説明

還元剤補給容器

【課題】車両の尿素水タンク周りの込み入った状況においても、容易に尿素水を補給でき、補給後は尿素水の飛散を防止することができる尿素水補給容器を提供することを課題とする。
【解決手段】車両の排気ガスの処理に還元剤として使用する尿素水を収納して補給するために用いる略偏平直方体の尿素水補給容器1において、前記尿素水の注入出口部と把持部6を備え、前記注入出口部は、尿素水補給容器1の相対向する最大面積面7の長手方向稜線を介してつながる上面2における長手方向一端側の短手方向稜線寄りに片寄った位置に形成され、把持部6は、注入出口部が形成された上面2の長手方向一端側とは異なる側の短手方向稜線を介してつながる側面5の略中央に形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置に用いる還元剤(尿素水)を収納し、携行できるようにした還元剤補給容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス等のディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置として、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために尿素を還元剤に用いたSCR(Selectve
Catalytic Reduction)触媒を使用することが実用化されている。
SCR触媒を用いた排気ガス浄化装置は、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的に排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元剤と反応させる性質を備えたSCRを設け、排気ガス中のNOxを選択的にSCR触媒に吸着させて清浄化するものである。
SCR触媒上流側の排気通路中に尿素水を噴射し、該尿素水中の尿素を加水分解して還元剤であるアンモニア(NH)を生成して、アンモニアをSCR触媒に供給し、前記SCR触媒に吸着したNOxを還元して窒素と水に分解して排出させることで、NOxの排出濃度を低減させるものである。
【0003】
このようなSCR触媒を用いた排気ガス浄化装置を使用する車両においては、SCR触媒上流側の排気通路中に量素水を噴射するため、尿素水を貯留する尿素水タンクを備えており、尿素水タンク内の尿素水がなくなると、専用設備を有したスタンド、販売店等で購入して供給する必要がある。
【0004】
しかし、尿素水は、販売店舗も限られており、燃料のように容易に入手することはできない。したがって、ドライバーは尿素水がなくなるというリスクを少しでも低減するために、万一に備えて汎用の容器で尿素水数リットルを携行している場合も少なくない。そして、入手タイミングを逸した時には、予め補給用の容器に収納していた尿素水を尿素水タンク内に補給するようにして、排ガス浄化装置の機能を確保するようにしている場合もある。
【0005】
一般的な携行可能な液体容器としては、次のような公知例が知られている。
図6は、特許文献1記載の容器の一例を示す図である。図6に示すように、ポリタンク容器50の上部に把手51を備え、側部52に把手53を備える。これにより、両手でポリタンク容器50を持つことができるため、手が滑ることを防いでいる。
【0006】
図7は、特許文献2記載の他の容器の例を示す図である。図7に示すように、ポリタンク容器60の内部にノズル部材61を収納し、蓋体62が着脱可能に取り付けられることによって塞がれるノズル部材取出孔部63が形成されており、ノズル部材61は、ポリタンク容器60内における収納位置と取出位置との間を移動可能としている。
【0007】
図8は、特許文献3記載の他の容器の例を示す図である。図8に示すように、ポリタンク容器70の中に凹部71を具備することにより、ポンプを収納できる筒状体72を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭62−19910号公報
【特許文献2】特開平7−237643号公報
【特許文献3】実用新案登録第3100565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の容器では、ノズルの収納部がないため、ノズルに付着した液体が外部に晒されて、付近にある物に接触して付着する恐れがある。このため、車内等に保管する場合には適さない。なお、収納液体が尿素の場合には、尿素は常温では無臭であるが、他の部分への付着を考慮すると適さないものである。
