説明

遺体の処置装置

【課題】二液型発泡ウレタン組成物を遺体の体腔内に容易に注入でき、衛生的に且つ迅速、効果的に体液漏出を防止できる遺体の処置装置を提供する。
【解決手段】装置は、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有する2つの筒状案内体(5)と、各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストン(6,6a)とを備え、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに二液型発泡ウレタン組成物のポリオールを含有する液が収容され、他の1つにイソシアネートを含有する液が収容されている注入器具(2)と;後端部が上記注入器具の先端部に接続される筒状連結部材(7)と;後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管(84)を有し、上記筒状連結部材内に配設される接続部材(8)と;上記2つの針状接続管の各先端部に接続される2つの流路を有し、上記筒状連結部材に接続される挿入管(9,9a)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体の口、鼻、耳、肛門、女性の膣などの体腔に二液型発泡ウレタン組成物を注入して発泡・封止することにより、体液漏出を防止するための遺体の処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒトや動物の死亡後には体腔各部の筋肉が弛緩し、胃液、肺液、腹水、排泄物などの体液が漏出することが多い。特に、肛門は括約筋が弛緩し、肛門が開口することにより内部の汚物が漏出することが多い。また、女性の膣などの下半身の体腔周辺の筋肉の弛緩により、体内物が漏出することがある。それに伴い、悪臭や周囲の汚染、病原菌による死後感染などが問題になっている。このため、例えば病院では、死亡確認後、従来より、従業者や看護師により遺体の体腔内に多量の脱脂綿、ガーゼなどを死後硬直の起こる前に装填し、体腔内の汚物の漏出を防止している。しかしながら、体腔への脱脂綿、ガーゼなどの装填作業は煩雑で不衛生であり、また、脱脂綿、ガーゼなどは吸水能力が低いため、作業中もしくは作業後にしばしば汚物が漏出してしまうという問題や、作業従事中にこの漏出物質による死後感染の可能性もあり、その解決が強く求められていた。
【0003】
このようなことから、ガーゼ、脱脂綿等に代えて高吸水性樹脂粉末を口、鼻、耳、咽喉などに装填することが知られており、例えば、注射器を使って口、鼻、耳に高吸水性樹脂粉末を装填する方法や(特許文献1参照)、安定化二酸化塩素を含む吸水性樹脂粉末を、咽喉には粉末のまま、耳孔、鼻孔には水溶性シートに包んで使用する方法(特許文献2参照)などが知られている。ところが、このような高吸水性樹脂粉末を装填しようとしても、流動性が悪いため、狭い体腔、例えば咽喉部、肛門等には装填することが困難である。また、鼻孔や耳孔の入口部分だけであれば、このような微粉末を注射器のような注入器で充填できるが、奥までは充填できない。また、奥まで充填するために注入器を動かしながら充填しようとすると、先端から出る微粉末が飛び散り、かえって遺体周辺を汚すだけである。
【0004】
このような高吸水性樹脂粉末の充填性や作業性の悪さや、飛散等の問題を解決するために、近年、粉体でなく、ゼリーを用いることが提案されており、例えば、消臭剤入りの粉末ポリマーを適当量の水で溶かし適当に混合してゼリー状にしたものを用いる方法(特許文献3参照)や、ジメチルアクリルアミドを主成分とする両親媒性ゲルを用いる方法(特許文献4参照)、アルコールを主成分とするゼリーの中に高吸水性ポリマー粉体を多数分散させたものを用いる方法(特許文献5参照)が知られている。また、先端に半径方向中心へ向けて外側に湾曲して延びる複数の舌片により略半球状に形成されている吐出口部を有する筒状本体と、該筒状本体に後端部側から摺動自在に挿入されているピストンとを有する注入器の上記筒状本体の内部に、ゼリー状体液漏出防止剤と膨潤性繊維等の繊維状充填材が収容されている遺体の処置装置を用い、上記筒状本体を肛門及び/又は膣に挿入し、上記筒状本体先端の吐出口部の複数の舌片の先端により形成される開口と舌片間のスリットからなる開口部からゼリー状体液漏出防止剤と繊維状充填材を押し出す方法(特許文献6、特許文献7参照)が知られている。
【0005】
前記したようなゼリー状の体液漏出防止剤は、流動性があり、鼻孔、耳穴等の狭い体腔であっても充填され易く、注入器で圧入しても飛散することがないという利点を有する。しかしながら、ゼリー状体液漏出防止剤のみを注入器具で遺体の体腔内に注入・装填した場合、体液を吸収して膨張するまでに比較的時間を要するため、死後の体腔各部の筋肉の弛緩により体液が漏出し易いという問題がある。そのため、特に肛門や膣を封止するためには、ゼリー状体液漏出防止剤と共に繊維状充填材を押出し、注入器を抜き出した直後の肛門や膣の開口部を繊維状充填材で栓をする必要がある。従って、筒状本体の内部にゼリー状体液漏出防止剤を充填した後、さらに繊維状充填材を圧縮した状態で充填する必要があるが、この繊維状充填材の充填作業は手作業で行なわれているため、注入器内へのゼリー状体液漏出防止剤及び繊維状充填材の充填作業が極めて煩瑣であり、作業性が悪く、コスト高の要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−298001号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7−265367号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平8−133901号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2001−288002号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特許第3586207号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特許第4029106号公報(図7、図8)
【特許文献7】特許第4081498号公報(図7、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したような遺体の口、鼻、耳、肛門、膣等の体腔からの体液や汚物の漏出防止作業は、それに従事する従業者や看護師にとって衛生的にも院内感染の面からも好ましくない。また、体液や汚物の漏出は遺体の搬送作業等に悪影響を与えるので、従業者や看護師の作業を簡素化し、且つ、簡便な装置で体腔内汚物を衛生的に、且つ、迅速、確実に封止することが強く求められている。
従って、本発明の目的は、注入器具での注入性に優れると共に体液漏出防止効果にも優れる液状の体液漏出防止剤を用いることによって、注入器具で遺体の体腔内に容易に注入でき、従業者や看護師の作業を簡素化し、衛生的に、且つ、迅速、効果的に体液漏出を防止できる遺体の処置装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)ポリオールを含有する液と(B)イソシアネートを含有する液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の該二液を、遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置が提供され、その基本的な態様は、
筒状本体と、該筒状本体内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有する2つの筒状案内体と、各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンとを有し、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに上記液(A)が収容され、他の1つに上記液(B)が収容されている注入器具と;
後端部が上記筒状本体の先端部に接続される筒状連結部材と;
後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管を有し、上記各筒状案内体の閉鎖端面側に向かって各針状接続管の鋭角な端部が配向するように上記筒状連結部材内に配設される接続部材と;
上記接続部材の2つの針状接続管の各先端部に接続される2つの流路を有し、後端部に上記筒状連結部材に接続される接続部を有する挿入管
とを備えている。尚、本明細書において「易破断性」とは、プラスチック製の針状接続管の鋭角な端部が突き通せる程度の強度を持つ特性をいう。
【0009】
好適な態様においては、前記筒状連結部材の先端部にテーパ状接続部が形成されており、前記挿入管は後端部に上記筒状連結部材のテーパ状接続部に接続される接続部を有する。好ましくは、前記筒状案内体の先端部の易破断性の閉鎖端面は、筒状案内体の先端部の吐出筒部に被冠されている易破断性の保護キャップからなる。また、前記挿入管は、その内部に前記2つの流路を構成する2つのチューブを有し、且つ、該挿入管の先端部には、上記2つのチューブの先端部が接続される接続管状部と、該接続管状部と連通する1つの吐出流路が形成されているノズル部材が嵌挿されている。好ましくは、上記挿入管は、その先端部から所定長さだけ湾曲状に形成された湾曲部を有しており、好ましくは、該湾曲部は、湾曲中心に向かう方向の寸法がそれと垂直な方向の寸法よりも小さな扁平環状の断面を有する。特に好適には、上記挿入管は、前記筒状連結部材に接続される接続部もしくはその近傍に、半径方向外側に突出したストッパ部を有する。
【0010】
別の好適な態様においては、前記筒状本体は、その後端部もしくは近傍に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を有する。一方、前記各ピストンの後端には、それぞれ横方向に拡張された押圧部が形成されていると共に、各押圧部の基部には、それぞれ対向する他方のピストンと係合する手段が設けられている。好ましくは、各押圧部の基部には、それぞれ対向する他方のピストンの押圧部の下まで延在するように突出する係合片と、該係合片が嵌挿される穴部がそれぞれ形成されている。
さらに好適な態様においては、前記ポリオールを含有する液(A)は、さらに高吸水性樹脂粉末(C)及び/又は香料(D)を含有している。
【0011】
さらに本発明によれば、セットとしての遺体処置装置も提供され、この処置装置は、(A)ポリオールを含有する液と(B)イソシアネートを含有する液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の該二液を、遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置であって、遺体の鼻孔又は口から挿入して咽喉部を封止するための処置装置と、遺体の肛門及び/又は膣を封止するための処置装置とを備える。このセットとしての遺体処置装置は、好適には、さらに耳孔、鼻孔、口等からの体液の漏出を防ぐための耳孔装填用、鼻孔装填用、もしくは口中装填用の少なくとも1種の繊維製封止材を備える。
【0012】
特に好適なセットとしての遺体処置装置は、(A)ポリオールを含有する液と(B)イソシアネートを含有する液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の該二液を、遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置であって、
遺体の鼻孔又は口から挿入して咽喉部を封止するための処置装置と、
遺体の肛門及び/又は膣を封止するための処置装置とを備え、
上記咽喉部を封止するための処置装置は、前述したいずれかの態様の遺体の処置装置からなり、
上記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置は、
肛門及び/又は膣へ挿入されるように形成された先端に開口を有する筒状本体と、該筒状本体内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有する2つの筒状案内体と、各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンとを有し、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに上記液(A)が収容され、他の1つに上記液(B)が収容された2つの注入器と;
上記筒状本体の先端部内に配設され、上記2つの筒状案内体と連通可能なノズル装置
とを備えている。
【0013】
前記セットとしての遺体処置装置の好適な態様においても、前記筒状案内体の先端部の易破断性の閉鎖端面は、筒状案内体の先端部の吐出筒部に被冠されている易破断性の保護キャップからなる。また、前記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置の前記筒状本体は先端に開口を有する略ドーム状の先端カバー部を有し、ノズル装置は、前記2つの筒状案内体に接続される管状の接続部と、該接続部に接合され、二股状の流路が合体して先端部に1つの吐出流路を形成している分岐流路が形成されたノズル部とからなり、上記接続部の上記二股状流路に対応する位置には、前記各筒状案内体の閉鎖端面(保護キャップ)側に向かって鋭角に形成された2つの針状接続管が配設されており、ノズル装置は前記筒状本体の先端カバー部内に摺動自在に配設されている。さらに好適には、前記筒状本体は、略中間部にストッパ部を有すると共に、後端部に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の遺体の処置装置は、(A)ポリオールを含有する液(以下、A液という)と(B)イソシアネートを含有する液(以下、B液という)との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の、該二液を遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置であって、注入器具が、筒状本体と、該筒状本体内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面、好ましくは保護キャップが被冠されている吐出筒部を有する2つの筒状案内体と、各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンとを有し、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに上記A液が収容され、他の1つに上記B液が収容されており、また、筒状連結部材内に配設される接続部材は、後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管を有し、上記各筒状案内体の閉鎖端面(保護キャップ)側に向かって各針状接続管の鋭角な端部が配向するように上記筒状連結部材内に配設されている。そのため、使用開始時に、挿入管が接続された上記接続部材を筒状連結部材を介して上記筒状本体の先端部に接続する簡単な操作で、上記接続部材の2つの針状接続管の鋭角な端部が各筒状案内体の閉鎖端面、好ましくは吐出筒部の保護キャップを突き通し、上記針状接続管に接続された挿入管の2つの流路が上記各筒状案内体内と連通状態となり、使用開始時の操作性にも優れている。その後、2つの筒状案内体内に後端部側からそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンを同時に作動して押すことにより、2つの筒状案内体のいずれか1つに収容されたA液と、他の1つに収容されたB液を、上記挿入管を通して遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔をウレタンフォームで封止することができる。従って、上記二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液を作業性良く、簡単且つ確実に遺体の体腔内に同時に注入でき、衛生的に、且つ、迅速、効果的に遺体の体液漏出防止を行うことができる。
