説明

部品嵌合装置および方法

【課題】複雑な動作を経ずに、部品同士を正確かつ確実に嵌合させることができる部品嵌合装置を提供する。
【解決手段】第1のRCC機構である上下可動部材30とガイド部材31とワイヤ部材32を用いて、テーブル41上の被嵌合部品42に沿うようにガイド部材31を位置決めし、このガイド部材31上に設けた第2のRCC機構であるスライドブッシュ部材34とばね35とブロック部材36を用いて、被嵌合部品42の中心軸線45と嵌合軸部品40の中心軸線44とのずれ分を補い、嵌合軸部品40と被嵌合部品42との嵌合を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入対象の孔が穿設されている部品に対して、その孔の形状に合う部品を嵌合させる部品嵌合装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品の嵌合,組立て作業を自動化することは、製造技術分野において数十年来取り組まれていた課題であり、嵌め合い精度や挿入速度,形状,誘い込み角度あるいは材料の硬度などにより、多種多様な独自の自動嵌合機構が提案され、実施されてきている。
【0003】
この中で、一般的にコンプライアンス機構を利用した部品挿入には、リモート・センター・コンプライアンス機構(RCC機構:Remote Center Compliance機構)と言われる装置が多く使用されている。このRCC機構とは、挿入動作時に嵌合される部品同士の接触によって発生する軸方向の反力を利用し、嵌合を実施する図7に示すような構成の装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図7において、構造部材1に対して鉛直方向に動作する部材2に、長さの等しい2つのリンク3を介してハンド4が装着されている。ここで、リンク3は、部材2に対してもハンド4に対しても回転可能に支持されており、部材2とリンク3とハンド4によって形成される四辺形状は、常に平行四辺形を保つ。ハンド4は、設けられた爪部5により嵌合軸部品6を把持し、構造部材1に対して部材2,リンク3,ハンド4,爪5および嵌合軸部品6が一体となって鉛直下方に移動し、被嵌合部品7の嵌合孔7aに対して嵌合軸部品6を嵌着するような構造となっている。
【0005】
次に、図7に示す構成の装置の動作について説明する。
【0006】
図7において、破線の位置が待機位置であり、実線の位置が動作中の位置であって、待機位置では、リンク3は2つとも鉛直下向けて垂下した状態になる。そして、部材2が図の下方に移動すると、嵌合軸部品6の下のエッジが、被嵌合部品7の嵌合孔7aの上端面に形成された面取り部Aに当接するまで、全体として当初の姿勢を変えずに移動する。
【0007】
ここで嵌合軸部品6が面取り部Aに当接すると、嵌合軸部品6に対して被嵌合部品7の面取り部Aにて垂直な方向に応力が加わり、ハンド4と爪5と嵌合軸部品6は図7における右側へと移動する。
【0008】
一方、ハンド4および爪5の姿勢は力を受けても傾くことはないために、嵌合軸部品6は、その下部のエッジが被嵌合部品7の面取り部Aに沿うように移動し、やがて面取り部Aから離れると、嵌合軸部品6は被嵌合部品7の嵌合孔7aの側面に沿って下がり、嵌合孔7aに対する嵌合が完了する。
【0009】
図7に示す従来装置の他に、部品挿入についての従来装置として、図8に示すような構成の圧入装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
図8において、11はテーブル、12はテーブル11に形成された貫通孔、13はワークである。14はワーク13に形成され貫通孔12よりやや径の小さい圧入孔、15はテーブル11の上側に設けられた2つの仮位置決めピン、16は圧入孔14の開口側に設けられたピン挿入孔である。
【0011】
また、17はテーブル11に対向設置されたプレスシリンダであり、このプレスシリンダ17は、内部にスプリング18と、上部開口側にプレスラム19およびプレスラム19を上部に逃がさないように係止する引掛け部20とを備えている。
【0012】
