遺伝子破壊株を用いた化学物質検定方法
検体試料中の化学物質の存在を検定するための、微生物の細胞応答を利用したバイオアッセイ法において、より高感度の方法を提供する。
本発明の方法は、特定の遺伝子破壊株を使用することを特徴とする。
本発明の方法は、特定の遺伝子破壊株を使用することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環境中の試料中に存在する化学物質を検定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類がこれまでに作りだした化学物質は膨大な数にのぼり、さらに年々新しい化学物質が開発されている。これら化学物質は現代生活のあらゆる面で利用され、人類の生活向上に役立っている。その反面、化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄等の様々な段階で環境中に放出され、環境での残留、食物連鎖による生物学的濃縮などを通じ、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあり、環境汚染は社会問題化している。よって、化学物質について人体や生態系に与える影響を評価する要請がある。
被検試料中に存在する化学物質を検出する場合、検出システムの検出感度を向上させることは非常に重要である。被検試料中に低濃度の化学物質しか存在しない場合、低濃度の化学物質を検出するために用いる検出システムの検出感度に応じ、被検試料を濃縮しなければならない。しかし、環境試料のような水溶液の濃縮を行うには濃縮装置が必要となる。また、対象とする化学物質が揮発性の場合、濃縮操作により化学物質が消失してしまうことがある。このため、できるかぎり濃縮操作の必要が無い検出システム、すなわち高い検出感度を有するアッセイ系が望まれる。
環境中に存在する化学物質の検出に酵母細胞の毒性応答を利用するアッセイ系がある(特許文献1および2)。
【0003】
【特許文献1】WO 03/018792
【特許文献2】特開2003-061676
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、これまで上記特許文献1および2に示すように化学物質によって誘導される遺伝子情報を蓄積し、酵母細胞の毒性応答を利用したバイオアッセイ法を検討してきた。バイオアッセイによる化学物質の検出感度は指標とする細胞や生物の化学物質に対する感受性に依存する。従って、酵母細胞の毒性応答を利用したバイオアッセイ法において、より高感度のシステムを構築するためには、より感受性の高い酵母細胞を利用する必要がある。そこで、酵母の遺伝子6000種類の遺伝子破壊株の中でホモ接合の二倍体として生育可能な遺伝子破壊株約4800種類の中から、化学物質検出のアッセイ系に適した化学物質感受性を有する遺伝子破壊株を選択した。
本発明は、微生物の毒性応答を利用したバイオアッセイ法において、より高感度の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
(1) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための方法であって、該被検試料の存在下に微生物の遺伝子破壊株を培養し、その化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答を指標に用いることを特徴とする方法、好ましくは、
化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答が、細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である方法、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化がRNA量またはmRNA量の変化である方法、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する方法、
【0006】
(2)微生物が酵母である、上記(1)の方法、好ましくは、
破壊される遺伝子が、公的データベース:MIPSの分類に従い、
代謝(01)のアミノ酸代謝(01.01)、窒素および硫黄代謝(01.02)、ヌクレオチド代謝(01.03)、リン酸代謝(01.04)、C-化合物および炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸およびイソプロパノイド代謝(01.06)、ビタミン、コファクターおよび補欠分子族の代謝(01.07);
細胞周期とDNAプロセッシング(03)のDNAプロセッシング(03.01)、細胞周期(03.03);
転写(04)のmRNA 転写(04.05)、RNA 輸送(04.07);
蛋白合成(05)のリボゾーム生合成(05.01)、翻訳制御(05.07);
蛋白フェイト(06)の蛋白ターゲッティング、局在、転位(06.04)、蛋白修飾(06.07)、蛋白複合体のアセンブル(06.10)、蛋白分解的崩壊(06.13);
細胞内輸送と輸送機構(08)の核輸送(08.01)、小胞輸送 (ゴルジネットワーク他.)(08.07)、液胞輸送(08.13)、細胞移入(08.19)、細胞骨格輸送(08.22)、他の細胞内輸送活性(08.99);
細胞レスキュー, 防御と病原性(11)のストレス応答(11.01)、解毒(11.07);
細胞内環境調節/相互作用(13)のイオン性ホメオスタシス(13.01)、細胞感受性と応答(13.11);
細胞フェイト(14)の細胞成長 / 形態形成(14.01)、細胞分化(14.04);
細胞組織の制御(30)の細胞壁(30.01)、細胞骨格(30.04)、核(30.10)、ミトコンドリア(30.16);
輸送促進(67)のイオントランスポーター(67.04)、ビタミン/コファクタートランスポーター(67.21)、輸送機構(67.50)、他の輸送促進(67.99);
未分類(98);および/または
未分類蛋白(99)に分類される方法、さらに好ましくは、
破壊される遺伝子が下記表2の機能に関与している方法、より好ましくは、
破壊される遺伝子が液胞に関与している、例えば酵母の場合、具体的には以下に示すYPR036W、YDR027C、YHR026W、YHR039C-A、YKL080W、YLR447C、YGR105W、YKL119C、YHR060Wである方法(ここに、YHR039C-AはYHR039C-Bと呼称されることもある)、
【0007】
さらに具体的には破壊される遺伝子が以下のものである方法:
(2−1) 代謝(01)遺伝子であるYGL026C、YGR180C、YDR127W、YCR028C、YLR284C、YOR221C、YAL021C、YGL224C、YBL042C、YDR148C、YHL025W、YLR307W、YLR345W、YLR354C、YPL129W、YPR060C;
(2−2) 細胞周期とDNAプロセッシング(03)遺伝子であるYGR180C、YDR150W、YGL240W、YBL058W、YIL036W、YLR226W、YLR381W、YOR026W、YPL018W、YBL063W、YDR363W-A、YIR026C、YLR234W、YMR032W、YPL129W;
(2−3) 転写(04) 遺伝子であるYGR006W、YIL036W、YKR082W、YLR226W、YML112W、YMR021C、YAL021C、YDR195W、YOL068C、YBR279W、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YHL025W、YLR266C、YPL129W;
(2−4) 蛋白合成(05)遺伝子であるYBL058W、YLR287C-A、YGR084C、YLR344W;
(2−5) 蛋白フェイト(06)遺伝子であるYKL080W、YLR447C、YGL240W、YGR105W、YGL206C、YKL119C、YDR414C、YHR060W、YLR292C、YLR306W、YGL227W、YGR270W;
(2−6) 細胞内輸送と輸送機構(08)遺伝子であるYPR036W、YDR027C、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL206C、YKR082W、YLR292C、YBL063W;
(2−7) 解毒(11)遺伝子であるYJR104C、YMR021C;
(2−8) 細胞内調節/相互作用(13)遺伝子であるYPR036W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL071W、YIR026C;
(2−9) 細胞フェイト(14)遺伝子であるYDL151C、YBL058W、YKR082W、YDL151C、YOL068C、YDR363W-A、YHL025W、YIR026C、YLR307W、YMR032W、YPL129W;
(2−10) 細胞組織の制御(30)遺伝子であるYDR027C、YDR414C、YLR381W、YGR084C、YMR032W;
(2−11) 輸送促進(67)遺伝子であるYPR036W、YHR026W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YCR028C、YLR292C;
(2−12) 未分類(98)遺伝子であるYBL056W;または
(2−13) 未分類蛋白(99)遺伝子であるYDR149C、YLR285W、YLR311C、YOR331C、YPR123C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL246C、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR290C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR283W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YPL030W、
【0008】
(3)酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(1)の方法、
【0009】
(4) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するために使用される、微生物の遺伝子破壊株を含むキット、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化であるキット、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化であるキット、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定するキット、
(5)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(4)のキット、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(4)のキット、
【0010】
(6) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である組成物、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である組成物、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する組成物、
(7)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(6)の組成物、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(6)の組成物、および
(8) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株の使用、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である使用、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である使用、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する使用、
(9)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(8)の使用、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(8)の使用、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被検試料中に低濃度の化学物質しか存在しない場合であっても、好適に化学物質を検出できる、高感度のアッセイ系である。本発明のアッセイ系は高感度であるため、被検試料を濃縮する必要がなく、また濃縮する必要がないことから対象とする化学物質が揮発性の場合であっても好適に化学物質を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011におけるメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図2】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011、DEL014およびDEL016におけるメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図3】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL002、DEL011、DEL016、DEL019およびDEL025における塩化カドミウムに対する感受性を示すグラフ。
【図4】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL000、DEL019、DEL022およびDEL025におけるベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。
【図5】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011、DEL016およびDEL025における塩化第二水銀に対する感受性を示すグラフ。