【0015】
また、本発明で用いるポリオールを含有するA液とイソシアネートを含有するB液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物(体液漏出防止剤)は、A液及びB液ともに液状であるため、注入器具での注入性に優れると共に、遺体の体腔内に二液を同時に注入すると直ちに反応・発泡して無数の細かい気泡からなるウレタンフォームを形成し、体腔内の凹凸面の細かい部分にも隙間なく充填し、体腔内の壁面に密着して即座に硬化し、体腔を完全に封止することができる。この際、ウレタンフォーム内に体液を吸収・保持して、より効果的に体液漏出を防止するためには、上記A液とB液は、連続気泡の硬質ウレタンフォームを生成するものが好ましい。本発明で用いる二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤は、発泡倍率が高いウレタンフォームを生成する二液型発泡性ウレタン組成物であるため、薬剤量としては僅かな使用量でよく、しかも液体であるため注入器具により狭い体腔内でも容易に注入できるため、遺体の咽喉部(のど部)や、肛門、膣等の体腔の封止作業の作業性が良く、従業者や看護師の作業を簡素化でき、衛生的に、且つ、迅速、効果的に遺体の体液漏出を防止することができる。
【0016】
好適な態様においては、前記挿入管は、その内部に前記2つの流路を構成する2つのチューブを有し、且つ、該挿入管の先端部には、上記2つのチューブの先端部が接続される接続管状部と、該接続管状部と連通する1つの吐出流路が形成されているノズル部材が嵌挿されている。このような構成とすることにより、2つの流路を挿入管内に一体的に形成した場合に比べて、2つの流路を有する挿入管の製造が容易となり、製造コストを低減できるだけでなく、2つのチューブを通して押し出されるA液とB液はノズル部材の1つの吐出流路の個所で合流し、攪拌状態となるため、A液とB液は速やかに反応・発泡・硬化し、体腔を即座に封止することができる。また、先端部から所定長さだけ湾曲状に形成された湾曲部を有する挿入管の場合、遺体の口から簡単に挿入でき、咽喉部(のど部)に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を迅速に注入・装填できる。特に上記湾曲部が、湾曲中心に向かう方向の寸法がそれと垂直な方向の寸法よりも小さな扁平環状の断面を有する好適な態様によれば、遺体の口から極めてスムーズに挿入できるので迅速な処置が可能となり、遺体の口からの体液漏出を迅速に防止できる。また、上記挿入管の接続部もしくはその近傍に半径方向外側に突出したストッパ部を有する好適な態様の場合、鼻孔や口等の体腔端にストッパ部が当ったところでそれ以上の挿入が阻止されるので、挿入管の挿入に熟練を要することなく、常に一定した施用部位に確実に吐出口部が位置して二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填することができる。
【0017】
別の好適な態様においては、前記筒状本体は、その後端部もしくは近傍に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を有する。このような鍔部を設けることにより、これに指を引っ掛けることができるため、注入操作がし易くなる。
一方、前記各ピストンの後端には、それぞれ横方向に拡張された押圧部が形成されていると共に、各押圧部の基部には、それぞれ対向する他方のピストンと係合する手段が設けられ、好ましくは、それぞれ対向する他方のピストンの押圧部の下まで延在するように突出する係合片と、該係合片が嵌挿される穴部がそれぞれ形成されている。このような構成とすることにより、一方の押圧部を押しても他方の係合している押圧部も押すので、2つのピストンが同時に押される。即ち、このような簡単な構造で、2つの筒状案内体内に摺動自在に挿入されているそれぞれのピストンが係合し同時に作動しえる状態を実現でき、単一の押圧操作で前記二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液を同時に作業性良く、簡単且つ確実に体腔内に注入できる。
【0018】
さらに好適な態様においては、前記ポリオールを含有するA液は、さらに高吸水性樹脂粉末(C)及び/又は香料(D)を含有している。A液に高吸水性樹脂粉末(C)が分散していることにより、注入されたウレタンフォーム内に分散している高吸水性樹脂粉末により体液をより速やかに且つ効果的に吸収・膨潤でき、遺体の体液漏出防止をより確実なものにすることができる。また、連続気泡のウレタンフォームのセル壁に高吸水性樹脂の微粒子が存在することにより、体液をより速やかに且つ効果的に吸収できる。さらに、後述する試験例から明らかなように、前記A液に高吸水性樹脂粉末を分散させることにより、発泡量が増えると共に、発泡後の保水量が増えるという効果が得られる。これは、高吸水性樹脂粉末を混入すると、A液とB液がよくなじむから発泡量が増すのではないかと考えられる。同様な理由からと考えられるが、前記A液に香料(D)を添加することによっても、発泡量が増えるという効果が得られる。
【0019】
さらに本発明のポリオールを含有するA液とイソシアネートを含有するB液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物を注入・装填するためのセットとしての遺体処置装置は、鼻孔又は口から挿入して咽喉部に注入・装填するための処置装置と、肛門及び/又は膣に注入・装填するための処置装置とを備え、好ましくはさらに耳孔、鼻孔、口等からの体液の漏出を防ぐための耳孔装填用、鼻孔装填用、もしくは口中装填用の少なくとも1種の繊維製封止材を備えているため、容器内に必要な構成処置具を全て備えた遺体処置キットとして構成できるので、持ち運びが簡単になり、遺体処置をより迅速に行うことが可能になる。さらに、耳孔及び/又は鼻孔から体液の漏出を防ぐための繊維製封止材や口中装填用の繊維製封止材も備えていることにより、死後の体腔各部の筋肉の弛緩による体液漏出もより確実に防止することができる。
【0020】
特にセットとしての遺体処置装置に好適に用いられる肛門及び/又は膣に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための処置装置は、肛門及び/又は膣へ挿入されるように形成された先端に開口を有する筒状本体と、該筒状本体内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面、好ましくは保護キャップが被冠されている吐出筒部を有する2つの筒状案内体と、各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンとを有し、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに前記A液が収容され、他の1つに前記B液が収容された2つの注入器と;上記筒状本体の先端部内に配設され、上記注入器具の2つの筒状案内体と連通可能なノズル装置とを備えているため、遺体の肛門及び/又は膣への挿入操作性に優れており、衛生的に、且つ、迅速、遺体の肛門及び/又は膣からの体液や汚物の漏出防止を効果的に行うことができる。
【0021】
また、前記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置の好適な態様においては、前記筒状本体は先端に開口を有する略ドーム状の先端カバー部を有し、ノズル装置は、前記2つの筒状案内体に接続される管状の接続部と、該接続部に接合され、二股状の流路が合体して先端部に1つの吐出流路を形成している分岐流路が形成されたノズル部とからなり、上記接続部の上記二股状流路に対応する位置には、前記各筒状案内体の閉鎖端面(保護キャップ)側に向かって鋭角に形成された2つの針状接続管が配設されており、ノズル装置は前記筒状本体の先端カバー部内に摺動自在に配設されているため、使用開始時にノズル装置を注入器側に押して摺動させるだけの操作で、上記針状接続管が上記筒状案内体の先端部の易破断性の閉鎖端面、好ましくは筒状案内体の先端部の吐出筒部に被冠されている易破断性の保護キャップを突き通し、各注入器と上記分岐流路の連通を簡単且つ確実に行うことができ、操作性に優れている。さらに、前記筒状本体が、略中間部にストッパ部を有すると共に、後端部に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を有している好適な態様においては、肛門や膣の開口部にストッパ部が当ったところでそれ以上の挿入が阻止されるので、常に一定した施用部位に確実に吐出口部が位置して二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填することができ、また、上記のような鍔部を設けることにより、これに指を引っ掛けることができるため、注入操作がし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の鼻孔又は口から挿入して咽喉部に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための遺体処置装置の一実施態様の概略分解図である。
【図2】図1に示す遺体処置装置の注入器具の筒状本体の上部材を取り外した状態の概略斜視図である。
【図3】図2に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具の正面図である。
【図4】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具の平面図である。
【図5】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具のA−A線矢視断面図である。
【図6】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具のB−B線矢視断面図である。
【図7】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具のC−C線矢視断面図である。
【図8】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具のD−D線矢視断面図である。
【図9】図3に示す筒状本体の上部材を取り外した状態の注入器具のE−E線矢視断面図である。
【図10】図1に示す遺体処置装置の筒状連結部材の概略正面図である。
【図11】図10に示す筒状連結部材の平面図である。
【図12】図11に示す筒状連結部材の右側面図である。
【図13】図10に示す筒状連結部材のF−F線矢視部分断面図である。
【図14】図1に示す遺体処置装置の接続部材の概略斜視図である。
【図15】図14に示す接続部材を反対側から見た斜視図である。
【図16】図14に示す接続部材の側面図である。
【図17】図16に示す接続部材のG−G線矢視断面図である。
【図18】図1に示す遺体処置装置の挿入管の概略正面図であり、筒状連結部材及び接続部材を装着した状態で示す。
【図19】図18に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管の平面図である。
【図20】図18に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管のH−H線矢視断面図である。
【図21】図19に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管のI−I線矢視断面図である。
【図22】遺体処置装置の筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管の他の実施態様の概略斜視図である。
【図23】図22に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管を反対側から見た斜視図である。
【図24】図22に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管の正面図である。
【図25】図24に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管の中心軸線に沿った縦断面図である。
【図26】図24に示す筒状連結部材及び接続部材を装着した挿入管のJ−J線矢視断面図である。
【図27】図1に示す遺体処置装置の注入器具の他の実施態様の部分断面側面図を示し、図3に示すように筒状本体の上部材を取り外した状態での図5と同様のA−A線矢視部分断面図である。
【図28】図27に示す実施態様の注入器具の縦断面図を示し、図3に示すように筒状本体の上部材を取り外した状態での図8と同様のD−D線矢視断面図である。
【図29】肛門及び/又は膣を封止するために好適な遺体処置装置の一実施態様の使用前の状態を示す概略斜視図である。
【図30】図29に示す遺体処置装置の二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入した後の状態を示す概略斜視図である。
【図31】図29に示す遺体処置装置の筒状本体の上部材を取り外した状態の概略斜視図である。
【図32】図29に示す遺体処置装置の筒状本体の上部材を取り外した状態の概略平面図である。
【図33】図32に示す遺体処置装置のK−K線矢視断面図である。
【図34】図32に示す遺体処置装置の中心軸線に沿ったL−L線矢視断面図である。
【図35】図32に示す遺体処置装置のM−M線矢視断面図である。
【図36】図32に示す遺体処置装置のN−N線矢視断面図である。
【図37】図32に示す遺体処置装置のP−P線矢視断面図である。
