説明

還元剤供給装置

【課題】内燃機関の始動時における還元剤の充填時及び内燃機関の停止時におけるパージ制御時において還元剤噴射弁を開弁する必要をなくして、信頼性を向上することが可能な還元剤供給装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の停止に伴い、還元剤通路及び還元剤噴射弁内の還元剤を還元剤タンクに回収するパージ制御を実行可能に構成された還元剤供給装置において、一端が噴射モジュールに接続されるとともに他端が前記還元剤タンクに接続され、前記一端が前記還元剤通路に連通するパージ用通路を備え、制御装置は、前記内燃機関の始動時には、前記還元剤噴射弁を閉じた状態でポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエア抜きを行いながら前記還元剤を充填し、前記内燃機関の停止時には、前記還元剤を閉じた状態で前記ポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエアを導入しながら前記還元剤を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気を浄化するための還元剤を排気管内に噴射する還元剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に搭載された内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物(以下「NOX」と称する。)を除去するための排気浄化装置の一態様として、排気通路に備えられNOXと還元剤との還元反応を促進させるNOX浄化触媒と、尿素水溶液等の液体の還元剤をNOX浄化触媒の上流側で噴射する還元剤供給装置とを備えた装置が実用化されている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置は、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、還元剤タンク内の還元剤を吸い上げて圧送するポンプと、ポンプにより圧送される還元剤を排気管内に噴射する還元剤噴射弁とを備えて構成されている。
【0004】
ここで、還元剤として尿素水溶液が用いられる場合、尿素水溶液の濃度は凝固点が最も低くなる濃度(例えば32.5%濃度、凝固点≒−11℃)に調整されて用いられる。しかしながら、寒冷地等において、内燃機関の停止中に還元剤の温度が凝固点を下回ると、還元剤供給経路内で還元剤が凝固するおそれがある。特に、排気熱等によって水分が蒸発して還元剤の濃度が上昇し、還元剤の凝固点が上昇する場合があるため、還元剤の凝固の発生は十分に考えられる。
【0005】
還元剤の凝固を生じると、還元剤の体積が膨張して、配管や還元剤噴射弁が破損するおそれがある。そのため、内燃機関の停止時においては、還元剤供給経路内に残留する還元剤を還元剤タンクに回収するパージ制御が実施されるようになっている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−101564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パージ制御を実行する場合においては、回収効率を高めるために、還元剤噴射弁を開弁して、還元剤を還元剤タンク側に吸い戻すようにしている。そのため、排気が排気管から還元剤噴射装置内に侵入し、排気中の煤等の異物が還元剤噴射弁の弁体の着座面に固着して閉弁不良を生じたり、異物によって還元剤供給経路内の汚染や、着座面の摩耗、弁体の摺動不良を生じたりするおそれがある。あるいは、吸い込まれる排気の熱や、還元剤噴射弁を開弁するための通電による還元剤噴射弁の発熱によって、還元剤噴射弁内に残留する還元剤中の水分が蒸発して、還元剤の結晶化を生じるおそれもある。
【0008】
また、内燃機関の停止時にパージ制御を実行することに伴い、内燃機関の始動時において還元剤を充填する際に、還元剤供給経路内のエア抜きをする必要がある。このエア抜きは、還元剤噴射弁を開弁することによって行われている。このとき、還元剤を圧送するポンプの特性や還元剤供給経路の長さの違いやばらつきによって還元剤噴射弁を開弁する時期や時間が異なるために、意図しない還元剤の噴射が行われたり、還元剤が確実に充填されていない状態での還元剤噴射弁の開閉動作によって還元剤噴射弁を構成する弁体やニードルの焼付きを生じたりするおそれがある。
【0009】
このように、内燃機関の停止時におけるパージ制御時や、内燃機関の始動時における還元剤の充填時において、還元剤噴射弁を開弁することによって還元剤供給装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0010】
本発明の発明者は、このような課題に鑑みて、還元剤噴射弁を含む噴射モジュールと還元剤タンクとを接続するパージ用通路を設け、内燃機関の始動時にはパージ用通路を介してエア抜きを行い、内燃機関の停止時にはパージ用通路を介してエアを導入するようにすることによりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、内燃機関の始動時における還元剤の充填時及び内燃機関の停止時におけるパージ制御時において還元剤噴射弁を開弁する必要をなくして、信頼性を向上することが可能な還元剤供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁を含む噴射モジュールと、前記ポンプと前記還元剤噴射弁とを接続する還元剤通路と、前記ポンプ及び前記還元剤噴射弁の駆動制御を行う制御装置と、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御を実行可能に構成された還元剤供給装置において、一端が前記噴射モジュールに接続されるとともに他端が前記還元剤タンクに接続され、前記一端が前記還元剤通路に連通するパージ用通路を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の始動時には、前記還元剤噴射弁を閉じた状態で前記ポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエア抜きを行いながら前記還元剤を充填し、前記内燃機関の停止時には、前記還元剤を閉じた状態で前記ポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエアを導入しながら前記還元剤を回収することを特徴とする還元剤供給装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0012】
すなわち、本発明の還元剤供給装置は、噴射モジュールと還元剤タンクとを接続するパージ用通路を備えるとともに、制御装置によって、内燃機関の始動時及び停止時に、還元剤噴射弁を閉じたままで還元剤の充填及びパージ制御を実行することとしている。そのため、内燃機関の始動時における還元剤の充填時において、意図しない還元剤の噴射や還元剤噴射弁の損傷を防ぐことができるとともに、内燃機関の停止時におけるパージ制御時において、還元剤供給経路内の汚染や還元剤噴射弁の損傷、還元剤の結晶化を防ぐことができる。したがって、本発明の還元剤供給装置によれば、還元剤供給装置の信頼性を向上させることが可能になる。
【0013】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記パージ用通路とは別に、前記還元剤通路と前記還元剤タンクとを連通するリターン通路を備えるとともに、前記パージ用通路に、前記パージ用通路の開閉を切り換える制御弁を備え、前記制御装置は、前記内燃機関の始動時及び停止時には前記制御弁によって前記パージ用通路を開放する一方、前記還元剤の噴射制御中には前記制御弁によって前記パージ用通路を閉じることが好ましい。
【0014】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、内燃機関の運転時における還元剤の噴射制御中にパージ用通路を介して還元剤が循環することを防ぎつつ、還元剤の充填時及びパージ制御時にのみパージ用通路を開放することが可能になる。
