説明

配管の検査方法

【課題】高温状態にある大口径配管であってもその減肉発生の有無を精度良く検出できる配管の検査方法を提供する。
【解決手段】高温の配管における減肉を検査する方法であって、高温用接触媒質を介して超音波探触子を前記配管表面に接触させる探触子配置ステップと、前記超音波探触子を、前記配管表面に接触させたまま前記配管の軸方向に沿って移動させる検査ステップとからなる。高温用接触媒質を介して超音波探触子を高温の配管表面に接触させるので、検査対象が高温の配管であっても、熱による超音波探触子の損傷を防ぐことができ、減肉等を検査することができる。すると、検査対象となる配管を備えたプラント設備を停止しなくても検査ができるので、配管の保守点検を定期的にかつ比較的短い間隔で検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の検査方法に関する。石油精製プラントや石油化学プラント、発電プラント等では、高温プロセス流体、過熱蒸気等の流体が流れる配管が多数設けられている。かかる配管が損傷した場合には、プラント設備は停止し製品の生産ができなくなるし、最悪の場合には事故につながる。上記のごとき問題を防ぎ配管の損傷を早期に発見するためには、配管の保守点検を定期的に行う必要がある。
本発明は、かかる配管の保守点検に使用される配管の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製プラント等の配管における局部腐食を検出する検査方法として、超音波を利用した検査方法が知られている(特許文献1、2)。
特許文献1、2には、超音波探触子を、配管に固定される治具によって配管の軸方向に沿って移動させて、配管の局部腐食を検査する方法が開示されている。これらの方法によれば、配管の軸方向に沿って超音波探触子を移動させるので、配管の厚さを配管の軸方向に沿って連続して測定できるから、定点測定では検出できない局部的な減肉でも発見できる。
【0003】
ところで、上記方法によって高温の流体を流す配管等を検査するときには、探触子を直接高温の配管に接触させなければならない。しかも、連続測定であれば、比較的長時間、探触子を高温の配管に接触させておく必要がある。すると、探触子が長期間高温に曝されることになるから、探触子の熱による損傷をいかに防ぐかが問題となる。しかし、特許文献1、2では、高温の配管等の測定は考慮されておらず、熱による探触子の損傷を防ぐ方法については全く開示されていない。
【0004】
つまり、特許文献1、2の方法では、高温の配管等の測定は困難であり、配管の温度が低くなった状態、つまり、プラント設備を停止した状態でなければ検査を行うことができないのである。
【0005】
配管の損傷を早期に発見するためには、配管の保守点検を定期的かつ比較的短い間隔(例えば、1年毎)で検査を行う必要があるが、プラント設備を停止するのは、通常4年毎である。したがって、特許文献1、2の技術では、配管の損傷を早期発見することは難しい。
【0006】
一方、局部腐食を検出する他の検査方法として、放射線を利用した方法、例えば、放射線−デジタルRT法や、放射線−リアルタイム画像処理法等がある。
これらの放射線を利用した方法は、非接触で検査を行うことができるので、保温材を施工したままでも検査を行うことができる。つまり、高温の配管等でも検査を行うことができるので、プラント設備を稼動させた状態でも配管等の検査が可能である。
【0007】
しかし、上記放射線を利用した方法のうち、放射線−デジタルRT法では、配管の連続測定が可能であり、また、直管部に限らずエルボ部等の曲がった管であっても検査できるという利点はあるが、大口径の配管、例えば、実際のプラントにおいてよく使用される径の配管(例えば、6B以上)の検査は行うことはできない。
一方、放射線−リアルタイム画像処理法の場合には、配管の連続測定が可能であり、大口径の配管でも測定はできるが、エルボ部等の曲がった管の検査を行うことができない。しかも、放射線−リアルタイム画像処理法はその検査精度が低く、大口径の配管を検査した場合には、たとえ直管部であっても、局所的に点在する欠陥等を精度よく検出することは困難である。
つまり、放射線を利用した上記方法では、いずれも高温状態の配管を連続測定することは可能であるが、大口径配管、とくに、大口径のエルボ部に存在する局所的な欠陥等を精度よく検査することはできないのである。
【0008】
