説明

配管カバー、配管構造体および車輌

【課題】高温の流体が配管内部を流通した場合であっても、配管に対向する部材の熱劣化を抑制するとともに、配管内部の温度を一定範囲に制御し得る新規な配管カバーを提供する。
【解決手段】配管の外周に被覆される配管カバーであって、管状断熱材からなる基材と、該基材の外表面を覆う表面材とを有するとともに、該表面材の外表面に放熱部と放熱抑制部とが設けられてなり、前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が、前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率よりも高いことを特徴とする配管カバーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管カバー、配管構造体および車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンから排出される燃焼ガス(排気ガス)は、エンジンに対して順次接続された、エキゾーストマニフォールド、エキマニ直下型触媒コンバータ、フロントチューブ、床下触媒コンバータ、センターマフラー、メインマフラー等を経て外部に放出される(例えば、特許文献1(特開平11−81976号公報)参照)。
【0003】
上記自動車エンジンにおいては、高負荷高回転領域で燃料が増量されるが、この場合、高温の排気ガスがメインマフラー等を流れることにより、メインマフラー等に対向する車輌本体側に多量の熱が放出され、車輌本体を構成するバンパー等の樹脂製部材やゴム製部材、または車輌本体を構成する部材に塗布されるグリース等の熱劣化を促進してしまう。
【0004】
このため、自動車用排気管(自動車排気ガス排出用配管)としては、自動車エンジンの高速運転時において、車輌本体の熱劣化を抑制し得るものが求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−81976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、高温の流体が配管内部を流通した場合であっても、配管に対向する部材の熱劣化を抑制するとともに配管内部の温度上昇を好適に抑制し得る新規な配管カバーを提供するとともに、該配管カバーおよび配管を有する配管構造体および該配管構造体を有する車輌を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、管状断熱材からなる基材と、該基材の外表面を覆う表面材とを有するとともに、該表面材の外表面に放熱部と放熱抑制部とが設けられてなり、前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が、前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率よりも高い配管カバーにより、上記目的を達成し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)配管の外周に被覆される配管カバーであって、
管状断熱材からなる基材と、該基材の外表面を覆う表面材とを有するとともに、該表面材の外表面に放熱部と放熱抑制部とが設けられてなり、
前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が、前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率よりも高いことを特徴とする配管カバー、
(2)前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱部がセラミックス薄膜またはカーボン薄膜により形成されてなる上記(1)に記載の配管カバー、
(3)前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱部が前記表面材を構成する金属の酸化物膜により形成されてなる上記(1)に記載の配管カバー、
(4)前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が60〜99%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の配管カバー、
(5)前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱抑制部が前記表面材を構成する金属の酸化を抑制する酸化防止剤の塗布膜により形成されてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の配管カバー、
(6)前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率が0.1〜40%である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の配管カバー、
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の配管カバーが配管の外周に被覆されてなることを特徴とする配管構造体、
(8)上記(7)に記載の配管構造体を有することを特徴とする車輌、
(9)前記配管構造体を自動車排気ガス排出用配管構造体として有する上記(8)に記載の車輌
