説明

部分保護フィルム、保護フィルムセット及びフィルムによる保護方法

【課題】部分的に2枚以上のシートやフィルム等の基材を用いて被保護面を保護するのに好ましい保護層体セットを提供する。
【解決手段】被保護面102に粘着される第1の保護層体10と、第1の保護層体10の表面と被保護面102とにそれぞれ粘着される第2の保護層体20と、を備え、第1の保護層体10の表面と第2の保護層体20との間の第2の粘着強度は、被保護面102と第1の保護層体10との間の第1の粘着強度よりも大きくなるように保護層体セットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品などの表面の凹状部や凸状部などの一部分を保護する部分保護フィルム及びその利用に関し、詳しくは、部分保護フィルム、該部分保護フィルムを含む保護フィルムセット、該部分保護フィルムによる保護方法、該部分保護フィルムによる保護体等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のボンネット等の広範囲に塗膜が施された仕上げ面は、ユーザ等に引渡しされるまで、埃や傷等のほか、雨、薬剤等から保護する必要がある。このため、従来、大面積の保護用としてローラ等により仕上げ面に貼着する保護シートが用いられている。また、ボンネット等の表面に、ウインドウォッシャーノズルなどの保護不要かあるいは露出させておく必要のある凸状部分がある場合がある。この場合に、保護シートを貼着すると、凸状部を被覆してテント状となってしまう。このため、予め、凸状部に対応する孔部や切欠き部を備える部分保護フィルムを予め凸状部分周囲に貼着しておき、この部分保護フィルムに重なるようにその後大面積の保護シートを貼着し、その後、凸状部を露出させるために、凸状部周辺を切り取ることが行われていた(特許文献1、2、3)。
【0003】
こうした方法によれば、凸状部分を被覆する保護シートが凸状部分でテント状にならずに、また、こうした保護不要箇所を切り取る作業によって被保護体の表面が傷つくことを防ぐことができる。
【特許文献1】特開平5−237935号公報
【特許文献2】特開平5−278108号公報
【特許文献3】特開2004−268354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら保護シートと保護フィルムとを被保護面から剥がす際、別々に剥がさざるを得ず、作業工程が煩雑化していた。また、小面積の保護フィルムを剥がす際には、その周辺を傷つけてしまう可能性を否定できなかった。また、部分保護フィルム周辺では、大面積の保護シートに皺等ができやすく、皺等が生じた場合には、保護シートと部分保護フィルムとの間に隙間が生じ、そこから、雨水などが侵入して被保護体を汚染する可能性があった。
【0005】
さらに、被保護面には、ウインドウォッシャーと異なりデザインや機能等の観点から、保護すべき凸状部や凹状部を備える場合もある。こうした部分を大面積の保護シートを被覆すると、凸状部や凹状部で保護シートは被保護表面から浮いたり皺になったりしてしまう。こうした浮き等は剥離や亀裂の原因となり汚染が生じることになる。浮き等を回避するには、従来のように、予め部分保護フィルムを貼着した後、凸状部等の周囲が重なるように保護シートを貼着し、その後、凸状部等に対応する箇所を切り取ることが考えられる。そして、この場合にも、上記した保護シートと部分保護フィルムとの重ね貼り部分における不都合があると考えられる。
【0006】
加えて、被保護面には凹状部や凸状部でなくても、部分的に保護層を厚くしたい箇所や被保護面を露出させないために重ね貼りが必要な箇所がある場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、部分的に2枚以上のシートやフィルム等の基材を用いて被保護面を保護するのに好ましい部分保護フィルム、該保護フィルムを用いる被保護面の保護方法、該フィルムを用いる保護フィルムセット、該保護フィルムによる保護体を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、凸状部や凹状部を有する被保護面を保護するのに好ましい部分保護フィルム、該保護フィルムを用いる被保護面の保護方法、該フィルムを用いる保護フィルムセット、該保護フィルムによる保護体を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、剥離作業性に優れる部分保護フィルム、該保護フィルムを用いる被保護面の保護方法、該フィルムを用いる保護フィルムセット、該保護フィルムによる保護体を提供することを他の一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、保護シート及び部分保護フィルムについて種々検討したところ、これらはいずれも一般的にロール体として供給されており、これらの基材の粘着剤層の反対側、すなわち、重ね貼りされる表面側はロール体からの分離性を最優先した剥離加工がされている一方、粘着加工は被保護面に対する機能から低下させることは困難であることがわかった。そこで、本発明者らは、被保護面に貼着される下層の保護体とこの下層保護体に重ね貼りされる上層保護体とにおいて、下層保護体の表面と上層保護体の粘着面との粘着強度が下層保護体の粘着層と被保護面との粘着強度を超えるように構成することで、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。本発明によれば以下の手段が提供される。
