説明

部分放電検出装置

【課題】ガス絶縁開閉装置への取り付けが容易で、信号検出用ケーブル等に外力が働いても、部分放電検出装置が脱落する恐れがなく、長期間にわたり安定して信号を伝送できる部分放電検出装置を提供する。
【解決手段】金属容器1、2のフランジ1A、2A間は、絶縁スペーサ3を介在させて複数のスタッドボルト4により連結する。少なくとも前記絶縁スペーサ3の外周面に面アンテナ11と絶縁カバー12からなるアンテナ本体10を取り付けている。アンテナ本体10は、その上面にL字型の支持板13を固着し、支持板13を取り付け板15及び連結手段16、或いは直接スタッドボルト4に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分放電検出装置に係り、特にガス絶縁電気機器等の密閉金属容器内で発生する部分放電を検出し、電気機器の絶縁診断に使用する部分放電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、密閉した金属容器の内部に開閉部や通電導体等の機器本体を収容し、絶縁ガスを封入して構成するガス絶縁電気機器であるガス絶縁開閉装置(以下「GIS」と略称する。)では、金属容器内で発生した部分放電を、部分放電検出装置で検出することにより、GISの絶縁状態の判定を行っている。
【0003】
GISに取り付ける部分放電検出装置の場合、例えば導電性の薄板を用いた面アンテナを可撓性樹脂の絶縁シートのカバーで包んで形成した長方形のアンテナ本体を、少なくとも通電導体を絶縁支持する絶縁スペーサの外周面に取り付け、このアンテナ本体に信号検出用ケーブルを介して検出器を接続して使用する(特許文献1参照)。この部分放電検出装置は、絶縁スペーサ部分を介してアンテナ本体が、部分放電に起因する電波信号を受信し、検出器によって異常の判定を行っている。
【0004】
上記特許文献1の部分放電検出装置は、可撓性を有するアンテナ本体を用いており、これにより絶縁スペーサの外周面の曲率が異なったとしても、アンテナ本体を絶縁スペーサの外面に容易に取り付けることが可能なようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−51917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載した部分放電検出装置では、GISに取り付けて長期間にわたって部分放電の監視をする場合、信号検出用ケーブルに何らかの外力が作用すると、部分放電検出装置が絶縁スペーサの外周面より脱落する恐れがある。また、アンテナ本体と信号検出用ケーブルとの接続部分が、外力により断線等の問題が発生する恐れがあった。
【0007】
このため、GIS用の部分放電検出装置は、絶縁スペーサに設置された状態にあるときに、信号検出用ケーブル等に外力が働いても、部分放電検出装置が脱落することがなく、信号伝送系に異常を生じにくくし、長期間にわたり安定して信号を伝送できる構造とすることが求められている。
【0008】
また、部分放電検出装置をGISに取り付ける際も、GIS側に特別な加工をする必要がなくて、取り付けのための追加作業も、可能な限りなくすことが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、GISへの取り付けが容易で、信号検出用ケーブル等に外力が働いても、部分放電検出装置が脱落する恐れがなく、長期間にわたり安定して信号を伝送できる部分放電検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の部分放電検出装置は、金属容器のフランジ間に、絶縁スペーサを介在させて複数のスタッドボルトにより連結し、少なくとも前記絶縁スペーサの外周面に面アンテナと絶縁カバーからなるアンテナ本体を取り付ける際に、前記アンテナ本体の上面にL字型の支持板を固着すると共に、L字型の自由端を上方に立ち上げて配置し、前記支持板のL字型の自由端とスタッドボルト間に、長穴を有する取り付け板を介在させて固定して構成したことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の部分放電検出装置は、金属容器のフランジ間に、絶縁スペーサを介在させて複数のスタッドボルトにより連結し、少なくとも前記絶縁スペーサの外周面に面アンテナと絶縁カバーからなるアンテナ本体を取り付ける際に、前記アンテナ本体の上面にL字型の支持板を固着すると共に、L字型の自由端をフランジの面側に伸ばして配置し、前記支持板のL字型の自由端はスタッドボルトにて固定して構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の如く部分放電検出装置を構成すれば、GISへの部分放電検出装置の取り付けを容易に行うことができるし、信号伝送ケーブルに外力が作用したとしても放電検出装置が脱落する恐れがなくなる。しかも、部分放電検出装置を用いて、長期にわたって安定した信号を取り出すことができるため、信頼性を向上できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の部分放電検出装置は、金属容器のフランジ間に、絶縁スペーサを介在させて複数のスタッドボルトにより連結し、少なくとも絶縁スペーサの外周面に、面アンテナと絶縁カバーからなるアンテナ本体を取り付けている。アンテナ本体は、その上面にL字型の支持板を固着し、この支持板をスタッドボルトに固定している。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の部分放電検出装置を、図1から図5を用いて説明する。図1及び図2は、金属容器1、2のフランジ1A、2A間に絶縁スペーサ3介在させて、複数のスタッドボルト4にて連結する際に、部分放電検出装置として用いるアンテナ本体10を、絶縁スペーサ3の外周面や、更に絶縁スペーサ3に接するフランジ1A、2Aの外周面を含めて取り付けた状態を示している。
【0015】