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、管状断熱材からなる基材を有し、該基材の外表面に、表面材と、放熱部および放熱抑制部とが順次設けられてなるものであることにより、配管内部を高温の流体が流通した場合であっても、上記基材および放熱抑制部によって配管に対向する部材の熱劣化を抑制するとともに、上記基材を介して放熱部から放熱することにより、配管内部の温度上昇を抑制し得る新規な配管カバーを提供することができるとともに、該配管カバーおよび配管を有する配管構造体および該配管構造体を有する車輌を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る配管カバーの使用形態例を説明する図である。
【図2】本発明において、放射率の測定に使用される高温反射率・透過率測定装置の概略図である。
【図3】本発明において、放射率の測定に使用される高温反射率・透過率測定装置の加熱部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本発明の配管カバーについて説明する。
本発明の配管カバーは、配管の外周に被覆されるものであって、管状断熱材からなる基材と、該基材の外表面を覆う表面材とを有するとともに、該表面材の外表面に放熱部と放熱抑制部とが設けられてなり、前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が、前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率よりも高いことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の配管カバーは、管状断熱材からなる基材を有している。
本発明の配管カバーにおいて、基材を構成する断熱材は、無機材料からなるものが好ましい。
管状断熱材として、具体的には、ガラス繊維、セラミックス繊維、ロックウール等の無機繊維からなるマット状物(以下、断熱材1という)を管形状に成形したものを挙げることができる。
【0013】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材としては、無機バインダーが含浸された無機耐熱紙と、金属箔とが少なくとも一層づつ積層されてなるもの(以下、断熱材2という)を管形状に成形してなるものであってもよい。
【0014】
管状断熱材が断熱材2によって形成されてなるものである場合、上記無機バインダーとしては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等が好ましい。
上記無機バインダーは、一次粒子径が10〜20nmであるものが一般的に用いられ、無機バインダーがコロイダルシリカである場合、無水ケイ酸の含有率が10〜40重量%の範囲にあるものが好ましく、保存の安定性の面から30重量%程度であるものがより好ましい。
断熱材2が、無機耐熱紙に無機バインダーを含浸してなるものであることにより、耐熱性を容易に向上させることができる。
【0015】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材が断熱材2により形成されてなるものである場合、上記無機バインダーを含浸する無機耐熱紙としては、無機繊維を70重量%以上含むものが好適である。無機繊維としては、耐熱性を有するセラミック系繊維が好適であり、無機繊維として、具体的には、ロックウール、アルミナファイバー等を挙げることができる。
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材が断熱材2により形成されてなるものである場合、必要に応じて無機充填材、少量の有機繊維および有機バインダーを含んでもよい。上記無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、タルク、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0016】
断熱材2は、無機耐熱紙100重量部に対し、無機バインダーを30〜200重量部付着させたものが好ましい。
無機バインダーの付着量が、無機耐熱紙100重量部に対して30重量部未満では強度保持率が低くなって十分な耐熱効果を得にくくなり、無機耐熱紙100重量部に対して200重量部を超えると、無機耐熱紙に固着したコロイダルシリカの二次粒子が脱落しやすくなる。
【0017】
断熱材2は、無機耐熱紙に対し、コロイダルシリカ溶液等の無機含浸溶液を含浸させ、乾燥処理することにより作製することができる。
【0018】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材が断熱材2により形成されてなるものである場合、金属箔としては、アルミ箔、ステンレス箔、銅箔等を挙げることができ、アルミ箔が好ましい。
【0019】
上記金属箔は、厚みが0.02〜0.5mmであるものが好ましく、0.05〜0.45mmであるものがより好ましく、0.08〜0.4mmであるものがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、金属箔の厚みとは、ノギスにより厚みを5点測定したときの算術平均値を意味する。
【0020】
断熱材2は、無機耐熱紙と金属箔とを積層した積層物の層間に、密着強度を高めるために接着層を形成してもよい。接着層は、ポリエステル系、塩化ビニール系、エチレン共重合体系等のヒートシールタイプの接着剤を塗布し、乾燥することにより形成することができる。これらの接着層うち、環境状況を考慮して、水性のエチレン共重合体系の接着剤を塗布、乾燥してなるものが好ましい。
【0021】
断熱材2は、上記金属箔と無機耐熱紙とを、適宜上記接着剤で接着しつつ積層することにより形成することができ、積層後に管形状に成形することによって管状断熱材を得ることができる。
また、管状断熱材は、上記金属箔と無機耐熱紙とを、適宜上記接着剤で接着しつつ積層した状態でスパイラル状にマンドレル(芯部材)に巻き付けることによって得ることができる。この場合、巻き付け後に金型に通し、ひだ状に成形することによって可撓性を付与してもよい。
