは、U133 Plus2.0 GeneChip(登録商標)から選択することもできる。染色、洗浄、および走査手順は、GeneChip(登録商標)Expression Analysis Technical Manual(Affymetrix, Santa Clara, CA)に記載されているように実施すべきある。全てのGeneChips(登録商標)を、異常について視覚的に検査すべきである。スケーリング/規準化の包括的方法を適用し、全てのGeneChips(登録商標)のスケーリング/規準化因子間の相違を100の標的遺伝子強度までにすべきである(基準値n=285:スケーリング因子=0.70、SD 0.26)。品質-存在する遺伝子パーセントの全てのさらなる測定値(基準値n=285:50.6±3.8)、アクチン5'に対する3'比(基準値n=285:1.24±0.19)、およびGAPDH 5'に対する3'比(基準値n=285:1.05±0.14)は、全体的に高い試料およびアッセイ品質を示すべきである。
【0137】
参照データセット
285人のAML患者の参照データセット(遺伝子発現データ並びに詳細な臨床および分子データ)は、Gene Expression Omnibus(www.ncbi.nlm.nih.gov/geo, accession number GSE1159)からダウンロードされるはずである。
【0138】
データ規準化、解析、および可視化
全ての強度値(参照セット(n=285)および新たなAML患者が含まれる)は、Affymetrix Microarray Suit (MAS5.0)において利用できる包括的スケーリング/規準化法に従って、GeneChips(登録商標)あたり100の平均値に調整すべきである。その他の全ての設定は、製造業者に従ったデフォルトであるべきである。
【0139】
本発明者らの方法は、確実に平均強度値>30で試料を同定するが、0〜<30の値を確実に区別せず、これらの値は、30にセットすべきである。
【0140】
それぞれのプローブ・セットについて、全ての患者試料のハイブリダイゼーション強度の幾何平均を算出すべきである。あらゆる試料中のそれぞれのプローブ・セットの発現レベルをこの幾何平均と比較して決定し、log2に変換して、幾何平均に対して同様の相対距離をもつ遺伝子発現レベルと同量とみなした。その後、変換した発現データをOmnivizにインポートすべきである。
【0141】
Omnivizのピアソン相関可視化ツール(Maynard, MA (version 3.6))-教師なしクラスタ解析を行い、視覚化するためには、Omnivizパッケージを使用すべきである。患者の分子的に認識できる特定の群のクラスタリングは、参照セット(n=285)および解析する新たな患者を考慮して、2856プローブ・セットで調査すべきである(表1)。
【0142】
参照文献



【0143】
(表1)286人の患者のAMLをCorrelation Viewで同定されたとおりに定義されたクラスタに分類するために使用した約2856個の遺伝子













































【0144】
(表2)SAMによって同定されたAMLの割り当てられたクラスタを定義する約599遺伝子










【0145】
(表3)

【0146】
(表4)新規AMLである286人の患者の臨床的および分子特徴

【0147】
(表5)

(++:100%のクラスタリング、+:≦2の認識できるクラスタのクラスタ形成、+/-:≧2の認識できるクラスタのクラスタ形成、-:クラスタ形成なし)
【0148】
(表6)クラスタ#1の特徴(患者の患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関連した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0149】
(表7)クラスタ#2の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)および正常な核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0150】
(表8)クラスタ#3の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)および正常な核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0151】
(表9)クラスタ#4の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0152】
(表10)クラスタ#5の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常な核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)


【0153】
(表11)クラスタ#6の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0154】
(表12)クラスタ#7の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0155】
(表13)クラスタ#8の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0156】
(表14)クラスタ#9の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、BP:inv(16)限界点、RT:CBFβ-MYH11のためのリアルタイムPCR(プライマーCBFβ 5'-AAGACTGGATGGTATGGGCTGT-3'(センス)、プライマー126REV 5'-CAGGGCCCGCTTGGA-3'(アンチセンス)、プローブCBFβ 6-FAM 5'-TGGAGTTTGATGAGGAGCGAGCCC-3'TAMRA);FLT3 ITD:FLTSの内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0157】
(表15)クラスタ#10の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPRA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0158】
(表16)クラスタ#11の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;l6)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0159】
(表17)クラスタ#12の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:PML-RARαのためのリアルタイムPCR(プライマーPML3-for 5'-CCCCAGGAGCCCCGT-3'(センス)、プライマーPML-kbr 5'-CCTGCAGGACCTCAGCTCTT-3'(センス)、プライマーRAR4-rev 5’.-AAAGCAAGGCTTGTAGATGCG-3'(アンチセンス)、プローブRARA 6-FAM 5'-AGTGCCCAGCCCTCCCTCGC-3'TAMRA);FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

