説明

還流式紙幣収納装置、及び紙幣処理装置

【課題】幅寸法が異なる複数の紙幣を処理可能なスイッチバック還流式紙幣収納装置において、部品点数の増大、構成の複雑化を招くことなく、順次入金されてくる小幅紙幣を積層状態で堆積する際に堆積紙幣間の幅方向位置のばらつきを解消する。
【解決手段】紙幣堆積面33の幅方向両側から夫々立ち上がったガイド壁34を有した紙幣堆積空所32と、紙幣入出金機構45と、を備え、紙幣入出金機構は紙幣堆積面の上方に離間配置されて底面が紙幣搬送方向上流側から下流側へ向けて下向きに傾斜した中央ガイド部材と、を備え、両ガイド壁の紙幣搬送方向上流側部分には、上流側から下流側へ向かって上向きに傾斜する傾斜ガイド面が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば貨幣を入出金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の貨幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、詳細には幅寸法が異なる複数種類の紙幣を金種別に収容するスイッチバック式の紙幣収納部を複数備えた還流式紙幣処理装置において、小幅紙幣が幅方向に偏位した状態で入金されてきた場合であっても還流式紙幣収納部の幅方向中央部に整列状態で堆積させることができる還流式紙幣収納装置、及び紙幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等に装備されており、この紙幣処理装置には始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に保管するための還流式の紙幣収納部が装備されている(特許文献1)。
還流式の紙幣収納部とは、始業時に予め収納しておいた紙幣のみならず、装置の稼働中に利用者が投入した紙幣を一旦収納する一方で、この紙幣を釣銭等とするために外部へ繰り出す(排出する)機能を備えたタイプの紙幣収納部を指称する。また、還流式の紙幣収納部にはループ方式とスイッチバック方式がある。ループ方式は紙幣の入口(受入れ方向)と出口(繰り出し方向)を異ならせた方式であり、スイッチバック方式とは同じ出入り口から紙幣の受け入れと繰り出しを行う方式である。
【0003】
ところで、ユーロ紙幣のように金種によって幅寸法が異なる紙幣を取り扱う紙幣処理装置にあっては、紙幣を長手方向端部側から受け入れるためのスリット状の紙幣投入口の幅方向寸法を、最大幅を有した紙幣に合わせて広く設定する必要がある。利用者がこのような幅広の紙幣投入口に小幅紙幣を投入する場合に、小幅紙幣の幅方向中心部と紙幣投入口の幅方向中心部とを正確に一致させた状態で投入することは難しく、幅方向何れか一方に偏位した状態で投入されることが多い。このように幅方向に偏位して投入された紙幣が、紙幣処理装置内部に配置された還流式の紙幣収納部に積層状態で収納されると、堆積された紙幣間の幅方向位置がばらついた状態となり、この堆積紙幣中から釣銭等として紙幣を払い出す際に給紙不良等を惹起する原因となる。
つまり、幅寸法が異なる複数の紙幣を取り扱う紙幣処理装置にあっては、紙幣を積層状態で堆積する還流式紙幣収納部において、堆積紙幣間の幅方向位置のばらつきを回避する必要性が高い。
このような不具合に対処するため、当初幅方向に偏位して投入された小幅紙幣を搬送途中において搬送路の幅方向一端寄りに寄せて搬送することが行われている。しかし、搬送路の途中に幅寄せのための機構を配置すると、幅寄せ機構を構成する部品点数の増加分だけ、紙幣処理装置の大型化、高コスト化を招く虞がある。
【0004】
次に、図6は他の従来例に係る紙幣収納部の構成説明図であり、この紙幣収納部100は、紙幣積載面を構成する底板101と、底板101の幅方向両端部から夫々立ち上がった側壁102と、両側壁102の前端縁からテーパー状に拡開して延びる幅寄せガイド板103と、紙幣Sをニップして底板101上に搬送するローラ対105と、を備えている。ローラ対105によって底板上に送り込まれる小幅紙幣が幅方向一方(右方)に偏位している場合には、紙幣一端縁が一方の幅寄せガイド板103の内壁と当接しつつ前進することによって、ローラ対のニップ部から紙幣後端が離脱した際には紙幣の幅方向位置が左方向へ位置修正された状態で底板上に落下するように構成している。
