説明

配管分岐部材の撤去方法及び装置

【課題】立上り管部の切断後の融着を確実に行なうことができ、ガス漏れの心配のない配管分岐部材の撤去方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る配管分岐部材の撤去方法は、導管1に固定されたサドル部7から立ち上がる立上り管部9と立上り管部9から分岐して設けられた分岐管部13とを備えてなる樹脂製の配管分岐部材3を撤去する方法であって、円盤状の仮栓19を立上り管部9内に挿入する仮栓設置工程と、立上り管部9をサドル部近傍にて除去する立上り管部除去工程と、円盤状で樹脂製の蓋部材23の外周面及び前記除去によって現れた立上り管部9の内周面とを加熱して溶融する溶融工程と、蓋部材23を立上り管部9に挿入して両者を接着する接着工程とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス配管などの導管において、各宅地内に分岐配管をするために設けられる樹脂製の配管分岐部材の撤去方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス配管は、道路下の導管から配管分岐部材を介して供給管が設けられ、この供給管が各宅地内の所定の場所に引き込まれている。
しかし、宅地内の建物の建て替えや、宅地の転用に際して、その供給管が不使用状態になる場合がある。その場合、供給管はとりあえず宅地内においてスクイズオフして一時切断し、その端末にEFキャップ等を融着することで閉塞処理してガス漏洩防止され、いわゆる未整理供給管として残されている。
【0003】
しかし、この未整理供給管は、導管と接続されており活管状態であるため、長期間埋設状態にあるとガス漏れを生じるおそれがある。また、他工事で引っ掛ける危険性もある。
そこで、このような未整理供給管を撤去する要請があり、以下のような提案がなされている。
【0004】
内蔵タッピング工具(カッター)を有するチーを介して元管に接続された樹脂製分岐管を撤去する方法であって、前記カッターを前記元管の側壁のタッピング孔に挿入し、該カッターの上側で前記チーを切断し、該チーの切断部に封止作業バッグを取り付け、該バッグ中において、前記タッピング孔から前記カッターを取り外した後、該タッピング孔に仮栓を取り付け、該仮栓の外側から樹脂製の本閉止栓を回転させながら当て、該本閉止栓と前記タッピング孔端部との間に生じる摩擦熱で、本閉止栓を前記チーの切断部に融着することを特徴とする樹脂製分岐管の撤去方法(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-295724号公報(請求項1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、本閉止栓をタッピング孔端部に融着するに際し、本閉止栓をタッピング孔端部に回転させながら当て、該本閉止栓と前記タッピング孔端部との間に生じる摩擦熱で、本閉止栓をチーの切断部に融着するというものである。
しかし、本閉止栓とタッピング孔端部とを回転によって融着させる方法では、両者間を全周に亘って均一に溶融して確実に融着できるとは限らない。
【0007】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、立上り管部の切断後の本栓の融着を確実に行なうことができ、ガス漏れの心配のない配管分岐部材の撤去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る配管分岐部材の撤去方法は、導管に固定されたサドル部から立ち上がる立上り管部と該立上り管部から分岐して設けられた分岐管部とを備えてなる樹脂製の配管分岐部材を撤去する方法であって、円盤状の仮栓を前記立上り管部内に挿入する仮栓設置工程と、前記立上り管部を前記サドル部近傍にて除去する立上り管部除去工程と、円盤状で樹脂製の蓋部材の外周面及び前記除去によって現れた立上り管部の内周面とを加熱して溶融する溶融工程と、前記蓋部材を前記立上り管部に挿入して両者を接着する接着工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものであって、前記立上り管部除去工程は、立上り管部の上端面と内周面の両方を切削する工程を含むことを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものであって、前記接着工程において、前記蓋部材を前記立上り管部に挿入したときに、前記仮栓に、前記蓋部材側と前記導管側の空間を連通させる連通路が形成されるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の配管分岐部材の撤去方法に用いる配管分岐部材の撤去装置であって、