以上のごとく、現在のところ、配管が高温の状態であるプラント設備を稼動した状態において、大口径配管、とくに、エルボ部等の屈曲した大口径配管を連続測定することができる技術は開発されていない。
【0009】
【特許文献1】特開2007−212406号
【特許文献2】特開2007−285772号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、高温状態にある大口径配管であってもその減肉発生の有無を精度良く検出できる配管の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の配管の検査方法は、高温の配管における減肉を検査する方法であって、高温用接触媒質を介して超音波探触子を前記配管表面に接触させる探触子配置ステップと、前記超音波探触子を、前記配管表面に接触させたまま前記配管の軸方向に沿って移動させる検査ステップとからなることを特徴とする。
第2発明の配管の検査方法は、第1発明において、前記検査ステップにおいて、前記高温用接触媒質を、前記超音波接触子と前記配管表面との間に注入しながら、前記超音波探触子を移動させることを特徴とする。
第3発明の配管の検査方法は、第1発明において、前記探触子配置ステップを行う前に、前記高温用接触媒質を検査を行う領域に塗布する塗布ステップを行うことを特徴とする。
第4発明の配管の検査方法は、第1、第2または第3発明において、前記探触子配置ステップと前記検査ステップとを繰り返して検査を行う場合において、前記検査ステップ終了後前記探触子配置ステップを行う前に、前記超音波探触子の位置を前記配管の周方向に沿って移動させる検査位置変更ステップを実行することを特徴とする。
第5発明の配管の検査方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記配管の基準位置に対する前記超音波探触子の位置を検出する位置センサを備えており、該位置センサが発信する位置信号と、前記超音波探触子が発信する検査信号とを対応づけて保存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、高温用接触媒質を介して超音波探触子を高温の配管表面に接触させるので、検査対象が高温の配管であっても、熱による超音波探触子の損傷を防ぐことができ、減肉等を検査することができる。すると、検査対象となる配管を備えたプラント設備を停止しなくても検査ができるので、配管の保守点検を定期的にかつ比較的短い間隔で検査することができる。
第2発明によれば、高温用接触媒質を超音波探触子と配管表面との間に注入しながら検査ステップを実行するので、供給する高温用接触媒質によって超音波探触子を冷却することができる。したがって、熱による超音波探触子の損傷をより確実に防ぐことができる。
第3発明によれば、検査する領域に予め高温用接触媒質を塗布しているので、超音波探触子を塗布されている高温用接触媒質上を移動させるだけで連続して検査を行うことができる。すると、超音波探触子を移動させる度に、高温用接触媒質を塗布する作業を行わなくてもよいので、検査を迅速に行うことができる。
第4発明によれば、超音波探触子の位置を配管の周方向に沿って変えれば、複数箇所を配管の軸方向に沿って連続的に検査できるから、定点測定に比べて、検査漏れを少なくすることができる。
第5発明によれば、位置センサからの位置信号と、超音波探触子が発信する検査信号とが対応づけて保存されているので、これらに基づいて、検査位置による配管の状態の変化を画像化することができる。すると、検査を行う作業者が、配管の状態をイメージし易くなるので、欠陥の発見が容易になる。しかも、定期的に検査を行い、そのデータを比較すれば、配管の腐食速度や経年変化を把握することもできるので、配管の損傷状況や交換時期などを予測することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の配管検査方法は、超音波を利用して配管の厚さを測定し、配管に生じている減肉等の欠陥を検出する方法であり、高温の流体(例えば高温プロセス流体、過熱蒸気)が流されて高温になっている配管の厚さを、高温の状態のまま測定できるようにしたことに特徴を有している。つまり、配管が設けられているプラント設備が稼動している状況でも配管の厚さを精度良く測定をできるようにしたことに特徴を有しているのである。
【0014】