【0022】
金属箔と無機耐熱紙とは、それぞれ1枚づつ積層して2層構成にしてもよいし、必要に応じて金属箔および無機耐熱紙をさらに積層し、3層以上の構成にしてもよい。
【0023】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材の断面形状は、被覆対象となる配管の断面形状に対応した形状を有することが好ましく、円形または楕円形であることが好ましい。
例えば、本発明の配管カバーにおいて、被覆対象となる配管の断面形状が円形である場合、管状断熱材の内径は、被覆対象となる配管の外径と同一であることが好ましい。
【0024】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材を形成する断熱材の厚みは1〜30mmであることが好ましく、3〜25mmであることがより好ましく、5〜20mmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、上記断熱材の厚みは、ピーコック社製ダイヤルシックネスゲージにより厚みを5点測定したときの算術平均値を意味する。
【0025】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材を形成する断熱材の密度は、50〜250g/cmであることが好ましく、75〜200g/cmであることがより好ましく、100〜180g/cmであることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の配管カバーにおいて、管状断熱材を形成する断熱材の厚みや密度が上記範囲内にあることにより、配管とともに配設したときに、配管に対向する部材の熱劣化を抑制し易くなるとともに、配管内部の温度を一定範囲に制御し易くなる。
【0027】
本発明の配管カバーは配管の外周に被覆する必要があることから、管状断熱材には、予め割りが入っていることが好ましい。このため、管状断熱材は半筒状の部材を二つ重ね合わせて筒状にした上で、後述する表面材により貼り合わせたものが好ましい。
【0028】
本発明の配管カバーは、上記管状断熱材からなる基材の外表面に、表面材が設けられてなる。
上記表面材は、金属製薄膜からなるものが好ましく、金属製薄膜としては、アルミニウム薄膜や、ステンレス鋼薄膜等を挙げることができる。
【0029】
表面材の厚みは、0.05〜3mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることがより好ましく、0.2〜1mmであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、表面材の厚みは、ノギスにより厚みを5点測定したときの算術平均値を意味する。
【0030】
本発明の配管カバーにおいて、表面材は、管状断熱材からなる基材に対して、ポリエステル系、塩化ビニール系、エチレン共重合体系等のヒートシールタイプの接着剤を塗布した後、貼り付けることにより、一体化することができる。上記接着剤のうち、環境状況を考慮して、水性のエチレン共重合体系の接着剤を用いることが好ましい。
【0031】
本発明の配管カバーにおいて、表面材の外表面には放熱部と放熱抑制部とが設けられてなる。
本発明の配管カバーにおいて、放熱部とは、基材や放熱抑制部に比べ放射率が高くなるように制御されてなるものを意味し、放熱抑制部とは、基材や放熱抑制部に比べ放射率が低くなるように制御されてなるものを意味する。
本発明の配管カバーにおいて、放熱部や放熱抑制部は、膜状に形成されてなるものが好適である。
本発明の配管カバーにおいて、放熱部や放熱抑制部の放射率は、後述するように、放熱部や放熱抑制部の形成材料を適宜選択したり、表面平滑性を調整することにより制御することができる。
【0032】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部としては、セラミックス製薄膜またはカーボン製薄膜により形成されてなるものが好ましい。
上記セラミックス薄膜としては、アルミナ、炭化ケイ素、酸化チタン等のセラミックスを含有する材料からなるものを挙げることができ、アルミナを含有する材料からなるものが好ましい。
また、カーボン薄膜としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜を挙げることができる。
【0033】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部がセラミックス薄膜により形成されてなるものである場合、セラミックス薄膜は、目的とするセラミックス薄膜に対応するセラミックス材料を、表面材の外表面に対し、溶射法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、PVD(PhysicalVapor Deposition)法により膜形成することにより設けることができる。
【0034】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部がセラミックス薄膜により形成されてなるものである場合、セラミック薄膜は、目的とするセラミックス薄膜形成用のコーティング液を、管状基材の表面に対して塗布、乾燥することによっても形成することができる。
上記コーティング液としては、例えば、セラミックス粉末100質量部に対し、無機バインダー40〜200質量部(固形分換算量)、有機バインダー0.1〜1.0質量部、増粘剤0.1〜1.0質量部および溶媒である水を60〜130質量部含むものを挙げることができる。
【0035】
