説明

配向制御用突起を有する基板及びそれを用いた液晶表示装置

【課題】本発明は高感度なネガ型感光性樹脂組成物を用いて配向制御用突起を形成し、さらにこの配向制御用突起を有する基板を用いて製作した液晶表示装置を、長時間にわたり電圧を印加した状態に置いたときに生ずる焼きつきを抑えることを課題とする。
【解決手段】対向する基板との間で液晶を挟持する液晶表示装置を構成する、少なくとも配向制御用突起を有する基板において、該配向制御用突起が、少なくともポリビニルフェノールと、メラミン誘導体と、365nmおよび/または405nmの波長の光で分解し酸を発生する光酸発生剤とからなるネガ型感光性樹脂組成物により形成されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向(VA、Vertically Aligned)型液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)に係り、さらに詳しくは配向分割垂直配向(MVA、Multi Domain Vertically Aligned)型LCDに用いられる配向制御用突起を有する基板及びそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MVA−LCD(Multi−domein Vertical Alignment−Liquid Crystal Display、配向分割垂直配向型液晶表示装置、特許文献1および2、非特許文献1参照)は、1画素内で液晶分子の傾斜方向が複数になるように制御し、全方位で均一な中間調表示が出来るようにした垂直配向型液晶表示装置であり、優れたコントラスト、視野角特性、応答速度を兼ね備えた液晶表示装置と言われている。
【0003】
図1(a)、(b)は、MVA−LCDの動作をその断面で模式的に示した説明図である。図1(a)、(b)に示す様に、一般的なMVA−LCD(10)は、液晶分子(15)を介して配向制御用突起(13)が設けられたTFT側基板(11)と、配向制御用突起(14)が設けられたカラーフィルタ側基板(12)とを配置した構造であるが、配向制御用突起(13)と配向制御用突起(14)は互い違いの位置になるようになっている。
【0004】
図1(a)は、電圧無印加時の状態を示し、電圧無印加時に液晶分子(15)は、両基板間で垂直に配向するが、配向制御用突起(13)部及び配向制御用突起(14)部の液晶分子は突起の斜面の影響によってわずかに傾斜している。図1(b)は、電圧印加時の状態を示し、電圧を印加すると突起の斜面の液晶分子が傾斜し始め、傾斜部分以外の液晶分子も順次に同一の配向をするようになる。即ち、ラビング処理に代わり、突起を設けることによって液晶分子の配向を制御するものである。
【0005】
従来、このようなパターンを作製するために、ポジ型レジスト又はネガ型感光性樹脂組成物を使用し、フォトリソグラフィの手法で形成されてきた(特許文献1、特許文献2、及び非特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2947350号公報
【特許文献2】特開平11−2489213号公報
【非特許文献1】Electronic Journal 1997年10月号 P.33
【0006】
しかし、前者のポジ型感光性樹脂組成物は共通欠陥が出やすいため歩留まりが悪く、一方、後者のネガ型感光性樹脂組成物は感度、パターニング特性、コスト、およびプロセス的に優れているが、配向制御用突起パターン形状や液晶の種類によっては焼きつきが起こるという問題が生じている。焼きつきとは、MVA−LCDにおいて長時間にわたり電圧を印可した状態におくと残像が発生する現象のことで、表示品位を著しく低下させるものである。
一般に、従来のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された配向制御用突起の体積抵抗率は、1.0×1014〜1.0×1015Ωcm程度であり、このような体積抵抗率を有する配向制御用突起を設けたMVA−LCDは焼きつきが起こりやすいため、その解決が重要な課題となっている。
【0007】
またネガ型レジストは、基本的にバインダー樹脂のほかに硬化成分としてモノマーを含有している場合が多いが、このモノマーが電気特性に悪影響を与えることが経験的にわかっているため、配向制御用突起用感光性樹脂組成物にはモノマーの低減が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて配向制御用突起を設けたMVA−LCD用基板であって、長時間にわたり電圧を印加した状態においても残像が発生することのない配向制御用突起を有する基板およびそれを用いた液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者は種々の材料と加工方法を検討した結果、配向制御用突起形成材料として、次に示すネガ型感光性樹脂組成物を用いることによって、目的とする配項制御用突起を有するカラーフィルタを得ることができ、本カラーフィルタを使用したMVA−LCDが焼きつきのない良好な表示特性と高視野角を示すことを見いだし、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明は、対向する基板との間で液晶を挟持する液晶表示装置を構成する配向制御用突起を有する基板において、前記配向制御用突起が少なくとも、
(a)ポリビニルフェノールと、
(b)酸の作用により反応する架橋剤と、
