説明

部品供給装置

【課題】高速、低騒音、しかも製造コストの低減化を図り得る部品供給装置を提供する。
【解決手段】モータにより回転する円盤1の上面の外周側に環状凸部11を設ける。環状凸部11の内側面が斜面11aをなし、この内側斜面の周りに環状の部品載置面となる平坦或いは内側から外側に向けて下る外側斜面11bを有する。一重の渦巻壁体3が環状凸部11と近接するように、浮いた状態で支持される。渦巻壁体は、環状凸部11の部品載置面11bの幅を徐々に狭めて最終的に整列対象の部品の整列幅を部品載置面11bに設定する。回転円盤1に投入された部品2がガイド30を介して環状凸部11の内側斜面11aを介して乗り上げるように誘導案内される。環状凸部11の部品載置面が部品整列幅になる回転円盤の回転位置に対応させて、渦巻壁体により形成される部品排出部3−1が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の製品の部品を整列した後、順次次のプロセスに供給可能な部品供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の製品生産現場では、生産性の向上を図る目的及び環境への配慮から、部品供給分野においても、比較的形状の小さな部品に対しては、部品供給機構に、圧電素子あるいはカム式振動要素などを用いて、高速化、静音化を向上させている。しかし、対象物が数十ミリメートルに及ぶと、その物体の質量、外形の大きさ故に、電磁振動方式が主体となり、振動方式の速度限界と振動方式故の物体の相互接触による騒音増大が問題となり、遮音化カバー設置などの騒音低減対策が欠かせない状況になっていた。
【0003】
かような背景の下で、部品供給の高速化と低騒音化を実現する手段として、整列トラックと、部品を整列トラックまで送り込む機能を持たせた2個の円板とを組み合わせた部品供給装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。これらの部品供給装置は、2個の円板(一つは斜板、もう一つは水平円板)やそれらを駆動させるための複数の駆動アクチュエータ(例えば2個のモータ、或いは一つはモータ、もう一つは電気的振動機構)の組み合わせ精度を出すために高度の技術を必要とし、製造コストの高い部品供給装置になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−225142号公報
【特許文献2】特開2001−58719号公報
【特許文献3】登録実用新案第3082841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高速、低騒音、しかも製造コストの低減化を図り得る部品供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の部品供給装置は、基本的には次のように構成される。
(1)モータにより回転し、整列対象の部品が投入される回転円盤と、
前記回転円盤の上面の外周側に形成される環状凸部で、その内側面が内側から外側に向けて上る斜面をなし、この内側斜面の周りに環状の部品載置面となる平坦或いは内側から外側に向けて下る外側斜面を有する前記環状凸部と、
前記回転円盤の上方で前記環状凸部と近接するように配置され、前記環状凸部の部品載置面の幅を回転円盤の回転位置に対応させて徐々に狭めて最終的に整列対象の部品の整列幅に規制する部品載置幅規制壁体と、
前記回転円盤の面上から浮いた状態で吊持され、前記部品載置幅規制壁体により設定される前記環状凸部の部品載置面の幅広領域部に、前記回転円盤に投入された部品を前記環状凸部の内側斜面を介して乗り上げるように誘導案内する部品誘導案内機構と、
前記環状凸部の部品載置面が前記部品整列幅になる前記回転円盤の回転位置に対応させて設けた部品排出部と、を備えることを特徴とする部品供給装置。
【0007】
その具体的態様として、次のような部品供給装置を提案する。
(2)モータにより回転し、整列対象の部品が投入される回転円盤と、
前記回転円盤の上面の外周側に形成され環状凸部で、その内側面が内側から外側に向けて上る斜面をなし、この内側斜面の周りに環状の部品載置面となる平坦或いは内側から外側に向けて下る外側斜面を有する前記環状凸部と、
一重の渦巻をなし且つ前記環状凸部に近い径を有する渦巻壁体(前記(1)の部品載置幅規制壁体に相当)と、