【図38】図32に示す遺体処置装置の注入器の吐出筒部と筒状本体の先端部内に配設されたノズル装置との関係を示す概略部分破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、前記したような従来技術の問題を解決するために、新しい方式による遺体の処置装置であって、ポリオールを含有するA液とイソシアネートを含有するB液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の、該二液を遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置を提供するものである。二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液の二液を遺体の体腔内に同時に注入して発泡させるためには、装置の基本構成として、
それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有し、好ましくは保護キャップが被冠されている吐出筒部を有する2つの筒状案内体を備えた筒状本体と、上記各筒状案内体内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンとを有し、上記2つの筒状案内体のいずれか1つに上記液(A)が収容され、他の1つに上記液(B)が収容されている注入器具と;
後端部が上記筒状本体の先端部に接続される筒状連結部材と;
後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管を有し、上記各筒状案内体の閉鎖端面(保護キャップ)側に向かって各針状接続管の鋭角な端部が配向するように上記筒状連結部材内に配設される接続部材
とを備えていることが必要となる。
また、鼻孔又は口から挿入して咽喉部に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための遺体処置装置においては、さらに、上記接続部材の2つの針状接続管の各先端部に接続される2つの流路を有し、後端部に上記筒状連結部材に接続される接続部を有する挿入管を備えていることが必要となる。
【0024】
このような本発明の遺体処置装置によれば、2つの筒状案内体内に後端部側からそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストンを同時に作動して押すことにより、2つの筒状案内体のいずれか1つに収容されたA液と、他の1つに収容されたB液は、上記挿入管を通して遺体の体腔内に同時に注入できる。従って、上記二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液を作業性良く、簡単且つ確実に遺体の体腔内に同時に注入できる。遺体の咽喉部や肛門、膣等の体腔内部に注入されたイソシアネートとポリオールは直ちに反応して発泡し、無数の細かい気泡、好ましくは連続気泡からなるウレタンフォームを形成し、体腔内の凹凸面の細かい部分にも隙間なく充填し、体腔内の壁面に密着して即座に硬化し、硬質ウレタンフォームとなり、体腔を完全に封止することができる。
【0025】
保管時に二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液がそれぞれ収容されている2つの筒状案内体からの液漏れを確実に防止するためには、使用前には筒状案内体の吐出筒部の開口部を封止した状態としておき、使用時に挿入管を筒状案内体と連通させることが好ましい。そのため、後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれピストンが摺動自在に挿入されている2つの筒状案内体のそれぞれの先端は易破断性の閉鎖端面とし、好ましくは先端吐出筒部に易破断性の保護キャップを被冠した状態で筒状本体内に配設すると共に、挿入管が接続される筒状連結部材内に配設される接続部材は、後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管を有し、上記各筒状案内体の閉鎖端面(保護キャップ)側に向かって各針状接続管の鋭角な端部が配向するように上記筒状連結部材内に配設する。このような構成を採用することにより、使用開始時に、挿入管が接続された上記接続部材を筒状連結部材を介して上記筒状本体の先端部に接続する簡単な操作で、上記接続部材の2つの針状接続管の鋭角な端部が各筒状案内体の閉鎖端面(吐出筒部の保護キャップ)を突き通し、上記針状接続管に接続された挿入管の2つの流路が上記各筒状案内体内と連通状態となる。保護キャップの形態としては、剥離可能なシールシートで覆う形態、薄いプラスチックフィルムで筒状案内体の吐出筒部を覆い、接着、熱収縮等により接合する形態や、予めキャップ状に成形された軟質プラスチック製の保護キャップを嵌合もしくは接合する形態などが可能であるが、A液やB液の充填作業性、保護キャップの装着作業性等の点からは、予め成形した保護キャップを嵌合もしくは接合する形態が好ましい。
【0026】
前記挿入管は、前記接続部材の2つの針状接続管の各先端部に接続される2つの流路を有し、後端部に上記筒状連結部材に接続される接続部を有する形態であればよく、特定の形態に限定されるものではない。例えば、挿入管内部に2つの流路が一体的に形成され、該2つの流路から接続部材の2つの針状接続管の各先端部に接続される管状部が突出した形態であっても良く、また、その内部に2つの流路を構成する2つのチューブを有する形態の挿入管であってもよい。その中でも、2つの流路を有する挿入管の製造が容易であり、製造コストを低減できる点、及び2つの針状接続管の各先端部への接続操作性の点からは、その内部に2つの流路を構成する2つのチューブを有する形態の挿入管が好ましい。
【0027】
また、二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液は2つの流路の先端から同時に吐出する形態でもよいが、後述する試験例1から明らかなように、注入後速やかに反応・発泡させるためには、二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液を撹拌・混合した状態で遺体の体腔内に注入することが好ましい。このためには、2つの流路を通して押し出されるA液とB液がノズル部材の1つの吐出流路の個所で合流する構造とすることが好ましい。このような構造としては、挿入管の先端部には、上記2つのチューブもしくは流路の先端部が接続される接続管状部と、該接続管状部と連通する1つの吐出流路が形成されているノズル部材が嵌挿されている形態が好ましい。
【0028】
また、処理装置の吐出口部は、A液とB液を撹拌・混合するような構造とすることが好ましい。このような攪拌・混合機構としては、好適には、前記ノズル部の吐出流路内面に、邪魔板部を、好ましくは少なくとも一対の邪魔板部を互いに対向するように、軸線方向に対して所定の角度で突設する構成を採用できる。また、前記ノズル部の吐出流路内面に螺旋状の邪魔板部を形成し、渦流を生じさせるようにすることもできる。このような攪拌・混合機構をノズル部の吐出流路に設けることにより、吐出流路内において前記A液とB液の混合が行われ、混合された状態の二液型発泡性ウレタン組成物が遺体の咽喉部や肛門、膣等の体腔内に注入されるため、ポリオールを主成分とするA液とイソシアネート成分を主成分とするB液の反応が速くなり、速やかに反応・発泡させることができる。
【0029】
また、挿入管の形態は、鼻孔や口等の狭い体腔内へ挿入できるように、可撓性もしくは柔軟性のある直管状形態あるいは先端部から所定長さだけ湾曲状に形成された湾曲部を有する形態のいずれの形態とすることもできる。特に口から挿入する挿入管の場合、先端部から所定長さだけ湾曲状に形成された湾曲部を有する形態が好ましい。このような形態とすることにより、挿入管を遺体の口から簡単に挿入でき、咽喉部(のど部)に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を迅速に注入・装填できる。特に上記湾曲部が、湾曲中心に向かう方向の寸法がそれと垂直な方向の寸法よりも小さな扁平環状の断面を有する場合、遺体の口から極めてスムーズに挿入できるので迅速な処置が可能となり、遺体の口からの体液漏出を迅速に防止できる。さらに、挿入管の挿入に熟練を要することなく、常に一定した施用部位に吐出口部が位置して二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填することができるようにするためには、所定位置に挿入停止マークやカラー表示等を付することもできるが、挿入管の接続部もしくはその近傍に半径方向外側に突出したストッパ部を設けることが好ましい。このようなストッパ部を設けることにより、常に一定した施用部位に確実に吐出口部が位置するように挿入することができる。
【0030】
前記したように、二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液の二液を遺体の体腔内に同時に注入して発泡させるためには、注入器具の2つの筒状案内体内に後端部側から摺動自在に挿入されている各ピストンは同時に作動しえる状態に係合している必要がある。この係合状態は、当業者にとって適宜選定可能な任意の構成を採用できるが、好適には、前記各ピストンの後端にそれぞれ横方向に拡張された押圧部が形成されていると共に、各押圧部の基部には、それぞれ対向する他方のピストンと係合する手段が設けられ、好ましくは、それぞれ対向する他方のピストンの押圧部の下まで延在するように突出する係合片と、該係合片が嵌挿される穴部がそれぞれ形成されている。このような構成とすることにより、一方の押圧部を押しても係合する他方の押圧部も押すので、2つのピストンが同時に押される。即ち、このような簡単な構造で、2つの筒状案内体内に摺動自在に挿入されているそれぞれのピストンが係合し同時に作動しえる状態を実現でき、単一の押圧操作で前記二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液を同時に作業性良く、簡単且つ確実に体腔内に注入できる。
【0031】
別の好適な態様においては、前記筒状本体は、その後端部もしくは近傍に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を有する。このような鍔部を設けることにより、これに指を引っ掛けることができるため、注入操作がし易くなる。
また、注入器具の2つの筒状案内体は筒状本体内に移動しないように固定されている必要がある。これは、ねじ止め、接着等の従来公知の各種固定方法で実現することも可能であるが、好適には、前記筒状本体の後端部内周部に略環状の凹部を形成し、前記各注入器の筒状案内体の後端部には上記凹部に嵌挿されるフランジ部を形成し、上記凹部に上記フランジ部を嵌め込むという簡単な構造により実現できる。
【0032】
前記した挿入管の太さ及び長さを適宜設定することにより、鼻孔や口だけでなく、耳孔等の体腔の封止にも用いることができ、また、前記した遺体処置装置は肛門及び/又は膣に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための処置装置としても用いることができる。しかしながら、部品点数を減らしたより好適な肛門及び/又は膣に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための処置装置は、肛門及び/又は膣へ挿入されるように形成された先端に開口を有する筒状本体と;上記筒状本体内に配設された、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面、好ましくは保護キャップが被冠されている吐出筒部を有する2つの筒状案内体内に後端部側からそれぞれのピストンが同時に作動しえる状態で摺動自在に挿入されている2つの注入器であって、そのいずれか1つに前記A液が収容され、他の1つに前記B液が収容された2つの注入器と;上記筒状本体の先端部内に配設され、上記注入器の筒状案内体と連通可能なノズル装置とを備えている。即ち、前記筒状連結部材、接続部材及び挿入管に代えて、上記ノズル装置が用いられており、それにより部品点数及び製造コストを低減できると共に、遺体の肛門及び/又は膣への二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤の注入操作性にも優れている。
【0033】
上記ノズル装置は、前記注入器の筒状案内体と予め連通させた状態としておき、液漏れを防止するために、ノズル装置の先端吐出口を剥離可能なシールシートで覆ったり、予めキャップ状に成形された軟質プラスチック製の保護キャップを嵌合することもできる。しなしながら、保管時の液漏れを確実に防止するためには、使用前には連通していない状態としておき、使用時にノズル装置を注入器の筒状案内体と連通させることが好ましい。このような構成の好適な態様においては、前記筒状本体は先端に開口を有する略ドーム状の先端カバー部を有し、前記ノズル装置は、前記2つの注入器に接続される管状の接続部と、該接続部に接合され、二股状の流路が合体して先端部に1つの吐出流路を形成している分岐流路が形成されたノズル部とからなり、上記接続部の上記二股状流路に対応する位置に配設された、上記各注入器の吐出筒部側に向かって鋭角な先端が形成された2つの針状接続管を有し、前記筒状本体の先端カバー部内に摺動自在に配設されている構成とすることが好ましい。一方、前記各注入器は、それぞれ先端部に、易破断性の保護キャップが被冠されている吐出筒部を有する構成とすることが好ましい。このような構成を採用することにより、上記ノズル装置を摺動させてその接続部を2つの注入器の吐出筒部に接続するだけの操作で、上記針状接続管が上記吐出筒部に被冠されている易破断性の薄いフィルムから作製された保護キャップを突き通し、各注入器を上記分岐流路に簡単に連通させることができ、使用開始時の操作性に優れたものとすることができる。
【0034】
前記ノズル装置を前記筒状本体の先端カバー部内に摺動自在に配設する構成としては、当業者にとって適宜採用できる任意の構成を採用できるが、好適には、上記先端カバー部の上部内面及び下部内面に軸線方向に平行に延在する2つのガイドリブをそれぞれ備えた構成とし、前記ノズル装置は、前記接続部の上面及び下面のそれぞれ2箇所に突設されたガイドピンを有し、各ガイドピンが上記ガイドリブの内側面に摺接するように、上記ガイドリブに沿って摺動自在に配置されている構成が好ましい。このような構成の場合、使用開始時にノズル装置を注入器側に押して摺動させるだけの操作で、上記針状接続管が上記吐出筒部に被冠されている易破断性の保護キャップを突き通し、各注入器と上記分岐流路の連通を簡単且つ確実に行うことができる。
【0035】
また、前記前記筒状本体を一定した施用部位に吐出口部が位置するように肛門や膣に挿入するためには、肛門や膣に挿入される筒状本体の所定位置に着色マークをつける方法も採用できるが、好適には、前記筒状本体に略中間部にストッパ部、好ましくは笠状のストッパ部を設けることが望ましい。このようなストッパ部の存在により、遺体に触れることなく、常に一定した施用部位に確実に吐出口部が位置して二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填することができる。さらに、操作性を向上させるために、前記筒状本体の後端部に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部を設けることが好ましい。このような鍔部を設けることにより、これに指を引っ掛けることができるため、注入操作がし易くなる。なお、ストッパ部は、二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填する部位に応じて、筒状本体の先端から所定距離離れた位置に形成すればよいが、一般に筒状本体の略中間部に形成することが好ましい。
