説明

配管カバー

【課題】筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体から構成しながらも使用時の外観が優れた配管カバーを提供する。
【解決手段】内部に配管収納スペースを形成する筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体14、15から構成され、両分割カバー体14、15を係合させる係合部16が両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15a間に備えられている配管カバーであって、両分割カバー体14、15を係合部16で係合させた状態で外面側に現れる両分割カバー体14、15の接続箇所を外側から覆い隠す被覆片部20が、一方の分割カバー体14の外面部を外方に隆起させる状態に外方に偏倚させた外方持ち出し姿勢で一方の分割カバー体14に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物のスラブや壁に沿って配設されるドレンホースや冷媒管等の配管を被覆するのに用いられる配管カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配管カバーは、内部に配管収納スペースを形成する筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体から構成されているとともに、両分割カバー体を係合させる係合部が両分割カバー体の対向端面部間に備えられている。
【0003】
そして、従来、図11に示すように、前記係合部24が、一方の分割カバー体25の端面部25aの内方領域で突出する内側係合片部25bと、他方の分割カバー体26の端面部26aの外方領域で突出する外側係合片部26bとから構成されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の配管カバーでも、図11(a)に示すように、前記両分割カバー体を前記係合部で係合させた状態で両分割カバー体の対向端面部どうしがぴったりと突き合せされば、外面側に現れる両分割カバー体の接続箇所の外観が不恰好になることはない。
ところが、配管の数量や施工条件等の種々の事情によって両分割カバー体の対向端面部どうしをぴったりと突き合せるが難しいことから、外面側に現れる突き合せラインに歪みが生じたり、突き合せラインの所々に隙間が生じたり、或いは、図11(b)に示すように、突き合せラインそのものが隙間や凹溝になったりするなど、両分割カバー体を係合させた状態で外面側に現れる接続箇所が不恰好になり易く、そのことが、使用時に配管カバーの外観を損ねる要因になっていた。
そして、このことは、当該配管カバーが人の目に付く建物の外壁面にも多く用いられることから、建物全体の外観をも損ねる重大な問題を招いていた。
【0005】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体から構成しながら、使用時の外観も優れた配管カバーを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、内部に配管収納スペースを形成する筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体から構成されているとともに、両分割カバー体を係合させる係合部が両分割カバー体の対向端面部間に備えられている配管カバーであって、
前記両分割カバー体を前記係合部で係合させた状態で外面側に現れる両分割カバー体の接続箇所を外側から覆い隠す被覆片部が、一方の分割カバー体の外面部を外方に隆起させる状態に外方に偏倚させた外方持ち出し姿勢で一方の分割カバー体に備えられている点にある。
【0007】
上記構成によれば、前記両分割カバー体を前記係合部で係合させた状態で外面側に現れる両分割カバー体の接続箇所の外側に被覆片部が存在するから、突き合せラインの歪みや部分的な隙間や凹部或いは全体に亘る隙間や凹部が生じ得る両分割カバー体の接続箇所が外部に露出することがなく、その接続箇所の存在で使用時に外観が損なわれる不都合を確実に防止することができる。
【0008】
しかも、前記被覆片部を分割カバー体の側壁部の延長線上に形成する場合のように、係合用の構造を両分割カバー体の内面側に設ける必要がないから、配管収納スペースも広く確保することができる。
【0009】
さらに、例えば、両分割カバー体どうしの接続箇所の外面側にシール材を付設する場合には、被覆片部の先端部をシール材付設用のガイドにすることができるから、シール材の付設作業の容易化を図ることができるとともに、シール材の仕上がりも綺麗にすることができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記係合部が、両分割カバー体の対向端面部のうちの一方側の端面部の内方領域で突出する内側係合片部と、両分割カバー体の対向端面部のうちの他方側の端面部の外方領域で突出する外側係合片部とから構成されているとともに、
前記被覆片部が、前記外側係合片部を挟持可能な挟持用凹部を前記内側係合片部との間に形成する状態で、内側係合片部を有する側の分割カバー体に備えられている点にある。
【0011】
上記構成によれば、前記外側係合片部を挟持可能な挟持用凹部を前記被覆片部の存在を利用する形態で構成することができるから、前記係合部の係合力を効率的に高めることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記係合部が、両分割カバー体の対向端面部のうちの一方側の端面部の内方領域で突出する内側係合片部と、両分割カバー体の対向端面部のうちの他方側の端面部の外方領域で突出する外側係合片部とから構成されているとともに、
