説明

配光制御方法、配光制御装置及びそれを用いた温室

【課題】効率のよい拡散光束の利用を可能とする配光制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】それぞれ断面がほぼ円の一部を形成し且つ表面が実質的な鏡面である多数の突条Uを有する細長い板状またはフィルム状の複数枚の構造体1が、互いの突条Uが平行になると共に互いの面が所定の間隔dを隔てて平行に対向するように配列される。構造体1の表面の点iに、ある入射角で光線Lが入射すると、突条Uの並びによる回折効果により、反射においても透過においても、点iを頂点とし且つ突条Uに平行な線を中心軸Cとする円錐の面状に拡散し、拡散反射光束Frは縦半分の円錐の面状に拡がり、拡散透過光束Ftは残る縦半分の円錐の面状に拡がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動手段を有することなく、太陽光を採光し、あるいは人工光源からの光束を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の出願による特許文献1に開示されたベネチアン型ブラインドは、透明な各羽根を二分した屋外側部分の上表面に直角横断面が概ね円の一部を形成する多数の突条を互いに十分に近接して羽根の長手方向に直交するように並べた構造を与え、この面により反射した陽光が突条の並びによりその突条の長手方向に平行な軸を中心にほぼ対称に拡散してすぐ上に位置する羽根の室内側部分の下面に入射し、この羽根の長手方向に同様に与えられた突条の並びにより長手方向に平行な軸を中心としてほぼ対称に拡散透過され、室内に向かって広く拡散されるものであった。
【0003】
また、特許文献1には、同様の突条の並びを有する板状またはフィルム状の構造体の面を透過する拡散光により物陰となる区域や部分、あるいは特定区域や部分に光を導入したり、ランプの光束を均一に拡散して眩しさを減らす配光制御装置も開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−81275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなブラインドや配光制御装置に求められる突条の並びは高度の製造技術が要求されることより、その満足できる形状、機能を安定して実現することは容易ではない。そのため、大きな方位角での入射光に対する拡散光束の対称性が十分でなかった。また、構造体の面を透過した拡散光の利用においても、構造体の表面反射により多くの光が減じられ、エネルギー利用効率向上の余地を残すものであった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、効率のよい拡散光束の利用を可能とする配光制御方法及び装置を、今日の技術水準の限界に近い製造技術のさらなる向上に求めるのではなく、構造体の設計上及び使用上の工夫により実現することを目的とする。
また、この発明は、このような配光制御装置を用いた温室を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る配光制御方法は、少なくとも光透過性または光反射性を有する板状またはフィルム状の構造体であって、少なくともその一面上に互いに平行で且つ十分に近接して並ぶ多数の突条を有すると共にその突条の長手方向に直交する突条の断面がほぼ円の一部を形成し、それらの突条の表面が実質的な鏡面である構造体の多数の突条に光を入射させ、入射点を通り且つ突条に平行な線を中心軸として円錐面状または半円錐面状に光を拡散させる方法である。
【0008】
ここで、「実質的な鏡面」は以下のように定義することができる。
構造体の所定の表面の凹凸が光の波長に比べ十分小さい面への入射光は鏡面反射をし、一方、凹凸が光の波長と同程度かそれ以上のときは乱反射(拡散反射)をすることが知られている。鏡面反射をする表面は一般に「鏡面」と呼ばれる。
対象とする表面の大部分が「鏡面」あるいは概ね均一に分散された「鏡面」により構成されている場合、所定表面の面積に対する鏡面部面積の総和の割合(鏡面率とする)がその面の用途において妥当な範囲にあると考えられるものを「実質的鏡面」と定義する。例えば、鏡はその求められる機能上、入射光の大部分が鏡面反射をしなければならず、鏡面率はおよそ0.9以上であろう。
【0009】
この発明に係る配光制御装置は、それぞれ少なくとも光透過性または光反射性を有する板状またはフィルム状の構造体であって、少なくともその一面上に互いに平行で且つ十分に近接して並ぶ多数の突条を有すると共にその突条の長手方向に直交する突条の断面がほぼ円の一部を形成し、それらの突条の表面が実質的な鏡面である複数枚の構造体を、互いの突条が平行になり且つ互いの面が所定の間隔を隔てて平行に対向するように配列し、各構造体の突条に入射した光のその突条に平行な線を中心軸とする円錐面状または半円錐面状に伝播する拡散光が配光しようとする方向に向けられるものである。
