説明

部分的な新世界ザル結合領域を有するキメラ抗体

本発明は、少なくとも1つの新世界ザルのCDRを有するヒト可変領域を含む、抗原結合部位を含むキメラ抗体ポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変抗体ポリペプチドに関する。より特には、本発明は、少なくとも1つの新世界ザルのCDRを有するヒト可変領域を含む、抗原結合部位を含む抗体ポリペプチドを提供する。特には、本発明はTNF−αを対象とする抗体ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
その名前が示唆するように、腫瘍壊死因子‐α(TNF‐α)は抗腫瘍特性を有する分子として元々記載されたが、この分子は、炎症や自己免疫疾患を介するのに顕著な役割を果たすのを含む、他のプロセスにおいて重要な役割を果たすことが次に発見された。TNF‐αは、炎症状態における重要な炎症反応促進サイトカインであって、例えばリウマチ性関節炎(RA)、クローン病、潰瘍性大腸炎および他の腸疾患、乾癬、毒素ショック、移植片対宿主拒絶反応および多発性硬化症が含まれる。TNF‐αの炎症反応促進作用により組織傷害が生じるが、例えばそれには、血管内皮細胞における凝血促進活性が含まれ(非特許文献1)、好中球やリンパ球の接着を増大させ(非特許文献2)、ならびにマクロファージ、好中球および血管内皮細胞からの血小板活性化因子の放出を刺激する(非特許文献3)。TNF‐αは、メタロプロテアーゼであるTNF‐α変換酵素によって切断される細胞内の尾(tail)を有する26kDの膜貫通前駆タンパク質として合成された後、17kDの可溶性タンパク質として分泌される。この活性体は、2つの異なる細胞表面アクセプターであるp55 TNFR1とp75 TNFR2と相互作用する、17kD単量体のホモ三量体から成る。TNF‐αの細胞表面結合前駆体が、TNF‐αのいくつかの生物学的効果を媒介することが可能であることもまた明らかである。ほとんどの細胞は、リガンドの異なる生物学的機能を媒介するp55およびp75レセプターの両方を発現する。p75レセプターはリンパ球の増殖を引き起こすことに関与しており、p55レセプターはTNFを介した細胞傷害性、アポトーシス、抗ウイルス活性、繊維芽細胞の増殖およびNF‐κβの活性化に関与する(非特許文献4を参照のこと)。TNFレセプターは、膜タンパク質のファミリーの一員であり、膜タンパク質にはNGFレセプター、FAS抗原、CD27、CD30、CD40、O40およびリンホトキシンα/βヘテロ二量体のレセプターが含まれる。ホモ三量体によるレセプターへの結合によりレセプターの凝集が誘導され、p55またはp75のいずれかによる2つもしくは3つの分子の小さな集団が作られる。TNF‐αは主に活性化されたマクロファージおよびTリンパ球によって産生されるが、急性炎症反応の間に好中球、内皮細胞、ケラチノサイトおよび繊維芽細胞によってもまた産生される。TNF‐αは炎症反応促進サイトカインのカスケードの頂点にある(非特許文献5)。このサイトカインは、さらなる炎症反応促進サイトカイン、特にIL−1やIL−6(例えば、非特許文献6を参照のこと)の発現あるいは放出を誘導する。TNF‐αの阻害は、IL−1、IL−6、IL−8およびGM−CSFを含む炎症性サイトカインの産生を阻害する(非特許文献7)。炎症におけるその役割のために、TNF‐αは、炎症性疾患の症状を減じさせるための重要な阻害標的として浮かびあがってきた。疾病の臨床治療のためのTNF‐αの阻害に対するさまざまな手法が追求されており、それには特に、可溶性のTNF‐αレセプターの使用およびTNF‐αに特異的な抗体が含まれる。臨床用途のために承認された市販製品には、例えば、抗体製品であるレミケード(Remicade)(登録商標)(infliximab;Centocor社、Malvern、PA;ヒトIgG1定常領域およびマウス可変領域を有するキメラモノクローナルIgG抗体)、ヒュミラ(Humira)(登録商標)(adalimumabつまりD2E7;アボットラボラトリーズ、特許文献1にて記載される)および可溶性レセプター製品であるエンブレル(Enbrel)(登録商標)(etanercept、可溶性p75 TFNR2 Fc融合タンパク質;Immunex社)が含まれる。炎症性関節炎におけるTNF‐αの役割は、例えば、非特許文献8において論評される。RAでは、TNF‐αは炎症性滑膜の、特に軟骨‐パンヌス接合部で高発現する(非特許文献9−11)。TNF‐αが炎症性サイトカインであるIL−1、IL−6、IL−8およびGM−CSFのレベルを上昇させる事実に加えて、TNF‐αは単独で、関節の炎症および繊維芽細胞様滑膜細胞の増殖を引き起こすことも可能であり(非特許文献12)、コラゲナーゼを誘導することが可能であり、それによって軟骨破壊が引き起こされ(非特許文献13、14)、関節軟骨細胞によってプロテオグリカン合成を阻害することが可能であり(非特許文献15、16)、ならびに破骨細胞形成および骨吸収を刺激することが可能である(非特許文献17、18)。TNF‐αは、骨髄によるCD14+単球の放出の増加を誘導する。このような単球は関節に浸潤してRANK(NF−κβのアクセプター活性化因子)−RANKLシグナル経路を介した炎症性応答を増幅することが可能であり、関節炎症の間、破骨細胞の形成を生じさせる(非特許文献19を概観のこと)。TNF‐αは、IL−8のTNF‐αによる誘導を介して血管透過性を上昇させる急性期タンパク質であり、それにより、感染部位にマクロファージや好中球を呼び寄せる。いったん存在すれば、活性化されたマクロファージはTNF‐αを産生し続け、それによって炎症反応を維持し、増幅させる。可溶性アクセプターコンストラクトであるエタネルセプト(etanercept)によるTNF−αの滴定によって、RAの治療に効果的であるが、クローン病の治療には効果的ではないことが証明されている。対照的に、抗体TNF‐αのアンタゴニストであるinfliximabは、RAとクローン病の両方を治療するのに効果的である。したがって、可溶性TNF‐αの中和のみが、抗TNFベースの治療効果に関わる唯一のメカニズムというわけではない。むしろ、TNF‐αによって誘導される他の炎症促進のシグナルもしくは分子の遮断(blockade)も重要な役割を果たす(非特許文献20)。例えば、infliximabの投与により明らかに接着分子の発現が減少し、その結果、炎症部位への好中球の浸潤が減少する。また、infliximabによる治療により、クローン病でこれまで炎症を起こしていた腸粘膜から炎症性細胞が消える。固有層での活性化されたT細胞のこの消失は、膜結合TNF‐αを有する細胞のアポトーシスによって介され、Fas依存の態様で、カスパーゼ8、9、それから3の活性化による(非特許文献21)。したがって、膜結合もしくはレセプター結合のTNF‐αは、抗TNF‐α治療手法のための重要な標的である。他には、infliximabが、活性化された抹消血液細胞や固有層の細胞に結合し、カスパーゼ3の活性化を介してアポトーシスを誘導することが示されている(非特許文献22を参照のこと)。細胞内では、レセプターに対して三量体TNF‐αが結合することにより、シグナル伝達事象のカスケードが引き起こされ、それには例えばSODD(silecer of death domains)のような阻害分子の置換が含まれ、ならびにアダプター因子であるFADD、TRADD、TRAF2、c‐IAP、RAIDDおよびTRIPに加えてキナーゼRIP1や特定のカスパーゼの結合がある(非特許文献23、24を概観のこと)。集合したシグナル複合体は、NF−κβの活性化およびそれに続く下流遺伝子の活性化を介した細胞の生存経路、あるいはカスパーゼの活性化を介したアポトーシス経路のいずれかを活性化することが可能である。同様な、細胞外の下流サイトカインのカスケードおよび細胞内のシグナル伝達経路が、他の疾患におけるTNF‐αによって誘導され得る。したがって、TNF‐α分子が病変の原因となる他の疾病もしくは疾患に対して、TNF‐αの阻害という治療へのアプローチが提示されている。血管新生は、炎症性滑膜組織の活発な増殖に関して重要な役割を果たす。高度に血管が発達しているRAの滑膜組織は、関節周囲の軟骨および骨組織に進入するので、関節破壊へと到る。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、知られている最も強力な血管新生サイトカインである。VEGFは、最初の転写物の選択的スプライシングによって、いくつもの代替的な形態で存在する、分泌性でヘパリン結合性の、ホモ二量体の糖タンパク質である(非特許文献25)。VEGFは、炎症における重要なプロセスである、血管の漏出を誘導する能力のために、血管透過性因子(VPE)としてもまた知られている。RA患者の滑膜組織におけるVEGFの同定により、RAの病理におけるVEGFの潜在的な役割が明らかにされた(非特許文献26、27)。RAの病理におけるVEGFの役割は、抗VEGF抗体がマウスのコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて投与される、以下の研究により確かなものとされた。これらの研究において、関節におけるVEGFの発現により疾病の誘発が増大し、抗VEGFの抗血清の投与により、関節炎疾患の発達が阻害されて確立した(established)疾患が改善した(非特許文献28、29)。
【0003】
抗体ポリペプチド