ガイド支柱を備えると共に前記導管に着脱自在に装着される本体部と、前記ガイド支柱にガイドされて前記立上り管の上端面及び内周面を切削する切削具と、前記ガイド支柱に支持されて前記蓋部材を保持する蓋部材保持具と、前記ガイド支柱に支持されて前記蓋部材の外周面と前記立上り管の内周面を加熱して溶融するヒータ具とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、上記(4)に記載の配管分岐部材の撤去装置において、前記立上り管部の軸芯に対する前記本体部の装着位置を決める芯出し具を備えてなり、該芯出し具は、前記立上り管に挿入可能な凸部と、該凸部の側方に延出するアーム部と、該アーム部に設けられて前記ガイド支柱に挿入可能な貫通孔を有し、該貫通孔を前記ガイド支柱に挿入すると共に前記凸部を前記立上り管部に挿入することによって前記立上り管の軸芯に対する前記本体部の装着位置を位置決めするようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(4)又は(5)に記載のものにおいて、前記切削具は、切削刃が形成された切削台座と、該切削台座を切削対象となる立上り管側に常時付勢する付勢手段と、切削具を前記本体部に係止させる係止部材とを備えてなることを特徴とするものである。
【0014】
(7)また、上記(4)乃至(6)のいずれかに記載のものにおいて、前記ヒータ具は、前記蓋部材の外周面を加熱する凹陥部と、前記立上り管の内周面を加熱する凸部とを備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、円盤状で樹脂製の蓋部材の外周面と、除去によって現れた立上り管部の内周面とを加熱して溶融する溶融工程と、前記蓋部材を前記立上り管部に挿入して両者を接着する接着工程とを備えたことにより、蓋部材の外周面と立上り管部の内周面の両方を確実に溶融して接着できるので、蓋部材の融着をより確実なものにでき、ひいてはガス漏れを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去方法の工程を概説する説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に本体部の説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に芯出し具兼蓋部材保持具の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に芯出し具兼蓋部材保持具の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に切削具の説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に切削具の説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に切削具の説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に融着具の説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置の説明図であり、特に融着具の説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その1)。
【図11】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その2)。
【図12】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その3)。
【図13】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その4)。
【図14】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その5)。
【図15】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その6)。
【図16】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その7)。
【図17】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その8)。
【図18】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その9)。
【図19】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その10)。
【図20】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その11)。
【図21】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その12)。
【図22】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その13)。
【図23】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その14)。
