説明

配管およびその製造方法

【課題】雌側パイプ内での配管の連結性をこれまで以上に高めることでガタつきや水漏れの発生を防止すると共に、製造コストを大幅に削減できる配管およびその製造方法を提供する。
【解決手段】雌側パイプ10内に連結される、先端に補強用ビード2が形成された配管1である。補強用ビード2が雌側パイプ10の内周に面接触するように一体加工により形成され、かつ、補強用ビード2と適宜間隙をおいて、雌側パイプ10の内周に面接触するように2以上の連続ビード部3が一体加工により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水機や給湯機に具備される配管において、特に、配管の連結性を高めてガタつきや水漏れの発生を防ぐと共に、製造コストを大幅に削減することができる配管およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、温水機や給湯機などには、湯や水を送水する銅製の配管が具備されている。かかる配管を連結するには、従来、配管を雌側パイプ内に挿入した後、配管と雌側パイプの連結部分に連結治具を装着して連結固定する手法が一般に採られていた。
【0003】
雌側パイプ内に連結される従来の配管は、図11に示すように、配管20の先端に、雌側パイプ10の内径より僅かに小径のビード部21を設けると共に、基端側に緩やかな湾曲部(拡経部)22を形成し、かかる湾曲部22に黄銅等の素材からなる抜け落ちおよびガタつき防止用のリング23を嵌着して形成されてなるのが一般的である。また、ビード部21とリング23との間には、水漏れ防止用の樹脂リング24が装着される。
【0004】
かかる構造の配管20を雌側パイプ10内に圧入すると、ビード部21とリング23の外周が雌側パイプ10の内周に接合され、配管20が雌側パイプ10内で固定され、配管20の抜け落ちやガタつきを防ぐことができる。また、樹脂リング24により、連結部からの水漏れを防止することができる。
【0005】
しかし、配管20は、溶接加工の際にリング23近くを溶接すると、パイプのひずみによりリング23が抜け落ちるという可能性があった。また、配管20とリング23とは材質が異なるため、温水機や給湯機を解体する際にそれぞれ分別処理しなければなかった。さらに、材料のリサイクル価値も低減するという問題があった。
【0006】
上述のような従来の配管20のもつ課題を解決するために、図12に示すように、Oリング28の形状を安定させるための形状として、配管自体に、安価な製造コストで形成することができる二重ビードを設ける手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
上掲特許文献1記載の二重ビード付の配管は、相手側部材25に形成されている接続穴に管端部が挿入され、その状態で抜止め部材が相手側部材に固定されることによって接続穴から抜止めされる。この配管の管端部には、その接続穴の内径よりも僅かに小さな外径を持つ大径ビード部26と、その大径ビード部26よりも管端から遠い側に設けられた小径のビード部27とが形成されており、その小径側のビード27が前記抜止め部材に当接して抜止めされる構造となっている。
【特許文献1】特開2003−172491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、雌側パイプ内での配管の連結性をこれまで以上に高めることでガタつきや水漏れの発生を防止すると共に、製造コストを大幅に削減できる配管およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上掲特許文献1記載の二重ビード付配管に基づき鋭意検討した結果、上掲特許文献1記載の配管構造においてもなお、配管の安定性等の面で必ずしも十分とはいえないことを見出した。即ち、接続穴に管端部が挿入された場合、図12の(a)に示すように、相手側部材25の内周と大径ビード26の外周とが点接触となること、および、抜止めビード27が小径に形成されているため、抜止めビード27の外周は相手側部材25の内周に接触されないこと、により、相手側部材25内における配管の高い安定性は得られにくいことが分かった。また、大径ビード26の上部は湾曲状に折り曲げられているので、図12の(b)に示すように、Oリング28と大径ビード26との上部に広い隙間aが発生し、そのため、接続穴に配管を圧入させると、Oリング28が大径ビード26を乗り越えて外れてしまうおそれがあることも分かった。本発明者は、かかる知見に基づきさらに鋭意検討を重ねた結果、以下の構造とすることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の配管は、雌側パイプ内に連結される、先端に補強用ビードが形成された配管において、
前記補強用ビードが前記雌側パイプの内周に面接触するように一体加工により形成され、かつ、前記補強用ビードと適宜間隙をおいて、前記雌側パイプの内周に面接触するように2以上の連続ビード部が一体加工により形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記補強用ビードと前記連続ビード部との間に、第二ビードが形成されてもよい。
【0012】
