説明

配信システムと配信装置と端末装置および配信方法

【課題】コンテンツの権利保護が可能であって、低帯域環境下においても高品質で再生できる疑似的なストリーミング動作を行う。
【解決手段】ネットワーク80を介して端末装置40から配信データの供給指示があったとき、外部機器70から供給されたコンテンツの信号を配信データとして配信装置20から端末装置40に供給して蓄積させる。蓄積された配信データを再生するとき、端末装置40から配信装置20に対して再生通知を行い、この再生通知に応じて配信装置20から再生許可通知を端末装置40に供給する。端末装置40は、再生許可通知に基づき配信データの再生を行い、再生許可通知が所定期間供給されなかったとき再生を終了する。配信装置20から再生許可通知の供給期間中のみ、蓄積されている配信データを用いて高品質に再生が可能となり、擬似的なストリーミング動作を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配信システムと配信装置と端末装置および配信方法に関する。詳しくは、映像や音声等のデジタルデータをユーザに配信する際に、コンテンツの権利保護が可能でであって、伝送路が低帯域であってもユーザ側で映像や音声を高品質に提示可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの高速化やパーソナルコンピュータ、デジタルテレビジョン受信機等の一般家庭への急速な普及により、VOD(ビデオ・オン・デマンド)等のリクエスト型の情報提供サービスが広く実用化されている。とりわけ、画像を再現する画像データの断片をパケットとし、パケットの集合をストリームとして送信し、受信端末側にて画像データ全体をダウンロードすることなく順次再生するストリーミングと呼ばれる技術が脚光を浴びている。このようなストリーミングによる配信方式を利用することで、ダウンロード方式に比べて、即座に画像や音声を再生することが可能となる。
【0003】
このようなストリーミング配信システムは、コンテンツホルダと呼ばれる映像や音楽等のコンテンツの所有者が所有するストリームサーバ装置と、ユーザが使用する端末装置とが、インターネット、CATV等のネットワークを介して接続され、構成される。ここで、端末装置は、パーソナルコンピュータ、セットトップボックス、携帯情報端末装置、又は携帯電話等の情報機器である。
【0004】
このような従来のストリーム配信システムにおけるリクエスト型の情報提供サービスは、次に説明するようなストリーム情報の配信を行う。すなわち、ストリームサーバ装置には、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)等の規格に基づいて圧縮符号化され、AES等の暗号化手段により暗号化され、さらにパケット化、すなわちストリーム化された、映像や音楽等の様々なストリーム情報が蓄積されている。また、ユーザは、コンテンツホルダが所有するコンテンツのストリーム情報のうち、視聴したいコンテンツを、端末装置に搭載されたアプリケーション等の表示にしたがい、入力手段によって選択する。選択されたコンテンツの名前等の情報がネットワークを介してストリームサーバ装置へ送信される。要求を受けたストリームサーバ装置では、ユーザが配信を要求するコンテンツのストリーム情報を選択して、ネットワークを通じて、配信を要求したユーザの使用する端末装置に送信する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−324712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなストリーム配信システムでは、配信されるコンテンツの画質や音質は通信環境に影響されてしまい、通信で使用する周波数帯域が低い周波数であったり帯域幅が狭い環境下(以下「低帯域環境下」という)では、高品質でコンテンツの再生例えばコンテンツの映像や音声の提示を行うことができないという課題がある。
【0007】
一方でダウンロード配信システムの場合、コンテンツの信号のダウンロードが完了してから再生が開始されるので、ストリーム配信システムにおける課題は解決される。しかし、配信されるコンテンツの信号はデジタル信号の形態で配信されており、端末側にはコンテンツの信号が全て蓄積されることとなる。したがって、端末側では、配信されたコンテンツを完全な状態で不正コピーすることが可能となり、コンテンツの権利保護例えば著作権等を保護することができないおそれがある。このため、端末側に蓄積されたコンテンツの信号が不正コピーされてしまうことを防止する措置等を講じなければならない。
【0008】
そこで、本発明では、コンテンツの権利保護が可能であって、低帯域環境下においても高品質でコンテンツの再生を行える疑似的なストリーミング動作を行うものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の概念は、端末側からの配信データの供給指示に応じて配信側から配信データを供給して端末側に蓄積させておく。また、蓄積されている配信データを端末側で再生するときには、端末側から配信側に対して再生通知を行い、この再生通知に応じて配信側から供給された再生許可通知に基づき配信データの再生を行う。さらに、再生許可通知が所定期間供給されなかったとき配信データの再生を終了することで、配信側から再生許可通知の供給が行われている期間中のみ、蓄積されている配信データを用いて高品質でコンテンツの再生を行える擬似的なストリーミング動作を行うものである。
【0010】
この発明の配信システムは、配信装置と端末装置がネットワークを介して接続されている配信システムにおいて、前記配信装置は、前記端末装置に配信データを供給する配信処理部と前記端末装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、前記端末装置は、前記配信装置から供給された配信データを蓄積する蓄積処理部と、該蓄積処理部に蓄積されている配信データを読み出して再生する再生処理部と、前記配信装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、前記配信装置の通信制御処理部は、前記端末装置からの配信データの供給指示に応じて前記配信処理部を制御して前記配信データの供給を行い、前記端末装置からの再生通知に対して再生許可通知を行うものとし、前記端末装置の通信制御処理部は、前記配信装置に対して配信データの供給指示を行い、該供給指示に応じて前記配信装置から供給された配信データを前記蓄積処理部に蓄積させるものとし、該蓄積された配信データを再生するときには、前記配信装置に対して再生通知を行い、該再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記再生処理部で前記配信データを再生するものである。
【0011】
また、この発明の配信装置は、端末装置に配信データの供給を行う配信処理部と前記端末装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、前記通信制御処理部は、前記端末装置からの配信データの供給指示に応じて前記配信処理部を制御して前記配信データの供給を行い、前記端末装置からの再生通知に対して再生許可通知を行うものである。
【0012】