【図6】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL006とDEL014が遺伝子非破壊株の1/30の濃度、DEL003、DEL008とDEL022が1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図7】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL014のホモ接合二倍体とDEL000/014ヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/30の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図8】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL007とDEL022が遺伝子非破壊株の1/1000の濃度、DEL006、DEL0018とDEL019が1/10の濃度において、DEL001とDEL0020が1/3の濃度においてチウラムに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図9】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL006のホモ接合二倍体およびヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/10の濃度においてチウラムに対する感受性を示すグラフ。
【図10】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL006、EL007とDEL022が遺伝子非破壊株の1/10の濃度、DEL012、DEL013とDEL020が1/3の濃度において、ベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図11】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL0022のホモ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/10の濃度、遺伝子破壊破壊株DEL0022のヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/3の濃度においてベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一態様として、酵母遺伝子を例に挙げて説明する。
1)遺伝子破壊株の選別とその機能分類
酵母遺伝子破壊株として用いたYeast Deletion Homozygous Diploid(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)の遺伝子破壊株4800種類の中から、化学物質に良好な感受性を示す株84種を選別した(実施例1)。この84種の株の破壊遺伝子を公的データベース:MIPS(Munich Information center for Protein Sequences)の分類に従い、分類した。なお、MIPSの分類とは遺伝子をその機能により分類したものであり、以下のURLにてその情報は容易に入手できる:http://mips.gsf.de/genre/proj/yeast/searchCatalogFirstAction.do?style=catalog.xslt&table=FUNCTIONAL_CATEGORIES
MISPの分類によれば、酵母遺伝子は以下の表のように分類されている。
表1
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【0014】
化学物質に良好な感受性を示す選別した株84種を上記公的データベース:MIPSの分類に従い、分類した。
表2.機能による分類
化学物質感受性 84遺伝子破壊株の遺伝子の機能分類
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【表2−6】
【表2−7】
【表2−8】
【表2−9】
【0015】
さらに、以下の実施例にて試験した12種類の化学物質のうち7種類以上の化学物質に感受性を示した遺伝子破壊株を機能から分類すると、表3のようになる。
【0016】
表3.機能による分類
【表3】
【0017】
同じ遺伝子が重複する機能を有する場合は、重複してカウントした。特に、細胞内輸送と輸送機構―液胞輸送(08.13)、細胞内環境調節/相互作用―イオン性ホメオスタシス(13.01)、輸送促進−イオントランスポーター(67.04)、輸送促進−輸送調節(67.50)は重複が多かった。
特に、細胞内輸送と輸送機構―液胞輸送(08.13)、細胞内環境調節/相互作用―イオン性ホメオスタシス(13.01)、輸送促進−イオントランスポーター(67.04)、輸送促進−輸送機構(67.50)は遺伝子が重複しているが、上位10遺伝子のうち、50%がこのカテゴリーに入ったため、本検討により化学物質の解毒には液胞が重要な役割を果たすことが確認された。また、転写−mRNA転写(04.05)、細胞周期とDNA合成−細胞周期(03.03)、細胞フェイト−細胞分化(14.04)、細胞周期とDNA合成−DNA合成(03.01)、蛋白フェイト(フォールディング、修飾、デスティネーション)−蛋白複合体のアセンブル(06.10)、代謝−アミノ酸生合成(01.01)、代謝−C-結合、炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸、イソプロパノイド代謝(01.06)も化学物質の応答に深く関与することがわかった。さらに、機能が知られていない遺伝子の有用性が確認された。
【0018】
本発明は酵母以外の微生物も用いることができる。ここに微生物は、例えばヒト、マウスその他の哺乳類由来の動物細胞および動物細胞の樹立株、これまでバイオアッセイに用いられている魚類、線虫等の細胞、昆虫細胞、酵母等の真菌細胞、および大腸菌等の細菌細胞の何れであっても良い。そして公知のデータベース等を利用して上記酵母において見出された機能を有する遺伝子に相当する遺伝子の破壊株を公知の手法により作成すれば、本発明の方法に利用できる。特に、上記表2:機能による分類において「機能(description)」として記載している機能に相当する遺伝子が破壊株における破壊遺伝子の対象とすることができる。
【0019】
(2)選別した遺伝子破壊株の使用
特定の遺伝子を破壊することにより、微生物は化学物質に対して感受性または耐性を示すことがある。
本発明において「遺伝子破壊株」には、一倍体遺伝子破壊株、ホモ接合二倍体遺伝子破壊株およびヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株が含まれる。酵母細胞は一倍体であるα型細胞とa型細胞が接合して二倍体を形成することができる。ホモ接合二倍体遺伝子破壊株は、αとaで破壊された遺伝子が同一である株であり、他方ヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株は、αもしくはaで破壊された遺伝子が異なる株およびαもしくはaの一方のみで遺伝子が破壊された株を指す。破壊される遺伝子は1遺伝子に限らず、先に挙げた遺伝子のうち複数の遺伝子が破壊されていてもよい。
【0020】
本発明は、化学物質に対する感受性が向上している遺伝子破壊株を選択し、化学物質の検定に利用する。化学物質の存在は、遺伝子破壊株の化学物質に対する細胞応答を指標として検定する。化学物質に対する細胞応答とは細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化を示す。
ここに、「細胞の生死」は生細胞の割合やATP量により、「増殖能」は細胞数の増加割合により、「呼吸量」は酸素の消費量により、「酵素活性」は、指標細胞が本来有する酵素活性の測定により、「遺伝子発現の変化」はRNA量またはmRNA量の測定により、評価することができる。また、本発明では、特定の遺伝子発現の変化の測定として、ノザン・ブロッティング法(細胞の分子生物学 第2版、教育社、1990年発行、189〜191ページ)やレポーター・ジーン・アッセイ法で測定する特定遺伝子の発現量測定方法も利用できる。
なかでも細胞の生死、増殖能、呼吸量、特定の遺伝子の発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する方法が、操作が簡便なのでバイオアッセイに適している。レポーター・ジーン・アッセイとは、転写活性を中心とした遺伝子の機能を調べるための、目印となる特定の遺伝子活性を測定する手法であり、プロモーターアッセイ法などが包含される。プロモーターアッセイ法とは、ある遺伝子のプロモーターのポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結し、遺伝子の発現を間接的に計測する方法である(Barelle CJ, Manson CL, MacCallum DM, Odds FC, Gow Na, Brown AJ. :GFP as a quantitative reporter of gene regulation in Candida albicans. Yeast 2004 Mar;21(4):333-40)。
【0021】
細胞応答を指標とする本発明の化学物質検定に好適に使用できる遺伝子破壊株は、次の遺伝子が破壊されている株である:
YPR036W、YDL151C、YDR027C、YGL026C、YGR180C、YHR026W、YHR039C-A、YKL080W、YLR447C、YDR127W、YDR150W、YGL240W、YGR006W、YGR105W、YJR104C、YBL058W、YCR028C、YDR149C、YGL206C、YIL036W、YKL119C、YKR082W、YLR226W、YLR284C、YLR285W、YLR311C、YML112W、YMR021C、YOR221C、YOR331C、YPR123C、YAL021C、YDL151C、YDR195W、YDR414C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL224C、YGL246C、YHR060W、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR287C-A、YLR290C、YLR292C、YLR306W、YLR381W、YOL068C、YOR026W、YPL018W、YBL042C、YBL056W、YBL063W、YBR279W、YDR148C、YDR363W-A、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YGL227W、YGR084C、YGR270W、YHL025W、YIR026C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR234W、YLR266C、YLR283W、YLR307W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YLR344W、YLR345W、YLR354C、YMR032W、YPL030W、YPL129W、YPR060C。
【0022】
化学物質に対する細胞応答として遺伝子発現の変化を選択し、その変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する場合、レポーター・ジーン・アッセイに利用できるプラスミドはWO03/01872に記載されている。本発明の1態様においては、WO03/01872に記載されている酵母遺伝子のプロモーターを含むポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結したポリヌクレオチドを含むプラスミドを利用する。
【0023】
好適に使用できる遺伝子破壊株と検定できる化学物質との好適な組み合わせは次の通りである:
表4.遺伝子破壊株と化学物質との対応
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【0024】
(3)キット
本発明のキットには上記遺伝子破壊株の乾燥品、例えば凍結乾燥品、L乾燥品または凍結品を含む容器、培養培地等が含まれる。
培養培地としては、用いる遺伝子破壊株に適した組成を有する培地を用いる。
【0025】
(4)組成物
本発明は別の態様として、被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物を提供する。典型的には本発明組成物は、上記遺伝子破壊株を含む培養培地である。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例1
ケミカルプレートにおける生育阻害を指標とした遺伝子破壊株の化学物質感受性試験
a)方法
酵母遺伝子破壊株はYeast Deletion Homozygous Diploid(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を使用した。この遺伝子破壊株の親株はSaccharomyces crevisiae BY4743である。酵母の遺伝子破壊株6000種類の中から、化学物質感受性となりうる破壊株を複数選択する。実際の遺伝子破壊株は遺伝子の種類によっては欠損すると生育出来ないものがある。そこで、本実験の対象はHomozygous diploids(ホモ接合二倍体)として生育可能な遺伝子破壊株約4800種類を選択した。
【0027】
凍結保存された遺伝子破壊株をYPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の細胞を上記同じ培地で10000倍希釈し、化学物質含有寒天培地(ケミカルプレート)に1.5μLずつ滴下し、3日後にコロニーの形成を観察した。ケミカルプレートはYPD寒天培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%、寒天2%)に最終濃度が表5になるように化学物質を付加して作成した。
【0028】
表5.ケミカルプレートによる遺伝子破壊株の感受性実験の化学物質
【表5】
【0029】
b)結果
