説明

部品補修方法及び部品製造方法

本発明は、例えばガスタービンのステータ側の部品であるハウジングやガイド翼リングなどの部品を補修するための部品補修方法であって、前記部品から損傷部分を切除し、その損傷部分である切除部分に替えて交換用部分を溶接により前記部品に固定接合する部品補修方法に関する。本発明においては、補修対象部品である前記部品から前記損傷部分を切除する際にその切断線即ち予定溶接線の長さが最小になるようにして切除を行い、また、前記予定溶接線に沿った肉厚が可及的に均一になるように、前記切断線に沿った肉厚分布に応じて前記部品に肉削りを施し、また、前記部品に前記交換用部分を接合した後に、少なくとも前記肉削りにより除去した部分をレーザ粉末肉盛り溶接により再形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのステータ側の部品などを補修するための請求項1の前提部分に記載した種類の部品補修方法に関する。本発明は更に、請求項8の前提部分に記載した種類の部品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービンのステータ側の部品などを補修する際の部品補修作業においては、補修対象部品から損傷部分を切除し、その除去した部分に替えて、交換用部分を接合することを必要とすることがある。更に、その補修対象部品が、例えばガスタービンのガイド翼リングのように、かなりの素材の厚みのバラつきがあり、肉厚が非常に厚い部分と非常に薄い部分とを含んでいることもある。このような部品の補修を行う場合には、その部品から損傷部分即ち交換を要する部分を切除する際に、その切断線に沿った肉厚が、また従って、切断後に溶接を行う際の予定溶接線に沿った肉厚が、可及的に均一になるように、その切断線を選択して切除を行うようにしている。このようにすれば、その溶接線の全長において、可及的に一様な、そして適切な溶接を行うことができる。しかしながら、従来から採用されているこの作業方法には、短所が付随しており、その短所とは、補修対象部品から切除すべき部分によっては、また、その補修対象部品の肉厚分布によっては、切断線即ち予定溶接線を、非常に長く、複雑な形状にせざるを得ない場合があるということである。更に、溶接線の形状が複雑で、その全長が長いということは、その補修対象部品に施す必要のある、溶接のための前処理加工及び後処理加工もまた、大がかりなものとならざるを得ないことを意味している。これらは実に不都合なことである。新規に部品を製造する際にも、1つの部品を構成する複数の部品部分を、溶接によって互いに接合することを必要とする場合が多々あり、そのため、部品を新規に製造する場合にも、上述した問題と同様の問題に直面することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上の事情に鑑み成されたものであり、本発明の課題は、例えばガスタービンのステータ側の部品などを補修ないし製造するための新規な部品補修方法ないし部品製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る部品補修方法は、独立請求項である請求項1に明記されている通りのものである。
【0005】
本発明によれば、補修対象部品である前記部品から前記損傷部分を切除する際にその切断線即ち予定溶接線の長さが最小になるようにして切除を行い、また、前記予定溶接線に沿った肉厚が可及的に均一になるように、前記切断線に沿った肉厚分布に応じて前記部品に肉削りを施し、また、前記部品に前記交換用部分を接合した後に、少なくとも前記肉削りにより除去した部分をレーザ粉末肉盛り溶接により再形成する。
【0006】
本発明は、切断線即ち予定溶接線を、その長さが最短となるように設定することを提案するものであり、従って、その切断線即ち予定溶接線は、補修対象部品の肉厚分布とは独立して設定される。また、その一方で、切除後にその切除した部分に替えて用いる交換用部分を溶接により接合する際に、その溶接線に沿った肉厚が可及的に均一になるように、切断線の近傍領域において補修対象部品に肉削りを施すようにしており、そして、少なくともこの肉削りにより除去した部分を、補修対象部品に交換用部分を接合した後にレーザ粉末肉盛り溶接により再形成するようにしている。以上によって、切断線即ち溶接線の形状が複雑なものとなることを回避できるという利点が得られる。また、補修対象部品を多くの部品部分に分割せずに済む。そして、それらのことから、特に、コスト的な利点が得られる。
【0007】
本発明の特に有利な実施の形態においては、予定溶接線に沿った肉厚が最適溶接部肉厚となるように、前記切断線に沿った肉厚分布に応じて、前記部品のうちの肉厚が前記最適溶接部肉厚より厚い領域では前記部品に肉削りを施し、一方、前記部品のうちの肉厚が前記最適溶接部肉厚より薄い領域では前記部品に肉盛りを施すようにしている。
【0008】
本発明に係る部品製造方法は、独立請求項である請求項8に明記されている通りのものである。
【0009】
本発明の特に好適な実施の形態における特徴としては、従属請求項に記載し以下に説明する様々な特徴がある。これより図面に基づいて、本発明の具体的な実施の形態について説明して行くが、ただし本発明は、以下に説明する実施の形態のみに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
これより図1〜図4を参照しつつ、本発明について更に詳細に説明して行く。
【0011】