(c)少なくとも365nmまたは405nmのいずれかの波長の光で分解し酸を発生する光酸発生剤と、
からなるネガ型感光性樹脂組成物により形成されることを特徴とする配向制御用突起を有する基板である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記酸の作用により反応する架橋剤がメラミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の配向制御用突起を有する基板である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記配向制御用突起が、露光後に60〜90℃の温度範囲で90〜600秒加熱をして形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配向制御用突起を有する基板である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記光酸発生剤が、一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配向制御用突起を有する基板である。
【化3】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【0014】
請求項5に係る発明は、前記光酸発生剤が、一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配向制御用突起を有する基板である。
【化4】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の配向制御用突起を設けられた基板を、液晶を挟持する対向する基板の少なくとも一方に用いたことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配向制御用突起を有する基板を用いて液晶表示装置を構成することで、長時間にわたり電圧を印加し続けても残像の発生しない優れた液晶表示装置を提供することができた。
【0017】
配向制御用突起形成材料として、ポリビニルフェノールを含むネガ型感光性樹脂組成物を用いることで、アルカリ水溶液で現像可能なため従来プロセスが使用可能で、かつ電気特性的に優れた特性を有し配向制御用突起表面に電荷が溜まりにくくなることから焼きつき(残像)のない良好な表示特性と広視野角を示す配向制御用突起を有する基板および液晶表示装置とすることができた。
【0018】
また、架橋剤として酸の作用により反応する架橋剤を用いることで、焼きつきに悪影響を与えるモノマーの低減またはゼロ化することが可能となった。硬化密度が高いため溶剤耐性が向上することから、より安定で焼きつきのない配向制御用突起を有する基板および液晶表示装置とすることができた。
【0019】
また、光酸発生剤を用いた反応は、酸素による阻害反応を受けないため空気中で行われるプロセスにおいて感度的に有利になる。ただし、従来の光酸発生剤は、短波長に吸収極大を持ち365nm、405nmにはほとんど吸収を持たないため、従来プロセスを使用するには増感剤を併用する必要があり、さらに増感効率も十分ではなかった。本発明における光酸発生剤は、少なくとも365nmまたは405nmのいずれかに吸収を持ち、多くの酸を発生するため、単独でも非常に高感度な感光性樹脂組成物とすることができた。もちろん、必要に応じて適当な増感剤を併用することにより、さらに高感度な感光性樹脂組成物とすることも可能である。
【0020】
さらに、前記光酸発生剤として、下記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を用いる場合は、365nmおよび405nmに非常に強い吸収を持ち、かつ該化合物自身にイオン性がないため、感度的、電気特性的により有利となる。
【化5】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【化6】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【0021】
配向制御用突起の断面形状が半円形もしくは上面が平らでない順テーパー形状であることにより、配向不良がなく、応答速度の速いMVA−LCDとすることができる。
【0022】
露光後の加熱を60〜90℃と従来よりも低温に設定し、かつ90〜600秒間と従来よりも時間をかけて行うことにより、半円形、半楕円形、三角形、蒲鉾形状等の断面をもつ配向制御用突起を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は対向する基板との間で液晶を挟持する液晶表示装置を構成する、少なくとも配向制御用突起を有する基板あるいはそれを用いた液晶表示装置に関するものであって、特に配向分割垂直配向型LCDに用いられる液晶表示装置であることを特徴とするものである。以下、本明細書では、透光性を有する基板上にカラーフィルタ層を設け、この上に配向制御用突起を形成した基板について主に述べているが、これは本発明による基板または液晶表示装置が、カラーフィルタ層を必ず具備しなければならないことを意味するものではない。
【0024】
本発明の配向制御用突起を有する基板を構成する基板としては、透光性を有する板状のものが好ましく、ガラス、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォンやポリアクリレートなどのプラスチックのシートあるいはフィルムが挙げられる。
