説明

配管の接続構造

【課題】 かしめによる配管の保持力を向上可能とする配管の接続構造を提供する。
【解決手段】 流体が充満したタンク6に内蔵された内蔵機器7とタンク6外に配置された配管8とが接続されるものであり、ジョイント9の穴部9fよりも開口側となる先端部が、配管8のフランジ部8aに対するかしめ部9bとして形成され、この状態で配管8がジョイント9にろう接される配管の接続構造において、穴部9fを形成するラインのうち、隣り合う2辺が、フランジ部8aの一方の面8a1側から他方の面8a2をよぎる三角状を成すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が充満したタンクに内蔵された内蔵機器と、タンク外に配置された配管との接続構造に関するもので、ラジエータのタンクに内蔵されたオイルクーラと、このオイルクーラに接続される配管との接続構造に適用して有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が充満したタンクに内蔵された内蔵機器とタンク外に配置された配管との接続構造として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。即ち、この配管の接続構造においては、まず、タンクの外側に配置されるジョイントが、内蔵機器と共にタンクの壁部材を挟み込むようにして、内蔵機器に接合されている。ジョイントは、外側に開口する円筒状の筒部を有しており、筒部の底部側に座面が形成され、また、筒部の側面に複数(ここでは4つ)の穴部が円周方向に並ぶように形成されている。
【0003】
一方、配管のジョイントとの接続側には鍔状のフランジ部が設けられている。そして、フランジ部がジョイントの座面に当接するように筒部に挿入され、筒部の穴部より先端側が配管側に押圧されて、塑性変形することでフランジ部の反座面側の面にかしめられている(4箇所のかしめ部の形成による仮固定)。更に、この状態で配管がジョイントにろう接されている。
【0004】
これにより、従来とは異なる新規な配管の接続構造を提供すると共に、ジョイントに対する配管の仮固定時の回転を抑制できるようにしている。
【特許文献1】特開2003−314761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図7に示すように、ジョイント9の穴部9fとして、長穴をベースに長径方向の中央部がくびれた略8の字状の穴としているので、穴部9fのくびれに対応する突状部9gの先端のみで、点接触によるフランジ部8aへのかしめが行われることになり、フランジ部8aとの接触面積が非常に小さく、配管8の保持力が充分に確保できなかった。よって、上記かしめにより配管8をジョイント9に仮固定した後に、ろう接を行う際に、かしめ部に例えば配管8の自重等による応力が加わると、容易に配管8の傾きが生じ、ろう接不良に至る場合があった。
【0006】
本発明の目的は、上記点に鑑み、かしめによる配管の保持力を向上可能とする配管の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、流体が充満したタンク(6)に内蔵された内蔵機器(7)とタンク(6)外に配置された配管(8)とが接続されるものであって、タンク(6)の外側に配置され、タンク(6)を構成する壁部材(6c)を内蔵機器(7)と共に挟み込むようにして内蔵機器(7)に接合されたジョイント(9)を有し、ジョイント(9)は、配管(8)側に開口する円筒状を成して、底部側に座面(9c)、筒部(9e)に複数の穴部(9f)を有しており、配管(8)のうちジョイント(9)との接続側には、径方向外側に突出した鍔状のフランジ部(8a)が設けられ、フランジ部(8a)の一方の面(8a1)が座面(9c)に当接するように、配管(8)がジョイント(9)内に挿入され、穴部(9f)よりも開口側となる先端部が、フランジ部(8a)の径方向の先端側から根元側に突出するように塑性変形されて、フランジ部(8a)の他方の面(8a2)にかしめ部(9b)として形成され、更に、かしめ部(9b)と座面(9c)との間にフランジ部(8a)が挟まれて固定された状態で、配管(8)がジョイント(9)にろう接された配管の接続構造において、穴部(9f)を形成するラインのうち、隣り合う2辺が、フランジ部(8a)の一方の面(8a1)側から他方の面(8a2)をよぎる三角状を成していることを特徴としている。
【0009】
これにより、1つの穴部(9f)について、フランジ部(8a)に対して2箇所でかしめを行うことができ、且つ、かしめの接触面積を大きくすることができるので(面接触)、配管(8)の仮固定における保持力を向上することができる。よって、かしめによる配管(8)の仮固定の後に、ろう付けを行う際に、配管(8)の自重等によりかしめ部に応力が加わっても、配管(8)が傾くのを防止でき、ろう付け不良に至ることがない。