【0009】
本発明によれば、保護層体セットであって、被保護面に粘着される第1の保護層体と、該第1の保護層体の表面と前記被保護面とにそれぞれ粘着される第2の保護層体と、を備え、前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている、セットが提供される。このセットは、車両の塗膜面の保護用として用いることができる。
【0010】
この保護層体セットにおいては、前記第1の保護層体は、その表面の少なくとも一部に第1の剥離処理層を備えることもできる。また、前記第1の保護層体の、前記第2の保護層体により粘着される部分においてはその周囲よりも剥離性が低下されているか粘着強度が向上されていてもよい。さらに、前記第1の保護層体と前記第2の保護層体との前記被保護面に対する粘着強度は同程度とすることができる。
【0011】
この保護層体セットにおいては、前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部の前記被保護面における輪郭を包囲する孔部若しくは切欠き部を備えることもできる。この態様において、前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えることもできる。
【0012】
この保護層体セットにおいては、前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部を被覆して粘着される領域を備えることもできる。この態様においては、前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えることができる。さらに、前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えることもできる。
【0013】
本発明によれば、上記いずれかに記載の第1の保護層体用である、被保護面の部分保護用層体が提供される。また、本発明によれば、被保護面の部分保護用層体であって、被保護面に対する粘着強度よりも表面に積層して粘着される保護用層体に対する粘着強度が大きくなるように構成されている、層体が提供される。これらの層体において、被保護面に対する粘着強度が2.0N/25mm以上7.0N/25mm以下とすることができる。
【0014】
本発明によれば、被保護面の層体による保護方法であって、前記被保護面に対する第1の粘着層を備える第1の保護層体及び前記被保護面に対する第2の粘着層を備える第2の保護層体であって、前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている保護層体を準備する工程と、前記第1の保護層体を前記被保護面に粘着させる工程と、前記被保護面に粘着された前記第1の保護層体の少なくとも一部と前記被保護面と前記第2の保護層体とを粘着させる工程と、を備える、方法が提供される。この層体においては、前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層は、前記被保護面に対して同程度の粘着力を備えることができる。さらに、前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部の前記被保護面における輪郭を囲む孔部若しくは切欠き部を備えることができる。
【0015】
本発明の方法においては、前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部を被覆して粘着される領域を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の保護層体セットは、被保護面に粘着される第1の保護層体と、該第1の保護層体の表面と前記被保護面とにそれぞれ粘着される第2の保護層体と、を備え、前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている。本発明の保護層体セットによれば、被保護面を一部重ね貼りによって保護する場合であっても、第1の保護層体と被保護面とを剥離可能な外力を第2の保護層体との重ね貼り部分に付加すれば、二つの層体を一括して被保護面から剥離できる。また、第1の粘着強度よりも第2の粘着強度が高いため、二つの層体界面において良好な粘着性が確保され、第1の保護層体近傍における汚染も効果的に抑制できる。