【図24】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その15)。
【図25】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その16)。
【図26】本発明の一実施の形態に係る配管分岐部材の撤去装置を用いた配管分岐部材の撤去方法の説明図である(その17)。
【図27】本発明の一実施の形態に係る仮栓の他の態様の説明図である。
【図28】本発明の一実施の形態に係る仮栓の他の態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
本実施の形態に係る配管分岐部材3の撤去方法を図1に基づいて説明する。
撤去前の状態は、図1(a)に示すように、導管1の表面にいわゆるサービスチーと呼ばれる配管分岐部材3が設置され、この配管分岐部材3を介して例えば各宅地内の所定箇所に供給管5が配置される。
このような配管分岐部材3は、導管1の表面に融着されたサドル部7と、サドル部7から立ち上がる立上り管部9と、立上り管部9の端部に設置されたチーキャップ11と、立上り管部9から直交方向に延出する分岐管部13とを備えている。そして、図示していないが。立上り管部9内には配管分岐部材3の設置時に導管1に穿孔するために使用したカッター17が残存している。
【0018】
図1(a)に示したような配管分岐部材3を撤去するには、まず図1(b)に示すように、撤去の対象となる配管分岐部材3を覆うようにノーブローガスバック15を取り付け、ノーブローガスバック15内においてチーキャップ11を取り外し、立上り管部9内のカッター17を取り外す。
次に図1(c)に示すように、円盤状の仮栓19を立上り管部9の下方に挿入する。仮栓19を挿入することによって、導管1からのガス漏れをほぼ防止できるので、図1(d)に示すように、この状態でノーブローガスバック15を取り外し。図1(e)に示すように、立上り管部9から直交方向に延出する分岐管部13を根元付近から切断する。この分岐管の切断を行わず、立上り管部9と同時に切削してもよい。
【0019】
次に図1(f)に示すように、立上り管部9を切断する。切断する位置は分岐管部13の基部の下面位置き近傍である。本実施の形態では、蓋部材23を立上り管部9の内部に挿入するので、挿入代を残すように切断する。
切断方法は特に限定されないが、例えば鋸切りのような一般工具を使用してもよいし、あるいは押切りのような特殊な工具により一気にスパッと切断してもよい。また、立上り管部9と分岐管部13を除去する方法は、立上り管部9を切断することに限定されず、立上り管部9の上端側から下方に向かって順次切削できるようなものでもよい。
【0020】
切削工具21としては、例えば図1(f)に示すように、立上り管部9を覆うような筒体の中に回転可能な回転刃を設け、この回転刃を回転させることによって、あたかも鰹節を削るように立上り管部9を切削できるものでもよい。回転刃の回転は、ラチェットなどの工具を用いて手作業で行ってもよいし、モーターを使用してもよい。
また、鋸切りのような一般工具あるいは押切りのような特殊な工具でおおまかな切断後、立上り管部9の上端側から下方に向かって順次切削できる回転可能な回転刃などを用いて最終的な切削切断を行ってもよい。
上下方向の切削に加えて、融着に備えて立上り管部9の内面を切削して、その内径が挿入される蓋部材23の外径に合うようにするのが望ましい。
【0021】
次に、切断によって現われた立上り管部9の内周面と蓋部材23の外周面の両方を加熱して溶融させ、図1(g)に示すように、蓋部材23を立上り管部9内面に融着する。
立上り管部9の内面と円盤状の蓋部材23の外周面を同時に加熱し、両面を溶融させて融着を行うことにより、強固で確実な融着となる。
立上り管部9の内面と円盤状の蓋部材23の外周面を融着するため、図1(f)で示したように立上り管部9を切削する場合の端面は、仮栓19の上端面よりも上に、蓋部材23の厚み以上を残すようにするのが好ましい。
また、立上り管部9内周面の蓋部材23の外周面と融着する部分は、回転可能な回転刃で切削することにより、寸法精度が得られ、融着面も綺麗な面が得られるため、融着に好適である。
【0022】
なお、蓋部材23を立上り管部9内に挿入する際に、蓋部材23、仮栓19及び立上り管部9内面とで囲まれた空間が閉鎖空間となるため、当該空間内の空気が圧縮されて蓋部材23を押し戻すような作用を及ぼすことが考えられる。そこで、圧縮された空気の融着への影響をなくすため、仮栓19に融着時に空気を逃がすような機能をもたせるのが好ましい。仮栓19に持たせるこのような機能の具体例としては、実施の形態2で説明する。
【0023】
本実施の形態においては、立上り管部9の内面と円盤状の蓋部材23の外周面を同時に加熱し、両面を溶融させて融着を行うようにしたので、強固で確実な融着が得られ、それ故にガス漏れを確実に防止できる。また、蓋部材23を立上り管部9に挿入して蓋部材23の側面と立上り管部9の内周面を融着させるようにしているので、仮に融着位置がずれたような場合には、融着されている蓋部材23を切削して開口部を形成し、新たな蓋部材を挿入するようにすることでやり直しが可能である。この点、先行文献1の方式や、それ以外の例えば立上り管部の上端面と蓋部材の底面とを融着させるような方式では、やり直しができないので、本発明はこの点でも優れている。