抗体はその結合する標的に対して非常に特異的であり、それ自身天然の防御機構由来であるにも関わらず、ヒトの患者における疾病の治療に適用される場合、抗体はいくつもの課題に直面する。通常の抗体は、少なくとも4つのポリペプチド鎖を含む、大きなマルチサブユニットのタンパク分子である。例えば、ヒトIgGは、機能的な抗体を形成するために、ジスルフィド結合された2つの重鎖と2つの軽鎖を有する。標準的なIgGのサイズは約150kDである。相対的に大きなサイズのため、完全抗体(例えば、IgG、IgA、IgMなど)は、例えば組織透過性の問題のために治療的な有用性が制限される。抗原に結合する機能や可溶性を保有する、より小さい抗体フラグメントを同定し作製することに重点的に取り組むのに相当な努力がなされている。抗体の重ポリペプチド鎖および軽ポリペプチド鎖は、抗原との相互作用に直接参加する可変(V)領域、ならびに構造的な支えを提供し、免疫エフェクターと非特異的な抗原相互作用に機能する定常(C)領域を含む。通常の抗体の抗原結合領域は、2つの別々の領域を含む:重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL:VκもしくはVλのいずれかであることが可能)。抗原結合部位はそれ自身、6つのポリペプチドのループによって形成される:3つはVH領域(H1、H2およびH3)より、3つはVL領域(L1、L2およびL3)より。in vivoでは、VHおよびVL領域をコードするV遺伝子の多様な初期レパートリーは、遺伝子断片の組合せの再配置(combinational rearrangement)により作製される。C領域は、軽鎖C領域(CL領域と称される)および重鎖C領域(CH1、CH2およびCH3領域と称される)を含む。天然に存在する抗体における、たくさんの抗原に結合するより小さいフラグメントは、以下のプロテアーゼ消化によって同定されている。例えばこれらには、「Fabフラグメント」(VL−CL−CH1−VH)、「Fab’フラグメント」(重鎖ヒンジ領域を有するFab)および「F(ab’)2フラグメント」(重鎖ヒンジ領域によって連結されるFab’フラグメントの二量体)が含まれる。組換え方法を用いることによってより小さい抗原結合フラグメントでさえ作製することができ、それらは「単鎖Fv」(可変フラグメント)つまり「scFv」と称され、合成ペプチドリンカーによって連結されるVLおよびVHから成る。
【0004】
単一ドメイン抗体
天然に存在する抗体における抗原が結合する部位(例えばヒトやほとんどの他の哺乳動物において)は、一般的に一対のV領域(VL/VH)を含むことが知られている一方で、ラクダ科の動物では、大部分は軽鎖配列を欠いた、完全に機能的で非常に特異的な抗体を発現する。ラクダ科の重鎖抗体は単一の重鎖のホモ二量体として発見されており、それらの定常領域を介して二量体化される。これらのラクダ科の重鎖抗体の可変領域は、VHH領域と称され、VH鎖のフラグメントとして単離された場合、高い特異性で抗原に結合する能力を保持している(非特許文献30、31)。抗原に結合する単一のVH領域もまた同定されており、例えばそれは、免疫したマウスの脾臓由来のゲノムDNAより増幅され、大腸菌で発現しているマウスVH遺伝子のライブラリー由来である(非特許文献32)。Wardらは、単離した単一のVH領域を、「ドメイン抗体(domain antibodies)の代わりに「dAbs」と命名した。用語「dAb」は、本明細書において、特異的に抗原に結合する単一のイムノグロブリン可変領域(VH、VHHまたはVL)のポリペプチドを意味する。「dAb」は他のV領域から独立して抗原に結合する;しかしながら、この用語が本明細書で使用される場合、「dAb」は他のVHもしくはVL領域を有するホモもしくはヘテロの多量体で存在することが可能であり、ここで他の領域はdAbによる抗原結合には必要とされず、すなわち、ここでは、dAbは付加的なVH、VHHまたはVL領域から独立して抗原に結合する。単一のイムノグロブリン可変領域、例えば、VHHは周知の最も小さな抗原結合抗体ユニットである。治療において使用するために、ヒト抗体が好まれ、主には、患者に投与した場合に、免疫反応を引き起こす可能性がないようにするためである。単離されたラクダ科ではないVH領域は、比較的不溶性の傾向があり、しばしばあまり発現されない。ラクダ科のVHHとヒト抗体のVH領域の比較により、ヒトVH領域のVR/VLの接合部分に相当するラクダ科のVHH領域のフレームワーク領域において、いくつかの重要な違いが明らかにされている。発現量および溶解度を改善する試みで、VHH配列により緊密な共通点を有するようにヒトVH3のこれらの残基の変異(特にGly44Glu、Leu45ArgおよびTrp47Gly)が行われ、「ラクダ化された(camelized)」ヒトVH領域が作製されている(非特許文献33)。本明細書で用いられる可変領域のアミノ酸の番号の付け方は、カバットによる番号付け(Kabat numbering)の慣習と一致している(非特許文献34)。
【0005】
特許文献2(Muyldrmans)により、Trp103Argの変異が、ラクダ科ではないVH領域の溶解度を改善することが報告されている。DaviesとRiechmann(非特許文献35)もまた、ラクダ化されたヒトVH領域のファージディスプレイのレパートリーの作製および100−400nMの値域でハプテンに親和性を有して結合するクローンの選択を報告したが、タンパク質抗原に結合するように選択されたクローンは、弱い親和性を有していた。抗体の抗原結合領域は、2つの別々の領域を含む;重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL:VκもしくはVλのいずれかであることが可能)。抗原結合部位はそれ自身、6つのポリペプチドのループによって形成される:3つはVH領域(H1、H2およびH3)より、3つはVL領域(L1、L2およびL3)より。VHおよびVL領域をコードするV遺伝子の多様な初期レパートリーは、遺伝子断片の組合せの再配置(combinational rearrangement)により作製される。VH遺伝子は3つの遺伝子断片である、VH、DおよびJHの組み合わせによって産生される。ヒトでは、ハプロタイプに依存して、約51の機能的なVH断片(非特許文献36)、25の機能的なD断片(非特許文献37)および6つの機能的なJH断片(非特許文献38)が存在する。VH断片が、VH領域(H1およびH2)の第1および第2の抗原が結合するループを形成するポリペプチド鎖の領域をコードする一方で、VH、DおよびJH断片が組み合わさってVH領域(H3)の第3の抗原が結合するループを形成する。VL遺伝子は2つの遺伝子断片である、VLおよびJLのみの組み合わせによって産生される。ヒトでは、ハプロタイプに依存して、約40の機能的なVκ断片(非特許文献39)、31の機能的なVλ断片(非特許文献40、41)、5つの機能的なJκ断片(非特許文献42)および4つの機能的なJλ断片(非特許文献43)が存在する。VL断片が、VL領域(L1およびL2)の第1および第2の抗原が結合するループを形成するポリペプチド鎖の領域をコードする一方で、VLおよびJL断片が組み合わさってVL領域(L3)の第3の抗原が結合するループを形成する。
【0006】
この初期レパートリーから選択される抗体は、少なくとも中程度の親和性を伴うほとんどすべての抗原に結合するために十分な多様性があると信じられている。高親和性の抗体は、再配列される遺伝子の「親和性成熟」によって産生され、親和性成熟では、点突然変異が産生され、結合を改善するのに基づいて免疫システムによって選択される。抗体の構造および配列の解析により、数に限りのある主鎖の立体配座または極限構造を有する、6つの抗原が結合するループ(H1、H2、L1、L2、L3)の5つが示されている(非特許文献44、45)。主鎖の立体配座は、(i)抗原が結合するループの長さ、および(ii)抗原が結合するループおよび抗体構造において特定の重要な位置における、特定の残基、もしくは残基の種類によって決定される。ループの長さおよび重要な残基の解析により、ヒト抗体配列の大部分によってコードされるH1、H2、L1、L2およびL3の主鎖の立体配座を予測することが可能になっている(非特許文献46−48)。(D断片を利用するために、)H3領域は配列、長さおよび構造の観点からはるかに多様であるにも関わらず、ループおよび抗体構造において重要な位置での、長さおよび特定の残基、もしくは残基の種類に依存する短いループの長さに対して、数に限りのある主鎖の立体配座をも形成する(非特許文献49、50)。
【0007】
相補的な対を成すVHおよびVL領域を含む二重特異性抗体は当該技術分野で周知である。これらの二重特異性抗体は2組のVHおよびVLを含まなければならず、それぞれのVH/VLの対が単一の抗原もしくはエピトープに結合する。記載される方法には、ハイブリッドハイブリドーマ(hybrid hybridomas)(非特許文献51)、ミニボディ(minibodies)(非特許文献52)、ダイアボディ(diabodies)(非特許文献53、特許文献3)、キレート組換抗体(chelating recombinant antibodies)(非特許文献54)、biscFV(scFVの二量体)(非特許文献55)、「knobs into holes」型の安定化された抗体(非特許文献56)が関与する。それぞれの場合において、各抗体種は2つの抗原結合部位を含み、それぞれがVHおよびVL領域の相補的な対によって構築される。したがって、各抗体は2つの異なる抗原もしくはエピトープに同時に結合することが可能であり、VHおよびそれの相補的なVL領域によって介される各抗原もしくは各エピトープに結合する。これらの技術のそれぞれが、特定の不利な面をもっている;例えばハイブリッドハイブリドーマの場合には、不活性のVH/VLの対により、二重特異性のIgGの割合が著しく減少され得る。さらに、ほとんどの二重特異性の手法は、異なるVH/VLの対の結合もしくは異なる2つのVH/VLが結合する部位を再形成できるVH鎖とVL鎖の結合に依存する。したがって、集合分子における各抗原もしくは各エピトープに対する結合部位の比をコントロールすることは不可能であり、それゆえに、集合分子の多くが、一つの抗原もしくは一つのエピトープに結合するが、残りは結合しない。