【0017】
本発明は、保護層体セットのほか、部分保護用層体、被保護表面の保護方法及び保護体の形態を採ることができる。以下、本発明の各種実施形態について適宜、図を参照しながら詳細に説明する。図1には保護層体セットによる一つの被保護面の保護形態を示す図、
図2には保護層体セットの各層体の断面構造を示す図、図3には保護層体セットによる被保護表面の凸状部の保護例を示す図、図4には保護層体セットによる被保護表面の凹状部の保護例の図を示す。
【0018】
(保護層体セット)
本発明の保護層体セットは、図1に示すように、保護体100の被保護面102に粘着される第1の保護層体10と、第1の保護層体10の表面と被保護面102とにそれぞれ粘着される第2の保護層体20とを備えることができる。本発明の保護層体セットは、例えば、図1に示すように、第1の保護層体10が被保護面の特定の一部又は小面積部分を保護し、第2の保護層体20が第1の保護層体10による保護領域を含みより大面積の被保護面を保護する形態を採ることができる。この場合、第1の保護層体10は、被保護面に粘着される部分12と、第2の保護層体20によりその表面に重ね貼りされる部分14と、を備えることができる。また、第2の保護層体20は、被保護面に粘着される部分22と、第1の保護層体の表面に重ね貼りする部分24と、を備えることができる。
【0019】
図2に示すように、第1の保護層体10及び第2の保護層体20は、いずれも、全体としていわゆるシート状、フィルム状等の形態を備えることができる。通常、第1の保護層体10は、フィルムあるいはパッチと称されることが多く、第2の保護層体20は、保護シートと称されることが多い。また、図2に示すように、第1の保護層体10は、粘着層10a及び基材層10bを備えることができる。また、第2の保護層体20も、同様に、粘着層20a及び基材層20bを備えることができる。粘着層10a、20aを構成する粘着剤は特に限定されないで、従来公知の粘着剤から被保護面の種類や必要とされる粘着力を考慮して適宜選択することができる。また、基材層10b、20bを構成する基材材料も特に限定されないで、従来公知の基材材料から、被保護面の種類や必要とされる耐光性や耐水性等の機能に応じて適宜選択することができる。
【0020】
また、第1の保護層体10は、基材層10bの表面に剥離処理層10cを備えていてもよい。剥離処理層10cは、特に、第1の保護層体10がロール状体で供給される場合に、保護層体10の粘着層10aが下層側の保護層体10の基材層10bへ粘着することを抑制して、第1の保護層体10をロール状体から繰り出しやすくするために好適である。剥離処理層10cは、従来公知の剥離剤を用いて構成することができる。本発明においては、後述するように、この剥離処理層10cの剥離性を剥離処理層10c全体あるいはその一部において調節して、第1の保護層体10と第2の保護層体20とについての粘着強度を調整することができる。剥離処理層10cは、一般的な離型剤を用いて形成することができる。
【0021】
第2の保護層体20も、第1の保護層体10と同様に、基材層20bの表面に剥離処理層20cを備えることができる。剥離処理層20cについても、剥離処理層10cと同様に、剥離処理層10cは、従来公知の剥離剤を用いて構成することができる。
【0022】
第1の保護層体10及び第2の保護層体20は、さらに、他の層を備えることもできる。例えば、基材層を2層以上備えることもできるし、印刷などにより文字や図柄などを有する装飾層、耐候性を向上させるなどの機能性層なども備えることができる。また、粘着層10a、20aに剥離紙などを備えることもできる。この場合、第1の保護層体10等がロール状体で供給されるものであっても、第1の保護層体10の繰り出しだけのために剥離処理層10cを設ける必要はなくなるが、本発明において剥離処理層10cを備える意義を有している。
【0023】
本発明の保護層体セットにおいては、第1の保護層体10の表面と第2の保護層体20との間の第2の粘着強度は、被保護面102と第1の保護層体10との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている。第2の粘着強度を第1の粘着強度よりも大きくするには、第1の保護層体10の剥離処理層10cの剥離性を調整するか、第1の保護層体10の粘着層10aの粘着力と第2の保護層体20の粘着層20aの粘着力とを調整することによることができる。好ましくは、剥離処理層10cの剥離性の調整による。粘着層10a、20aの粘着性による調整の場合、それぞれ被保護面102との間において必要な粘着性があるため、困難である。これに対し、剥離処理層10cによる調整によれば、第1の保護層体10側における調整のみで対応が可能であり、粘着剤の種類の変更及び粘着剤の変更に伴う基材材料の変更等を考慮する必要がないからである。