【0010】
請求項2に記載の発明では、かしめ部(9b)は、ジョイント(9)の筒部(9e)円周上で、対向するように2箇所設けられたことを特徴としている。
【0011】
これにより、刃部に突状部を設けたペンチに準じた工具によって、ジョイント(9)を挟み込み押圧することによって、2箇所のかしめ部(9b)を同時に形成でき、配管(8)の組付け工数を低減できる。
【0012】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態は、車両用ラジエータ1のタンク6に内蔵されたオイルクーラ7と、このオイルクーラ7に接続される配管8との接続構造に本発明を適用したものであり、以下、具体的な構成について、図1〜図6を用いて説明する。
【0014】
尚、図1はラジエータ1を示す正面図であり、図2はコア5側のタンク材6cを示す(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図であり、図3(a)は図2のA−A部およびB−B部を示す断面図であり、図3(b)は図3(a)の側面図であり、図4はオイルクーラ7を示す断面図であり、図5はかしめ工具を示す(a)は平面図、(b)は側面図であり、図6は配管8の配管ジョイント9へのかしめ状態を示す外観斜視図である。
【0015】
図1に示すように、ラジエータ1のチューブ2は冷却水が流れる扁平管であり、このチューブ2の扁平面に、波状に形成されたフィン3を接合して空気との伝熱面積を増大させている。
【0016】
サイドプレート4はチューブ2と平行に延びて、チューブ2およびフィン3からなるコア5を補強するもので、チューブ2の長手方向両端側には、各チューブ2に連通するタンク6が配設されている。
【0017】
尚、紙面左側のタンク6は、各チューブ2に冷却水を分配供給するもので、紙面右側は熱交換を終えた冷却水を集合回収するもので、オイルクーラ(本発明の内蔵機器に対応)7は、紙面右側のタンク6に内蔵されている。
【0018】
因みに、本実施形態におけるオイルクーラ7は、エンジンオイルまたはATF(オートマチックトランスミッションフルード)と冷却水とを熱交換して、オイルまたはATFを冷却するものである。
【0019】
タンク6は、角筒状のタンク本体6aとタンク本体6aの長手方向端部を閉塞するキャップ6b等からなるもので、タンク本体6aは、図2に示すように、略LまたはJ字状にプレス成形された2枚のタンク材(本発明における壁部材に対応)6cを組み合わせることにより構成されている。
【0020】
尚、チューブ2、フィン3、サイドプレート4およびタンク6等は、全てアルミニウム製であり、これらはろう付け(ろう接)にて一体的に接合されている。
【0021】
また、タンク材6cに設けられたチューブ穴6dは、チューブ2が挿入される穴であり、接続パイプ6eはラジエータ1とエンジンとを繋ぐ配管とを接続するもので、配管8はオイルクーラ7に接続されたオイル用あるいはATF用の管である。
【0022】
オイルクーラ7は、図3、図4に示すように、所定形状にプレス成形された2枚のプレート材を組み合わせて構成された扁平状のチューブ7a、2本のチューブ7aを接続して2本のチューブ7a間を連通させるチューブ間ジョイント7b、チューブ7a内を配管8側に連通させるニップル7c、およびチューブ7aの曲げ剛性を増大させる補強板7d等から成るものである。ニップル7cの内周面には、雌ねじ7gが形成されている。
【0023】
尚、チューブ7a内には、オイルまたはATFとの伝熱面積を増大させるインナーフィン7eが配設されており、本実施形態では、チューブ7a、チューブ間ジョイント7b、ニップル7c、補強板7dおよびインナーフィン7eをアルミニウム製とし、ろう付けにて一体的に接合している。
【0024】
カラー7fは、表裏両面にろう材が被覆されたリング状の部材であり、このカラー7fによってチューブ7aとチューブ間ジョイント7bとがろう付けされ、また、チューブ7aとニップル7cとがろう付けされ、インナーフィン7eは、インナーフィン7eの表裏両面に被覆されたろう材によりチューブ7aの内壁に接合されている。
【0025】
配管8は屈曲した曲がり管としており、配管ジョイント9(後述)との接続側には、その外周全域に渡って径方向外側に突出した鍔状のフランジ部8aが設けられている。ここで、以下の説明のために、フランジ部8aの一方の面を後述する配管ジョイント9の座面9c側となる座面側面8a1とし、また、他方の面を反座面側面8a2とする。
【0026】
