説明

遺伝子組み換え不活性化ウィルスベクターワクチン

対象疾患をコードする外部ヌクレオチド配列を挿入した不活性化ウィルスベクター、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバントまたは添加剤を含み、同一のウィルスベクターに基づく活性ウィルスワクチンに要求されるのと同等の力価のウィルスベクターの使用で、対象疾患に対する所望の防御を示すワクチンについて記述されている。主に、パラミクソウィルスまたはアデノウィルスのウィルスベクターについて記述されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、疾患の予防及び治療、好ましくはトリの疾患の予防及び治療に使用される技術に関し、特には、疾患の抗原活性を有するタンパク質をコードする外部ヌクレオチド配列が挿入されている、不活性化されたウィルスベクター、及び、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバントまたは添加剤を含む遺伝子組み換えワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られるように、ウィルス病原に対するワクチンは、ワクチン製造のために分離された対応するウィルスより調製され、多様な剤形で動物または人に投与される。
【0003】
一方、活性ウィルスの完全体を使用するワクチン剤であって、該ウィルスは、現場で低い病原性を示すものか、人工的に病原性を低くしたもので、投与されたとき、高い病原性を有する同種のウィルス株に対する防御をするのに十分な抗体反応を生じさせるものがある。
【0004】
例えば、ニューカッスル病(ND)は、ウィルス性で高い接触伝播性を有し、全体的に致死率の高い疾患である。この疾患は、国内の野鳥に感染しやすく、高い罹患率と死亡率を示す。NDは、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科アブラウイルス(Avulavirus)属に属するウィルスにより引き起こされる。ウィルス株は、その病原性と毒性の度合いによって、長潜伏期性、中潜伏期性、及び短潜伏期性(順に、低、中、高病原性)に分類される(Office International des Epizooties (2008). Newcastle Disease. OIE Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals. Office International des Epizooties. France, p.576-589)。
【0005】
NDウィルス(NDV)には、複数の感染経路がある。例えば、トリの生体または死体、及びトリの生産物もしくは副生物から直接感染する経路、または感染した昆虫や他の動物(人を含む)等に運搬されることにより間接的に感染する経路がある。高い死亡率を示す短潜伏期型NDV(VNDV)の潜伏期間は約21日間であり、息切れ、くしゃみ、協調運動失調、翼の逆立ち、足のひきずり、頭部首部のねじれ、顔面けいれん、循環性転移、衰弱、食欲減退、完全麻痺といった、呼吸器系及び/または神経系の症状を示す。加えて、間欠的もしくは完全な産卵中断が見られる。または、水性アルブミンを含む、変形した卵、もしくは薄くやわらかい殻の卵が見られる。
【0006】
NDをコントロールして抑制する戦略のひとつとして、特に長潜伏期型株から製造された活性ウィルスワクチンの使用が挙げられる。NDに対する生ワクチンは、呼吸器粘膜レベルにおける防御を誘導し、50年間以上工業的に使用されてきた。これらの活性ウィルスワクチンは、おもにヒッチナー(Hitchner)B1株とラソタ(LaSota)株の長潜伏期型ウィルスの使用に基づいており、LaSota株が最も主要なワクチンである(国際伝染病事務所(2008) ニューカッスル)。
【0007】
しかし、活性ウィルスがエマルジョン組成物により不活性化されるので、乳化された活性ワクチンの安定性は制限される。よって、活性ワクチンは、特に他の剤形で使用されるか、インサイチュー(in situ)混合物として投与されるが、in situ混合物の投与は、大規模のトリ飼育施設においては適用しにくい。
【0008】
活性ウィルスの主要な問題点は、いつでもワクチンとして使用できるわけではない点である。それ自体が遺伝的多様性を有したり、他の活性ウィルスと遺伝子組み換えを起こしたり、またはインフルエンザウィルスのように、その病原性が変化する傾向を有するからである。インフルエンザは哺乳類と鳥類の両方が罹患する呼吸器系疾患である。一定の個体群におけるインフルエンザウィルス株の発生は、地元の鳥類と、人またはその他の哺乳類にとって、個体に深刻な影響を与え得る。ウィルスが地元のニワトリと哺乳類に感染した場合、ウィルスは早急に変異して新しい個体群に順応し、前記の適応進化過程において同一ウィルス内に重要な生物学的変化をもたらし、宿主及び動物または人の個体群に致命的な結果を引き起こしうる。
【0009】
特に、トリインフルエンザ(AI)は、オルソミクソウイルス(Orthomyxoviridae)科からのA型ウィルスによって引き起こされる高度に感染性のあるウィルス病原を有する疾患である。AIウィルス(AIV)のほとんどは野鳥、特に水鳥から検出される。水鳥は、低病原性AIウィルス(LPAIV)のリザーバー及びキャリアの役割を果たしている。これらのウィルスが家禽、主にキジ類(gallinaceae)(ニワトリ、七面鳥、ウズラ、その他)のような天然状態ではないウィルス宿主に感染した場合、ウィルスは適応過程によって高病原型(HPAIV)に変異する。
【0010】
AIVは2つの外殻タンパクによって分類される。1つめはヘマグルチニンであり、もっとも重要であり、感染、もしくはワクチン接種したトリの抗体反応を中和させる働きを有し、16の異なるサブタイプまたはセロタイプが報告されている。2つめのタンパク質は、ノイラミニダーゼであり、9つの異なるサブタイプが報告されている。特に、対トリのもっとも重要なウィルスは、セロタイプH5とH7のヘマグルチニンを有するものであり、高病原性への変異を生じた場合、死亡率が100%近くになることもありうる。
【0011】
同様に、鳥類におけるAI病は、2つの臨床型を有する。第1は、軽症を生じる低病原性トリインフルエンザ(LAPI)であり、羽毛の質低下や、卵の生産性低下を引き起こすこともある。しかし、トリに対するAIの主要な問題点は高い変異可能性であり、100%近くの死亡率を生じ得る高病原性トリインフルエンザ(HPAI)という、第2の臨床型へと移行する。
【0012】
特に、AIの臨床症状は多様であり、取り込まれたウィルスのサブタイプ、その病原性、免疫状態、感染したトリの種類によって異なる。HPAIVの潜伏期間は21日間であり、臨床症状は結膜炎、羽毛の逆立ちが見られる発熱、抑うつ、衰弱及び死亡と多岐にわたる。よく報告される外科的症状は、肺うっ血、出血及び浮腫がある。
【0013】
一度AIVが家禽農場に入り込むと、糞や呼吸器液として環境中に排出される。ウィルスの他のトリへの転移及び伝播は、主に感染したトリの排泄物、特に汚染した糞、食物、水、備品布への直接接触により引き起こされる。感染しやすさや疾患の症状の発現は、かなり多様である。
【0014】
この種の疾患に対しては、活性ウィルスワクチンでは制御が困難であり、投与の間に制御不能となれば、動物、人体の健康にさえも危険を生じる可能性があるため、不活性化ウィルスワクチン、特に乳化されたものの使用が適している。
【0015】
先行技術において、前述したAIのような、多様なウィルス性疾患を予防するために、いくつかのワクチンが開発されてきた。AIについては、すでにAIウィルスの完全体を含有する乳化ワクチンが存在する。このワクチンはニワトリの胚で作られる。このウィルスは不活性化されており、皮下投与または筋肉内投与によって商業用鳥類に投与できるよう、油/水系に乳化されている(Office International des Epizooties (2008). Avian Influenza. OIE Manual of Diagnostic Test and Vaccines for Terrestrial Animals, Office International des Epizooties France, p. 465-481)。
【0016】