【0024】
第1の保護層体10の剥離処理層10cにおける剥離性の調整は種々の態様を採ることができる。第2の粘着強度を向上させるために剥離処理層10cの剥離性を低下させる態様としては、例えば、剥離処理層10c全体の剥離剤の塗布量の変更(減少)、剥離剤の変更(剥離性の弱いものへの変更)、剥離処理10c全体における剥離剤の塗布パターンの変更(例えば、塗布領域を縮小)が挙げられる。さらに、第2の粘着強度に係わる第1の保護層体10の重ね貼り部分14においてのみ上記した変更態様を取ることが挙げられる。重ね貼り部分14においてのみ剥離処理層10cの剥離性を低下させることとすれば、保護層体10全体としての剥離性は大きく低下せず、保護層体10がロール状体の場合であっても、保護層体10の繰り出し性を妨げることが回避又は抑制される。
【0025】
さらに、剥離処理層10cの少なくとも重ね貼り部分14において剥離剤の性能を低下させるような処理がなされていてもよいし、剥離剤の一部を除去するような処理がなされていてもよい。さらに、剥離処理層10cの少なくとも重ね貼り部分14において新たな粘着層を付加してもよい。こうすることで、従来の剥離処理層10cの形成工程をなんら変更することはなく、本発明における第1の保護層体10を得ることができる。また、剥離処理層10cを有していない第1の保護層体10においては、少なくとも重ね貼り部分14に別途粘着層を形成することもできる。
【0026】
新たな粘着層を形成した場合には、被保護面102への第1の保護層体10の貼着作業性等を考慮すると、粘着層に対して剥離紙などを備えるようにしてもよい。
【0027】
第1の保護層体10と第2の保護層体については、上記した粘着強度差を発現するよう構成されていることから、剥離処理層10c、20c、粘着層10a、20a等について種々の態様を採ることができる。すなわち、第2の保護層体20は、その表面には、第1の保護層体10の剥離処理層10cよりも剥離性に優れる剥離処理層20cを備えることができる。第2の保護層体20については、なんら、剥離性が問われないからである。
【0028】
また、第1の保護層体10と第2の保護層体20の被保護面102に対する粘着強度は同程度とすることができる。これら粘着強度が同程度であれば、第2の保護層体20を剥離するのに伴って一層容易に第1の保護層体10も一体的に剥離することができる。また、第1の保護層体10と被保護面との間の粘着強度(第1の粘着強度)が第2の保護層体20と被保護面との間の粘着強度(第3の粘着強度ともいう。)よりも小さくてもよい。こうすることで一層一体的な剥離が容易になるからである。また、第2の保護層体20の貼りなおし等を考慮すると第1の粘着強度は、第3の粘着強度よりも大きくてもよい。
【0029】
なお、こうした各種の粘着強度は、JIS K 6854-2:1999 接着剤−はく離接着強さ
試験方法−第2部:180°はく離、具体的にはテンシロン引張り試験機によって測定することができる。
【0030】
一般に、自動車のボンネットの塗膜などの被保護面に対するこれらの保護層体10、20の粘着強度は、2.0N/25mm以上7.0/25mm以下に設定されていることが多く、好ましくは、3.0N/25mm以上6.0N/25mm以下である。この範囲であると貼付け時の作業性や使用後の剥がし作業性の点から良好であるからである。第1の粘着強度が、こうした範囲にある場合、第2の粘着強度はこれと同等以上の粘着強度とすることができる。好ましくは、4.0N/25mm以上6.0N/25mm以下である。この範囲であるとフィルム使用時の剥れや雨水などの浸入を効果的に予防できるからである。
【0031】
また、第2の粘着強度は、第1の粘着強度よりも大きいことが好ましい。こうした粘着強度の差があれば、容易に一体的に剥離させることができる。好ましくは、110%以上であり、さらに好ましくは130%以上である。また、上限は特に限定しないが、200%以下であることが好ましい。貼付け作業時にフィルムを貼り直す際に第1の保護層体10と第2の保護層体20が貼りついてしまい、剥がせなくなるからである。
【0032】
以上のことから、第1の保護層体10は、その粘着層10aの被保護面102に対する第1の粘着強度を2.0N/25mm以上7.0N/25mm以下とすることが好ましく、より好ましくは3.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であり、剥離処理層10cの全体あるいは重ね貼り部分14における第2の保護層体20の粘着層20aとの第2の粘着強度を4.0N/25mm以上6.0N/25mm以下とすることが好ましい。また、第2の保護層体20は、その粘着層20aの被保護面102に対する第1の粘着強度を2.0N/25mm以上7.0N/25mm以下とすることが好ましく、より好ましくは3.0N/25mm以上6.0N/25mm以下である。こうした第1の保護層体10及び第2の保護層体20は、それぞれ本発明の保護層体セットに好適な保護層体である。