【0024】
[実施の形態2]
次に、上記の配管分岐部材3の撤去方法に用いる配管分岐部材3の撤去装置について、図2〜図9に基づいて説明する。
本実施の形態に係る配管分岐部材3の撤去装置は、導管1に設置されて後述の各器具を保持する本体部25と、本体部25(図2参照)を導管1の所定位置にセットする際の芯出し具として機能すると共に融着の際に蓋部材23を保持する蓋部材保持具として機能する芯出し具兼蓋部材保持具51(図3、4参照)と、立上り管部9の上端面及び内周面を切削する切削具61(図5〜図7参照)と、蓋部材23の外周面及び立上り管部9の内周面を溶融して融着する融着具79(図8、9参照)とを備えている。
以下、各部及び各具を詳細に説明する。
【0025】
<本体部>
本体部25は、図2に示すように、左右一対のベース部27と、左右のベース部27を所定の間隔を離して連結する連結バー29と、ベース部27を導管1に装着するための装着部材31と、各ベース部27の上面に立設されたガイド支柱33とを備えている。
ベース部27は、略直方体形状をしており、下面には導管1の上面にベース部27を安定的に載置するための凹部35が形成されている。ベース部27の長手方向の両端には溝部37が形成されており、該溝部37には装着部材31を構成する後述のチェーン39の端部が挿入されている。
ベース部27の外縁中央部には、後述する切削具61、ヒータ具81の係止爪77が係止する係止部38が形成されている。
【0026】
連結バー29は、一対のベース部27を連結するものであり、本体部25を導管1に装着した状態で立上り管部9を挟むように所定間隔離した位置に各2段設置されている。連結バー29は断面が六角形になっており、上面が平面になるように設置されている。連結バー29の上面は後述する鋸99で立上り管部9を切断するときのガイドとして機能する。そのため、連結バー29の上面位置が立上り管部9の切断面の位置を決めることになる。換言すれば、立上り管部9の切断面の位置は、連結バー29の上面位置によって決めることができる。それ故、導管1の外径に応じてベース部27の形状(厚みや大きさ)大きさを変えることによって、立上り管部9の切断面の位置を常に同じ位置にすることも可能である。
【0027】
装着部材31は、図2に示されるように、導管1に巻きつくように設置されるチェーン39と、該チェーン39の一端側に設置されて本体部25に係止する端部材41と、チェーン39の他端に設けられてチェーン39を張設するクランプ部材43とを備えている。クランプ部材43は、クランプバー44を操作することでチェーン39を張設して、本体部25を導管1にしっかりと固定する。
ガイド支柱33は、各ベース部27の中央部に立設されている。ガイド支柱33の上端部には、ガイド支柱33の周面を一周するように細い周溝45が形成されている。この周溝45は後述する芯出し具兼蓋部材保持具51のアーム部55に設けられたプランジャー軸66(図3、図4参照)に係止して、芯出し具兼蓋部材保持具51を所定位置に保持する機能を有する。
【0028】
<芯出し具兼蓋部材保持具>
芯出し具兼蓋部材保持具51は、図3、図4に示されるように、矩形板部53と、矩形板部53の両側に延出して設けられたアーム部55と、アーム部55の先端に設けられたハンドル部57を備えている。矩形板部53の中央には挿入孔59が設けられると共に挿入孔59を拡縮するクランプレバー60が設けられている。挿入孔59は、芯出し具兼蓋部材保持具51が蓋部材保持具83として機能する際に、蓋部材23を先端に保持した保持棒62が挿入される。挿入孔59に挿入された保持棒62はクランプレバー60を操作することで挿入孔59にクランプされて芯出し具兼蓋部材保持具51に保持される。
矩形板部53の下面側は、図4に示すように、ドーナツ状の凹陥部63が形成されると共に凹陥部63の中央部にはドーナツ状の凸部64が形成されている。凸部64の外周面は、下方に向かって縮径するテーパ面になっている。凸部64をテーパ面にしたのは、芯出し具兼蓋部材保持具51が芯出し具として機能する際に、凸部64が立上り管部9に容易に挿入されようにするためである。
アーム部55には、ガイド支柱33に挿入するための貫通孔65及びガイド支柱33に形成された周溝45に係止するプランジャー軸66が設けられている。
【0029】
<切削具>
切削具61は、図5〜図7に示されるように、円筒状の切削ハウジング67と、切削ハウジング67の両側に延出して設けられたアーム部55と、アーム部55の先端に設けられたハンドル部57を備えている。アーム部55には、ガイド支柱33に挿入するための貫通孔65が設けられている。なお、アーム部55、ハンドル部57、貫通孔65は芯出し具兼蓋部材保持具51に設けられたものと同じなので同一の符号を付してある。この点は後述の融着具79においても同様である。