約4800種類の遺伝子破壊株について化学物質感受性の実験を行った。試験結果から、各々の遺伝子破壊株について感受性を示した化学物質数を算出して表6にまとめた。ここで、感受性を示すとは、2濃度以上で親株に対して生育阻害が見られたものを指す。2濃度以上とは、表5に示すように化学物質それぞれについて異なる3濃度について生育を比較した場合、親株との生育と比較して2つ以上の濃度において生育が悪いもしくは生育しないことを意味する。また細胞の生育は、細胞の生死および増殖能(生育数もしくは生育速度)を指標としている。
表6.化学物質について感受性を示す遺伝子破壊株数
【表6】
【0030】
遺伝子破壊株約4800のうち、10種類の化学物質に感受性を示す遺伝子破壊株数は1、9種類の化学物質に対しては8、8種類の化学物質に対しては6、7種類の化学物質に対しては16、6種類の化学物質に対しては21、5種類の化学物質に対しては32、4種類の化学物質に対しては61、3種類の化学物質に対しては59、2種類の化学物質に対しては135、1種類の化学物質の化学物質に対しては348あり、化学物質に全く感受性を示さないものは4149であった。特に5以上の化学物質に感受性を示す遺伝子破壊株を表7に示す。
【0031】
表7.5以上の化学物質に感受性を示した遺伝子破壊株
【表7−1】
【表7−2】
【0032】
実施例2
プロモーターアッセイを用いたホモ接合二倍体遺伝子破壊株の検出感度の検討
上記のとおり、検出可能な感度が低い場合、一般的には試料の濃縮等の前処理が必要となり、特に高倍率の濃縮を行う場合にはその種類によっては対象とする化学物質が濃縮操作中に失われる可能性がある。レポーター・ジーン・アッセイ法による化学物質の検出感度は指標生物の感受性に依存する。指標生物を代えずに感受性を上げる方法として、同じ種の中で感受性の高い系統を選択することが考えられる。細胞膜の構成成分の遺伝子が欠失することにより化学物質の膜透過性が上がる、または解毒機構に関する遺伝子が欠失することにより低濃度の化学物質に応答する等、遺伝子が欠失することにより様々な理由で感受性が向上する可能性があると考え、ここでは、異なる性質を示す系統として遺伝子破壊株に注目している。化学物質がどの様に生物に障害を与え、生物がどの様に応答するかはこれまで網羅的に解析されていない。そこで、実験により多くの種類の化学物質に対して感受性を示す遺伝子破壊株を選択することにより、遺伝子破壊株が指標生物として使える可能性がある。酵母細胞には約6000の遺伝子があり、殆どの遺伝子について遺伝子を欠失した株が既に作成され市販されているので、これを対象にスクリーニングを行った。
方法
1)遺伝子破壊株の選択
遺伝子破壊株は破壊された遺伝子によっては生育速度が非常に遅くなることや生育可能な培地成分が異なる場合がある。そこで、プロモーターアッセイ法のホスト細胞を検討する本実験においては対照実験との比較しやすさを考慮して、実施例1の結果得られた遺伝子破壊株の中で、多くの化学物質に対する感受性を有し、かつ親株と同様の操作で生育する数株を選択した。選択した遺伝子破壊株は、表7におけるDEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022、DEL025の8株である。さらに、対照として親株のBY4743を用いた。
【0033】
2)形質転換体の作成
遺伝子破壊株の親株および選択した遺伝子破壊株各々のコンピテントセルを作成した。このコンピテントセルを、作成したプロモーターアッセイ用の2種類のプラスミド、p-YBR072W(YBR072Wのプロモーターの下流にGFPを連結)およびp-YPL171C(YPL171Cのプロモーターの下流にGFPを連結)を用いて形質転換した。なお、YPL171CはNAPDHデヒドロゲナーゼ、YBR072Wは熱ショック蛋白をコードする遺伝子であり、何れもプロモーターアッセイを行うと複数種類の化学物質に対して応答を示すものである。
詳細には、p-YBR072Wを次の手法により調製した。
酵母遺伝子YBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号1)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
GCAGTCAACGAGGAGCGAATCAG (配列番号2)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
GTTAATTTGTTTAGTTTGTTTG (配列番号3)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
【0034】
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae BY4743(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae BY4743をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
【0035】
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0036】
p-YPL171Cは次のようにして調製した。
酵母遺伝子YPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号5)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
ACGCCCCTTCCTTTTTCCCTTTC (配列番号6)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
CTTCTAAATTTAAACTTCGCTA (配列番号7)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
【0037】
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae BY4743(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae BY4743をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
【0038】
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0039】
3)化学物質感受性試験
得られた形質転換体をSD培地(ヒスチジン、ロイシン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体を上記同じ培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の化学物質を負荷した。化学物質負荷後、4時間培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測し、マーカー遺伝子であるGFP(green fluorescence protein)の発現量とした。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に計測した化学物質を負荷しない細胞の蛍光強度を求めて、蛍光強度比として示した。
【0040】
4)結果
遺伝子破壊株DEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022、DEL025(表7)をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。負荷する化学物質はBY4743をホストとした場合に応答を示す、メタ亜ヒ酸ナトリウム、塩化カドミウム、ベンチオカーブおよび塩化水銀(II)を選択して用いた。化学物質の希釈系列を作成して負荷試験を行った結果を図1から5に示す。
図1は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに応答したことを示している。
図2は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL014が1/3000の濃度、遺伝子破壊株DEL016が1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに応答したことを示している。
図3は、遺伝子破壊株DEL002が親株の1/3の濃度、遺伝子破壊株DEL011が1/3の濃度、DEL016が1/3の濃度、DEL019025が1/3の濃度、遺伝子破壊株DELが1/3の濃度において塩化カドミウムに応答したことを示している。
図4は、遺伝子破壊株DEL000が親株の1/3の濃度、遺伝子破壊株DEL019が1/100の濃度、DEL022が1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL025が1/3の濃度においてベンチオカーブに応答したことを示している。
図5は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL016が1/3の濃度において塩化第二水銀に応答したことを示している。
このように、DEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022およびDEL025は、親株であるBY4743より化学物質に対する応答性が3倍から1000倍高いことが確認された。特に、DEL0014は親株の検出可能な濃度の1/1000の濃度においてもBY4743と比べ有為な差がみられた(図2)。
【0041】
実施例3
プロモーターアッセイを用いたホモ接合およびヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株の検出感度の検討
方法
1)遺伝子破壊株の作成
a−1)遺伝子破壊株形質転換カセット作成
遺伝子破壊株形質転換カセット作成のため、化学物質感受性を有する遺伝子:表7におけるYPR036W(DEL000)、YDL151C(DEL001)、YGL026C(DEL003)、YHR039C-A(DEL006)、YKL080W(DEL007)、YLR447C(DEL008)、YGR006W(DEL012)、YGR105W(DRL013)、YJR104C(DEL014)、YGL206C(DEL018)、YIL036W(DEL019)、YKL119C(DEL020)、YLR226W(DEL022)、YLR311C(DEL025)を選択し、それぞれの遺伝子をカナマイシン耐性などの形質転換マーカーと置き換えた。PCR増幅を行うためのプライマーとしては、それぞれのORFにおけるN末端側(ORF(upper))およびC末端側(ORF(lower))を用いた。プライマーのORFとの相同配列(ORF(upper)およびORF(lower))の長さは45または50bpとした。
遺伝子破壊株形質転換カセット
これらのプライマーを用いて形質転換マーカーの遺伝子配列を含むプラスミドをテンプレートとしてPCR反応を行い電気泳動した結果、全ての遺伝子のプライマーにおいて約1kbの均一なバンドが確認された。これらPCR生成物を遺伝子破壊株形質転換カセットとした。
【0042】
a−2)コンピテント・セルの作成および形質転換
酵母遺伝子破壊株を作成する株はW303 a接合型 ATCC200903 (MATa ade2-1 trp1-1 leu2-3 leu2-112 his3-11 his3-15 ura3-1 can1-100)とW303 α接合型 ATCC201238 (MATα ade2-1 trp1-1 leu2-3 leu2-112 his3-11 his3-15 ura3-1 can1-100)を用いた。W303a接合型およびW303α接合型のコンピテント・セルを作成し、先に調製した遺伝子破壊株形質転換カセットで形質転換を行った。コンピテント・セルの作成および形質転換は市販のキット(S.c. easyCompTM Transformation Kit : Invitrogen)を用いた。
【0043】
a−3)形質転換の確認
形質転換の確認はPCRを用いた。ターゲットとした遺伝子のプロモーター領域内にアッパープライマー、形質転換マーカー内にロウワープライマーを設定し、PCRを行った。この結果、ORF部位が形質転換マーカーで置換され遺伝子破壊がなされているとプライマーに挟まれた部位が増幅され、遺伝子が破壊されていないと増幅されないことから確認できた。
【0044】
b)ホモ接合二倍体、ヘテロ接合二倍体の作成
Saccharomyces crevisiae a およびαの接合型の単相体を混合培養することによりa/α型の2倍体を作成することができる。
同一の遺伝子について遺伝子破壊操作を行ったW303 a接合型(ATCC200903)とW303 α接合型(ATCC201238)を、接合操作(酵母遺伝子実験マニュアル:丸善株式会社 p83-92)により接合を行いHomozygous diploids(ホモ接合二倍体)を作成した。また、W303 a接合型と遺伝子破壊を行わないW303 α接合型の接合を同様の操作で行い Heterozygous diploids(ヘテロ接合二倍体)を作成した。
この様な操作により表7におけるDEL000、DEL001、DEL003、DEL006、DEL007、DEL008、DEL012、DEL013、DEL014、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022、DEL025のホモ接合二倍体を作成した。また、DEL006、DEL014およびDEL022と遺伝子非破壊株を接合させたヘテロ接合二倍体(以下、DEL006ヘテロ接合二倍体、DEL014ヘテロ接合二倍体、DEL022ヘテロ接合二倍体と記述)、さらにDEL000とDEL014を接合させたヘテロ接合二倍体(以下、DEL000/014ヘテロ接合二倍体と記述)を作成した。
【0045】
c)プロモーターアッセイ形質転換体の作成
遺伝子破壊株の親株であるW303 ATCC201239 (MATa/MATα leu2-3/leu2-3 leu2-112/leu2-112 trp1-1/trp1-1 ura3-1/ura3-1 his3-11/his3-11 his3-15/his3-15 ade2-1/ade2-1 can1-100/can1-100)および作成した遺伝子破壊株各々のコンピテントセルを作成した。このコンピテントセルを、作成したプロモーターアッセイ用の2種類のプラスミド、p-YBR072W(YBR072Wのプロモーターの下流にGFPを連結)およびp-YPL171C(YPL171Cのプロモーターの下流にGFPを連結)を用いて形質転換した。