【0033】
こうした保護層体セットにおいては、第1の保護層体10及び第2の保護層体20は各種の形態を採ることができる。例えば、図3に示すように、第1の保護層体10は、被保護面102にある凸状部や凹状部の被保護面102における輪郭を包囲する孔部16や切欠き部18とこれらの周囲において被保護面102に粘着する重ね貼り部分14とを備えることができる。なお、図3においては、一例として凸状部を有する被保護面102に切欠き部18を備える第1の保護層体10を示している。こうした孔部16や切欠き部18を備えることで、凸状部や凹状部を露出させておくことができる。孔部16は上記輪郭に沿うこともできるし、円形、正方形、長方形状等など適宜選択することができる。また、切欠き部18の形状は、少なくとも一部において第1の保護層体10が存在しないで開放された開口部位18aを備える以外は、孔部16と同様任意である。本発明においては、第1の保護層体10において、凸状部等を露出させる場合には、孔部16よりも切欠き部18を備えることが好ましい。特に、切欠き部18の開口部位18aが第2の保護層体20が剥離進行方向に開放されているようにすると、第1の保護層体10を確実に一体的に剥離できる。
【0034】
こうした第1の保護層体10を備えるセットにおいては、第2の保護層体20は、凸状部等を露出させる孔部26又は切欠き部28を備えるとともに、第1の保護層体10の孔部16又は切欠き部18の周囲の重ね貼り部分14に粘着する重ね貼り部分24を備えることができる。こうすることで、露出させておきたい凸状部等の周囲を、重ね貼りを利用して適切に保護するほか、保護層体の剥離時も簡易にかつ被保護面102を傷付けることなく被保護面102を露出させることができる。なお、こうしたセットにおいて、第2の保護層体20は、孔部26又は切欠き部28を備えていなくてもよい。第2の保護層体20を貼着するときに、別途切断加工してもよい。また、第2の保護層体は、孔部26又は切欠き部28を容易に形成可能な脆弱性部を備えていてもよい。脆弱性部は、孔部26又は切欠き部28の輪郭に沿って断続的に微小な孔部を有するミシン目などであってもよいし、前記輪郭に沿った凹状部であってもよい。
【0035】
また、第1の保護層体10は、図4に示すように、被保護面102の凸状部や凹状部を被覆して粘着される領域と凸状部等の周囲を被覆して粘着される領域(重ね貼り部分14)を備えることもできる。こうすることで、凸状部や凹状部であっても当該部分及びその周囲の被保護面102を適切に保護することができる。なお、図4においては、一例として凹状部を有する被保護面102への適用例を示している。こうした第1の保護層体10を備えるセットにおいては、第2の保護層体20は、被保護面102の凸状部や凹状部に対応する孔部26や切欠き部28を備えるとともに、第1の保護層体10の重ね貼り部分14に粘着する重ね貼り部分24を備えることができる。こうすることで、被覆しにくい凸状部等を、重ね貼りを利用して適切に保護するほか、保護層体の剥離時も簡易にかつ被保護面102を傷付けることなく被保護面102を露出させることができる。なお、こうしたセットにおいて、第2の保護層体20は、孔部26又は切欠き部28を備えていなくてもよい。第2の保護層体20を貼着するときに、別途切断加工してもよい。また、第2の保護層体は、孔部26又は切欠き部28を容易に形成可能な脆弱性部を備えていてもよい。脆弱性部は、孔部26又は切欠き部28の輪郭に沿って断続的に微小な孔部を有するミシン目などであってもよいし、前記輪郭に沿った凹状部であってもよい。
【0036】
以上説明した本発明の保護層体セットが保護する被保護表面は、平面状であってもよく、また、段差状あるいは湾曲状など各種形態の凹状部や凸状部を部分的にあるいは全体的に備えるものであってもよい。また、第1の保護層体10が保護する領域は、被保護表面102の任意の箇所であり、周囲と形状的には差がない領域(表面組成が異なるなど)であってもよいし、凹状部や凸状部及びその周囲であってもよい。また、第2の保護層体20が保護する領域は、第1の保護層体10が保護する領域を含んだより大面積の領域であることが通常である。
【0037】
こうした被保護面102を備える保護体100は、例えば、自動車等車両の塗膜面であり、具体的には、ボンネット、天井部、ドアパネル等である。ボンネットは、ウインドウォッシャーノズルなどの凸状部を備えるため、当該部分は第1の保護層体10で保護することが好ましい。また、保護体100としては、建造物、船舶、列車、家電、家具、事務機器、構造部材などが挙げられる。
【0038】
以上説明した本発明の保護層体セットによれば、被保護面102の任意の箇所をその形状に係わらず、重ね貼りを利用して汚染等から適切に保護することができる。また、剥離作業も、第2の保護層体20を剥離するだけで、第1の保護層体10が一体的に剥離されるため、作業自体もまた後処理も容易に行うことができるようになっている。