また、この発明に係る端末装置は、配信装置から供給された配信データを蓄積する蓄積処理部と、前記蓄積処理部に蓄積されている配信データを読み出して再生する再生処理部と、配信装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、前記通信制御処理部は、前記配信装置に対して配信データの供給指示を行い、該供給指示に応じて前記配信装置から供給された配信データを前記蓄積処理部に蓄積させるものとし、該蓄積された配信データを再生するときには、前記配信装置に対して再生通知を行い、該再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記再生処理部で前記配信データを再生するものである。
【0013】
また、この発明に係る配信方法は、ネットワークを介して配信側と端末側を接続して配信を行う配信方法において、前記配信側は、前記端末側からの配信データの供給指示に応じて配信データの供給を行うステップと、前記端末側からの再生通知に対して再生許可通知を行うステップを有し、前記端末側は、前記配信側に対して前記配信データの供給指示を行うステップと、該供給指示に応じて前記配信側から供給された配信データを蓄積するステップと、該蓄積された配信データを再生するときに前記配信側に対して再生通知を行うステップと、前記再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記蓄積された配信データの再生を行うステップを有するものである。
【0014】
この発明では、端末側からの配信データの供給指示に対して配信側から例えばエンクリプト処理された配信データやデータの一部が抜き出されている配信データの供給が行われて、供給された配信データは端末側に蓄積される。蓄積されている配信データを端末側で再生するとき、端末側では配信側に対して再生通知が行われる。配信側では、再生通知に対して認証を行い、認証できた端末側に対して再生許可通知の供給が行われる。また、再生許可通知では、エンクリプト処理が行われている配信データのデクリプト処理に用いる暗号鍵の供給も行われる。さらに、再生する配信データにおいてデータの一部が抜き出されているときは、抜き出されたデータの供給も行う。端末側は、配信側から供給された再生許可通知に基づき配信データの再生を行う。例えば暗号鍵を用いたデクリプト処理や抜き出されたデータを用いて再生を行う。さらに、端末側では、再生許可通知例えばキープアライブ信号が所定期間供給されなかったとき、再生が終了される。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、配信側では、端末側からの配信データの供給指示に応じて配信データの供給や、端末側からの再生通知に応じて該端末側に対して再生許可通知が行われる。また、端末側では、配信データの供給指示に応じて配信側から供給された配信データの蓄積が行われて、この蓄積された配信データを再生するときには、配信側に対して再生通知が行われる。この再生通知に対して、配信側から供給された再生許可通知に基づき配信データの再生が行われて、再生許可通知が所定期間供給されなかったとき再生が終了される。
【0016】
このため、端末側と配信側を接続する伝送路が低帯域であっても、配信側から再生許可通知の供給が行われている期間中のみ、蓄積されている配信データを利用して高品質でコンテンツの再生を行える擬似的なストリーミング動作が可能となる。また、配信データの供給指示に応じて配信側から端末側に供給された配信データを取得しても、この配信データだけでコンテンツの再生を行うことができないことから、セキュアな再生が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、この発明の実施の一形態について説明する。図1は、配信システムの構成を示している。配信システム10は、配信装置20と端末装置40がネットワーク80を介して接続された構成とされている。例えば、配信装置20と端末装置40は、送受信アンテナ353,511を用いた無線信号の送受信によって、無線ネットワーク80rを構成するようになされており、この無線ネットワーク80rを介して双方向通信を行う。また、配信装置20と端末装置40は、有線ネットワーク80wに接続可能とされており、この有線ネットワーク80wを介して双方向通信を行う。
【0018】
配信装置20は、映像信号や音声信号の出力が可能な外部機器70、例えばVCR(Video Cassette Recorder)やDVD(Digital Versatile Disk)装置、又はHDD(Hard Disk Drive)を用いた記録再生装置等が接続可能とされている。また、配信装置20には、リモートコントロール信号IRを送信するリモコン信号送信部28が接続されており、リモコン信号送信部28から送信されたリモートコントロール信号IRによって、外部機器70の動作が制御可能とされている。この配信装置20は、外部機器70から供給された映像や音声のコンテンツの信号、又は配信装置20が保持している映像や音声のコンテンツの信号等を用いて配信データの生成を行う。さらに、配信装置20は、生成した配信データを、ネットワーク80を介して端末装置40に送信する処理を行う。
【0019】
端末装置40は、映像表示装置や音声出力装置が接続可能とされている。なお、図1では、映像表示装置および音声出力装置として、映像表示と音声出力が可能であるテレビジョン装置75を用いた場合を図示している。端末装置40は、配信装置20から供給された配信データを受信して、映像や音声のコンテンツの信号をテレビジョン装置75に供給することで、配信装置20から配信されたコンテンツの映像や音声をテレビジョン装置75で提示させる。
【0020】
また、端末装置40は、ユーザ操作に応じてリモートコントロール装置65から送信されたリモートコントロール信号IRに基づいた動作や、端末装置40に設けられている操作キーのユーザ操作に応じた動作を行う。さらに、端末装置40は、リモートコントロール信号IRやユーザのキー操作に基づき情報信号を生成して、ネットワーク80を介して配信装置20に供給することで、ユーザ操作に応じて配信装置20を動作させるものとしたり、リモコン信号送信部28からリモートコントロール信号IRを出力させて外部機器70の制御を行う。
【0021】
また、端末装置40には、テレビジョン装置75を利用したソフトウェアキー機能を設けるものとしてもよい。この場合、テレビジョン装置75の画面上に表示した操作入力表示を、リモートコントロール装置65等を利用して操作することで、例えば端末装置40の設定や動作の切替え、配信装置20の設定や動作の切替えなどを容易に行うことができる。
【0022】
このように配信システム10を構成することで、映像表示装置や音声出力装置が配信装置20から離れた場所に設けられていても、この映像表示装置や音声出力装置を端末装置40に接続して、ネットワーク80を介した双方向通信を行うことで、配信装置20から配信データを端末装置40に供給して、配信したコンテンツの映像や音声を端末装置40に接続された映像表示装置や音声出力装置で提示させることができる。
【0023】
さらに、無線ネットワーク80rを利用して双方向通信を行う場合、配信装置20と端末装置40をケーブルで接続する必要がないので、例えば家庭内等で配信システムを簡単に構成できる。また、有線ネットワーク80wを利用して双方向通信を行う場合には、互いの無線信号が届かないような離れた位置に配信装置20と端末装置40が設けられても、配信装置20から端末装置40に対して配信データを供給できる。このため、例えばインターネットを利用して配信装置20と端末装置40との双方向通信を行うものとすれば、配信装置20が設けられている国の放送番組等を、異なる国に設けられた端末装置40に接続されたテレビジョン装置等で視聴することが可能となる。なお、図示せずも、無線ネットワーク80rではアクセスポイント、有線ネットワーク80wではルータ等も用いられる。