詳細には、p-YBR072Wを次の手法により調製した。
酵母遺伝子YBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号1)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
GCAGTCAACGAGGAGCGAATCAG (配列番号2)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
GTTAATTTGTTTAGTTTGTTTG (配列番号3)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
次に、このプラスミドベクターで親株もしくは遺伝子破壊株を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
p-YPL171Cは次のようにして調製した。
酵母遺伝子YPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号5)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
ACGCCCCTTCCTTTTTCCCTTTC (配列番号6)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
CTTCTAAATTTAAACTTCGCTA (配列番号7)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
次に、このプラスミドベクターで親株もしくは遺伝子破壊株を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0046】
2)化学物質感受性試験
得られたプロモーターアッセイ形質転換体をSD培地(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体を上記同じ培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の化学物質を負荷した。化学物質負荷後、4時間培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測し、マーカー遺伝子であるGFP(green fluorescence protein)の発現量とした。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に計測した化学物質を負荷しない細胞の蛍光強度を求めて、蛍光強度の差として示した。
結果
遺伝子破壊株DEL000、DEL001、DEL003、DEL006、DEL007、DEL008、DEL012、DEL013、DEL014、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022、DEL025(表7)のホモ接合二倍体をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。さらにDEL006、DEL014およびDEL022と遺伝子非破壊株のヘテロ接合二倍体、またDEL000とDEL014のヘテロ接合二倍体をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。負荷する化学物質は、プラスミドp-YPL171Cを用いたプロモーターアッセイ法にはW303をホストとした場合に応答を示すメタ亜ヒ酸ナトリウムおよびチウラム、p-YBR072Wにはベンチオカーブを選択して用いた。化学物質の希釈系列を作成して負荷試験を行った結果を図6から図11に示す。
【0047】
図6: DEL003、DEL006,DEL008、DEL014、DEL019とDEL022は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図7: DEL000ホモ接合二倍体、DEL014ヘテロ接合二倍体、DEL014のホモ接合二倍体およびDEL000/014ヘテロ接合二倍体は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。
図8: DEL001、DEL006,DEL007、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022とDEL025は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図9: 同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。
図10: DEL006、DEL007、DEL012、DEL013、DEL020、DEL022とDEL025は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図11: 同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より強い蛍光強度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
ケミカルプレートによる化学物質感受性試験の結果から遺伝子破壊株を選択し、実際にこれをホスト細胞として化学物質応答遺伝子組換え体細胞を作成し、化学物質応答性を測定した。その結果、化学物質によっては約1000倍の感受性が得られた。このことから、この手法を用いることにより実用の場面で必要な感度を有するホスト細胞の開発の可能性が確認された。
今回のホスト細胞の検討は、化学物質全般に感受性を示す遺伝子破壊株を用いたが、レポーター・ジーン・アッセイ法に用いる遺伝子およびターゲットとする化学物質によっては、特定の化学物質に感受性を有する方が有利な場合も考えられる。
【技術分野】
【0001】
本発明は環境中の試料中に存在する化学物質を検定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類がこれまでに作りだした化学物質は膨大な数にのぼり、さらに年々新しい化学物質が開発されている。これら化学物質は現代生活のあらゆる面で利用され、人類の生活向上に役立っている。その反面、化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄等の様々な段階で環境中に放出され、環境での残留、食物連鎖による生物学的濃縮などを通じ、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあり、環境汚染は社会問題化している。よって、化学物質について人体や生態系に与える影響を評価する要請がある。
被検試料中に存在する化学物質を検出する場合、検出システムの検出感度を向上させることは非常に重要である。被検試料中に低濃度の化学物質しか存在しない場合、低濃度の化学物質を検出するために用いる検出システムの検出感度に応じ、被検試料を濃縮しなければならない。しかし、環境試料のような水溶液の濃縮を行うには濃縮装置が必要となる。また、対象とする化学物質が揮発性の場合、濃縮操作により化学物質が消失してしまうことがある。このため、できるかぎり濃縮操作の必要が無い検出システム、すなわち高い検出感度を有するアッセイ系が望まれる。
環境中に存在する化学物質の検出に酵母細胞の毒性応答を利用するアッセイ系がある(特許文献1および2)。
【0003】
【特許文献1】WO 03/018792
【特許文献2】特開2003-061676
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、これまで上記特許文献1および2に示すように化学物質によって誘導される遺伝子情報を蓄積し、酵母細胞の毒性応答を利用したバイオアッセイ法を検討してきた。バイオアッセイによる化学物質の検出感度は指標とする細胞や生物の化学物質に対する感受性に依存する。従って、酵母細胞の毒性応答を利用したバイオアッセイ法において、より高感度のシステムを構築するためには、より感受性の高い酵母細胞を利用する必要がある。そこで、酵母の遺伝子6000種類の遺伝子破壊株の中でホモ接合の二倍体として生育可能な遺伝子破壊株約4800種類の中から、化学物質検出のアッセイ系に適した化学物質感受性を有する遺伝子破壊株を選択した。
本発明は、微生物の毒性応答を利用したバイオアッセイ法において、より高感度の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、
(1) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための方法であって、該被検試料の存在下に微生物の遺伝子破壊株を培養し、その化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答を指標に用いることを特徴とする方法、好ましくは、
化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答が、細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である方法、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化がRNA量またはmRNA量の変化である方法、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する方法、
【0006】
(2)微生物が酵母である、上記(1)の方法、好ましくは、
破壊される遺伝子が、公的データベース:MIPSの分類に従い、
代謝(01)のアミノ酸代謝(01.01)、窒素および硫黄代謝(01.02)、ヌクレオチド代謝(01.03)、リン酸代謝(01.04)、C-化合物および炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸およびイソプロパノイド代謝(01.06)、ビタミン、コファクターおよび補欠分子族の代謝(01.07);
細胞周期とDNAプロセッシング(03)のDNAプロセッシング(03.01)、細胞周期(03.03);
転写(04)のmRNA 転写(04.05)、RNA 輸送(04.07);
蛋白合成(05)のリボゾーム生合成(05.01)、翻訳制御(05.07);
蛋白フェイト(06)の蛋白ターゲッティング、局在、転位(06.04)、蛋白修飾(06.07)、蛋白複合体のアセンブル(06.10)、蛋白分解的崩壊(06.13);
細胞内輸送と輸送機構(08)の核輸送(08.01)、小胞輸送 (ゴルジネットワーク他.)(08.07)、液胞輸送(08.13)、細胞移入(08.19)、細胞骨格輸送(08.22)、他の細胞内輸送活性(08.99);
細胞レスキュー, 防御と病原性(11)のストレス応答(11.01)、解毒(11.07);
細胞内環境調節/相互作用(13)のイオン性ホメオスタシス(13.01)、細胞感受性と応答(13.11);
細胞フェイト(14)の細胞成長 / 形態形成(14.01)、細胞分化(14.04);
細胞組織の制御(30)の細胞壁(30.01)、細胞骨格(30.04)、核(30.10)、ミトコンドリア(30.16);
輸送促進(67)のイオントランスポーター(67.04)、ビタミン/コファクタートランスポーター(67.21)、輸送機構(67.50)、他の輸送促進(67.99);
未分類(98);および/または
未分類蛋白(99)に分類される方法、さらに好ましくは、
破壊される遺伝子が下記表2の機能に関与している方法、より好ましくは、
破壊される遺伝子が液胞に関与している、例えば酵母の場合、具体的には以下に示すYPR036W、YDR027C、YHR026W、YHR039C-A、YKL080W、YLR447C、YGR105W、YKL119C、YHR060Wである方法(ここに、YHR039C-AはYHR039C-Bと呼称されることもある)、
【0007】
さらに具体的には破壊される遺伝子が以下のものである方法:
(2−1) 代謝(01)遺伝子であるYGL026C、YGR180C、YDR127W、YCR028C、YLR284C、YOR221C、YAL021C、YGL224C、YBL042C、YDR148C、YHL025W、YLR307W、YLR345W、YLR354C、YPL129W、YPR060C;
(2−2) 細胞周期とDNAプロセッシング(03)遺伝子であるYGR180C、YDR150W、YGL240W、YBL058W、YIL036W、YLR226W、YLR381W、YOR026W、YPL018W、YBL063W、YDR363W-A、YIR026C、YLR234W、YMR032W、YPL129W;
(2−3) 転写(04) 遺伝子であるYGR006W、YIL036W、YKR082W、YLR226W、YML112W、YMR021C、YAL021C、YDR195W、YOL068C、YBR279W、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YHL025W、YLR266C、YPL129W;
(2−4) 蛋白合成(05)遺伝子であるYBL058W、YLR287C-A、YGR084C、YLR344W;
(2−5) 蛋白フェイト(06)遺伝子であるYKL080W、YLR447C、YGL240W、YGR105W、YGL206C、YKL119C、YDR414C、YHR060W、YLR292C、YLR306W、YGL227W、YGR270W;
(2−6) 細胞内輸送と輸送機構(08)遺伝子であるYPR036W、YDR027C、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL206C、YKR082W、YLR292C、YBL063W;
(2−7) 解毒(11)遺伝子であるYJR104C、YMR021C;
(2−8) 細胞内調節/相互作用(13)遺伝子であるYPR036W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL071W、YIR026C;