【0039】
(部分保護用層体)
本発明によれば、本発明の保護層体セットにおける第1の保護層体10が被保護面102の部分保護用層体として提供される。以下、第1の保護層体10は、部分保護用層体に一致するため、同一の部材番号を用いて説明する。本発明の部分保護用層体10は、また、被保護面102に対する粘着強度よりも表面に積層して粘着される保護用層体(本発明の保護層体セットにおける第2の保護層体20に対応)に対する粘着強度が大きくなるように構成されている。ここで、部分保護用層体10は、被保護面102に対する粘着強度が、その粘着層10aの被保護面102に対する粘着強度2.0N/25mm以上7.0/25mm以下とすることが好ましく、より好ましくは3.0N/25mm以上6.0N/25mm以下である。また、剥離処理層10cの全体あるいは重ね貼り部分14における保護用層体20の粘着層20aとの第2の粘着強度を4.0N/25mm以上6.0N/25mm以下とすることが好ましい。
【0040】
本発明の部分保護用層体10は、また、その表面において異なる剥離性を有する剥離処理層10cを備えることができる。既に説明したように、部分保護用層体10の重ね貼り部分14においてのみ剥離性が低下していればよいため、重ね貼り部分14に対応する箇所、例えば、部分保護用層体10の周縁部分において剥離性が低下していればよい。具体的には、当該部分14のみ剥離性がないかあるいは他よりも低い、剥離処理層10cのパターン密度が低い、別途粘着剤層が形成されている等の態様が挙げられる。
【0041】
このような部分保護用層体10は、表面に他の保護層体が重ね貼りされたときには、従来の部分保護用層体に比較して粘着強度が向上されるようになっているため、一体的に剥離が可能な部分保護用層体として利用することができる。
【0042】
(保護体)
本発明によれば、本発明の保護層体セットによって保護された被保護表面102を備える保護体100が提供される。この保護体100は、既に説明したように各種の形態を採ることができるが、例えば、ボンネット等が保護層体セットで保護された自動車等の車両が挙げられる。
【0043】
(保護方法)
本発明の保護方法は、被保護面102に対する第1の粘着層10aを備える第1の保護層体10及び被保護面102に対する第2の粘着層20aを備える第2の保護層体20であって、前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との粘着強度との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている各層体10,20を準備する工程を備えている。この準備工程は、上記した第1の保護層体10と第2の保護層体20とを製造するかあるいは商業的に入手することで実現できる。なお、保護層体10、20は、従来公知の方法で製造することができる。
【0044】
本発明の保護方法は、第1の保護層体10を被保護面102に粘着させる第1の貼着工程を備えている。この第1の貼着工程は、第1の保護層体10を被保護面102の凸状部等の箇所に粘着させる。凸状部等に対応する第1の保護層体10の位置合わせを容易化するには、第1の保護層体10の表面に被保護面102の凸状部等に対応したマーキングが付与されていてもよい。マーキングは、その場において付与してもよいし、予め第1の保護層体10に印刷等により付与されていてもよい。
【0045】
本発明の保護法方は、被保護面102に粘着された第1の保護層体10の少なくとも一部(重ね貼り部分14)と被保護面102とに第2の保護層体20を粘着させる第2の貼着工程を備えている。この工程により、被保護面102を第1の保護層体10と第1の保護層体20との重ね貼りによって保護することができる。
【0046】
本保護方法によれば、簡易に被保護面102の特定箇所をその形状に係わらず適切に保護することができる。また、被保護面102を最終的に露出させる際に、層体の剥離作業を行うにあたっても、大面積を保護する上層側の第2の保護層体20を剥離することで、一体的に第1の保護層体10を剥離できる。このため、剥離作業を容易にかつ被保護面102を傷つけることなく実施することができる。
【0047】
なお、上記説明においては、予め粘着強度が調整された第1の保護層体10と第2の保護層体20とを用いたが、こうした保護層体セットを必ずしも用いる必要はない。例えば、第1の貼着工程に先立って、あるいは第1の貼着工程と第2の貼着工程に先立って、第1の保護層体の重ね貼り部分に対してその部分の剥離性を低下させるか粘着性を向上させる処理をその場で行うことで、上記保護方法と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