【0010】
なお、好ましくは、各構造体の両面上にそれぞれ多数の突条が形成される。
また、各構造体を細長い板状またはフィルム状に形成し、多数の突条を各構造体の長手方向と交錯する方向に沿って形成することができる。この場合、各構造体は、長手方向に直交する断面が屈曲形状またはV字形状を有していてもよい。
複数枚の構造体の配列方向に対する各構造体の角度を変化させる調整機構をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この発明の配光制御装置を、外光が差し込まれる窓に設置すると共に窓の面に沿って複数枚の構造体を配列して各構造体の突条による拡散光を室内に向かって取り入れたり、建造物の日陰となる部分の上方で且つ外光が差し込まれる箇所に設置して各構造体の突条による拡散光を建造物の日陰となる部分に向かって取り入れたり、温室の天井部及び壁部のうち少なくとも一方またはその近傍に設置して各構造体の突条による拡散光を温室内部に向かって取り入れることができる。
【0012】
また、この発明に係る温室は、上述した記載の配光制御装置が天井部及び壁部のうち少なくとも一方またはその近傍に設置されたものである。
なお、配光制御装置が二重構造の透明板の間に挟持された配光パネルによって温室の天井部及び壁部のうち少なくとも一方を形成することもできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、今日の技術水準の限界に近い製造技術のさらなる向上に求めることなく、光の拡散の対称性の向上を図ることができると共に効率のよい拡散光束の利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本願発明者は、種々の径の光ファイバ及び丸棒を用いて突条を有する光拡散構造体を試作し、拡散の配光分布を調べた結果、多数の突条が互いに平行で且つ十分に近接して並べられ、各突条の断面の曲縁が円弧であり、突条の表面がほぼ鏡面を示す場合には、構造体の表面のある点iに入射する光線Aは、上述の突条の並びによる回折効果により、反射においても透過においても、点iを頂点とする円錐の面状に拡散し、かかる拡散光束において、拡散反射光束は縦半分の円錐の面状に拡がり、拡散透過光束は残る縦半分の円錐の面状に拡がることを判明した。
【0015】
かかる円錐の面状の拡散は、さらに次のような特性を有する。まず、図1に示すように、点iを通り、突条Uの長手方向に平行な直線をY軸とし、これと直交するX軸及びZ軸を加える直交座標系を想定する。この直交座標系において、平面状の構造体の厚さを無視することにすると、YZ面が当該構造体となり、これを面Sとし、点iの下方の座標原点OでY軸と直交するXZ面を面T、点iを通りZ軸に平行な軸をZ’軸、Z’軸を含み面Sと鋭角αで交錯する面を面Pとする。
【0016】
面P上を進み、点iにおいて面Sに入射する光線Aは、面Sを鏡面と想定した場合の反射光線及び透過光線と面Tとの交点をそれぞれa及びa’とし、これらの点a及びa’と原点Oとを結ぶ線分Oa、Oa’を半径とする円の半周がそれぞれ光線Aの拡散反射光束及び拡散透過光束の面Tによる断面となる。ここで、当該構造体の面Sへの入射光線Bのように、その入射点iを通り且つ突条Uと平行で面Sに直交するXY面と交わる鋭角βが大きくなるに従って、拡散光束の拡がりは大きくなることとなる。
【0017】
また、その拡散光束の拡散方向における輝度は、面Sを平面の鏡面と想定した場合の反射光線及び透過光線の方向を最大値とし、この最大値の方向より離れるに従ってその輝度は最大値の方向との角度に対するある一様な関係で低くなる。このような拡散光束の拡散方向における輝度分布(以下、拡散光束の輝度分布とする)は、突条断面の円周角、最大径、突条相互の近接の度合いを選択することによって、より均一な分布とすることができる。
【0018】
これらの選択の例として、半径1mm、0.5mm、0.125mmのそれぞれの突条に対して突条断面の円周角及び突条相互間の間隔を変化させ、以下に述べるこの発明の適用分野における配光制御装置としての性能の許容度を技術者H1、市場開発者H2、営業予定者H3の計3名によりそれぞれ評価した。その評価結果を次の表1に示す。なお、評価は、1:適用可能、2:使用目的によって適用の可否が別れる、3:適用困難の3段階に分けて行われた。
【0019】
【表1】

【0020】
実施の形態1.