また、配向制御用突起を形成した後、加熱工程を行うことから、耐熱性に優れたガラス基板が好ましく、さらには熱膨張率が小さく加熱工程での寸法安定性に優れたガラスを選択することが好ましい。
【0025】
本発明の配向制御用突起を有する基板にカラーフィルタ層を形成し、液晶用カラーフィルタとして用いることができる。
MVA−LCDにおけるカラーフィルタ機能を有する配向制御用突起を有する基板の構成としては、通常のカラーフィルタにおける画素(カラーフィルタ層)上に必要に応じて、透明保護膜層、さらに透明導電層を介して特定の配向制御用突起を有するものである。
【0026】
一般的にカラーフィルタとは透光性を有する基板上にコントラスト向上のためのブラックマトリックス(K)、次いで赤(R)、緑(G)、青(B)の着色画素層を形成せしめたものであり、これを液晶用とする場合は、さらに透明導電性膜層、配向膜層を順次積層せしめたものであり、例えば薄膜トランジスタのような電極を形成した対向基板と対置させ液晶層を介してLCDを構成するものである。
この明細書中では、このブラックマトリックスと赤、緑、青の着色画素層を合わせてカラーフィルタ層と呼ぶこととする。
【0027】
カラーフィルタ層を構成するブラックマトリックスは既に公知の方法を用いて形成することができる。例えば、クロムやチタンなどの金属あるいは金属酸化物の薄膜をスパッタ等の方法により基板上に形成し、それをエッチングなどの手法によりパターニングを施し形成するもの。あるいは、感光性樹脂組成物中にカーボンブラックや金属酸化物などの遮光性微粒子や複数種からなる顔料あるいは染料などの着色剤を混在させ、これを基板上に感光性樹脂層として形成しフォトリソグラフィー法により形成するもの。あるいは、後に示す赤、緑、青などからなる着色画素層を2層以上積層させこれを形成するもの、などが挙げられるが本発明においてはいずれの方法により形成しても良い。
【0028】
着色画素層は前記ブラックマトリックスの開口部に設けられ、通常赤色画素パターン(R)、緑色画素パターン(G)、および青色画素パターン(B)の3原色からなる画素パターンが所望の形状により配置されたものである。その形成方法としては顔料分散法、染料法、電着法、印刷法、転写法やインクジェットにより各画素を形成する方法など既に公知の方法が挙げられ、本発明においてはいずれの方法により形成しても良い。
【0029】
本発明における配向制御用突起を有する基板の一形態としては、これらカラーフィルタ層上、または透明導電性膜層上に配向制御用突起を設けた構成、あるいはカラーフィルタ層、透明導電性膜層、配向制御用突起、配向膜層の順に形成した構成、もしくは必要ならばこのいずれかの層の間に保護膜層を設けた複数の層からなることを特徴とする。
【0030】
透明導電膜層は液晶表示装置に用いる、対向する基板との間で液晶を挟持する基板の少なくともいずれか一方に必須の構成である。通常は液晶の配向方向を規制する配向膜あるいは配向突起の直下に形成され、電気信号を伝達することで基板の間に挟持された液晶の挙動を制御する。もしくは配向突起の上層に蒸着等で設けることも可能である。
透明導電性膜層は、透明で導電性があり薄膜状に形成できる物質が用いられ、通常ITO(インジウムと錫の複合酸化物)膜が、他にはIZO(インジウムと亜鉛の複合酸化物)やSnO(二酸化錫)膜などが選択され、各々スパッタ法、真空蒸着法などの手法にて形成される。
【0031】
本発明の液晶表示装置を構成する基板の少なくとも一方には、配向膜層が設けられ、これと配向制御用突起とはまた別のものである。配向膜層には、ネガ型液晶化合物を垂直配向させ、かつ透明で絶縁性の物質が用いられる。通常ポリイミド樹脂が用いられる。ポリイミド樹脂用液、ポリアミック酸溶液などを公知の塗布方法あるいは印刷方法にて形成し、その後焼成することにより形成される。
【0032】
必要に応じて設けられる保護膜層は、ブラックマトリックス及び着色画素層を形成したときに生ずる段差を平坦化するため、あるいはブラックマトリックスや着色画素層中に含まれる成分が液晶層へ混入するのを防ぐものであり、透明性が要求される。該保護膜層を形成する材料としては、光硬化型、熱硬化型、光及び熱硬化型の樹脂組成物、エポキシ、アクリルやポリイミドなどの樹脂硬化物、あるいはスパッタや蒸着による無機化合物等、前述の目的を達成できる材料であればよい。カラーフィルタ層の表面状態を考慮して0.5から3μmの範囲にて形成することができる。
【0033】
MVA−LCDに用いる基板は、通常のカラーフィルタにおける画素上に必要に応じて、透明保護層、さらに、透明導電層を介して特有の配向制御用突起を有するものが一般的であり、このような配向制御用突起を寸法精度良く得るために、通常のポジ型レジストを使用すると従来プロセスではパターンの微細化が困難となり、ますます多様化するサイズの要求をみたすことが困難であるが、露光機等の変更は非常に高コストとなってしまう。また、配向制御用突起を寸法制度よく得ることは、特に基板が大型化する際に難しくなり、硬化部の現像液耐性は非常に重要である。かつ、得られた配向制御用突起を有するカラーフィルタは配向膜塗布が行われることから、配向制御用突起そのものについて高度の耐熱性、耐溶剤性が要求されるとともに、配向膜薄膜を介して極性液晶にさらされることから、イオン性不純物の溶出が少なく、また、優れた電気特性が要求されるものである。
【0034】