しかし、コシのない紙幣や、折り癖のついた紙幣をローラ対によって底板上に送り込む場合には、紙幣先端角部が幅寄せガイド板と衝突したときに、紙幣先端角部が下向きに折れ曲がり、その結果紙幣は直進できずに、(b)(c)に示すように下方へ落ちるように進行し易くなる。この場合、紙幣は(c)のように挫屈するため、底板上の既堆積紙幣上に積載されることができず、既堆積紙幣の前端面と衝突することがあった。また、コシのない小幅紙幣が幅方向一方に偏位した姿勢で入金される場合には、幅寄せガイドとの衝突によって上記のように変形する結果として、幅方向位置を修正して底板(或いは、既堆積紙幣)上に着座させることは困難となる。また、このように変形した状態で堆積された紙幣は釣銭等として紙幣収納部外へ繰出すことも難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260059公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のようにスイッチバック還流式紙幣収納部を複数備え、幅寸法が異なる複数の紙幣を取り扱う紙幣処理装置にあっては、紙幣を積層状態で堆積する際に堆積紙幣間の幅方向位置のばらつきを回避する必要性が高い。特に、紙幣投入口の寸法を最大サイズの紙幣に合わせている場合には、小幅紙幣が紙幣搬送経路内において搬送幅中心から偏位した位置で搬送され易いため、紙幣収納部に堆積される紙幣の幅方向位置にばらつきが発生し、これが出金時の給紙不良(ジャム等)を招く原因となる。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、幅寸法が異なる複数の紙幣を処理可能であり、且つ金種別に複数のスイッチバック還流式紙幣収納部を備えた紙幣処理装置において、部品点数の増大、構成の複雑化を招くことなく、順次入金されてくる小幅紙幣を積層状態で堆積する際に堆積紙幣間の幅方向位置のばらつきを解消することができる還流式紙幣収納装置、及び紙幣処理装置を提供することを目的としている。
また、コシのない紙幣や折り癖のついた紙幣を紙幣収納部に送り込む場合であっても、紙幣先端が下方へ変形することによる紙幣の挫屈を防止できるため、既堆積紙幣と干渉することなく理想的な姿勢にて堆積することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る還流式紙幣収納装置は、上面に紙幣を堆積する紙幣堆積面及び該紙幣堆積面の幅方向両側から夫々立ち上がったガイド壁を有した紙幣堆積空所と、縦長搬送されてくる紙幣を該紙幣堆積空所内に一枚ずつ導入したり、紙幣堆積空所内の紙幣を一枚ずつ外部へ繰出す紙幣入出金機構と、を備えた還流式紙幣収納装置であって、紙幣入出金機構は、入出金部から紙幣堆積空所に対して紙幣を入金、出金するローラ対と、紙幣堆積面の上方に離間配置されて底面が紙幣搬送方向上流側から下流側へ向けて下向きに傾斜した中央ガイド部材と、を備え、両ガイド壁の少なくとも紙幣搬送方向上流側部分には、上流側から下流側へ向かって上向きに傾斜する傾斜ガイド面が形成されており、ローラ対によって紙幣堆積空所に向けて入金されてきた紙幣が幅方向に偏位している場合に、該紙幣が進行する過程で該紙幣先端縁の一部が当初傾斜ガイド面と当接し、該紙幣の進行に応じて該紙幣の中央部が中央ガイド部材底面によって押し下げられる一方で該紙幣の幅方向一端縁は前記傾斜ガイド面に沿って更に押上げられて大きく湾曲しつつ進行し、その後湾曲した紙幣端縁の自重により紙幣全体の幅方向位置が中央寄りに補正されるように構成したことを特徴とする。
紙幣堆積空所に向けて入金されてきた小幅紙幣が幅方向に偏位している場合には、この紙幣の中間部が中央ガイド部材底面によって斜め下向きに押し下げられて進行する過程で、該紙幣先端縁の一部が当初一方のガイド壁の傾斜ガイド面と当接し、該紙幣の進行に応じて該紙幣の中央部が中央ガイド部材底面によって更に押し下げられる一方で該紙幣の幅方向一端縁は更に押上げられて大きく湾曲しつつ進行する。このため、大きく湾曲した紙幣端縁の自重により紙幣全体の幅方向位置が中央寄りに補正され、最終的には紙幣堆積面上に位置ずれしていない正規の姿勢で堆積されることとなる。既存のガイド壁の一部に傾斜ガイド面を形成するだけの簡単な改良により本発明の効果を得ることができるため、低コストにより所期の効果を達成することが可能となる。