いくつかの場合において、サブユニットの接触面で重鎖もしくは軽鎖を設計することが可能であり(Carterら、1997年)、それにより、両方の抗原もしくは両方のエピトープに対する結合部位を有する分子数を向上させることが可能であるが、これにより全ての分子が両方の抗原もしくは両方のエピトープに結合を有することには決してならない。異なる2つの抗体が結合する特異性は、同じ結合部位に取り込まれる可能性はあるが、これらは通常、構造的に相関する抗原もしくはエピトープもしくは広く交差反応する抗体に対応して、2つ以上の特異性を表す。例えば、交差反応性抗体についてよく記載されており、通常は2つの抗原が配列や構造に関係している場合であって、例えばニワトリ卵白リゾチームや七面鳥のリゾチームなどであり(McCaffertyら、特許文献4)、またはフリーのハプテンや担体に共役したハプテンについてである(非特許文献57)。さらなる例には、特許文献5(アボットラボラトリーズ)において、「二重特異性」を有する抗体分子が記載されている。参照された抗体分子は、複数の抗原に対して提示され選択される抗体であり、それらの特異性は1つより多い抗原に及ぶ。特許文献5の抗体におけるそれぞれの相補的なVH/VLの対は、2つ以上の構造的に相関する抗原に対する単一の結合特異性を明確にする;このような相補的な対におけるVHおよびVL領域は、別々の特異性をそれぞれ有してはいない。したがって、これらの抗体は、構造的に相関する2つの抗原を包含する、幅広い単一の特異性を有する。さらに、多反応性(polyreactive)である自然自己抗体について記載されており(非特許文献58)、構造的に相関してはいない、少なくとも2つ(大抵はそれより多い)の異なる抗原もしくはエピトープと反応する。モノクローナル抗体に関するファージディスプレイ技術を用いてのランダムなペプチドのレパートリーの選択により、抗原に結合する部位に適合するペプチド配列の範囲が同定されることがまた示されている。配列の中には、コンセンサス配列に適合して高度に相関しているものがある一方で、非常に異なっていてミモトープ(mimotopes)と呼ばれているものもある(非特許文献59)。結合し相補的であるVHおよびVL領域を含む天然の四鎖(four−chain)抗体が、多様な規模の周知の抗原由来の多くの異なる抗原に対して結合する潜在性を有することは、したがって明らかである。同一の抗体、特に必ずしも構造的に相関していない抗体において2つの任意の抗原に対してどのように結合部位が形成されるかはあまり明らかではない。提案されているプロテイン・エンジニアリング法はこれに関して身を結ぶ可能性がある。例えば、1つの可変領域を介して金属イオンへの、ならびに金属イオンおよび相補的な可変領域との接触を介してハプテン(基質)への結合活性を有する触媒抗体を作製し得ることが提議されている(非特許文献60)。この場合にはしかしながら、基質(第一の抗原)の結合および触媒が、金属イオン(第二の抗原)の結合に必要であることが提案されている。したがって、VH/VLの対に対する結合は、単一構成要素の抗原に関与しているが、複数の構成要素の抗原には関与していない。ラクダ科の抗体重鎖の単一領域由来の二重特異性抗体の作成に関する方法が記載されており、1つの抗原に対する結合接触は1つの可変領域で与えられ、2番目の抗原に対しては2番目の可変領域で与えられる。しかしながら、これらの可変領域は相補的ではない。したがって、1番目の重鎖可変領域は1番目の抗原に対して選択され、2番目の重鎖可変領域は2番目の可変領域に対して選択され、次いで両方の領域が同じ鎖に連結されて二重特異性の抗体フラグメントを生じさせる(非特許文献61)。しかしながら、このラクダ科の重鎖の単一領域は、軽鎖を有さない天然のラクダ科由来であるという点で普通ではなく、実際にこの重鎖の単一領域は相補的なVHおよびVLの対を形成するためにラクダ科の軽鎖と結合することができない。単一の重鎖可変領域についてもまた記載されており、それらは軽鎖と通常連結する天然の抗体由来である(モノクローナル抗体由来もしくは領域のレパートリー由来;特許文献6を参照のこと)。これらの重鎖可変領域は、1つ以上の関連抗原と特異的に相互作用することが示されているが、他の重鎖もしくは軽鎖の可変領域と組合わさって2つ以上の異なる抗原に対する特異性を有するリガンドを形成することはできない。さらに、これらの単一領域は、in vivoの半減期が非常に短いことが示されている。したがって、このような領域は治療的な価値が制限されている。(前記で記載したように)互いに異なる特異性を有する重鎖可変領域を連結させることによって、二重特異性抗体フラグメントを作成することが示唆されている。この手法の欠点は、単離される抗体可変領域が軽鎖と通常相互作用する疎水性の接触面を有するので、溶媒にさらされると、単一領域が疎水性の表面に結合することを可能にする「粘着性(sticky)」になる可能性があるということである。さらに、パートナーの軽鎖の不存在下では、2つ以上の異なる重鎖可変領域の組み合わせおよびそれらの結合は、おそらくはそれらの疎水性の接触面を介して、単離時に結合することが可能であるリガンドの1つもしくは両方に結合することを阻害する可能性がある。さらにこの場合には、重鎖可変領域は相補的な軽鎖可変領域と結合しないであろうし、したがってより不安定で簡単に変性する可能性がある(非特許文献62)。
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【特許文献2】国際公開第03/035694号パンフレット
【特許文献3】国際公開第94/13804号パンフレット
【特許文献4】国際公開第92/01047号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/02773号パンフレット
【特許文献6】欧州特許出願公開第0368684号明細書
【特許文献7】欧州特許第0605442号明細書
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【非特許文献43】Vasicek and Leder,1990,J.Exp.Med.,172:609-620
【非特許文献44】Chothia and Lesk,1987,MoI.Biol.,196:901-917
【非特許文献45】Chothia et al.,1989,Nature.342:877-883
【非特許文献46】Chothia et al.,1992,J.MoI.Biol.,227:799-817
【非特許文献47】Tomlinson et al.,1995,EMBO J.,14:4628-4638
【非特許文献48】Williams et al.,1996,J.MoI.Biol.,264:220-232
【非特許文献49】Martin et al.,1996,J.MoI.Biol,263:800-815
【非特許文献50】Shirai et al.,1996,FEBS Letters,399:1-8
【非特許文献51】Milstein & Cuello,Nature,1983,305:537-40
【非特許文献52】Hu et al.,1996,Cancer Res 30 56:3055-3061
【非特許文献53】Holliger et al.,1993,Proc Natl.Acad.Sci.USA 90,6444-6448
【非特許文献54】CRAbs;Ncri et al.,1995,J.MoJ.Biol.246,367-373
【非特許文献55】Atwell et al.,1996,Mol Immunol.33,1301-1312
【非特許文献56】Carter et al.,1997,Protein Sci.6,781-788
【非特許文献57】Griffiths et at.,1994,EMBO J 13:14 3245- 60
【非特許文献58】Casali & Notkins,1989, Ann.Rev.Immunol.7,515-531
【非特許文献59】Lane & Stephen,1993,Current Opinion in Immunology,5,268-271
【非特許文献60】Barbae et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci USA 90,6385-6389
【非特許文献61】Conrath et aL.,J.Biol.Chem.270,27589-27594
【非特許文献62】Worn & Pluckthun,1998,Biochemistry 37:13120-7
【非特許文献63】Ehrlich PH et al.,1988,Human and primate monoclonal antibodies for in vivo therapy. Clin Chem. 34:9 pg 1681-1688
【非特許文献64】Ehrlich et al.,1987,Hybridoma;6:151-60
【非特許文献65】von Budingen et al,2001,Immunogenetics;53:557-563
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒト/マウスキメラ抗体は、マウスゲノム由来の抗体可変領域の配列がヒトゲノム由来の抗体定常領域の配列と組合さって作成されている。キメラ抗体は、親マウス抗体の結合特異性を示し、そのエフェクター機能はヒト定常領域と関連する。この抗体は宿主細胞で発現されることによって産生され、例えばそれには、チャイニーズハムスター卵巣細胞(OHO)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。
【0009】
このようなキメラ抗体はヒト治療において用いられているが、これらのキメラ抗体に対する抗体はヒト受容者(recipient)によって産生されている。キメラ抗体で治療を続けるのに、このような抗キメラ抗体は弊害をもたらす。
【0010】