さらに、AI不活性化ウィルスで作られたワクチンは、全身レベルで強い免疫反応を惹起し、AIの両方の型の制御について良好な効果を奏した。ワクチン接種は、疾患の臨床症状を抑えること、可能な限り感染個体からのウィルスの環境中への排出を減少させること、の両方の目的で行われる。ウィルス排出の減少は、ウィルス接種されたトリが感染した場合に、まだ感染していないトリへのウィルスの拡散機会を減じることが可能である(Swayne, D, y Kapczynski, D (2008), Vaccines, Vaccination and Immunology for avian influenza viruses in poultry. In Avian Influenza. Ed by David Swayne. Blackwell Publishing, USA, p.407-451)。
【0017】
加えて、乳化された不活性化ウィルスワクチンは、より高い安定性を有し、ワクチンのより良好な品質管理と長期保存を可能とする。したがって、NDワクチンについても、乳化不活性化ウィルスとして製剤されている。
【0018】
活性ウィルスワクチンと不活性化ウィルスワクチンの主な違いのひとつは、投与時に抗原反応を生じるために要するウィルス量であることも重要な考察である。
【0019】
活性ウィルスは、細胞内で完全な増殖能を有することから、ワクチンに必要とされるウィルス量は、抗原反応を引き起こす投与量より少ない。これは、ワクチンを投与された個体が害されるのを防ぐためであり、ウィルスは自然状態で複製可能であり、組織内に複製が為されれば、抗原反応に必要とされるに十分なウィルス量に到達しうることを考慮したものである。
【0020】
一方、不活性化ウィルスワクチンは、同様の抗原活性を奏するためには、活性ウィルスのそれより高いウィルス濃度、一般的に少なくとも10倍高いウィルス濃度を要する。ウィルスの複製能が取り除かれたため、ウィルスが通常のように複製されず、そのためにその量が増えないことから、ワクチンを投与したときに免疫反応を引き起こすのに必要な抗原の全量がそれだけ多くなるからである。
【0021】
一方、バイオテクノロジーの分野におけるもっとも顕著な利点の1つは、組み換えワクチンの使用である。生体のDNA特異的断片を分離、接合し(または組み換え)、ベクターやDNAプラスミドのような手段を用いて、遺伝子サイズでこれら断片を他の生体に移行させることにより、防御抗体の形成を誘導する抗原の生産を促進し、もって新たなワクチンの誘導を可能とする。従来のワクチンとは対照的に、組み換え技術は、前述のAIのような疾患に関して、非常に重要な利点を有する。AIのような疾患に関しては、高い変異能を有する活性ウィルスの完全体を使用することはできず、不活性化ウィルスの完全体の使用は、不活性化過程に不備を生じるおそれがある。組み換えワクチンは、その活性型において、対象の疾患に対する抗原を発現するために必要なヌクレオチドを挿入したものであるが、呼吸器粘膜レベルの部位的免疫を誘導するために、低病原性の活性ウィルスベクターによって安全に投与される。非組み換え生ウィルスではリスクが高く、このような投与は不可能である。
【0022】
組み換えワクチンの他の利点としては、ウィルスベクターを使用できることが挙げられる。通常、ウィルスベクターとしては、防御を対象とする疾患には対応しないウィルスを使用する。ウィルスベクターの使用は、動物診断分野や、DIVAとして知られる、感染した動物からウィルス接種した動物を識別するタイプの予防技術の分野において、ワクチンの使用を可能とするものである(Capua, I et al., “Development of a DIVA (differentiating infected from vaccinated animals) strategy using a vaccine containing a heterologous neuraminidase for the control of avian influenza”. Avian Pathology 32(1) pp. 47-55)。
【0023】
次に、従来AI及び他の類似の疾患を制御するために使用されていたワクチン(油に乳化された、不活性化された完全体ウィルス)は、HPAIVによる死亡率を抑制することはできるが、鳥類におけるAIVの感染と複製を防ぐことはできなかったため、ウィルスの排出と拡散の減少は制限されていた。
【0024】
そのため、先行技術において、トリインフルエンザのように制御が困難な疾患の抗原領域をコードする遺伝子を挿入した、ニューカッスルのような低病原性の病原ウィルスからのウィルスベクターが開発されてきた。Ge, Deng, Tianらの“Newcastle disease virus-based live attenuated vaccine completely protects chickens and mice”, J. Vir. Vol. 81, No. 1, p. 150-158”の文献には、このような、活性型の遺伝子組み換えワクチンが開示されている。特に前記文献は、トリインフルエンザのサブタイプH5N1の遺伝子を有するLaSota株を使用した臨床試験の結果を開示するものである。
【0025】
同技術分野の他の先行技術文献としては、Park, Man Seongらの“Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian Influenza and Newcastle disease”. PNAS Vol. 103, No. 21, May 12, 2006 p. 8203-8208がある。この文献はトリインフルエンザの遺伝子発現を増幅させる技術に関するものであり、このような技術は「アンカリング」と呼ばれるものである。
【0026】
同種の遺伝子組み換えワクチンを活性ウィルスワクチンと置き換えることで、前述の利点が発揮されるものの、組み換えワクチンはいまだ不活性化完全体ウィルスワクチン程の利点を有しておらず、結局のところ、組み換えワクチンは外部より挿入した遺伝子に関して、適切な免疫を与えることができない。これは、前述のインフルエンザを有するニューカッスルのような組み換えワクチンは、両方の疾患に対して抗原活性を発現するが、ベクターに挿入された抗原領域については、オリジナルの抗原領域よりも、より高い露出度を要する、という事実によるものである。結果として、アンカリングのような技術開発がなされており、それにより、前述のインフルエンザの事例のように、遺伝子修飾の手法によって、ウィルスベクター中でのより良い抗原発現が可能となった。しかしながら、このような技術の全てが成功したとはいえない。
【0027】
したがって、活性ウィルスからの遺伝子組み換えワクチンは、使用されるウィルスベクターに対応して、対象とする生体の抗原領域を適切に露出させるために、活性ウィルスからの非組み換えワクチンの使用時と比して、約10倍のウィルス濃度で製剤される。
【0028】
同様に、遺伝子組み換えワクチンは、通常のウィルスと比して100倍以上(遺伝子組み換え活性ウィルスの10倍以上)の濃度のウィルスベクター濃度を要することが示唆されてからは、不活性型では使用されてこなかった。これは、工業生産を非常に困難とする問題であった。その結果、一般的に、これらの遺伝子組み換え活性ウィルスワクチンもまた、エマルジョンとしては使用されてこなかった。エマルジョンは、その安定性が制限され、活性ウィルスベクターの活性状態の点についても適しているとは言えないためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Office International des Epizooties (2008). Newcastle Disease. OIE Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals. Office International des Epizooties. France, p.576-589
【非特許文献2】Office International des Epizooties (2008). Avian Influenza. OIE Manual of Diagnostic Test and Vaccines for Terrestrial Animals, Office International des Epizooties France, p. 465-481
【非特許文献3】Swayne, D, y Kapczynski, D (2008), Vaccines, Vaccination and Immunology for avian influenza viruses in poultry. In Avian Influenza. Ed by David Swayne. Blackwell Publishing, USA, p.407-451