図2に実施の形態1に係る配光制御装置を示す。この配光制御装置は、それぞれ上述したような多数の突条Uを有する細長い板状またはフィルム状の複数枚の構造体1を備えている。各構造体1において、突条Uは構造体1の長手方向に交錯する、具体的には直交する向きに形成されている。これらの構造体1は、互いの突条Uが平行になると共に互いの面が所定の間隔dを隔てて平行に対向するように配列されている。なお、図2においては、突条Uがその形成方向を示すために単純な線分によって模式的に表されているが、実際には、断面がほぼ円の一部を形成し且つ表面が実質的な鏡面である突条Uが構造体1の表面上に互いに十分に近接して並設されている。
【0021】
各構造体1は、光透過性及び光反射性を兼ね備えており、図2に示されるように、構造体1の表面の点iに、ある入射角で光線Lが入射すると、突条Uの並びによる回折効果により、反射においても透過においても、点iを頂点とし且つ突条Uに平行な線を中心軸Cとする円錐の面状に拡散し、拡散反射光束Frは縦半分の円錐の面状に拡がり、拡散透過光束Ftは残る縦半分の円錐の面状に拡がる。ここで、拡散光束の中心軸Cは光線Lの入射角にかかわらず常に突条Uに平行な方向を向き、例えば、図3(A)に示されるように、構造体1の表面への入射角がθ1の入射光線L1も入射角がθ2の入射光線L2も共に同一方向を向いた中心軸Cを有する円錐の面状に拡散する。
【0022】
そこで、配光しようとする方向に各構造体1の突条Uが向くように配光制御装置を配置する。これにより、各構造体1の表面に入射した光が反射においても透過においても、それぞれ突条Uに平行な方向すなわち配光しようとする方向に向いた中心軸Cを有する円錐の面状に拡散する。このようにして、所望の方向へ効率よく光を拡散させて配光することが可能となる。
【0023】
なお、構造体1が少なくとも光透過性を有する場合には、突条Uは構造体1の互いに対向する主面のいずれに形成されていてもよい。例えば、図2における構造体1は、その上面に突条Uを有していたが、下面に突条Uを形成することもできる。互いに対向する主面の双方にそれぞれ突条Uを形成すれば、さらに拡散効果が向上する。
また、構造体1が光反射性を有さずに光透過性のみを有する場合には、図2において拡散透過光束Ftが下側の縦半分の円錐の面状に拡がるのみとなるが、同様にして所望の方向への配光が可能となる。
【0024】
逆に、構造体1が光透過性を有さずに光反射性のみを有する場合には、図2において拡散反射光束Frが上側の縦半分の円錐の面状に拡がるのみとなり、同様にして所望の方向への配光が行われる。このように、構造体1が光反射性のみを有する場合は、構造体1の互いに対向する主面のうち、入射光線が照射される面にのみ突条Uを形成すればよい。ただし、両面に突条Uを形成すれば、図3(B)の入射光線L3のように、下側の構造体1の上面の突条Uによる拡散反射光束が直上に位置する構造体1の下面の突条Uで拡散されるため、より効率のよい拡散配光が実現される。
【0025】
突条Uとしては、例えば図4(A)〜(H)に示されるような各種断面のものを用いることができるが、ほぼ円の一部を形成し、突条Uの表面が実質的な鏡面であることが必要である。また、各突条Uの径は3mm未満で且つ50μm以上のものが好ましい。
図4(A)、(E)、(G)及び(H)に示すように互いに隣接する突条Uの円弧を接続して構造体1を形成する場合には、実際の商業生産の技術上の制約により、図5に示す如く突条Uの円弧の円周角は140度以上で円弧の終点からその接線方向に直線部を突条Uの頂点より突条Uの半径にほぼ等しい深さに達するまで設け、この点で隣の突条Uと接するようにしたことで押し出し成形による商業生産が可能になる。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態2に係る配光制御装置を図6に示す。この配光制御装置は、実施の形態1の配光制御装置において、互いに平行な複数枚の構造体1の角度を変化させる調整機構2を備えたものである。調整機構2としては、汎用のブラインドの複数の羽根の傾きを変化させる機構を用いることができる。