配管ジョイント(本発明におけるジョイントに対応)9は、配管8を機械的に仮固定するための円筒状の部材であり、配管ジョイント9の一端側には、ニップル7cの雌ねじ7gにねじ結合する雄ねじ9aが形成され、また、他端側は筒部9eとして形成されている。そして、配管ジョイント9は、タンク6の外側に配置され、ニップル7cと共にタンク材6cを挟み込むようにして、ニップル7cに接合(ねじ結合)されている。
【0027】
筒部9eの内部(本発明における底部側に対応)には、座面9cが形成されている。更に、筒部9eの外周面には、複数(ここでは4箇所)の穴部9fが形成されている。
【0028】
ここで、穴部9fは、異型穴を成しており、穴部9fを形成するラインのうち、座面9c側のラインは、座面9cと略一致するように配置され、中央部がくびれた形となっている。そして、反座面側のラインは、隣り合う2辺が、フランジ部8aの座面側面8a1側から反座面側面8a2をよぎる三角状となるように形成されている。
【0029】
そして、表裏両面にろう材が被覆されたリング状のカラー9dが、配管ジョイント9の座面9cに当接するように挿入され、更に、配管8の座面側面8a1が座面9c側(カラー9d)に当接するようにして、配管8は配管ジョイント9内に挿入されている。
【0030】
更に、図3(b)に示すように、配管ジョイント9の穴部9fよりも開口側となる先端部が、筒部9eの円周上の対向する2箇所で、フランジ部8aの先端側から根元側に突出するように略くの字状に塑性変形されて、フランジ部8aの反座面側面8a2に、かしめ部9bとして形成されている。即ち、この時点で配管8は、フランジ部8aがかしめ部9bと座面9cとによって挟まれて固定(仮固定)される。そして、この状態(仮固定された状態)で配管8は、カラー9dのろう材により配管ジョイント9にろう付けされている。
【0031】
次に、本実施形態における配管の接続構造の組み立て手順を簡単に説明する。
【0032】
まず、図3(a)に示すように、2枚のタンク材6cをろう付けする前に、オイルクーラ7をタンク6内に相当する位置に配置した状態でニップル7cをタンク材6cの内壁に接触させて、タンク6の外側、つまりタンク材6cの外側から配管ジョイント9をニップル7cに締め込むことにより、タンク材6cを配管ジョイント9とニップル7c、つまりオイルクーラ7とで挟み込むようにしてオイルクーラ7をタンク材6c、つまりタンク6に仮固定する。この時、タンク材6cとニップル7cとの間には、カラー7fが挿入される。
【0033】
次に、座面9cにカラー9dを配置した後に、フランジ部8aの座面側面8a1をカラー9dに接触させた状態で、筒部9eのうち穴部9fより先端側を配管8側に向けて押圧し、筒部9eの一部を塑性変形させてかしめ部9bを形成する。これにより、フランジ部8aがかしめ部9bと座面9cとに挟まれて機械的に固定され、配管8は配管ジョイント9にかしめ固定(仮固定)される。
【0034】
尚、かしめ部9bを形成する際に、ここでは図5に示すかしめ工具10を用いている。かしめ工具10は、基本構造を通常のペンチ、プライヤー等と同一として、かしめ刃11に突状部11aが形成されている。そして、かしめ刃11の上側、下側(図5b)には、それぞれ上ガイド12、下ガイド13が設けられている。よって、かしめ部9b形成にあたって、上ガイド12と下ガイド13とによって、配管ジョイント9を上下方向に挟み込むようにして、かしめ工具10の位置を固定し、かしめ刃11によって、2箇所のかしめ部9bを同時に形成するようにしている。
【0035】
その後、オイルクーラ7が仮固定されたタンク材6cに他のタンク材6c、キャップ6bおよびチューブ2等を組み付けた後、ワイヤー等の治具によりタンク6、コア5およびサイドプレート4等の組み付け状態を保持したまま、炉内で加熱してオイルクーラ7も含めたラジエータ1全体をろう付け接合する。
【0036】
本発明においては、配管ジョイント9の穴部9fを形成するラインのうち、隣り合う2辺が、フランジ部8aの座面側面8a1側から反座面側面8a2をよぎる三角状となるようにしているので、図6に示すように、1つの穴部9fについて、フランジ部8aに対して2箇所でかしめを行うことができ、且つ、かしめの接触面積を大きくすることができ(面接触)、配管8の仮固定における保持力を向上することができる。よって、かしめによる配管8の仮固定の後に、ろう付けを行う際に、配管8の自重等によりかしめ部に応力が加わっても、配管8が傾くのを防止でき、ろう付け不良に至ることがない。
【0037】
また、かしめ部9bが配管ジョイント9の筒部9e円周上で、対向するように2箇所設けるようにしているので、かしめ刃11に突状部11aを設けたかしめ工具10によって、配管ジョイント9を挟み込み押圧することによって、2箇所のかしめ部9bを同時に形成でき、配管8の組付け工数を低減できる。