【非特許文献4】Capua, I et al., “Development of a DIVA (differentiating infected from vaccinated animals) strategy using a vaccine containing a heterologous neuraminidase for the control of avian influenza”. Avian Pathology 32(1) pp. 47-55
【非特許文献5】Ge, Deng, Tian et al.“Newcastle disease virus-based live attenuated vaccine completely protects chickens and mice”, J. Vir. Vol. 81, No. 1, p. 150-158”
【非特許文献6】Park, Man Seong et al.“Engineered viral vaccine constructs with dual specificity: Avian Influenza and Newcastle disease”. PNAS Vol. 103, No. 21, May 12, 2006 p. 8203-8208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
要約すると、上記より、より安全で効果的な手段で製造され、より高い安定性を有し、適切な制御が可能で、かつ効果的な結果を示す、遺伝子組み換え技術を用いた多様な疾患に対するワクチンに対して、多大な需要があることがみてとれる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の開発過程において、予想に反して、対象とする疾患の抗原領域をコードする外部ヌクレオチド配列が挿入された遺伝子組み換え不活性化ウィルスベクター、薬学的に許容可能な乳化された賦形剤、アジュバントまたは添加剤を含み、同種のウィルスベクターの遺伝子組み換え活性ウィルスワクチンに必要な濃度と同程度の濃度のウィルスベクターを使用して、対象とする同種の疾患に対する防御を行う、ワクチンが発見された。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、外部遺伝子配列は、インフルエンザ、伝染性喉頭気管炎、伝染性気管支炎、伝染性ファブリキュウス嚢病(ガンボロ病)、肝炎、ウィルス性鼻気管支炎、鼻感冒、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumonieae)、パスツレラ病、ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、サーコウィルス、気管支敗血症菌病、パラインフルエンザに対する抗原領域、または対応するウィルスベクターに挿入可能なサイズの他の抗原領域より選択される。好適には、トリインフルエンザ、喉頭気管炎、伝染性気管支炎、伝染性ファブリキュウス嚢病(ガンボロ病)、肝炎、PRRS、及びサーコウィルスから選択される抗原が使用される。
【0033】
本発明の特徴的な実施形態において、外部ヌクレオチド配列は、トリインフルエンザウィルスのヘマグルチニン(HA)をコードする遺伝子よりなり、インフルエンザウィルスのヘマグルチニンの16サブタイプまたは免疫原変異型から選択される。より好適には、前記タンパクのサブタイプH1、H2、H3、H5、H6、H7またはH9のうち少なくとも1つをコードする。
【0034】
本発明の特徴的な実施形態において、H5遺伝子はメキシコのトリインフルエンザサブタイプH5N2またはアジア由来のサブタイプH5N1より取得され、両サブタイプともHPAIVサブタイプH5N2により引き起こされる死亡率に対して良好な防御効果がみられる。
【0035】
本発明のウィルスベクターに関して、ニューカッスル病ウィルス(rNDV)を外部ヌクレオチド配列を挿入されるウィルスベクターとして使用する、より好適な実施形態においては、前記ウィルスベクターはラソタ(LaSota)株、アルスター(Ulster)株、QV4株、B1株、CA 2002株、ロアキン(Roakin)株、コマロフ(Komarov)株、クローン(Clone)30株、またはVGGA株、あるいはニューカッスル病遺伝群Iから遺伝群Vのウィルス株より好適に選択される。好適な遺伝子組み換えウィルスは、LaSota株(rNDV/LS)である。
【0036】
同様に、ウィルスベクターとしてアデノウィルスを使用する、さらに特徴的な実施形態においては、アデノウィルスは、トリアデノウィルス及びブタアデノウィルスから選択され、より好適には、トリアデノウィルス9型(rFAdV/9)及びブタアデノウィルス5型(rSAdV/5)より選択される。
【0037】
下記に詳説される結果によると、本発明に係る手段によって、ウィルスベクター中において、対象とする疾患の特異的抗原決定基をコードする外部ヌクレオチド配列を使用して、遺伝子組み換え不活性化ウィルスワクチンのエマルジョンまたは他の薬学的に許容可能なアジュバント混合物を製造することが可能となる。
【0038】
本発明のワクチン(rNDV/LS-H5)によってもたらされた結果は予測を超えるものであった。従来は、ウィルスベクターの遺伝子組み換えワクチンの場合、宿主細胞中でのウィルスベクターの複製において、適切な免疫反応を惹起するために十分な組み換えタンパク質の発現が要求されると信じられてきたが、本発明では、対象とする疾患の抗原タンパク質はベクターウィルスの表面に適切かつ十分に発現しており、不活性型でのみ存在することで、前記の対象とする疾患に対する適切な抗原性と防御反応が可能となる。
【0039】
特に、トリインフルエンザのような、高病原性かつ制御困難な疾患の場合、本発明の遺伝子組み換えワクチンの利点は、完全体ウィルスが使用されておらず、ワクチンウィルスが不適切な不活性化により外部に蔓延するリスクを軽減できることである。さらには、本発明のワクチンは、全身レベルのみならず、トリの呼吸器粘膜レベルでの局所的な免疫反応を可能とし、特徴的な実験室での試験において、トリがワクチン型か野生型の完全体ウィルスと接触することにより引き起こされる免疫反応から、本発明のワクチンによる免疫反応を区別することができ、疫学的領域における重要な利点を有する。
【0040】
ワクチンは、皮下投与されるように製造されるが、筋肉内投与または皮内投与のような全身系の経路にも有効に使用可能である。ワクチンには液体の賦形剤が好適に使用され、より好適には、油中水滴型エマルジョンが使用される。しかし、他の種類の免疫反応アジュバントやモジュレーターの使用も有効である。
【0041】
本発明の遺伝子組み換えワクチンによると、野生型ウィルスの環境中への排出を軽減し、ウィルス核酸を大幅に減少させることができる。
【0042】
本発明の新規性を示す部分は、特に添付の請求項により説明されるであろう。しかし、本発明のワクチンは、他の目的や利点を有していてもよく、明確に特徴的な実施形態についての下記の詳細な説明を、添付の図面と関連づけて読むことにより、さらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例6Aの速現性NDV(VNDV)負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図2】実施例6Aの高病原性AIウィルス(HPAIV)サブタイプH5N2負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図3】実施例6BのVNDV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図4】実施例6BのHPAIV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図5】実施例6CのVNDV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図6】実施例6CのHPAIV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図7】実施例6DのVNDV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【図8】実施例6DのHPAIV負荷試験における死亡率(M)と罹患率(MI)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の開発過程において、対象とする疾患をコードするヌクレオチド配列を挿入された不活性化ウィルスベクター、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバントまたは添加剤を含み、同種のウィルスベクターの遺伝子組み換え活性ウィルスワクチンに必要な濃度と同程度の濃度のウィルスベクターを使用して、対象とする同種の疾患に対する防御を行う、ワクチンが評価された。