このような要求特性を有する配向制御用突起を与える材料として、本発明者らはポリビニルフェノールと、酸の作用により反応する架橋剤と、少なくとも365nmまたは405nmのいずれかの波長の光で分解し酸を発生する光酸発生剤とからなるネガ型感光性樹脂組成物が優れていることを見出した。ポリビニルフェノールのフェノール性水酸基はアルカリ水溶液で現像可能なため従来プロセスが使用可能であり、かつ電気的に優れた特性を示すことが経験的に知られている。一方、メラミン誘導体と光酸発生剤との反応は酸素による重合阻害を受けないため、空気中で行われるプロセスでは感度的に有利であり、さらに従来よりも長波長領域に吸収を持つ光酸発生剤を用いることで従来プロセスのまま増感剤を用いない場合でも感光性樹脂組成物の感度を大幅に向上させることができる。また、露光後加熱を60〜90℃と従来よりも低温に設定し、半円形、半楕円形、三角形、蒲鉾形状等の断面断面をもつ、半球状の配向制御用突起を容易に形成することができる。
【0035】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物のポリビニルフェノールは下記一般式(3)に示される構造単位で表すことができ、特に限定するものではないが、例えば、p−ヒドロキシスチレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレンなどのヒドロキシスチレン類の単独または2種以上の重合体が挙げられる。ポリビニルフェノール樹脂は、通常、置換基を有していてもよいヒドロキシスチレン類を単独で又は2種以上をラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤の存在下で重合することにより得られる。
【0036】
【化7】

【0037】
なお、上記一般式(3)に示される構造単位は特に好ましい構造のものであり、上記一般式(3)で表される化合物は、なんらこれらに限定されるものではなく、例えばp−ビニルフェノールとスチレンとの共重合体など、上記一般式(3)で示される単位を含むものであればよい。
【0038】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物の架橋剤は酸の作用により反応する架橋剤であり、例えばメラミン誘導体を用いることが可能である。このメラミン誘導体は、光酸発生剤より発生した酸の作用によりポリビニルフェノールとメラミン誘導体のメチロール基あるいはメトキシメチル基との間で脱水あるいは脱メタノール縮合反応を起こす。このために該樹脂をメラミン誘導体にて架橋反応をさせることが可能となる。このようなメラミン誘導体としては、メチロール基あるいはメトキシメチル基を有している化合物であればよい。係るメラミン誘導体の中でも、溶解性、特に溶剤に対する溶解性が大きいものが好ましいものであり、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミン、あるいは、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メトキシメチルメラミンなどのメラミン化合物、あるいはこれらの化合物とホルムアルデヒド等と反応させることにより得られるメラミン樹脂を挙げることができるがこの限りではない。またこれらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に含有されるメラミン誘導体の量は、ポリビニルフェノールの100重量部に対して1から60重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは5から40重量部である。
【0040】
メラミン誘導体の量が1重量部より少ないと十分な硬化性が得られず、溶剤耐性も悪くなり、一方メラミン誘導体の量が60重量部より多いと形状の制御が困難になるため好ましくない。
【0041】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物の光酸発生剤は、露光を行った際に発生する酸の作用により、ポリビニルフェノールとメラミン誘導体の脱水反応及び架橋反応を進行させることとなる。係る光酸発生剤としては公知の光源を使って露光できるものであれば良いが、少なくとも365nmまたは405nmのいずれかの波長の光によって酸を発生するものを用いると、水銀灯など従来の光源を使用できるため、コスト、工程上好ましい。また溶解性、特に溶剤に対する溶解性が大きいものがより好ましい。さらに、吸収特性や化合物自身の非イオン性の点から下記一般式(1)または一般式(2)の構造を有する化合物が特に好ましい。
【化8】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【化9】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【0042】