【0015】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記制御弁は、前記パージ用通路が開放された状態において前記リターン通路が閉じられる一方、前記パージ用通路が閉じられた状態において前記リターン通路が開放される流路切換弁であることが好ましい。
【0016】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、還元剤の充填時においては、リターン通路を介して還元剤が循環することがなくなり充填効率を高めることが可能になるとともに、パージ制御時においては、リターン通路の状態にかかわらずパージ用通路のみからエアを導入することができるため回収効率を高めることが可能になる。
【0017】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記パージ用通路及び前記リターン通路を、前記還元剤通路に連通する端部とは反対側において連結して前記還元剤タンクに接続することが好ましい。
【0018】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、配管の全体の長さを短くすることができるとともに、還元剤タンクと配管の接続部分を少なくすることができるため、構成を簡略化したり、生産コストを抑えたりすることが可能になる。
【0019】
また、本発明の還元剤供給装置においては、前記還元剤タンクに、内部の圧力を大気圧に維持するエア導入部を備えることが好ましい。
【0020】
還元剤供給装置をこのように構成することにより、還元剤の充填時においてはエアが抜けやすくなり、パージ制御時においてはエアが導入されやすくなるため、還元剤の充填効率及び回収効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図3】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置の動作について説明するために示す図である。
【図4】第1の実施の形態に係る還元剤供給装置の制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【図5】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図7】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置の動作について説明するために示す図である。
【図8】第2の実施の形態に係る還元剤供給装置の制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【図9】第3の実施の形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の全体的構成の一例を概略的に示す図である。
【図10】第3の実施の形態に係る還元剤供給装置の構成について説明するために示す図である。
【図11】第3の実施の形態に係る還元剤供給装置の動作について説明するために示す図である。
【図12】第3の実施の形態に係る還元剤供給装置の制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る還元剤供給装置に関する実施の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、それぞれの図において、同じ符号を付してあるものについては同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aを備えた排気浄化装置10Aの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図2は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの構成について説明するために示す図である。図3は、還元剤供給装置20Aの動作について説明するために示す図であって、図3(a)は還元剤の充填時の動作を示し、図3(b)は還元剤の噴射制御時の動作を示し、図3(c)はパージ制御時の動作を示している。図4は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【0024】
(1)排気浄化装置の全体的構成
図1に示すように、排気浄化装置10Aは、車両等に搭載された内燃機関1から排出される排気中のNOXを、NOX浄化触媒11上で還元剤を用いて浄化するように構成された装置である。排気浄化装置10Aは、内燃機関1の排気系に接続された排気管3の途中に配置されたNOX浄化触媒11と、NOX浄化触媒11よりも上流側において排気管3内に還元剤を噴射供給するための還元剤供給装置20Aと、還元剤供給装置20Aの動作制御を行う制御装置40とを主たる構成要素として備えている。
【0025】
NOX浄化触媒11は、排気管3内に噴射された還元剤又は当該還元剤から生成される還元成分と、排気中のNOXとの反応を促進する機能を有している。NOX浄化触媒11としては、NOX選択還元触媒やNOX吸蔵触媒が用いられる。
【0026】
NOX選択還元触媒は、還元剤を吸着するとともに、この還元剤を用いて、触媒中に流入する排気中のNOXを選択的に浄化する機能を有する触媒である。NOX選択還元触媒を用いる場合においては、尿素水溶液や未燃燃料が還元剤として用いられる。還元剤として尿素水溶液を用いる場合には、尿素水溶液中の尿素が分解することによって生成されるアンモニア(NH3)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)及び水(H2O)に分解される。また、還元剤として未燃燃料を用いる場合には、未燃燃料中の炭化水素(HC)がNOXと反応することにより、NOXが窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。
【0027】
また、NOX吸蔵触媒は、触媒中に流入する排気の空燃比がリーンの状態(燃料希薄状態)においてNOXを吸蔵する一方、空燃比がリッチの状態に切り換えられたときにNOXを放出し、排気中の炭化水素(HC)を用いてNOXを浄化する機能を有する触媒である。炭化水素(HC)と反応したNOXは窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解される。NOX吸蔵触媒を用いる場合においては、排気の空燃比をリッチの状態とするために、還元剤としての未燃燃料が排気管3内に噴射供給される。
【0028】
(2)還元剤供給装置
図1及び図2に示すように、還元剤供給装置20Aは、液体の還元剤を収容する還元剤タンク21と、還元剤を圧送するポンプ23と、ポンプ23により圧送された還元剤を排気管3内に噴射する還元剤噴射弁25を含む噴射モジュール26と、ポンプ23により圧送される還元剤の流れ方向を切り換えるリバーティングバルブ24と、還元剤中の異物を捕集するためのフィルタ部50とを備えている。
【0029】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50とは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路32で接続され、さらに、フィルタ部50と噴射モジュール26の還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路33で接続されている。
【0030】
噴射モジュール26には一端が還元剤通路33に連通し、他端が還元剤タンク21に接続されたパージ用通路43が接続されている。パージ用通路43の還元剤タンク21側の端部は、還元剤タンク21の上部に接続されており、還元剤タンク21内の空気層に臨むようになっている。還元剤タンク21の上部には、還元剤タンク21内の圧力を大気圧に維持するためのエア導入部47が備えられている。エア導入部47は、例えば、エアブリザード孔によって構成されている。