【0045】
本発明では、ウィルスベクターは基本的に不活性化される。不活性化とは、ウィルスベクターとして働き、対象の疾患の抗原領域をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えウィルスが、複製機能を失った状態を意味する。不活性化は、当業者によく知られた物理的または化学的な方法により行われ、好適には、ホルムアルデヒドまたはベータプロピオラクトンで化学的な不活性化が行われる(Office International des Epizooties (2008). Newcastle Disease. OIE Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals. Office International des Epizooties. France, p. 576-589)。対照的に、生ウィルスまたは活性ウィルスとは、複製能を保持するものを指す。
【0046】
ウィルスベクターは、好適にはアデノウィルスまたはパラミクソウィルスから選択され、不活性化され、対象とする疾患の少なくとも一つの抗原領域をコードする外部ヌクレオチド配列を挿入される。前記疾患は、インフルエンザ、伝染性喉頭気管炎、伝染性気管支炎、伝染性ファブリキュウス嚢病(ガンボロ病)、肝炎、ウィルス性鼻気管支炎、鼻感冒、Mycoplasma hyopneumonieae、パスツレラ病、ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、サーコウィルス、気管支敗血症菌病、パラインフルエンザ、または抗原領域が対応するウィルスベクターに挿入可能なサイズであるもののうち、少なくとも一つが選択される。好適には、トリインフルエンザ、喉頭気管炎、伝染性気管支炎、伝染性ファブリキュウス嚢病(ガンボロ病)、肝炎、PRRS、及びサーコウィルスから選択される抗原が使用される。
【0047】
本発明の特徴的な実施形態において、外部ヌクレオチド配列は、トリインフルエンザウィルスのヘマグルチニン(HA)をコードする遺伝子よりなり、インフルエンザウィルスのヘマグルチニンの16サブタイプまたは免疫原変異型から選択される。より好適には、前記タンパクのサブタイプH1、H2、H3、H5、H6、H7またはH9のうち少なくとも1つをコードする。
【0048】
本発明のウィルスベクターに関して、ニューカッスル病ウィルス(rNDV)を、外部ヌクレオチド配列を挿入されるウィルスベクターとして使用する、より好適な実施形態においては、前記ウィルスベクターはLaSota株、Ulster株、QV4株、B1株、CA 2002株、Roakin株、Komarov株、Clone 30株、またはVGGA株、あるいはニューカッスル病遺伝群Iから遺伝群Vのウィルス株より好適に選択される。好適な遺伝子組み換えウィルスは、LaSota株(rNDV/LS)のものである。
【0049】
同様に、ウィルスベクターとしてアデノウィルスを使用する、さらに特徴的な実施形態においては、アデノウィルスは、トリアデノウィルス及びブタアデノウィルスから選択され、より好適には、トリアデノウィルス9型(rFAdV/9)及びブタアデノウィルス5型(rSAdV/5)より選択される。
【0050】
インフルエンザが対象の疾患である場合、抗原領域は、トリインフルエンザヘマグルチニン(HA)に対応する抗原領域とすることが好ましい。好適には、トリインフルエンザウィルス由来の遺伝子を取得し、存在する16サブタイプのいずれか、特にサブタイプH5、H7,H9をコードし、好適にはサブタイプH5をコードする。好適には下記のようにBive株、435株、及びViet(VT)株から取得される。この点において、HAサブタイプH5の遺伝子原となる株は、本発明にはそれほど重要ではないと推測される。実験結果によると、いずれの株を用いても有用な遺伝子材料を提供し、本発明の目的を達するからである。
【0051】
より好適な遺伝子原について考慮すると、Bive株からのH5遺伝子が、1994年にメキシコのブロイラーの生物学的試料から単離され、メキシコ政府により(A/chicken/Mexico/232/CPA)と同定されたLPAIV-H5N2に対応することは、言及するに値する事項である。前記のウィルス株は、メキシコ農林水産省(SAGARPA)によって、乳化不活性化ワクチンの製造への使用が認められており、したがって、このウィルスの目的遺伝子による組み換えは、この発明の組み換え遺伝子ワクチンにおいて、生物学的安全性をも保証するものである。
【0052】
第2の好適な遺伝子材料原はH5-435遺伝子であり、これは2005年にメキシコでブロイラーの生物学的試料から単離されたLPAIV-H5N2株から取得されたものである。
【0053】
本発明のワクチンのウィルスベクターは、病原株からの抗原領域の同定により決定された所望のヌクレオチド配列のPCR増幅物が、さらにアデノウィルスまたはパラミクソウィルスから好適に選択されるウィルスベクター中に挿入され、増幅されることによって調製される。挿入物は、制限酵素、DNAリガーゼ、その他の標準的な分子生物学的技術を用いて調製される。調製された感染性のクローンは、前記ウィルスベクターの遺伝子組み換えウィルス調製用の細胞株に導入される。
【0054】
そのウィルスベクターの特性によって、SFPニワトリの胚、市販の細胞株、その他の特にウィルス増幅のために設計された系など、適した増幅系においてウィルスは複製される。
【0055】
使用されるウィルスベクターによって、ウィルス濃度が抗原反応に要求される濃度、好適には102〜1010 DI50%/mlに達すると、ウィルス不活性化処理が行われる。好適には、不活性化処理は、当業者によく知られた物理的または化学的な方法によって行われ、好適にはホルムアルデヒドまたはベータプロピオラクトンを用いた化学的不活性化処理が行われる。
【0056】
本発明のワクチンの薬学的に許容可能な賦形剤としては、水溶液またはエマルジョンを好適に使用できる。特に、油中水滴型エマルジョンの賦形剤の使用が好適である。ワクチン特異的な剤形は、挿入される外部ヌクレオチド配列のみならず、使用されるウィルスベクターによっても異なる。しかしながら、ウィルスベクターがニューカッスル病ウィルスである場合の好適な実施形態においては、好適な投与量は、104〜1010 DIEP50%/mlである。アデノウィルスがウィルスベクターである形態においては、好適な投与量は102〜108 DIEP50%/mlである。
【0057】
ワクチン投与に関して、トリの首部の後ろ中央部分の皮下経路への投与が好ましい。本発明のワクチンは、ブロイラー、産卵ニワトリ、繁殖用ニワトリ、七面鳥、闘鶏、ギニアフォール、猟鳥、ウズラ、アヒル、ガチョウ、白鳥、またはダチョウのような家禽に投与される。ワクチンは、トリの種類によっては、その齢にかかわらず、筋肉内に投与することも可能であるが、好適には皮下に投与される。
【0058】
ワクチンが乳化されたニューカッスルベクターとしてニワトリに投与される場合、ワクチンは好適には108〜109 DIEP50%/0.5ml(ニワトリ1羽あたりの投与量)を含み、より好適にはワクチンは108.5 DIEP50%/0.5ml(ニワトリ1羽あたりの投与量)を含む。ニワトリへのワクチン接種は、10日齢において容易になし得る。
【0059】
本発明は非常に重要な競合的利点を有する。本発明の遺伝子組み換え不活性化ワクチンは、ウィルスベクター中に制御困難な病原体からの遺伝子を挿入した遺伝子組み換えワクチンを使用するワクチン接種プログラムであり、1種のみのワクチンを受けた動物から感染した動物を判別する方法(DIVA)を提供し、疾患の制御と根絶に有用な、下記の工程を含むプログラムの確立を可能とした。
a)病原により生ずる疾患の抗原をコードする遺伝子の外部ヌクレオチド配列を挿入した不活性化ウィルスベクターの遺伝子組み換えワクチンを受けた、少なくとも1の動物の少なくとも1の試料について、前記抗原に対応する前記抗体が存在するかを検出する、第1の抗体検出方法を実施する工程;
b)第1の抗体検出方法に供された同一の動物の少なくとも1の試料について、疾患を引き起こす病原に対応する抗体が存在するかを検出する、第2の抗体検出方法を実施する工程;
c)第1の抗体検出方法と第2の抗体検出方法の結果から、動物が感染しているのかワクチン接種されたのかを判別する工程。
【0060】