また、本発明の配管の製造方法は、第一パンチにより配管に蛇腹部を形成する第一工程と、第二パンチにより蛇腹部を断面略矩形状の連続ビード部に加工する第二工程と、第三パンチにより配管の先端に補強用ビードを形成する第三工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビード部付近に溶接加工を施しても、配管が雌側パイプの内でガタついたり、抜け落ちたりすることがない優れた連結性を得ることができる。また、製造コストや作業工程を大幅に削減でき、さらに金属材料の混在もないため廃棄時における材料のリサイクル価値も高まる。さらに、連続ビード部は任意の幅に製造できるため、連結強度を自在に調節することができる。よって、本発明の配管は、温水器や給湯器の温水又は冷水をこれまで以上に安定かつ安全に送水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の配管およびその製造方法における実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す配管1は金属製、特には銅製の雄側パイプからなり、先端には補強用ビード2が設けられている。かかる補強用ビード2は、配管1の抜け止めと強度を高める働きがあり、雌側パイプ10の内周に面接触するようにその内径が形成されている。
【0016】
また、配管10の基端側には、補強用ビード2と適宜間隙を置いて、配管1と一体的に加工された2以上(図示例では3)の連続ビード部3が形成されている。補強用ビード2と連続ビード部3との間隔は、これらの間に樹脂リング4を配置するに適当な間隔とすればよい。かかる連続ビード部3は、配管1を蛇腹状に折り畳んだ複数のビードを一体加工することにより好適に製造される。なお、図中においては、ビードを三重に折り畳んで連続ビード部3が形成されている。
【0017】
また、連続ビード部3は、従来の配管内に具備されていた黄銅のリング(図11中,符号23)と、径および幅が略同一に形成され、その断面形状も図示するように略矩形となる。そのため、雌側パイプ10の開口部12に配管1を挿入すると、連続ビード部3の外周が雌側パイプ10の内周に面接触し、配管1の連結状態を強固にすることができる。
【0018】
補強用ビード2と連続ビード部3との間には、樹脂製のOリング4が装着される。Oリング4は、配管1を雌側パイプ10内に圧入する際、補強用ビード2と連続ビード部3との間で押圧変形され、配管1と雌側パイプ10との間に生じる隙間を埋め、連結部分からの水漏れを防ぐ働きを有する。配管1と雌側パイプ10との連結部分は既知の連結冶具13で固定することができる。
【0019】
雌側パイプ10は図11に示す既知のものとすることができ、その先方部分は幅広状に形成されており、先端部にはフランジ11が設けられている。また、配管1が挿入される開口部12はテーパ状に形成されている。さらに、雌側パイプ10の先方部分の内径は、配管1の補強用ビード2とビード部3の外周と接触可能な内径に形成されている。
【0020】
図2は、配管1を雌側パイプ10へ連結する状態を表すものである。(a)に示すように、先ず、補強用ビード2とビード部3との間にはOリング4を装着する。この状態で(b)に示すように、配管1を雌側パイプ10の開口部12より圧入すると、Oリング4が配管1と雌側パイプ10との間で押圧されて変形し、配管1と雌側パイプ10との間の隙間を埋める。
【0021】
配管1を雌側パイプ10内に圧入した後、(c)に示すように、雌側パイプ10のフランジ11と配管1のビード部3との連結箇所に既知のタイプの連結冶具13を装着し、配管1と雌側パイプ10とを連結固定する。
【0022】
上記のように配管1を雌側パイプ10内に挿嵌することで、図3に示すように、配管1の連続ビード部3の外周が、雌側パイプ10の内周に面接触する。これにより、配管1と雌側パイプ10の連結力が向上し、配管1の抜け落ちやガタつきを防ぐことができる。また、雌側パイプ10のフランジ11の側面と連続ビード部3の側面とが配管1の径方向に一直線状に配置されるようにすることで、連結金具13を装着する際、スムーズな挿入と確実な装着を行うことができる。
【0023】
また、図4に拡大して示すように、補強用ビード2および連続ビード部3の上部が略水平状に形成されているため、Oリング4と連続ビード部3との上部の隙間bが少なくなり、配管1を圧入したり引き抜いたりしても、Oリング4が補強用ビード2や連続ビード部3を乗り越えて外れ落ちる心配がない。
【0024】
また、本発明の他の好適例として、図5の(a)に示すように、連続ビード部3を、ビードを二重に折り畳んだ構造としてもよい。また(b)に示すように、ビードを四重に折り畳んだ構造でもよい。連続ビード部3を、ビードを二重乃至四重に折り畳んだ構成とすることで、連続ビード部3の幅を任意の幅に変更でき、連結強度を自在に調節することが可能になる。
【0025】
また、本発明の更に他の好適例として、図6に示すように、補強用ビード2と連続ビード部3との間に、さらに第二ビード5を立設してもよい。これにより、配管1の先端部分での連結力を高めることができる。また、図7に示すように、連結力を高めるために、配管1の先方に、雌側パイプ10の内面形状に面接合する接合部6を設けてもよい。