*患者322の完全核型:46,XX,add(12)(p1?3)
【0160】
(表18)クラスタ#13の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:AML1-ETOのためのリアルタイムPCR(プライマー 821 For 5'-TCACTCTGACCATCACTGTCTTCA-3'(センス)、プライマー821 Rev 5'-ATTGTGGAGTGCTTCTCAGTACGAT-3'(アンチセンス)、プローブETO 6-FAM 5'-ACCCACCGCAAGTCGCCACCT-3'TAMRA);FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0161】
(表19)クラスタ#14の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0162】
(表20)クラスタ#15の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL))、複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0163】
(表21)クラスタ#16の特徴(患者:患者番号、クラスタ:クラスタ番号(2856プローブ・セット);FAB:AMLのFABサブタイプ;核型:t(15;17)、t(8;21)、inv(16)/t(16;16)、+8、+11、+21、-5(q)、-7(q)、t(9;22)、3q異常、11q23異常(転位置/自己融合(sMLL)))複合体(関与した異常)(>3異常)、および正常核型(NN)を示してある、RT:リアルタイムPCR;FLT3 ITD:FLT3の内部タンデム複製;FLT3 TKD:FLT3のチロシンキナーゼドメイン突然変異;N-またはK-RAS:N-またはK-RASのコドン12、13、または61の突然変異;EVI1:EVI1過剰発現;CEPBA:CEBPAの突然変異、ND:未決定)

【0164】
(表22)割り当てられたクラスタのそれぞれの中の全てのAML患者の細胞遺伝学的および分子異常の頻度および割合。特定の異常をもつ全ての患者は、さらなる異常の存在にかかわりなく考慮した(NC:16クラスタのいずれにも割り当てられていない患者)