【0031】
また、フィルタ部50には、他端がパージ用通路43に接続されたリターン通路35が接続されており、リターン通路35にはリリーフ弁37が備えられている。
【0032】
第3の還元剤通路33には、第3の還元剤通路33内の圧力を検出するための圧力センサ27が備えられている。但し、圧力センサ27は、還元剤噴射弁25に供給される還元剤の圧力を検出できるようになっていればよく、第3の還元剤通路33に直接設けられていなくても構わない。
【0033】
噴射モジュール26に備えられた還元剤噴射弁25は、制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、使用できる還元剤噴射弁25は特に限定されるものではない。例えば、通電/非通電の切り換えにより開弁/閉弁の切り換えが行われる電磁弁を用いることができる。
【0034】
ポンプ23は、制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、使用できるポンプ23は特に限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの通電のオン/オフのデューティ比を調整することによって吐出量が調節される電動ポンプを用いることができる。
【0035】
リバーティングバルブ24は、制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、還元剤の流れ方向を、還元剤タンク21側から還元剤噴射弁25側へと流れる正方向と、還元剤噴射弁25側から還元剤タンク21側へと流れる逆方向とに切り換え可能に構成されている。使用できるリバーティングバルブ24は特に限定されるものではなく、例えば、通電のオン/オフによって還元剤の流れ方向を正方向又は逆方向に切り換え可能な電磁切換弁を用いることができる。
【0036】
第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、排気管3内への還元剤の噴射制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が停止されて、還元剤が正方向に流れるようになっている。一方、還元剤を還元剤タンク21に回収するパージ制御を行う場合には、リバーティングバルブ24への通電が行われ、還元剤が逆方向に流れるように流路が切り換えられるようになっている。
【0037】
フィルタ部50は、図2に示すように、ケーシング54と、ケーシング54内に収容されたフィルタ51とを備えている。第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、円筒状のフィルタ51が用いられている。
【0038】
フィルタ部50とパージ用通路43とを接続するリターン通路35は、円筒状のフィルタ51の内側の領域に接続されるとともに、パージ用通路43側からフィルタ部50側への還元剤の流れを遮断するリリーフ弁37を備えている。リリーフ弁37は、弁体とスプリングとを用いた機械式の弁として構成されている。
【0039】
また、噴射モジュール26には、パージ用通路45の開閉を行う開閉制御弁45が備えられている。この開閉制御弁45は制御装置40によって駆動制御が行われるものであり、使用できる開閉制御弁45は特に限定されるものではない。第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、通電されている間にパージ用通路45を開放し、通電が停止している間にパージ用通路43を閉じるように構成された開閉制御弁45が用いられている。ただし、このような制御弁に限定されるものではない。
【0040】
開閉制御弁45は、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時、及び、内燃機関1の停止時におけるパージ制御時に、パージ用通路43を開放する。一方、開閉制御弁45は、内燃機関1の運転時における還元剤の噴射制御中に、パージ用通路43を閉じる。
【0041】
具体的には、図3(a)に示すように、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時において、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じる一方、パージ用通路43を開放した状態で、ポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が正方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50及び第3の還元剤通路33内に存在していたエアが、パージ用通路43を介して還元剤によって押し出され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内に還元剤が充填される。このとき、フィルタ部50内の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるまでは、リリーフ弁37は閉弁状態となる。また、還元剤タンク21内に押し出されたエアは、エア導入部47を介して大気中に逃されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0042】
また、図3(b)に示すように、還元剤の充填後の噴射制御中において、制御装置40は、パージ用通路43を閉じた状態でポンプ23の駆動を継続するとともに、指示噴射量に応じて還元剤噴射弁25の駆動制御を行う。ポンプ23の出力は、例えば、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力が所定の圧力で維持されるようにフィードバック制御される。このとき、還元剤の噴射量に対する還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路35及びパージ用通路43を介して還元剤タンク21に戻される。
【0043】
また、図3(c)に示すように、内燃機関1の停止時におけるパージ制御中において、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じる一方、パージ用通路43を開放し、さらに、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を逆方向に切り換えた状態で、ポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が逆方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。このとき、還元剤タンク21内のエアがパージ用通路43を介して第3の還元剤通路33に導入されるため、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内はエアに置換される。また、還元剤タンク21内にはエア導入部47を介して大気が導入されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0044】
すなわち、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aは、還元剤の噴射制御中においては、パージ用通路43を閉じつつ還元剤噴射弁25の開閉制御を実行する一方、還元剤の充填時及びパージ制御時においては、還元剤噴射弁25を閉じた状態でパージ用通路43を開放するようになっている。
【0045】
次に、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおいて、制御装置40によって実行される制御方法を図4に示すフローチャート図に基づいて説明する。
【0046】