前記渦巻壁体が前記回転円盤の上方で前記環状凸部と近接するように、該渦巻壁体を前記回転円盤に対して浮いた状態で支持する支持体と、を有し、
且つ、前記渦巻壁体は、前記環状凸部の部品載置面の幅を徐々に狭めて最終的に整列対象の部品の整列幅を前記部品載置面に設定するように配置され、
前記渦巻壁体により設定される前記環状凸部の部品載置面の幅広領域部に前記回転円盤に投入された部品が前記環状凸部の内側斜面を介して乗り上げるように誘導案内する誘導案内機構が前記回転円盤の面上から浮いた状態で吊持され、
前記環状凸部の部品載置面が前記整列幅になる前記回転円盤の回転位置に対応させて、前記渦巻壁体により形成される部品排出部が設定されていることを特徴とする部品供給装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転円盤は一つであり、駆動アクチュエータの簡略化を図り、しかも部品供給装置がシンプルな構造を呈するので、製造コストを低減し、しかも、部品供給時の高速、低騒音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る部品供給装置を、周壁(支持体)を外した状態で示す斜視図。
【図2】上記実施例の上面図。
【図3】上記実施例の部品供給装置を、周壁を取付けた状態で示す縦断面図であり、図1のA−A線付近を、誘導案内ガイド及びその支持機構(吊持機構)を省略して示す縦断面図。
【図4】回転円盤の環状凸部における内側斜面の傾斜角度、部品載置面の傾斜角度、部品と内側斜面との長さとの好ましい一例の関係を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施例に係る部品供給装置を、周壁(支持体)5を外した状態で示す斜視図であり、図2はその上面図、図3は上記部品供給装置を、周壁5を取付けた状態で示す縦断面図であり、図1のA−A線付近を誘導ガイド30及びその支持機構(吊持機構)40を省略して示す縦断面図である。
【0011】
図1に示すように、部品供給装置は、モータ20(図2参照)により回転する回転円盤1と、一重の渦巻形である渦巻壁体(すなわち、ほぼ円環状に近い環状壁体)3と、部品を誘導案内するための誘導案内機構30とを有する。
【0012】
回転円盤1は、上面中央に截頭円錐形をなす中央凸部10が形成され、上面外周側に環状凸部11が形成される。
【0013】
環状凸部11は、図3に示すように、その円環状の内側面11aが内側から外側に向けて上る斜面をなし、この内側斜面11aの周りに円環状の部品載置面となる内側から外側に向けて下る外側斜面11bを有する。11cは内側斜面11aと外側斜面11bとの間の環状の頂部である。部品載置面11bは、外側斜面に代えて平坦面でもよい。好ましい角度は、後述する整列対象品である部品2が部品載置面11bに乗り上げた場合に、載置面の幅の制約などで転げ落ちることを除けば、転げ落ちない角度として、水平面を基準にして0°〜5°の範囲が好ましい。ただし、この角度に限定されるものではなく、上記意図を満足させれば5°以上であってもよい。
【0014】
回転円盤1の中央凸部10と環状凸部11との間に多数の部品2が投入される。部品2は、例えば円柱部品や矩形部品などが考えられるが、それに限定されるものではない。また、部品の適用製品の種別を問うものではない。
【0015】
中央凸部10及び環状凸部11を含む回転円盤1は、部品への衝撃緩和、傷防止を考慮した材料、例えばウレタンゴムなどの耐衝撃性に優れた非金属材料あるいは金属製円盤に耐衝撃性のゴムやプラスチックを被覆したものである。
【0016】
中央凸部10及び環状凸部11と回転円盤1の本体とは、一体成形品或いは別構成品を一つに結合したものでもよい。
【0017】
一重の渦巻をなす渦巻壁体3は、環状凸部11に近い径を有する。この渦巻壁体3が回転円盤1の上方で環状凸部11と近接するように、回転円盤1に対して浮いた状態で支持体5を介して支持されている(図3参照)。
【0018】
支持体5は、円盤1及び渦巻壁体3の外周囲を囲む周壁により構成され、図3に示すように止め具6を介して渦巻壁体3を回転円盤1上、特に環状凸部11の上方付近で浮いた状態で支持している。
【0019】
また、周壁(支持体)5は、モータ20を収納するベース7に固定されている。
【0020】