【0165】
(表23)クラスタ#1の上位40遺伝子

【0166】
(表24)クラスタ#2の上位40遺伝子

【0167】
(表25)クラスタ#3の上位40遺伝子

【0168】
(表26)クラスタ#4の上位40遺伝子

【0169】
(表27)クラスタ#5の上位40遺伝子

【0170】
(表28)クラスタ#6の上位40遺伝子

【0171】
(表29)クラスタ#7の上位40遺伝子

【0172】
(表30)クラスタ#8の上位40遺伝子

【0173】
(表31)クラスタ#9の上位40遺伝子

【0174】
(表32)クラスタ#10の上位40遺伝子

【0175】
(表33)クラスタ#11の上位40遺伝子

【0176】
(表34)クラスタ#12の上位40遺伝子

【0177】
(表35)クラスタ#13の上位40遺伝子

【0178】
(表36)クラスタ#14の上位40遺伝子
(有意な遺伝子は同定されず)
【0179】
(表37)クラスタ#15の上位40遺伝子

【0180】
(表38)クラスタ#16の上位40遺伝子

【0181】
(表39)予後に重要なクラスタ(#13、#12、#9、#16、#10、#4、#15、#4、および#15、並びにFLT3ITD)のPAM遺伝子




【図面の簡単な説明】
【0182】
(図1) パネル(A)では、286人のAML患者のCorrelation Viewを示す。Correlation Viewツールは、試料間の対での相関にを示す。可視化の際の患者試料は、ピアソン相関係数値により着色され、濃色は、より強くポジティブ(赤い)またはネガティブ(青い)な相関を示し、患者集団内の不均一性を反映する分群を指し示す根底にある経路の類似性を示す。スケール・バーは、100%の抗相関(青い)から100%の相関(赤い)を示す。相関パターンを明らかにするために、マトリックス配列法を適用して試料を再編成する。配列アルゴリズムは、最も相関された試料対で開始して、反復プロセスを介して、全ての試料を相関されたブロックにソートする。それぞれの試料が、秩序ある様式でブロックに連結され、その結果、中心にて最も相関された試料をもつブロック内に相関傾向が形成される。次いで、ブロックを同様の秩序ある様式でプロット線の対角線に沿って配置する。
図1のパネル(B)では、286人のAML患者の適応されたCorrelation View(右パネル)および患者の16の個々の集団を定義する上位40遺伝子(左パネル)を示す。Correlation Viewを基礎として同定される全16のクラスタを示してある(1〜16)。細胞遺伝学に基づくFAB分類および核型は、Correlation Viewの本来の対角線に沿って列に示してある(FABMl-緑、M2-紫、M3-オレンジ、M4-黄色、M5-青、M6-灰色;核型:正常-緑、inv(16)-黄色、t(8;21)-紫、t(15;17)-オレンジ、11q23異常-青、その他-灰色)。FLT3 ITD(FLT3 TKD)N-RAS、K-RAS、およびcEBPα突然変異、並びにEVI1過剰発現を列の同一セットに示してある(赤いバー:ポジティブおよび緑のバー:ネガティブ)。16のクラスタのそれぞれにおいてマイクロアレイの有意性解析(SAM)解析によって同定された上位40遺伝子の発現レベルは、左パネルに視覚化してある。スケール・バーは、全ての試料の幾何平均と比較して、4倍のダウンレギュレーション(緑の)から4倍のアップレギュレーション(赤い)を示す。
(図2) クラスタ#5(M4/M5)、クラスタ#9(inv(16))、クラスタ#10(EVI1/一染色体性7)、クラスタ#12(t(15;17))、およびクラスタ#13(t(8;21))のAML患者における全体の生存(パネルA)、イベントフリー生存(パネルB)、およびCR後の再発率(パネルC)を示し、多様な遺伝的異常と関連し、かつ予後影響を有する急性骨髄性白血病の発現プロフィールを示している。