まず、制御装置40は、ステップS11において、車両等のイグニッションスイッチがオンにされたことを検出すると、ステップS12において、開閉制御弁45をオンにする一方、リバーティングバルブ24及び還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路43が開放される。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が正方向となる。
【0047】
次いで、制御装置40は、ステップS13においてポンプ23の駆動を開始して。還元剤の充填を開始した後、ステップS14において、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達したか否かを判別する。圧力Pstartは、大気圧よりも大きく、還元剤噴射制御時のシステム圧Psetよりも小さい値であって、エア抜きの完了を検出するために用いられる閾値としてあらかじめ設定されている。還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達すると、制御装置40は、ステップS15において、開閉制御弁45をオフにする。これにより、パージ用通路43が閉じられ、還元剤の充填が完了する。
【0048】
ステップS14は、時間制御とすることもできる。具体的には、ポンプ23の駆動を開始してからの経過時間Tが所定の閾値T0に到達したか否かを判別するようにしてもよい。
【0049】
次いで、制御装置40は、ステップS16において、還元剤の圧力Pがシステム圧Psetで維持されるようにポンプ23の出力制御を実行しながら、還元剤噴射弁25の駆動制御を行い、還元剤の噴射制御を実行する。ポンプ23の出力制御及び還元剤の噴射制御は、内燃機関1の運転中において継続的に実行される。
【0050】
その後、制御装置40は、ステップS17において、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出すると、ステップS18においてポンプ23の駆動を一旦停止した後、ステップS19において、開閉制御弁45及びリバーティングバルブ24をオンにする一方、還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路43が開放される。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が逆方向に切り換えられる。
【0051】
次いで、制御装置40は、ステップS20においてポンプ23の駆動を再開して、パージ制御を開始した後、ステップS21において、ポンプ23の駆動を再開してからの経過時間Tが所定の閾値T1に到達したか否かを判別する。経過時間Tが閾値T1に到達すると、制御装置40は、ステップS22において、開閉制御弁45、リバーティングバルブ24及びポンプ23をすべてオフにする。これにより、パージ制御が完了し、次回の内燃機関1の始動時まで、還元剤供給装置20Aの電源がオフとなる。
【0052】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Aは、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時に、還元剤噴射弁25を開弁する代わりにパージ用通路43を開放するように構成されている。そのため、還元剤の充填時において、意図しない還元剤の噴射が実行されることを防ぐことができる。また、還元剤の充填後に還元剤噴射弁25の開閉制御が開始されるため、摺動部分や着座部分が、還元剤が存在しない状態で還元剤噴射弁25の開閉動作が繰り返されることによって摩耗したり損傷したりすることを防ぐことができる。
【0053】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、還元剤噴射弁25の開閉動作が開始されるときには、少なくとも還元剤噴射弁25の近傍まで還元剤が充填された状態となっているため、仮に還元剤噴射弁25内で還元剤の結晶化を生じていても、結晶化した還元剤を液体の還元剤によって速やかに融解することができる。
【0054】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、内燃機関1の停止時におけるパージ制御時に、還元剤噴射弁25を開弁する代わりにパージ用通路43を開放するように構成されている。そのため、パージ制御時において、排気中の異物が還元剤供給装置20A内に侵入することを防ぐことができ、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路33内の汚染や、還元剤噴射弁25の閉弁不良又は損傷を防ぐことができる。また、排気が還元剤供給装置20A内に侵入することがないため、排気熱が還元剤噴射弁25内に伝達されにくくなり、還元剤供給装置20A内での還元剤の結晶化を低減することができる。
【0055】
したがって、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、還元剤供給装置20Aの信頼性を向上させることが可能になる。
【0056】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、パージ用通路43とは別のリターン通路35を備えるとともに、パージ用通路43の開閉を切り換える開閉制御弁45を備え、制御装置40が、内燃機関1の始動時及び停止時には開閉制御弁45によってパージ用通路43を開放する一方、還元剤の噴射制御中には開閉制御弁45によってパージ用通路43を閉じることとしているため、内燃機関1の運転時における還元剤の噴射制御中にパージ用通路43を介して還元剤が循環することを防ぎつつ、還元剤の充填時及びパージ制御時にのみパージ用通路43を開放することが可能になる。
【0057】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、パージ用通路43及びリターン通路35を連結して還元剤タンク21に接続することとしているため、配管の全体の長さを短くすることができるとともに、還元剤タンク21と配管の接続部分を一箇所とすることができる。したがって、構成を簡略化したり、生産コストを抑えたりすることが可能になる。
【0058】
また、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aによれば、還元剤タンク21に、内部の圧力を大気圧に維持するエア導入部47を備えることとしているため、還元剤の充填時においてはエアが抜けやすくなり、パージ制御時においてはエアが導入されやすくなる。したがって、還元剤の充填効率及び回収効率を高めることが可能になる。
【0059】
[第2の実施の形態]
図5は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bを備えた排気浄化装置10Bの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図6は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの構成について説明するために示す図である。図7は、還元剤供給装置20Bの動作について説明するために示す図であって、図7(a)は還元剤の充填時の動作を示し、図7(b)は還元剤の噴射制御時の動作を示し、図7(c)はパージ制御時の動作を示している。図8は、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bの制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【0060】
図5及び図6に示すように、排気浄化装置10Bの全体的構成は、基本的に第1の実施の形態の場合と同様であるが、還元剤供給装置20Bの構成が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と異なる。以下、還元剤供給装置20Bの構成を中心に説明する。
【0061】