前記内側係合片部を有する側の分割カバー体に、内側係合片部よりも端面部からの突出寸法が大なる形態で前記被覆片部を形成することにより、又は、前記外側係合片部を備えた分割カバー体に、外側係合片部よりも端面部からの突出寸法が大なる形態で前記被覆片部を形成することにより、前記被覆片部が、両分割カバー体の近接移動操作に連れて内側係合片部と外側係合片部とを係合案内する案内片部に兼用構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、両分割カバー体の近接移動操作に連れて内側係合片部と外側係合片部とを係合案内する案内片部を前記被覆片部の存在を利用する形態で構成することができるから、両分割カバー体の係合操作の操作性を効率的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】配管カバー構造の構成図
【図2】直管状カバーとエルボカバーの接続部を示す縦断面図
【図3】直管状カバーとエルボカバーの接続部を示す分解斜視図
【図4】第一分割カバー体の背面図
【図5】第一分割カバー体の横断面の説明図
【図6】第二分割カバー体の背面図
【図7】第二分割カバー体の横断面の説明図
【図8】直管状カバーとエルボカバーの接続部を示す横断面図
【図9】両分割カバー体の係合構造を示す説明図
【図10】両分割カバー体の係合構造の別実施形態を示す説明図
【図11】従来の両分割カバー体の係合構造を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
図1は、冷媒管やドレンホース等の配管類Pを覆う複数種の合成樹脂製等の配管カバーCを室内機1側と室外機2側とに亘る配管類配設ルートに沿って配設した配管カバー構造を示す。
【0016】
前記配管カバー構造は、吊り金具3や固定金具4などにより床スラブSや壁Wに支持される筒状の直管状カバー5(配管カバーCの一例)と、配管類配設ルートの曲がり部において交差姿勢にある直管状カバー5どうしを接続する筒状のエルボカバー6(配管カバーCの一例)と、同じ姿勢にある直管状カバー5どうしを接続する筒状の連結カバー7(配管カバーCの一例)と、直管状カバー5の軸芯方向の端部に配設される筒状の端末カバー8(配管カバーCの一例)などから構成されている。
【0017】
図3に示すように、前記直管状カバー5は、円筒状に組み付け可能な一対の半割状の分割カバー体9、10から構成されている。当該分割カバー体9、10の間には、径方向からの相対近接操作で係合する係合部9aと被係合部10aが軸芯方向に沿って延設されている。また、直管状カバー5の両分割カバー体9、10の側壁部には、前記吊り金具3や固定金具4の先端側を係止させる係止用溝部9b、10bが軸芯方向に沿って延設されている。
【0018】
図2〜図9に示すように、前記エルボカバー6の軸芯方向の両端側には、前記直管状カバー5の軸芯方向の一端部を内嵌状態且つ抜け止め状態で接続可能な接続口部11が備えられている。当該エルボカバー6の内面部における接続口部11の近傍箇所には、接続された直管状カバー5の外周面に対して抜け止め作用させる抜け止め片を備えた金属製等の抜け止め部材12が周方向の複数箇所に備えられているとともに、直管状カバー5を接続した状態で直管状カバー5の外周面に当接して直管状カバー5とエルボカバー6との間でのガタツキを防止する複数の突部13aや直管状カバー5の差込長さを規制する突部13bが隆起形成されている。
【0019】
前記エルボカバー6は、約90度曲がりの円筒状に組み付け可能な半割状の第一、第二分割カバー体14、15から構成されているとともに、両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15a(つまり、両分割カバー体14、15の側壁部14A、15Aの端面部)を突き合わせる状態で又は近接させる状態で両分割カバー体14、15を係合させる係合部16が両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15a間に備えられている。
【0020】
また、第一分割カバー体14の内面部には、外面側から固定ビス17がネジ込み可能な取付け孔を備えた取付け筒部22が一体形成されているとともに、第二分割カバー体15の内面部には、前記固定ビス17を螺着させるネジ受け孔を備えた被取付け筒部23が一体形成されている。
【0021】
つまり、当該エルボカバー6は、例えば、第二分割カバー体15の所定箇所に直管状カバー5の軸芯方向の端部を配置した状態で第一分割カバー体14を第二分割カバー体15に対して径方向に沿って近接移動させて両者を係合させ、更に、前記固定ビス17で両分割カバー体14、15を螺合接続することによって、容易且つ強固に組み付け可能に構成されている。
【0022】
前記第一分割カバー体14の前記端面部14aには、径方向の内方領域で突出する内側係合片部14bが側壁部14Aの全長に亘る状態で延設されているとともに、前記第二分割カバー体15の前記端面部15aには、径方向の外方領域で突出する外側係合片部15bが側壁部15Aの全長に亘る状態で延設されている。
【0023】
前記両係合片部14b、15bは、図8、図9に示すように、両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15aが近づくに連れて係合力が増大するように基端側ほど僅かに厚みが増大する細長い略台形断面形状に構成されている。
【0024】
つまり、前記内側係合片部14bと前記外側係合片部15bとでもって、両分割カバー体14、15を近づける近接移動操作により両分割カバー体14、15を係合させる前記係合部16が構成されている。
【0025】
前記第一分割カバー体14には、両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15aを突き合わせた状態で外面側に現れる突合せライン(両分割カバー体14、15の接続箇所の一例)や、両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15aを近接させた状態で外面側に現れる溝条や隙間(両分割カバー体14、15の接続箇所の一例)を外側から覆い隠す被覆片部20が、第一分割カバー体14の外面部を外方に隆起させる状態に外方に偏倚させた外方持ち出し姿勢で備えられている。