次に、本発明の保護層体セットの他の保護形態について説明する。本実施形態の保護層体セットは、図5に示すように、第1の保護層体10が同時に第2の保護層体20となったり、第2の保護層体20が同時に第1の保護層体10となったりする態様で被保護面102を保護することができる。第1の保護層体10は、他の保護層体の表面に重ね貼りする部分24を備えることができ、この点において第2の保護層体20である。また、第2の保護層体20は、他の保護層体により重ね貼りされる部分14を備えることができ、この点において第1の保護層体10であるといえる。
【0049】
こうした保護形態によれば、被保護面102において複数の特定箇所を第1の保護層体10で保護する一方、これらを含む大面積を第2の保護層体20で保護することができる。あるいは、単に、大面積を一括して剥離可能な複数の保護層体で保護するためにこの保護方法を用いることができる。
【0050】
以上、本発明を実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に必ずしも拘束されない。例えば、上記説明では、第1の保護層体は、小面積部分を保護するものとして説明したが、大面積を保護するものであってもよいし、第2の保護層体よりも大面積を保護するものであってもよい。また、保護層体セットにおいては、2種類の保護層体を含むものとしては、こうした関係にある保護層体をさらに備えていてもよい。保護層体セットは、3個以上の保護層体を含むこともできる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
本実施例では、第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムを準備した。第1の保護フィルムは、全体の厚みが10μmであり、ゴム系の粘着層と、ポリオレフィン系フィルム製の基材層と非シリコーン系の剥離処理層を備えていた。第2の保護フィルムは、全体の厚みが40μmであり、第1の保護層体と同様にゴム系の粘着層と、ポリオレフィン系フィルム製の基材層と非シリコーン系の剥離処理層を備えていた。第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムにおいてはいずれも剥離処理層は1μmの塗工厚みとしたが、第1の保護フィルムにおいては、塗工用組成物中における剥離剤の含有量を第2の保護フィルムの1/10とした。
【0053】
次に、これら2種類の保護フィルムからなるセットについて、それぞれ25mm×150mm、に切断加工して試験片として、室温(20℃〜25℃)及び湿度60%〜65%に長時間放置して、以下の表に示す組み合わせにおいて粘着強度試験を行った。また、対照として、2つの第2の保護フィルムにセットして同様の組み合わせで粘着強度試験を行った。なお、試験は、JIS K 6854-2:1999 接着剤−はく離接着強さ
試験方法−第2部:180°はく離、具体的にはテンシロン引張り試験機に基づいて、操作条件は、具体的にはテンシロン引張り試験機にて引張り速度300mm/minにて行った。また、試験片は、いずれも塗装鋼鈑に対して粘着させた。結果を表1及び図6に示す。
【表1】

【0054】
図6に示すように、実施例のセットにおいて、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムとの粘着強度(第2の粘着強度)が、第1の保護フィルム及び第2の保護フィルムがそれぞれ被保護面に粘着する強度(第1の粘着強度)よりも高かった。これに対し、対照例では、第2の保護フィルムと被保護面との粘着強度(第2の粘着強度)が、第2の保護フィルム同士の粘着強度よりも高かった(表1参照)。
【0055】
また、実施例のセットにおいて、第1の保護フィルム50mm×50mmおよび第2の保護フィルム300mm×300mmにカットして貼り付けた後に剥離試験を行ったところ、第2の保護フィルムの端を手でつまんで剥離すると、第1の保護フィルムを同時に剥離できたが、対照例のセットでは、第2の保護フィルムを剥離すると第2の保護フィルムのみが剥離され、第1の保護フィルムは被保護面に残存した。
【0056】
以上のことから、重ね貼りする2種類の保護フィルムにおいて下層側の剥離処理層の剥離性を調節するだけで容易に一体的に剥離できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の保護層体セットによる一つの被保護面の保護形態を示す図。
【図2】本発明の保護層体セットの各層体の断面構造を示す図。
【図3】本発明の保護層体セットによる被保護表面の凸状部近傍の保護例を示す図。図3(a)は、各保護層体の断面構造を示し、図3(b)は、第1の保護層体の平面図を示し、図3(c)は、保護体の断面構造を示す。
【図4】本発明の保護層体セットによる被保護表面の凹状部近傍の保護例を示す図。図4(a)は、各保護層体の断面構造を示し、図4(b)は、第1の保護層体の平面図を示し、図4(c)は、保護体の断面構造を示す。