【0010】
また特許文献2、3に記載の容器では、ノズルをタンク内に収納する収納部は備えているが、注入口と把持部が同一面にあり、さらに近接しているため、容器を傾けて容器内の液体を注入する際に、把持部を握った腕を大きく傾けるような無理な体勢を取らなければならず、特に残量が少ない時には底部に残った液体の注入が難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、車両の排気ガス浄化装置の還元剤補給容器であって、車室内等に設置可能で且つ携行可能で、さらに車両側の還元剤タンクへ操作容易に補給できる補給容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、車両の排気ガス浄化装置に用いる液体の還元剤を収納し、携行できるようにした還元剤補給容器において、容器本体は略偏平直方体形状に形成され、前記還元剤の注入出口部と把持部とを備え、前記注入出口部と前記把持部とは、容器本体の相対向する一辺側と他辺側に設けられ、前記把持部は容器本体を貫通して形成された貫通孔によって容器本体の一辺側の略中央に長手方向に沿って形成され、前記注入出口部は容器本体の他辺側に該他辺側の長手方向に直交する端面に位置して形成されることを特徴とする。
【0013】
このような注入出口部と把持部との位置関係を有することにより、把持部を略直角に傾けるだけで還元剤補給容器の底部に残った還元剤を把持部を握った腕を大きく傾けることのない楽な体勢で容易に外部へ簡単に注出することができる。
【0014】
また、前記把持部は、内側が中空筒となって還元剤を収納する中空とは隔絶された中空を形成し、当該中空筒の略直線延長上の上面に開口部を備え、前記注入出口部に嵌合して前記還元剤を注出するためのノズルが前記開口部より前記中空筒に収納されることを特徴とする。
【0015】
このように、還元剤補給容器内部にノズルの収納室を設けたので、ノズルの使用後は、速やかにノズルを収納室に収納することができる。これにより、ノズルの紛失を防止することができるとともに、還元剤の残液の飛散を防止することができる。
【0016】
また、前記中空筒は、前記ノズルの基端部を受け止める受け部を備えたことを特徴とする。
【0017】
このように、ノズルの収納室に基端部を受け止める受け部を備えたので、ノズルが収納室の底部に落下することなく、ノズルの収納位置が安定し、ノズルの取り出し、収納操作が容易化する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の排気ガス浄化装置の還元剤の補給容器であって、車室内等に設置可能で且つ携行可能で、さらに車両側の還元剤タンクへ操作容易に補給できる補給容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る還元剤補給容器の外観斜視図である。
【図2】還元剤補給容器の断面図であり、還元剤の収納時を説明する図である。
【図3】還元剤補給容器の断面図であり、還元剤の補給時を説明する図である。
【図4】還元剤補給容器の使用状態を説明する図である。図4(a)は、ノズルをノズル収納室から取り出した状態を示す図である。図4(b)は、ノズルを注入出口部にねじ込んだ状態を示す図である。図4(c)は、還元剤補給容器を把持して液体を補給している状態を示す図である。
【図5】本実施形態にかかる還元剤補給容器を車室内に保管する例を説明する図である。
【図6】従来の容器の例を示す図である。
【図7】従来の他の容器の例を示す図である。
【図8】従来の他の容器の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的な配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る還元剤補給容器の外観斜視図である。なお、還元剤として尿素水を用いた例を説明する。
図1に示すように、尿素水補給容器(還元剤補給容器)1は略偏平直方体であり、その上面2には液体の注入出口部24(図2、3参照)を塞ぐ蓋体3、後述するノズル8を出し入れするノズル収納開口部25(図2、3参照)を塞ぐ蓋体4、及び、側面5に形成された把持部6を有している。
【0022】