例えば、家禽に高い死亡率をもたらすAIV(主にH5及びH7)のように、病原の制御が困難な場合、本発明の遺伝子組み換え不活性化ワクチンによって、優れた全身レベルでの防御が可能となり、AI完全体ウィルスを使用した場合、適切な不活性化が為されていない場合に深刻なリスクを生じるが、これと比して本発明は、高度な生物学的安全性を奏する。このリスクは、ウィルスが活性を有する状態で製造する場合に増大する。また、本発明は、ワクチン接種済みのトリを、完全体ウィルスに暴露された他のニワトリから疫学的に区別することを可能とする(DIVAシステム)。トリインフルエンザヘマグルチニン(HA)遺伝子のみが挿入された場合、ニワトリインフルエンザに対するワクチン誘導抗体の検出は、血球凝集阻害(HI)試験で可能だからである。ELISAや寒天ゲル拡散のような従来の免疫学的試験において、本発明の遺伝子組み換えワクチンにより誘導された対トリインフルエンザ抗体の検出結果は陰性となる。従来の試験は、完全体ウィルスを含む他の種類の抗原によって誘導された抗体を検出するために設計されているためである。本発明の遺伝子組み換えワクチンでワクチン接種されたトリが野生型のウィルスに感染した場合、これらの試験は、トリインフルエンザに対する抗体検出において陽性を示すため、感染したトリは区別が可能である。
【0061】
加えて、本発明は、不活性型及び活性型の遺伝子組み換えワクチンを使用した、結合プログラムの確立も可能とする。不活性型が前述のような全身性の免疫を、遺伝子組み換え活性ワクチンが粘膜レベルでの免疫を呈することで、環境レベルでの予防効果は100%近くとなる。このプログラムでも、前述のDIVAシステムを使用することができる。
【0062】
乳化された不活性化ワクチンの遺伝子組み換えベクターがインフルエンザ遺伝子を挿入されたニューカッスルだった場合、本発明の好適な実施形態において、VNDVとHPAIVの両方の負荷試験において、同じベクターと抗原を使用した活性ワクチンと同時に接種することができ、点眼、スプレー、飲料水によって呼吸器粘膜に直接接種することができ、このような局所レベルでの免疫反応は、分泌型免疫グロブリンA(IgA)の産生により(呼吸器又は消化器の粘膜中で)高度に励起され、野生型のウィルスの複製を顕著に減少させ、その排出と蔓延を顕著に軽減することができる。
【0063】
一方、本発明のワクチンは、感染したトリからワクチン接種されたトリを区別することによって、ウィルスの根絶と、制御プログラムの確立を可能とする。遺伝子組み換えワクチンは、抗原としてAIVヘマグルチニンしか含有していないので、本発明の遺伝子組み換え不活性化ワクチンを投与した場合に、野生型ウィルスに感染したトリからワクチン接種されたトリを区別することができる(DIVAシステム)からである。ELISAのような診断試験の使用が可能であり、このような試験においては、ヘマグルチニンにより誘導された抗体のみでなく、ウィルスの他の抗原に誘導された抗体も検出される。
【0064】
本発明のインフルエンザに対する遺伝子組み換えワクチンは、下記の特徴的な実施例の記載により、より明確に説明されるであろう。実施例は、発明の説明のみを目的とするものであり、発明を限定するものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1
ニューカッスル-LaSotaベクターの製造
ニューカッスル-ウィルスLaSota株ゲノムのクローニングを行い、ウィルスベクターを作製するために、まず、「pNDV/LS」と呼ばれる中間ベクターを作製した。トリアゾール法により、ニューカッスルLaSota株からのウィルスのトータルRNAの抽出を行った。あらかじめ精製しておいたトータルRNAをテンプレートとして用いて、ウィルスゲノムの精製RNAからcDNA(相補DNA)を合成した。ニューカッスルゲノム(15,183塩基対(bp))からの遺伝子をクローニングするために、「オーバーラップ」する末端と粘着性制限酵素サイトを有する7つの断片をPCRで増幅した。断片1(F1)は、ヌクレオチド(nt)1-1755を、F2はnt 1-3321、F3はnt 1755-6580、F4はnt 6,151-10,210、F5はnt 7,381-11,351、F6はnt 11,531-14,995、F7はnt 14,701-15,186を有する。pGEM-Tと呼ばれるクローニングベクター内で標準的な結合の技術を用いて7つの断片の組み立てを行い、ニューカッスルLaSotaゲノムの再生を行った。クローニングベクターはP遺伝子とM遺伝子の間に単独のSacII制限酵素サイトを有し、後に、このベクターウィルス領域に所望の遺伝子をクローニングする役割を果たす。
【0066】
実施例2
AIVサブタイプH5N2 435株からのHA遺伝子クローニング
AIV 435株のHA遺伝子をクローニングするために、トリアゾール法により、ウィルスのトータルRNAの抽出を行った。その後、この精製トータルRNAを使用してcDNA(相補DNA)を合成し、PCR技術により特異的なオリゴヌクレオチドを用いて、AIウィルスからのHA遺伝子を増幅した。次いで、基本的なクローニング技術を用いて435からのHA遺伝子をpGEM-Tベクターに挿入し、プラスミドpGEMT-435を作製した。
【0067】
実施例3
pNDV/LSベクターのSacIIサイト内でのAI 435のHA遺伝子クローニングによるプラスミドpNDV/LS-435の作製
A.中間体pSacIIGE/GSベクターの作製
HA 435遺伝子の5′末端にGE/GSと呼ばれるニューカッスルからの転写配列を導入するため、pSacIIGE/GSと呼ばれる新規の中間体ベクターを作製した。ニューカッスルゲノムをテンプレートとして使用したGE/GS配列のPCR初期増幅を行い、次いでpGEM-Tにこれらの配列を導入した。
【0068】
B.pSacIIGE/GSベクターへのHA-遺伝子のサブクローニング
プラスミドpGEMT-435をHpal-NdeIを用いて切断し、pSacIIGE/GSにクローニングし、プラスミドpSacIIGE/GS-HA435を作製した。
【0069】
C.pNDV-LSベクターへのGE/GS-HA435のサブクローニング
pSacIIGE/GS-HA435とpNDV/LSの両方のプラスミドをSacIIで切断し、切断断片を精製し、GE/GS-HA435領域を精製及びpNDV/LSのSacIIサイトに挿入し、pNDV/LS-435と呼ばれる感染性クローンを作製した。
【0070】
実施例4
細胞培養での遺伝子組み換えウィルスrNDV/LS-HA435の作製
Hep-2細胞とA-549細胞を感染多重度(MOI)が1となるように、あらかじめMAV-7ウィルスに感染させておいた。5%二酸化炭素雰囲気で37℃、1時間の培養を行った後、細胞に1マイクログラム(μg)のpNDVLS-435クローンのDNAを、0.2μgの発現プラスミド(pNP、pP及びpL:両方の細胞型において組み換え体を作製するのに要する、ウィルスタンパクP、NP、Lをコードする)のDNAとともに導入した。導入の12時間後、両方の細胞型で生産された組み換えウィルスを収集し、ウィルスを増殖させるために10日齢のSPFトリ胚に注射した。48時間後に得られた尿道腔液をVero細胞のプレートアッセイによって滴定し、ワクチン製造に使用する最終遺伝子組み換えウィルスを作製した。
【0071】
上記の方法で、Bive株及びViet株から取得した遺伝子を有する遺伝子組み換えウィルスを作製した。
【0072】
実施例5
トリインフルエンザウィルスrNDV/LS-H5由来のH5を挿入したニューカッスルLaSota遺伝子組み換えウィルスを用いた乳化不活性化ワクチンの製造方法
抗原作製
製造用シードから開始して、特定の病原(SPF)を有さない孵化卵に、あらかじめ算出しておいた感染投与量を接種した。胚を37℃で72時間インキュベートし、1日ごとに死亡率を確認した。この期間の後、生存した胚をその日から翌日まで、好適には24時間冷蔵し、羊水-尿道腔液(fluido amnioallantoideo(FAA))を無菌状態で得た。FAAを遠心分離で清浄化し、ホルムアルデヒドで不活性化した。なお、ホルムアルデヒド以外の他の既知の不活性化剤をいずれも使用できるが、この種のワクチンの製造には一般的にホルムアルデヒドが使用される。FAAの不活性化、純度、無菌、およびDIEPとHAの両方に対する力価を確認する試験を行った。
【0073】
エマルジョン作製
ワクチンを油中水滴型エマルジョンとして作製した。鉱物油と界面活性化剤のSpan 80とTween 80を油相に使用した。水相を作製するために、FAAを保存剤溶液(チメロサール)と混合した。エマルジョンを調製するために、撹拌し続けながら、油相に水相をゆっくりと加えた。ホモジナイザーとコロイドミルを使って、粒径を特定の値とした。