図1に示すように、渦巻壁体3は、回転領域3´にて環状凸部11の部品載置面11bの幅を徐々に狭める。すなわち、渦巻壁体3は、部品載置面11bの幅規制用の壁体(部品載置幅規制壁体)となって、部品載置面11bを初めはB部に示すように複数の部品2がまとまって載置可能な幅広な部品載置面とし、最終的に整列対象の部品の一部品整列幅に狭まる部品載置面になるように設定してある。また、部品の排出部付近から上記回転領域3´の手前付近まで環状凸部11の外側斜面11bが渦巻壁体3からはみ出る回転領域3”とが設定されている。
【0021】
環状凸部の部品載置面11bが一部品整列幅になる回転円盤1の回転位置に対応させて、渦巻壁体3により形成される部品排出部3−1が設定されている。この部品排出部3−1は、渦巻壁体3の始端部3aの位置及び終端部3bのいずれにも近い位置に設定してある。部品排出部3−1は、渦巻壁体3の始端部3aから終端部3bとほぼ同じ向きに折り返す折返し片3cと、終端部3b手前の壁部3dと、折り返し片3c・終端部手前の壁部3d間の底壁(排出路)3eとで構成されている。
【0022】
図2では、渦巻壁体3を太字ラインにより示しており、始端部3aから途中位置までは、環状凸部11の環状頂部11cのライン上にあり、その後、環状凸部11の外側斜面11bから最外周にかかって部品載置面11bを広げるようにした後、部品載置面11bを狭めるように(環状頂部11cのラインに接近するように)して部品載置面11b上に戻るようなラインを描いている。
【0023】
回転円盤1の面上から浮いた状態で吊持されている誘導案内機構30は、渦巻壁体3により設定される環状凸部11の部品載置面11bの幅広領域部B近くに設けてある。誘導案内機構30は、回転円盤1に投入された部品2が環状凸部11の内側斜面11aを介して誘導案内するものであり、回転円盤1面上から内側斜面部11a面にかけて(ただし回転円盤1面および内側斜面部11a面に対して非接触状態にある)で配置されている。図1の実施例では、誘導案内機構30は、円弧状の部品案内面30aを有するガイドにより構成されている。なお、図2では、渦巻壁体3を支持する支持体5を一点鎖線で示してある。
【0024】
誘導案内機構30を吊持する吊持機構40は、渦巻壁体3の上部に掛け渡しされる梁部材40cに取付けられた一対の吊持具40a,40bよりなり、これらの吊持具は、ガイド30の向きや位置を調整する調整機構40e,40fを介して梁部材40cに接続されている。
【0025】
回転円盤1が所定の回転方向、例えば半時計周り方向(矢印C方向、ただし回転方向は任意である)に回転すると、回転円盤1上に投入されている部品2は、ガイド30の案内面にガイドされて環状凸部11の部品載置面11bにおける幅広領域部B近くの内側斜面11aに誘導案内される。この部品2は、回転円盤1の回転力と円盤1面と部品2の摩擦力で誘導ガイド30に沿って内側斜面11aを介して幅広領域部Bに押し上げられる。ガイド30は、樹脂材料で形成したもの、又は樹脂またはウレタンゴムを被覆したものが使用される。
【0026】
次に回転円盤1の環状凸部11bに押し上げられた部品2は、図1から図3に示すように、渦巻壁体11に沿って搬送され、円盤1の回転に伴い回転領域3´にて、部品載置面11bが徐々に狭められていくに伴い、複数がかたまって押し上げられた部品2は、一列だけを残して円盤1上に転げ落ちる。部品載置面11bに最終的に残った整列部品は、順次、排出部3−1を介して排出される。また、円盤1に転げ落ちた部品2は、再びガイド30を介して誘導案内されて部品載置面11bに押し上げられ、最終的には、整列部品として排出部3−1から排出される。
【0027】
図4は、回転円盤1の環状凸部11における内側斜面11aの傾斜角度、部品載置面11bの傾斜角度、部品2と内側斜面11aとの長さとの好ましい一例の関係を示したものである。
【0028】
部品(例えば矩形部品、円柱部品)2の長手方向(対角線)の長さL1と内側斜面11aの長さLoとの関係がLo>L1で、内側斜面の角度が20°〜30°、部品載置面11bの角度が0°〜5°の関係であると、最も効率良く部品2を効率良く部品載置面11bに押し上げられる実験結果が得られた。
【0029】
本実施例によれば、一つのモータ、回転円盤、誘導案内機構、渦巻壁体といった簡単な部品の構成にて、高速、低騒音の部品供給装置を提供することができる。
【0030】