なお、本発明の配管検査方法は、様々な設備の配管検査に適用できるが、設備を停止して保守点検等を行う間隔が比較的長い設備、例えば、約4年毎に設備を停止する石油精製プラントや石油化学プラント等の配管検査に特に適している。
【0015】
また、本発明の配管検査方法は、プラント等の配管における直線状部分(直管部、図2(A)参照)はもちろんのこと、配管の屈曲した部分(屈曲部、図1(A)参照)や、配管同士が連結された部分(枝管部、図2(B)参照)の検査に採用することができる。そして、従来検査することが難しかった、大口径の配管における上記各部分の検査も行うことができる。
ここで、大口径の配管とは、実際のプラント設備において使用される配管のうちその径が大きいものを意味している。具体的には、6B以上の配管から、現存するプラントにおいて使用されうる配管のうち最大の配管(60B程度)までを意味している。しかし、本発明の配管検査方法の性質上、検査できる配管径の上限は存在しないので、上記の範囲の配管に限られず、60Bより大きい配管でも検査を行うことは可能である。
【0016】
図1は本実施形態の配管の検査方法の概略説明図であり、(A)は屈曲部PBの検査状況の説明図であり、(B)は超音波探触子Sの位置を配管Pの周方向に移動させる状況を説明した図である。図2は本実施形態の配管の検査方法の概略説明図であり、(A)は直管部の検査状況の説明図であり、(B)は枝管部の検査状況の説明図である。
図1(A)および図2において、符号Sは超音波探触子を示しており、符号CUは超音波探触子Sと電気的に接続されこの超音波探触子Sの作動を制御する制御手段を示している。
【0017】
前記超音波探触子Sは、配管Pに対して超音波を発信する機能と、発信した超音波が配管P内でした反射波を受信する機能とを有するものである。
また、超音波探触子Sは、検出した検査信号を制御手段CUに送信する機能も有している。具体的には、超音波探触子Sが発信した超音波は、配管P内で反射して超音波探触子Sまで戻ってくるが、この反射波が戻ってきたタイミングや反射波の強度、周波数等に関する情報を含んだ信号を検査信号として制御手段CUに送信する機能を有している。
【0018】
なお、本発明に使用する超音波探触子Sは、上記のごとき機能を有する超音波探触子Sであればよくとくに限定されないが、耐熱性に優れたものがより好ましい。例えば、超音波探触子Sとして、高温用分割型探触子を使用することができる。この高温用分割型探触子は、通常の探触子に比べて耐熱性に優れており、配管Pに対して超音波を発信する機能と、発信した超音波が配管P内で反射した反射波を受信する機能とを有している。分割型探触子とは、1個のケースの中に音響的に隔離された超音波送信用・受信用の2個の振動子で構成された探触子であり、送受信の振動子に若干の角度が付けられており、送受信の超音波ビームの中心が試験体中で交差するようになっている。送受信の超音波ビームが交差する点を交軸点といい、分割型探触子は、交軸点近傍にて、傷検出能が高くなる特長を有している。しかも、分割型探触子を使用すれば、厚さが薄い配管でも検査を行うことができる。すると、通常の探触子では検査できないレベルまで減肉等が進んだ配管(つまり、管壁が非常に薄くなった配管)でも厚さ測定ができるから、減肉等の損傷を早期発見できなかった場合でも、配管が破損する前に発見することが可能となる。
【0019】
前記制御手段CUは、超音波探触子Sと電気的に接続されこの超音波探触子Sの作動を制御するものである。具体的には、超音波探触子Sが信号(超音波)を発信するタイミングや、発信する超音波の強度、周波数等を制御している。
また、制御手段CUには、超音波探触子Sが発信する検査信号が入力されており、制御手段CUは、入力された検査信号を、位置センサから供給される位置信号と対応づけて保存する機能を有している。
この位置センサは、図示しないが、超音波探触子Sやこの超音波探触子Sの移動を案内する治具等に取り付けられており、超音波探触子Sの位置を検出してその位置に関する位置信号を制御手段CUに送信する機能を有している。位置信号とは、例えば、配管Pの軸方向に沿った基準位置BLから超音波探触子Sまでの距離(図2(A),(B)のD)に関する情報を含んだ信号や、屈曲部PBであれば基準位置BLに対する超音波探触子Sの回転角度(図1(A)のθ)に関する情報を含んだ信号等であるが、超音波探触子Sの位置に関する情報を含んだ信号であればよい。なお、上記基準位置BLは、検査する現場の状況に応じて適宜設定することができるが、例えば、配管Pの同士を接続している溶接箇所等を基準位置BLとして使用することができる。