【0074】
抗原容量
ワクチンを、トリ一羽に0.5mLの投与量で使用できるように、108.5 DIEP50%/0.5ml(トリ1羽あたりの投与量)以上の力価で作製した。
【0075】
上記の手順に基づいて、6種の遺伝子組み換えワクチンを作製した。3種はHAウィルスのためのアンカリングを伴うニューカッスルLaSota株ベクター(rNDV/LS)であり、これをRdと呼ぶ。あと3種はアンカリングを伴わない同種のベクターであり、これをReと呼ぶ。6種のワクチンを得るために、下記のように3種の異なるHA遺伝子を、Rdゲノム及びReゲノムにそれぞれクローニングする。
1.H5-Bive遺伝子:LPAIVサブタイプH5N2(A/chicken/Mexico/232/CPA)株から得られる。この株は、1994年メキシコのブロイラーの生物学的試料から分離され、SAGARPAによって、乳化不活性化ワクチンの製造への使用を認められたウィルス株に相当する。
2.H5-435遺伝子:HPAIVサブタイプH5N2の株から得られる。この株は2005年メキシコのブロイラーの生物学的試料から分離された。435株はヘマグルチニン阻害(HI)試験でBive株とは異なる挙動を示し、ヌクレオチド配列でも重要な違いを有する。
3.H5-Vt遺伝子:この遺伝子はベトナムで単離され、AIウィルスサブタイプH5N1のH5遺伝子に相当する。
【0076】
実施例5A
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴う(Rd)、(rNDV/LS)ベクター、H5-Bive遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Rd-Biveと呼ぶ。
【0077】
実施例5B
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴う(Rd)、(rNDV/LS)ベクター、H5-435遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Rd-435と呼ぶ。
【0078】
実施例5C
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴う、(rNDV/LS)ベクター、H5-Vt遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Rd-Vtと呼ぶ。
【0079】
実施例5D
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴わない、(rNDV/LS)ベクター、H5-Bive遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Re-Biveと呼ぶ。
【0080】
実施例5E
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴わない、(rNDV/LS)ベクター、H5-435遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Re-435と呼ぶ。
【0081】
実施例5F
実施例5に示した方法に従って、アンカリングを伴わない、(rNDV/LS)ベクター、H5-Vt遺伝子を使用した、乳化、不活性化、遺伝子組み換えワクチンを、油/水の薬学的製剤の形で実験用ワクチンとして作製した。このワクチンをEmi Re-Vtと呼ぶ。
【0082】
実施例6
AIウィルスHA遺伝子へのアンカリングの有無による、ND-LaSotaベクター内の遺伝子組み換えワクチンの生体内(in vivo)効果の評価
異なる抗原サブタイプ及び多様なAIウィルスから得られた異なるヘマグルチニン遺伝子をクローニングして得られた、本発明の乳化遺伝子組み換え不活性化ワクチンの効果を評価するために、SPFトリと、他方AIVとNDVに対する親由来の免疫を有する商業的ブロイラーとにおける、HPAIウィルスサブタイプH5N2及びVNDVによる死亡率を軽減する効果を試験した。
【0083】
ワクチンの効果を測るために、多様な試験的実験に供された株は下記の通りである。
1.トリインフルエンザ(HPAIV-H5N2):高病原性ウィルスサブタイプH5N2、A/chicken/Queretaro/14588-19/95 株 力価108.0 DIEP50%/ml(100 DLP50%/0.3ml(ニワトリ1羽あたりの投与量)に相当)
2.VNDVウィルス:Chimalhuacan株 108.0 DIEP50%/ml(106.5 DIEP50%/0.03ml(ニワトリ1羽あたりの投与量)に相当)を含む
【0084】
負荷試験は、INIFAP-CENID-Microbiology(国立農林業研究所微生物学専門研究センター)の隔離ユニットで、バイオセーフティーレベル3のアクリル製安全キャビネット内において35日齢のニワトリ(接種から21日(21DPV))を用いて行った。負荷試験の間、各実験群は2つのサブグループに分け、各サブグループは、予め定めておいた生物学的安全性手順に従った、対応する隔離ユニットに割り当てた。
【0085】
HPAIV-H5N2をpH7.2のPBSで1:10の比で希釈し、0.06mL(2滴)を各ニワトリの各眼に点眼し、かつ、0.09mL(3滴)を各鼻孔に注入し、0.3mLまたは100 DLP50%に対応する量を投与した。
【0086】
VNDVウィルス負荷試験は、力価108.5 DIEP50%/ml(106.5 DLP50%(トリ1羽あたり)に相当)のウィルス懸濁液0.03mLを接眼経路で投与して実施する。
【0087】
負荷試験前(PC)評価のために、すべての群について、死亡率及び臨床所見の重篤度を含む罹患率を毎日チェックした。各群の個々のトリを試験前の毎日(DPC)モニタリングし、表1の基準に従って数値で評価した。
【0088】
【表1】

【0089】
OIE推奨のガイドラインに従い、VNDVでのPC評価は14日間、HPAIV-H5N2でのPC評価は10日間行った。
【0090】
各群の罹患率インデックス(MI)を観察期間PDの間の、より重度の臨床所見が得られた日に対応するデータを平均化して計算した。
MI = (A)(100)/B
A = 個々の観察日の重症度を表す値の合計
B = 一日あたりの臨床状態の重症度の想定される最高値
実施された実験は下記の通りである。
【0091】
実施例6A
ワクチン接種後21日齢(21DPV)のSPFトリ群について、VNDV及びHPAIV−H5N2を用いた負荷試験を行った。SPFトリ群は、表2に示すように、実施例5A(Emi Rd-Bive)、5B(Emi Rd−435)及び5C(Emi Rd-Vt)に基づいて作製した本発明の不活性化ワクチンにより免疫獲得させたものである。比較の目的で、他の2つの群について、トリインフルエンザ及びニューカッスル病に対する2つの乳化された市販ワクチンを用いて免疫獲得させた。市販ワクチンは、乳化された不活性化完全体ウィルスより製造され、それぞれE. ND/AI-435及びE. ND/AI-Biveと呼ばれるものである。
【0092】
【表2】

【0093】
VNDVとHPAIV−H5N2に対する効能結果は、図1及び図2にそれぞれ示す通りであった。
【0094】
本発明のアンカリングを伴う3つの遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5全てが、SPFトリのVNDV負荷試験ウィルスによる死亡率(M)に対して、100%の防御を示す、という結果を示した。同様に、H5遺伝子がクローニングされたにもかかわらず、3つ全ての遺伝子組み換え不活性化ワクチンが、NDとAIのコントロールとして使用された、従来の完全体ウィルスから作られ、世界中で認可されている不活性化ワクチンと同様に、HPAIV-H5N2による死亡率(M)に対しても100%の防御を示した(図2)。コントロールワクチンは、力価108.6 DIEP50%/mLのニューカッスル病LaSota株、力価108.0 DIEP50%/mLの低病原性トリインフルエンザウィルスを含み、ホルムアルデヒドで化学的に不活性化され、油-乳化して製造されたものである。この防御の結果は、アンカリングを伴う遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5が、ND及びAIの制御に使用するためのメキシコ基準及び世界基準を満たすものであり、本発明のアンカリングを伴うこの遺伝子組み換えバージョンが有効であることを証明するものである。
【0095】
実施例6B