また、テーブル11の下方には、移動体21に装着され、圧入孔14の径とほぼ同じ径を有する本位置決めピン22が設けられており、本位置決めピン22の先端にテーパ部23が形成されている。さらに、移動体21には圧入孔14に圧入される圧入部材としての筒部材24が装着されている。
【0013】
次に、図8に示す構成の圧入装置の動作について説明する。
【0014】
図8に示す装置において、仮位置決めピン15とピン挿入孔16とが水平方向(図8における矢印X方向)に対する相対変位が可能であることが特徴であり、まず、移動体21に装着された本位置決めピン22をワーク13の圧入孔14に挿入し、本位置決めピン22の先端のテーパ23により、ワーク13の位置を水平方向にずらす。次に、本位置決めピン22を一旦抜いて、筒部材24を圧入孔14に対向させ、プレスラム19の下降によりワーク13を移動させることにより、圧入孔14に筒部材24を圧入させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平6−186362号公報
【特許文献2】特開平11−90740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図7に示す構成の装置では、一連の動作において、嵌合軸部品6の下降動作速度が異なる場合、あるいは被嵌合部品7の嵌合軸部品6が接触する面取り部Aの表面精度が粗い場合、または嵌合軸部品6と被嵌合部品7の嵌合孔7aとのずれ量が大き過ぎる場合には、面取り部Aと嵌合軸部品6の下のエッジとが接触する際の部品間の擦れ、あるいは摩擦力が大きくなり、嵌合軸部品6に対して回転させるような力が加わり、部品6,7同士が動かなくなるという問題が発生することがある。
【0017】
また、図8に示す構成の装置では、位置補正用の部材を準備して位置ずれ分を補正するという方法を採用しているが、一度補正した後に、再度、位置決め動作を行うために、位置決め精度によるばらつき分の補償ができていないこと、また1回の圧入動作について、2回の嵌合動作を行う必要があり、手間がかかるという問題がある。
【0018】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、複雑な動作を経ずに、部品同士を正確かつ確実に嵌合させることができる部品嵌合装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の部品嵌合装置は、一方の部品に対して他方の部品を嵌合方向に相対移動させて嵌合を行う部品嵌合装置において、前記嵌合方向に移動可能な第1上下可動部材と、前記一方の部品により位置修正されるガイド部材と、前記第1上下可動部材と前記ガイド部材とを接続するワイヤ部材と、前記ガイド部材上に設けられて前記嵌合方向に移動可能な第2上下可動部材と、前記第2上下可動部材に設けられて前記他方の部品を保持する保持部材と、予め前記ガイド部材で前記一方の部品を保持した状態で、前記第2上下可動部材を用いて、前記保持部材で保持した前記他方の部品を前記一方の部品に対して相対移動させて嵌合を行う制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の部品嵌合方法は、一方の部品に対して他方の部品を嵌合方向に相対移動させて嵌合を行う部品嵌合方法において、前記嵌合方向に移動可能な第1上下可動部材とワイヤ部材を介して接続されたガイド部材を、前記第1上下可動部材で移動させつつ前記一方の部品の形状に追従移動させて、前記ガイド部材で前記一方の部品を保持した後、前記ガイド部材上の第2上下可動部材に設けられた保持部材で保持された前記他方の部品を、前記第2上下可動部材で前記一方の部品に対して相対移動させて嵌合を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、嵌合部品の組立において、嵌合する一方の部品の動作速度が異なる場合、あるいは嵌合時に両部品が接触する面の表面精度が荒い場合、または嵌合する孔部と軸部とのずれ量が大き過ぎる場合などにおいても、複雑な動作を経ずに、部品同士を正確かつ確実に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る部品嵌合装置の実施の形態1における上下可動部材を取り除いた状態の平面図