【0020】
また、図1および図2に示すように、前記超音波探触子Sと配管Pの表面との間には、高温用接触媒質HTが設けられている。つまり、配管Pの検査を行うときに、超音波探触子Sを配管Pの表面に直接接触させるのではなく、高温用接触媒質HTを介して配管Pの表面に接触させるように構成されている。この高温用接触媒質HTは、検査時における配管Pの温度において、気化して媒質中に気泡が発生することがなく、また、配管Pに焦げ付くなどの変質を生じない性質を有するものである。例えば、Sonotech社製の製品(Sonoシリーズ)等)を高温用接触媒質HTとして使用することができるが、高温用接触媒質HTは上記性質を有するものを適宜使用することができる。
かかる高温用接触媒質HTを設ければ、配管Pの熱は高温用接触媒質HTを介して超音波探触子Sに伝達される。すると、耐熱性の高い超音波探触子Sを用いる場合はもちろん、温度の低い測定対象に使用される一般的な超音波探触子Sを使用して高温の配管Pを測定しても、超音波探触子Sが熱によって損傷することを防ぐことができる。
しかも、高温用接触媒質HTによって超音波探触子Sと配管Pとの間の隙間を完全に埋めることができるから、超音波探触子Sから放出される超音波を効率良く配管Pに供給でき、供給された超音波を超音波探触子Sと配管Pとの間で効率良く伝播させることができる。
【0021】
以上のごとき構成であるから、本実施形態の配管の検査方法によれば、従来測定できなかった高温の配管P(200℃〜450℃、好ましくは200℃〜400℃の配管)、例えば、石油精製プラント運転時の配管Pであっても、超音波探触子によって配管Pの厚さを精度良く測定できるのである。
すると、検査対象となる配管Pを備えたプラント設備を停止しなくても、配管Pの減肉の有無を検査することができるので、配管Pの保守点検を定期的にかつ比較的短い間隔で検査することができる。そして、配管Pの損傷を早期に発見することも可能になるから、配管Pの損傷に起因するプラント設備の停止や事故等を防ぐことができる。
【0022】
また、本実施形態の配管の検査方法では、上述したように、制御手段CUに、超音波探触子Sが発信する検査信号と位置センサから供給される位置信号とが対応づけて保存されている。すると、位置信号と検査信号とに基づいて、検査位置による配管Pの状態の変化を画像化することができる。例えば、横軸に位置信号、縦軸に検査信号をとった画像を形成すれば(例えば、図3のB-scope画像)、配管Pの軸方向に連続した画像を形成することができる。すると、検査を行う作業者が、配管P内の状態をイメージし易くなるので、欠陥の発見が正確かつ容易になる。しかも、配管Pのある位置(判断位置)の状態を確認するときに、その判断位置における検査信号の値だけでなく、判断位置の前後の検査信号の値も利用して判断位置の状態を把握することができる。
さらに、定期的に配管Pの検査を行い、位置信号および検査信号を検査記録として保存しておけば、保存されている検査記録を比較することによって配管Pの腐食状況を時系列で確認することができる。つまり、配管Pの腐食速度や経年変化を把握することができるので、配管Pの損傷状況や交換時期などを予測することも可能となる。
【0023】
つぎに、本実施形態の配管の検査方法による検査作業を説明する。
まず、図1(A)に示すように、配管Pにおいて、検査する領域の表面に高温用接触媒質HTを塗布する(塗布ステップ)。
ついで、配管Pの表面であって、高温用接触媒質HTが塗布されている位置に超音波探触子Sを接触させる。このとき、超音波探触子Sを、配管Pの中心軸に対する周方向における所定の位置に配置する(探触子配置ステップ)。
【0024】
超音波探触子Sを配置すると、超音波探触子Sから配管Pに超音波を発信して、検査ステップを実行する。検査ステップでは、超音波探触子Sからの超音波を断続的に発信させながら、超音波探触子Sを配管Pの軸方向(図1(A)では矢印方向)に沿って移動する。
【0025】
超音波探触子Sが超音波を発信すると、超音波が配管Pの厚さ方向(配管Pの半径方向)に沿って伝播し、配管Pの裏面(配管Pの内面)で反射した反射波が超音波探触子Sに戻ってくる。すると、超音波探触子Sが超音波を発信してから反射波が超音波探触子Sに戻るまでの時間(フライトタイム)が測定できるから、このフライトタイムと配管Pの材質等に基づいて、超音波探触子Sが配置されている箇所の配管Pの厚さを算出することができる。