【0024】
次に、配信装置20と端末装置40について説明する。図2は配信装置のアーキテクチャを示している。配信処理部21のファイルシステム211から読み出されたコンテンツの映像データDVsは、ビデオエンコーダ212で符号化処理されることによりデータ量が削減されて、符号化データDVsaとしてビデオエンクリプト処理部213に供給される。ビデオエンクリプト処理部213は、符号化データDVsaのエンクリプト処理を行う。エンクリプト処理は、配信したコンテンツの再生が許可された端末装置40でデクリプト処理が可能であれば、秘密鍵方式又は公開鍵方式のいずれであってもよい。なお、この実施の形態では、暗号化方式として例えはAES(Advanced Encryption Standard)等の秘密鍵方式を用いるものとする。ビデオエンクリプト処理部213で符号化データDVsaのエンクリプト処理を行うことにより得られた暗号化データDVsbは、配信データ送信部216に供給される。
【0025】
ファイルシステム211から読み出されたコンテンツの音声データDAsは、オーディオエンコーダ214で符号化処理されることによりデータ量が削減されて、符号化データDAsaとしてオーディオエンクリプト処理部215に供給される。オーディオエンクリプト処理部215は、ビデオエンクリプト処理部213と同様に符号化データDAsaのエンクリプト処理を行い、得られた暗号化データDAsbを配信データ送信部216に供給する。
【0026】
配信データ送信部216は、暗号化データDVsbと暗号化データDAsbを多重化してストリームデータを生成する。さらに、配信データ送信部216は、生成したストリームデータをパケット化して配信データDTとして、端末装置40にネットワーク80を介して送信する。また、配信データ送信部216は、例えばストリームデータをパケット化する際に、パケット化されたデータを受信しただけでは元のストリームデータを復元できないように、データの一部が抜き出されている配信データを生成して送信するものとしてもよい。
【0027】
通信制御処理部22は、ネットワーク80を介して端末装置40と通信を行うためのものであり、端末装置40の認証や端末装置40に対して再生許可通知を行うことで、配信データのセキュアな再生を可能とする。通信制御処理部22は、再生許可通知として、ビデオエンクリプト処理部213やオーディオエンクリプト処理部215でエンクリプト処理を行ったときに用いた暗号鍵や抜き出したデータ(以下「抜き出しデータ」という)を含む再生制御情報を端末装置40に供給する。また、通信制御処理部22は、再生許可通知としてキープアライブ信号を用いる。ここで、再生許可通知として再生制御情報を供給すれば、端末装置40は、再生制御情報が供給されたとき、この供給された再生制御情報を利用してコンテンツの再生を正しく行うことができる。また、キープアライブ信号を利用すれば、認証された端末装置40との通信路が形成されている期間中のみ、端末装置40の再生動作を許可することができる。以下、再生許可通知として再生制御情報とキープアライブ信号を用いるものとして説明を行う。
【0028】
リモコン信号送信部28は、上述のようにリモートコントロール信号IRを送信するためのものであり、外部機器70をファイルシステム211として用いる場合に設けられる。
【0029】
図3は、端末装置のアーキテクチャを示している。ネットワーク80を介して供給された配信データDTは、蓄積処理部41の配信データ受信部411で受信される。配信データ受信部411は、受信した配信データDTを、例えばHDDなどを用いて構成されたファイルシステム412に蓄積させる。
【0030】
通信制御処理部42は、後述するユーザインタフェース部59からの情報に基づき、蓄積処理部41の動作や後述する再生処理部43の動作の制御、ネットワーク80を介した配信装置20と双方向通信等を行うためのものである。通信制御処理部42は、ユーザインタフェース部59から例えば配信データの再生操作を示す情報が供給されたとき、配信装置20への再生通知や配信装置20からの再生許可通知の取得を行い、配信データのセキュアな再生を可能とする。また、通信制御処理部42は、再生する配信データをファイルシステム412から読み出して再生処理部43に供給する。例えば、再生する配信データから映像と音声の暗号化データを分離して、映像の暗号化データDVsbを再生処理部43のビデオデクリプト処理部431、音声の暗号化データDAsbを再生処理部43のオーディオデクリプト処理部434にそれぞれ供給する。また、通信制御処理部42は、データの一部が抜き出されている配信データの再生を行うとき、抜き出しデータを配信装置20から取得して、データの欠落がない暗号化データを再生処理部43に供給する処理も行う。
【0031】
ビデオデクリプト処理部431は、暗号化データDVsbを暗号化前の符号化データDVsaに戻すデクリプト処理を行う。デクリプト処理では、配信装置20から入手した暗号鍵を用いる。ビデオデクリプト処理部431で得られた符号化データDVsaは、ビデオデコーダ部432に供給される。ビデオデコーダ部432は、符号化データDVsaを符号化前の映像データDVsに戻すデコード処理を行い、得られた映像データDVsをビデオレンダラ部433に供給する。ビデオレンダラ部433は、映像データDVsや種々のメニュー表示を行うための映像データ等を用いて、映像提示のための映像信号Voutを生成して出力する。
【0032】
オーディオデクリプト処理部434は、ビデオデクリプト処理部431と同様に、暗号化データDAsbを暗号化前の符号化データDAsaに戻すデクリプト処理を行い、得られた符号化データDAsaをオーディオデコーダ部435に供給する。オーディオデコーダ部435は、符号化データDAsaを符号化前の音声データDAsに戻すデコード処理を行い、得られた音声データDAsをオーディオレンダラ部436に供給する。オーディオレンダラ部436は、音声データDAsから音声提示のための音声信号Aoutを生成して出力する。
【0033】
ユーザインタフェース部59は、操作キーやリモートコントロール信号IRを受信するリモコン信号受信部を用いて構成されており、どのようなユーザ操作が行われたかを示す情報を通信制御処理部42に供給するためのものである。
【0034】
次に、配信装置20のハードウェア構成を図4に示す。データ蓄積部31は、HDD等を用いて構成されており、端末装置40に配信する映像データや音声データ等を蓄積しておくものである。このデータ蓄積部31に蓄積されている映像データや音声データは、後述する配信制御部37からの指示に基づいて読み出されたのち、セレクタ33に供給される。
【0035】
入力端子32は、配信装置20に外部機器70を接続するためのものであり、入力端子32を介して外部機器70から供給された映像データや音声データは、セレクタ33に供給される。
【0036】