【0038】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、かしめ部9bを2箇所設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、かしめ部9bを3箇所以上設けるようにしても良い。
【0039】
また、上述の実施形態では、フランジ部8aと座面9cとの間にカラー9dを配置したが、カラー9dを廃止し、置きろう、溶射またはろう材の刷毛塗り等の手段によりフランジ部8aまたは座面9cにろう材を配置して、フランジ部8aと座面9cとを直接にろう付けしても良い。
【0040】
また、上述の実施形態では、車両用ラジエータ1のタンク6に内蔵されるオイルクーラ7と、このオイルクーラ7に接続される配管8との接続構造に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
【0041】
また、上述の実施形態では、配管8は屈曲した曲がり管であったが(図2参照)、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、配管8としてストレート配管を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態におけるラジエータを示す正面図である。
【図2】本実施形態におけるコア側タンク材を示す、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図3】(a)は図2のA−A部およびB−B部を示す断面図であり、(b)は(a)の側面図である。
【図4】本実施形態におけるオイルクーラを示す断面図である。
【図5】本実施形態におけるかしめ工具を示す(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図6】本実施形態における配管の配管ジョイントへのかしめ状態を示す外観斜視図である。
【図7】従来技術における配管の配管ジョイントへのかしめ状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
6 タンク
6c タンク材(壁部材)
7 オイルクーラ(内蔵機器)
8 配管
8a フランジ部
8a1 座面側面(一方の面)
8a2 反座面側面(他方の面)
9 配管ジョイント(ジョイント)
9b かしめ部
9c 座面
9e 筒部
9f 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が充満したタンク(6)に内蔵された内蔵機器(7)と前記タンク(6)外に配置された配管(8)とが接続されるものであって、
前記タンク(6)の外側に配置され、前記タンク(6)を構成する壁部材(6c)を前記内蔵機器(7)と共に挟み込むようにして前記内蔵機器(7)に接合されたジョイント(9)を有し、
前記ジョイント(9)は、前記配管(8)側に開口する円筒状を成して、底部側に座面(9c)、筒部(9e)に複数の穴部(9f)を有しており、
前記配管(8)のうち前記ジョイント(9)との接続側には、径方向外側に突出した鍔状のフランジ部(8a)が設けられ、
前記フランジ部(8a)の一方の面(8a1)が前記座面(9c)に当接するように、前記配管(8)が前記ジョイント(9)内に挿入され、
前記穴部(9f)よりも開口側となる先端部が、前記フランジ部(8a)の径方向の先端側から根元側に突出するように塑性変形されて、前記フランジ部(8a)の他方の面(8a2)にかしめ部(9b)として形成され、
更に、前記かしめ部(9b)と前記座面(9c)との間に前記フランジ部(8a)が挟まれて固定された状態で、前記配管(8)が前記ジョイント(9)にろう接された配管の接続構造において、
前記穴部(9f)を形成するラインのうち、隣り合う2辺が、前記フランジ部(8a)の前記一方の面(8a1)側から前記他方の面(8a2)をよぎる三角状を成していることを特徴とする配管の接続構造。
【請求項2】
前記かしめ部(9b)は、前記ジョイント(9)の前記筒部(9e)円周上で、対向するように2箇所設けられたことを特徴とする請求項1に記載の配管の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−144836(P2006−144836A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332404(P2004−332404)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】