そして、検査ステップでは、超音波探触子Sを配管Pの軸方向に沿って移動させるので、配管Pの軸方向に沿って、配管Pの各位置におけるフライトタイムを連続して測定することができる。言い換えれば、配管Pの軸方向に沿って連続して配管Pの厚さが測定できるのである。
【0026】
以上のごとく、本実施形態の配管の検査方法では、配管Pの軸方向に沿って連続して配管Pの厚さが測定できるので、定点測定では見逃してしまう石油精製プラントに発生するナフテン酸腐食等のような局部減肉であっても発見することができる。
そして、本実施形態の配管の検査方法では、超音波法によって減肉を検出しているので、大口径の屈曲した配管であっても、その減肉発生の有無を精度良く検出できる。しかも、配管の減肉を調査する領域には高温用接触媒質HTが塗布されているので、この領域内であれば、超音波探触子Sが熱によって損傷することなく減肉発生の有無を精度良く検出できる。
【0027】
なお、超音波探触子Sの走査方向(配管Pの軸方向)において、探傷データを採取する頻度は特に限定されないが、例えば、1mm毎とすれば、孔食・エロージョン等で生じる、配管Pの軸方向に沿って減肉が点在するような場合でも、これらの減肉を確実に検出することができる。
【0028】
また、検査ステップの終了後、超音波探触子Sの位置を配管Pの周方向に沿って移動させれば(検査位置移動ステップ)、配管Pにおける周方向の異なる位置についても、配管Pの軸方向に沿って連続して配管Pの厚さを測定することができるから、検査漏れを少なくすることができる。例えば、配管Pの検査において、図1(B)のL1の位置に超音波探触子Sを配置して検査ステップを行った後、超音波探触子SをL2の位置に変えれば、配管Pの中心軸に対して時計周りに30度回転した位置の検査を行うことができる。そして、L1〜L7まで順次超音波探触子Sを配置する位置を移動させれば、配管Pの中心軸に対して30度間隔で配管Pの厚さを検査できるから、配管Pの周方向において減肉が点在しているような場合でも、その減肉を発見することができる。
【0029】
上記例では、高温用接触媒質HTを塗布する塗布ステップを行った後に検査ステップを行っているので、超音波探触子Sを塗布されている高温用接触媒質HT上を移動させるだけで連続して検査を行うことができるから、検査を迅速に行うことができるという利点がある。
しかし、高温用接触媒質HTは検査ステップを行うときに超音波探触子Sと配管Pとの間に配置されていればよいので、検査領域に予め高温用接触媒質HTを塗布しておくのではなく、例えば、超音波探触子Sを移動させる直前に、超音波探触子Sを移動させる位置に高温用接触媒質HTを塗布してもよい。つまり、高温用接触媒質HTの塗布と超音波探触子Sの移動を交互に繰り返して検査ステップを行ってもよい。
また、検査ステップを実行させながら、高温用接触媒質HTを超音波探触子Sと配管P表面との間に順次注入する装置を設けてもよい。この場合、超音波探触子Sと配管P表面との間に、新しい高温用接触媒質HTを順次注入できる。すると、注入された新しい高温用接触媒質HTによって超音波探触子Sを冷却することもできるので、熱による超音波探触子Sの損傷をより確実に防ぐことができる。
【0030】
以下では、本発明の配管の検査方法により、高温配管用炭素鋼管(8Bsch40、外径:216.3mm、公称板厚:8.2mm)について、その温度が280℃の状態で、高温用接触媒質HTとしてSonotech社製の製品(Sonoシリーズ)を用いて厚さ測定を行った結果を、図3に基づいて説明する。
なお、図3の画像(B-scope画像)では、横軸が配管Pの軸方向の位置を示しており、縦軸は超音波探触子Sが超音波を発信してから超音波探触子Sが反射波を受信するまでの時間を示している。つまり、超音波探触子Sによって配管P表面から供給された超音波が、配管Pの裏面で反射して配管Pの表面に戻ってくるまでの時間(フライトタイム)を示している。また、図3において、色の濃くなっているタイミングが超音波探触子Sが反射波を受信した時間である。つまり、B-scope画像において、その上端から色の濃くなっている部分までの距離(例えば、図3のL0、L1)が、超音波探触子Sが超音波を発信してから反射波を受信するまでの時間(フライトタイム)を示している。
【0031】