(2−9) 細胞フェイト(14)遺伝子であるYDL151C、YBL058W、YKR082W、YDL151C、YOL068C、YDR363W-A、YHL025W、YIR026C、YLR307W、YMR032W、YPL129W;
(2−10) 細胞組織の制御(30)遺伝子であるYDR027C、YDR414C、YLR381W、YGR084C、YMR032W;
(2−11) 輸送促進(67)遺伝子であるYPR036W、YHR026W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YCR028C、YLR292C;
(2−12) 未分類(98)遺伝子であるYBL056W;または
(2−13) 未分類蛋白(99)遺伝子であるYDR149C、YLR285W、YLR311C、YOR331C、YPR123C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL246C、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR290C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR283W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YPL030W、
【0008】
(3)酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(1)の方法、
【0009】
(4) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するために使用される、微生物の遺伝子破壊株を含むキット、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化であるキット、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化であるキット、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定するキット、
(5)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(4)のキット、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(4)のキット、
【0010】
(6) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である組成物、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である組成物、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する組成物、
(7)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(6)の組成物、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(6)の組成物、および
(8) 被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株の使用、好ましくは、
化学物質に対する細胞応答が細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である使用、さらに好ましくは、
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である使用、より好ましくは、
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する使用、
(9)微生物が酵母であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される、上記(8)の使用、および酵母以外の微生物であり、破壊される遺伝子が上記(2)にて規定される遺伝子に相当する遺伝子である上記(8)の使用、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被検試料中に低濃度の化学物質しか存在しない場合であっても、好適に化学物質を検出できる、高感度のアッセイ系である。本発明のアッセイ系は高感度であるため、被検試料を濃縮する必要がなく、また濃縮する必要がないことから対象とする化学物質が揮発性の場合であっても好適に化学物質を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011におけるメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図2】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011、DEL014およびDEL016におけるメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図3】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL002、DEL011、DEL016、DEL019およびDEL025における塩化カドミウムに対する感受性を示すグラフ。
【図4】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊株DEL000、DEL019、DEL022およびDEL025におけるベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。
【図5】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL011、DEL016およびDEL025における塩化第二水銀に対する感受性を示すグラフ。
【図6】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊株DEL006とDEL014が遺伝子非破壊株の1/30の濃度、DEL003、DEL008とDEL022が1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図7】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL014のホモ接合二倍体とDEL000/014ヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/30の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに対する感受性を示すグラフ。
【図8】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL007とDEL022が遺伝子非破壊株の1/1000の濃度、DEL006、DEL0018とDEL019が1/10の濃度において、DEL001とDEL0020が1/3の濃度においてチウラムに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図9】プラスミドp-YPL171Cにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL006のホモ接合二倍体およびヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/10の濃度においてチウラムに対する感受性を示すグラフ。
【図10】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL006、EL007とDEL022が遺伝子非破壊株の1/10の濃度、DEL012、DEL013とDEL020が1/3の濃度において、ベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
【図11】プラスミドp-YBR072Wにより形質転換された遺伝子破壊破壊株DEL0022のホモ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/10の濃度、遺伝子破壊破壊株DEL0022のヘテロ接合二倍体が遺伝子非破壊株の1/3の濃度においてベンチオカーブに対する感受性を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一態様として、酵母遺伝子を例に挙げて説明する。
1)遺伝子破壊株の選別とその機能分類
酵母遺伝子破壊株として用いたYeast Deletion Homozygous Diploid(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)の遺伝子破壊株4800種類の中から、化学物質に良好な感受性を示す株84種を選別した(実施例1)。この84種の株の破壊遺伝子を公的データベース:MIPS(Munich Information center for Protein Sequences)の分類に従い、分類した。なお、MIPSの分類とは遺伝子をその機能により分類したものであり、以下のURLにてその情報は容易に入手できる:http://mips.gsf.de/genre/proj/yeast/searchCatalogFirstAction.do?style=catalog.xslt&table=FUNCTIONAL_CATEGORIES
MISPの分類によれば、酵母遺伝子は以下の表のように分類されている。
表1
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【0014】
化学物質に良好な感受性を示す選別した株84種を上記公的データベース:MIPSの分類に従い、分類した。
表2.機能による分類
化学物質感受性 84遺伝子破壊株の遺伝子の機能分類
【表2−1】
【表2−2】
【表2−3】
【表2−4】
【表2−5】
【表2−6】
【表2−7】
【表2−8】
【表2−9】
【0015】
さらに、以下の実施例にて試験した12種類の化学物質のうち7種類以上の化学物質に感受性を示した遺伝子破壊株を機能から分類すると、表3のようになる。
【0016】
表3.機能による分類
【表3】
【0017】
同じ遺伝子が重複する機能を有する場合は、重複してカウントした。特に、細胞内輸送と輸送機構―液胞輸送(08.13)、細胞内環境調節/相互作用―イオン性ホメオスタシス(13.01)、輸送促進−イオントランスポーター(67.04)、輸送促進−輸送調節(67.50)は重複が多かった。
特に、細胞内輸送と輸送機構―液胞輸送(08.13)、細胞内環境調節/相互作用―イオン性ホメオスタシス(13.01)、輸送促進−イオントランスポーター(67.04)、輸送促進−輸送機構(67.50)は遺伝子が重複しているが、上位10遺伝子のうち、50%がこのカテゴリーに入ったため、本検討により化学物質の解毒には液胞が重要な役割を果たすことが確認された。また、転写−mRNA転写(04.05)、細胞周期とDNA合成−細胞周期(03.03)、細胞フェイト−細胞分化(14.04)、細胞周期とDNA合成−DNA合成(03.01)、蛋白フェイト(フォールディング、修飾、デスティネーション)−蛋白複合体のアセンブル(06.10)、代謝−アミノ酸生合成(01.01)、代謝−C-結合、炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸、イソプロパノイド代謝(01.06)も化学物質の応答に深く関与することがわかった。さらに、機能が知られていない遺伝子の有用性が確認された。
【0018】
本発明は酵母以外の微生物も用いることができる。ここに微生物は、例えばヒト、マウスその他の哺乳類由来の動物細胞および動物細胞の樹立株、これまでバイオアッセイに用いられている魚類、線虫等の細胞、昆虫細胞、酵母等の真菌細胞、および大腸菌等の細菌細胞の何れであっても良い。そして公知のデータベース等を利用して上記酵母において見出された機能を有する遺伝子に相当する遺伝子の破壊株を公知の手法により作成すれば、本発明の方法に利用できる。特に、上記表2:機能による分類において「機能(description)」として記載している機能に相当する遺伝子が破壊株における破壊遺伝子の対象とすることができる。
【0019】
(2)選別した遺伝子破壊株の使用
特定の遺伝子を破壊することにより、微生物は化学物質に対して感受性または耐性を示すことがある。
本発明において「遺伝子破壊株」には、一倍体遺伝子破壊株、ホモ接合二倍体遺伝子破壊株およびヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株が含まれる。酵母細胞は一倍体であるα型細胞とa型細胞が接合して二倍体を形成することができる。ホモ接合二倍体遺伝子破壊株は、αとaで破壊された遺伝子が同一である株であり、他方ヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株は、αもしくはaで破壊された遺伝子が異なる株およびαもしくはaの一方のみで遺伝子が破壊された株を指す。破壊される遺伝子は1遺伝子に限らず、先に挙げた遺伝子のうち複数の遺伝子が破壊されていてもよい。
【0020】
本発明は、化学物質に対する感受性が向上している遺伝子破壊株を選択し、化学物質の検定に利用する。化学物質の存在は、遺伝子破壊株の化学物質に対する細胞応答を指標として検定する。化学物質に対する細胞応答とは細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化を示す。
ここに、「細胞の生死」は生細胞の割合やATP量により、「増殖能」は細胞数の増加割合により、「呼吸量」は酸素の消費量により、「酵素活性」は、指標細胞が本来有する酵素活性の測定により、「遺伝子発現の変化」はRNA量またはmRNA量の測定により、評価することができる。また、本発明では、特定の遺伝子発現の変化の測定として、ノザン・ブロッティング法(細胞の分子生物学 第2版、教育社、1990年発行、189〜191ページ)やレポーター・ジーン・アッセイ法で測定する特定遺伝子の発現量測定方法も利用できる。