【図2】実施の形態1における正面状態の構成を示す断面図
【図3(a)】実施の形態1における上下可動部材の下降動作を示す正面断面図
【図3(b)】実施の形態1における第1のRCC機構の動作を示す正面断面図
【図3(c)】実施の形態1における第1のRCC機構の動作終了状態を示す正面断面図
【図3(d)】実施の形態1における第2のRCC機構の動作を示す正面断面図
【図3(e)】実施の形態1における第2のRCC機構の動作終了状態を示す正面断面図
【図3(f)】実施の形態1における上下可動部材の上昇動作を示す正面断面図
【図4】実施の形態1の構成部材の動作に係るフローチャート
【図5】本発明に係る部品嵌合装置の実施の形態2における正面状態の構成を示す断面図
【図6】本発明に係る部品嵌合装置の実施の形態2の変形例の構成を示す断面図
【図7】従来の装置における構成を示す断面図
【図8】従来の他の装置における構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は本発明に係る部品嵌合装置の実施の形態1における上下可動部材を取り除いた状態の平面図、図2は実施の形態1における正面状態の構成を示す断面図である。
【0025】
図1,図2において、30は駆動部材(図示せず)によって移動駆動される上下可動部材(第1の上下可動部材)、31はガイド部材、32は、上下可動部材30とガイド部材31間に固定された互いに平行で等長の複数のワイヤ部材であって、本実施の形態1では3本のワイヤからなる。
【0026】
また、ガイド部材31は、3本のワイヤ部材32がそれぞれ鉛直下向きにまっすぐに伸びて釣り合う位置を基準点として、基準点から離れるに従って基準点に向かう力が増える。上下可動部材30とワイヤ部材32とガイド部材31との3部品により、第1のRCC機構を構成している。
【0027】
さらに、ガイド部材31には、ガイド軸部材33と、ガイド軸部材33に沿って移動する一対のスライドブッシュ部材34とによって第2の上下可動部材が構成されている。
【0028】
スライドブッシュ部材34間にはブロック部材36が、スライドブッシュ部材34に水平方向にばね35で支持されている。ブロック部材33の上部には支持部材37が設けられ、上下可動部材30に設けられたアクチュエータ38の作動部材38aを連結して、水平方向に可動なカップリング機構を構成している。
【0029】
ブロック部材36とばね35とスライドブッシュ部材34とは、水平方向に支持されたばね35の釣合い点を基準位置として、基準位置から離れるに従って、基準位置へ戻る力を発生させる。つまり、スライドブッシュ部材34とばね35とブロック部材36との3部材により、第2のRCC機構を構成している。
【0030】
また、ブロック部材36の下部にはフィンガー部材39が開閉動可能に設けられており、嵌合軸部品40を把持する保持部材を構成している。
【0031】
図2において、テーブル41の上に、嵌合する一方の部材であって嵌合孔42aが穿設された被嵌合部品42が載置される。そして、被嵌合部品42は、嵌合する他方の部材であって突出軸部40aを有する嵌合軸部品40に対向する位置に配される。
【0032】
次に、本実施の形態1の動作について、図3(a)〜図3(f)の各部の動作状態を示す断面図と、図4のフローチャート(ステップS1〜ステップS11)を参照して説明する。
【0033】
まず、本実施の形態1における初期状態は、図3(a)に示すように、テーブル41の上に被嵌合部品42が固定され、被嵌合部品42の上方に、上下可動部材30,ガイド部材31などの各部材が位置している状態である。ここでは、上下可動部材30の中心軸線43と、嵌合軸部品40の中心軸線44とが一致しており、被嵌合部品42の中心軸線45のみが左側にずれている。この状態から上下可動部材30を下降開始させる(図4のステップS1)。上下可動部材30の下降などの本実施の形態1における装置の動作は、制御装置(図示せず)により制御される。
【0034】