無機バインダーとしては、ホウケイ酸ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等から選ばれる一種以上を挙げることができ、有機バインダーとしては、アクリル系バインダー、カチオン澱粉等から選ばれる一種以上を挙げることができ、増粘剤としてはハイメトローズ、ベントナイト、カオリン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0036】
上記コーティング液の塗布手段としては、スプレーや刷毛塗り等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明の配管カバーにおいて、放熱部がカーボン薄膜により形成されてなるものである場合、カーボン薄膜は、目的とするセラミックス薄膜の形成材料を、管状基材の表面に対し、CVD法やPVD法により膜形成することにより設けることができる。
【0038】
本発明の配管カバーにおいては、表面材が金属製薄膜により形成され、放熱部が表面材を構成する金属の酸化物膜により形成されてなるものであってもよい。
例えば、表面材がアルミニウム薄膜により形成されてなるものである場合、放熱部は酸化アルミニウム膜により形成されてなるものが好ましく、表面材がステンレス鋼薄膜である場合、放熱部はステンレス鋼酸化膜により形成されてなるものが好ましい。
【0039】
上記表面材を構成する金属の酸化物膜は、表面材である金属製薄膜を、アルマイト処理したり、バーナー等で所望時間加熱処理することにより形成することができる。
【0040】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部がセラミックス製薄膜またはカーボン製薄膜により形成されてなるものである場合や、表面材を構成する金属の酸化物膜により形成されてなるものである場合、放熱部の厚みは0.1〜500μmであることが好ましく、0.1〜200μmであることがより好ましく、0.1〜100μmであることがさらに好ましい。
本発明の配管カバーにおいて、放熱部の厚みが上記範囲内にあることにより、配管内部の温度を好適に抑制することができる。
なお、本出願書類において、放熱部の厚みは走査型電子顕微鏡(SEM)により配管断面部を観察したときに測定される値を意味する。
【0041】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部は、表面に凹凸を形成することにより、放熱抑制部に比べて放射率を向上させてなるものであってもよい。
具体的には、表面材の表面をブラスト処理すること等により凹凸を形成してなるものが好ましい。
【0042】
ブラスト処理方法としては、主としてエアーコンプレッサーなどの圧縮空気を使ってノズルからブラスト材を投射するエアーブラスト法や、モーターの動力を使って耐摩耗合金製の羽根車の遠心力によりブラスト材を投射するショットブラスト法や、水中ポンプや圧縮エアーを使って液体に混ぜたブラスト材を投射するウエットブラスト法等を挙げることができる。
【0043】
表面材の表面をブラスト処理する場合、ブラスト材の種類、ブラスト材の平均粒子径、ブラスト材を投射する際の圧力、ブラスト材の投射時間等を適宜調整することにより表面に形成する凹凸の深さを制御することができる。
【0044】
ブラスト処理に用いるブラスト材としては、炭化珪素、アルミナ等を挙げることができる。また、ブラスト材は、平均粒子径が3〜53μmであるものが好ましい。
なお、本出願書類において、ブラスト材の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された、体積基準積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(D50)を意味する(光透過沈降法)。
【0045】
また、表面に形成する凹凸の深さRzは1〜50μmであることが好ましく、2〜40μmであることがより好ましく、3〜25μmであることがさらに好ましい。
本出願書類において、上記凹凸の深さは、触針式表面形状測定器(表面粗さ計)により測定した値を意味する。
【0046】
また、本発明の配管カバーは、表面材の表面をブラスト処理した後、さらにセラミックス製薄膜またはカーボン製薄膜を形成してなるものや、上記表面材を構成する金属の酸化物膜を形成してなるものであってもよい。この場合、セラミックス製薄膜、カーボン製薄膜および表面材を構成する金属の酸化物膜の具体例や製膜方法は、上述した内容と同様である。
【0047】
本発明の配管カバーにおいて、表面材の外表面に設ける放熱部の形成位置および面積は、本発明の配管カバーを被覆する配管の配設位置、配管に対向する部材の形状、配管カバーに付与しようとする放熱性等に応じて適宜決定すればよい。
【0048】
本発明の配管カバーを自動車排気ガス排出用配管の配管カバーとして用いる場合、放熱部の形成位置は、配設時に車輌本体側とは反対側に位置する表面材の全外表面に形成することが好ましく、例えば、表面材の全外表面を二つの半筒状部に区分した場合に、配設時に車輌本体側とは反対側に位置する半筒状部の全外表面に放熱部を形成することが好ましい。具体的には、図1に断面形状で示すように、管状断熱材からなる基材1の表面に設けられた表面材2の全外表面を二つの半筒状部に区分して、それぞれ放熱部aと放熱抑制部bとを設けて配管カバー3を成した場合において、上記放熱部aが車輌本体4側とは反対側に位置する半筒状部の全外表面に形成されていることが好ましい。
放熱部aを上記のとおり形成することにより、配管カバー3を配管5の外周に被覆したときに、車輌本体4側とは反対側に効果的に放熱させ、車輌本体4側の構成部材等の熱劣化を好適に抑制することができる。