【0026】
次に、本発明の配管の製造方法の好適例を図8乃至図10に基づいて説明する。
図8は、第一パンチ40で配管1に蛇腹部7を形成させるときの様子を示す。(a)に示す第一パンチ40は、内径パンチ41とパンチ本体42および外径ホルダー43とパンチホルダー44とを備える。また、配管1はクランプ30で上下方向から挟み、固定される。
【0027】
スイッチを入れると、(b)に示すように、第一パンチ40が矢印方向に進み、内径パンチ41が配管1内に挿入されると共に、外径ホルダー43が隙間dを隔てて配管1の周囲に配設される。この状態で、パンチ本体42にて配管1の先端を押圧すると、配管1に蛇腹部7が形成される。この際、外径ホルダー43はスプリング45が縮むことにより後方へ移行される。なお、パンチ本体42の凹部46の長さを調節することで、蛇腹部7を二つ山や四つ山に変えることができる。
【0028】
図9は、第二パンチ50で配管1に形成された蛇腹部7を、連続ビード部3に整形するときの様子を示す。(a)に示す第二パンチ50は、内径パンチ51と、内径パンチ51を保持固定するパンチ本体52とからなる。(b)に示すように、第二パンチ50を矢印方向に移行させると、内径パンチ51は蛇腹部7が形成された配管1内に挿入されると共に、パンチ本体52にて配管1の先端部を押圧する。すると蛇腹部7は、パンチ本体52の凹部53内で幅や径が圧縮され、断面矩形状の連続ビード部3が形成される。
【0029】
図10は、第三パンチ60で配管1の先端に補強用ビード2を形成するときの様子を示す。(a)に示す第三パンチ60は、内径パンチ61と、内径パンチ61を保持固定するパンチ本体62とからなる。また、パンチ本体62の先端には浅溝状の凹部63が形成されている。まず、(b)に示すように、サブクランプ31にて、上下方向から配管1を挟み固定する。この際、サブクランプ31の凹部32内に連続ビード部3が配設される。この状態で、前記第三パンチ60を矢印方向に移行させると、内径パンチ61は配管1内に挿入され、パンチ本体62の先端にて配管1の先端を押圧し、凹部63内に補強用ビード2が形成される。
【0030】
前記第一パンチ40、第二パンチ50および第三パンチ60にて配管1にプレス加工を施すことで、配管1に、一体加工の連続ビード部3と補強用ビード2を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明における配管の断面図である。
【図2】配管の連結状態を示す説明図である。
【図3】配管の連結状態の拡大断面図である。
【図4】配管の拡大断面図である。
【図5】他の好適例を示す配管の断面図である。
【図6】他の好適例を示す配管の断面図である。
【図7】他の好適例を示す配管の断面図である。
【図8】配管に蛇腹部を製造する方法を示す説明図である。
【図9】蛇腹部を連続ビード部に整形する方法を示す説明図である。
【図10】配管に補強用ビードを製造する方法を示す説明図である。
【図11】従来の配管を示す断面図である。
【図12】従来の配管の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 配管
2 補強用ビード
3 連続ビード部
4 Oリング
5 第二ビード
6 接合部
7 蛇腹部
10 雌側パイプ
11 フランジ
12 開口部
13 連結治具
20 配管
21 ビード部
22 湾曲部
23 リング
24 樹脂リング
25 相手側部材
26 大径ビード
27 抜止めビード
28 Oリング
30 クランプ
31 サブクランプ
32 凹部
40 第一パンチ
41 内径パンチ
42 パンチ本体
43 外径ホルダー
44 パンチホルダー
45 スプリング
46 凹部
50 第二パンチ
51 内径パンチ
52 パンチ本体
53 凹部
60 第三パンチ
61 内径パンチ
62 パンチ本体
63 凹部
a 隙間
b 隙間
d 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌側パイプ内に連結される、先端に補強用ビードが形成された配管において、
前記補強用ビードが前記雌側パイプの内周に面接触するように一体加工により形成され、かつ、前記補強用ビードと適宜間隙をおいて、前記雌側パイプの内周に面接触するように2以上の連続ビード部が一体加工により形成されていることを特徴とする配管。
【請求項2】
前記補強用ビードと前記連続ビード部との間に、第二ビードが形成されている請求項1記載の配管。
【請求項3】
第一パンチにより配管に蛇腹部を形成する第一工程と、第二パンチにより蛇腹部を断面略矩形状の連続ビード部に加工する第二工程と、第三パンチにより配管の先端に補強用ビードを形成する第三工程と、を含むことを特徴とする配管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−256028(P2008−256028A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96966(P2007−96966)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(507108195)
【Fターム(参考)】