ヒトモノクローナル抗体は、in vivoのヒト治療のためにマウスモノクローナル抗体よりも改良されることが期待される。旧世界ザル(アカゲザルやチンパンジー)由来の抗体を用いて行った研究より、これらのヒトでない霊長類の抗体は、ヒト抗体に構造的に類似しているので、ヒトにおいて許容されるであろうと主張されている(非特許文献63)。さらに、ヒト抗体はアカゲザルにおいて免疫原性がないので(非特許文献64)、その逆もまた当てはまり、ヒトにおいてアカゲザルの抗体は免疫原性がないことが見込まれる。これらのモノクローナル抗体は、リンパ球をヒト×マウスへテロ骨髄腫と融合させることによって作製されるハイブリドーマによって分泌される。
【0011】
特許文献7は、ヒト抗原と結合するキメラ抗体を開示する。これらの抗体は、旧世界ザル由来の完全な可変領域およびヒトもしくはチンパンジーの抗体の定常領域を含む。これらのコンストラクト(construct)に対してこの参考文献で示唆される有利な点の一つは、マウスを宿主にして作製した抗体と比べて、ヒトでの免疫原性がより低いヒト抗原に対して、旧世界ザルで抗体を作製できる能力である。
【0012】
新世界ザル(広鼻下目)は、2つの科である、マーモセット科(Callithricidae)とオマキザル科(Cebidae)に一般に分けられる少なくとも53の属を含む。マーモセット科はマーモセットとタマリンから成る。オマキザル科は、リスザル、ティティザル(titi monkey)、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル(capuchin)、ウアカリ(uakaris)、サキ(sakis)、ヨザル(night monkeyもしくはowl monkey)およびホエザルを含む。
【0013】
新世界ザルのように進化的に遠い霊長類は、ヒト抗原に対して産生される抗体を許容するためにヒトと十分に異なっているのみならず、ヒト抗体に類似する抗体を有するためにヒトに十分に類似しているので、このような霊長類由来の抗体がヒト体内に導入される場合には、宿主(host)は抗抗体免疫反応を起こさない。
【0014】
以前の研究により、コモンマーモセット(Callithrix jacchus marmoset)の発現されたイムノグロブリンの重鎖レパートリーが特徴付けされた(非特許文献65)。6つのIGHVサブグループが、ヒトのIGHVに相当するものに高い配列類似性を示すものとして同定された。相補性決定領域(CDRs)を比較した場合には、フレームワーク領域はより保存されていた。コモンマーモセットとヒトIGHV配列の間の類似性の程度は、ヒトでない旧世界ザルとヒトの間のよりも低かった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの新世界ザルのCDRを有するヒト可変領域を含む、抗原結合部位を含むキメラ抗体ポリペプチドを提供する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様にしたがう抗体ポリペプチドを産生する、
(i) ヒト可変領域をコードするアクセプター配列(acceptor sequenc
e)を提供する工程、および
(ii) 可変領域のCDR配列を、新世界ザルのCDR配列であるドナー配列(do
nor sequence)で置換する工程、
を含む方法を提供する。
【0017】
第3の態様において、本発明は、ヒトTNF−αに結合し、イムノグロブリンの重鎖もしくは軽鎖の可変領域を含む、キメラドメイン抗体(dAb)を提供し、前記可変領域は少なくとも1つの新世界ザルのCDRを含む。
【0018】
第4の態様において、本発明は、医薬として許容できる担体もしくは希釈剤とともに、本発明の第1の態様もしくは第3の態様にしたがって、有効量の抗体ポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0019】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの新世界ザルのCDRを有するヒト可変領域を含む、抗原結合部位を含むキメラ抗体ポリペプチドを提供する。
【0020】
第3の態様において、本発明は、ヒトTNF−αに結合し、イムノグロブリンの重鎖もしくは軽鎖の可変領域を含む、キメラドメイン抗体(dAb)を提供し、前記可変領域は少なくとも1つの新世界ザルのCDRを含む。
【0021】
第4の態様において、本発明は、医薬として許容できる担体もしくは希釈剤とともに、本発明の第1の態様もしくは第3の態様にしたがって、有効量の抗体ポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明の実施態様において、ヒト可変領域は、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列、またはヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列と比べてアミノ酸が5つまで異なるものを含むアミノ酸配列を有するヒトフレームワーク領域を少なくとも1つ含む。
【0023】
ヒト可変領域は好ましくは、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列、または前記ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列と比べて合計でアミノ酸が10個まで異なるものを含むアミノ酸配列を有する、4つのヒトフレームワーク領域である、FR1、FR2、FR3およびFR4を含む。
【0024】
好ましくは、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片は、DP47、DP45、DP48およびDPK9からなる群より選択される。
【0025】
新世界ザルのCDRはいずれのCDRであってもよいが、CDR2であることが好ましい。
【0026】
代わりに、新世界ザルのCDRはCDR1またはCDR3である。
【0027】
新世界ザルのCDR配列が新世界ザルの生殖細胞系CDR配列であることもまた好ましい。
【0028】
本発明の抗体ポリペプチドは、好ましくはdAb、scF、Fab、(Fab’)、Fv、ジスルフィド結合されたFv、IgG、およびダイアボディから選択される。
【0029】
本発明の抗体ポリペプチドは、好ましくはTNF−αを対象とする。
【0030】
別の好ましい実施態様において、ヒト可変領域のアミノ酸配列は、SanD I制限酵素部位から距離をおいて配置されるKpn I制限酵素部位を含み、ヒト可変領域の前記CDRはこれらの制限酵素部位の間に存在する。
【0031】
新世界ザルの配列は、プライマー対であるVK1BL(配列番号(SEQ ID)11)/VK1BL35a(配列番号12)またはプライマー対であるVK1BL(配列番号11)/VK1BL35b(配列番号13)を用いてPCRによって、新世界ザルのDNAから得ることが可能であるのがまた好ましい。
【0032】
本発明はまた、ヒトTNF−αに結合するヒトdAbであって、前記CDRの少なくとも1つが新世界ザル由来の対応するCDRで置換されている、ヒトTNF−αに結合するキメラドメイン抗体(dAb)を提供する。
【0033】
本発明はまた、本発明の第1の態様にしたがう抗体ポリペプチドを産生する、
(i) ヒト可変領域をコードするアクセプター配列を提供する工程、および
(ii) 可変領域のCDR配列を、新世界ザルのCDR配列であるドナー配列で置換
する工程、
を含む方法を提供する。
【0034】
工程(ii)において、前記ヒト可変領域の前記CDRを、制限酵素消化を利用し、ドナーCDRをコードするオリゴヌクレオチドをアクセプター配列にアニーリングして前記ドナー新世界ザルのCDRで置換することが好ましい。
【0035】
この方法がさらに、工程(ii)で産生される可変領域を親和性成熟させることを含むことが好ましい。
【0036】
本明細書で用いるとき、用語「新世界ザルのCDR」は、新世界ザルより得られるCDR配列を意味する。この用語は、抗原の結合特性の改善もしくは免疫原性の低下を成し遂げるために用いてよい配列内の1、2もしくは3アミノ酸の変異を網羅する。しかしながら、この用語は、ヒトCDR配列と同一である新世界ザルのCDR配列をもたらす変異を対象とするのには及ばない。
【0037】
本明細書で用いるとき、用語「ヒトフレームワーク領域」は、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列、またはヒト生殖細胞系遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列と比べてアミノ酸が5つまで異なるものを含むアミノ酸配列を有するヒトフレームワーク領域、あるいはヒトより得られるフレームワーク領域を意味する。この用語はまた、このフレームワーク領域のアミノ酸配列の修飾を網羅するので、抗原の結合特性の改善もしくは免疫原性の低下を得ることができ、例えばそれらは、米国特許第4,816,567号明細書、米国特許第5,585,089号明細書および米国特許出願公開第2003/0039649号明細書で開示されており、それらの開示のすべてが参照として本明細書に取り入れられる。修飾を行う場合に、変更される残基の総数は、通常、フレームワーク領域に対して合計で10以下である。
【0038】
好ましい実施態様において、この可変領域は、少なくとも1つのフレームワーク領域がヒト生殖細胞系イムノグロブリン遺伝子によってコードされる対応するフレームワーク領域由来のアミノ酸配列を含む、4つのフレームワーク領域を含む。
【0039】
さらなる好ましい実施態様において、これらの4つのフレームワーク領域は、ヒト生殖細胞系イムノグロブリン遺伝子によってコードされる対応するフレームワーク領域由来のアミノ酸配列を含む。
【0040】
よりさらなる好ましい実施態様において、このヒト生殖細胞系イムノグロブリン遺伝子は、DP47、DP45、DP48およびDPK9からなる群より選択される。
【0041】