なお、上記実施例では、誘導案内機構30として、円弧状の部品案内面を有するガイドを例示したが、これに代えて、回転ブラシ或いは回転円盤より摩擦力の大きい外周面を有する回転体を使用してこの回転体の押し上げ力で部品2を斜面11aを介して部品載置面11bに押し上げるようにしてもよい。また、回転体と誘導案内機構を組み合わせたものでもよい。
【0031】
本実施例によれば、一つのモータ、回転円盤、誘導案内機構、渦巻壁体といった簡単な部品の構成にて、高速、低騒音の部品供給装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
1…回転円盤、2…部品、3…渦巻壁体(部品載置幅規制壁体)、3−1…部品排出部、11…環状突起、11a…内側斜面、11b…外側斜面(部品載置面)、30…誘導案内機構、B…部品載置面の幅広領域部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより回転し、整列対象の部品が投入される回転円盤と、
前記回転円盤の上面の外周側に形成される環状凸部で、その内側面が内側から外側に向けて上る斜面をなし、この内側斜面の周りに環状の部品載置面となる平坦或いは内側から外側に向けて下る外側斜面を有する前記環状凸部と、
前記回転円盤の上方で前記環状凸部と近接するように配置され、前記環状凸部の部品載置面の幅を回転円盤の回転位置に対応させて徐々に狭めて最終的に整列対象の部品の整列幅に規制する部品載置幅規制壁体と、
前記回転円盤の面上から浮いた状態で吊持され、前記部品載置幅規制壁体により設定される前記環状凸部の部品載置面の幅広領域部に、前記回転円盤に投入された部品を前記環状凸部の内側斜面を介して乗り上げるように誘導案内する部品誘導案内機構と、
前記環状凸部の部品載置面が前記部品整列幅になる前記回転円盤の回転位置に対応させて設けた部品排出部と、を備えることを特徴とする部品供給装置。
【請求項2】
モータにより回転し、整列対象の部品が投入される回転円盤と、
前記回転円盤の上面の外周側に形成される環状凸部で、その内側面が内側から外側に向けて上る斜面をなし、この内側斜面の周りに環状の部品載置面となる平坦或いは内側から外側に向けて下る外側斜面を有する前記環状凸部と、
一重の渦巻をなし且つ前記環状凸部に近い径を有する渦巻壁体と、
前記渦巻壁体が前記回転円盤の上方で前記環状凸部と近接するように、該渦巻壁体を前記回転円盤に対して浮いた状態で支持する支持体と、を有し、
且つ、前記渦巻壁体は、前記環状凸部の部品載置面の幅を前記回転円盤の回転位置に対応させて徐々に狭めて最終的に整列対象の部品の整列幅を前記部品載置面に設定するように配置され、
前記渦巻壁体により設定される前記環状凸部の部品載置面の幅広領域部に前記回転円盤に投入された部品が前記環状凸部の内側斜面を介して乗り上げるように誘導案内する誘導案内機構が前記回転円盤の面上から浮いた状態で吊持され、
前記環状凸部の部品載置面が前記部品整列幅になる前記回転円盤の回転位置に対応させて、前記渦巻壁体により形成される部品排出部が設定されていることを特徴とする部品供給装置。
【請求項3】
前記誘導案内機構は、円弧状の部品案内面を有するガイド或いは回転体或いは前記ガイド及び前記回転体の併用である請求項1又は2記載の部品供給装置。
【請求項4】
前記誘導案内機構を構成する前記回転体は、回転ブラシであり、或いは前記回転円盤より摩擦力の大きい外周面を有する回転体である請求項3記載の部品供給装置。
【請求項5】
前記環状凸部の前記内側斜面の長さを前記部品の長さより大きくし、且つ前記内側斜面の傾斜角度が20°〜30°である請求項1ないし4のいずれか1項記載の部品供給装置。
【請求項6】
前記環状凸部の部品載置面は、水平面を基準にして0°〜5°の角度をなす請求項1ないし5のいずれか1項記載の部品供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51727(P2011−51727A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202377(P2009−202377)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(390006127)日立設備エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】