なかでも細胞の生死、増殖能、呼吸量、特定の遺伝子の発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する方法が、操作が簡便なのでバイオアッセイに適している。レポーター・ジーン・アッセイとは、転写活性を中心とした遺伝子の機能を調べるための、目印となる特定の遺伝子活性を測定する手法であり、プロモーターアッセイ法などが包含される。プロモーターアッセイ法とは、ある遺伝子のプロモーターのポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結し、遺伝子の発現を間接的に計測する方法である(Barelle CJ, Manson CL, MacCallum DM, Odds FC, Gow Na, Brown AJ. :GFP as a quantitative reporter of gene regulation in Candida albicans. Yeast 2004 Mar;21(4):333-40)。
【0021】
細胞応答を指標とする本発明の化学物質検定に好適に使用できる遺伝子破壊株は、次の遺伝子が破壊されている株である:
YPR036W、YDL151C、YDR027C、YGL026C、YGR180C、YHR026W、YHR039C-A、YKL080W、YLR447C、YDR127W、YDR150W、YGL240W、YGR006W、YGR105W、YJR104C、YBL058W、YCR028C、YDR149C、YGL206C、YIL036W、YKL119C、YKR082W、YLR226W、YLR284C、YLR285W、YLR311C、YML112W、YMR021C、YOR221C、YOR331C、YPR123C、YAL021C、YDL151C、YDR195W、YDR414C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL224C、YGL246C、YHR060W、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR287C-A、YLR290C、YLR292C、YLR306W、YLR381W、YOL068C、YOR026W、YPL018W、YBL042C、YBL056W、YBL063W、YBR279W、YDR148C、YDR363W-A、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YGL227W、YGR084C、YGR270W、YHL025W、YIR026C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR234W、YLR266C、YLR283W、YLR307W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YLR344W、YLR345W、YLR354C、YMR032W、YPL030W、YPL129W、YPR060C。
【0022】
化学物質に対する細胞応答として遺伝子発現の変化を選択し、その変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する場合、レポーター・ジーン・アッセイに利用できるプラスミドはWO03/01872に記載されている。本発明の1態様においては、WO03/01872に記載されている酵母遺伝子のプロモーターを含むポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結したポリヌクレオチドを含むプラスミドを利用する。
【0023】
好適に使用できる遺伝子破壊株と検定できる化学物質との好適な組み合わせは次の通りである:
表4.遺伝子破壊株と化学物質との対応
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【0024】
(3)キット
本発明のキットには上記遺伝子破壊株の乾燥品、例えば凍結乾燥品、L乾燥品または凍結品を含む容器、培養培地等が含まれる。
培養培地としては、用いる遺伝子破壊株に適した組成を有する培地を用いる。
【0025】
(4)組成物
本発明は別の態様として、被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物を提供する。典型的には本発明組成物は、上記遺伝子破壊株を含む培養培地である。
【実施例】
【0026】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
実施例1
ケミカルプレートにおける生育阻害を指標とした遺伝子破壊株の化学物質感受性試験
a)方法
酵母遺伝子破壊株はYeast Deletion Homozygous Diploid(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を使用した。この遺伝子破壊株の親株はSaccharomyces crevisiae BY4743である。酵母の遺伝子破壊株6000種類の中から、化学物質感受性となりうる破壊株を複数選択する。実際の遺伝子破壊株は遺伝子の種類によっては欠損すると生育出来ないものがある。そこで、本実験の対象はHomozygous diploids(ホモ接合二倍体)として生育可能な遺伝子破壊株約4800種類を選択した。
【0027】
凍結保存された遺伝子破壊株をYPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の細胞を上記同じ培地で10000倍希釈し、化学物質含有寒天培地(ケミカルプレート)に1.5μLずつ滴下し、3日後にコロニーの形成を観察した。ケミカルプレートはYPD寒天培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%、寒天2%)に最終濃度が表5になるように化学物質を付加して作成した。
【0028】
表5.ケミカルプレートによる遺伝子破壊株の感受性実験の化学物質
【表5】
【0029】
b)結果
約4800種類の遺伝子破壊株について化学物質感受性の実験を行った。試験結果から、各々の遺伝子破壊株について感受性を示した化学物質数を算出して表6にまとめた。ここで、感受性を示すとは、2濃度以上で親株に対して生育阻害が見られたものを指す。2濃度以上とは、表5に示すように化学物質それぞれについて異なる3濃度について生育を比較した場合、親株との生育と比較して2つ以上の濃度において生育が悪いもしくは生育しないことを意味する。また細胞の生育は、細胞の生死および増殖能(生育数もしくは生育速度)を指標としている。
表6.化学物質について感受性を示す遺伝子破壊株数
【表6】
【0030】
遺伝子破壊株約4800のうち、10種類の化学物質に感受性を示す遺伝子破壊株数は1、9種類の化学物質に対しては8、8種類の化学物質に対しては6、7種類の化学物質に対しては16、6種類の化学物質に対しては21、5種類の化学物質に対しては32、4種類の化学物質に対しては61、3種類の化学物質に対しては59、2種類の化学物質に対しては135、1種類の化学物質の化学物質に対しては348あり、化学物質に全く感受性を示さないものは4149であった。特に5以上の化学物質に感受性を示す遺伝子破壊株を表7に示す。
【0031】
表7.5以上の化学物質に感受性を示した遺伝子破壊株
【表7−1】
【表7−2】
【0032】
実施例2
プロモーターアッセイを用いたホモ接合二倍体遺伝子破壊株の検出感度の検討
上記のとおり、検出可能な感度が低い場合、一般的には試料の濃縮等の前処理が必要となり、特に高倍率の濃縮を行う場合にはその種類によっては対象とする化学物質が濃縮操作中に失われる可能性がある。レポーター・ジーン・アッセイ法による化学物質の検出感度は指標生物の感受性に依存する。指標生物を代えずに感受性を上げる方法として、同じ種の中で感受性の高い系統を選択することが考えられる。細胞膜の構成成分の遺伝子が欠失することにより化学物質の膜透過性が上がる、または解毒機構に関する遺伝子が欠失することにより低濃度の化学物質に応答する等、遺伝子が欠失することにより様々な理由で感受性が向上する可能性があると考え、ここでは、異なる性質を示す系統として遺伝子破壊株に注目している。化学物質がどの様に生物に障害を与え、生物がどの様に応答するかはこれまで網羅的に解析されていない。そこで、実験により多くの種類の化学物質に対して感受性を示す遺伝子破壊株を選択することにより、遺伝子破壊株が指標生物として使える可能性がある。酵母細胞には約6000の遺伝子があり、殆どの遺伝子について遺伝子を欠失した株が既に作成され市販されているので、これを対象にスクリーニングを行った。
方法
1)遺伝子破壊株の選択
遺伝子破壊株は破壊された遺伝子によっては生育速度が非常に遅くなることや生育可能な培地成分が異なる場合がある。そこで、プロモーターアッセイ法のホスト細胞を検討する本実験においては対照実験との比較しやすさを考慮して、実施例1の結果得られた遺伝子破壊株の中で、多くの化学物質に対する感受性を有し、かつ親株と同様の操作で生育する数株を選択した。選択した遺伝子破壊株は、表7におけるDEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022、DEL025の8株である。さらに、対照として親株のBY4743を用いた。
【0033】
2)形質転換体の作成
遺伝子破壊株の親株および選択した遺伝子破壊株各々のコンピテントセルを作成した。このコンピテントセルを、作成したプロモーターアッセイ用の2種類のプラスミド、p-YBR072W(YBR072Wのプロモーターの下流にGFPを連結)およびp-YPL171C(YPL171Cのプロモーターの下流にGFPを連結)を用いて形質転換した。なお、YPL171CはNAPDHデヒドロゲナーゼ、YBR072Wは熱ショック蛋白をコードする遺伝子であり、何れもプロモーターアッセイを行うと複数種類の化学物質に対して応答を示すものである。
詳細には、p-YBR072Wを次の手法により調製した。
酵母遺伝子YBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号1)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
GCAGTCAACGAGGAGCGAATCAG (配列番号2)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
GTTAATTTGTTTAGTTTGTTTG (配列番号3)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
【0034】
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae BY4743(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae BY4743をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
【0035】
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0036】
p-YPL171Cは次のようにして調製した。
酵母遺伝子YPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号5)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
ACGCCCCTTCCTTTTTCCCTTTC (配列番号6)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
CTTCTAAATTTAAACTTCGCTA (配列番号7)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
【0037】
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae BY4743(YKO Plate sets: Yeast Deletion Homozygous Diploid complete set, ResGen TM, Invitrogen)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae BY4743をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
【0038】
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ヒスチジン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0039】
3)化学物質感受性試験
得られた形質転換体をSD培地(ヒスチジン、ロイシン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体を上記同じ培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の化学物質を負荷した。化学物質負荷後、4時間培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測し、マーカー遺伝子であるGFP(green fluorescence protein)の発現量とした。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に計測した化学物質を負荷しない細胞の蛍光強度を求めて、蛍光強度比として示した。
【0040】
4)結果
遺伝子破壊株DEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022、DEL025(表7)をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。負荷する化学物質はBY4743をホストとした場合に応答を示す、メタ亜ヒ酸ナトリウム、塩化カドミウム、ベンチオカーブおよび塩化水銀(II)を選択して用いた。化学物質の希釈系列を作成して負荷試験を行った結果を図1から5に示す。
図1は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに応答したことを示している。
図2は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL014が1/3000の濃度、遺伝子破壊株DEL016が1/3の濃度においてメタ亜ヒ酸ナトリウムに応答したことを示している。