用語「領域(domain)」は、本明細書で用いられるとき、タンパク質の残りの部分から独立して三次元構造を保持する折りたたまれたタンパク質の構造を意味する。一般的に、領域(ドメイン)はタンパク質の個々の機能的な特性に関与しており、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残りの部分の機能を失うことなく、ドメインを付加し、除去し、または他のタンパク質に移してよい。
【0042】
イムノグロブリンもしくは抗体の「可変領域」という用語は、本明細書で用いられるとき、技術用語であって、イムノグロブリンもしくは抗体の重鎖もしくは軽鎖の可変領域の配列特異性を含む折りたたまれたポリペプチド領域を含み、抗原に特異的に結合する。
【0043】
用語「イムノグロブリン」は、本明細書で用いられるとき、2つのβシートと、通常は保存されたジスルフィド結合を含む、抗体分子の特性を持つイムノグロブリンを有するぽるペプチドのファミリーを意味する。イムノグロブリンのスーパーファミリーのメンバーは、in vivoでの細胞および非細胞の相互作用の多くの態様に関与しており、それには免疫システムにおける広範な役割(例えば、抗体、T細胞アクセプター分子など)、細胞接着における関与(例えばICAM分子)、および細胞内シグナル(例えば、PDGFレセプターなどのようなレセプター分子)が含まれる。本発明は、結合ドメインを有するすべてのイムノグロブリンスーパーファミリー分子に適用可能である。好ましくは、本発明は抗体ポリペプチドに関する。
【0044】
新世界ザル(広鼻下目)は、2つの科である、マーモセット科とオマキザル科に一般に分けられる少なくとも53の属を含む。マーモセット科はマーモセットとタマリンから成る。オマキザル科は、リスザル、ティティザル(titi monkey)、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル(capuchin)、ウアカリ(uakaris)、サキ(sakis)、ヨザル(night monkeyもしくはowl monkey)およびホエザルを含む。
【0045】
新世界ザルのように進化的に遠い霊長類は、ヒト抗原に対して産生される抗体を許容するためにヒトと十分に異なっているのみならず、ヒト抗体に類似する抗体を有するためにヒトに十分に類似しているので、このような霊長類由来の抗体がヒト体内に導入される場合には、宿主(host)は抗抗体免疫反応を起こさない。
【0046】
以前の研究により、コモンマーモセット(Callithrix jacchus marmoset)の発現されたイムノグロブリンの重鎖レパートリーが特徴付けされた(非特許文献65)。6つのIGHVサブグループが、ヒトのIGHVに相当するものに高い配列類似性を示すものとして同定された。相補性決定領域(CDRs)を比較した場合には、フレームワーク領域はより保存されていた。コモンマーモセットとヒトIGHV配列の間の類似性の程度は、ヒトでない旧世界ザルとヒトの間のよりも低かった。
【0047】
本発明の特定の実施態様において、新世界ザルのCDRはマーモセット科由来である。
【0048】
本発明のさらなる実施態様において、新世界ザルのCDRは、マーモセット、タマリン、リスザル、ティティザル、クモザル、ウーリーモンキー、オマキザル、ウアカリ、サキ、ヨザル(night monkeyもしくはowl monkey)およびホエザルからなる群より選択される。より好ましくは、新世界ザルはマーモセットである。
【0049】
本発明のさらなる実施態様において、少なくとも1つの新世界ザルのCDRが、新世界ザルの生殖細胞系イムノグロブリン遺伝子によってコードされるCDRに実質的に同一である。
【0050】
「抗体」という用語は、本明細書で用いられるとき、2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖がジスルフィド結合によって相互に連結されている、4つのポリペプチド鎖からなるイムノグロブリン分子、あるいは2つの重鎖からなるイムノグロブリン分子を指すものとされる。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(HCVR、つまりV)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインである、CH、CHおよびCHを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR、つまりV)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCを含む。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と名づけられている、超可変性の領域にさらに分けられ、フレームワーク領域(FR)と名づけられている、より保存された領域が散在して組み入れられている。それぞれのVおよびVは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される。
【0051】
「抗体ポリペプチド」という用語は、本明細書で用いられるとき、抗原に結合することができる能力を示すイムノグロブリンの、1つ以上の成分を含むポリペプチドもしくは誘導体を指す。抗体の抗原に結合する機能は、完全長の抗体のフラグメントによって行われることが示されている。「抗体ポリペプチド」という用語によって網羅される結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント、V、V、CおよびC1領域から成る1価のフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメント;(iii)VおよびC1領域から成るFdフラグメント;(iv)抗体の単一アーム(single arm)のVおよびV領域からなるFvフラグメント;(v)単一のV領域、もしくはV領域(van den Beucken et al,2001,J.MoL Biol,310,591-601)から成るdAbフラグメント(Ward et al,1989,Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離した相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域である、VおよびVは別々の遺伝子によってコードされ、組み換え方法によってそれらは連結されることが可能であり、合成リンカーによって1つのタンパク質鎖(protein chain)となることが可能であって、そこではVおよびV領域が対となって、1価の分子を形成する(単鎖Fv(single chain Fv(scFv)として知られる);(例えば、Bird et al, 1988, Science 242:423-426 and Huston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883を参照のこと)。このような単鎖Fvは、抗体の「抗原結合部分」という用語を含んでいるものとされている。単鎖Fvの他の形態およびダイアボディ(diabodies)やトリアボディ(triabodies)のような関連分子もまた含まれる。ダイアボディは2価の抗体であって、VおよびV領域が単一のポリペプチド鎖で発現されているが、あまりにも短くて同じ鎖の2つの領域間で対を作ることができないリンカーを用いることによって、この領域を別の鎖の相補的な領域と対を作るようにさせ、2つの抗原結合部位を作成させる(例えば、Holliger, et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USΛ,90:6444-6448;Poljak, et al.,1994,Structure,2:1121-1123を参照のこと)。
【0052】
したがって本発明の特定の実施態様において、抗体ポリペプチドは、dAb、scFV、Fab、(Fab’)、Fv、ジスルフィド結合されたFv、IgG、およびダイアボディからなる群より選択される。
【0053】
好ましくは、抗体ポリペプチドはさらに、ヒトまたはヒトでない霊長類の定常領域の配列を含む。ヒトでない霊長類の例には、それだけには限定されないが、チンパンジー、オラウータンおよびヒヒ(baboon)が含まれる。
【0054】
定常領域の配列(Fc部分)は、ヒトまたはヒトでない霊長類のイムノグロブリン配列より得るのが好ましい。霊長類の配列は、新世界ザルまたは旧世界ザルの配列であってもよい。好適な旧世界ザルには、チンパンジー、または他のヒト科の類人猿(hominid ape)であって例えばゴリラやチンパンジーが含まれ、それは、系統発生学的にヒトに近いからであり、ヒト定常領域配列と高いホモロジーを有する。ヒトまたは霊長類の定常領域をコードする配列はデータベースから入手可能であり、例えばそれには、The National Centre for Biotechnology Information protein and nucleotide databases、The Kabat Database of Sequences of Proteins of Immunological Interestなどが含まれる。
【0055】
本発明の好ましい実施態様において、抗体ポリペプチドはドメイン抗体(dAb)である。
【0056】
ドメイン抗体(dAb)は、抗体における小さな機能的な結合ユニットであって、抗体の重(V)鎖もしくは軽(V)鎖のいずれかの可変領域に相当する。ドメイン抗体は、約13kDaの分子量を有し、完全抗体の10分の1未満のサイズである。
【0057】
抗体の軽鎖は、κもしくはλの軽鎖のいずれかを指し、重鎖はγ、μ、δ、α、εのいずれかを指す。可変領域によって、抗体にその特異性が与えられる。それぞれの可変領域内が超可変性の領域であって、そうでなければ、フレームワーク領域を意味する、より保存された領域の側面に位置する、相補性決定領域(CDRs)として知られる。それぞれの可変領域内には、3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域が存在する。