また、コシのない紙幣や折り癖のついた紙幣を紙幣堆積空所内に送り込む場合であっても、紙幣先端が下方へ変形することによる紙幣の挫屈を防止できるため、既堆積紙幣と干渉することなく理想的な姿勢にて堆積することができる。
【0008】
請求項2の発明に係る紙幣処理装置は、幅寸法が異なる複数金種の紙幣を受入れ可能な入出金部と、該入出金部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路と接続されて小幅紙幣を出入れ自在に収容する請求項1に記載の還流式紙幣収納装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のスイッチバック還流式紙幣収納部を備え、幅寸法が異なる複数の紙幣を処理(収納・堆積、払出し)可能な紙幣処理装置において、部品点数の増大、構成の複雑化を招くことなく、順次入金されてくる小幅紙幣を積層状態で堆積する際に堆積紙幣間の幅方向位置のばらつきを解消することができる。特に、既存のガイド壁の一部に傾斜ガイド面を形成するだけの簡単な改良により、収納部内での堆積位置ずれに起因した給紙不良等を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置を備えた紙幣処理装置の概略構成を示す全体図であり、(b)は入出金口の構成を示す正面図である。
【図2】還流式紙幣収納装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】(a)(b)及び(c)は紙幣端部がガイド壁の傾斜ガイド面によってガイドされる状態を示す要部斜視図である。
【図5】(a)乃至(d)は中央ガイド部材と傾斜ガイド面との協働により紙幣の姿勢を補正する手順を示す説明図である。
【図6】(a)(b)及び(c)は従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置を備えた紙幣処理装置の概略構成を示す全体図であり、(b)は入出金口の構成を示す正面図であり、図2は還流式紙幣収納装置の構成を示す斜視図であり、図3は図2の正面図であり、図4(a)(b)及び(c)は紙幣端部がガイド壁の傾斜ガイド面によってガイドされる状態を示す要部斜視図であり、図5(a)乃至(d)は中央ガイド部材と傾斜ガイド面との協働により紙幣の姿勢を補正する手順を示す説明図である。
紙幣処理装置1は、例えば食券等の自動販売機(券売機)に装備されて紙幣の受け入れ処理、釣銭等としての紙幣の払い出し処理を行う機能を有する。
紙幣処理装置1は、還流式の紙幣処理機構2と、この紙幣処理機構2を内部に収容する外装体3と、から概略構成されている。
紙幣処理機構2は、幅寸法が異なる複数金種の紙幣を長手方向先端部から受入れ可能な入出金口4と、入出金口4から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路5と、搬送経路5に沿って紙幣を搬送するための駆動力を生成、伝達するためのモータ、ソレノイド、及びローラ、ベルト、ゲートから成る図示しない搬送機構と、入出金口4の直下流側の搬送経路5上に配置されて一枚ずつ給送されてくる紙幣の真贋、金種を判定する識別部10と、搬送経路5と接続されて第1の金種に係る第1の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第1の紙幣収納部20と、搬送経路5と接続されて第2の金種に係る第2の紙幣を出入れ自在に収容するスイッチバック還流式の第2の紙幣収納部(還流式紙幣収納装置)30と、終業時などに各紙幣収納部20、30に収納された紙幣を回収して収容する収納金庫50と、これらを制御する図示しない制御手段と、を備えている。
【0012】