【0049】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部の形成面積は、表面材の全外表面積の20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の配管カバーにおいて、波長2〜15μmにおける放熱部の放射率は、60〜99%であることが好ましく、70〜99%であることがより好ましく、80〜99%であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の配管カバーにおいて、放熱部の放射率が上記範囲内にあることにより、配管内部を流通する流体の熱を放熱部から好適に放射することができる。
【0052】
本出願書類において、放射率(%)は、25℃の温度条件下、測定試料(配管)に対して波長2〜15μmの電磁波を照射したときに測定される反射率(%)および透過率(%)から、下記式により算出した値を意味する。
放射率(%)=100−反射率−透過率
反射率(%)=(反射光強度/入射光強度)×100
透過率(%)=(透過光強度/入射光強度)×100
ここで、反射率および透過率は、高温反射率・透過率測定装置により測定した値を意味する。
【0053】
高温反射率・透過率測定装置としては、図2に概略図で示すものが挙げられる。
図2に示す高温反射率・透過率測定装置Xにおいて、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製FT−IR6100型)6から照射された波長2〜15μmの入射光71は、反射鏡8により反射されて試料室内に導かれ、回転台9の中心部に取り付けた試料10に照射される。上記試料10は回転台9の中心部に設けたホルダーhに取り付けられた状態で、ハロゲンヒータ(ウシオ電機(株)製UL−SH−V500)11によって加熱される構造になっており、試料10の取り付け部を回転軸とする回転台9の腕部に別途設けられ試料10の周囲を周回する検出器12によって、試料10からの反射光または透過光72の強度が検出される。
上記高温反射率・透過率測定装置Xの加熱部の構造例を図3に断面図で示す。
図3に示すように、試料10の前面部と背面部には、ハロゲンヒータ11が設置され、試料10からの反射光または透過光を検出器12が捉える際に、ハロゲンヒータ11が光路を遮らないように試料10の上部に角度をつけて設置される。反射光または透過光の測定時においては、ハロゲンヒータ11も試料10と共に回転させることで、常に試料10の表面温度を一定に保つことができる構造となっている。試料10が設置される回転台9の底部及びハロゲンヒータ11には、外部から冷却水13が導入され、循環、冷却される。
【0054】
本発明の配管カバーは、表面材が金属製薄膜により形成され、放熱抑制部が表面材を構成する金属の酸化を抑制する酸化防止剤の塗布膜により形成されてなるものが好ましい。
【0055】
酸化防止剤としては、エチルシリケート等のシリコンアルコキシドや、その他の金属アルコキシド等が好ましい。
【0056】
上記酸化防止剤の塗布膜を形成する方法としては、スプレーや刷毛等による塗布を挙げることができ、酸化防止剤の塗布後、所定時間反応を進行させ、さらに乾燥することにより塗布膜を形成することができる。
【0057】
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部は、アルミニウム、金、白金を含む薄膜により形成されてなるものであってもよく、アルミニウム薄膜により形成されてなるものがより好適である。
【0058】
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部が、アルミニウム、金、白金を含む薄膜により形成されてなるものである場合、上記薄膜は、目的とする薄膜に対応する材料を、表面材の表面に対し、溶射法や、CVD法、PVD法により膜形成することにより設けることができる。
また、本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部の材質が表面材の材質と共通する場合は、表面材の外表面のうち、放熱部を設けていない部分をそのまま放熱抑制部としてもよい。
【0059】
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部が表面材の外表面に塗布または溶射法等によって膜状に形成される場合、放熱抑制部の厚みは0.001〜100μmであることが好ましく、0.001〜50μmであることがより好ましく、0.001〜10μmであることがさらに好ましい。
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部の厚みが上記範囲内にあることにより、配管に対向する部材への放熱を所望範囲に容易に抑制することができる。
なお、本出願書類において、放熱抑制部の厚みは、X線光電子分光装置(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)により測定した値を意味する。
【0060】
本発明の配管カバーにおいて、波長2〜15μmにおける放熱抑制部の放射率は、0.1〜40%であることが好ましく、0.1〜35%であることがより好ましく、0.1〜30%であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部の放射率が上記範囲内にあることにより、配管カバーを被覆する配管に対向する部材への放熱を好適に抑制することができる。
【0062】
本発明の配管カバーにおいて、表面材の外表面に設ける放熱抑制部の形成位置および面積は、配管カバーを被覆する配管の配設位置、対向する部材の形状、放熱抑制部に付与しようとする放熱抑制性等に応じて適宜決定すればよい。