第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bは、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に、還元剤タンク21と、ポンプ23と、還元剤噴射弁25を含む噴射モジュール26と、リバーティングバルブ24と、フィルタ部50とを備えている。これらの構成要素は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に構成することができる。
【0062】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50とは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路32で接続され、さらに、フィルタ部50と還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路33で接続されている。
【0063】
フィルタ部50には、他端が還元剤タンク21に接続されたリターン通路61が接続されており、リターン通路61にはリリーフ弁37が備えられている。噴射モジュール26には、一端が還元剤通路33に連通し、他端が還元剤タンク21に接続されたパージ用通路63が接続されている。リターン通路61の還元剤タンク21側の端部、及び、パージ用通路63の還元剤タンク21側の端部は、流路切換制御弁65を介して還元剤タンク21の上部に接続されており、還元剤タンク21内の空気層に臨むようになっている。還元剤タンク21の上部には、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様にエア導入部47が備えられている。
【0064】
流路切換制御弁65は、パージ用通路63と還元剤タンク21とを連通する状態、又は、リターン通路61と還元剤タンク21とを連通する状態に、流路を切り換え可能に構成されている。第2の実施の形態に還元剤供給装置20Bにおいては、流路切換制御弁65に通電している間にパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通する一方、流路切換制御弁65への通電を停止している間にリターン通路61と還元剤タンク21とを連通するように構成された流路切換制御弁65を使用している。ただし、このような制御弁に限定されるものではない。
【0065】
流路切換制御弁65は、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時、及び、内燃機関1の停止時におけるパージ制御時に、パージ用通路63と還元剤タンク21とを連通する。一方、流路切換制御弁65は、内燃機関1の運転時における還元剤の噴射制御中に、リターン通路61と還元剤タンク21とを連通する。
【0066】
具体的には、図7(a)に示すように、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時において、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じる一方、パージ用通路63と還元剤タンク21とを連通した状態で、ポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が正方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50及び第3の還元剤通路33内に存在していたエアが、パージ用通路63を介して還元剤によって押し出され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内に還元剤が充填される。このとき、リターン通路61の端部は閉じられているため、リリーフ弁37は閉弁状態となる。また、還元剤タンク21内に押し出されたエアは、エア導入部47を介して大気中に逃されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0067】
また、図7(b)に示すように、還元剤の充填後の噴射制御中において、制御装置40は、リターン通路61と還元剤タンク21とを連通した状態でポンプ23の駆動を継続するとともに、指示噴射量に応じて還元剤噴射弁25の駆動制御を行う。ポンプ23の出力は、例えば、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力が所定の圧力で維持されるようにフィードバック制御される。このとき、還元剤の噴射量に対する還元剤の供給量が過剰になって、還元剤の圧力がリリーフ弁37の開弁圧を超えるとリリーフ弁37が開弁し、余剰の還元剤がリターン通路61を介して還元剤タンク21に戻される。
【0068】
また、図7(c)に示すように、内燃機関1の停止時におけるパージ制御中において、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じる一方、パージ用通路63と還元剤タンク21とを連通し、さらに、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を逆方向に切り換えた状態で、ポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が逆方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。このとき、還元剤タンク21内のエアがパージ用通路63を介して第3の還元剤通路33に導入されるため、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内はエアに置換される。また、還元剤タンク21内にはエア導入部47を介して大気が導入されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0069】
すなわち、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bは、還元剤の噴射制御中においては、パージ用通路63を閉じる一方、リターン通路61と還元剤タンク21とを連通して還元剤噴射弁25の開閉制御を実行する。また、還元剤の充填時及びパージ制御時においては、還元剤噴射弁25を閉じた状態でパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通するようになっている。
【0070】
次に、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bにおいて、制御装置40によって実行される制御方法を図8に示すフローチャート図に基づいて説明する。
【0071】
まず、制御装置40は、ステップS31において、車両等のイグニッションスイッチがオンにされたことを検出すると、ステップS32において、流路切換制御弁65をオンにする一方、リバーティングバルブ24及び還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路63と還元剤タンク21とが連通する。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が正方向となる。
【0072】
次いで、制御装置40は、ステップS33においてポンプ23の駆動を開始して。還元剤の充填を開始した後、ステップS34において、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達したか否かを判別する。圧力Pstartは、大気圧よりも大きく、還元剤噴射制御時のシステム圧Psetよりも小さい値であって、エア抜きの完了を検出するために用いられる閾値としてあらかじめ設定されている。還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達すると、制御装置40は、ステップS35において、流路切換制御弁65をオフにする。これにより、リターン通路35と還元剤タンク21とが連通する一方、パージ用通路63が閉じられ、還元剤の充填が完了する。
【0073】
ステップS34は、時間制御とすることもできる。具体的には、ポンプ23の駆動を開始してからの経過時間Tが所定の閾値T0に到達したか否かを判別するようにしてもよい。