【0026】
より具体的には、前記被覆片部20は、第一分割カバー体14の両側壁部14Aの端部外面側から外方に持ち出したのちに第二分割カバー体15の側に延出させる形態で、第一分割カバー体14の両側壁部14Aの全長に亘って形成されている。
【0027】
そして、第一分割カバー体14の内側係合片部14bと被覆片部20との間には、前記外側係合片部15bを挟持可能な奥側ほど幅狭となる挟持用溝部14c(挟持用凹部の一例)が、第一分割カバー体14の両側壁部14Aの全長に亘って形成されている。
【0028】
前記被覆片部20は、図8、図9に示すように、前記両係合片部14b、15bの変形で係合状態が不測に外れたり、或いは、外力で両係合片部が破損したりするのを抑止するように、前記両係合片部14b、15bよりも大なる厚み寸法に構成されている。
【0029】
また、前記被覆片部20は、図5、図9に示すように、第一分割カバー体14の端面部14aからの突出寸法L1を内側係合片部14bの突出寸法L2よりも大に構成することによって、両分割カバー体14、15の径方向からの近接移動操作に連れて内側係合片部14bと外側係合片部15bとを係合案内する案内片部に兼用構成されている。
【0030】
さらに、両分割カバー体14、15の接続箇所の外面側にシール材を充填する際により良好な作業性やシール性が得られるように、前記第二分割カバー体15の両側壁部15Aの外面部における端面部15aから僅かに天井壁部側に偏倚した箇所には、両分割カバー体14、15の対向端面部14a、15aどうしを突き合せた状態で被覆片部20の先端部と第二分割カバー体15の外周面との間に僅かな隙間を形成する段部21が形成されている。
【0031】
なお、連結カバー7、端末カバー8の係合や組み付けに係る基本構成は前述したエルボカバー6と同様であるので説明は省略する。
【0032】
[その他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、前記被覆片部20を両分割カバー体14、15の近接移動操作に連れて内側係合片部14bと外側係合片部15bとを係合案内する案内片部に兼用構成するのに、内側係合片部14bを有する第一分割カバー体14に、それの端面部からの突出寸法L1が内側係合片部14bの突出寸法L2よりも大なる形態で被覆片部20を形成する場合を例に示したが、例えば、図10に示すように、第一分割カバー体14に外側係合片部14dを形成し、且つ、第二分割カバー体15に内側係合片部15dを形成するとともに、外側係合片部14dを備えた第一分割カバー体14に、それの端面部からの突出寸法L1が外側係合片部の突出寸法L3よりも大なる形態で被覆片部20を形成するなどであってもよい。
【0033】
(2)前述の実施形態では、前記被覆片部の端面部からの突出寸法L1を係合片部14bの突出寸法L2よりも大に構成する場合を例に示したが、前記被覆片部の端面部からの突出寸法L1と係合片部14bの突出寸法L2を同じ又は略同じにしたり、或いは、前記被覆片部の端面部からの突出寸法L1を係合片部14bの突出寸法L2よりも小に構成したりしてもよい。
【0034】
(3)本発明は、前述の実施形態で説明したエルボカバー6、連結カバー7、端末カバー8に限らず、直管状カバー5などの種々の配管カバーCに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
14、15 分割カバー体
14a、15a 端面部
14b 内側係合片部
14c 挟持用凹部
15b 外側係合片部
16 係合部
20 被覆片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配管収納スペースを形成する筒状に組み付け可能な半割状の一対の分割カバー体から構成されているとともに、両分割カバー体を係合させる係合部が両分割カバー体の対向端面部間に備えられている配管カバーであって、
前記両分割カバー体を前記係合部で係合させた状態で外面側に現れる両分割カバー体の接続箇所を外側から覆い隠す被覆片部が、一方の分割カバー体の外面部を外方に隆起させる状態に外方に偏倚させた外方持ち出し姿勢で一方の分割カバー体に備えられている配管カバー。
【請求項2】
前記係合部が、両分割カバー体の対向端面部のうちの一方側の端面部の内方領域で突出する内側係合片部と、両分割カバー体の対向端面部のうちの他方側の端面部の外方領域で突出する外側係合片部とから構成されているとともに、
前記被覆片部が、前記外側係合片部を挟持可能な挟持用凹部を前記内側係合片部との間に形成する状態で、内側係合片部を有する側の分割カバー体に備えられている請求項1記載の配管カバー。
【請求項3】
前記係合部が、両分割カバー体の対向端面部のうちの一方側の端面部の内方領域で突出する内側係合片部と、両分割カバー体の対向端面部のうちの他方側の端面部の外方領域で突出する外側係合片部とから構成されているとともに、
前記内側係合片部を有する側の分割カバー体に、内側係合片部よりも端面部からの突出寸法が大なる形態で前記被覆片部を形成することにより、又は、前記外側係合片部を備えた分割カバー体に、外側係合片部よりも端面部からの突出寸法が大なる形態で前記被覆片部を形成することにより、前記被覆片部が、両分割カバー体の近接移動操作に連れて内側係合片部と外側係合片部とを係合案内する案内片部に兼用構成されている請求項1記載の配管カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−163540(P2011−163540A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30276(P2010−30276)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】