【0058】
通常の抗体と対照的に、ドメイン抗体はバクテリア、酵母および哺乳類系でよく発現する。それらの小さなサイズにより、産物1グラムあたりに高いモル数量が可能となり、それによって、用量あたりの有効性(potency)の著しい上昇が提供される。さらに、ドメイン抗体は、ビルディングブロック(building block)として用いることが可能であるので、多重ターゲットのdAbのような治療産物を作成することができ、これらのdAbでは、コンストラクトが2つ以上の治療標的に結合する2つ以上の可変領域を含んでおり、あるいはdAbは肺を標的としたり経口投与であったりする。
【0059】
結合の増加は、抗体もしくはそれらの抗原結合部分に関するΚ(Koff/Kon)の減少によって表わされる。有効性(potency)の増加は、生物学的検定法によって表される。例えば、抗体もしくはそれらの抗原結合部分の有効性を測定するために利用することができるアッセイには、TNFαにより誘導されるL929細胞傷害性中和アッセイ(cytotoxity neutralisation assay)、IL‐12により誘導される、ヒトPHAで活性化される末梢血単核細胞(PBMC)増殖アッセイ、およびマウス脾細胞のRANKLを介した骨芽細胞の分化が含まれる(Stern, 1990,Pro.Natl.Acad.Sci.USA 87:6808-6812; Kong, et al.,1990,Nature 397:315-323; Matthews and Nealc in Lymphokines and Interferons, a Practical Approach, 1987, MJ.Clemens, A.G. Morris and A.J.H. Gearing, cds., IRL Press, p.221)。
【0060】
CDR配列はいくつかの供給源から得てもよく、例えば、The National Centre for Biotechnology Information protein and nucleotide databases(www.ncbi.nlm.nih.gov.)、The Kabat Database of Sequences of Proteins of Immunological Interest(www.kabatdatabase.com)、またはthe IMGT database(www.imgt.cines.fr.)のようなデータベースが挙げられる。代わりに、CDR領域をVおよびV領域のレパートリーから予測することが可能である(例として、Kabat and Wu, 1971, Ann. NY Acad. Sci. 190:382-393 を参照のこと)。CDR配列はゲノムDNAもしくはcDNAであってよい。
【0061】
置換CDRを、可変領域の配列に接合させるたくさんの方法が存在し、このような方法は、当業者に精通している。本発明の好ましい方法は、プライマーに指向された突然変異生成(primer directed mutagenesis)を介して、可変領域におけるCDR2の置換に関与する。この方法は、in vitroでのDNA合成の開始のためのプライマーを提供して、標的領域に対して望ましい変異をコードする合成オリゴヌクレオチドをアニーリングすること、DNAポリメラーゼによってオリゴヌクレオチドを伸長させることによって望ましい突然変異を有する2本鎖DNAを生成させること、ならびに適切な発現ベクター中に配列をクローニングおよびライゲーションさせることから成る。
【0062】
本発明のある実施態様において、CDRが接合される可変領域の配列は、「dAbアクセプター配列(acceptor sequence)」であり、図1で提示される(指定化合物J28;配列番号6)。
【0063】
本明細書で用いられるときの「キメラの(chimeric)」という用語は、抗体ポリペプチドもしくはドメイン抗体が、1種(species)以上の配列を含んでいることを意味する。
【0064】
本発明にしたがう抗ヒトTNF−α dAbは、例として例えば血清や血漿のような、生体サンプルについて、ヒトTNF−αを検出するのに使用することが可能であり、それには慣習的な免疫学的検定、例えば酵素免疫測定法(ELISA)、放射性免疫分析(RIA)または免疫組織化学法が用いられる。本発明にしたがう抗ヒトTNF−α dAbは、検出可能な物質でラベリングされたヒト組み換えTNF−αスタンダードとラベリングされていない抗ヒトTNF−α抗体を用いる競合的な免疫学的検定(competition immunoassay)によって、生体液でアッセイが可能である。
【0065】
本発明にしたがう抗ヒトTNF−α dAbはまた、ヒト以外の種、例えばチンパンジー、マーモセット、アカゲザル、マウス、ブタ由来のTNF−αを検出するために用いてもよい。
【0066】
本発明にしたがう抗ヒトTNF−α dAbはまた、TNF−α活性を阻害するのが望ましい細胞培養の用途に用いてもよい。
【0067】
本発明はまた、ヒト患者において、ヒトTNF−α活性によって特徴づけされる疾患を治療する方法を提供し、患者に本発明の第2の態様にしたがう医薬組成物投与することを含む。
【0068】
ヒトTNF−α活性によって特徴づけされる疾患には、疾患によって苦しんでいる患者のTNF−αの存在によって、疾患の病態生理学、または疾患を悪化させるのに寄与する因子のいずれかに原因があると疑われる、あるいはそういったことが示されている疾患およびその他の疾病が含まれることが意図される。好ましくは、ヒトTNF−α活性によって特徴づけされる疾患は、炎症、炎症性疾病、敗血性ショックを含む敗血症、内毒素性ショック、グラム陰性菌敗血症および毒素性ショック症候群;リウマチ性関節炎、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、通風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎およびネフローゼ症候群を含む、自己免疫疾患;感染による発熱、筋肉痛および感染による2次的な悪液質を含む、感染症;移植片対宿主拒絶反応;腫瘍成長または転移;成人呼吸窮迫症候群、ショック肺、慢性肺炎症、肺サルコイドーシス、肺繊維症、珪肺症を含む、肺疾患;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む、炎症性腸疾患;心疾患;炎症性骨障害、肝炎、凝固障害、やけど、再かん流障害、ケロイド形成および瘢痕組織形成から成る群より選択される。
【0069】
第4の態様では、本発明は、医薬として許容できる担体もしくは希釈剤とともに、本発明の第1の態様にしたがう有効量の抗体ポリペプチドまたは本発明の第3の態様にしたがうキメラドメイン抗体を含む、医薬組成物を提供する。
【0070】
「医薬として許容できる担体」には、任意のあらゆる溶媒、分散媒、被覆物、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、および生理的に適合可能なものなどが含まれる。医薬として許容できる担体の例には、1つ以上の水、食塩水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、さらにはそれらの組み合わせなどが含まれる。多くの場合には、組成物中に等張剤が含まれるのが好ましく、それには例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムがある。医薬として許容できる物質には例えば浸潤剤もしくは少量の補助剤などがあり、少量の補助剤には例えば浸潤剤または乳化剤、防腐剤またはバッファーなどがある。
【0071】
この組成物は多様な形態であってよく、液状、半固形および固形の剤型が含まれ、それは例えば溶液(例として、注射剤や注入剤(infusible solutions))、分散液または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソームおよび坐薬がある。好ましくは、この組成物は、免疫付与のために注射剤の形態である。投与は、静脈投与、皮下投与、腹腔投与、筋肉投与、経皮的な投与、くも膜下投与、および動脈内投与であってよい。
【0072】
治療組成物は通常、製造および保存の条件下において、無菌でかつ安定でなければならない。この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高濃度の薬剤に適している他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射剤は、活性のある化合物(例えば抗体ポリペプチド)を、ろ過滅菌した後に、前記に記載した成分を一つもしくは組み合わせて、適切な溶媒に必要量取り込ませることによって調整され得る。
【0073】
この組成物はまた、無菌の注射剤の調製用に、無菌の粉末として製剤化してもよい。溶液の適当な流動性は、例えば、レシチンおよび/または界面活性剤のような被覆物を用いることによって、維持することが可能である。
【0074】
特定の実施態様において、活性のある化合物は、急激な放出(release)から化合物を保護する担体とともに調製してもよく、例えばそれは、移植、経皮貼付(transdermal patches)、およびマイクロカプセルに入れたデリバリーシステムを含む、放出制御製剤がある。
【0075】
適合可能なポリマーを使用してもよく、それには例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸がある。
【0076】
この組成物は、経口投与用に製剤化してもよい。この実施態様において、抗体ポリペプチドは、硬質もしくは軟質のゼラチンカプセルに入れてよく、固めて錠剤にしてもよく、または直接患者の食事の中に組み入れてもよい。