具体的には、例えばトリフルオロメチルスルフォニルオキシ−1,8−ナフタルイミド、N−ノナフルオロブチルスルフォニルオキシ−1,8−ナフタルイミド等のスルフォニルオキシナフタルイミド化合物等が挙げられ、特に係る一般式(1)で表される化合物としては、例えば(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−(4−メチルフェニル)スルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−カンファリルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、または(5−プロピルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル等が挙げられ、また一般式(2)で表される化合物としては、N−ノナフルオロブチルスルホン酸−1,3,6−トリオキソ−3,6−ジヒドロ−1H−11−チア−2−アザエクスプロペンタ[a]アントラセン―2―イル エステル、N−ノナフルオロブチルスルホン酸−8−イロプロピル−1,3,6−トリオキソ−3,6−ジヒドロ−1H−11−チア−2−アザエクスプロペンタ[a]アントラセン―2―イル エステル等が挙げられるがこの限りではない。上記スルフォニルオキシナフタルイミド化合物およびスルホン酸エステルは、それぞれ1,8−ナフタル酸無水物あるいはチオサリシリック酸を原料として公知の方法で合成することができる(非特許文献2参照)。またこれらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【非特許文献2】Radtech Asia 2003年 P.579
【0043】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物に含有される光酸発生剤の量は、架橋剤の100重量部に対して1から50重量部の範囲をとることが可能であり、好ましくは20から40重量部である。
【0044】
光酸発生剤の量が1重量部より少ないと十分な感度が得られず、一方光酸発生剤の量が50重量部より多くても感度の向上は望めないばかりか、材料のコストアップにもつながるため好ましくない。
【0045】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物には前記成分以外に、感度、塗布性、密着性、耐熱性、耐薬品性の向上のためなど、必要に応じて相溶性のある添加物、例えば、重合性モノマー、ラジカル光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、着色料、レベリング剤、カップリング剤、充填材などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0046】
このように各成分を適時選択し、任意の割合で混合して得た感光液をロールコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター等の公知の塗工手段を用いて最上層に導電膜を設けたカラーフィルタ基板上に塗布する。
【0047】
なお、感光液を調製する際には、必要に応じて適当な溶媒にて希釈しても良いが、その場合には基材上に塗布した後に乾燥を要する。上記溶剤としては、ジクロルエタン、クロロホルム、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エチルエトキシアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0048】
次に、本発明の配向制御用突起の形成方法について説明する。透光性を有する基板上に、あるいは必要であれば上述した方法によって、カラーフィルタ層、透明導電性膜層、保護膜層が積層された基板上に、既述のネガ型感光性樹脂組成物を、バーコーター、アプリケーター、ワイヤーバー、スピンコーター、ロールコーター、スリットコーター、カーテンコーター、ダイコーター、コンマコーター等の公知の塗工方法を用い積層する。
【0049】
その後所定のパターンを有したフォトマスクを介し、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等でパターン露光を行い、次いで加熱工程(露光後加熱)を行い光照射部分を架橋させた後、アルカリ現像液にて現像する。前記露光後加熱は、露光によって発生した酸による硬化反応を膜の内部まで進行させるためのものであるため、この工程条件を変えることで形成される配向制御用突起のサイズおよび形状の制御をすることが可能である。また生産性(タクト)にもつながることから、この条件は非常に重要な要素である。本発明の架橋剤であるメラミン誘導体は官能基数が大きく硬化密度が高いため、本発明においては該露光後加熱を60℃〜90℃で90秒〜600秒行うことが好ましい。生産性とのバランスがとれる範囲内で、低温で時間をかけて行うことで膜の内部まで反応を十分に進行させ、半円形もしくは上面が平らでない順テーパー形状の断面形状を持つ配向制御用突起を容易に得ることができる。
【0050】
さらに本発明における配向制御用突起は、上記フォトリソグラフィー工程後に加熱工程を施すことにより、該配向制御用突起の硬化を促進し基板との密着性を向上せしめ、さらに耐溶剤性、耐薬品性を付与することができ、また、熱収縮や熱フローにより形状を滑らかにし液晶分子の配向性をより向上することが可能となる。
【0051】
以下、本発明の実施の形態について具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は下述する実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いるネガ型感光性樹脂組成物は光に対して極めて敏感であるため、自然光など不必要な光による感光を防ぐ必要があり、全ての作業を黄色、または赤色灯下で行うことは言うまでもない。
【実施例1】
【0052】