また、図1に示すように、尿素水の注入出口部24(図2、3参照)を塞ぐ蓋体3は、尿素水補給容器1の容器本体10の上面2において、片側に片寄った位置に形成され、把持部6は、蓋体3が形成された上面2の位置とは反対側につながる側面5の略中央に形成される。また、この把持部6は、容器本体10の最大面積面7を貫通する貫通孔9を設けることによって形成される。
【0023】
すなわち、注入出口部24と把持部6とは、容器本体10の相対向する一辺側Aと他辺側Bに設けられ、把持部6は容器本体10を貫通して形成された貫通孔9によって容器本体10の一辺側Aの略中央に長手方向に沿って形成される。
また、注入出口部24は容器本体10の他辺側Bに、他辺側の長手方向に直交する端面(上面)2に位置して形成されている。
【0024】
このような注入出口部24と把持部6との位置関係を有することにより、把持部6を、把持して容器本体10を略直角に傾けるだけで尿素水補給容器1の底部に残った尿素水を把持部6を握った腕を大きく傾けることのない楽な体勢で容易に外部へ注出することができる。
なお、図1に示すように、上面2及び上面2に対向する底面11における長手方向両端部分の形状を、尿素水補給容器1の外方向に対して凸部を有する半円形または半楕円形にしてもよい。このように凸部を有する半円形または半楕円形状にすることによって、直方体形状の角部がなくなり、尿素水補給容器1を室内等に保管しても、周囲の部品を傷つけることなく保管が可能となる。
【0025】
図2は、尿素水補給容器の断面図であり、尿素水の収納時を説明する図である。
尿素水補給容器1の内部は、尿素水を収納する液体収納室21とノズル8を収納するノズル収納室22とを有し、隔壁23で各々の部屋は隔絶されている。
ノズル収納室22は把持部6の内側に中空筒として形成されている。ノズル収納室22の略直線延長上の上面2にはノズル8を出し入れするためのノズル収納開口部25が形成されている。
【0026】
ノズル8を使用しないときは、ノズル8はノズル収納室22に収納される。したがって、ノズル8をノズル収納室22に収納しているときは、ノズル8が尿素水にさらされることはない。さらに、ノズル8を使用後速やかにノズル収納室22に収納することができるため、ノズル8の紛失を防止することができるとともに、ノズル8に付着した尿素水の残液の飛散を防止することができる。
【0027】
液体収納室21の開口部である注入出口部24には、注入出口部24を取り囲むように上面2に扁平の円筒26が取り付けられており、円筒26の外周部にはおねじが形成されている。そして、蓋体3の内側にはめねじが形成されており、蓋体3を円筒26にねじ込むことにより、注入出口部24から尿素水が漏れることを防いでいる。
【0028】
ノズル8は、その基端部81から注出口がある先端部にかけて徐々に径が細くなる略円錐形状で(図3参照)、屈曲しやすいように蛇腹形状にしてある。基端部81は扁平な円筒であり、円筒の内側には蓋体3の内側のめねじと同じ径のめねじが形成されている。
【0029】
ノズル収納室22にはノズル8が内部に落ち込むのを防止するために基端部81を受け止める受け部28が形成されている。ノズル8をノズル収納室22へ収納するときは、図2に示すように、ノズル8の先端部の注出口を下にし、受け部28で基端部81を受け止めるようにして収納する。
【0030】
このように、ノズル収納室22に基端部81を受け止める受け部28を備えたので、ノズル8が収納室の底部に落下することなく、ノズル8を安定的に収納することでき、さらに容易に取り出すことができる。
【0031】
また、ノズル収納開口部25には、注入出口部24と同様に扁平の円筒27が、上面2のノズル収納開口部25を取り囲むように取り付けられており、円筒27の外周部にはおねじが形成されている。そして、蓋体4の内側にはめねじが形成されており、蓋体3を円筒8にねじ込む。ノズル8を使用しないときには、ノズル8をノズル収納室22へ収納して蓋体4で蓋をしておく。
【0032】
図3は、尿素水補給容器1の断面図であり、尿素水の補給時を説明する図である。尿素水をトラック等の尿素水タンクに補給するときには、蓋体3を取り外し、ノズル8の基端部81を円筒26にねじ込んで使用する。蓋体3はノズル収納室22に収納する。このために、円筒27の高さを蓋体3の高さよりも高くしておく必要がある。ここで、蓋体3の径は、ノズル8の基端部81の径と略同じであるので、受け部28で蓋体3を保持しておくことが可能になる。そして、蓋体4を円筒27にねじ込む。これにより、尿素水の補給時に蓋体3を紛失することを防止することができる。