ガイド部材31がテーブル41に当接するまで上下可動部材30を下降させると、第1のRCC機構である上下可動部材30とガイド部材31とワイヤ部材32のうち、上下可動部材30の中心軸線43と被嵌合部品42の中心軸線45とがずれていると、ガイド部材31の中心軸線44も上下可動部材30に対して同様にずれる。そのため、図3(b)に示すように、ガイド部材31の凹部に構成されているテーパ案内面46と、被嵌合部品42のエッジBとが接触する(図4のステップS2)。
【0035】
さらに上下可動部材30を下降させると、上下可動部材30とワイヤ部材32とガイド部材31からなる第1のRCC機構により、上下可動部材30に中心軸線43に向かう力が発生する。そのため、ガイド部材31のテーパ案内面46とエッジBとが滑り、ガイド部材31は、テーパ案内面46に沿って同じ姿勢を保ったまま、図3(c)において左方に移動しながら下降する。これに伴いワイヤ部材32はS字に変形し、ガイド部材31の中心軸線44は、被嵌合部品42の中心軸線45に近づいていく(図4のステップS3)。
【0036】
上下可動部材30がさらに下降すると、ガイド部材31と被嵌合部品42との接触部はテーパ案内面46を外れて、被嵌合部品42の外側部とガイド部材31のテーパ案内面46の凹部とが嵌合する。そして、ガイド部材31の凹部と被嵌合部品42の外側部との間には嵌合のクリアランスに相当する若干の隙間が残った状態で、図3(c)に示すように、ガイド部材31の下面がテーブル41の上面に接触する(図4のステップS4)。
【0037】
図3(c)に示す状態では、第2のRCC機構を構成しているブロック部材36,ガイド軸部材33,スライドブッシュ部材34,ばね35,フィンガー部材39,嵌合軸部品40は、ガイド部材31と共に左方向に動いた状態となり、この時点で上下可動部材30の中心軸線43と、嵌合軸部品40の中心軸線44とは大きくずれた状態となる。一方で嵌合軸部材40の中心軸線44と被嵌合部品42の中心軸線45とは、ガイド部材31のテーパ案内面46の凹部と被嵌合部品42の外側部との間の嵌合のクリアランスに相当する隙間分だけずれた状態である。この状態で上下可動部材30の下降は停止する(図4のステップS5)。
【0038】
次に、図3(d)に示すように、アクチュエータ38を動作させ、作動部材38aによって、ブロック部材36とフィンガー部材39と嵌合軸部品40とを、図中の下方へ移動させる(図4のステップS6)。嵌合軸部品40は、この移動により下降して、ガイド部材31に設けられたテーパ面47とエッジCで接触する(図4のステップS7)。
【0039】
さらにアクチュエータ30により嵌合軸部品40を下降させると、スライドブッシュ部材34とばね35とブロック部材36とからなる第2のRCC機構により、ガイド部材31の中心軸線44に向かう力が発生して、ばね35が撓み、テーパ面47と嵌合軸部品40のエッジCとが滑り、テーパ面47に沿って嵌合軸部品40は同じ姿勢を保ったままで、図3において左方へ移動しながら下降する(図4のステップS8)。
【0040】
さらにアクチュエータ38により嵌合軸部品40が下降することにより、図3(e)に示すように、嵌合軸部品40は、ガイド部材31のテーパ面47を外れ、被嵌合部材42の中央部の嵌合孔42aに入り、所定の位置に達して嵌合が完成する(図4のステップS9)。この時点でアクチュエータ38の下降動作は停止する(図4のステップS10)。
【0041】
この後、フィンガー部材39を開いて嵌合軸部品40を開放させ、アクチュエータ38と上下可動部材30を上方へ動作させることにより(図4のステップS11)、図3(f)に示すように、各部材が初期状態へ戻る。
【0042】
ここで、従来例との比較で、被嵌合部品42の嵌合孔42aに要求される面取り部Aの寸法を試算する。
【0043】
まず、従来例として図7に示す構成のような場合について考える。この場合、被嵌合部品7の嵌合孔7aの上端面に形成された面取り部Aの寸法は、被嵌合部品7の嵌合孔7aと嵌合軸部品6とにおける中心軸線の芯ずれ分だけ必要である。つまり、芯ずれが1mmであると、被嵌合部品7の面取り部Aは少なくとも1mm以上が必要である。
【0044】