アンカリングの効果を測るための第2の実験系として、表3に示すように免疫獲得させたワクチン接種後21日齢(21DPV)のSPFトリ群について、VNDV及びHPAIV−H5N2を用いた負荷試験を行った。実施例5D(Emi-Re-Bive),5E(Emi-Re-435)、5F(Emi-Re-Vt)により作製された、本発明のアンカリングを伴わない3つの乳化不活性化ワクチンと、併せて、乳化不活性化完全体ウィルスを使用して製造された、トリインフルエンザ及びニューカッスル病に対する2つの市販乳化ワクチン(E. ND/AI-435 及び E. ND/AI-Biveと呼ばれる)を使用した。
【0096】
【表3】

【0097】
VNDVとHPAIV−H5N2に対する効能結果は、図3及び図4にそれぞれ示す通りであった。
【0098】
予想に反して、本発明のアンカリングを伴わない3つ全ての遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5も、SPFトリのVNDV負荷試験ウィルスによる死亡率(M)に対して、100%の防御を示す、という結果を示した。同様に、H5遺伝子がクローニングされたにもかかわらず、3つ全ての遺伝子組み換え不活性化ワクチンが、アンカリングを伴う遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5及び、不活性化完全体ウィルスND/AI-BiveとND/AI-435から製造された従来の乳化ワクチンの使用時と同様に、HPAIV−H5N2による死亡率(M)に対しても100%の防御を示した。
【0099】
実施例6Aと6Bからの結果から、ベクターのアンカリングの有無、AIV H5遺伝子の由来及びHI試験での抗原性(H5N2またはH5N1)の差異にかかわらず、作製された遺伝子組み換え不活性化ワクチンは、HPAIV-H5N2を用いた負荷試験で同様の防御を呈することが明らかとなった。この結果は、AIV H5遺伝子を用いて作製された遺伝子組み換え不活性化ワクチンが、インフルエンザウィルスのヘマグルチニンH5を有するサブタイプを用いたHPAIV負荷試験に対して、ノイラミニダーゼの種類に関係なく、防御を与えることができることを示唆している。
【0100】
したがって、本発明は、多様なタイプのノイラミニダーゼに有効であることが示された。この結果は、伝統的な不活性化完全体ウィルスワクチンの結果と一致する(Soto et al., Inactivated mexican H5N2 avian influenza vaccine protects chickens from the asiatic highly pathogenic H5N1 avian influenza virus. Proceedings of the 56th Western Poultry Disease Conference (WPDC). USA, p. 79. (2007)、及びSwayne, D. and Kapczynski, D. (2008). Vaccines, Vaccination and Immunology for avian influenza viruses in poultry. In Avian Influenza. Ed. By David Swayne. Blackwell Publishing, USA, p. 407-451)。
【0101】
実施例6C
現場環境下を想定して、市販のトリについて本発明のワクチンを試験するために、第3の実験を実施した。NDとAIに対する親由来の免疫を有する、ワクチン接種後21日齢(21DPV)の市販ブロイラーについて、VNDV及びHPAIV−H5N2を用いた負荷試験を行った。市販ブロイラーは、表4に示すように、実施例5A(Emi-Rd-Bive),5B(Emi-Rd-435)、5C(Emi-Rd-Vt)により作製された、本発明の3つの乳化不活性化ワクチンと、併せて、乳化不活性化完全体ウィルスを使用して製造された、トリインフルエンザ及びニューカッスル病に対する2つの市販乳化ワクチン(E. ND/AI-435 及び E. ND/AI-Biveと呼ばれる)を使用して免疫獲得させた。
【0102】
【表4】

【0103】
VNDVとHPAIV-H5N2に対する効能結果は、図5及び図6にそれぞれ示す通りであった。
【0104】
本発明のアンカリングを伴う3つの遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5全てが、親由来のNDウィルス及びAIウィルスへの免疫を有する市販ブロイラーについて、VNDV負荷試験ウィルスによる死亡率(M)に対して、90%以上の防御効果を示す、という結果を示した(図5)。さらに、H5遺伝子がクローニングされたにもかかわらず、3つ全ての遺伝子組み換え不活性化ワクチンが、NDとAIのコントロールとして使用された、従来の不活性化した完全体ウィルスから作られた乳化ワクチンと同様に、HPAIV-H5N2による死亡率(M)に対しても80%以上の防御効果を示した。
【0105】
この防御効果の結果は、本発明のアンカリングを伴う遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5が、AIウィルスとNDウィルスに対する親由来の免疫を有する市販ブロイラーにおけるHPAIの制御にも有効に使用できることを示している。本発明の遺伝子組み換え不活性化ワクチンは、AIの不活性化完全体ウィルスより製造される従来のワクチンと同様の防御を示すが、遺伝子組み換え活性ワクチン及び遺伝子組み換え不活性化ワクチンを排他的に使用することで、生物学的安全性が完成する、という利点を有する。これにより、ワクチン接種プログラムとAI根絶を組み合わせ、DIVAシステムを構築することができる。
【0106】
実施例6D
真の現場状況下のアンカリングの効果を測るために、NDとAIに対する親由来の免疫を有する、ワクチン接種後21日齢(21DPV)の市販ブロイラー群について、VNDV及びHPAIV-H5N2を用いた負荷試験を実施した。市販ブロイラーは、表5に示すように、実施例5D(Emi-Re-Bive)、5E(Emi-Re-435)、5F(Emi-Re-Vt)により作製された、アンカリングを伴わない本発明の3つの乳化不活性化ワクチンと、併せて、乳化不活性化完全体ウィルスを使用して製造された、トリインフルエンザ及びニューカッスル病に対する2つの市販乳化ワクチン(E. ND/AI-435 及び E. ND/AI-Biveと呼ばれる)を使用して免疫獲得させた。
【0107】
【表5】

【0108】
VNDVとHPAIV-H5N2に対する効能結果は、図7及び図8にそれぞれ示す通りであった。
【0109】
予想と反して、3つ全てのアンカリングを伴わない遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNVD/LS-H5も、親由来の免疫を有する市販ブロイラーにおいて、VNDV負荷試験ウィルスによる死亡率に対して90%の防御を示し、同様に、H5遺伝子がクローニングされたにもかかわらず、3つ全ての遺伝子組み換え不活性化ワクチンも、すべてHPAIV-H5N2による死亡率に対して80%以上防御を示した(図7)。これはアンカリングを伴う遺伝子組み換え不活性化ワクチンrNDV/LS-H5や、ND/AI-Bive及びND/AI-435の不活性化された完全体ウィルスから製造された従来の乳化ワクチンと同様の結果であった。
【0110】
本発明の成功を裏付けるこれらの研究は、感染可能なトリに使用するための、エマルジョンまたは薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント若しくは添加剤を使用した、不活性化形態のAIに対する遺伝子組み換えワクチンが、HPAIV負荷試験に対し、SPFニワトリでは100%、ND及びAIウィルスに対する親由来の免疫を有するブロイラーでは80%超の防御を示し、優れた免疫反応を可能とすることを証明するものである。これは、トリに適した免疫反応を生じるのに十分な量の目的タンパクを自ら発現させるために、免疫されたトリ体内での遺伝子組み換えウィルスの複製が必須である、という考えとは相反する。
【0111】
工業的な家禽生産の現場条件下では、NDに対する従来の活性ワクチン、またはAIに対する遺伝子組み換え活性化ワクチンの使用は十分な効果を奏しないことから、不活性化ワクチンの使用は、HPAIV及びVNDVによる死亡を防ぎ、現場レベルでの適切な防御を行うためには必要不可欠である。
【0112】