【図5】本発明の保護層体セットによる他の一つの被保護面の保護形態を示す図。
【図6】本実施例における粘着強度試験の結果を示す図。
【符号の説明】
【0058】
10 第1の保護層体、10a、粘着層、10b 基材層、10c 剥離処理層、12 粘着部分、14、重ね貼り部分、16 孔部、18 切欠き部、18a 開口部位、20 第2の保護層体、20a、粘着層、20b 基材層、20c 剥離処理層、22 粘着部分、24 重ね貼り部分、26 孔部、28 切欠き部、100 保護体、102 被保護面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層体セットであって、
被保護面に粘着される第1の保護層体と、
該第1の保護層体の表面と前記被保護面とにそれぞれ粘着される第2の保護層体と、
を備え、
前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている、セット。
【請求項2】
前記第1の保護層体は、その表面の少なくとも一部に第1の剥離処理層を備える、請求項1に記載の保護層体セット。
【請求項3】
前記第1の保護層体の、前記第2の保護層体により粘着される部分においてはその周囲よりも剥離性が低下されているか粘着強度が向上されている、請求項1又は2に記載の保護層体セット。
【請求項4】
前記第1の保護層体と前記第2の保護層体との前記被保護面に対する粘着強度は同程度である、請求項1〜3のいずれかに記載の保護層体セット。
【請求項5】
前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部の前記被保護面における輪郭を包囲する孔部若しくは切欠き部を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の保護層体セット。
【請求項6】
前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えている、請求項5に記載の保護層体セット。
【請求項7】
前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部を被覆して粘着される領域を備える、請求項1〜4のいずれかに記載の保護層体セット。
【請求項8】
前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えている、請求項7に記載の保護層体セット。
【請求項9】
前記第2の保護層体は、前記孔部又は切欠き部の周囲を包囲する孔部又は切欠き部を形成可能な脆弱性部を備えている、請求項8に記載の保護層体セット。
【請求項10】
車両の塗膜面の保護用である、請求項1〜9のいずれかに記載の保護層体セット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の第1の保護層体用である、被保護面の部分保護用層体。
【請求項12】
被保護面の部分保護用層体であって、
被保護面に対する粘着強度よりも表面に積層して粘着される保護用層体に対する粘着強度が大きくなるように構成されている、層体。
【請求項13】
被保護面に対する粘着強度が2.0N/25mm以上7.0N/25mm以下である、請求項11又は12に記載の部分保護用層体。
【請求項14】
被保護面の層体による保護方法であって、
前記被保護面に対する第1の粘着層を備える第1の保護層体及び前記被保護面に対する第2の粘着層を備える第2の保護層体であって、前記第1の保護層体の表面と前記第2の保護層体との間の第2の粘着強度は、前記被保護面と第1の保護層体との間の第1の粘着強度よりも大きくなるよう構成されている保護層体を準備する工程と、
前記第1の保護層体を前記被保護面に粘着させる工程と、
前記被保護面に粘着された前記第1の保護層体の少なくとも一部と前記被保護面と前記第2の保護層体とを粘着させる工程と、
を備える、方法。
【請求項15】
前記第1の粘着層及び前記第2の粘着層は、前記被保護面に対して同程度の粘着力を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部の前記被保護面における輪郭を囲む孔部若しくは切欠き部を備える、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の保護層体は、前記被保護面の凸状部及び/又は前記凹状部を被覆して粘着される領域を備える、請求項14又は15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100396(P2008−100396A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283387(P2006−283387)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】