図1及び図2に示したのは、ガスタービンのステータ側に装備される部品であるガイド翼リング10の部分図である。このガイド翼リング10は、複数のガイド翼11を備えており、それらガイド翼11は、各々が径方向に延在すると共に、互いに周方向に間隔をあけて列設されている。図1及び図2から明らかなように、ガイド翼リング10は、その径方向外周部分12に、この外周部分12から外方へ突出した突起部13を備えており、この突起部13が形成されているために、その部分の肉厚が厚くなっている。そして、その結果、このガイド翼リング10は、その外周部分12の領域が、均一ではない肉厚分布を有する領域となっており、即ち、肉厚が比較的薄い部分と、肉厚が比較的厚い突起部13の部分とを含むものとなっている。
【0012】
以下の説明では、図1及び図2に示したガイド翼リング10の補修作業において、1本のガイド翼11を交換する必要があるものとする。そして、その具体例として、図2に示したガイド翼11が交換されるものとする。この場合、このガイド翼11をガイド翼リング10から切除するための最も短い切断線は、突起部13が形成されている領域を通過することになることは明白である。しかしながら、切断線というものは、切除の後に溶接を行う際の溶接継目(予定溶接線)となるものであり、その溶接線の通過領域の肉厚が不均一であっては不都合である。そのため従来は、切断線が、突起部13の形成領域を迂回するように設定されていた。そのことによって様々な問題が生じていたが、それらのうちでも特に、切断線即ち予定溶接線の形状が複雑になるということが大きな問題であった。
【0013】
本発明は、補修対象部品であるガイド翼リング10から、交換を要するガイド翼11を切除するに際して、その切断線即ち予定溶接線の長さが可及的に短くなるようにして切除を行うことを提案するものである。
【0014】
そのような可及的に短く設定した切断線即ち予定溶接線を、図3に参照符号14を付して示した。図3から明らかなように、この切断線14即ち予定溶接線は、突起部13の形成領域を通過して延在している。更に、本発明においては、そのように切断線即ち予定溶接線を設定した場合であってもなお、本来の部品の肉厚分布と無関係に、その予定溶接線の延在領域における肉厚が可及的に均一になるように、その切断線即ち予定溶接線に沿って肉削りを行うようにしている。図3に示した実施の形態では、突起部13が削り落とされることになる。この状態を示したのが図4であり、同図に示した外周部分12は、もはや突起部13を備えていない。図4には更に、切除したガイド翼11の替わりとなる交換用ガイド翼15が示されており、このガイド翼15は、その溶接線14に接する部分の肉厚が、ガイド翼リングの外周部分12の肉厚に合わせられている。これによって、切断線即ち溶接線を複雑な形状に設定することなく、溶接部の寸法形状を最適なものとすることが可能となっている。
【0015】
従って本発明では、予定溶接線に沿った肉厚が最適溶接部肉厚となるように、最短の長さに設定した切断線に沿った肉厚分布に応じて、補修対象部品の切断線の延在領域であってしかも肉厚が厚い領域では、肉削りを行うようにしている。即ち、切断線の延在領域であってしかも肉厚が最適溶接部肉厚より厚い領域では、補修対象部品に肉削りを施すようにしている。ただし、補修対象部品の切断線の延在領域の部分の肉厚が最適溶接部肉厚より薄いということもあり得る。その場合には、その補修対象部品の切断線即ち予定溶接線の延在領域に、レーザ粉末肉盛り溶接により肉盛りを施すようにするとよい。
【0016】
また、特に図3から明らかなように、ガイド翼リング10からガイド翼11を切除する際に、その切断線14が外周部分12の側縁部16に達してしまったならば、そのことによって、切除部分が「開放切欠部」を形成することになる。このように、切断線即ち予定溶接線の全周が補修対象部品の材料によって囲繞されないために「開放切欠部」が形成されてしまうと、その補修対象部品が大きく変形するおそれがある。そこで、本発明においては、ガイド翼リング10からガイド翼11を切除するのに先立って、レーザ粉末肉盛り溶接により、側縁部16に肉盛り部17を形成し、それによって、切断線14即ち予定溶接線の全周が補修対象部品の材料によって囲繞されるようにしている。
【0017】
更に、補修対象部品の切断線14即ち溶接線の延在部分に肉削りまたは肉盛りを施すことによって、溶接線の延在部分の全長に亘って最適な肉厚を保障することも、本発明に含まれるものである。
【0018】
ここで特に述べておくと、予定溶接線14に沿った肉厚を可及的に均一にするための肉削りないし肉盛りは、交換を要するガイド翼11の切除を行う前に実施してもよく、その切除を行った後に実施してもよい。また、切断線が「開放切欠部」を形成してしまうのを回避するために肉盛りを必要とする場合には、その肉盛りを、交換を要する部品部分の切除を行う前に実施するようにする。一方、肉削りを必要とする場合には、その肉削りを、交換を要する部品部分の切除を行った後に実施するのがよく、なぜならば、そうすることによって、交換を要する部品部分の領域の肉削りを省略できるからである。
【0019】
新しいガイド翼15(図4参照)を溶接によりガイド翼リング10に接合した後には、溶接線14に沿った肉厚を均一にするために先に肉削りして除去した部分を、レーザ粉末肉盛り溶接により再形成する。図示した実施の形態に即していえば、これは、最適溶接部肉厚とするために削り落とした突起部13を、ガイド翼リング10にガイド翼15を溶接した後に、レーザ粉末肉盛り溶接により再形成するということに他ならない。
【0020】
一方、最適溶接部肉厚とするために肉盛りを行った場合には、本発明においては、その肉盛りした部分を、溶接を行った後に除去するようにしている。図示した実施の形態に即していえば、これは、ガイド翼リング10にガイド翼15を接合した後に、肉盛り部17をいま一度除去して、凹凸のない側縁部16を再形成するということに他ならない。