調整機構2を備えているので、配光しようとする方向に応じて容易に各構造体1の角度を変化させることができる。
【0027】
実施の形態3.
実施の形態1の配光制御装置においては、各構造体1が平板形状を有していたが、図7に示されるように、長手方向に直交する断面が屈曲形状またはV字形状を有する構造体1を使用することもできる。すなわち、構造体1は、その長手方向に二分された外側部分3と内側部分4とを有し、これら外側部分3及び内側部分4の表面3a及び4a上にそれぞれ長手方向に直交する向きに突条Uが形成されている。また、構造体1は光透過性及び光反射性を兼ね備えているものとする。
図8に示されるように、このような屈曲した断面形状を有する複数枚の構造体1を互いに平行に所定の間隔を隔てて配列することにより、この実施の形態3に係る配光制御装置が構成されている。
【0028】
例えば、太陽光や人工光等、光源からの光が差し込む側に外側部分3を位置し、配光しようとする方向に内側部分4の突条Uを向けて、この配光制御装置を配置する。入射光線L4のように、内側部分4の表面4a上に直接入射する光は、突条Uの並びによる回折効果により、反射においても透過においても、突条Uに平行な線を中心軸Cとする円錐の面状に拡散する。構造体1が屈曲した断面形状を有するので、入射光線L5のように、外側部分3の裏面3b上に入射すると、この外側部分3の裏面3bで反射した光が直下の構造体1の内側部分4の表面4a上に入射し、ここで突条Uに平行な線を中心軸Cとする円錐の面状に拡散する。また、入射光線L5のうち、外側部分3を透過した光は外側部分3の表面3aの突条Uで拡散し、さらに、その拡散光のうち内側部分4の表面4a上に入射した光がその表面4aの突条Uで中心軸Cとする円錐の面状に拡散する。この配光制御装置における最終的な拡散方向は、内側部分4の突条Uが向けられた方向により決定され、これが配光の方向となる。このように、屈曲した断面形状の構造体1を用いることによって、より効率よく光源からの光を取り入れて、配光しようとする方向に光を拡散させることができる。
【0029】
なお、突条Uは構造体1の外側部分3及び内側部分4の表面3a及び4aではなく、これらの裏面3b及び4bに形成されていてもよい。外側部分3及び内側部分4の一方の表面と他方の裏面にそれぞれ突条Uを形成することもできる。
【0030】
さらに、好ましくは、外側部分3及び内側部分4の表面3a及び4aと裏面3b及び4bの双方にそれぞれ長手方向に直交する向きに突条Uが形成される。このようにすれば、図9に示されるように、例えば、入射光線L6のように、外側部分3の裏面3bに入射する光は、ここで外側部分3の裏面3bの突条Uに平行な線を中心軸C1とする円錐の面状に拡散し、拡散反射光束が直下の構造体1の内側部分4の表面4a上に入射して、この内側部分4の表面4aの突条Uに平行な線を中心軸C2とする円錐の面状にさらに拡散する。また、外側部分3の裏面3bで拡散された拡散透過光束は、同じ構造体1の内側部分4の表面4a上に入射して、この表面4aの突条Uに平行な線を中心軸C2とする円錐の面状にさらに拡散する。
【0031】
なお、構造体1は光透過性または光反射性のいずれかのみを備えるものであってもよい。
また、この実施の形態3の配光制御装置においても、実施の形態2に示した調整機構2を設けて各構造体1の角度を変化し得るように構成することが好ましい。
【0032】
実施の形態4.