【0036】
さらに、従来の体液漏出防止剤用注入器は一般の注射器と類似の外形を有するため、病院で看護師が一般の注射器と間違える恐れがある。万が一、一般の注射器と間違えた場合、重大な医療事故となるので絶対に避けなければならない。本発明の注入器具はダブル注入器という特殊構造のため、一般の注射器と間違える恐れは少ないが、注入器具の筒状本体のみを着色したり、あるいはその色を他の部材の色と異なるように着色してカラフルな注入器具とすることにより、病院で看護師が一般の注射器と間違えずに容易に判別でき、あるいはまた施用場所を鮮明に把握できるようにすることができる。
【0037】
本発明で用いる二液型発泡性ウレタン組成物としては、できるだけ速やかに反応・発泡し、硬化し得るものであればよく、特定の組成に限定されるものではなく、例えば、主剤としてポリオール類を主成分とするA液と、硬化剤としてのポリイソシアネート化合物を主成分とするB液とからなり、上記A液に発泡剤や必要に応じて触媒を配合した二液型発泡性ウレタン材料などが挙げられる。上記主剤と硬化剤の反応比率は種々変えることができるが、通常、主剤の活性水素(OH基)と硬化剤のNCO基の当量比が1:0.8〜10、好ましくは1:0.9〜5の範囲内となるように選定すればよい。
ウレタンフォームには軟質、硬質、半硬質品があるが、軟質ウレタンフォーム、半硬質ウレタンフォームは発泡開始に時間を要するので、硬質ウレタンフォームを使用することが好ましい。硬質ウレタンフォームは数秒で発泡し、数秒で硬化するので、本発明の遺体の体液漏出防止という使用目的に最適である。
【0038】
上記ポリオール類としては、例えば、多価アルコール、ビスフェノール類や、脂肪族アミン、芳香族アミン、芳香環を有する脂肪族アミン、脂環族アミンなどの活性水素含有化合物に、アルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイドの1種又は2種以上)を付加反応させて得られるポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0039】
上記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコールなどの2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセリンなどの3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ソルビトール、メチルグリコシド、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖などの4価もしくはそれ以上のアルコールが挙げられる。
【0040】
上記ビスフェノール類としては、例えばハイドロキノン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0041】
上記脂肪族アミンとしては、例えばアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリメチレンジアミン(エチレンジアミン、ジアミノブタン、ジアミノプロパン、ヘキサンジアミン、ドデカンジアミンなど)、ポリエチレンポリアミン(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。上記芳香族アミンとしては、例えば2,4−もしくは2,6−ジアミノトルエン(TDA)、粗製TDA、1,2−、1,3−もしくは1,4−フェニレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、粗製MDA、1,5−ナフタレンジアミン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジフェニルシクロヘキサン等が挙げられる。上記芳香環を有する脂肪族アミンとしては、例えば1,2−、1,3−もしくは1,4−キシレンジアミン等が挙げられる。上記脂環族アミンとしては、例えば4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、メンセンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(−5,5−)ウンデカン等が挙げられる。
【0042】
上記ポリエーテルポリオール以外に、2個以上のヒドロキシル基を有するオリゴマー、例えばポリエステルポリオール(ポリカルボン酸とポリヒドロキシル化合物の縮合物)、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、さらにポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、エチレン性不飽和単量体で変性された重合体ポリオール等も使用することができる。なお、上記ポリエステルポリオールの原料であるポリカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が、またポリヒドロキシル化合物としては、上述のポリエステルポリオールに用いる多価アルコールやポリエステルポリオールそのもの等が例示される。
【0043】
前記硬化剤としてのポリイソシアネート化合物としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(トリメチロールプロパン、ひまし油、しょ糖などポリオール付加変性物、カルボジイミド変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物など)、ポリオール類と過剰のポリイソシアネート化合物の反応によって得られる末端NCO基含有ウレタンプレポリマー等が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−もしくは1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン−2,4'−及び/又は4,4'−ジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4',4"−トリイソシアネート等が挙げられる。上記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物のうち、好ましいものはMDI、粗製MDI、ショ糖変性TDI及びカルボジイミド変性MDIである。
【0044】
前記発泡剤(通常、主剤としてのA液に配合)としては、水素原子含有ハロゲン化炭化水素系発泡剤、低沸点炭化水素類、水、水ガラス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用する。発泡剤の使用量は、形成されるウレタンフォームの比重が0.6〜0.01、好ましくは0.5〜0.03となるように調整することが好ましい。
【0045】
前記触媒(通常、主剤としてのA液に配合)としては、例えばアミン系触媒(トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチルテトラミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7など)や金属系触媒(オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛など)を使用することができる。触媒量は、通常の量的割合で充分であり、一般に、全量中0.0001〜5質量%が適当である。
【0046】
上記アミン系触媒としては、−NH基及びNH−基の少なくとも1個を有するアミン化合物が使用でき、例えば前記ポリエーテルポリオールの原料として例示した脂肪族アミン、芳香族アミン及び脂環族アミン並びにこれらのアミンと上記ポリエステルポリオール原料のポリカルボン酸との縮合反応によるポリアミドやその他変性物等が挙げられ、さらにこれらのアミン化合物のアルキレンオキシド付加物も使用して差し支えない。
【0047】
また、本発明で用いる二液型発泡ウレタン組成物の好適な態様によれば、前記ポリオールを主成分とするA液に高吸水性樹脂粉末(C)を分散させる。これにより、注入されたウレタンフォーム内に分散している高吸水性樹脂粉末は、体液をより速やかに且つ効果的に吸収・膨潤して流動性の無いゼリー状(固形状のゲル)に固化するので、遺体の体液漏出防止をより確実なものにすることができる。また、高吸水性樹脂粉末を添加することにより、後述する試験例2に示されるように、発泡量が増えると共に、発泡後の保水量が増える。高吸水性樹脂粉末を混入すると、A液とB液がよくなじむから発泡量が増すのではないかと考えられる。但し、保水量を多くするために、高吸水性樹脂粉末を過剰に添加すると、注入器具から液が出難くなるので好ましくない。高吸水性樹脂粉末の添加量は、ポリオール成分を主成分とするA液に対し、その約0.01質量%以上、約30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下が適当である。
【0048】
本発明に用いる高吸水性樹脂粉末(C)としては、従来知られている各種高吸水性樹脂の粉末を用いることができ、特定のものに限定されないが、それらの中でも、ポリビニルアクリレート、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩、アクリル酸グラフト共重合体架橋物、ビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合物、ポリエチレングリコール系ポリマー、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアクリル酸−マレイン酸共重合物、ポリエチレンオキサイド系ポリマー、及びポリアルギン酸塩系ポリマーよりなる群から選ばれた少なくとも1種を好適に用いることができる。前記高吸水性樹脂粉末(C)は、平均粒度が約18メッシュ〜200メッシュ(Tyler表示による)の粉体が好ましく、より好ましくは約30メッシュ〜200メッシュである。
【0049】
水系以外の発泡剤を含有するA液に上記高吸水性樹脂粉末(C)を分散させる場合には、その吸液速度を高めるために、水と接触した時に発熱作用のある液状のポリエチレングリコール(重合度の平均分子量が約200〜600)やノニオン性界面活性剤の少量を併用することもできる。すなわち、一般に高吸水性樹脂粉末(C)の吸水速度は、温度が上昇するほど高くなる傾向があるため、体液と接触した時の上記ポリエチレングリコールやノニオン性界面活性剤の発熱作用により、上記高吸水性樹脂粉末(C)の吸液速度を高めることができ、それにより、高吸水性樹脂粉末は速やかに体液を吸収・膨潤して流動性の無い固いゼリー状に固化することができる。水と混和すると発熱する、室温で液状のノニオン性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチールエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールにエチレンオキシドを付加したプルロニック型非イオン界面活性剤)、ポリオキシエチレンアルキル(アルキル基の炭素数12〜14)エーテル(エチレンオキサイドの付加モル数:7〜12モル)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系などの界面活性剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、高吸水性樹脂粉末(C)の均一な分散性を保持したり、液の粘度を調整するために、各種分散安定剤や増粘剤を添加することもできる。これら分散安定剤や増粘剤の添加により、粘度調整が容易となり、注入器具からの液漏れ等の防止の設計許容幅を広くすることが可能となる。即ち、液の粘度が低いと、注入器具の押出部材(ピストン)側からの液漏れを防止するために緊密なシール機構が必要となるが、粘性の高い液体の場合には比較的液漏れし難くなるので、シール機構にそれほどの緊密性がなくてもよくなり、粘度調整を行うことによって注入器具からの液漏れ等の防止の設計許容幅を広くすることが可能となる。分散安定剤としては、ポリアルキレンオキサイド系の熱可塑性ノニオン型吸水性樹脂が好ましいが、アクリル酸の共重合体のカルボキシビニルポリマー、アクリル酸の共重合体のカルボキシビニルポリマー/アルカリ中和剤、親油性スメクタイト、合成ヘクトライト、天然ヘクトライト、ベントナイト等を用いることもできる。また増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤の他の好適な態様によれば、前記ポリオールを主成分とするA液に香料(D)を添加することにより、後述する試験例3に示されるように、発泡量を増やすことが可能となる。これは、香料を混入すると、A液とB液がよくなじむから発泡量が増すのではないかと考えられる。但し、香料を過剰に添加すると、注入器具から液が出難くなったり、充分な発泡倍率が得られ難くなるので好ましくない。香料の添加量は、ポリオール成分を主成分とするA液に対し、その約0.001質量%以上、約10質量%以下、好ましくは5質量%以下が適当である。香料としては、フローラル調、シトラス調、フルーティー調、ウディー調、フレッシュノート調、ミックスフレーバー調、グリーン調、ミント調等の各種天然及び人工香料が挙げられる。
【0052】
本発明の二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤は、必要に応じて、さらに殺菌剤、防カビ・防腐剤、消臭剤等の他の添加剤を少量含有することができる。また、着色剤(色素、染料、顔料)を含有することも可能であり、その配合量、色調の選択など特に限定されるものではなく、任意に設定できる。さらにまた、必要に応じて、通常の整泡剤、可塑剤、充填剤、難燃剤、老化防止剤、抗酸化剤などの添加成分を適量範囲で加えてもよい。これらの添加剤の配合量は、添加する液の約0.001〜8質量%が適当であり、好ましくは約5質量%以下である。これらの添加剤は、前記ポリオールを主成分とするA液に添加することが好ましい。
【0053】
本発明の二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を体腔に注入して充填する量は、施用部位に応じて適宜設定でき、体腔内から体液の漏出を防止する程度の充分な発泡量であればよく、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る遺体処置装置の好適な実施態様について説明するが、本発明が下記実施態様に限定されるものでないことはもとよりである。