(図3) Omniviz Correlation Viewを読み込む方法に対する指針を提供する。図は、286人のAML患者(2856プローブ・セット)のコホートのCorrelation ViewおよびFAB分類を示す(図の右側縁)。合計16の異なるクラスタを図の右縁の上に同定することができる。X軸およびY軸は、上から下まで、および左から右まで、それぞれ種々のクラスタ1〜16の領域を示す。クラスタ#5と#16との間の例示的な相関を長方形によって示してある。両クラスタは、主にAML-M5(見えない)からなり、相関する。しかし、これらは、別々のクラスタを形成する。たとえば、単にAML-M2を含むだけであるクラスタ5とクラスタ#13との間の抗相関は、破線の長方形によって示してある。あらゆる個々の(サブ)クラスタ間の相関および抗相関間は、Correlation Viewから抽出することができ、(サブ)クラスタは、その後に、、たとえば、クラスタ#6、#7、および#8(点線)に割り当てることができる。FAB:M0-明るい緑、Ml-緑、M2-ピンク、M3-オレンジ、M4-紫、M5-ターコイズ、M6-黄色(数と共に)。
(図4−図10) 異なるプローブ・サブセットでOmnivizを使用して、ピアソン相関係数解析を支持する結果を提供する。Correlation Viewにおいて、全286人の患者を全286人のAML患者に対してプロットする。細胞遺伝学に基づくFAB分類および核型は、Correlation Viewの本来の対角線に沿って列に示してある(FAB M0-赤、Ml-緑、M2-紫、M3-オレンジ、M4-黄色、M5-青、M6-灰色;核型:正常-緑、inv(16)-黄色、t(8;21)-紫、t(15;17)-オレンジ、11q23異常-青、7(q)異常-赤、+8-ピンク、複合体-黒、その他-灰色)。FLT3 ITD(FLT3 TKD)N-RAS、K-RAS、およびcEBPα突然変異、並びにEVI1過剰発現を列の同一セットに示してある(赤いバー:ポジティブおよび緑のバー:ネガティブ)。
図4:147プローブ。
図5:293プローブ・セット。
図6:569プローブ・セット。
図7:984プローブ・セット。
図8:1692プローブ・セット。
図9:2856プローブ・セット。
図10:5071プローブ・セット。
(図11) 潜在性のinv(16)であるAML患者のサザンブロット分析を示す。サザンブロット解析は、Correlation View(図1)において、AML(WT、inv(16)なし)、公知のinv(16)限界点(A型およびE)をもつAML、並びに全ての公知のAMLおよびinv(16)患者と共にクラスタ形成された3人の患者の材料に対するミオシン重鎖11特異的プローブ(NT010393、136753-137404nt)で実施した。
(図12) AMLおよび対照の286症例におけるAffymetrix GeneChip解析によって定まるMYH11の発現を示す。MYH11の発現レベルは、AML患者およびinv(16)において高かったが、その他のAML患者、CD34-ポジティブ細胞、および正常骨髄では、低レベルで検出された。
(図13) AML-M3 t(15;17)患者を示すCorrelation Viewのスナップショットを示す。FAB M2-紫、M3-オレンジ、M4-黄色。核型:正常-緑、t(15;17)-オレンジ、その他-灰色。AML-M3 t(15;17)患者は、2つの基、すなわち低白血球数(WBC)かつFLT3 ITDネガティブ(緑のバー)対高WBC/FLT3 ITDポジティブ(赤いバー)に分けられる。核型は、細胞遺伝学に基づいており、WBCは、10(細胞/l)として示してある。
(図14) AMLおよび対照の286症例におけるAffymetrix GeneChip解析によって定まるETOの発現を示す。ETOの発現レベルは、AML患者およびt(8;21)において高かったが、その他のAML患者、CD34-ポジティブ細胞、および正常骨髄では、低レベルで検出された。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15−a】