一方、本実施の形態においては、被嵌合部品42と嵌合軸部品40との中心軸線44,45の芯ずれが1mmであると仮定し、ガイド部材31の凹部のテーパ寸法の水平成分を1mm以上にする。ガイド部材31の凹部が直径30mmであると30μm程度の嵌合誤差があるとし、ガイド部材31のテーパ面47を有する中央孔の最小直径が10mmであると20μm程度の嵌合誤差があるとする。さらに、ガイド部材31の凹部と中心軸線孔の位置精度、嵌合軸部品40の位置精度および外形誤差、被嵌合部品42の孔位置精度および外形誤差をそれぞれ10μm以内であるとして、嵌合軸部品40と被嵌合部品42の中心軸線44,45の位置誤差を大まかに計算すると、自乗平均平方根を用いて、下式(数1)に示すようになる。
【0045】
【数1】

【0046】
この場合、被嵌合部品42の中央孔の面取り部Aの寸法が0.03mm以上あれば、嵌合軸部品40が入ることになる。
【0047】
このように、本実施の形態1の構成によれば、嵌合部品の提供位置による誤差を吸収し、なおかつ一回の嵌合動作で嵌合を完成させることができる。
【0048】
また、本実施の形態1の構成によれば、従来例のように、一度補正した後に、再度、位置決め動作をさせることで生じる位置決め精度によるばらつき分の誤差を考える必要がない。さらに、1回の嵌合について2回の嵌合動作をする必要がなくなるため、複雑な動作を経ずに、部品同士を正確かつ確実に嵌合させることができる。
【0049】
(実施の形態2)
図5は本発明に係る部品嵌合装置の実施の形態2における正面状態の構成を示す断面図である。なお、以下の本実施の形態2の説明において、図1,図2の実施の形態1にて説明した部材に対応する部材には、同一符号を付して、詳しい説明は適宜省略する。
【0050】
図5において、51は圧縮ばね、52は摺動部材、53は上下方向に摺動可能なプレートであって、プレート53は摺動部材52に対して上下に摺動する。また、圧縮ばね51は、上下可動部材30とプレート53との間に配置される。下方からワイヤ部材32を介して圧縮ばね51からの力よりも大きな力が加わると、プレート53は、圧縮ばね51をさらに圧縮する方向(つまり上方)に移動する。この構成において、圧縮ばね51の与圧およびばね定数を適宜選択することによって、ワイヤ部材32の座屈を防ぐことができる。
【0051】
ところで、本実施の形態2の構成を採用せず、各部の上下動作駆動を空気圧など付与して行うシリンダなどを採用する場合は、ストロークエンドに到達するまで、ガイド部材31がテーブル41に当たって受ける力は、上下駆動動作をさせている力と同じになる。つまり、全反力がワイヤ部材32に加わる力となる。
【0052】
しかし、本実施の形態2の場合、前記力を受け続けるワイヤ部材32のワイヤ3本の座屈力を5Kgとし、3本合計して1本のばねとして置き換えたときのばね定数を0.2Kg/mmとし、与圧を2Kgとして、圧縮した状態で使用すると、ワイヤ部材32を介して受けるガイド部材31からの力が2Kgを超えるまでは、プレート53は上下可動部材30に対して変位しない。2Kgを超えるとプレート53は圧縮ばね51をさらに圧縮させる方向に変位する。
【0053】
このことにより、ワイヤ部材32が座屈する前に、圧縮ばね51は、あと15mm縮むことができ、ストロークエンドを残り15mm以内のところに設計すれば、ワイヤ部材32が座屈を発生することがなくなる。よって、本実施の形態2においては、ワイヤ部材を3本用いることが好ましい。
【0054】
さらに、図6に示す本実施の形態2の変形例のように、上下方向へと駆動するアクチュエータ38を省略した構成にすることもできる。
【0055】
図5に示す構成では、上下可動部材30と、この上下可動部材30に装着されたアクチュエータ38を具備するものであるが、図5にて説明したようなワイヤ部材32の座屈回避構造を備えれば、図6に示すように、上下可動部材30とアクチュエータ38との機能を兼用することが可能になる。
【0056】
以上のように、本実施の形態2では、嵌合を行う2つの部品のうち一方の部品をテーブル上に置き、他方の部品を上から下の方向に嵌め合わせる場合に、上から下に動く可動部材との間に設けられた第1のRCC機構を具備するガイド部材を、まず、テーブルの上の部品に嵌合させ、このガイド部材にさらに第2のRCC機構を設けて、他方の部品をテーブル上の一方の部品と嵌合させることにより、第1のRCC機構によるだけでは除去することができないガイド部材と嵌合を行う部品とのクリアランスに相当する分を、第2のRCC機構により補正して嵌合させることができる。