図1は、鼻孔又は口から挿入して咽喉部(のど部)に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入するための挿入管を備えた本発明の遺体処置装置1の一実施態様を示しており、注入器具2、筒状連結部材7、接続部材8及び挿入管9とからなる。注入器具2、筒状連結部材7及び接続部材8は、いずれも高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、アセタール樹脂等のプラスチックから作製され、全体的に透光性を有し、注入器具2内に収容されている内容物がある程度視認できるように構成されているが、中が見えないように着色されていても構わず、また他の任意のプラスチック材料から作製することもできる。一方、挿入管9は、鼻孔や口に挿入した際、鼻腔や口蓋の形状に沿って撓む柔軟性を有するポリエステルエラストマー、軟質塩化ビニル樹脂、ゴム等の可撓性の合成樹脂から作製することが好ましい。
【0055】
注入器具2は、図2〜図9に示されるように、筒状本体3と、該筒状本体3内に配設された2つの注入器4を備え、各注入器4は、それぞれ先端部に易破断性の保護キャップ52が被冠されている吐出筒部51を有する筒状案内体5と、各筒状案内体5内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されているピストン6とを有し、上記2つの筒状案内体5のいずれか1つに前記二液型発泡ウレタン組成物のA液が収容され、他の1つにB液が収容されている。尚、筒状本体3は、2分割形式の上部材と下部材とを組み合わせたものであり、図2及び図3には、判り易いように上部材を取り除いた状態で示されている。尚、本実施態様では、筒状案内体5の先端部の吐出筒部51に易破断性の保護キャップ52が被冠されているが、後述する針状接続管84により突き通せる易破断性の閉鎖端面であればよく、例えば易破断性の薄いフィルムを吐出口部端面に貼着したり、吐出筒部51に被冠したりすることもできるが、生産性や組立て等の面からは、易破断性の保護キャップ52を用いることが好ましい。また、保護キャップ52の吐出筒部51への被冠方法としては、嵌合、接着、螺合等の任意の手段を採用できる。
【0056】
筒状本体3は、図2〜図9に示されるように、本体部31と、軸線方向に複数のスリット33が形成された先端接続部32とからなり、本体部31の後端部には、上部材(図示せず)と下部材にそれぞれ、半径方向両側(図2では、上下方向)に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部34が形成されていると共に、本体部31と先端接続部32との間には、上記鍔部34と同じ方向に突出している上記鍔部34と類似の形状のフランジ部35が形成されており、このフランジ部35は筒状連結部材7を接続する際のストッパ部として機能する。また、先端接続部32の各スリット33間に位置する上下の並行板部内面には、それぞれ軸線方向に平行に延在する2本の案内リブ36が形成されている。この案内リブ36は、前記接続部材8を安定して案内するためのものであり、接続部材8との係合状態については後に説明する。
【0057】
筒状本体3の上部材と下部材は、それぞれの本体部31の周壁の端面に、図3に示されるように、一方の周壁には外縁部側がへこんで内縁部側に突状内縁部37を有する段差部が形成され、他方の周壁には外縁部側が突出して内縁部側がへこんで上記突状内縁部37に対応する断面形状の凹状内縁部38を有する段差部が形成されていると共に、一方の周壁端面の所定位置複数個所にはピン39が立設され、他方の周壁端面の上記ピン39に対応する所定位置複数個所には穴部40が穿設されている。開いた状態の筒状本体3の上部材と下部材における上記突状内縁部37、凹状内縁部38、ピン39及び穴部40の位置関係は同一である。筒状本体3の上部材と下部材は、上記一方の周壁端面に立設されたピン39が他方の周壁端面に形成された穴部40に嵌め込まれると共に、一方の周壁の突状内縁部37が他方の周壁の凹状内縁部38に嵌め込まれることによって組み立てられる。一方の周壁は他方の周壁に接着剤等によって接合することもできる。尚、符号47は、他方の周壁内面の複数個所に形成されたガイドリブであり、該ガイドリブ47と他方の周壁との間の凹状内縁部38の個所に凹部が形成されることによって、この凹部に一方の周壁の突状内縁部37を受け入れ、安定して筒状本体3の上部材と下部材を組み立てることができるようにしたものである。
【0058】
前記鍔部34は、筒状本体3の上部材と下部材の本体部31の後端部からそれぞれ立設された略三日月状の鍔本体部41と、該鍔本体部41の先端から後方に軸線方向と平行に延出する周壁部42とからなる。また、図3、図5、図8、図9に示されるように、各本体部31の後端部内周部には、それぞれ後端部両側から内側に向かって対抗して突出している一対のストッパーリブ43が上記鍔本体部41と所定の間隔をあけて設けられていると共に、図5、図8、図9に示されるように、上記鍔本体部41の後側面には、鍔本体部41側の上端に切り欠き凹部45が形成された2本のリブ44が上下方向に延在している。上記ストッパーリブ43と鍔本体部41との間の隙間及び上記リブ44の切り欠き凹部45が、筒状案内体5の後端部に形成されたフランジ部53が嵌まり込む凹部を形成している。尚、フランジ部53が嵌まり込む凹部は、上記のような構造に限定されるものではなく、例えば、上部材と下部材の各本体部31の鍔部34の周壁部42に筒状案内体5のフランジ部53が嵌まり込む略半環状の溝部を形成してもよく、筒状本体3の上部材と下部材の間に組み込まれた筒状案内体5の抜け止めを行えるような構造であれば、任意の構造であってよい。
【0059】
前記筒状本体3の上部材と下部材の内部には、それぞれ2箇所、図6に示されるように、2つの半円形が連なったような形状の頂端面(内側端面)を有する支持リブ46が軸線方向と直角方法に突設されている。この支持リブ46は、筒状案内体5を安定して支持するのに供される。また、前記各筒状本体3の先端接続部32の各スリット33間に位置する上下の並行板部外面のフランジ部35近傍の中央部には、後方に向かってなだらかに立ち上がり、後端縁が鋭角(直角)となっている突部48が形成されている。この突部48は、筒状連結部材7を筒状本体3に連結する際に、筒状連結部材7の上下後端部に形成された中央開孔76aに嵌め込まれ、連結状態が容易に解除されないようにするためのロック機構として作用するものである。
【0060】
前記したように、注入器具2の各注入器4は、いずれも高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等のプラスチックから作製された筒状案内体5とその内部に摺動自在に挿入されているピストン6とから構成されている。図5に示されているように、各筒状案内体5は、その先端部が縮径されて本体よりも小さな外径及び内径の吐出筒部51を有し、該吐出筒部51には易破断性の保護キャップ52が被冠されている。また、各筒状案内体5の後端部には、上下方向に突出する全体的に細長い略楕円形のフランジ部53が形成されている。このフランジ部53は、筒状本体3の上部材と下部材の間に各注入器4を組み込む際に、前記ストッパーリブ43と鍔本体部41との間の隙間及び上記リブ44の切り欠き凹部45に嵌まり込み、一旦各注入器4を筒状本体3内に組み込んだ後は容易に抜けないような構造となっている。尚、筒状案内体5には、どの位置で内容物の容量がどの程度であるかを示す目盛を付けることができる。
【0061】
一方、各ピストン6は、各注入器4の上記筒状案内体5に、後端部側から摺動自在に挿入されている。ピストン6の長さは、内容物を全て押し出せるように、筒状案内体5の本体部長さよりも長くなるように設計されている。各ピストン6は、断面十字形のピストンロッド61を有し、その先端部には、図5に示されるように、該ピストンロッドの断面寸法よりも若干大きな直径の円形フランジ部62aが形成されている。該円形フランジ部62aの先端面から突出して形成された略キノコ型のフランジ部63の周囲には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、プロピレンコポリマー等の軟質合成樹脂や、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の各種エラストマー、ゴム等から作製されたガスケット64が被冠されている。尚、反応性の高いポリイソシアネートを含有するB液を収容した筒状案内体内に挿入されるピストンロッドのガスケット材料としては、耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、プロピレンコポリマー等の軟質合成樹脂を用いることが好ましい。
【0062】
一方、各ピストンロッド61の後端には、ピストンロッド61を指で押圧し易いように、上下に細長い略楕円形状の指を当てる押圧部65が形成されている(図2参照)。各ピストン6は、筒状案内体5に後端部側から挿入したときに、上記ガスケット64が筒状案内体5の内周面に接触した状態で筒状案内体5内を摺動するように構成されている。さらに、筒状案内体5の後端部近傍の内周面には僅かに内方に突出したリング状の突条部54が形成されており(図5参照)、この突条部54にピストンロッド61の円形フランジ部62a(62b,62c)が当たることによって、ピストン6が筒状案内体5から容易に抜け出ないように構成されている。また、ピストンロッド61には、円形フランジ部62aから所定の間隔でさらに同じような円形フランジ部62b及び62cが形成されている。これらの円形フランジ部62b及び62cは、筒状案内体5内に内容液を充填する際に、一旦ピストンロッド61を筒状案内体5の吐出筒部51に突き当たる迄入れた状態で、ピストンロッド61を引いて吐出筒部51から内容液を筒状案内体5内に吸引するときに、充填した内容液の量を知る目盛としての機能を有すると共に、ピストンロッド61を補強する補強用リブとしての機能も有する。例えば、円形フランジ部62cが上記突条部54に当接する位置で充填した内容液の量は2cm、円形フランジ部62bが上記突条部54に当接する位置で充填した内容液の量は2.5cm、円形フランジ部62aが上記突条部54に当接する位置で充填した内容液の量が3cmとなるような間隔に設定するなどの利用が可能である。なお、本実施態様ではピストンロッド61は断面十字形であるが、断面円形等の棒状であってもよい。また、各ピストン6のピストンロッド61とガスケット64は別体であるが、一体成型されたものであってもよい。
【0063】
また、各ピストンロッド61の断面十字形の左右方向の片66aは押圧部65に近い所定位置で途切れており、この左右方向の片66aがない部分では上下方向の片66bは幅が狭くなっており、この幅が狭くなっている上下方向の片66bの各端面に延在するようにそれぞれ2枚の平板リブ67が押圧部65から平行に突設され、上下方向の片66bの上端面及び下端面になだらかに収束している。また、図2、図3、図9に示されるように、各ピストンロッド61の対向する平板リブ67上面の押圧部65の基部には、一方のピストンロッド61では他方のピストンロッド61側に開口する筒状部68が形成されており、他方のピストンロッド61では上記筒部68に嵌め込まれるピン69が一方のピストンロッド61側に突出するように形成されている。これとは逆に、各ピストンロッド61の対向する平板リブ67下面の押圧部65の基部には、一方のピストンロッド61ではピン69が他方のピストンロッド61側に突出するように形成されており、他方のピストンロッド61では一方のピストンロッド61側に開口する筒状部68が形成されている。従って、上下一対の上記ピン69を筒状部68に嵌め込むことにより、一方のピストンロッド61は他方のピストンロッド61に係合した状態となり、2つのピストンを一体的に同時に押すことができる。即ち、上下一対のピン69を筒状部68に嵌挿することにより、2つのピストンが係合し同時に作動しえる状態となる。尚、上記筒状部68とそれに嵌め込まれるピン69は、係合部とそれに係合する係合片の組合せや、それぞれ対向する他方のピストンの押圧部の下まで延在するように突出する係合片をそれぞれ形成するなど、一方のピストンを押すと他方のピストンも押されるような、2つのピストンが係合し同時に作動しえる状態であればよい。
【0064】
前記注入器具2の組立てに際しては、筒状本体3の下部材(又は上部材)内に、一方の筒状案内体5内に二液型発泡ウレタン組成物のA液が収容され、且つピストン6が装着されている注入器4と、他方の筒状案内体5内にB液が収容され、且つピストン6が装着されている注入器4の2つの注入器4を配置する。この際、2つの注入器4は、下部材(又は上部材)の後端部内周部に形成されているストッパーリブ43と鍔本体部41との間の隙間及びリブ44の切り欠き凹部45に、各筒状案内体5の後端部に形成されたフランジ部53が嵌まり込むように配置する(図5参照)。その後、このように2つの注入器4が配設された筒状本体3の下部材(又は上部材)に、上部材(又は下部材)を、一方の周壁に形成された突状内縁部37を他方の周壁に形成された凹状内縁部38に嵌め込み、且つ、一方の周壁端面の所定位置複数個所に立設されたピン39を他方の周壁端面の所定位置複数個所に穿設された穴部40に嵌め込み、必要に応じて接着剤で接合することにより、図1に示すように組み立てる。一般に、遺体処置装置は使い捨て製品であるので、上記のように一旦組み立てた後は分解できないように接着して組み立てるが、注入器2のみを使い捨てとし、筒状本体3は再利用したい場合には、上部材と下部材を上記ピン39の穴部40への嵌合により組み立て、再度分離できるようにしてもよい。
【0065】
図10〜13は、前記筒状連結部材7を示している。筒状連結部材7は、前記筒状本体3の先端接続部32に接続される、断面が略楕円形の扁平な筒状部71と、その先端部に形成されたテーパ状接続部72とからなる。テーパ状接続部72は、先端の開口部73に向かって漸次縮径するテーパ状に形成されている。筒状部71の前後部には、前記筒状本体3のフランジ部35と類似の断面形状のフランジ部74,75が半径方向両側(図1では、紙面と垂直方向)に突出して形成されている。図13に示されるように、前側フランジ部74の内寸は後側フランジ部74の内寸よりも小さくなるように縮径されており、テーパ状接続部72の後端の内寸は前側フランジ部74の内寸と同じである(図13参照)。
【0066】
図10及び図12に示されるように、筒状部71の軸線方向中心線の後側フランジ部75の基部には上下2箇所に中央開孔76aが形成され、該中央開孔76aから後側フランジ部75基部に沿って両側に所定間隔の位置(上下それぞれ2箇所)に側部開孔76bが形成されている。筒状部71の上下内面には、上記側部開孔76bから軸線方向に平行な上下それぞれ2本のガイド溝77が所定の長さ(前述した接続部材8の長さに対応)だけ形成されている(図10及び図13参照)。また、図12及び図13に示されるように、筒状部71の前側フランジ部74内側面のテーパ状接続部72後端近傍の両側から、円筒体を長手方向に2分割したような形状の一対の半筒部78が互いに向き合うように平行に後方へ突設されており、該半筒部78はそれぞれ上下及び側部の3本の略L字形の支持リブ79により筒状部71と一体化されている。上記半筒部78の外径は、後述する接続部材8の筒部81の内径よりも若干小さく、接続部材8の筒部81が半筒部78の外周に沿って配置され、その先端は略L字形の支持リブ79と半筒部78の先端部に形成される段差部に当接するように構成されている。一方、テーパ状接続部72の前側フランジ部近傍の上下両側部には、それぞれ所定の間隔をあけて一対の突部80が形成されている。この突部80は、テーパ状接続部72に後述する挿入管9を接続する際に、挿入管9の接続部92の上下両側部の後端部近傍に形成された一対の開孔95に嵌挿されるロック機構として作用する。