透明基板上にCr薄膜を成膜し、フォトエッチング法でブラックマトリックスを形成した。この上に、赤色感光性樹脂組成物を塗布し、露光、現像、ポストベーク処理を行い赤色画素を形成し、続いて同様の処理を緑色感光性樹脂組成物、青色感光性樹脂組成物について行い、緑色画素、青色画素を形成した。次に、全面にITO膜をスパッタにより成膜して透明導電膜層としたものをカラーフィルター基板とした。
【0053】
ポリ(p−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製、製品名;マルカリンカーM S−1)20gをシクロヘキサノン(関東化学社製)140gに溶解した後、メラミン樹脂(三和ケミカル社製、製品名;ニカラックMW−30HM、6官能単量体含量95%以上)3g、(5−(4−メチルフェニル)スルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル (チバスペシャリティケミカルズ社製、製品名;CGI−1311)1gを混合溶解したネガ型感光性樹脂組成物をスピンコーターにて1.9μmの厚さでカラーフィルター基板に塗布し、プリベーク後、フォトマスクを介して露光、90℃/180秒にて露光後加熱し、アルカリ現像処理を行い、線幅10μmのライン状パターンを形成した。続いて、230℃/30分でポストベーク(熱フロー)を行い断面が半円形の突起を形成し、配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0054】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物の適正露光量は60mJ/cmであり、パターニング特性は良好であった。このネガ型感光性樹脂組成物による配向制御用突起の体積抵抗率は、約1×1011Ωcmであり、該配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、このMVA−LCDは高視野角を有し、かつ長時間にわたり電圧を印加した状態においても焼きつきが発生せず、良好な表示性能を示すものであった。
【実施例2】
【0055】
(5−(4−メチルフェニル)スルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリルの代わりに(5−カンファリルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(チバスペシャリティケミカルズ社製、製品名;CGI−1380)を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0056】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物の適正露光量は80mJ/cmであり、パターニング特性は良好であった。また、このネガ型感光性樹脂組成物による配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、このMVA−LCDは高視野角を有し、かつ長時間にわたり電圧を印加した状態においても焼きつきが発生せず、良好な表示性能を示すものであった。
【実施例3】
【0057】
(5−(4−メチルフェニル)スルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリルの代わりにN−ノナフルオロブチルスルホン酸−1,3,6−トリオキソ−3,6−ジヒドロ−1H−11−チア−2−アザエクスプロペンタ[a]アントラセン―2―イル エステル(合成品)を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0058】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物の適正露光量は100mJ/cmであり、パターニング特性は良好であった。また、このネガ型感光性樹脂組成物による配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、このMVA−LCDは高視野角を有し、かつ長時間にわたり電圧を印加した状態においても焼きつきが発生せず、良好な表示性能を示すものであった。
【実施例4】
【0059】
ポリ(p−ビニルフェノール)の代わりにポリ(4−ビニルフェノール−スチレン)共重合体(丸善石油化学社製、製品名;マルカリンカーCST70)を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0060】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物の適正露光量は80mJ/cmであり、パターニング特性は良好であった。また、このネガ型感光性樹脂組成物による配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、このMVA−LCDは高視野角を有し、かつ長時間にわたり電圧を印加した状態においても焼きつきが発生せず、良好な表示性能を示すものであった。
【実施例5】
【0061】
メラミン樹脂(三和ケミカル社製、製品名;ニカラックMW−30HM、6官能単量体含量95%以上)3gの代わりにメラミン樹脂(三和ケミカル社製、製品名;ニカラックMX−750LM、5官能単量体含量約40%)2.5gを用い、露光後加熱条件を80℃/300秒に変更した以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0062】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物の適正露光量は90mJ/cmであり、パターニング特性は良好であった。また、このネガ型感光性樹脂組成物による配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、このMVA−LCDは高視野角を有し、かつ長時間にわたり電圧を印加した状態においても焼きつきが発生せず、良好な表示性能を示すものであった。