【0077】
この組成物は、直腸投与用に製剤化してもよい。
【0078】
補助的な活性のある化合物を、この組成物内に組み入れることもまた可能である。抗体ポリペプチドは、1つ以上の追加の治療剤とともに製剤化してもよく、および/または投与してもよく、追加の治療剤には例えば、抗炎症性化合物、可溶性のTNF−αレセプター、またはヒトTNF−αの産生を阻害する化学剤、またはサイトカインもしくは細胞表面分子のような他の標的に結合する抗体がある。代わりに、プロテインA、C、GもしくはLのような可溶性の免疫化学試薬とともに投与してもよい。
【0079】
有効量には、本発明の抗体ポリペプチドの、治療上の有効量または予防上の有効量が含まれてよい。治療上の有効量は、望ましい治療結果を得るために必要な期間および用量での効果的な量を意味する。予防上の有効量は、望ましい予防効果を得るために必要な期間および用量での効果的な量を意味する。
【0080】
好ましい実施態様において、この組成物は哺乳類に投与され、ヒトおよび霊長類が好ましい。
【0081】
本発明の本質がより明らかに理解されるよう、それらの好ましい形態を、以下の非限定例に、参照とともにこれより記載する。
【実施例1】
【0082】
材料および方法
新世界ザルのVL遺伝子の単離
【0083】
マーモセット(マーモセット属、種は不明)およびヨザル(アオタス・トリビルガタス(aotus trivirgatus))のゲノムDNAをEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)より入手し、それぞれのカタログ番号は85011419および90110510であった。マーモセットのDNAは、細胞株B95−8由来であり、ヨザルのDNAは細胞株OMK637−69であった。
【0084】
ヒトVκリーダー配列に基づく縮重プライマーおよび組換えシグナル配列(RSS)は、WalterおよびTomlinsonによる抗体エンジニアリング:A Practical Approach(1996年)による。生殖細胞系Vκ DNAの適用のために用いたプライマーは以下のとおりであった。
【0085】
プライマーVK1BL
AATCKCAGGTKCCAGATG(配列番号11)
【0086】
プライマーVK1BL35a
GTTYRGGTKKGTAACACT(配列番号12)
【0087】
プライマーVK1BL35b
ATGMCTTGTWACACTGTG(配列番号13)
【0088】
ゲノムPCR(30サイクル数)を、プライマー対であるVK1BL×VK1BL35aまたはVK1BL×VK1BL35bのいずれかとともに、Taqポリメラーゼを用いて行った。クローニングされる配列および用いられる2つのプライマーセットの間には重複(overlap)があった。
【0089】
PCR産物を、インビトロジェン社のTOPO TAクローニングキット(カタログ番号K4500−01)中にクローニングして、M13フォワードプライマーおよびpUCリバースプライマーで配列を決定した。配列は、順方向および逆方向で確認した。PCRエラーになりにくい重要な配列をさらに確認するために、このPCRおよびクローニングのプロセスを、マーモセットの配列について2回繰り返した。ヌクレオチド(配列番号14〜24および配列番号36〜41)ならびにアミノ酸(配列番号25〜35および配列番号42〜47)の配列を図2に示す。マーモセットの配列1、2および3を確認した。配列4、5、6、7および8は初期PCR(initial PCR)でのみ観察された。配列9、10および11は、反復(repeat)(すなわち2回目の)PCRおよびクローニングのみで観察された。
【0090】
オリゴ合成およびアクセプター配列へのクローニング
【0091】
4つのCDR配列、つまりヨザルの配列1(配列番号42)由来のYAATKLQS(配列番号1)、ヨザルの配列2(配列番号43)由来のYEASSLQS(配列番号2)、マーモセットの配列1(配列番号25)由来のYEASKLQS(配列番号3)およびマーモセットの配列2(配列番号26)由来のYSASNLET(配列番号4)が、指し示したように、図2に示すアミノ酸配列から選択された。ヨザルの配列5 YYASSLQS(配列番号48)が、Aotus nancymaae(Ma’s night monkey)のcDNA配列であるGI6176295と同一であることが判明し、他のすべての配列は独特のものであった。
【0092】
発現ベクター(Domantis proprietary vector)におけるアクセプター配列の可変領域(抗TNFドメイン抗体)の配列を、制限酵素地図に指し示しているように、CDR2のみならずFR2の大部分を切除する、Kpn IおよびSanD Iによって連続的に消化した(25μg)。次いで、このベクターをゲル精製して、切除した野生型(wild−type)のFR2およびCDR配列を除去した。
【0093】
オリゴのアニーリングを、95℃で5分間に続いて65℃で5分間、オリゴの対(それぞれの500pmolが図4Aおよび図4Bに示されている)をインキュベートすることによって行い、次いで、ホットブロック(hot block)上でゆっくりと室温に達するのを可能にさせた。重複部分は、dNTPsの存在下で、クレノウ(Klenow)反応の間に満たされた。
【0094】
親和性成熟
【0095】
マーモセットのCDRが接合したdAb化合物145(配列番号7)を、14の別々のライブラリーを構築することによって親和性成熟させると、ライブラリーのそれぞれは配列番号7の配列を単一アミノ酸残基において多様化されていた。選択された残基を、以下に影をつけて示す。
【0096】
【表1】

【0097】
この選択は、成熟なヒトIgレパートリーにおいて多様化されることで知られているCDR1およびCDR3の残基、ならびに相関したdAbでの突然変異生成後に機能的なタンパク質を産生することが観察されているフレームワーク残基に基づいている。選択された残基のそれぞれに関して、相補的なフォワードおよびリバースのPCRプライマー対を、NKK縮重を伴って設計し、ならびに2つの初期PCR反応を、単一の変異プライマーおよび隣接するプライマー(flanking primer)でそれぞれ行った。精製後、2つのPCR産物をアニーリングして、次いで隣接するプライマーだけを用いて増幅した(PCRの重複延長(overlap extension)によるスプライシング;Lowman H.L.& Clackson T. (eds), Phage Display: A practical approach, Oxford University Press , Oxford, UK)。クローンを最初に固相TNFを用いてELISAによってスクリーニングし、陽性クローンの配列を決定した。dAbタンパク質を最上のクローンから精製して、レセプター結合アッセイおよびL929細胞毒性アッセイにおける有効性を評価し、化合物100(配列番号9)および123(配列番号8)が、親であるdAb、化合物145(配列番号7)と比較して、TNFの中和を改善させることを発見した。
【0098】
化合物100(配列番号9)および123(配列番号8)の親和性を増強させる置換の組み合わせによって、L929細胞毒性アッセイでの有効性をさらに改善させる抗−TNF dAbが得られた(化合物196(配列番号10))。
【0099】
結果
レセプター結合アッセイ(RBA)および細胞毒性アッセイでの抗−TNF dAbクローンの有効性
【0100】
TNFのそのレセプターへの結合を阻害し、L929細胞におけるTNFによって介される細胞毒性を中和する抗−TNF dAbの能力の確認は、以下のように実施された。
【0101】
レセプター結合アッセイ
【0102】
14の選択された位置で多様化されたdAbは、組換えTNFレセプター1(p55)に対するTNFの結合を阻害する能力ついて試験された。手短に言えば、Maxisorpプレートを、30mg/mlの抗−ヒトFcマウスモノクローナル抗体(Zymed、サンフランシスコ、USA)で一晩インキュベーションした。ウェルを、0.05%のTween−20を含む生理食塩水(PBS)で洗浄後、1%BSA入りPBSでブロッキングしてから、100ng/mlのTNFレセプター1 Fc融合タンパク質(R&Dシステムズ社、Minneapolis、USA)でインキュベーションした。それぞれのdAbを、洗浄したウェルに最終濃度10ng/mlになるように加えたTNFとともに混合した。TNFの結合を、0.2mg/mlの、ビオチン化した抗−TNF抗体(Hycult biotechnology社、Uben、Netherlands)で検出してから、HRP(horse−radish peroxidase)結合ストレプトアビジン(アマシャムバイオサイエンス社、UK)で1:500になるように希釈し、次いでTMB基質(KPL社、Gaithersburg、USA)でインキュベーションした。この反応をHCLを添加することによって止めてから、吸光度を450nmの波長で測定した。抗−TNF dAbの活性は、TNFの結合の減少に通じるので、吸光度の減少を、TNFのみのコントロールと比較した(図5)。
【0103】
L929細胞毒性アッセイ
【0104】
化合物100(配列番号9)および123(配列番号8)を含む、小さいライブラリーの多様化アプローチ(minilibrary diversification approach)によって同定される抗−TNF dAbもまた、マウスL929繊維芽細胞に関するTNFの細胞毒性活性を中和する能力のために試験した(Evans, T.,2000,Molecular Biotechnology 15,243-248)。手短に言えば、マイクロタイタープレートに播種したL929細胞を、抗−TNF dAb、100pg/mlのTNFおよび1mg/mlのアクチノマイシンDとともに一晩インキュベーションした(Sigma社、Poole、UK)。細胞の生存能力を、[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム]でインキュベーションをした後に、490nmでの吸光度を読むことによって測定した(プロメガ社、Madison、USA)。抗−TNF dAbの活性は、TNF細胞毒性の減少に通じるので、吸光度の減少を、TNFのみのコントロールと比較した。親であるdAb化合物145(配列番号7)と比較した場合の結果を、図6に示す。