【0067】
図14〜17は、前記筒状連結部材7内に配設される接続部材8を示している。接続部材8は、2つの筒部81を有し、該2つの筒部81は、その長さ全体にわたって延在する水平な横連結部82と、該横連結部82の後端部に一体的に垂直に形成され、上記筒部81の径とほぼ等しい高さを有する縦連結部83とにより一体的に連結されている。上記各筒部81内には、後端部が鋭角に形成された針状接続管84が配設されており、各筒部81と各針状接続管84は、図17に示されるように、各筒部81の中央部に配された管状リブ85によってそれぞれ一体的に連結されている。上記2つの針状接続管84は、各針状接続管の鋭角な端部が対向し、且つ、筒状連結部材7が前記筒状本体3の先端接続部32に接続されたときに、前記筒状案内体5の吐出筒部51側に向かって配向するような位置関係となるように配設されている。尚、各針状接続管84の鋭角な先端は、安全性の面から筒部81の後端面と同一面又はそれより内側に位置するような長さに設定する必要があるが、注入器4との接続の際に保護キャップ52を充分に突き通すためには筒部81の後端面と同一面となるような長さが好ましい。一方、各針状接続管84の先端部は、図示の実施態様では筒部81の前端面と同一面となるような長さであるが、若干突出していても構わない。
【0068】
また、各筒部81の上下部には、それぞれ、先端から後端近傍にわたって軸線方向に延在するガイドリブ86が形成され、且つ、各ガイドリブ86の後端部上端内縁部には、後方に向かってなだらかに立ち上がり、後端縁が鋭角(直角)となっている突部87が形成されている。ガイドリブ86の後端と縦連結部83の後端面との間の距離は、前記筒状連結部材7の後側フランジ部75の厚さと等しいかもしくは若干長く、また、上部及び下部の一対のガイドリブ86間の間隔は、前記筒状連結部材7の筒状部71の上部及び下部の一対の側部開孔76b間の間隔及び一対のガイド溝77間の間隔と等しくなっている。それによって、筒状連結部材7内に後側から接続部材8を配設する際に、各筒部81のガイドリブ86が前記筒状連結部材7の各筒状部71のガイド溝77内を摺動して作業性良くスムーズに装着できるように構成されていると共に、上記各突部87が筒状連結部材7の上下後端部に形成された各側部開孔76bに嵌め込まれ、連結状態が容易に解除されないようにロック機構として作用する。また、縦連結部83の上端面及び下端面の所定位置には、それぞれ一対の切り欠き凹部88が形成されている。上端面及び下端面の一対の切り欠き凹部88間の間隔は、前記筒状本体3の先端接続部32の2本の案内リブ36間の間隔と等しくされている。それによって、接続部材8が配設された筒状連結部材7を前記筒状本体3の先端接続部32と接続する際に、上記案内リブ36が接続部材8の切り欠き凹部88内を摺動して作業性良くスムーズに装着できるように構成されている。
【0069】
図18〜21は、前記挿入管の一実施態様を示しており、前記接続部材8が内部に装着された筒状連結部材7と接続した状態で示されている。
挿入管9は、鼻孔に挿入した際、鼻腔形状に沿って撓む柔軟性を有するポリエステルエラストマー、軟質塩化ビニル樹脂、ゴム等の可撓性の合成樹脂から作製されている。図示されるように、挿入管9は、後部に後方にやや拡開したテーパ状の接続部92を有する断面が略楕円形状の挿入管本体91と、その先端部に嵌挿されている断面が略楕円形状のノズル部材94と、挿入管本体91内部に配設された2つの流路を構成する2本のチューブ100とを有する。また、接続部92の挿入管本体側の所定位置(好ましくは接続部92の先端部)には、外周を囲繞するように半径方向外側に突出した断面円形のストッパ部93が形成されている。ストッパ部93の直径は、鼻孔等の所望の体腔に挿入されないようなサイズとする必要がある。
【0070】
上記挿入管9の接続部92は、前記筒状連結部材7のテーパ状接続部72に接続される部分であり、その後端部近傍の上下両側部には、前記テーパ状接続部72の前側フランジ部74近傍の上下両側部に形成されている一対の突部80と同じ位置関係になるように、それぞれ所定の間隔をあけて一対の開孔95が形成されている。前記筒状連結部材7のテーパ状接続部72に挿入管9を接続すると、この開孔95に突部80が嵌め込まれ、ロックされた状態となる。また、上記挿入管本体91の先端部近傍の上下中央部には、ノズル部材94との連結用の開孔96が形成されている。ノズル部材94は、鼻孔から挿入し易いように丸みをおびている先端部に1つの扁平な吐出流路97が形成されていると共に、後半部には、吐出流路97の内寸よりも大きく、2本のチューブ100の合計外寸とほぼ等しい内寸を有し、先端部の外寸よりも若干小さく、挿入管本体91の内寸よりも若干大きな外寸の部分の接続管状部98が形成されている。該接続管状部98の2本のチューブ100の合計外寸とほぼ等しい内寸を有する内部は、チューブ100の先端部の収容部として作用すると共に、そのストッパ部として作用する。また、ノズル部材94の接続管状部98の上下所定位置(上記開孔96と対応する位置)には、上記開孔96に嵌め込まれる突部99が形成されている。
【0071】
前記挿入管9、2本のチューブ100、筒状連結部材7及び接続部材8の組み立てに際しては、まず、接続部材8の2つの針状接続管84の先端部内にそれぞれ所定の長さのチューブ100の一端部(後端部)を嵌め込んだ状態で、筒状連結部材7の後側からチューブ100及び接続部材8の順に挿入し、接続部材8の各筒部81の後端縁に形成された各突部87が筒状連結部材7の上下後端部に形成された各側部開孔76bに嵌め込まれるまで、接続部材8の各筒部81のガイドリブ86を筒状連結部材7の各筒状部71のガイド溝77内を摺動させる。このようにして、2本のチューブ100が接続された接続部材8を筒状連結部材7に連結し、ロックした状態で、2本のチューブ100の先端部を挿入管9の後側から挿入し、ノズル部材94の接続管状部98内に嵌挿すると共に、挿入管9の接続部92の後端部近傍の上下両側部に形成されている各開孔95に筒状連結部材7のテーパ状接続部72に形成されている各突部80を嵌め込み、ロックした状態とする。あるいは別の方法としては、予め、2本のチューブ100の先端部を挿入管9の後側から挿入し、ノズル部材94の接続管状部98内に嵌挿した状態とし、また、接続部材8を筒状連結部材7に連結し、ロックした状態としておき、挿入管9の後端から突出している2本のチューブ100の後端部を筒状連結部材7の前側から接続部材8の2つの針状接続管84の先端部内にそれぞれ嵌挿すると共に、挿入管9の接続部92に形成されている各開孔95に筒状連結部材7のテーパ状接続部72に形成されている各突部80嵌め込み、ロックした状態としてもよい。また、必要に応じて、筒状連結部材7の後側フランジ部75と筒状本体3のフランジ部35は接着剤等により接合することもできる。
【0072】
このようにして2本のチューブ100、接続部材8及び筒状連結部材7が組み込まれた挿入管9と、二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液がそれぞれ収容されている2つの注入器4が組み込まれた注入器具2の使用に際しては、注入器具2の筒状本体3の先端接続部32を筒状連結部材7の後側から挿入し、接続する。この際、筒状本体3の先端接続部32に形成された案内リブ36が接続部材8の切り欠き凹部88内を摺動するのでスムーズに挿入できる。さらに挿入することにより、接続部材8の各針状接続管84の鋭角な端部が各注入器4の吐出筒部51に被冠されている保護キャップ52を突き通し、各チューブ100と各注入器4の筒状案内体5内部が連通状態になると共に、筒状本体3の先端接続部32に形成された突部48が筒状連結部材7に形成された中央開孔76aに嵌め込まれ、ロックされた状態となる。
【0073】
上記の状態で、挿入管9を鼻孔から咽喉部に向けて挿入し、ストッパ部93が鼻先に位置した時点で挿入を停止する。この際、挿入抵抗を軽減するために、挿入管本体91及びノズル部材94に潤滑剤を塗布してもよい。そして、各注入器4のピストン6を押圧し、一方の注入器内に収容された二液型発泡ウレタン組成物のA液と、他方の注入器内に収容されたB液を、上記挿入管9を通して遺体の体腔(咽喉部)内に同時に注入して発泡させ、ウレタンフォームで封止する。この際、挿入管9の先端のノズル部材94には1つの吐出流路97が形成されているため、この部分で上記A液とB液が合流し、混合されて吐出されるので、A液とB液が速やかに反応して発泡し、無数の細かい気泡、好ましくは連続気泡からなるウレタンフォームを形成し、体腔内の凹凸面の細かい部分にも隙間なく充填し、体腔内の壁面に密着して即座に硬化し、体腔を完全に封止することができる。ウレタンフォームを充填した後は、挿入管9を鼻孔から抜き出す。あるいは別の方法として、予め接続部材8及び筒状連結部材7が組み込まれた挿入管9を鼻孔から咽喉部に向けて挿入し、この状態で、注入器具2の筒状本体3の先端接続部32を筒状連結部材7の後側から挿入し、接続してもよいが、作業性の点からは前記した方法が好ましい。
【0074】
図22〜図26は、口から挿入して咽喉部(のど部)に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するために適した挿入管の他の実施態様を示しており、前記接続部材8が内部に装着された筒状連結部材7と接続した状態で示されている。この実施態様の挿入管9aは、挿入管本体91aがその先端部から所定長さだけ湾曲状に形成された湾曲部を有する点で前記図18〜図21に示される実施態様と異なる。挿入管本体(湾曲部)9aは、扁平環状の断面を有し、ヒトの口蓋の形状に近似した湾曲状に形成されている。尚、本実施態様の場合、挿入管本体91a全体が湾曲状に形成され、その後端部に後方に開拡するテーパ状の接続部92が形成され、筒状連結部材7の前側フランジ部74がストッパ部として機能するが、挿入管本体(湾曲部)91aと接続部92との間に直管部を設け、あるいはさらに前記挿入管9と同様のストッパ部93を設けてもよい。
【0075】
挿入管本体(湾曲部)91aの先端には、前記図18〜図21に示される実施態様と同様にノズル部材94が嵌挿されるが、この実施態様の場合、前記実施態様とは異なり、ノズル部材94は2分割形態に形成されており、それらの端面に形成された複数のピン(図示せず)を他方の端面に形成された複数の孔部(図示せず)に嵌合することにより組み立てられるが、一体成型してもよい。また、ノズル部材94の接続管状部98は、前記実施態様とは異なり、2本のチューブ100の合計外寸よりも大きな内寸を有し、後端部内周部にはチューブ100を嵌挿するためのガイド突部98aが形成されており、2分割部材に設けられた対向する一対のガイド突部98aにより形成される略楕円形内周面は2本のチューブ100の合計外寸と等しいか若干小さな内寸とされ、その中に2本のチューブ100が嵌挿されるように構成されている。尚、図示の実施態様ではガイド突部98aは1つであるが、2つあるいはそれ以上のガイド突部を所定間隔で設けてもよい。
【0076】
一方、挿入管9aの後端部の接続部92は、挿入管本体(湾曲部)91aの後端に所定の角度をもって設けられているが、その構造、サイズ等は前記した図18〜図21に示される実施態様と同じである。尚、挿入管本体91aの湾曲方向と、筒状連結部材7のフランジ部74,75の方向、及び筒状本体3の一対の鍔部34とフランジ部35の方向は同一方向(図24に示す状態では上下方向)に配向しており、遺体の口からの挿入と注入操作が容易に行えるように構成されていると共に、組立てに際しての挿入管9aと筒状連結部材7と筒状本体3の位置合わせを簡便にして、組立てが容易に行えるように構成されている。尚、前記挿入管9aと、2本のチューブ100、筒状連結部材7及び接続部材8の組み立て方法は、前記した実施態様の場合と同様である。
【0077】
挿入管9aは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の比較的剛性のあるプラスチックから作製され、全体的に透光性を有するが、中が見えないように着色されていても構わず、また他の任意のプラスチック材料から作製することもできる。また、処置する遺体の口蓋の曲面形状が多少異なっていても、容易にその曲面形状に追従して遺体の口からスムーズに挿入することができるように、挿入管本体(湾曲部)91aはある程度の可撓性を有することが好ましい。挿入管9aの接続部92が当接する筒状連結部材7の前側フランジ部74は、挿入管本体(湾曲部)91aを遺体の口から咽喉部に向けて挿入する際、ストッパ部として機能し、又は挿入停止位置表示部として機能するので、先端のノズル部材94から接続部92までの全体長さは、口から通してノズル部材94の先端が咽喉部に達する長さ(挿入長さ)と同程度とすればよく、また、湾曲部の扁平環状断面の長径外寸は約8〜25mm、好ましくは約10〜15mm、短径外寸は約5〜15mm、好ましくは約7〜10mm程度が適当である。さらに、先端のノズル部材94の吐出口(吐出流路97)が詰まったときの予備開口部となる複数の孔部を、ノズル部材94の先端部側部に設けることもできる。
【0078】
前記挿入管9aを用いた遺体処置装置の使用に際しては、前記したように、二液型発泡ウレタン組成物のA液とB液がそれぞれ収容されている2つの注入器4が組み込まれた注入器具2の筒状本体3の先端接続部32を、挿入管9a、2本のチューブ100及び接続部材8が組み込まれた筒状連結部材7の後側から挿入して接続し、接続部材8の各針状接続管84の鋭角な端部が各注入器4の吐出筒部51に被冠されている保護キャップ52を突き通し、各チューブ100と各注入器4の筒状案内体5内部が連通状態にすると共に、筒状本体3の先端接続部32に形成された突部48が筒状連結部材7に形成された中央開孔76aに嵌め込まれ、ロックされた状態とする。
【0079】
この状態で、挿入管9aの湾曲部91aを遺体の口から咽喉部に向けて挿入する。この際、筒状連結部材7の前側フランジ部74はストッパ部として機能するので、挿入管の挿入に熟練を要することなく、常に一定した施用部位に吐出口が位置するように挿入できる。また、挿入抵抗を軽減するために、挿入管本体91a及びノズル部材94に潤滑剤を塗布してもよい。そして、各注入器4のピストン6を押圧し、一方の注入器内に収容された二液型発泡ウレタン組成物のA液と、他方の注入器内に収容されたB液を、上記挿入管9aを通して遺体の体腔(咽喉部)内に同時に注入して発泡させ、ウレタンフォームで封止する。この際、挿入管9aの先端のノズル部材94には1つの吐出流路97が形成されているため、この部分で上記A液とB液が合流し、混合されて吐出されるので、A液とB液が速やかに反応して発泡し、無数の細かい気泡、好ましくは連続気泡からなるウレタンフォームを形成し、体腔内の凹凸面の細かい部分にも隙間なく充填し、体腔内の壁面に密着して即座に硬化し、体腔を完全に封止することができる。ウレタンフォームを充填した後は、挿入管9aを口から抜き出す。あるいは別の方法として、予め接続部材8及び筒状連結部材7が組み込まれた挿入管9aを口から咽喉部に向けて挿入し、この状態で、注入器具2の筒状本体3の先端接続部32を筒状連結部材7の後側から挿入し、接続してもよいが、作業性の点からは前記した方法が好ましい。