さらに、図10に示されるように、長手方向に直交する断面が湾曲形状を有する構造体1を使用し、この構造体1を複数枚互いに平行に所定の間隔を隔てて配列することもできる。湾曲した表面上に長手方向に直交する向きに突条Uが形成されている。構造体1が湾曲しているために、入射光線が入射した点の湾曲の接線方向を向いた線を中心軸とする円錐の面状に拡散がなされる。従って、一方向でなく、ある角度範囲内に拡がった中心軸を有する円錐面状の拡散が生じ、広い範囲にわたってより均一な配光を行うことが可能となる。
【0033】
また、図11に示されるように、長手方向に直交する断面が菱形あるいは矩形の形状を有する構造体1を使用し、この構造体1を複数枚互いに平行に所定の間隔を隔てて配列することもできる。構造体1の表面上に長手方向に直交する向きに突条Uが形成されている。この場合、配光しようとする方向に向けられた2つの表面5及び6上の突条Uの並びにより、表面5に入射した光は表面5の突条Uに平行な線を中心軸C5とする円錐の面状に拡散し、表面6に入射した光は表面6の突条Uに平行な線を中心軸C6とする円錐の面状に拡散する。従って、2方向に向かって円錐面状の拡散が生じ、より均一な配光を行うことが可能となる。
なお、図10に示した構造体1及び図11に示した構造体1は、それぞれ光透過性及び光反射性を兼ね備えていてもよく、あるいは光透過性及び光反射性のいずれか一方のみを備えるものでもよい。
【0034】
実施の形態5.
図12に実施の形態5に係る配光制御装置を示す。この配光制御装置は、配光しようとする領域Qの上方に例えば実施の形態1に示した構造体1の表面がそれぞれ鉛直方向を向くように互いに平行に所定の間隔を隔てて水平方向に配列したものである。なお、各構造体1の突条Uは鉛直方向を向いている。
このように配置された各構造体1の表面に斜め上方から太陽光等が入射すると、突条Uと平行に鉛直下方を向いた線を中心軸Cとする円錐の面状に拡散が生じ、これにより下方に位置する領域Qに均一な配光がなされる。
【0035】
図13に示されるように、この実施の形態5に係る配光制御装置においても、実施の形態2に示した調整機構2を設けて各構造体1の角度を変化し得るように構成すれば、配光が必要とされる領域Qへより確実に光を導入することができる。
さらに、図14に示されるように、複数枚の構造体1の配列を上下に2段重ねに形成することもできる。この場合、上段に位置する構造体1の配列方向と下段に位置する構造体1の配列方向を互いに交錯させる、例えば直交させることが好ましい。このようにすれば、光源からの光をより効率よく取り入れて領域Qに配光することができる。
【0036】
なお、図12及び14に示した各構造体1は、必ずしも鉛直方向に向ける必要はなく、水平方向に対しある角度をなして光源からの光を入射し得るように配置されていればよい。
また、構造体1としては、実施の形態1に示したものに限らず、実施の形態3及び4に示したような断面形状を有する構造体を使用することもできる。
【実施例】
【0037】
実施例1.