図3において、ラインAは配管Pが正常な厚さである場合に超音波探触子Sが反射波を検出するタイミング(以下、単に受信タイミングという)を示している。図3の右端近傍では、受信タイミングがラインAとほぼ一致しており、配管Pが正常な厚さであることが確認できる。一方、図3の左端近傍では、受信タイミングがラインBよりも早くなっており、フライトタイムL1も右端の部分のフライトタイムL0よりも短くなっている。つまり、配管Pにおける図3の左端近傍の部分では、配管Pに減肉が発生していることが確認できる。
【0032】
ここで、配管Pに供給される超音波は、配管Pの裏面で反射して配管Pの表面に戻ったときに、表面でも反射され、その後再び裏面で反射される(以下、この反射波を再反射波という)。図3において、ラインAおよびラインBよりも下方に、色の濃くなっている領域が確認できるが、この領域は、上述した再反射波を受信したタイミング(ラインC、ラインD)を示している。すると、フライトタイムL2とフライトタイムL0の差、および、フライトタイムL3とフライトタイムL1の差はいずれも、それぞれ各位置において超音波が配管Pの表面と裏面との間を一往復する時間に相当するから、かかるフライトタイムの差から、配管Pの厚さを求めることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の配管の検査方法は、石油精製プラントや石油化学プラント、発電プラント等では、高温プロセス流体、過熱蒸気等の流体が流れる配管の保守点検に適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の配管の検査方法の概略説明図であり、(A)は屈曲部PBの検査状況の説明図であり、(B)は超音波探触子Sの位置を配管Pの周方向に移動させる状況を説明した図である。
【図2】本実施形態の配管の検査方法の概略説明図であり、(A)は直管部の検査状況の説明図であり、(B)は枝管部の検査状況の説明図である。
【図3】本実施形態の配管の検査方法によって測定された配管のB-scope画像の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
P 配管
PB 屈曲部
PS 直管部
S 超音波探触子
HT 高温用接触媒質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の配管における減肉を検査する方法であって、
高温用接触媒質を介して超音波探触子を前記配管表面に接触させる探触子配置ステップと、
前記超音波探触子を、前記配管表面に接触させたまま前記配管の軸方向に沿って移動させる検査ステップとからなる
ことを特徴とする配管の検査方法。
【請求項2】
前記検査ステップにおいて、
前記高温用接触媒質を、前記超音波接触子と前記配管表面との間に注入しながら、前記超音波探触子を移動させる
ことを特徴とする請求項1記載の配管の検査方法。
【請求項3】
前記探触子配置ステップを行う前に、前記高温用接触媒質を検査を行う領域に塗布する塗布ステップを行う
ことを特徴とする請求項1記載の配管の検査方法。
【請求項4】
前記探触子配置ステップと前記検査ステップとを繰り返して検査を行う場合において、
前記検査ステップ終了後前記探触子配置ステップを行う前に、前記超音波探触子の位置を前記配管の周方向に沿って移動させる検査位置変更ステップを実行する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の配管の検査方法。
【請求項5】
前記配管の基準位置に対する前記超音波探触子の位置を検出する位置センサを備えており、
該位置センサが発信する位置信号と、前記超音波探触子が発信する検査信号とを対応づけて保存する
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の配管の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−60476(P2010−60476A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227771(P2008−227771)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(500216466)住重試験検査株式会社 (11)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】