【0074】
次いで、制御装置40は、ステップS36において、還元剤の圧力Pがシステム圧Psetで維持されるようにポンプ23の出力制御を実行しながら、還元剤噴射弁25の駆動制御を行い、還元剤の噴射制御を実行する。ポンプ23の出力制御及び還元剤の噴射制御は、内燃機関1の運転中において継続的に実行される。
【0075】
その後、制御装置40は、ステップS37において、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出すると、ステップS38においてポンプ23の駆動を一旦停止した後、ステップS39において、流路切換制御弁65及びリバーティングバルブ24をオンにする一方、還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路63と還元剤タンク21とが連通する。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が逆方向に切り換えられる。
【0076】
次いで、制御装置40は、ステップS40においてポンプ23の駆動を再開して、パージ制御を開始した後、ステップS41において、ポンプ23の駆動を再開してからの経過時間Tが所定の閾値T1に到達したか否かを判別する。経過時間Tが閾値T1に到達すると、制御装置40は、ステップS42において、流路切換制御弁65、リバーティングバルブ24及びポンプ23をすべてオフにする。これにより、パージ制御が完了し、次回の内燃機関1の始動時まで、還元剤供給装置20Bの電源がオフとなる。
【0077】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Bは、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時に、還元剤噴射弁25を開弁する代わりにパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通するように構成されている。そのため、還元剤の充填時において、意図しない還元剤の噴射が実行されることを防ぐことができる。また、還元剤の充填後に還元剤噴射弁25の開閉制御が開始されるため、摺動部分や着座部分が、還元剤が存在しない状態で還元剤噴射弁25の開閉動作が繰り返されることによって摩耗したり損傷したりすることを防ぐことができる。
【0078】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、還元剤噴射弁25の開閉動作が開始されるときには、少なくとも還元剤噴射弁25の近傍まで還元剤が充填された状態となっているため、仮に還元剤噴射弁25内で還元剤の結晶化を生じていても、結晶化した還元剤を液体の還元剤によって速やかに融解することができる。
【0079】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、内燃機関1の停止時におけるパージ制御時に、還元剤噴射弁25を開弁する代わりにパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通するように構成されている。そのため、パージ制御時において、排気中の異物が還元剤供給装置20B内に侵入することを防ぐことができ、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路33内の汚染や、還元剤噴射弁25の閉弁不良又は損傷を防ぐことができる。また、排気が還元剤供給装置20B内に侵入することがないため、排気熱が還元剤噴射弁25内に伝達されにくくなり、還元剤供給装置20B内での還元剤の結晶化を低減することができる。
【0080】
したがって、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、還元剤供給装置20Bの信頼性を向上させることが可能になる。
【0081】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、パージ用通路63とは別のリターン通路61を備えるとともに、還元剤タンク21との連通をパージ用通路63又はリターン通路61に切り換える流路切換制御弁65を備え、制御装置40が、内燃機関1の始動時及び停止時には流路切換制御弁65によってパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通する一方、還元剤の噴射制御中には流路切換制御弁65によってパージ用通路63を閉じつつリターン通路61と還元剤タンク21とを連通することとしているため、内燃機関1の運転時における還元剤の噴射制御中にパージ用通路63を介して還元剤が循環することを防ぎつつ、還元剤の充填時及びパージ制御時にのみパージ用通路63と還元剤タンク21とを連通することが可能になる。
【0082】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、パージ用通路65と還元剤タンク21とが連通した状態においてリターン通路61が閉じられる一方、リターン通路61と還元剤タンク21とが連通した状態においてパージ用通路63が閉じられる流路切換制御弁65を用いることとしているため、還元剤の充填時においては、リターン通路61を介して還元剤が循環することがなくなり充填効率を高めることが可能になるとともに、パージ制御時においては、リターン通路61の状態にかかわらずパージ用通路63のみからエアを導入することができるため回収効率を高めることが可能になる
【0083】
また、第2の実施の形態に係る還元剤供給装置20Bによれば、還元剤タンク21に、内部の圧力を大気圧に維持するエア導入部47を備えることとしているため、還元剤の充填時においてはエアが抜けやすくなり、パージ制御時においてはエアが導入されやすくなる。したがって、還元剤の充填効率及び回収効率を高めることが可能になる。
【0084】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cを備えた排気浄化装置10Cの全体的構成の一例を概略的に示す図である。図10は、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cの構成について説明するために示す図である。図11は、還元剤供給装置20Cの動作について説明するために示す図であって、図11(a)は還元剤の充填時の動作を示し、図11(b)は還元剤の噴射制御時の動作を示し、図11(c)はパージ制御時の動作を示している。図12は、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cの制御方法について説明するために示すフローチャート図である。
【0085】
図9及び図10に示すように、排気浄化装置10Cの全体的構成は、基本的に第1の実施の形態の場合と同様であるが、還元剤供給装置20Cの構成が第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と異なる。以下、還元剤供給装置20Cの構成を中心に説明する。
【0086】
第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cは、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に、還元剤タンク21と、ポンプ23と、還元剤噴射弁25を含む噴射モジュール26と、リバーティングバルブ24と、フィルタ部50とを備えている。これらの構成要素は、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様に構成することができる。
【0087】
還元剤タンク21とポンプ23とは、リバーティングバルブ24を介して第1の還元剤通路31で接続され、ポンプ23とフィルタ部50とは、リバーティングバルブ24を介して第2の還元剤通路32で接続され、さらに、フィルタ部50と還元剤噴射弁25とは、第3の還元剤通路33で接続されている。
【0088】