この発明の配光制御装置を具体的に実施した実施例1を図15に示す。外光が差し込まれる窓7に、実施の形態1の配光制御装置が設置されている。配光制御装置の複数枚の構造体1は窓7の面に沿って配列されており、各構造体1の突条Uによる拡散光が室内に向かって取り入れられる。
【0038】
実施例2.
図16に示されるように、外光が差し込まれる天窓8に、実施の形態1の配光制御装置が設置されている。配光制御装置の複数枚の構造体1は天窓8の面に沿って配列されており、各構造体1の突条Uによる拡散光が上方から室内に向かって取り入れられる。
【0039】
実施例3.
図17に示されるように、建造物9の日陰となる部分10の上方で且つ外光が差し込まれる箇所に、実施の形態1の配光制御装置が設置されている。配光制御装置の複数枚の構造体1は、部分10の上方にそれぞれが鉛直方向を向きつつ、水平方向に配列されている。各構造体1の突条Uによる拡散光が上方から部分10に向かって取り入れられる。
【0040】
実施例4.
図18に示されるように、露地栽培における栽培作物11の上方あるいは側方に、実施の形態1の配光制御装置が設置されている。各構造体1の突条Uによる拡散光が上方から栽培作物11に向かって取り入れられる。これにより、栽培作物11により効果的に太陽光や人工光を照射することができ、栽培の促進を図ることが可能となる。
【0041】
実施例5.
図19に示されるように、温室12の上方あるいは屋根の上に、実施の形態1の配光制御装置が設置されている。配光制御装置の複数枚の構造体1は、それぞれが鉛直方向を向きつつ、温室12の屋根に沿って配列されている。各構造体1の突条Uによる拡散光が上方から温室12の内部に向かって取り入れられる。
なお、図20に示されるように、温室12内の上部に実施の形態1の配光制御装置を設置しても、同様の効果が得られる。
配光制御装置は、温室12の上方や温室12内の上部に限らず、温室12の天井部及び壁部のうち少なくともの近傍に設置すればよい。
【0042】
実施例6.
図21に示されるように、それぞれ樹脂あるいはガラス等からなる2枚の透明板13及び14を互いに間隔を隔てて平行に配し、これら透明板13及び14の間に多数の構造体1を有する実施の形態1の配光制御装置を挟持させた配光パネル15を作成し、図22に示されるように、この配光パネル15により温室の天井部及び壁部を形成した。配光パネル15内の各構造体1の突条Uによる拡散光が上方及び側方から温室の内部に向かって取り入れられる。
【0043】
なお、配光制御装置が二重構造の透明板13及び14の間に挟持されているので、断熱効果によって多数の構造体1が熱から保護される。
必ずしも温室の天井部及び壁部の双方を配光パネル15で形成しなくてもよく、天井部及び壁部のうち少なくとも一方、さらにその一部を配光パネル15で形成するだけでも効果的である。
【0044】
上記の実施例1〜6の他、例えば太陽電池の感光部の上方あるいは前方にこの発明の配光制御装置を設置して感光部への効率のよい配光を行うことも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係る配光制御方法を説明するための図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る配光制御装置を示す部分斜視図である。
【図3】実施の形態1の配光制御装置の作用を示す断面図である。
【図4】配光制御装置に用いられる構造体の各種形態を示す断面図である。
【図5】構造体の突条を示す拡大断面図である。
【図6】実施の形態2の配光制御装置を示す側面図である。
【図7】実施の形態3の配光制御装置に用いられる構造体を示す部分斜視図である。
【図8】実施の形態3の配光制御装置を示す側面図である。
【図9】実施の形態3の配光制御装置を示す側面図である。
【図10】実施の形態4の配光制御装置に用いられる構造体を示す断面図である。
【図11】実施の形態4の配光制御装置の変形例に用いられる構造体を示す断面図である。
【図12】実施の形態5の配光制御装置を示す斜視図である。
【図13】実施の形態5の配光制御装置の変形例を示す側面図である。
【図14】実施の形態5の配光制御装置の他の変形例を示す斜視図である。