図3は、遺伝子破壊株DEL002が親株の1/3の濃度、遺伝子破壊株DEL011が1/3の濃度、DEL016が1/3の濃度、DEL019025が1/3の濃度、遺伝子破壊株DELが1/3の濃度において塩化カドミウムに応答したことを示している。
図4は、遺伝子破壊株DEL000が親株の1/3の濃度、遺伝子破壊株DEL019が1/100の濃度、DEL022が1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL025が1/3の濃度においてベンチオカーブに応答したことを示している。
図5は、遺伝子破壊株DEL011が親株の1/10の濃度、遺伝子破壊株DEL016が1/3の濃度において塩化第二水銀に応答したことを示している。
このように、DEL000、DEL002、DEL011、DEL014、DEL016、DEL019、DEL022およびDEL025は、親株であるBY4743より化学物質に対する応答性が3倍から1000倍高いことが確認された。特に、DEL0014は親株の検出可能な濃度の1/1000の濃度においてもBY4743と比べ有為な差がみられた(図2)。
【0041】
実施例3
プロモーターアッセイを用いたホモ接合およびヘテロ接合二倍体遺伝子破壊株の検出感度の検討
方法
1)遺伝子破壊株の作成
a−1)遺伝子破壊株形質転換カセット作成
遺伝子破壊株形質転換カセット作成のため、化学物質感受性を有する遺伝子:表7におけるYPR036W(DEL000)、YDL151C(DEL001)、YGL026C(DEL003)、YHR039C-A(DEL006)、YKL080W(DEL007)、YLR447C(DEL008)、YGR006W(DEL012)、YGR105W(DRL013)、YJR104C(DEL014)、YGL206C(DEL018)、YIL036W(DEL019)、YKL119C(DEL020)、YLR226W(DEL022)、YLR311C(DEL025)を選択し、それぞれの遺伝子をカナマイシン耐性などの形質転換マーカーと置き換えた。PCR増幅を行うためのプライマーとしては、それぞれのORFにおけるN末端側(ORF(upper))およびC末端側(ORF(lower))を用いた。プライマーのORFとの相同配列(ORF(upper)およびORF(lower))の長さは45または50bpとした。
遺伝子破壊株形質転換カセット
これらのプライマーを用いて形質転換マーカーの遺伝子配列を含むプラスミドをテンプレートとしてPCR反応を行い電気泳動した結果、全ての遺伝子のプライマーにおいて約1kbの均一なバンドが確認された。これらPCR生成物を遺伝子破壊株形質転換カセットとした。
【0042】
a−2)コンピテント・セルの作成および形質転換
酵母遺伝子破壊株を作成する株はW303 a接合型 ATCC200903 (MATa ade2-1 trp1-1 leu2-3 leu2-112 his3-11 his3-15 ura3-1 can1-100)とW303 α接合型 ATCC201238 (MATα ade2-1 trp1-1 leu2-3 leu2-112 his3-11 his3-15 ura3-1 can1-100)を用いた。W303a接合型およびW303α接合型のコンピテント・セルを作成し、先に調製した遺伝子破壊株形質転換カセットで形質転換を行った。コンピテント・セルの作成および形質転換は市販のキット(S.c. easyCompTM Transformation Kit : Invitrogen)を用いた。
【0043】
a−3)形質転換の確認
形質転換の確認はPCRを用いた。ターゲットとした遺伝子のプロモーター領域内にアッパープライマー、形質転換マーカー内にロウワープライマーを設定し、PCRを行った。この結果、ORF部位が形質転換マーカーで置換され遺伝子破壊がなされているとプライマーに挟まれた部位が増幅され、遺伝子が破壊されていないと増幅されないことから確認できた。
【0044】
b)ホモ接合二倍体、ヘテロ接合二倍体の作成
Saccharomyces crevisiae a およびαの接合型の単相体を混合培養することによりa/α型の2倍体を作成することができる。
同一の遺伝子について遺伝子破壊操作を行ったW303 a接合型(ATCC200903)とW303 α接合型(ATCC201238)を、接合操作(酵母遺伝子実験マニュアル:丸善株式会社 p83-92)により接合を行いHomozygous diploids(ホモ接合二倍体)を作成した。また、W303 a接合型と遺伝子破壊を行わないW303 α接合型の接合を同様の操作で行い Heterozygous diploids(ヘテロ接合二倍体)を作成した。
この様な操作により表7におけるDEL000、DEL001、DEL003、DEL006、DEL007、DEL008、DEL012、DEL013、DEL014、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022、DEL025のホモ接合二倍体を作成した。また、DEL006、DEL014およびDEL022と遺伝子非破壊株を接合させたヘテロ接合二倍体(以下、DEL006ヘテロ接合二倍体、DEL014ヘテロ接合二倍体、DEL022ヘテロ接合二倍体と記述)、さらにDEL000とDEL014を接合させたヘテロ接合二倍体(以下、DEL000/014ヘテロ接合二倍体と記述)を作成した。
【0045】
c)プロモーターアッセイ形質転換体の作成
遺伝子破壊株の親株であるW303 ATCC201239 (MATa/MATα leu2-3/leu2-3 leu2-112/leu2-112 trp1-1/trp1-1 ura3-1/ura3-1 his3-11/his3-11 his3-15/his3-15 ade2-1/ade2-1 can1-100/can1-100)および作成した遺伝子破壊株各々のコンピテントセルを作成した。このコンピテントセルを、作成したプロモーターアッセイ用の2種類のプラスミド、p-YBR072W(YBR072Wのプロモーターの下流にGFPを連結)およびp-YPL171C(YPL171Cのプロモーターの下流にGFPを連結)を用いて形質転換した。
詳細には、p-YBR072Wを次の手法により調製した。
酵母遺伝子YBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号1)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
GCAGTCAACGAGGAGCGAATCAG (配列番号2)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
GTTAATTTGTTTAGTTTGTTTG (配列番号3)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYBR072Wのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
次に、このプラスミドベクターで親株もしくは遺伝子破壊株を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
p-YPL171Cは次のようにして調製した。
酵母遺伝子YPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)(配列番号5)をPCRにより増幅するためのプライマーを作成した。プライマーはプライマー設計用のソフトウェアであるOligo4.0-S,SequencherIマッキントッシュ版を用いて設計し、アッパープライマーの塩基配列は、
ACGCCCCTTCCTTTTTCCCTTTC (配列番号6)
であり、ロウワープライマーの塩基配列は、
CTTCTAAATTTAAACTTCGCTA (配列番号7)
とした。PCRはテンプレートとして酵母の染色体(Saccharomyces cerevisiae S288C, Cat.40802,Reserch Genetics, Inc.)を用い、試薬は市販のキット(KOD DNA Polymerase;コードKOD-101、Toyobo)を使用した。
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分(配列番号4)を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるYPL171Cのプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。
次に、このプラスミドベクターで親株もしくは遺伝子破壊株を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振とう培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振とう培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0046】
2)化学物質感受性試験
得られたプロモーターアッセイ形質転換体をSD培地(アデニン、ヒスチジン、トリプトファン、ロイシン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体を上記同じ培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の化学物質を負荷した。化学物質負荷後、4時間培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測し、マーカー遺伝子であるGFP(green fluorescence protein)の発現量とした。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に計測した化学物質を負荷しない細胞の蛍光強度を求めて、蛍光強度の差として示した。
結果
遺伝子破壊株DEL000、DEL001、DEL003、DEL006、DEL007、DEL008、DEL012、DEL013、DEL014、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022、DEL025(表7)のホモ接合二倍体をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。さらにDEL006、DEL014およびDEL022と遺伝子非破壊株のヘテロ接合二倍体、またDEL000とDEL014のヘテロ接合二倍体をホスト細胞とした場合のプロモーターアッセイ法の検出感度を検討した。負荷する化学物質は、プラスミドp-YPL171Cを用いたプロモーターアッセイ法にはW303をホストとした場合に応答を示すメタ亜ヒ酸ナトリウムおよびチウラム、p-YBR072Wにはベンチオカーブを選択して用いた。化学物質の希釈系列を作成して負荷試験を行った結果を図6から図11に示す。
【0047】
図6: DEL003、DEL006,DEL008、DEL014、DEL019とDEL022は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図7: DEL000ホモ接合二倍体、DEL014ヘテロ接合二倍体、DEL014のホモ接合二倍体およびDEL000/014ヘテロ接合二倍体は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。
図8: DEL001、DEL006,DEL007、DEL018、DEL019、DEL020、DEL022とDEL025は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図9: 同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。
図10: DEL006、DEL007、DEL012、DEL013、DEL020、DEL022とDEL025は同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より同等もしくはそれ以上の蛍光強度を示した。遺伝子破壊株は何れもホモ接合二倍体である。
図11: 同濃度の化学物質負荷により遺伝子非破壊株より強い蛍光強度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
ケミカルプレートによる化学物質感受性試験の結果から遺伝子破壊株を選択し、実際にこれをホスト細胞として化学物質応答遺伝子組換え体細胞を作成し、化学物質応答性を測定した。その結果、化学物質によっては約1000倍の感受性が得られた。このことから、この手法を用いることにより実用の場面で必要な感度を有するホスト細胞の開発の可能性が確認された。
今回のホスト細胞の検討は、化学物質全般に感受性を示す遺伝子破壊株を用いたが、レポーター・ジーン・アッセイ法に用いる遺伝子およびターゲットとする化学物質によっては、特定の化学物質に感受性を有する方が有利な場合も考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための方法であって、該被検試料の存在下に微生物の遺伝子破壊株を培養し、その化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答を指標に用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答が、細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である請求項2記載の方法。
【請求項4】
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する請求項2記載の方法。
【請求項5】
微生物が酵母である、請求項1から4までのいずれか記載の方法。
【請求項6】
破壊される遺伝子が、公的データベース:MIPSの分類に従い、
代謝(01)のアミノ酸代謝(01.01)、窒素および硫黄代謝(01.02)、ヌクレオチド代謝(01.03)、リン酸代謝(01.04)、C-化合物および炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸およびイソプロパノイド代謝(01.06)、ビタミン、コファクターおよび補欠分子族の代謝(01.07);
細胞周期とDNAプロセッシング(03)のDNAプロセッシング(03.01)、細胞周期(03.03);