【0080】
前記した各実施態様においては、各フランジ部34,74,75及び鍔部35は略楕円形であるが、六角形、八角形等の多角形など、任意の形状にすることができる。また、病院で看護師が一般の注射器と間違えずに容易に判別できるように、例えば注入器具2の筒状本体3を着色したり、あるいはその色を他の部材の色と異なるように着色してカラフルな注入器具とすることにより、施用場所を鮮明に把握できるようにすることも可能である。
【0081】
図27及び図28は、鼻孔又は口から挿入して咽喉部(のど部)に二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入するための挿入管を備えた本発明の遺体処置装置の他の実施態様を示しており、ピストンの構造及び筒状本体の後端部の構造が前記実施態様の場合と異なる以外、他の構成要素は前記実施態様の場合と同じである。
この実施態様の場合、ピストン6aの断面十字形のピストンロッド61の先端部には、図27に示されるように、該ピストンロッドの断面寸法よりも若干大きな直径の円形フランジ部62aが形成されているが、前記実施態様とは異なり、該円形フランジ部62aの先端面には略キノコ型のフランジ部が突出して形成されておらず、円形フランジ部62aの先端面で直に内容物を押し出すように構成されている。従って、ピストン6aは、低密度ポリエチレン、シリコーン樹脂等の軟質合成樹脂により一体成型でき、コスト面や組立作業が必要でない点で前記実施態様よりも有利である。また、図28に示されるように、筒状本体の後端部は、リブ44が見えないようにカバー部49により覆われており、外観的にスッキリした構造となっている。尚、カバー部49の頂端面は、筒状案内体5の外周を2分割したような半円が2つ連なった形状を有している。
【0082】
次に、図29〜図38は、肛門及び/又は膣に前記二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入するための処置装置の好適な態様を示している。
この遺体処置装置(注入器具)1aは、いずれも高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、アセタール樹脂等のプラスチックから作製された、筒状本体110と、図31及び図32に明瞭に示されているように該筒状本体110内に配設された2つの注入器120と、筒状本体110の先端部内に配設されたノズル装置140とから構成されている。
【0083】
筒状本体110は、図29に示されるように、2分割された上部材110aと下部材110bとを組み合わせたものであり、先端に開口111を有する略ドーム状の先端カバー部112と、略中間部に笠状のストッパ部113を有すると共に、後端部に、前方にやや湾曲するように半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部114を有する。また、図32〜図34に示されるように、上部材110a及び下部材110bの後端部内周部には、注入器120の筒状案内体121の後端部に形成されたフランジ部124が嵌まり込む環状凹部119が形成されている。上部材110aと下部材110bは、それぞれの周壁の端面に、図35に示されるように、一方の周壁には外縁部側がへこんで内縁部側に突状内縁部115を有する段差部が形成され、他方の周壁には外縁部側が突出して内縁部側がへこんで上記突状内縁部115に対応する断面形状の凹状内縁部116を有する段差部が形成されていると共に、一方の周壁端面の所定位置複数個所にはピン117が立設され、他方の周壁端面の上記ピン117に対応する所定位置複数個所には穴部118が穿設されている。開いた状態の上部材110aと下部材110bにおける上記突状内縁部115、凹状内縁部116、ピン117及び穴部118の位置関係は同一である。また、上部材110aと下部材110bの内部にはそれぞれ、図34及び図36に示されるように、先端カバー部112内の所定位置にそれぞれ2つのガイドリブ151が軸線方向に平行に延在するように設けられており、該ガイドリブ151の後端部には、注入器120の筒状案内体121近傍に位置する軸線方向に直角に立設されたストッパーリブ152が設けられている。尚、図34に示されている符号153は、注入器120の筒状案内体121を支持し且つ筒状本体110を補強するために軸線方向に対して直角に立設された複数の支持リブであり、それらの頂端面は筒状案内体121の楕円状外形に対応する2つの半円形が連なったような形状に形成されている。
【0084】
筒状本体110内に配置されている2つの注入器120は、図31〜図34に示されるように、いずれも高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、アセタール樹脂等のプラスチックから作製された、筒状案内体121とピストン130とから構成されている。一方の筒状案内体121内にはポリオールを主成分とするA液が収容され、他方の筒状案内体121内にはイソシアネートを主成分とするB液が収容されている。筒状案内体121の先端部は縮径されて本体よりも小さな外径及び内径の吐出筒部122を有すると共に、後端部には半径方向に突出する環状のフランジ部124が形成されている。上記吐出筒部122には、その開口を覆うように易破断性の保護キャップ123が被冠されている。尚、本実施態様では、筒状案内体121の断面形状は、図35に明瞭に示されているように楕円形であるが、円形であってもよい。あるいはまた、六角形、八角形等の多角形であってもよい。しかしながら、筒状案内体121内に収容する内容物の量が多い場合には、本実施態様のように、断面円形の筒状本体110内に配置する場合には、断面楕円形の筒状案内体121とすることが空間有効活用性(充填性)の点から好ましい。一方、筒状案内体121内に収容する内容物の量が少ない場合には、製造が容易である点から円形が好ましい。尚、筒状案内体121には、どの位置で内容物の容量がどの程度であるかを示す目盛を付けることができる。また、本実施態様では、筒状案内体121の先端部の吐出筒部122に易破断性の保護キャップ123が被冠されているが、後述する針状接続管145により突き通せる易破断性の閉鎖端面であればよく、例えば易破断性の薄いフィルムを吐出口部端面に貼着したり、吐出筒部122に被冠したりすることもできるが、生産性や組立て等の面からは、易破断性の保護キャップ123を用いることが好ましい。また、保護キャップ123の吐出筒部122への被冠方法としては、嵌合、接着、螺合等の任意の手段を採用できる。
【0085】
一方、ピストン130は、上記各注入器120の筒状案内体121内に、それぞれ後端部側から摺動自在に挿入されている。ピストン130の長さは、内容物を全て押し出せるように、筒状案内体121の長さよりも長くなるように設計されている。ピストン130は、断面略十字形のピストンロッド131を有し、図33に示されるように、その先端面から突出して形成された略キノコ型のフランジ部132周囲には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、プロピレンコポリマー等の軟質合成樹脂や、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の各種エラストマー、ゴム等から作製されたガスケット133が被冠されている。尚、反応性の高いポリイソシアネートを含有するB液を収容した筒状案内体内に挿入されるピストンロッドのガスケット材料としては、耐薬品性に優れたポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、プロピレンコポリマー等の軟質合成樹脂を用いることが好ましい。また、ピストンロッド131の後端には、ピストンロッド131を指で押圧し易いように、指を当てる略円板状の押圧部134が形成されている(図37参照)。ピストン130は、注入器120の筒状案内体121に後端部側から挿入したときに、上記ガスケット133が筒状案内体121の内周面に接触した状態で摺動するように構成されている。なお、本実施態様ではピストンロッド131は断面略十字形であるが、断面円形等の棒状であってもよい。また、各ピストン130のピストンロッド131とガスケット133は別体であるが、一体成型されたものであってもよく、例えば前記図27に示されるような構造とすることもできる。さらに、前記実施態様の注入器具2の場合と同様に、筒状案内体121の後端部近傍の内周面に僅かに内方に突出したリング状の突条部を形成し、この突条部に当たるようにピストンロッド先端部に円形フランジ部を設け、ピストン130が筒状案内体121から容易に抜け出ないように構成することもできる。
【0086】
また、各ピストンロッド131の断面十字形の上下の片135の幅は、図32、図33及び図37から明らかなように左右の片136の幅よりも広くなっているが、押圧部134側近傍は上下の片135の幅が狭くなって左右の片136の幅と同一となっている。さらに、押圧部134から幅が狭くなっている断面十字形の上下の片135の各端面に延在するようにそれぞれ2枚の平板リブ137が押圧部34から平行に突設されており、且つ、図37に示されるように、対向する平板リブ37側の押圧部134の基部には、一方のピストンロッド131では上部の平板リブ137と左右の片136との間に、他方のピストンロッド131では左右の片136と下部の平板リブ137との間に、それぞれ対向する押圧部134の下まで延在するように突出する係合片138が形成されている。従って、一方の押圧部134を押しても、その下まで延在している他方の押圧部134の係合片138も押すので、2つのピストンが同時に押される。即ち、上記係合片138の存在により、2つのピストンが係合し同時に作動しえる状態となっている。尚、上記係合手段は、前記した実施態様と同様に、一方のピストンロッド側に開口する筒状部と、他方のピストンロッド側に突出するように形成されたピンとの上下一対の組合せであってもよい。
【0087】
前記筒状本体110の先端部内に配置されたノズル装置140は、前記注入器120の吐出筒部122に接続される2つの円筒状孔部を有する外形が略楕円形状の接続部141と、該接続部141に接合され、二股状の流路が合体して先端部に1つの吐出流路150を形成している分岐流路143が形成されたノズル部142とからなり、ノズル部142は先端が略キノコ状に形成されている吐出口部144を有する。図38に明瞭に示されているように、接続部141の上記二股状流路に対応する位置には、注入器120の吐出筒部122側に向かって鋭角な先端が形成された2つの針状接続管145が設けられている。接続部141と2つの針状接続管145は一体成型してもよいし、所定位置2ヶ所に孔が形成された接続部の孔に別体の針状接続管を挿入し、接着剤で接合してもよい。また、接続部141の上面及び下面のそれぞれ所定位置2箇所にはガイドピン146が突設されている。
【0088】
一方、ノズル部142は、上下2分割された部材を組立て接合したものであり、図31及び図32に示されるように、2分割された各部材の一方の周壁端面には突条147が、他方の周壁端面には溝条148が形成され、一方の部材の突条147を他方の部材の溝条148に嵌め込みながら接続部141に組み込み、これらノズル部142の2分割された部材同士と接続部141とを接着して、ノズル装置140を組み立てる。尚、本実施態様では、ノズル部142は2分割された部材を組立て接合したものであるが、一体成型したものであってもよい。また、ノズル部142の二股状の流路が合体して一つの吐出流路150を形成している部分内周面には、図34及び図38に拡大して示すように、前後2箇所に、所定高さ(内容物の流出が困難とならないように、吐出流路150の内径の約1/2以下であることが好ましい)の一対の邪魔板部149が、互いに対向するように、且つ軸線方向に対して所定の角度(約30〜60°、好ましくは40〜50°程度が望ましい)で突設されており、前側の一対の邪魔板部149と後側の一対の邪魔板部149は90°の角度だけ円周方向の位置がずらされている。あるいは、一対の邪魔板部のみであってもよく、また、短い螺旋状の邪魔板部を形成してもよい。このような邪魔板部149を設けることにより、ノズル部142でポリオールを主成分とするA液とイソシアネートを主成分とするB液を攪拌することができるので、注入後の速やかな発泡が生起する。但し、体腔内壁の凹凸面による攪拌効果も期待できるので、このような邪魔板部149を設けなくても差し支えない。
【0089】
前記遺体処置装置1aの組立てに際しては、筒状本体110の下部材110b(又は上部材110a)内に2つの注入器120を配置すると共に、先端部側にノズル装置140を配置する。2つの注入器120は、下部材110b(又は上部材110a)の後端部内周部に形成されている環状凹部119に、注入器120の筒状案内体121の後端部に形成されたフランジ部124が嵌まり込むように配置する(図34参照)。また、ノズル装置140は、筒状本体110の下部材110b内及び上部材110a内には、図36に示されるように、所定位置にそれぞれ2つのガイドリブ151が軸線方向に延在しているので、ノズル装置140の前記接続部141の上面及び下面のそれぞれ所定位置2箇所に突設されたガイドピン146が上記2つのガイドリブ151の内側面に摺接するように、該ガイドリブ151に沿って摺動自在に配置する。尚、ノズル装置140を注入器120側に摺動させると、上記ガイドピン146が筒状本体110内に形成された前記ストッパーリブ152に当接し、さらにノズル装置140を押すと、上記ガイドピン146がストッパーリブ152を乗り越えて、ノズル装置140の注入器120への接続が完了するが、上記ストッパーリブ152によりノズル装置140の注入器120からの抜けは防止されるように構成されている。その後、下部材110b(又は上部材110a)に上部材110a(又は下部材110b)を、一方の周壁に形成された突状内縁部115を他方の周壁に形成された凹状内縁部116に嵌め込み、且つ、一方の周壁端面の所定位置複数個所に立設されたピン117を他方の周壁端面の所定位置複数個所に穿設された穴部118に嵌め込み、必要に応じて接着剤で接合することにより、図29に示すように組み立てる。一般に、遺体処置装置は使い捨て製品であるので、上記のように一旦組み立てた後は分解できないように接着して組み立てるが、注入器120のみを使い捨てとし、筒状本体110は再利用したい場合には、上部材110aと下部材110bを上記ピン117の穴部118への嵌合により組み立て、再度分離できるようにしてもよい。尚、この組み立てた状態では、ノズル装置140の針状接続管145は未だ注入器120の吐出筒部122に保護キャップ123を通して刺し込まれておらず、図38に示すような状態である。
【0090】