【0057】
供給される嵌合を行う部品の位置精度、および要望される嵌合精度により、第1のRCC機構に関してのコンプライアンス定数、第2のRCC機構に関してのコンプライアンス定数、およびガイド部材のテーパ面の角度、表面精度などを適切に選択すれば、状況に応じた嵌合動作を行うことが可能となり、一層の安定動作が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、部品の嵌合組立や、専用コネクタの結合のように、所定の嵌合孔に対して、その嵌合孔の形状に合う部品を自動的に挿入する時に必要となる嵌合機構または組立機構に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
30 上下可動部材
31 ガイド部材
32 ワイヤ部材
33 ガイド軸部材
34 スライドブッシュ部材
35 ばね
36 ブロック部材
37 支持部材
38 アクチュエータ
38a 作動部材
39 フィンガー部材
40 嵌合軸部品
41 テーブル
42 被嵌合部品
43 上下可動部材の中心軸線
44 嵌合軸部品の中心軸線
45 被嵌合部品の中心軸線
51 圧縮ばね
52 摺動部品
53 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部品に対して他方の部品を嵌合方向に相対移動させて嵌合を行う部品嵌合装置において、
前記嵌合方向に移動可能な第1上下可動部材と、
前記一方の部品により位置修正されるガイド部材と、
前記第1上下可動部材と前記ガイド部材とを接続するワイヤ部材と、
前記ガイド部材上に設けられて前記嵌合方向に移動可能な第2上下可動部材と、
前記第2上下可動部材に設けられて前記他方の部品を保持する保持部材と、
予め前記ガイド部材で前記一方の部品を保持した状態で、前記第2上下可動部材を用いて、前記保持部材で保持した前記他方の部品を前記一方の部品に対して相対移動させて嵌合を行う制御装置と、
を備えることを特徴とする部品嵌合装置。
【請求項2】
前記第2上下可動部材を前記嵌合方向に垂直な方向に移動可能に支持するカップリング機構を介して、前記第2上下可動部材を前記嵌合方向に変位させることを特徴とする請求項1記載の部品嵌合装置。
【請求項3】
3本以上のワイヤ部材により前記第1上下可動部材と前記ガイド部材とが接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の部品嵌合装置。
【請求項4】
前記第1上下可動部材を弾性体を介して弾性支持するプレートを設け、前記ワイヤ部材の圧縮方向に対して前記第1上下可動部材を変位可能に構成したことを特徴とする請求項1から3いずれか記載の部品嵌合装置。
【請求項5】
一方の部品に対して他方の部品を嵌合方向に相対移動させて嵌合を行う部品嵌合方法において、
前記嵌合方向に移動可能な第1上下可動部材とワイヤ部材を介して接続されたガイド部材を、前記第1上下可動部材で移動させつつ前記一方の部品の形状に追従移動させて、前記ガイド部材で前記一方の部品を保持した後、
前記ガイド部材上の第2上下可動部材に設けられた保持部材で保持された前記他方の部品を、前記第2上下可動部材で前記一方の部品に対して相対移動させて嵌合を行うことを特徴とする部品嵌合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図3(e)】
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【図3(f)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−104661(P2011−104661A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258787(P2009−258787)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】