噴射モジュール26には、一端が還元剤通路33に連通し、他端が還元剤タンク21に接続されたパージ用通路73が接続されている。パージ用通路73の還元剤タンク21側の端部は還元剤タンク21の上部に接続されており、還元剤タンク21内の空気層に臨むようになっている。また、パージ用通路73にはオリフィス75が設けられ、還元剤及びエアの流通を可能にする一方で、第3の還元剤通路33内の圧力を高めることができるようになっている。還元剤タンク21の上部には、第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aの場合と同様にエア導入部47が備えられている。
【0089】
第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cにおいては、図11(a)に示すように、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時に、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じた状態でポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が正方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50及び第3の還元剤通路33内に存在していたエアが、パージ用通路73及びオリフィス75を介して還元剤によって押し出され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内に還元剤が充填される。また、還元剤タンク21内に押し出されたエアは、エア導入部47を介して大気中に逃されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0090】
また、図11(b)に示すように、還元剤の充填後の噴射制御中において、制御装置40は、ポンプ23の駆動を継続するとともに、指示噴射量に応じて還元剤噴射弁25の駆動制御を行う。ポンプ23の出力は、例えば、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力が所定の圧力で維持されるようにフィードバック制御される。このとき、還元剤噴射弁25に供給される余剰の還元剤は、パージ用通路73及びオリフィス75を介して還元剤タンク21に戻される。
【0091】
また、図11(c)に示すように、内燃機関1の停止時におけるパージ制御中において、制御装置40は、還元剤噴射弁25を閉じるとともに、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を逆方向に切り換えた状態で、ポンプ23を駆動する。これにより、還元剤が逆方向に圧送され、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内の還元剤がポンプ23側に吸い戻される。このとき、還元剤タンク21内のエアがパージ用通路73及びオリフィス75を介して第3の還元剤通路33に導入されるため、第2の還元剤通路32、フィルタ部50、第3の還元剤通路33及び還元剤噴射弁25内はエアに置換される。また、還元剤タンク21内にはエア導入部47を介して大気が導入されるため、還元剤タンク21内の圧力は大気圧で維持される。
【0092】
すなわち、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cは、パージ用通路73と還元剤タンク21とが常に連通しており、還元剤の充填時及びパージ制御時において、還元剤噴射弁25を閉じた状態で保持できるようになっている。
【0093】
次に、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cにおいて、制御装置40によって実行される制御方法を図12に示すフローチャート図に基づいて説明する。
【0094】
まず、制御装置40は、ステップS51において、車両等のイグニッションスイッチがオンにされたことを検出すると、ステップS52においてリバーティングバルブ24及び還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路73と還元剤タンク21とが連通状態となっている。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が正方向となる。
【0095】
次いで、制御装置40は、ステップS53においてポンプ23の駆動を開始して。還元剤の充填を開始した後、ステップS54において、圧力センサ27によって検出される還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達したか否かを判別する。圧力Pstartは、大気圧よりも大きく、還元剤噴射制御時のシステム圧Psetよりも小さい値であって、エア抜きの完了を検出するために用いられる閾値としてあらかじめ設定されている。還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartに到達することにより、還元剤の充填が完了する。
【0096】
ステップS54は、時間制御とすることもできる。具体的には、ポンプ23の駆動を開始してからの経過時間Tが所定の閾値T0に到達したか否かを判別するようにしてもよい。
【0097】
次いで、制御装置40は、ステップS55において、還元剤の圧力Pがシステム圧Psetで維持されるようにポンプ23の出力制御を実行しながら、還元剤噴射弁25の駆動制御を行い、還元剤の噴射制御を実行する。ポンプ23の出力制御及び還元剤の噴射制御は、内燃機関1の運転中において継続的に実行される。
【0098】
その後、制御装置40は、ステップS56において、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出すると、ステップS57においてポンプ23の駆動を一旦停止した後、ステップS58においてリバーティングバルブ24をオンにする一方、還元剤噴射弁25をオフにする。これにより、還元剤噴射弁25が閉じられる一方、パージ用通路73と還元剤タンク21とが連通状態となっている。また、ポンプ23によって圧送される還元剤の流れ方向が逆方向に切り換えられる。
【0099】
次いで、制御装置40は、ステップS59においてポンプ23の駆動を再開して、パージ制御を開始した後、ステップS60において、ポンプ23の駆動を再開してからの経過時間Tが所定の閾値T1に到達したか否かを判別する。経過時間Tが閾値T1に到達すると、制御装置40は、ステップS61において、リバーティングバルブ24及びポンプ23をすべてオフにする。これにより、パージ制御が完了し、次回の内燃機関1の始動時まで、還元剤供給装置20Cの電源がオフとなる。
【0100】
以上説明したように、第3の実施の形態に係る還元剤噴射装置20Cは、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時に、還元剤噴射弁25を開弁してもパージ用通路73と還元剤タンク21とが連通状態となるように構成されている。そのため、還元剤の充填時において、意図しない還元剤の噴射が実行されることを防ぐことができる。また、還元剤の充填後に還元剤噴射弁25の開閉制御が開始されるため、摺動部分や着座部分が、還元剤が存在しない状態で還元剤噴射弁25の開閉動作が繰り返されることによって摩耗したり損傷したりすることを防ぐことができる。
【0101】
また、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cによれば、還元剤噴射弁25の開閉動作が開始されるときには、少なくとも還元剤噴射弁25の近傍まで還元剤が充填された状態となっているため、仮に還元剤噴射弁25内で還元剤の結晶化を生じていても、結晶化した還元剤を液体の還元剤によって速やかに融解することができる。
【0102】