セレクタ33は、配信制御部37からの制御信号CTseに基づき、データ蓄積部31から供給された映像データDVpと音声データDAp、又は入力端子32を介して外部機器70から供給された映像データDVinと音声データDAinを選択して、選択した映像データDVsと音声データDAsを配信データ生成部34に供給する。なお、図示せずも、配信装置20にチューナを設けて、チューナで選局した放送番組の映像データと音声データを配信データ生成部34に供給できるようにしてもよい。
【0037】
配信データ生成部34は、供給された映像データDVsと音声データDAsの符号化処理を行いデータ量を削減する。また、配信データ生成部34は、符号化処理を行うことにより得られた映像と音声の符号化データをエンクリプト処理して暗号化データとする。また、配信データ生成部34は、映像の暗号化データと音声の暗号化データを多重化してストリームデータを生成して、このストリームデータをパケット化して配信データDTとして通信部35に供給する。さらに、配信データ生成部34は、例えばストリームデータをパケット化する際、パケット化されたデータを受信しただけでは元のストリームデータを復元できないように、データの一部が抜き出されている配信データを生成するものとしてもよい。また、配信データ生成部34は、配信データを識別可能とする識別情報に対して、この配信データのデクリプト処理に用いる暗号鍵や、この配信データに対応する抜き出しデータを関係付けて、再生制御情報HPとして例えばデータ蓄積部31や配信制御部37に保持させる。このように再生制御情報HPを保持しておけば、データの一部が抜き出されている配信データの再生が端末装置40で行われるとき、配信データの再生が許可された端末装置40に対して、再生される配信データに対応した再生制御情報HPを供給することが可能となり、許可された端末装置40で配信データの再生を正しく行うことができる。
【0038】
通信部35の無線送信処理部351は、配信データDTや後述する配信制御部37から供給された情報信号TDaを、予め決められた通信プロトコルに準拠した信号に変換する。この変換後の信号に端末装置40のアドレス等を示すヘッダ情報等を付加する。さらに、インタリーブ処理や変調処理および増幅処理等を行い、例えばIEEE(Institute Electrical and Electronics Engineers)802.11方式のプロトコル等に準拠した送信信号RFatに変換する。
【0039】
このようにして生成された送信信号RFatは、アンテナ共用器(デュプレクサ)352、送受信アンテナ353を通じて無線送信される。なお、デュプレクサ352は、送信信号と受信信号とが干渉し合うことを防止するものである。
【0040】
送受信アンテナ353で無線信号を受信して得られた受信信号RFbrは、デュプレクサ352を通じて無線受信処理部354に供給される。無線受信処理部354は、受信信号RFbrの増幅処理や復調処理等を行う。さらに、ヘッダ情報が自己のアドレスを示す自己宛の信号を取り出して、情報信号TDbとして配信制御部37に供給する。
【0041】
通信インタフェース部355は、配信データDTや配信制御部37から供給された情報信号TDaを、上述のように予め決められた通信プロトコルに準拠した信号に変換する。この変換後の信号に端末装置40のアドレス等を示すヘッダ情報等を付加してフレーム化したのち、フレームヘッダを付加して通信信号LSaとして有線ネットワーク80wに送信する。また、有線ネットワーク80wを介して供給された通信信号LSbから自己宛のフレームの選択等を行い、得られた情報信号TDbを配信制御部37に供給する。なお、通信インタフェース部355では、公衆通信回線と接続するための通信デバイス(例えばモデムやターミナルアダプタ)が、配信装置20と独立して設けられていないときには、この通信デバイスを通信インタフェース部355に設けるものとする。
【0042】
リモコン信号送信部28は、配信制御部37から供給されたリモコンコード情報Jrmbに基づいたリモートコントロール信号IRを生成して送信する。例えば、赤外線を用いたリモートコントロール信号IRを送信する。
【0043】
配信制御部37は、CPU(Central Processing Unit)371、ROM(Read Only Memory)372、RAM(Random Access Memory)373、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)374を用いて構成されている。また、配信制御部37と上述の各部はバス36を通じて接続されている。
【0044】
ROM372は、配信装置20を動作させるための各種のプログラムや処理に必要なデータなどが記録されたものである。RAM373は、CPU371で各種の処理を行うときに得られたデータを一時的に記憶保持するなど、主に各種の処理の作業領域として用いられるものである。EEPROM374は、いわゆる不揮発性のメモリであり、電力供給が停止されても、書換え可能な情報が失われることなく保持されるものである。例えば、配信装置20の設定状態を示す情報等が記憶される。
【0045】
CPU371は、ROM372に記憶されているプログラムを実行して、配信装置20が所望の動作となるように各部の制御を行う。例えば受信した情報信号TDbに応じて、制御信号CTp,CTseや情報信号TDaおよびリモコンコード情報Jrmbの生成等を行う。情報信号TDaの生成では、例えば再生制御情報HP等を用いるものとする。また、CPU371は、キープアライブ信号のパケットを情報信号TDaとして生成する、又はキープアライブ信号のパケットを通信部35で生成するように制御するものとしてもよい。なお、CPU371は、図示せずも、配信データ生成部34や通信部35の設定や動作の制御等行う制御信号等の生成も行う。
【0046】
図5は、端末装置40のハードウェア構成を示している。通信部51の送受信アンテナ511で無線信号を受信することにより得られた受信信号RFarは、デュプレクサ512を介して無線受信処理部513に供給される。
【0047】
無線受信処理部513は、配信装置20における通信部35の無線受信処理部354と同様に、供給された受信信号RFarの増幅処理や復調処理等を行う。ここで、無線受信処理部513は、配信データDTが得られたとき、この配信データDTを配信データ蓄積部52に蓄積させる。また、情報信号TDaが得られたとき、この情報信号TDaを端末制御部57に供給する。
【0048】
配信データ蓄積部52は、配信装置20から配信された配信データを蓄積する。また、後述する端末制御部57からの制御信号CTqに基づいて、蓄積している配信データの読み出しを行い、読み出した配信データDTを配信データ再生部53に供給する。
【0049】
配信データ再生部53は、配信データ蓄積部52から読み出された配信データDTから映像と音声の暗号化データを分離して、それぞれの暗号化データを暗号化前の符号化データに戻すデクリプト処理、および符号化データを符号化前の映像データと音声データに戻すデコード処理を行う。さらに、符号化前の映像データや種々のメニュー表示を行うための映像データ等を用いて、映像提示のための映像信号Voutを生成して出力端子54から出力する。また、符号化前の音声データから音声提示のための音声信号Aoutを生成して出力端子54から出力する。この配信データ再生部53は、配信装置20から供給された再生制御情報HPに含まれている暗号鍵を用いてデクリプト処理を行う。また、再生制御情報HPに含まれている抜き出しデータを用いて、データの欠落がない暗号化データに戻してから再生処理を行う。
【0050】