なお、図1及び図2に示すアンテナ本体10は、絶縁スペーサ3の幅寸法より大きいため、フランジ1A、2Aの外周面にまで伸びている。しかし、部分放電検出装置はアンテナ本体10が絶縁スペーサ3を介して金属容器内で発生した部分放電を検出するので、少なくとも絶縁スペーサ3の外周面にアンテナ本体10を取り付けてあれば十分である。
【0016】
部分放電検出装置の主要部品であるアンテナ本体10は、図3に示す如く導電性の面アンテナ11を、可撓性の樹脂フイルムからなる絶縁カバー12で被覆して形成される。このアンテナ本体10は、その上面にL字型の支持板13が接着剤で固着され、支持板13の上面にコネクタ14をネジ止めしている。
【0017】
そして、コネクタ14及び同心の接続ピン14Aは、面アンテナ11間と貫通穴13Bを通す接続線17、17Aにより電気的に接続しており、検出器(図示せず)側と信号伝送用ケーブル(図示せず)によって接続可能な構造としている。
【0018】
図1及び図2の例では、支持板13はアンテナ本体10の長手方向の略中央部に配置し、しかもアンテナ本体10の長手方向に直交するように取り付け、しかも支持板13の自由端は直角に曲げられて上方に立ち上げられている。
【0019】
上方に立ち上げられた支持板13の自由端13Aを、ボルト及びナット等の着脱自在な連結手段16により、取り付け板15に固定するようにしている。取り付け板15は、GISの金属容器1、2のフランジ1A、2A間を連結するスタッドボルト4を活用し、フランジ2Aに固定している。
【0020】
アンテナ本体10を取り付ける際には、図4及び図5に示すように絶縁スペーサ3等の円弧状の外周面に取り付けることになる。このことから、アンテナ本体10の下面に、例えば両面接着シートを介在させて、フランジ1A、2B及びスペーサ3の外周面にできる限り隙間が生じないように張り付ける。その後、アンテナ本体10の上面に固着した支持板13を、スタッドボルト4に固着しておいた取り付け板15に、連結手段16により着脱自在に固着する。
【0021】
取り付け板15は、寸法の異なる絶縁スペーサ3の外周面にアンテナ本体10を取り付け、支持板13でフランジ1A部分に固定するためのものである。このため、図5に示す如く取り付け板15に長穴15Aが形成しておけば、支持板13は絶縁スペーサ3の半径方向に取り付け位置の調整に利用することができる。
【0022】
GISでは、金属容器1、2の外径は、主回路の電圧レベルに応じて大きくなり、絶縁スペーサ3の外径もそれに伴い大きくなる。しかし、アンテナ本体10は可撓性を有するので、絶縁スペーサ3の外周の曲率が異なったとしても、隙間を生じることなくアンテナ本体10を接着することができる。
【0023】
そして、GISの少なくとも絶縁スペーサ3の外面に固着した状態では、信号伝送ケーブルに外力が働いても、コネクタ14が支持板13に機械的に強固に取り付けられている。このため、アンテナ本体10が絶縁スペーサ3から脱落することはなく、また、信号伝達する接続線17、17Aに外力が作用することがないので、断線等の問題が生じることがなくなる。更に取り付け板15は、フランジ1A、1B間を締め付けるスタッドボルト4を利用して固定することができるので、アンテナ本体10を取り付けるために特別な加工を必要とせず、作業性を向上することができる。
【実施例2】
【0024】
図6に示す本発明の他の例は、上記した図2と異なったL字型の支持板13の配置としたもので、他の部分は同一構成である。図6の支持板13は、L字型の部分の自由端を、フランジ2Aの面に伸ばして配置し、この自由端部分をスタッドボルト4で、フランジ1Bの面に直接固定することで、アンテナ本体10を絶縁スペーサ3の外周面に直接固定している。
【0025】
支持板13の自由端を直接フランジ2Aの面に固定する場合、L字型の自由端に取り付け調整用の長穴を形成して使用する。この場合には、取り付け板15や連結手段16を用いる必要もなく、支持板13をスタッドボルト4により、フランジ2Aの面に容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例である部分放電検出装置を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A線の概略縦断面図である。
【図3】図2のB部の詳細図である。
【図4】図1を左側から見た側面図である。
【図5】図1を右側から見た側面図である。
【図6】本発明の他の一実施例である部分放電検出装置を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1、2…金属容器、1A、2A…フランジ、3…絶縁スペーサ、4…スタッドボルト、10…アンテナ本体、11…面アンテナ、12…絶縁カバー、13…支持板、14…コネクタ、15…取り付け板、16…連結手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属容器のフランジ間に、絶縁スペーサを介在させて複数のスタッドボルトにより連結し、少なくとも前記絶縁スペーサの外周面に面アンテナと絶縁カバーからなるアンテナ本体を取り付ける部分放電検出装置において、前記アンテナ本体の上面にL字型の支持板を固着すると共に、L字型の自由端を上方に立ち上げて配置し、前記支持板のL字型の自由端とスタッドボルト間に、長穴を有する取り付け板を介在させて固定して構成したことを特徴とする部分放電検出装置。
【請求項2】
金属容器のフランジ間に、絶縁スペーサを介在させて複数のスタッドボルトにより連結し、少なくとも前記絶縁スペーサの外周面に面アンテナと絶縁カバーからなるアンテナ本体を取り付ける部分放電検出装置において、前記アンテナ本体の上面にL字型の支持板を固着すると共に、L字型の自由端をフランジの面側に伸ばして配置し、前記支持板のL字型の自由端はスタッドボルトにて固定して構成したことを特徴とする部分放電検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−288035(P2009−288035A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140223(P2008−140223)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】