【0033】
図4は、尿素水補給容器1の使用を説明する図である。
図4(a)は、ノズル8をノズル収容室22から取り出した状態を示す図である。蓋体4を取り外し、ノズル8を取り出している。
図4(b)は、ノズル8を円筒26にねじ込んだ状態を示す図である。このとき、蓋体3は、ノズル収納室22の中に収納されている。
図4(c)は、尿素水補給容器1を把持して尿素水を補給している状態を示す図である。図4(c)に示すように、貫通孔9を通って把持部6を握ることで、尿素水補給容器1を持ち上げる。そして、尿素水補給容器1を略直角に傾斜させるだけで、容易に尿素水等の液体を尿素水補給容器1の底部に残留させることなく補給することができる。
【0034】
図5は、尿素水補給容器1を車室内に保管して携行する例を説明する図である。図5に示すように、車両のシート31のシート背面部32には、尿素水補給容器1を保持するための帯状のストラップを取り付けた帯状保持部材33が備えられている。
このように、帯状保持部材33を尿素水補給容器1の貫通孔9を通して把持部6に架けることにより、容易に車室内に携行することができ、ドライバーは尿素水がなくなるというリスクを低減でき、入手タイミングを逸した場合においても、尿素水補給容器1の容器に収納していた尿素水を車両の尿素水タンク内に補給することで、排ガス浄化装置の機能を確保できる。
なお、保管例は、一例であり、その他、ドア内側空間等のスペースを利用しての保管であってもよく、さらに、車室外の収納スペースを利用してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、注入出口部と把持部との位置関係を、すなわち、注入出口部と把持部とを容器本体の相対向する一辺側と他辺側に設け、把持部は容器本体を貫通して形成された貫通孔によって容器本体の一辺側の略中央に長手方向に沿って形成し、注入出口部は容器本体の他辺側に他辺側の長手方向に直交する端面(上面)に位置して形成される関係を有することにより、把持部を略直角に傾けるだけで還元剤補給容器の底部に残った還元剤を把持部を握った腕を大きく傾けることのない楽な体勢で容易に外部へ簡単に注出することができるので、携行用の容器への利用に適している。
【符号の説明】
【0036】
1 尿素水補給容器
2 上面
3、4 蓋体
5 側面
6 把持部
7 最大面積面
8 ノズル
9 貫通孔
21 液体収納室
22 ノズル収納室
23 隔壁
24 注出入口部
25 ノズル収納開口部
132 装置通信個別部
26、27 円筒
28 受け部
31 シート
32 シート背面部
33 帯状保持部材
81 基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排気ガス浄化装置に用いる液体の還元剤を収納し、携行できるようにした還元剤補給容器において、
容器本体は略偏平直方体形状に形成され、前記還元剤の注入出口部と把持部とを備え、
前記注入出口部と前記把持部とは、容器本体の相対向する一辺側と他辺側に設けられ、
前記把持部は容器本体を貫通して形成された貫通孔によって容器本体の一辺側の略中央に長手方向に沿って形成され、
前記注入出口部は容器本体の他辺側に該他辺側の長手方向に直交する端面に位置して形成されることを特徴とする還元剤補給容器。
【請求項2】
前記把持部は、内側が中空筒となって還元剤を収納する中空とは隔絶された中空を形成し、当該中空筒の略直線延長上の上面に開口部を備え、前記注入出口部に嵌合して前記還元剤を注出するためのノズルが前記開口部より前記中空筒に収納されることを特徴とする請求項1に記載の還元剤補給容器。
【請求項3】
前記中空筒は、前記ノズルの基端部を受け止める受け部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の還元剤補給容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111495(P2012−111495A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259207(P2010−259207)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】