通信部51の無線送信処理部514は、配信装置20における通信部35の無線送信処理部351と同様に、端末制御部57から供給された情報信号TDbに基づき、予め決められた通信プロトコルに準拠した送信信号RFbtを生成する。さらに、生成した送信信号RFbtを、デュプレクサ512および送受信アンテナ511を通じて無線送信する。
【0051】
通信インタフェース部515は、有線ネットワーク80wを介して供給された通信信号LSaから自己宛のフレームの選択等を行う。ここで、情報信号TDaが得られたときは、情報信号TDaを端末制御部57に供給する。また、配信データDTが得られたときは、配信データDTを配信データ蓄積部52に供給する。さらに、通信インタフェース部515は、端末制御部57から供給された情報信号TDbを、上述のように予め決められた通信プロトコルに準拠した信号に変換する。この変換後の信号に、配信装置20のアドレス等を示すヘッダ情報等を付加してフレーム化したのち、フレームヘッダを付加して通信信号LSbとして有線ネットワーク80wに送信する。なお、通信インタフェース部515では、公衆通信回線と接続するための通信デバイス(例えばモデムやターミナルアダプタ)が、端末装置40と独立して設けられていないときには、この通信デバイスを通信インタフェース部415に設けるものとする。
【0052】
ユーザインタフェース部59は、リモートコントロール装置65から送信されたリモートコントロール信号IRを受信してデコードを行いリモコンコード情報Jrmaを生成して端末制御部57に供給する。又は、ユーザのキー操作に基づいたリモコンコード情報Jrmaを生成して端末制御部57に供給する。
【0053】
端末制御部57は、CPU571、ROM572、RAM573、EEPROM574を用いて構成されている。また、端末制御部57と上述の各部はバス56を介して接続されている。
【0054】
ROM572は、端末装置40を動作させるための各種のプログラムや処理に必要なデータなどが記録されたものである。RAM573は、CPU571で各種の処理を行うときに得られたデータを一時的に記憶保持するなど、主に各種の処理の作業領域として用いられるものである。EEPROM574は、いわゆる不揮発性のメモリであり、電力供給が停止されても、書換え可能な情報が失われることなく保持されるものである。このEEPROM574には、端末装置40の設定状態を示す情報等が記憶される。
【0055】
CPU571は、ROM572に記憶されているプログラムを実行して、端末装置40が所望の動作となるように各部の制御を行う。例えば、リモコンコード情報Jrmaに基づき、制御信号CTqの生成や情報信号TDbの生成を行う。また、受信した情報信号TDaに基づき、配信データ再生部53の再生動作の制御や、情報信号TDaに含まれている再生制御情報HPを配信データ再生部53に供給する処理を行う。また、CPU571は、通信部35の設定や動作の制御等も行う。
【0056】
なお、配信装置20や端末装置40では、配信制御部37や端末制御部57で実行するプログラムを記録媒体に記憶しておき、この記録媒体に記録されたプログラムを読み出してEEPROM374,574に記憶させて、CPU371,571で実行させるものとしてもよい。さらに、プログラムを無線ネットワーク80rや有線ネットワーク80wを介して、EEPROM374,574に記憶させて、CPU371,571で実行させることもできる。また、プログラムだけでなく、更新データ等を記憶媒体に記録して、この記録媒体に記録された更新データ等で配信制御部37や端末制御部57に記憶されているデータを更新するものとしてもよい。さらに、無線ネットワーク80rや有線ネットワーク80wを介して更新データ等の供給を行うことで、配信制御部37や端末制御部57に記憶されているデータを更新することもできる。
【0057】
次に、配信システムの動作について説明する。配信装置20は、端末装置40に対して配信データを送信する配信データ送信スレッドを有しており、端末装置40は、配信装置20から送信される配信データを受信する配信データ受信スレッドを有している。また、配信装置20と端末装置40は、配信装置20から端末装置40における配信データの再生を制御する再生制御通信スレッドを有している。
【0058】
図6は、配信装置20で行われる配信データ送信スレッドの動作を示すフローチャート、図7は、端末装置40で行われる配信データ受信スレッドの動作を示すフローチャート、図8は、端末装置40で行われる再生制御通信スレッドの動作を示すフローチャート、図9は、配信装置20で行われる再生制御通信スレッドの動作を示すフローチャートである。
【0059】
図6において、ステップST1で配信装置20は、端末装置40からの配信データの供給指示が行われたか否かを判別する。配信装置20は、端末装置40から配信データの供給指示が行われたときステップST2に進み、配信データの供給指示が行われていないときステップST1に戻る。例えば、配信データの供給指示として、ユーザが端末装置40の操作キーやリモートコントロール装置65を操作して端末装置側から外部機器70の遠隔操作を行い、外部機器70から映像や音声のコンテンツの信号を出力させることで、配信装置20にコンテンツの信号を供給させるとき、供給指示が行われたものと判別してステップST2に進む。又は配信データの供給指示として、ユーザが端末装置40の操作キーやリモートコントロール装置65を操作して、配信装置20に蓄積されている映像や音声のコンテンツを再生する指示が行われたとき、供給指示が行われたものと判別してステップST2に進む。
【0060】
ステップST2で配信装置20は、配信データの供給指示を行った端末装置40の認証を行い、認証できたときにはステップST3に進み、認証できないときにはステップST1に戻る。この認証処理では、予め登録した認証情報と配信データの供給指示を行った端末装置40から供給された認証情報が一致するとき、認証できたものとする。認証情報は、例えば端末装置自身が所有する固有の識別情報を利用してもよく、またユーザ固有の識別情報とパスワード等を利用してもよい。さらに、これらの情報を組み合わせて用いるものとしてもよい。
【0061】
ステップST3で配信装置20は、配信データを識別可能とする識別情報を設定してステップST4に進む。この識別情報の設定では、例えば配信装置20と端末装置40との通信路が形成されている期間単位で識別情報(以下「セッションID」という)を設定する。
【0062】
ステップST4で配信装置20は、暗号鍵を生成してステップST5に進む。
【0063】
ステップST5で配信装置20は、再生制御情報の保存を行いステップST6に進む。ここで、配信装置20は、ステップST4で生成した暗号鍵を再生制御情報として、この再生制御情報をステップST3で生成したセッションIDと関係付けて保持する。また、配信データの供給指示を行った端末装置側でのみ配信データの再生を許可するときには、この端末装置側から供給された認証情報もセッションIDと関係付けて保持するものとしてもよい。
【0064】
ステップST6で配信装置20は、ステップST3で生成したセッションIDを端末装置40に送信したのちステップST7に進む。
【0065】
ステップST7で配信装置20はコンテンツデータの取り込みを行う。配信装置20は、例えば外部機器70から供給された映像データや音声データ、又は配信装置20に蓄積されている映像データや音声データを取り込みステップST8に進む。
【0066】