転写(04)のmRNA 転写(04.05)、RNA 輸送(04.07);
蛋白合成(05)のリボゾーム生合成(05.01)、翻訳制御(05.07);
蛋白フェイト(06)の蛋白ターゲッティング、局在、転位(06.04)、蛋白修飾(06.07)、蛋白複合体のアセンブル(06.10)、蛋白分解的崩壊(06.13);
細胞内輸送と輸送機構(08)の核輸送(08.01)、小胞輸送 (ゴルジネットワーク他.)(08.07)、液胞輸送(08.13)、細胞移入(08.19)、細胞骨格輸送(08.22)、他の細胞内輸送活性(08.99);
細胞レスキュー, 防御と病原性(11)のストレス応答(11.01)、解毒(11.07);
細胞内環境調節/相互作用(13)のイオン性ホメオスタシス(13.01)、細胞感受性と応答(13.11);
細胞フェイト(14)の細胞成長 / 形態形成(14.01)、細胞分化(14.04);
細胞組織の制御(30)の細胞壁(30.01)、細胞骨格(30.04)、核(30.10)、ミトコンドリア(30.16);
輸送促進(67)のイオントランスポーター(67.04)、ビタミン/コファクタートランスポーター(67.21)、輸送機構(67.50)、他の輸送促進(67.99);
未分類(98);および/または
未分類蛋白(99)に分類される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
破壊される遺伝子が液胞に関与している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
破壊される代謝(01)遺伝子がYGL026C、YGR180C、YDR127W、YCR028C、YLR284C、YOR221C、YAL021C、YGL224C、YBL042C、YDR148C、YHL025W、YLR307W、YLR345W、YLR354C、YPL129W、YPR060Cである請求項6記載の方法。
【請求項9】
破壊される細胞周期とDNAプロセッシング(03)遺伝子がYGR180C、YDR150W、YGL240W、YBL058W、YIL036W、YLR226W、YLR381W、YOR026W、YPL018W、YBL063W、YDR363W-A、YIR026C、YLR234W、YMR032W、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項10】
破壊される転写(04) 遺伝子がYGR006W、YIL036W、YKR082W、YLR226W、YML112W、YMR021C、YAL021C、YDR195W、YOL068C、YBR279W、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YHL025W、YLR266C、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項11】
破壊される蛋白合成(05)遺伝子がYBL058W、YLR287C-A、YGR084C、YLR344Wである請求項6記載の方法。
【請求項12】
破壊される蛋白フェイト(06)遺伝子がYKL080W、YLR447C、YGL240W、YGR105W、YGL206C、YKL119C、YDR414C、YHR060W、YLR292C、YLR306W、YGL227W、YGR270Wである請求項6記載の方法。
【請求項13】
破壊される細胞内輸送と輸送機構(08)遺伝子がYPR036W、YDR027C、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL206C、YKR082W、YLR292C、YBL063Wである請求項6記載の方法。
【請求項14】
破壊される解毒(11)遺伝子がYJR104C、YMR021Cである請求項6記載の方法。
【請求項15】
破壊される細胞内調節/相互作用(13)遺伝子がYPR036W、YHR039C-B、YKL080W、YLR447C、YGL071W、YIR026Cである請求項6記載の方法。
【請求項16】
破壊される細胞フェイト(14)遺伝子がYDL151C、YBL058W、YKR082W、YDL151C、YOL068C、YDR363W-A、YHL025W、YIR026C、YLR307W、YMR032W、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項17】
破壊される細胞組織の制御(30)遺伝子がYDR027C、YDR414C、YLR381W、YGR084C、YMR032Wである請求項6記載の方法。
【請求項18】
破壊される輸送促進(67)遺伝子がYPR036W、YHR026W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YCR028C、YLR292Cである請求項6記載の方法。
【請求項19】
破壊される未分類(98)遺伝子がYBL056Wである請求項6記載の方法。
【請求項20】
破壊される未分類蛋白(99)遺伝子がYDR149C、YLR285W、YLR311C、YOR331C、YPR123C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL246C、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR290C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR283W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YPL030Wである請求項6記載の方法。
【請求項21】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するために使用される、微生物の遺伝子破壊株を含むキット。
【請求項22】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物。
【請求項23】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株の使用。
【請求項1】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための方法であって、該被検試料の存在下に微生物の遺伝子破壊株を培養し、その化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答を指標に用いることを特徴とする方法。
【請求項2】
化学物質に対する遺伝子破壊株の細胞応答が、細胞の生死、および/または増殖能、呼吸量、酵素活性および/または遺伝子発現の変化である請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子発現の変化が、RNA量またはmRNA量の変化である請求項2記載の方法。
【請求項4】
遺伝子発現の変化をレポーター・ジーン・アッセイにより測定する請求項2記載の方法。
【請求項5】
微生物が酵母である、請求項1から4までのいずれか記載の方法。
【請求項6】
破壊される遺伝子が、公的データベース:MIPSの分類に従い、
代謝(01)のアミノ酸代謝(01.01)、窒素および硫黄代謝(01.02)、ヌクレオチド代謝(01.03)、リン酸代謝(01.04)、C-化合物および炭水化物代謝(01.05)、脂質、脂肪酸およびイソプロパノイド代謝(01.06)、ビタミン、コファクターおよび補欠分子族の代謝(01.07);
細胞周期とDNAプロセッシング(03)のDNAプロセッシング(03.01)、細胞周期(03.03);
転写(04)のmRNA 転写(04.05)、RNA 輸送(04.07);
蛋白合成(05)のリボゾーム生合成(05.01)、翻訳制御(05.07);
蛋白フェイト(06)の蛋白ターゲッティング、局在、転位(06.04)、蛋白修飾(06.07)、蛋白複合体のアセンブル(06.10)、蛋白分解的崩壊(06.13);
細胞内輸送と輸送機構(08)の核輸送(08.01)、小胞輸送 (ゴルジネットワーク他.)(08.07)、液胞輸送(08.13)、細胞移入(08.19)、細胞骨格輸送(08.22)、他の細胞内輸送活性(08.99);
細胞レスキュー, 防御と病原性(11)のストレス応答(11.01)、解毒(11.07);
細胞内環境調節/相互作用(13)のイオン性ホメオスタシス(13.01)、細胞感受性と応答(13.11);
細胞フェイト(14)の細胞成長 / 形態形成(14.01)、細胞分化(14.04);
細胞組織の制御(30)の細胞壁(30.01)、細胞骨格(30.04)、核(30.10)、ミトコンドリア(30.16);
輸送促進(67)のイオントランスポーター(67.04)、ビタミン/コファクタートランスポーター(67.21)、輸送機構(67.50)、他の輸送促進(67.99);
未分類(98);および/または
未分類蛋白(99)に分類される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
破壊される遺伝子が液胞に関与している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
破壊される代謝(01)遺伝子がYGL026C、YGR180C、YDR127W、YCR028C、YLR284C、YOR221C、YAL021C、YGL224C、YBL042C、YDR148C、YHL025W、YLR307W、YLR345W、YLR354C、YPL129W、YPR060Cである請求項6記載の方法。
【請求項9】
破壊される細胞周期とDNAプロセッシング(03)遺伝子がYGR180C、YDR150W、YGL240W、YBL058W、YIL036W、YLR226W、YLR381W、YOR026W、YPL018W、YBL063W、YDR363W-A、YIR026C、YLR234W、YMR032W、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項10】
破壊される転写(04) 遺伝子がYGR006W、YIL036W、YKR082W、YLR226W、YML112W、YMR021C、YAL021C、YDR195W、YOL068C、YBR279W、YGL070C、YGL071W、YGL222C、YHL025W、YLR266C、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項11】
破壊される蛋白合成(05)遺伝子がYBL058W、YLR287C-A、YGR084C、YLR344Wである請求項6記載の方法。
【請求項12】
破壊される蛋白フェイト(06)遺伝子がYKL080W、YLR447C、YGL240W、YGR105W、YGL206C、YKL119C、YDR414C、YHR060W、YLR292C、YLR306W、YGL227W、YGR270Wである請求項6記載の方法。
【請求項13】
破壊される細胞内輸送と輸送機構(08)遺伝子がYPR036W、YDR027C、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YGL206C、YKR082W、YLR292C、YBL063Wである請求項6記載の方法。
【請求項14】
破壊される解毒(11)遺伝子がYJR104C、YMR021Cである請求項6記載の方法。
【請求項15】
破壊される細胞内調節/相互作用(13)遺伝子がYPR036W、YHR039C-B、YKL080W、YLR447C、YGL071W、YIR026Cである請求項6記載の方法。
【請求項16】
破壊される細胞フェイト(14)遺伝子がYDL151C、YBL058W、YKR082W、YDL151C、YOL068C、YDR363W-A、YHL025W、YIR026C、YLR307W、YMR032W、YPL129Wである請求項6記載の方法。
【請求項17】
破壊される細胞組織の制御(30)遺伝子がYDR027C、YDR414C、YLR381W、YGR084C、YMR032Wである請求項6記載の方法。
【請求項18】
破壊される輸送促進(67)遺伝子がYPR036W、YHR026W、YHR039C、YKL080W、YLR447C、YCR028C、YLR292Cである請求項6記載の方法。
【請求項19】
破壊される未分類(98)遺伝子がYBL056Wである請求項6記載の方法。
【請求項20】
破壊される未分類蛋白(99)遺伝子がYDR149C、YLR285W、YLR311C、YOR331C、YPR123C、YDR525W-A、YDR539W、YDR540C、YGL246C、YJL204C、YLR282C、YLR287C、YLR290C、YJL188C、YJL192C、YJL211C、YKL037W、YLR283W、YLR312C、YLR315W、YLR320W、YPL030Wである請求項6記載の方法。
【請求項21】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するために使用される、微生物の遺伝子破壊株を含むキット。
【請求項22】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株を含む組成物。
【請求項23】
被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための、微生物の遺伝子破壊株の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/054511
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515926(P2005−515926)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017779
【国際出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/017779
【国際出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マッキントッシュ
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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