【0105】
本明細書を通して、「含む(comprise)という語、または「comprises」もしくは「comprising」という別の態様の語は、記載した要素、整数もしくは段階(step)、または要素、整数もしくは段階の群を含むものを意味すると理解されるが、他の任意の要素、整数もしくは段階、または要素、整数もしくは段階の群を除外しない。
【0106】
本明細書で言及されるすべての出願書類は、参考文献として本明細書に取り入れられる。本明細書に含まれる文書、法令、材料、装置、記事などに関するいずれの議論もが、もっぱら本明細書に関しての文脈を提供するための目的である。これらの任意のもしくはすべての事項が、本出願書類のそれぞれの特許請求の範囲の優先日より前に、オーストラリアもしくはそれ以外のいずれかに存在するものとして、先行技術の土台の部分を形成し、または本発明に関連する技術分野における通常の知識であるものとする解釈としては受け取らない。
【0107】
幅広く記載したように、本発明の精神もしくは範囲から外れることなしに特定の実施態様を示せるように、本発明に対してたくさんの変形および/または改良が、当業者によってなされるのが好ましい。したがって、本実施態様は、例示的なものとしてすべて捉えられるものであって、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】アクセプターdAbの、アミノ酸(配列番号6)およびヌクレオチド(配列番号5)の配列を示す図である。
【図2A】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図2B】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図2C】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図2D】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図2E】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図2F】11のマーモセットおよび6つのヨザルのVκ遺伝子断片のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列を示す図である。
【図3】アクセプターdAbのアミノ酸およびヌクレオチドの配列を示す図である(両鎖)。CDR2を含む領域を切り取るKpn IおよびSanD Iに対する制限酵素消化部位を図に示す。除去されるCDR2残基をアンダーラインで示す。
【図4A】図2で示したヌクレオチド(A)およびアミノ酸(B)の配列の、クローニングおよび最終的な配列確認の間に使用されたオリゴヌクレオチドを示す配列アラインメントを示す図である。
【図4B】図2で示したヌクレオチド(A)およびアミノ酸(B)の配列の、クローニングおよび最終的な配列確認の間に使用されたオリゴヌクレオチドを示す配列アラインメントを示す図である。
【図5】組換TNFレセプターに対するTNFの結合を阻害するための、CDR2が接合されたdAbの能力を表示する図である。試験されたdAbは以下のとおりであった:ヨザル1(CDR=YAATKLQS;配列番号1)、ヨザル2(CDR=YEASSLQS;配列番号2)、マーモセット1(CDR=YEASKLQS;配列番号3)、マーモセット2(CDR=YSASNLET;配列番号4)およびアクセプターdAb(CDR=YSASELQS;配列番号49)。
【図6】マウスL929繊維芽細胞についてのTNFの細胞毒性を中和する、化合物145に対する化合物100および123の改良された能力を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの新世界ザルのCDRを有するヒト可変領域を含む抗原結合部位を含むキメラ抗体ポリペプチド。
【請求項2】
前記ヒト可変領域が、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配列、またはヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされる前記アミノ酸配列と比べてアミノ酸が5つまで異なるものを含むアミノ酸配列を有するヒトフレームワーク領域を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項3】
前記ヒト可変領域が、ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされるアミノ酸配、あるいは前記ヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされる前記アミノ酸配列と比べて合計でアミノ酸が10個まで異なるものを含むアミノ酸配列を有する4つのヒトフレームワーク領域であるFR1、FR2、FR3およびFR4を含む、請求項2に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項4】
前記フレームワーク領域が、DP47、DP45、DP48およびDPK9からなる群より選択されるヒト生殖細胞系抗体遺伝子断片によってコードされる、請求項2または3に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項5】
前記新世界ザルのCDRがCDR2である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項6】
前記新世界ザルのCDRがCDR1またはCDR3である、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項7】
前記新世界ザルのCDR配列が新世界ザルの生殖細胞系CDR配列である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項8】
dAb、scF、Fab、(Fab’)、Fv、ジスルフィド結合されたFv、IgG、およびダイアボディから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項9】
前記抗原がTNF−αである、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項10】
前記新世界ザルがマーモセット科である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項11】
前記新世界ザルがマーモセットである、請求項10に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項12】
前記ヒト可変領域のアミノ酸配列が、SanD I制限酵素部位から距離をおいて配置されるKpn I制限酵素部位を含み、前記ヒト可変領域の前記CDRがこれらの制限酵素部位の間にある、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項13】
前記新世界ザルのCDR配列が、プライマー対であるVK1BL(配列番号11)/VK1BL35a(配列番号12)またはプライマー対であるVK1BL(配列番号11)/VK1BL35b(配列番号13)を用いてPCRによって、新世界ザルのDNAから得ることが可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体ポリペプチド。
【請求項14】
ヒトTNF−αに結合するヒトdAbであって、前記CDRの少なくとも1つが新世界ザル由来の対応するCDRで置換されている、ヒトTNF−αに結合するキメラドメイン抗体(dAb)。
【請求項15】
置換されるCDRがCDR2である、請求項1に記載のキメラdAb。
【請求項16】
前記新世界ザルがマーモセットである、請求項1または2に記載のキメラdAb。
【請求項17】
(i) ヒト可変領域をコードするアクセプター配列を提供する工程、および
(ii) 前記可変領域のCDR配列を、新世界ザルのCDRであるドナーCDR配列
で置換する工程、
を含む、請求項1から14のいずれか一項で規定される抗体ポリペプチドを産生する方法。
【請求項18】
工程(ii)において、前記ヒト可変領域の前記CDRを、制限酵素消化を利用し、前記ドナーCDRをコードするオリゴヌクレオチドを前記アクセプター配列にアニーリングして、前記ドナー新世界ザルのCDRで置換する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程(ii)で産生される前記可変領域を(iii)親和性成熟させることを含む、請求項17または18に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−519983(P2009−519983A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546037(P2008−546037)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001993
【国際公開番号】WO2007/070979
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(500468537)アラーナ・テラピューティクス・リミテッド (16)
【出願人】(506136449)ドマンティス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】