ステップST8で配信装置20は配信データの生成を行う。配信装置20は、ステップST7で取り込んだ映像データや音声データの符号化処理やエンクリプト処理および多重化処理等を行い配信データを生成してステップST9に進む。また、配信データの生成では、上述のようにデータの一部を抜き出すものとしてもよい。この場合、抜き出しデータは、再生制御情報に含めるものとする。
【0067】
ステップST9で配信装置20は配信データの送信を行い、ステップST8で生成した配信データを認証できた端末装置40に供給してステップST10に進む。
【0068】
ステップST10で配信装置20は送信終了であるか否か判別する。ここで、配信装置20は、端末装置40から通信の切断要求がなされたとき、又は配信するコンテンツが端末装置40から指定されており、この指定されたコンテンツの送信が完了したとき、配信データ送信スレッドを終了する。また、端末装置40から通信の切断要求がなされていないときや、指定されたコンテンツの送信が完了していないときにはステップST7に戻る。
【0069】
次に、端末装置40で行われる配信データ受信スレッドの動作について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0070】
ステップST21で端末装置40は配信データの供給指示を行う。端末装置40は、外部機器70から映像や音声のコンテンツの信号を配信装置20に供給させる遠隔操作や、配信装置20に蓄積されている映像や音声のコンテンツの再生操作がユーザによって行われたとき、この操作に基づいた情報信号TDbを配信装置20に供給する。なお、配信データの供給指示では、上述の認証情報も合わせて送信する。
【0071】
ステップST22で端末装置40は、セッションIDの受信を行う。端末装置40は、ステップST21の供給指示に対して配信装置20から供給されたセッションIDを受信して、このセッションIDとその後に配信装置20から供給される配信データを関連付けて蓄積できるように、セッションIDを保持しておく。
【0072】
ステップST23で端末装置40は、配信データの受信を行い、ステップST24で端末装置40は、受信した配信データをセッションIDと関連付けて蓄積する。
【0073】
ステップST25で端末装置40は受信終了か否かを判別する。ここで、端末装置40は、配信データの受信を終了する操作や配信装置20との通信を終了する操作が行われたとき、又は配信データの送信が完了したことが配信装置20から通知されたときステップST26に進み、通信切断処理を行う。また、受信や通信を終了する操作や送信の完了を示す通知が供給されていないときは、ステップST23に戻る。
【0074】
次に、 配信装置20で行われる再生制御通信スレッドの動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0075】
ステップST31で配信装置20は端末装置40から配信データの再生通知が行われたか否かを判別する。ここで、配信装置20は、端末装置40で配信データの再生通知が供給されたときステップST32に進み、配信データの再生通知が供給されていないときステップST31に戻る。この配信データの再生通知では、再生する配信データを配信装置20で識別できるものとするため、後述するように識別情報であるセッションIDを再生通知に含めて、認証情報と共に送信する。
【0076】
ステップST32で配信装置20はステップST2と同様にして、配信データの再生通知を行った端末装置40の認証を行い、認証できたときにはステップST33に進み、認証できないときにはステップST31に戻る。
【0077】
ステップST33で配信装置20は再生制御情報の送信を行う。配信装置20は、保持されている再生制御情報から、再生通知に含まれているセッションIDに対応した再生制御情報を選択して、この選択した再生制御情報を情報信号TDaとして、端末装置40に送信してステップST34に進む。
【0078】
ステップST34で配信装置20はキープアライブ送信を行う。このキープアライブ送信では、配信データの再生通知を行った端末装置40に対してキープアライブ信号のパケットを送信する。
【0079】
ステップST35で配信装置20は送信終了か否か判別する。ここで、配信装置20は端末装置40から再生終了通知が供給されていないときにはステップST34に戻り、再生終了通知が供給されたとき、キープアライブ信号の送信を停止して再生制御情報通信スレッドを終了する。
【0080】
図9は、端末装置40で行われる再生制御通信スレッドの動作を示しており、ステップST41で端末装置40は配信データの再生通知を行う。端末装置40は、蓄積している配信データを再生する操作がユーザによって行われたとき、配信データの再生を示す情報信号TDbを配信装置20に供給する。また、配信データの再生通知では、いずれの配信データの再生が行われるか配信装置20で識別可能とするため、識別情報であるセッションIDを含めるものとする。また、再生を許可するか否かを配信装置20で認証できるようにするため、認証情報を配信データの再生通知と共に送信する。
【0081】
ステップST42で端末装置40は再生制御情報を受信する。端末装置40は、ステップST41の再生通知に対して配信装置20から供給された再生制御情報を受信して、この再生制御情報を保持しておく。
【0082】
ステップST43で端末装置40はキープアライブ受信が成功したか否かを判別する。端末装置40は、例えば配信装置20からのキープアライブ信号が受信できたときステップST44に進み、所定期間キープアライブ信号が受信できないときはステップST47に進み、通信切断処理を行う。
【0083】
ステップST44で端末装置40は、蓄積されている配信データを読み出してステップST45に進む。ステップST45で端末装置40は読み出した配信データの再生処理を行う。この端末装置40は、読み出した配信データを映像と音声の暗号化データに分離する。ここで、データの一部が抜き出されている配信データを読み出している場合、ステップST42で受信した再生制御情報に含まれている抜き出しデータを用いて、欠落のない暗号化データに戻す処理を行う。その後、再生制御情報に含まれている暗号鍵を用いてデクリプト処理を行う。さらに、デクリプト処理によって得られた符号化データのデコード処理を行い、映像データや音声データを出力してステップST46に進む。
【0084】
ステップST46で端末装置40は再生終了か否かを判別する。ここで、端末装置40は、リモートコントロール装置65等で配信データの再生終了操作が行われたとき、又は配信データの再生が完了したときステップST47に進み通信切断処理を行う。また、配信データの再生終了操作が行われておらず、配信データの再生も完了していないときは、ステップST43に戻る。
【0085】
なお、再生制御情報に抜き出しデータが含まれている場合、再生制御情報のデータ量が大きくなり、ステップST44の処理の開始に時間を要してしまう。そこで、上述のステップST33で再生制御情報を送信するとき、暗号鍵あるいは暗号鍵と抜き出しデータの先頭部分の送信を行い、ステップST34のキープアライブ送信において抜き出しデータを順次送信すれば、ステップST44の処理を速やかに開始できる。
【0086】