【0021】
このように、溶接後の肉盛りないし肉削りを実施したならば、それに続いて表面仕上げ加工を実施するとよく、この表面仕上げ加工によって、補修が完了した補修対象部品の表面形状を、即ち、補修が完了したガイド翼リングの表面形状を、流体力学的に優れた所定の部品輪郭に仕上げることができる。
【0022】
以上から明らかなように、本発明に係る方法によれば、部品の補修に際して、その切断線即ち溶接線が複雑な形状となることを回避することができる。
【0023】
本発明に係る方法は、部品の新規製造に適用した場合にも、同様の効果をもたらすものである。その場合には、接合が完了した後に、それに続いて、レーザ粉末肉盛り溶接により、局所的な突起部ないし肉厚の厚い部分を形成するようにすればよい。これによって、顕著なコスト上の利点、作業手順上の利点、それに品質上の利点が得られ、これら利点が得られるのは、1つには、溶接線を簡明な形状にし得ることによるものであり、もう1つには、溶接線に沿った溶接部肉厚を均一にし得ることによるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】補修対象部品であるガスタービンのステータ側の部品即ちガイド翼リングの部分平面図である。
【図2】補修対象部品である図1のステータ側の部品の部分側面図である。
【図3】補修対象部品である図1のステータ側の部品の部分平面図であり、本発明方法を明示するための図である。
【図4】補修対象部品である図3のステータ側の部品の部分側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのステータ側の部品であるハウジングやガイド翼リングなどの部品を補修するための部品補修方法であって、前記部品から損傷部分を切除し、その損傷部分である切除部分に替えて交換用部分を溶接により前記部品に固定接合する部品補修方法において、
補修対象部品である前記部品から前記損傷部分を切除する際にその切断線即ち予定溶接線の長さが最小になるようにして切除を行い、また、前記予定溶接線に沿った肉厚が可及的に均一になるように、前記切断線に沿った肉厚分布に応じて前記部品に肉削りを施し、また、前記部品に前記交換用部分を接合した後に少なくとも前記肉削りにより除去した部分をレーザ粉末肉盛り溶接により再形成する、
ことを特徴とする部品補修方法。
【請求項2】
前記予定溶接線に沿った肉厚が最適溶接部肉厚となるように、前記切断線に沿った肉厚分布に応じて、前記部品のうちの肉厚が前記最適溶接部肉厚より厚い領域では前記部品に肉削りを施し、一方、前記部品のうちの肉厚が前記最適溶接部肉厚より薄い領域では前記部品に肉盛りを施すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記予定溶接線に沿った肉厚を可及的に均一な肉厚とするために行う前記肉削り及び必要に応じて行う肉盛りを、前記損傷部分の切除を行う前または切除を行った後のいずれかに実施することを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
補修対象部品である前記部品から前記損傷部分を切除する際にその切断線即ち予定溶接線の長さが最短となるようにして切除を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
前記部品に前記交換用部分を接合した後に、前記部品のうちの肉削りを施した領域と、前記交換用部分の領域とに、レーザ粉末肉盛り溶接により肉盛りを施して、補修が完了した前記部品に所定の輪郭を付与することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載した方法に続いて、表面仕上げ加工を実行することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の方法の用途において、
ハウジングやガイド翼リングなどの、ガスタービンの、また特に航空機用エンジンであるガスタービンの、ステータ側の部品の補修に用いることを特徴とする用途。
【請求項8】
ガスタービンのステータ側の部品であるハウジングやガイド翼リングなどの部品を製造するための部品製造方法であって、少なくとも2個の部品部分を溶接により互いに固定接合する部品製造方法において、
互いに接合する前記部品部分が、予定溶接線の領域において、該予定溶接線に沿った肉厚が均一であるようにしておき、前記部品部分を互いに接合した後に、レーザ粉末肉盛り溶接による肉盛りを実行して、所定の部品輪郭を得るようにする、
ことを特徴とする部品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507412(P2008−507412A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521786(P2007−521786)
【出願日】平成17年7月16日(2005.7.16)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001257
【国際公開番号】WO2006/010357
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(391028384)エムテーウー・アエロ・エンジンズ・ゲーエムベーハー (26)
【住所又は居所原語表記】DACHAUER STRASSE 665,80995 MUENCHEN,GERMANY
【Fターム(参考)】