上記肛門及び/又は膣に前記二液型発泡ウレタン組成物からなる体液漏出防止剤を注入・装填するための注入器具(遺体処置装置)1aの使用に際しては、まず、筒状本体110の先端から突出しているノズル装置140のノズル部142の先端キノコ状の吐出口部144を押し、ノズル装置140のガイドピン146がストッパーリブ152を乗り越えるまでノズル装置140を注入器120側に摺動させ、その針状接続管145を注入器120の吐出筒部122に被冠されている保護キャップ123を通して刺し込み、針状接続管145を吐出筒部122内に挿入する。これにより、2つの注入器120の内部はノズル装置140の分岐流路143とそれぞれ連通状態となる。次いで、遺体処置装置1aの筒状本体110の先端部を例えば肛門や膣に挿入し、ストッパ部113が肛門や膣の外部に当たった時点で挿入を停止する。この際、挿入抵抗を軽減するために、遺体処置装置1aの筒状本体110の略ドーム状の先端カバー部112あるいはさらにストッパ部113に至る筒状部に潤滑剤を塗布してもよい。そして、注入器120のピストン130を押し、2つの注入器120内に収容されているポリオールを主成分とするA液とイソシアネートを主成分とするB液を同時に肛門や膣内に注入する。その後、遺体処置装置1aの筒状本体110を肛門や膣から抜き出す。この注入後の状態の遺体処置装置1aは、図30に示されるような状態となっている。
【0091】
なお、死後、硬直するまでに肛門や膣に外径の大きな筒状注入器具を挿入すると、肛門管や膣口が大きく開き、収縮するまでに時間を要するので体液の漏出の原因になる。また、筒状本体110の外径は細いほど挿入し易く、使用が簡便である。従って、筒状本体110の外径は約15〜30mm、より好ましくは約20〜25mmの範囲内に設定することが望ましい。また、筒状本体110の先端からストッパ部113までの距離は約30〜75mm、好ましくは約40〜60mmの範囲内に設定することが望ましく、ストッパ部113の筒状本体110の外周面からの高さは、容易に肛門や膣口で止まるように約5〜30mmの範囲内に設定することが好ましい。なお、ストッパ部113は、必ずしも本実施態様のように笠状にする必要はなく、遺体処置装置1aの筒状本体110を肛門や膣へ所定長さだけ挿入した位置でそれ以上の挿入を行えないことを確保できる部材もしくはマークであればよく、例えば円板状であってもよく、あるいは視覚的に容易に確認できるマークでもよい。また、鍔部114の先端部分は、前方にやや湾曲しており、指が容易に引っ掛かり易いようになっている。鍔部114の筒状本体110の外周面からの高さは約5〜25mm、先端部の湾曲の程度は0〜50°の範囲内に設定することが好ましい。
【0092】
以上、本発明に係る遺体処置装置について好適な実施態様を示したが、前記した態様の遺体処置装置に限られることはなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の設計変更が可能である。また、例えば筒状本体やピストンを着色したり、あるいはその色を他の部材の色と異なるように着色してカラフルな注入器具とすることにより、施用場所を鮮明に把握できるようにすることも可能である。
【0093】
以下に本発明の効果を具体的に確認した試験例を示すが、本発明が以下の試験例に限定されるものでないことは勿論である。
【0094】
試験例1
日本パフテム(株)製の二液型発泡ウレタン製品のポリオール成分を主成分とするA液とイソシアネート成分を主成分とするB液を1:1の割合で、それぞれ注射器に定量採取し、メスシリンダーに同時に投入した後、メスシリンダーを軽く4〜5回振って液を混合した時及び混合しない時の発泡開始時間、発泡容量及び発泡後の保水量を測定した。尚、発泡容量はメスシリンダー内での発泡体の容量であり、保水量は発泡後に水を加え、メスシリンダーを逆さにしても水が発泡体から出てこないまでの添加水量である。また、測定時の室温は18〜20℃であった。
試験結果を表1及び表2に示す。尚、試験結果は、3回繰り返して試験した平均値で示した。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
上記表1及び表2に示される試験結果から明らかなように、ポリオール成分を主成分とするA液とイソシアネート成分を主成分とするB液をよく混合すると反応が速くなり、発泡が良くなるが、混合しないとA液とB液の比重が違うため2層になり、徐々に反応するので発泡が悪くなり、発泡開始時間が大変遅くなる。因みに、A液の比重は1.10(液温20℃)、B液の比重は1.23(液温20℃)である。また、発泡後の硬質発泡ウレタンは、発泡後6〜8秒で硬化し、固まった状態となった。上記結果から、注入器具の吐出口部には、A液とB液を撹拌するような構造とし、例えばノズル機構を設け、A液とB液を撹拌・混合した状態で遺体の体腔内に注入し、速やかに反応・発泡させることが好ましいことがわかる。
【0098】
試験例2
日本パフテム(株)製の二液型発泡ウレタン製品を用い、ポリオール成分を主成分とするA液に5wt%の割合の高吸水性樹脂粉末(住友精化(株)製、商品名「アクワキープ」)を混入した液と、イソシアネート成分を主成分とするB液を1:1の割合で、それぞれ注射器に定量採取し、メスシリンダーに同時に投入した後、メスシリンダーを軽く4〜5回振って液を混合した時の発泡開始時間、発泡容量及び発泡後の保水量を、前記試験例1と同様にして測定した。尚、測定時の室温は18〜20℃であった。
試験結果を表3に示す。尚、試験結果は、3回繰り返して試験した平均値で示した。
【0099】
【表3】

【0100】
上記表3に示される試験結果を表1に示される試験結果と対比すれば明らかなように、ポリオール成分を主成分とするA液に高吸水性樹脂粉末を混入した液とイソシアネート成分を主成分とするB液を振って液を混合した時、発泡が良くなり、発泡量が増えると共に、発泡後の保水量は、発泡量が増えしかも高吸水性樹脂粉末を混入しているので多くなった。高吸水性樹脂粉末を混入すると、A液とB液がよくなじむから発泡量が増すのではないかと考えられる。但し、保水量を多くするために、高吸水性樹脂粉末を過剰に添加すると、注射器から液が出難くなるので好ましくない。
【0101】
試験例3
日本パフテム(株)製の二液型発泡ウレタン製品を用い、ポリオール成分を主成分とするA液に4wt%の割合の香料(寿香料(株)製、「商品名Deodorant 942−6189」、液状)を混入した液と、イソシアネート成分を主成分とするB液を1:1の割合で、それぞれ注射器に定量採取し、メスシリンダーに同時に投入した後、メスシリンダーを軽く4〜5回振って液を混合した時の発泡開始時間及び発泡容量を、前記試験例1と同様にして測定した。尚、測定時の室温は18〜20℃であった。
試験結果を表4に示す。尚、試験結果は、3回繰り返して試験した平均値で示した。
【0102】
【表4】

【0103】
上記表4に示される試験結果を表1に示される試験結果と対比すれば明らかなように、ポリオール成分を主成分とするA液に香料を混入した液とイソシアネート成分を主成分とするB液を振って液を混合した時、発泡量が増大した。これは、香料の添加によりA液とB液が容易によくなじむようになるからではないかと考えられる。
【符号の説明】
【0104】
1,1a 遺体処置装置
2 注入器具
3,110 筒状本体
4,120 注入器
5,121 筒状案内体
6,130 ピストン
7 筒状連結部材
8 接続部材
9,9a 挿入管
34,114 鍔部
51,122 吐出筒部
52,123 保護キャップ
61,131 ピストンロッド
65,134 押圧部
68 筒部
69 ピン
72 テーパ状接続部
84,145 針状接続管
92 接続部
94 ノズル部材
97,150 吐出流路
100 チューブ
113 ストッパ部
138 係合片
140 ノズル装置
141 接続部
142 ノズル部
143 分岐流路
144 吐出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオールを含有する液と(B)イソシアネートを含有する液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の該二液を、遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置であって、
筒状本体(3)と、該筒状本体(3)内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有する2つの筒状案内体(5)と、各筒状案内体(5)内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストン(6)とを有し、上記2つの筒状案内体(5)のいずれか1つに上記液(A)が収容され、他の1つに上記液(B)が収容されている注入器具(2)と;
後端部が上記筒状本体(3)の先端部に接続される筒状連結部材(7)と;
後端部が鋭角に形成された2つの針状接続管(84)を有し、上記各筒状案内体(5)の閉鎖端面側に向かって各針状接続管(84)の鋭角な端部が配向するように上記筒状連結部材(7)内に配設される接続部材(8)と;
上記接続部材(8)の2つの針状接続管(84)の各先端部に接続される2つの流路を有し、後端部に上記筒状連結部材(7)に接続される接続部(92)を有する挿入管(9,9a)
とを備えていることを特徴とする遺体の処置装置。
【請求項2】
前記筒状連結部材(7)の先端部にテーパ状接続部(72)が形成されており、前記挿入管(9,9a)は後端部に上記筒状連結部材(7)のテーパ状接続部(72)に接続される接続部(92)を有することを特徴とする請求項1に記載の遺体の処置装置。
【請求項3】
前記筒状案内体(5)の先端部の易破断性の閉鎖端面が、筒状案内体(5)の先端部の吐出筒部(51)に被冠されている易破断性の保護キャップ(52)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の遺体の処置装置。
【請求項4】
前記挿入管(9,9a)は、その内部に前記2つの流路を構成する2つのチューブ(100)を有し、且つ、該挿入管(9,9a)の先端部には、上記2つのチューブ(100)の先端部が接続される接続管状部(98)と、該接続管状部(98)と連通する1つの吐出流路(97)とが形成されているノズル部材(94)が嵌挿されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項5】
前記挿入管(9a)は、その先端部から所定長さだけ湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項6】
前記挿入管(9)は、前記筒状連結部材(7)に接続される接続部(92)もしくはその近傍に、半径方向外側に突出したストッパ部(93)を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項7】
前記筒状本体(3)は、その後端部もしくは近傍に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部(34)を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項8】
前記各ピストン(6)の後端には、それぞれ横方向に拡張された押圧部(65)が形成されていると共に、各押圧部(65)の基部には、それぞれ対向する他方のピストンと係合する手段(68,69)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項9】
前記ポリオールを含有する液(A)が、さらに高吸水性樹脂粉末(C)及び/又は香料(D)を含有していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。
【請求項10】
(A)ポリオールを含有する液と(B)イソシアネートを含有する液との二液からなる二液型発泡ウレタン組成物の該二液を、遺体の体腔内に同時に注入して発泡させ、遺体の体腔を封止するための処置装置であって、
遺体の鼻孔又は口から挿入して咽喉部を封止するための処置装置(1)と、
遺体の肛門及び/又は膣を封止するための処置装置(1a)とを備え、
上記咽喉部を封止するための処置装置(1)は、前記請求項1乃至9のいずれか一項に記載の遺体の処置装置からなり、
上記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置(1a)は、
肛門及び/又は膣へ挿入されるように形成された先端に開口(111)を有する筒状本体(110)と、該筒状本体(110)内に配設され、それぞれ先端部に易破断性の閉鎖端面を有する2つの筒状案内体(121)と、各筒状案内体(121)内に後端部側から同時に作動しえる状態でそれぞれ摺動自在に挿入されている2つのピストン(130)とを有し、上記2つの筒状案内体(121)のいずれか1つに上記液(A)が収容され、他の1つに上記液(B)が収容された2つの注入器(120)と;
上記筒状本体(110)の先端部内に配設され、上記2つの筒状案内体(121)と連通可能なノズル装置(140)
とを備えている処置装置からなることを特徴とする遺体の処置装置。
【請求項11】
前記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置(1a)の前記筒状本体(110)は先端に開口(111)を有する略ドーム状の先端カバー部(112)を有し、前記ノズル装置(140)は、前記2つの筒状案内体(121)に接続される管状の接続部(141)と、該接続部(141)に接合され、二股状の流路が合体して先端部に1つの吐出流路(150)を形成している分岐流路(143)が形成されたノズル部(142)とからなり、上記接続部(141)の上記二股状流路に対応する位置には、前記各筒状案内体(121)の閉鎖端面側に向かって鋭角に形成された2つの針状接続管(145)が配設されており、ノズル装置(140)は上記筒状本体(110)の先端カバー部(112)内に摺動自在に配設されていることを特徴とする請求項10に記載の遺体の処置装置。
【請求項12】
前記肛門及び/又は膣を封止するための処置装置(1a)の筒状本体(110)は、略中間部にストッパ部(113)を有すると共に、後端部に、半径方向外側に突出した指を引っ掛けるための一対の鍔部(114)を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の遺体の処置装置。
【請求項13】
さらに耳孔装填用、鼻孔装填用、もしくは口中装填用の少なくとも1種の繊維製封止材を備えることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の遺体の処置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2011−102254(P2011−102254A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257233(P2009−257233)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(508032309)株式会社 モデルクリエイト (12)
【Fターム(参考)】