【0063】
本発明の配管カバーを自動車排気ガス排出用配管の配管カバーとして用いる場合、放熱抑制部の形成位置は、配設時に車輌本体側に位置する表面材の全外表面に形成することが好ましく、例えば、表面材の全外表面を二つの半筒状部に区分した場合に、配設時に車輌本体側に位置する半筒状部の全外表面に放熱抑制部を形成することが好ましい。具体的には、図1に断面形状で示すように、管状断熱材からなる基材1の表面に設けられた表面材2の全外表面を二つの半筒状部に区分して、それぞれ放熱部aと放熱抑制部bとを設けて配管カバー3を成した場合において、上記放熱抑制部bが車輌本体4側に位置する半筒状部の全外表面に形成されていることが好ましい。
放熱抑制部bを上記のとおり形成することにより、配管カバー3を配管5の外周に被覆したときに、車輌本体4側への放熱を効果的に抑制して、車輌本体4の構成部材の熱劣化を好適に抑制することができる。
【0064】
本発明の配管カバーにおいて、放熱抑制部の形成面積は、管状断熱材からなる基材の全外表面積の20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましい。
【0065】
本発明の配管カバーにおいては、表面材の全表面に放熱部と放熱抑制部が隣接するように設けられていることが好ましく、この場合、放熱部と放熱抑制部の面積比(放熱部の面積:放熱抑制部の面積)は、20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30がより好ましく、40:60〜60:40がさらに好ましい。
【0066】
本発明の配管カバーは、表面材における円周方向1mあたりの熱抵抗値が10K/W以下であることが好ましく、4〜10K/Wであることがより好ましく、4K/W以下であることがさらに好ましい。
上記熱抵抗値は、熱の流れ易さを示す指標である。
本出願書類において、熱抵抗値Rは、熱流方向の長さ(表面材により形成される管形状物の円周長さ)d(m)、表面材の熱伝導率λ(W・m−1・K−1)、熱流面積(熱流方向の長さ×配管カバーの長手方向長さ)S(m)により、式R=d/λ/Sによって算出された値を意味する。
上記熱流方向の長さdは、ノギスにより測定することができる。また、熱伝導率λは、熱流計法などにより測定することができる。熱流面積Sは、金尺により測定することができる。
【0067】
本発明の配管カバーは、配管へ被覆して配設したときに対向する部材(被熱部材)が、バンパー等の樹脂製部材、ゴム製部材等の低耐熱材料からなる部材、樹脂やグリース等の低耐熱材料が塗布されている部材である場合等に特に好適に使用することができる。
【0068】
本発明の配管カバーは、各種車輌や半導体製造装置の配管として好適に使用することができ、自動車排気ガス排出用配管の配管カバーとして特に好適に使用することができる。
自動車排気ガス排出用配管としては、エキゾーストマニフォールド、エキマニ直下型触媒コンバータ、フロントチューブ、床下触媒コンバータ、センターマフラー、メインマフラー等の車輌の床下に組み込まれる排気ユニットに接続する排気管や、上記排気ユニットに組み込まれる排気管を挙げることができる。
また、本発明の配管カバーをメインマフラーとして用いる場合、放熱部や放熱抑制部は、配管カバーに対向する部材の耐熱温度に応じて適宜設けることができるが、配管カバーに対向する部材の温度が160℃以下になるように放熱部や放熱抑制部を設けることが好ましい。
【0069】
本発明の配管カバーを使用する場合、熱放出を促進させたい側に放熱部、熱放出を抑制させたい側に放熱抑制部がそれぞれ面するように、配管に被覆する。
【0070】
本発明の配管カバーを配管に被覆する場合、配管カバーと対向する部材(被熱部材)との距離は、1〜100mmであることが好ましく、10〜75mmであることがより好ましく、20〜50mmであることがさらに好ましい。
【0071】
本発明の配管カバーを被覆する配管の詳細は、後述するとおりである。
【0072】
本発明によれば、管状断熱材からなる基材を有し、該基材の外表面に表面材と、放熱部および放熱抑制部とが順次設けられてなるものであることにより、配管内部を高温の流体が流通した場合であっても、上記基材および放熱抑制部によって対向する部材の熱劣化を抑制するとともに、上記基材を介して放熱部から放熱することにより、配管内部の温度上昇を好適に抑制し得る新規な配管カバーを提供することができる。
【0073】
次に本発明の配管構造体について説明する。
本発明の配管構造体は、本発明の配管カバーが配管の外周に被覆されてなることを特徴とするものである。
【0074】
本発明の配管カバーの詳細については、上述したとおりである。
【0075】
また、本出願書類において、配管とは、内部を流体が流通する管状物を意味し、内部を流通する流体の温度等に対応した材質からなり、劣化や漏洩等を生じない構造を有するものを適宜選択することが好ましい。
上記配管としては耐熱性を有するものが好適であり、具体的には、金属管や耐熱性樹脂からなる樹脂管を挙げることができ、金属管であることが好ましい。
【0076】
金属管としては、耐熱性や耐食性の観点からステンレス鋼製のもの(SUS管)が主に使用される。内部を流通する流体の温度が500℃未満である場合には、配管としてはアルミニウム製のもの(アルミ管)が好ましく、内部を流通する流体の温度が600〜900℃である場合には、配管としてはSUS管が好ましい。
【0077】
配管の断面形状としても特に制限されず、円形または楕円形等を挙げることができる。
【0078】
配管の平均厚みは、0.5〜3.0mmであることが適当であり、0.8〜2.0mmであることがより適当であり、1.0〜1.5mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、管状基材の平均厚みは、ノギスにより3箇所の厚みを測定したときの算術平均値を意味する。