【図15−b】

【図15−c】

【図15−d】

【図15−e】

【図15−f】

【図15−g】

【図15−h】

【図15−i】

【図15−j】

【図15−k】

【図15−l】

【図15−m】

【図15−n】

【図15−o】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むAMLのための分類スキームを制作するための方法:
a)AMLに冒された複数の参照被検者由来の細胞試料を含む、複数の参照試料を提供する工程;
b)該参照試料のそれぞれに関する遺伝子発現プロフィールを個々に確立することによって、参照プロフィールを提供する工程;
c)以下を含む統計的手法に従って、該個々の参照プロフィールをクラスタリングする工程:
(i)K平均クラスタリング;
(ii)階層的クラスタリング;および、
(iii)ピアソン相関係数解析;並びに、
d)それぞれのクラスタにAMLクラスを割り当てる工程。
【請求項2】
遺伝子発現プロフィールのクラスタリングが、差動的に発現された遺伝子の情報に基づいて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子発現プロフィールのクラスタリングが、表1の、より好ましくは表2の遺伝子の情報に基づいて行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
以下の工程を含む、AMLに冒された被検者のAMLを分類するための方法:
a)AMLのための分類スキームを、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法に従ってこのようなスキームを制作することによって提供する工程;
b)該被検者についての遺伝子発現プロフィールを確立することによって、被検者プロフィールを提供する工程;
c)参照プロフィールと共に被検者プロフィールをクラスタリングする工程;
d)該スキームにおいて、参照プロフィールの中で該被検者プロフィールにおいてクラスタ形成した位置を決定する工程、および
e)該被検者プロフィールが参照プロフィールの任意のクラスタ内にある場合は、該クラスタ形成した位置に対応するAMLクラスを該被検者の該AMLに割り当てる工程、または該被検者の該AMLに新たなAMLクラスを割り当てる工程。
【請求項5】
以下の工程を含む、被検者におけるAMLを診断するための方法:
a)請求項1〜3のいずれか1項記載の方法に従ってAMLに関する分類スキームを制作する工程;
b)その発現レベルが、該スキーム内の種々のAMLクラスの中の対応するAMLクラスのクラスタ形成した位置を特徴づける遺伝子を選択することによって、それぞれのクラスタに関してクラスタ特異的遺伝子を定義する工程;
c)被検者における該クラスタ特異的遺伝子の1つまたは複数の発現レベルを決定する工程;
d)該被検者における該クラスタ特異的遺伝子の発現レベルが、個々のAMLクラスを特徴づける発現レベルに対して十分な類似性を共有するどうかを証明し、これにより該被検者における該クラスに対応するAMLの存在を決定する工程。
【請求項6】
クラスタ特異的遺伝子が、表1の遺伝子の1〜3000遺伝子のセット、より好ましくは表1の遺伝子の1〜600遺伝子のセット、さらに好ましくは表1の遺伝子の1〜50遺伝子のセットを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
クラスタ特異的遺伝子が、表2の遺伝子の1〜600遺伝子のセット、さらに好ましくは表2の遺伝子の1〜50遺伝子のセット、およびなおさらに好ましくは表2の遺伝子の1〜25遺伝子のセットを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
クラスタ特異的遺伝子が、表3の遺伝子から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含む、AMLに冒された被検者に関しての予後を決定するための方法:
a)AMLに関しての分類スキームを、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法に従ってこのようなスキームを制作することによって提供する工程;
b)該クラスに含まれるAML被検者に関する病歴に基づいて該スキームにおけるそれぞれのAMLクラスに関しての予後を決定する工程;
c)請求項5〜8のいずれか1項記載の方法に従って該被検者におけるAMLを診断することによって、または請求項4記載の方法に従って該被検者におけるAMLを分類することによって、AMLに冒された被検者のAMLクラスを証明する工程;および、
d)該AMLに冒された被検者の確立されたAMLクラスに対応する予後を該被検者に割り当てる工程。
【請求項10】
以下の工程を含む、AMLに冒された被検者に関しての予後を決定する方法:
a)該被検者の単核細胞由来のRNAを単離する工程;
b)工程a)のRNAに対するアンチセンスのビオチン化RNAを調製する工程;
c)Affymetrix U133AまたはU133 Plus2.0 GeneChips(登録商標)に対して、該アンチセンスのビオチン化DNAをハイブリダイゼーションする工程;
d)計測値を表1の遺伝子セットに関して規準化する工程;
e)得られたデータを(www.ncbi.nlm.nih.gov/geo, accession number GSE1159)から入手できる参照データと共にクラスタ形成する工程;および、
f)被検者のデータがクラスタリングされているサブグループ/クラスタに基づいて予後を決定する工程。
【請求項11】
AMLに冒された複数の参照被検者から得られる遺伝子発現プロフィールの類似性クラスタリングに基づいて区別された複数の異なるAMLクラスを含む、AMLのための分類スキーム。
【請求項12】
患者由来の生体試料を、表1、2、または3に示した配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%同一の配列に対して選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドと接触させる工程を含む、患者由来の細胞におけるAML関連転写物を検出する方法。
【請求項13】
ポリヌクレオチドが、表1、2、または3に示した配列と少なくとも95%同一の配列に対して選択的にハイブリダイズする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが、表1または2に示した配列を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
生体試料が組織試料である、請求項12〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
生体試料が単離された核酸、たとえばmRNAを含む、請求項12〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ポリヌクレオチドが、たとえば蛍光標識で標識されている、請求項12〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ポリヌクレオチドが固体表面上に固定されている、請求項12〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
表1から選択されるAML関連遺伝子の1つまたは複数に対して、好ましくは表2から選択される遺伝子の1つまたは複数に対して、より好ましくは表3から選択される遺伝子の1つまたは複数に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項20】
請求項19記載の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも25個、なおもより好ましくは少なくとも100個のオリゴヌクレオチドプローブを含む、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ。
【請求項21】
請求項20記載のオリゴヌクレオチドマイクロアレイと、AML参照発現プロフィールのデータベースと共に該マイクロアレイを使用することにより決定される遺伝子発現プロフィールを比較するための手段とを含む、パーツキット(kit-of-parts)。

【公表番号】特表2007−527238(P2007−527238A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500702(P2007−500702)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000134
【国際公開番号】WO2005/080601
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506287176)エラスムス ウニベルジテート ロッテルダム (1)
【Fターム(参考)】