【0063】
[比較例1]
(5−(4−メチルフェニル)スルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリルの代わりに、チオフェニル フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロフォスフェート(みどり化学社製、製品名;DTS−102)を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0064】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物は適正露光量が300mJ/cmと、低感度であった。
【0065】
[比較例2]
ポリ(p−ビニルフェノール)の代わりに、メタクリル酸/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル/メタクリル酸ベンジル=30/20/50の比で公知の方法により共重合させたアクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物を調整し、これを用いて配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0066】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物はパターニング特性は良好であったものの、このスペーサー柱と配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、焼きつきが発生してしまった。
【0067】
[比較例3]
露光後加条件90℃/80秒の代わりに、110℃/30秒で行った以外は、実施例1と同様にして配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を得た。
【0068】
このようにして得られたネガ型感光性樹脂組成物はパターニング特性において上面が平坦な形状となり、このスペーサー柱と配向制御用突起を有するカラーフィルター基板を用いてMVA―LCDを作製したところ、配向不良が発生してしまった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る方法によって配向突起を形成した液晶表示パネル用基板を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
10 …MVA−LCD
11 …TFT側基板
12 …カラーフィルタ側基板
13 …配向制御用突起
14 …配向制御用突起
15 …液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する基板との間で液晶を挟持する液晶表示装置を構成する配向制御用突起を有する基板において、前記配向制御用突起が少なくとも、
(a)ポリビニルフェノールと、
(b)酸の作用により反応する架橋剤と、
(c)少なくとも365nm又は405nmのいずれかの波長の光で分解し酸を発生する光酸発生剤と、
からなるネガ型感光性樹脂組成物により形成されることを特徴とする配向制御用突起を有する基板。
【請求項2】
前記酸の作用により反応する架橋剤がメラミン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の配向制御用突起を有する基板。
【請求項3】
前記配向制御用突起が、露光後に60〜90℃の温度範囲で90〜600秒加熱をして形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配向制御用突起を有する基板。
【請求項4】
前記光酸発生剤が、一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配向制御用突起を有する基板。
【化1】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【請求項5】
前記光酸発生剤が、一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配向制御用突起を有する基板。
【化2】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、または置換されていてもよい脂環基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の配向制御用突起を設けられた基板を、液晶を挟持する対向する基板の少なくとも一方に用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−201237(P2006−201237A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10044(P2005−10044)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】