また、配管の外径は、20〜110mmであることが適当であり、30〜80mmであることがより適当であり、35〜65mmであることがさらに適当である。
なお、本出願書類において、管状基材の外径は、ノギスにより測定したときの値を意味する。
【0079】
配管の平均厚みや内径が上記範囲内にあることにより、配管内部および配管外部の温度を好適な範囲に制御し易くなる。
【0080】
本発明によれば、管状断熱材からなる基材を有し、該基材の外表面に表面材と、放熱部および放熱抑制部とが順次設けられてなる配管カバーを被覆してなるものであることにより、配管内部を高温の流体が流通した場合であっても、上記基材および放熱抑制部によって対向する部材の熱劣化を抑制するとともに、上記基材を介して放熱部から放熱することにより、配管内部の温度上昇を好適に抑制し得る新規な配管構造体を提供することができる。
【0081】
次に、本発明の車輌について説明する。
本発明の車輛は、本発明の配管構造体を有することを特徴とするものである。本発明の車輌としては、本発明の配管構造体を自動車排気ガス排出用配管構造体として有するものであることが好ましい。
【0082】
本発明の配管構造体の詳細は、上述したとおりである。
【0083】
本発明の車輌は、配管に対向する部材(被熱部材)として、バンパー等の樹脂製部材、ゴム製部材等の低耐熱材料からなる部材、樹脂やグリース等の低耐熱材料が塗布されている部材等を有する場合に、特に好適に熱劣化を抑制することができる。
【0084】
本発明の車輌が、本発明の配管構造体を自動車排気ガス排出用配管構造体として有するものである場合、本発明の配管構造体を、エキゾーストマニフォールド、エキマニ直下型触媒コンバータ、フロントチューブ、床下触媒コンバータ、センターマフラー、メインマフラー等の車輌の床下に組み込まれる各排気ユニットに接続する排気管構造体や、上記各排気ユニットに組み込まれる排気管構造体として有するものを挙げることができる。
【0085】
本発明の車輌において、上記配管構造体は、配管の熱放出を促進させたい側に放熱部、配管の熱放出を抑制させたい側に放熱抑制部がそれぞれ面するように、配設されてなる。
【0086】
本発明の車輌は、上記配管構造体および該配管構造体と対向する部材(被熱部材)との距離が、1〜100mmであるように配設されてなるものが好ましく、10〜75mmであるように配設されてなるものがより好ましく、20〜50mmであるように配設されてなるものがさらに好ましい。
【0087】
本発明の車輌として、具体的には、自動車、二輪車、農耕車等を挙げることができる。
【0088】
本発明によれば、管状断熱材からなる基材を有し、該基材の外表面に表面材と、放熱部および放熱抑制部とが順次設けられてなる配管カバーを配管の外周に被覆してなる配管構造体を有するものであることにより、高温の流体が配管内部を流通した場合であっても、上記基材および放熱抑制部によって対向する構成部材の熱劣化を抑制するとともに、上記基材を介して放熱部から放熱することにより、配管内部の温度を一定範囲に制御し得る新規な車輌を提供することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
図1に示すように、配管5としてSUS管(長さ500mm、外径48.6mm、厚さ1mm)を使用した。
また、管状断熱材からなる基材1として、長さ500mm、厚さ10mmのガラス繊維製マット状物(矢澤産業(株)製 スーパーウールマット 、密度110kg/m )の全表面に、表面材2として、厚さ0.3mmのアルミニウム製表面材2をエポキシ系の接着剤を用いて貼り付け、内径48.6mmの半割り状の管形状物を作製した。上記半割り状の管形状物の全外表面を二つの半筒状部に区分し、上部側の半筒状部においては、アルミニウム製表面材2の外表面をそのまま放熱抑制部bとするとともに、下部側の半筒状部表面においては、その外表面全体に溶射法により80μm厚の酸化アルミニウム薄膜を設けて放熱部aを成すことにより、配管カバー3を作製した。
【0091】
上記配管カバー3において、放熱部aと放熱抑制部bとは隣接しており、放熱部aの形成面積は、配管カバーの全外表面積の50%であり、放熱抑制部bの形成面積は、配管カバーの全外表面積の50%であった。また、放熱部aにおける波長2〜15μmにおける放射率εは80%であり、放熱抑制部bにおける波長2〜15μmにおける放射率εは10%であった。また、上記配管カバー3は、外表部(表面材2)における円周方向1mあたりの熱抵抗値が3.59K/Wであるものであった。
【0092】
次いで、上記配管カバー3を上記配管5の外周部に巻き付けることにより、配管カバー3が配管5の外周に被覆されてなる配管構造体を作製した。
【0093】
図1に示すように、車輌本体を構成する樹脂製部材4として、PI(ポリイミド)樹脂製部材(長さ500mm、半管状部(R部)の仮想直径88.6mm、厚さ1mm、耐熱温度350℃)を作製した。PI樹脂は耐熱性に優れた樹脂であるために、一般に車輌本体の構成部材において耐熱性樹脂として用いられるポリプロピレンやNBR(ニトリルブタジエンゴム)の評価用代替材として好適に用いることができる。上記樹脂製部材4の波長2〜15μmにおける放射率εは95%であった。
【0094】
図1に示すように、上記樹脂製部材4の半環状部(R部)に放熱抑制部bが10mmの間隔で対面するように上記配管構造体を配置した上で、室温(20℃)下において、配管5の内部に750℃の空気を供給速度0.01kg/秒で30分間供給した。