このように配信データ送信スレッドと配信データ受信スレッドを行うものとすれば、予め端末装置に配信データを蓄積することができる。また、再生制御通信スレッドを行うことで、配信装置20から端末装置40にキープアライブ信号の供給が行われているときにのみ、配信データの再生を認証した端末装置40で行うことができる。したがって、低帯域環境下であっても、高品質でコンテンツの再生例えばコンテンツの映像や音声を提示できる擬似的なストリーミング動作が可能となる。
【0087】
また、配信装置20は、認証された端末装置に対してのみキープアライブ信号の送信を行うので、不正な端末装置でコンテンツが再生されてしまうことを防止することができるため、コンテンツの権利保護が可能となる。また、配信データは暗号化されており、配信装置20は、認証された端末装置に対してのみ暗号鍵の供給を行うことから、配信データの再生をさらに困難とすることができる。
【0088】
また、配信装置20は、端末装置40との通信路が形成されている期間単位で配信データに識別情報を割り当てるので、配信するコンテンツ毎に識別情報を設定して管理する場合等に比べて、識別情報の設定が容易となる。
【0089】
また、上述の形態では配信データからデータの一部を抜き出すものとしたが、例えば、映像データや音声データを符号化する前に、映像データや音声データからデータの一部を抜き出すものとしてもよく、符号化データを暗号化する前に、符号化データからデータの一部を抜き出すものとしてもよい。
【0090】
また、上述のように暗号化されている配信データからデータの一部を抜き出すものとすれば、例えば、暗号鍵が盗聴等によって不正に取得されてしまっても配信データの再生が困難となり、より確実な権利保護をはかることができる。
【0091】
さらに、データの抜き出しを例えばパケットサイズよりも短い間隔で行うものとすると、各パケットデータは、常にデータの一部が抜き出されたものとなり、再生が困難となる。また、暗号化方式として例えばブロック暗号化方式を用いるものとして、暗号化後の各ブロックのデータからデータの一部を抜き出すものとすれば、暗号化前のデータに戻されてしまうことがない。
【0092】
なお、上述の配信システムでは、暗号化と配信データからのデータの抜き出しを共に行う場合を説明したが、暗号化とデータの抜き出しのいずれか一方のみを用いるものとしてもよい。暗号化と配信データからデータの抜き出しのいずれを用いるか、又は暗号化と配信データからのデータの抜き出しを共に行うかは、配信するコンテンツの重要度に応じて選択すればよい。例えば重要度の低いコンテンツの配信では、データの一部の抜き出しのみを行うことでエンクリプト処理やデクリプト処理、暗号鍵の生成等の処理を行う必要がなくコンテンツの配信を容易に行うことができる。また、重要度の高いコンテンツの配信では、暗号化と配信データからのデータの抜き出しを共に行うことで、よりセキュアな再生が可能となる。
【0093】
ところで、上述の実施の形態では、配信データ送信スレッドと配信データ受信スレッドを完了したのちユーザ操作に応じて再生制御通信スレッドを開始するものとしたが、配信データの送信と配信データの受信を終了するとき、自動的に再生制御情報の供給やキープアライブ信号の送信を行うものとしてもよい。
【0094】
ここで、配信データの送信と配信データの受信を終了するとき、自動的に再生制御情報の送信とキープアライブ信号の送信を行う場合、配信装置20は、ステップST10で送信終了と判別されたとき、再生通知が行われているものとしてステップST33からの処理を自動的に実施する。また、端末装置40は、ステップST25で受信終了と判別されたときはステップST26の切断処理を行うことなくステップST42からの処理を自動的に実施する。
【0095】
このようにすれば、配信データの送信と配信データの受信が終了すると、自動的に配信データの再生動作が行われて、高品質でコンテンツの映像や音声を自動的に提示できる。
【0096】
また、配信データ送信スレッドと配信データ受信スレッドの動作中に再生制御通信スレッドを行うものとすれば、配信データの取り込みが完了する前に、配信データの再生を開始することができる。
【0097】
再生制御通信スレッドを開始するタイミングとしては、配信データ送信スレッドと配信データ受信スレッドにおける配信データの通信開始からの経過時間や伝送した配信データのデータ量等に基づいて行う。例えば、通信開始からの経過時間が所定時間経過したとき、又は配信した配信データが所定データ量となったとき、端末装置40で、配信データの再生が可能である旨の表示を行い、再生制御通信スレッドを開始可能とする。その後ユーザが配信データの再生操作を行ったとき、上述の再生制御通信スレッドの処理を順次行うことで、配信データ送信スレッドと配信データ受信スレッドの動作中であっても、擬似的なストリーミング動作が開始されて、高品質でコンテンツの映像や音声を提示できる。
【0098】
また、配信データのデータ量が予め判別可能であるときは、伝送路の帯域や抜き出しデータのデータ量等を考慮して、配信データの再生動作を開始しても途中で再生動作の途切れ等を生じないタイミングとなったとき、端末装置40で、配信データの再生が可能である旨の表示を行い、その後に再生制御通信スレッドを開始するようにすれば、再生動作が中断されることなく高品質でコンテンツの映像や音声を提示できる。
【0099】
さらに、本願発明のように、再生制御情報の送信を行い、その後キープアライブ信号の送信が行われているときに再生を許可することで、配信装置20で許可された端末装置40は、配信装置20から配信データを取得しなくとも、既に他の端末装置40に蓄積された配信データをコピーしたり、記録媒体に記録されている配信データを利用することで、速やかに高品質でコンテンツの再生を行える。なお、他の端末装置40に蓄積された配信データをコピーしたり、記録媒体に記録されている配信データを利用する場合であっても、配信装置20で認証できないときは、再生制御情報の取得や配信装置20からのキープアライブ信号を受信できないので、配信データが不正に再生されてしまうことがなく、コンテンツの権利保護を正しく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】配信システムの構成を示す図である。
【図2】配信装置のアーキテクチャを示す図である。
【図3】端末装置のアーキテクチャを示す図である。
【図4】配信装置のハードウェア構成を示す図である。
【図5】端末装置のハードウェア構成を示す図である。
【図6】配信データ送信スレッドを示すフローチャートである。
【図7】配信データ受信スレッドを示すフローチャートである。
【図8】再生制御通信スレッド(配信装置側)を示すフローチャートである。
【図9】再生制御通信スレッド(端末装置側)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