また、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cによれば、内燃機関1の停止時におけるパージ制御時に、還元剤噴射弁25を開弁してもパージ用通路73と還元剤タンク21とが連通状態となるように構成されている。そのため、パージ制御時において、排気中の異物が還元剤供給装置20C内に侵入することを防ぐことができ、還元剤噴射弁25及び第3の還元剤通路33内の汚染や、還元剤噴射弁25の閉弁不良又は損傷を防ぐことができる。また、排気が還元剤供給装置20C内に侵入することがないため、排気熱が還元剤噴射弁25内に伝達されにくくなり、還元剤供給装置20C内での還元剤の結晶化を低減することができる。
【0103】
したがって、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cによれば、還元剤供給装置20Cの信頼性を向上させることが可能になる。
【0104】
また、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cによれば、還元剤の噴射制御中においてもパージ用通路73に還元剤が流通するため、パージ制御時においてパージ用通路73が開放されないおそれがなくなり、確実にエアの導入口を確保することが可能となる。
【0105】
また、第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20Cによれば、還元剤タンク21に、内部の圧力を大気圧に維持するエア導入部47を備えることとしているため、還元剤の充填時においてはエアが抜けやすくなり、パージ制御時においてはエアが導入されやすくなる。したがって、還元剤の充填効率及び回収効率を高めることが可能になる。
【0106】
[他の実施の形態]
以上説明した第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cは、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。例えば、第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cは、以下のように変更することができる。
【0107】
(1)上述した第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cにおいて説明した各構成要素の構成や形態はあくまでも一例であって、任意に変更することが可能である。
【0108】
(2)上述した第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cにおいては、リバーティングバルブ24によって還元剤の流れ方向を切り換えることによってパージ制御を実施するようにしているが、リバーティングバルブを用いないで、ポンプ23を逆回転させることでパージ制御を実施するように構成することもできる。
【0109】
(3)上述した第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cに備えられたリバーティングバルブ24、還元剤噴射弁25、開閉制御弁45及び流路切換制御弁65は、通電のオン/オフに対する動作が逆となるように構成されたものであってもよい。
【0110】
(4)上述した第1の実施の形態に係る還元剤供給装置20Aにおいては、噴射モジュール26に開閉制御弁45を備えることとしているが、開閉制御弁45は、噴射モジュール26から独立して設けることもできる。
【0111】
(5)上述した第2及び第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20B,20Cにおいては、還元剤タンク21に流路切換制御弁65又はオリフィス75を備えることとしているが、流路切換制御弁65又はオリフィス75は、還元剤タンク21から独立して設けることもできる。
【0112】
(6)上述した第1〜第3の実施の形態に係る還元剤供給装置20A,20B,20Cの制御方法の例においては、内燃機関1の始動時における還元剤の充填時に、第3の還元剤通路33内の還元剤の圧力Pが所定の圧力Pstartとなること、又は、ポンプ23の駆動開始からの経過時間Tが所定の閾値T0に到達すること、のいずれかの条件が成立したときに還元剤の充填が完了したものと判別していたが、いずれか一方の条件でのみ判別するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1:内燃機関、3:排気管、10A・10B・10C:排気浄化装置、11:NOX浄化触媒、13:NOXセンサ、20A・20B・20C:還元剤供給装置、21:還元剤タンク、23:ポンプ、24:リバーティングバルブ、25:還元剤噴射弁、26:噴射モジュール、27:圧力センサ、31:第1の還元剤通路、32:第2の還元剤通路、33:第3の還元剤通路、35:リターン通路、37:リリーフ弁、40:制御装置、43:パージ用通路、45:開閉制御弁、47:エア導入部、50:フィルタ部、51:フィルタ、54:ケーシング、61:リターン通路、63:パージ用通路、65:流路切換制御弁、73:パージ用通路、75:オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の還元剤を収容する還元剤タンクと、前記還元剤を圧送するポンプと、前記ポンプによって圧送された前記還元剤を内燃機関の排気管内に噴射する還元剤噴射弁を含む噴射モジュールと、前記ポンプと前記還元剤噴射弁とを接続する還元剤通路と、前記ポンプ及び前記還元剤噴射弁の駆動制御を行う制御装置と、を備え、前記内燃機関の停止に伴い、前記還元剤通路及び前記還元剤噴射弁内の前記還元剤を前記還元剤タンクに回収するパージ制御を実行可能に構成された還元剤供給装置において、
一端が前記噴射モジュールに接続されるとともに他端が前記還元剤タンクに接続され、前記一端が前記還元剤通路に連通するパージ用通路を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の始動時には、前記還元剤噴射弁を閉じた状態で前記ポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエア抜きを行いながら前記還元剤を充填し、
前記内燃機関の停止時には、前記還元剤を閉じた状態で前記ポンプを駆動して、前記パージ用通路を介してエアを導入しながら前記還元剤を回収することを特徴とする還元剤供給装置。
【請求項2】
前記パージ用通路とは別に、前記還元剤通路と前記還元剤タンクとを連通するリターン通路を備えるとともに、
前記パージ用通路に、前記パージ用通路の開閉を切り換える制御弁を備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の始動時及び停止時には前記制御弁によって前記パージ用通路を開放する一方、前記還元剤の噴射制御中には前記制御弁によって前記パージ用通路を閉じることを特徴とする請求項1に記載の還元剤供給装置。
【請求項3】
前記制御弁は、前記パージ用通路が開放された状態において前記リターン通路が閉じられる一方、前記パージ用通路が閉じられた状態において前記リターン通路が開放される流路切換弁であることを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項4】
前記パージ用通路及び前記リターン通路を、前記還元剤通路に連通する端部とは反対側において連結して前記還元剤タンクに接続することを特徴とする請求項2に記載の還元剤供給装置。
【請求項5】
前記還元剤タンクに、内部の圧力を大気圧に維持するエア導入部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の還元剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−163029(P2012−163029A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23397(P2011−23397)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】