本発明の特徴的な実施形態が図示及び開示されているが、使用するAIウィルスまたはアデノウィルスの株、適用する賦形剤のエマルジョンタイプなどの、いくつかの修正は可能である。したがって、本発明は、先行技術及び添付の請求項を除き、制限的に理解されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィルスベクターと、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバントまたは添加剤を含む遺伝子組み換えワクチンであって、
前記ウィルスベクターは、不活性化されており、対象疾患の抗原をコードする外部ヌクレオチド配列が挿入されている、
ことを特徴とする遺伝子組み換えワクチン。
【請求項2】
さらに、前記外部ヌクレオチド配列が、インフルエンザ、伝染性喉頭気管炎、伝染性気管支炎、伝染性ファブリキュウス嚢病(ガンボロ病)、肝炎、ウィルス性鼻気管支炎、鼻感冒、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumonieae)、パスツレラ病、ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、サーコウィルス、気管支敗血症菌病、パラインフルエンザより選択される抗原をコードする、ことを特徴とする請求項1記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項3】
さらに、前記外部ヌクレオチド配列がトリインフルエンザウィルスのヘマグルチニン(HA)遺伝子をコードする遺伝子よりなる、ことを特徴とする請求項2記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項4】
さらに、前記ヘマグルチニン(HA)をコードする遺伝子が、トリインフルエンザウィルスのヘマグルチニン(HA)のサブタイプH1、H2、H3、H5、H6、H7またはH9のうち、少なくとも1つから選択される、ことを特徴とする請求項3記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項5】
さらに、前記ヘマグルチニン(HA)をコードする遺伝子がサブタイプH5である、ことを特徴とする請求項4記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項6】
さらに、前記ウィルスベクターがアデノウィルスまたはパラミクソウィルスより選択される、ことを特徴とする請求項1記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項7】
さらに、前記ウィルスベクターがパラミクソウィルスより選択される、ことを特徴とする請求項6記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項8】
さらに、前記パラミクソウィルスがニューカッスル病ウィルスである、ことを特徴とする請求項7記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項9】
さらに、前記ニューカッスル病ウィルスがLaSota株、Ulster株、QV4株、B1株、CA 2002株、Roakin株、Komarov株、Clone 30株またはVGGA 株、或いは、ニューカッスル病遺伝群IからV由来株より選択される、ことを特徴とする請求項8記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項10】
さらに、ウィルスベクターがアデノウィルスから選択される、ことを特徴とする請求項6記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項11】
さらに、前記アデノウィルスがトリアデノウィルスまたはブタアデノウィルスより選択される、ことを特徴とする請求項10記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項12】
さらに、前記アデノウィルスがトリアデノウィルス9型である、ことを特徴とする請求項11記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項13】
さらに、前記アデノウィルスがブタアデノウィルス5型である、ことを特徴とする請求項11記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項14】
さらに、ワクチンの薬学的に許容可能な賦形剤が好適には水溶液またはエマルジョンである、ことを特徴とする請求項1記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項15】
さらに、水−油エマルジョンが賦形剤として使用される、ことを特徴とする請求項14記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項16】
さらに、ウィルスベクターに要求される力価が、遺伝子組み換え活性ウィルスワクチンに要求される力価と同等である、ことを特徴とする請求項1記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項17】
さらに、抗原反応を起こすために要するウィルス濃度が、102〜1010 DI50%/mLである、ことを特徴とする請求項16記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項18】
さらに、前記抗原反応を起こすために要するウィルス濃度が、104〜1010 DIEP50%/mLである、請求項7記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項19】
さらに、ニワトリに投与するために用意されるワクチンのウィルス濃度が、ニワトリ1羽あたり108〜109 DIEP50%/0.5mLである、ことを特徴とする、請求項18記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項20】
さらに、ワクチンがニワトリ1羽あたり108.5 DIEP50%/0.5 mlを有する、請求項19記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項21】
さらに、前記抗原反応を起こすために要するウィルス濃度が、102〜108 DIEP50%/mLである、ことを特徴とする請求項10記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項22】
さらに、前記ワクチンが皮下又は筋肉内に投与されるように調製された、ことを特徴とする請求項1記載の遺伝子組み換えワクチン。
【請求項23】
動物の疾患の抗原をコードする外部ヌクレオチド配列を挿入した、不活性化ウィルスベクターを有する、遺伝子組み換えワクチンを動物に投与することを含む、ことを特徴とする動物の疾患に対するワクチン接種方法。
【請求項24】
さらに、前記疾患の抗原をコードする外部ヌクレオチド配列が挿入された、前記不活性ウィルスベクターと同一の、活性ウィルスベクターを含む遺伝子組み換えワクチンを追加で動物に投与する、ことを特徴とする、請求項23記載の動物の疾患に対するワクチン接種方法。
【請求項25】
疾患の制御と根絶に有用な、下記の工程を有する、感染した動物とワクチン接種した動物を判別する方法;
a)病原により生ずる疾患の抗原をコードする遺伝子の外部ヌクレオチド配列を挿入した不活性化ウィルスベクターの遺伝子組み換えワクチンを受けた、少なくとも1の動物の少なくとも1の試料について、前記抗原に対応する前記抗体が存在するかを検出する、第1の抗体検出方法を実施する工程;
b)第1の抗体検出方法に供された同一の動物の少なくとも1の試料について、疾患を引き起こす病原に対応する抗体が存在するかを検出する、第2の抗体検出方法を実施する工程;
c)第1の抗体検出方法と第2の抗体検出方法の結果から、動物が感染しているのかワクチン接種されたのかを判別する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−509308(P2012−509308A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536958(P2011−536958)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003150
【国際公開番号】WO2010/058236
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(511121849)ラボラトリオ アヴィメキシコ エスエー ディーイー シーヴィー (1)
【氏名又は名称原語表記】LABORATORIO AVI−MEX, S.A. DE C.V.
【Fターム(参考)】