入出金口4は一枚、又は複数枚重ねて一括投入された紙幣を受け入れることができる構造を有し、その奥部には一括投入された複数枚の紙幣を一枚ずつに分離しながら搬送経路5に送り出すための分離給送機構を備えている。入出金口4は、図1(b)に示すように大きい幅寸法L1を有した第1の紙幣Aに合わせた幅寸法を有したスリット4aを備えている。小さい幅寸法L2を有した第2の紙幣Bはスリット4aの中心部に紙幣幅の中心部を合わせた状態で挿入することが理想的であるが、実際の利用者が常にスリット中心部と第2の紙幣Bの紙幣幅中心部を正確に位置合わせした正しい姿勢にて投入することは難しく、幅方向に位置ずれした状態で挿入、搬送が行われることが多い。この場合には、第2の紙幣は幅方向に位置ずれした姿勢のまま搬送経路5によって第2の紙幣収納部30に搬送される。
【0013】
図示しない搬送機構は、入出金口4から投入された紙幣を所定のルートにて搬送することにより金種別に釣銭として還流する金種を第1、又は第2の紙幣収納部20、30に、高額金種を収納金庫50に送り込む仕分け搬送機能と、第1、又は第2の紙幣収納部20、30から一枚ずつ繰り出されてきた紙幣を入出金口4から払出したり、収納金庫50に搬送、収納する機能を備えている。制御手段からの制御によって各ローラ、ベルト、ゲートを切り替え駆動することにより、所定のタイミングにて上記の各搬送機能を実現することができる。
第1の紙幣収納部20は、大きい幅方向寸法L1を有した第1の紙幣A専用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた第1の紙幣Aを搬送経路5に一枚ずつ送出する還流機能を有している。
第2の紙幣収納部(還流式紙幣収納装置)30は、幅方向寸法が小さい第2の紙幣B専用であり、搬送経路5を経由して一旦受け入れた第2の紙幣Bを搬送経路5に一枚ずつ送出するスイッチバック式の還流機能を有している。
本発明に係る還流式の第2の紙幣収納部(還流式紙幣収納装置)30は、上面に紙幣を堆積する紙幣堆積面33及び紙幣堆積面の幅方向両側から夫々立ち上がったガイド壁34を有した紙幣堆積空所32と、入出金部31から縦長搬送されてくる第2の紙幣Bを紙幣堆積空所32内に一枚ずつ導入したり、紙幣堆積空所内の第2の紙幣を一枚ずつ外部へ繰出す紙幣入出金機構45と、を備える。本例では、紙幣堆積面33、ガイド壁34は、その高さ位置が固定されている。
【0014】
紙幣入出金機構45は、単一の入出金部31から紙幣堆積空所32に対して紙幣を入金、出金する正逆転可能なローラ対46a、46bと、駆動側のローラ46aを正逆転駆動する図示しないモータと、紙幣堆積面33の上方に離間配置されて底面47aが紙幣搬送方向上流側から下流側へ向けて下向きに傾斜した中央ガイド部材47と、下側のローラ46aの軸部から放射状に突出されて紙幣後端を叩くための羽根48と、ロータ対の下流側上部に配置されて導入されてきた紙幣をガイドするガイドローラ49と、を備える。
中央ガイド部材47は、上流側に設けた軸部47bを中心として上下動可能に構成されており、自重によって下降しているときにその底面47aは下流側へ向けて下向き傾斜しており、少なくとも底面47aは紙幣堆積空所32の幅方向中心部に位置していて、幅方向位置ずれなく導入されてくる紙幣の幅方向中央部を押し下げるように構成されている。中央ガイド部材が軸47bを中心として下降した位置にある時には、その底面47aは下流側に向けて下向きに傾斜しているため、ローラ対46a、46bによって紙幣堆積空所32内に導入されてきた紙幣は底面47aに沿って下向きに傾斜して搬送される。
【0015】
一方、両ガイド壁34の間隔は、第2の紙幣Bの幅方向寸法と略一致する寸法に設定されているため、入出金口4から幅方向位置ずれした状態で投入された第2の紙幣Bがそのままの姿勢で紙幣堆積空所32内に導入されてくると、紙幣の幅方向一端部は何れか一方のガイド壁により干渉された状態で進入してくる。
両ガイド壁34の紙幣搬送方向上流側部分には、夫々上流側から下流側へ向かって上向きに傾斜する傾斜ガイド面34aを備えることにより、幅方向一方に偏位した状態で紙幣堆積空所32内に進入してきた紙幣の一端を傾斜ガイド面34aによって干渉させて押上げるようにしている。
即ち、図3に示すように、正面から見た場合に、中央ガイド部材の底面47aと、ガイド壁の傾斜ガイド面34aとは、X字状に交差しているため、幅方向に位置ずれした姿勢で進入してきた第2の紙幣は、その中間部が底面47aによって押し下げられる一方で、幅方向一方に突出した一端部は干渉を受ける傾斜ガイド面34aによって押し上げられつつ進行することとなる。