【図15】実施例1の配光制御装置を示す斜視図である。
【図16】実施例2の配光制御装置を示す断面図である。
【図17】実施例3の配光制御装置を示す断面図である。
【図18】実施例4の配光制御装置を示す断面図である。
【図19】実施例5の配光制御装置を示す断面図である。
【図20】実施例5の変形例に係る配光制御装置を示す断面図である。
【図21】実施例6の温室に使用される配光パネルを示す部分斜視図である。
【図22】実施例6の温室を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 構造体、2 調整機構、3 外側部分、4 内側部分、5,6 表面、7 窓、8 天窓、9 建造物、10 部分、11 栽培作物、12 温室、13,14 透明板、15 配光パネル、U 突条、C、C1,C2,C5,C6 中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光透過性または光反射性を有する板状またはフィルム状の構造体であって、少なくともその一面上に互いに平行で且つ十分に近接して並ぶ多数の突条を有すると共にその突条の長手方向に直交する突条の断面がほぼ円の一部を形成し、それらの突条の表面が実質的な鏡面である構造体の多数の突条に光を入射させ、
入射点を通り且つ突条に平行な線を中心軸として円錐面状または半円錐面状に光を拡散させる
ことを特徴とする配光制御方法。
【請求項2】
それぞれ少なくとも光透過性または光反射性を有する板状またはフィルム状の構造体であって、少なくともその一面上に互いに平行で且つ十分に近接して並ぶ多数の突条を有すると共にその突条の長手方向に直交する突条の断面がほぼ円の一部を形成し、それらの突条の表面が実質的な鏡面である複数枚の構造体を、互いの突条が平行になり且つ互いの面が所定の間隔を隔てて平行に対向するように配列し、
各構造体の突条に入射した光のその突条に平行な線を中心軸とする円錐面状または半円錐面状に伝播する拡散光が配光しようとする方向に向けられることを特徴とする配光制御装置。
【請求項3】
各構造体の両面上にそれぞれ多数の突条が形成された請求項2に記載の配光制御装置。
【請求項4】
各構造体は細長い板状またはフィルム状を有し、多数の突条は各構造体の長手方向と交錯する方向に沿って形成された請求項2または3に記載の配光制御装置。
【請求項5】
各構造体は、長手方向に直交する断面が屈曲形状またはV字形状を有する請求項4に記載の配光制御装置。
【請求項6】
複数枚の構造体の配列方向に対する各構造体の角度を変化させる調整機構をさらに備えた請求項2〜5のいずれか一項に記載の配光制御装置。
【請求項7】
外光が差し込まれる窓に設置されると共に窓の面に沿って複数枚の構造体が配列され、各構造体の突条による拡散光を室内に向かって取り入れる請求項2〜6のいずれか一項に記載の配光制御装置。
【請求項8】
建造物の日陰となる部分の上方で且つ外光が差し込まれる箇所に設置され、各構造体の突条による拡散光を建造物の日陰となる部分に向かって取り入れる請求項2〜6のいずれか一項に記載の配光制御装置。
【請求項9】
温室の天井部及び壁部のうち少なくとも一方またはその近傍に設置され、各構造体の突条による拡散光を温室内部に向かって取り入れる請求項2〜6のいずれか一項に記載の配光制御装置。
【請求項10】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の配光制御装置が天井部及び壁部のうち少なくとも一方またはその近傍に設置されたことを特徴とする温室。
【請求項11】
配光制御装置が二重構造の透明板の間に挟持された配光パネルにより天井部及び壁部のうち少なくとも一方が形成されている請求項10に記載の温室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−73366(P2006−73366A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255795(P2004−255795)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(596049924)株式会社エス・テー・アイ・ジャパン (5)
【Fターム(参考)】