上記空気通定常時における、配管カバー3を構成する放熱部aの平均表面温度は195℃であり、放熱抑制部bの平均表面温度は355℃であった。また、上記空気流通定常時における、樹脂製部材3の平均表面度は122℃であり、最高表面温度は152℃であった。
【0095】
(比較例1)
実施例1において、配管構造体に代えてSUS管(長さ500mm、外径48.6mm、厚さ1mm)を用い、このSUS管を実施例1で用いたものと同じ樹脂製部材4と20mmの間隔で対面するように配置した上で、実施例1と同様に、室温(20℃)下において、SUS管の内部に750℃の空気を供給速度0.01kg/秒で30分間供給した。
上記空気流通時における、SUS管の下部側(樹脂製部材3とは反対側)の平均表面温度は411℃であり、SUS管の上部側(樹脂製部材3と対向する側)の平均表面温度は441℃であった。また、上記空気流通時における、樹脂製部材4の平均表面温度は204℃であり、最高表面温度は249℃であった。
【0096】
実施例1で用いた配管カバー3は、配管5の外表面に表面材2を介して放熱部aと放熱抑制部bとが設けられてなり、放熱部aの波長2〜15μmにおける放射率が、放熱抑制部bの波長2〜15μmにおける放射率よりも高いことから、樹脂製部材4の平均表面温度を122℃に抑制することができ、最高表面温度も152℃に抑制することができる。このため、配管カバー3を配管5に被覆した配管構造体をマフラー等の自動車排気ガス排出用配管構造体として用いた場合には、車輌本体を構成する樹脂製部材4の熱劣化を抑制し、好適に使用することができる。
一方、比較例1においては、SUS管全外表面における放射率が一様であることから、樹脂製部材4の平均表面温度が204℃と高く、最高表面温度も249℃と高く、SUS管からの熱の放出を充分に抑制することができない。このため、上記SUS管をマフラー等の自動車排気ガス排出用配管として用いた場合には、車輌本体を構成する樹脂製部材4の熱劣化を促進してしまうことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、管状断熱材からなる基材を有し、該基材の外表面に表面材と、放熱部および放熱抑制部とが順次設けられてなるものであることにより、配管内部を高温の流体が流通した場合であっても、上記基材および放熱抑制部によって配管に対向する部材の熱劣化を抑制するとともに、上記基材を介して放熱部から放熱することにより、配管内部の温度上昇を好適に抑制し得る新規な配管カバーを提供することができるとともに、該配管カバーおよび配管を有する配管構造体および該配管構造体を有する車輌を提供することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 管状断熱材からなる基材
2 表面材
3 配管カバー
4 車輌本体
5 配管
6 フーリエ変換赤外分光光度計
71 入射光
72 反射光または透過光
8 反射鏡
9 回転台
10 試料
11 ハロゲンヒータ
12 検出器
13 冷却水
a 放熱部
b 放熱抑制部
X 高温反射率・透過率測定装置
h ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の外周に被覆される配管カバーであって、
管状断熱材からなる基材と、該基材の外表面を覆う表面材とを有するとともに、該表面材の外表面に放熱部と放熱抑制部とが設けられてなり、
前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が、前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率よりも高いことを特徴とする配管カバー。
【請求項2】
前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱部がセラミックス薄膜またはカーボン薄膜により形成されてなる請求項1に記載の配管カバー。
【請求項3】
前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱部が前記表面材を構成する金属の酸化物膜により形成されてなる請求項1に記載の配管カバー。
【請求項4】
前記放熱部の波長2〜15μmにおける放射率が60〜99%である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の配管カバー。
【請求項5】
前記表面材が金属製薄膜により形成され、前記放熱抑制部が前記表面材を構成する金属の酸化を抑制する酸化防止剤の塗布膜により形成されてなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の配管カバー。
【請求項6】
前記放熱抑制部の波長2〜15μmにおける放射率が0.1〜40%である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の配管カバー。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の配管カバーが配管の外周に被覆されてなることを特徴とする配管構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の配管構造体を有することを特徴とする車輌。
【請求項9】
前記配管構造体を自動車排気ガス排出用配管構造体として有する請求項8に記載の車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19485(P2013−19485A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153741(P2011−153741)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】