これを更に詳細に説明すれば、ローラ対46a、46bによって紙幣堆積空所32に向けて入金されてきた第2の紙幣Bが幅方向に偏位している場合には、この紙幣の偏位した側の一端が傾斜ガイド面34aの上に乗った状態で進行する(図5(a))。紙幣の進行に応じて紙幣の中央部が中央ガイド部材底面によって更に押し下げられる一方で、紙幣の幅方向一端縁は押上げられて大きく湾曲しつつ進行する(図5(b)(c))。紙幣は湾曲したことで下向きに折れ曲がりにくくなり、進行方向へ直進し易くなる。そして、この状態で紙幣が前進し続けると、最後には大きく湾曲した紙幣端縁の自重、及び紙幣端縁の弾性による原形復帰力により紙幣全体の幅方向位置が中央寄りに補正され、紙幣後端部がローラ対46a、46bのニップ部を通過した後で羽根48によって後端部を下向きに叩かれて捌かれ、最終的には紙幣堆積面33上に位置ずれしていない正規の姿勢で堆積されることとなる(図5(d))。
【0016】
本発明によれば、既存のガイド壁の一部に傾斜ガイド面を形成するだけの簡単な改良により、小幅紙幣の位置ずれを修正した状態で紙幣堆積空所内に収納することが可能となるため、部品点数の増大、大型化、構成の複雑化、コスト増を招くことなく、所期の効果を達成することが可能となる。このため、還流式紙幣収納装置30から小幅紙幣を繰出す際のジャム等の給紙不良の発生を防止することができる。
このような構成を備えた還流式紙幣収納装置30を備えた紙幣処理装置1によれば、小幅紙幣であってもスムーズな入金、出金動作を実現できる。
【符号の説明】
【0017】
1…紙幣処理装置、2…紙幣処理機構、3…外装体、4…入出金口、4a…スリット、5…搬送経路、10…識別部、20…第1の紙幣収納部、30…第2の紙幣収納部(還流式紙幣収納装置)、31…入出金部、32…紙幣堆積空所、33…紙幣堆積面、34…ガイド壁、34a…傾斜ガイド面、45…紙幣入出金機構、46a、46b…ローラ、47…中央ガイド部材、47a…中央ガイド部材底面、47b…軸部、48…羽根、49…ガイドローラ、50…収納金庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に紙幣を堆積する紙幣堆積面及び該紙幣堆積面の幅方向両側から夫々立ち上がったガイド壁を有した紙幣堆積空所と、縦長搬送されてくる紙幣を該紙幣堆積空所内に一枚ずつ導入したり、該紙幣堆積空所内の紙幣を一枚ずつ外部へ繰出す紙幣入出金機構と、を備えた還流式紙幣収納装置であって、
前記紙幣入出金機構は、入出金部から紙幣堆積空所に対して紙幣を入金、出金するローラ対と、該紙幣堆積面の上方に離間配置されて底面が紙幣搬送方向上流側から下流側へ向けて下向きに傾斜した中央ガイド部材と、を備え、
前記両ガイド壁の少なくとも紙幣搬送方向上流側部分には、上流側から下流側へ向かって上向きに傾斜する傾斜ガイド面が形成されており、前記ローラ対によって前記紙幣堆積空所に向けて入金されてきた紙幣が幅方向に偏位している場合に、該紙幣が進行する過程で該紙幣先端縁の一部が当初傾斜ガイド面と当接し、該紙幣の進行に応じて該紙幣の中央部が中央ガイド部材底面によって押し下げられる一方で該紙幣の幅方向一端縁は更に前記傾斜ガイド面に沿って押上げられて大きく湾曲しつつ進行し、その後湾曲した紙幣端縁の自重により紙幣全体の幅方向位置が中央寄りに補正されるように構成したことを特徴とする還流式紙幣収納装置。
【請求項2】
幅寸法が異なる複数金種の紙幣を受入れ可能な入出金部と、該入出金部から受け入れられた紙幣を装置本体内に搬送する搬送経路と、該搬送経路と接続されて小幅紙幣を出入れ自在に収容する請求項1に記載の還流式紙幣収納装置と、を備えたことを特徴とする紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−244401(P2010−244401A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94014(P2009−94014)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】