10・・・配信システム、20・・・配信装置、21・・・配信処理部、22,42・・・通信制御処理部、28・・・リモコン信号送信部、31・・・データ蓄積部、32・・・入力端子、33・・・セレクタ、34・・・配信データ生成部、35,51・・・通信部、36,56・・・バス、37・・・配信制御部、40・・・端末装置、41・・・蓄積処理部、43・・・再生処理部、52・・・配信データ蓄積部、53・・・配信データ再生部、54・・・出力端子、57・・・端末制御部、59・・・ユーザインタフェース部、65・・・リモートコントロール装置、70・・・外部機器、75・・・テレビジョン装置、80・・・ネットワーク、80r・・・無線ネットワーク、80w・・・有線ネットワーク、211・・・ファイルシステム、212・・・ビデオエンコーダ、213・・・ビデオエンクリプト処理部、214・・・オーディオエンコーダ、215・・・オーディオエンクリプト処理部、216・・・配信データ送信部、351,514・・・無線送信処理部、352,512・・・デュプレクサ、353,511・・・送受信アンテナ、354,513・・・無線受信処理部、355・・・通信インタフェース部、371,571・・・CPU、372,572・・・ROM、373,573・・・RAM、374,574・・・EEPROM、411・・・配信データ受信部、412・・・ファイルシステム、415,515・・・通信インタフェース部、431・・・ビデオデクリプト処理部、432・・・ビデオデコーダ部、433・・・ビデオレンダラ部、434・・・オーディオデクリプト処理部、435・・・オーディオデコーダ部、436・・・オーディオレンダラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信装置と端末装置がネットワークを介して接続されている配信システムにおいて、
前記配信装置は、前記端末装置に配信データを供給する配信処理部と前記端末装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、
前記端末装置は、前記配信装置から供給された配信データを蓄積する蓄積処理部と、該蓄積処理部に蓄積されている配信データを読み出して再生する再生処理部と、前記配信装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、
前記配信装置の通信制御処理部は、前記端末装置からの配信データの供給指示に応じて前記配信処理部を制御して前記配信データの供給を行い、前記端末装置からの再生通知に対して再生許可通知を行うものとし、
前記端末装置の通信制御処理部は、前記配信装置に対して配信データの供給指示を行い、該供給指示に応じて前記配信装置から供給された配信データを前記蓄積処理部に蓄積させるものとし、該蓄積された配信データを再生するときには、前記配信装置に対して再生通知を行い、該再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記再生処理部で前記配信データを再生する
ことを特徴とする配信システム。
【請求項2】
端末装置に配信データの供給を行う配信処理部と前記端末装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、
前記通信制御処理部は、前記端末装置からの配信データの供給指示に応じて前記配信処理部を制御して前記配信データの供給を行い、前記端末装置からの再生通知に対して再生許可通知を行う
ことを特徴とする配信装置。
【請求項3】
前記通信制御処理部は、前記再生通知がなされたときに認証を行い、認証できたときに前記再生通知を行った端末装置に対して再生許可通知を行う
ことを特徴とする請求項2記載の配信装置。
【請求項4】
前記通信制御処理部は、前記再生許可通知としてキープアライブ信号を用いる
ことを特徴とする請求項2記載の配信装置。
【請求項5】
前記配信処理部は、エンクリプト処理が行われている配信データの供給を行い、
前記通信制御処理部は、前記端末装置から前記エンクリプト処理が行われている配信データの再生通知がなされたときに、該エンクリプト処理が行われている配信データのデクリプト処理に用いる暗号鍵を前記再生許可通知に含める
ことを特徴とする請求項2記載の配信装置。
【請求項6】
前記配信処理部は、データの一部が抜き出されている配信データの供給を行い、
前記通信制御処理部は、前記端末装置から前記データの一部が抜き出されている配信データの再生通知がなされたときに、該抜き出されたデータを前記再生許可通知に含める
ことを特徴とする請求項2記載の配信装置。
【請求項7】
前記配信処理部は、所定データ量毎にデータの抜き出しを行い配信データを生成する
ことを特徴とする請求項6記載の配信装置。
【請求項8】
配信装置から供給された配信データを蓄積する蓄積処理部と、
前記蓄積処理部に蓄積されている配信データを読み出して再生する再生処理部と、
配信装置との通信や制御処理を行う通信制御処理部を備え、
前記通信制御処理部は、前記配信装置に対して配信データの供給指示を行い、該供給指示に応じて前記配信装置から供給された配信データを前記蓄積処理部に蓄積させるものとし、該蓄積された配信データを再生するときには、前記配信装置に対して再生通知を行い、該再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記再生処理部で前記配信データを再生する
ことを特徴とする端末装置。
【請求項9】
前記通信制御処理部は、前記配信装置から再生許可通知としてキープアライブ信号が供給されるとき、該キープアライブ信号が所定期間供給されない場合に前記配信データの再生を終了する
ことを特徴とする請求項8記載の端末装置。
【請求項10】
前記蓄積処理部にエンクリプト処理された配信データが蓄積されており、該エンクリプト処理された配信データを読み出して前記再生処理部で再生するとき、
前記通信制御処理部は前記配信装置に対して前記エンクリプト処理が行われている配信データの再生通知を行い、該再生通知に対して前記配信装置から供給された前記再生許可通知に含まれている暗号鍵を前記再生処理部に供給し、
前記再生処理部では、前記暗号鍵を用いてデクリプト処理を行う
ことを特徴とする請求項8記載の端末装置。
【請求項11】
前記蓄積処理部にデータの一部が抜き出されている配信データが蓄積されており、該データの一部が抜き出されている配信データを読み出して前記再生処理部で再生するとき、
前記通信制御処理部は、前記配信装置に対して前記データの一部が抜き出されている配信データの再生通知を行い、該再生通知に対して前記配信装置から供給された前記再生許可通知に含まれている抜き出されたデータを前記再生処理部に供給し、
前記再生処理部は、前記読み出した配信データと前記抜き出されたデータを用いて再生を行う
ことを特徴とする請求項8記載の端末装置。
【請求項12】
前記通信制御処理部は、前記配信データの蓄積を開始してからの経過時間や蓄積データ量が所定量となったとき、前記配信装置に対して再生通知を行う
ことを特徴とする請求項8記載の端末装置。
【請求項13】
ネットワークを介して配信側と端末側を接続して配信を行う配信方法において、
前記配信側は、前記端末側からの配信データの供給指示に応じて配信データの供給を行うステップと、前記端末側からの再生通知に対して再生許可通知を行うステップを有し、
前記端末側は、前記配信側に対して前記配信データの供給指示を行うステップと、該供給指示に応じて前記配信側から供給された配信データを蓄積するステップと、該蓄積された配信データを再生するときに前記配信側に対して再生通知を行うステップと、前記再生通知に対する再生許可通知が供給されたとき前記蓄積された配信データの再生を行うステップを有する
ことを特徴とする配信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−160201(P2008−160201A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343366(P2006−343366)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】