【0030】
切削ハウジング67には、下方に向けて付勢された刃物ベース68が設置され、刃物ベース68には切削刃69が形成された切削台座70が固定されている。刃物ベース68はバネ71によって下方(切削対象となる立上り管部方向)に付勢されており、刃物ベース68を例えば立上り管部9に押し付けることで内部にバネ71を収容したガイド筒73にガイドされて上方(図7中の矢印の方向)に移動可能になっている。したがって、刃物ベース68を例えば立上り管部9に押し付けた状態で保持することで、刃物ベース68をバネ力によって立上り管部9に所定の力で押し付けることができ、切削具61による切削作業時に刃物ベース68を被切削部材に人力で押し付ける必要がない。よって、例えば切削具61を立上り管部9に対して横向きに配置したり、上向き配置したりして作業をするような場合には極めて便利である。
刃物ベース68は、切削ハウジング67の上部に延出したラチェット軸75を回転することで、回転するように構成されている。
切削刃69は立上り管部9の上端面及び上端内周面を切削できるようになっている。
アーム部55の先端部には本体部25の係止部38に係止する係止爪77が形成されている。
【0031】
<融着具>
融着具79は、蓋部材23の外周面及び立上り管部9の内周面を溶融して立上り管部9の端部に接着するものである。融着具79は、図8及び図9に示されるように、立上り管部9の内周面、蓋部材23の外周面を加熱して溶融させるヒータ具81と、蓋部材23を保持する蓋部材保持具83とを備えて構成される。
蓋部材保持具83は、前述した芯出し具兼蓋部材保持具51と保持棒62とによって構成され、図8に示されるように、蓋部材23を保持した保持棒62を挿入孔59に挿入してクランプレバー60を操作して挿入孔59でクランプして保持する。保持棒62の先端には雄ネジが設けられると共に蓋部材23には該雄ネジが螺合する雌ネジが形成されており、保持棒62の先端の雄ネジを蓋部材23の雌ネジに螺合することで蓋部材23を保持する。
なお、保持棒62の端部には金属製のカバー部材85が取り付けられており、保持棒62に保持された蓋部材23の一部を覆うようになっている。カバー部材85は保持棒62に保持された蓋部材23を立上り管部9に挿入するときに立上り管部9の上端面に当接して蓋部材23の挿入深さを規定する機能を有する。
【0032】
ヒータ具81は、図8及び図9に示すように、矩形状のヒータユニット87と、ヒータユニット87の両側に延出して設けられたアーム部55と、アーム部55の先端に設けられたハンドル部57を備えている。アーム部55には、ガイド支柱33に側方から挿入可能な矩形状の切欠部89が形成されている。また、アーム部55の先端部には、切削具61と同様に、本体部25の係止部38に係止する係止爪77が形成されている。
ヒータユニット87の上面側には、蓋部材23の外径と略同一の径を有する円形の円形凹陥部91が形成されており、この円形凹陥部91に蓋部材23が挿入され、蓋部材23の外側面を加熱して溶融する。また、ヒータユニット87の下面側には、図9に示すように、立上り管部9の内径とほぼ同一の外径を有する筒形凸部93が形成されており、この筒形凸部93が立上り管部9に挿入されてその内周面を溶融する。
ヒータユニット87には図示しない電線が接続され、通電されることで加熱される。
【0033】
次に、上記のように構成された配管分岐部材3の撤去装置を用いて配管分岐部材3を撤去する方法を、図10〜図26に基づいて説明する。
撤去の対象となる配管分岐部材3を覆うようにノーブローガスバック15を取り付け、ノーブローガスバック15内においてチーキャップ11を取り外し、立上り管部9内のカッター17を取り外す。
次に、図10に示すように、円盤状の仮栓19を、仮栓保持部材95に保持させ、図11に示すように、立上り管部9の下方に挿入する。仮栓19を挿入することによって、導管1からのガス漏れをほぼ防止できるので、この状態でノーブローガスバック15を取り外す。ノーブローガスパックを取り外した状態が図12に示され、その断面が図13に示されている。
仮栓19は、図13の拡大図に示すように、中央に芯棒97が設置されると共に芯棒97の先端部に弁体98が設置されており、芯棒97は上部を押すことで下方に移動し、芯棒97が移動することで弁体98も下方に移動し、仮栓19を介して導管1と立上り管部9とが連通するようになっている。
【0034】
仮栓19が設置されると、図14に示すように、分岐管部13を根元付近から鋸99で切断する。分岐管部13を切断すると、図15に示すように、本体部25のガイド支柱33に芯出し具兼蓋部材保持具51を設置して、本体部25を導管1に装着する。この状態で、芯出し具兼蓋部材保持具51の凸部64を立上り管部9に挿入する。これによって、ガイド支柱33の位置が立上り管部9を基準にして芯出しされることになる。この状態で、クランプレバーを倒すことで、本体部25が導管1に対して正しい位置にしっかりと固定される。
【0035】
芯出しが完了すると、芯出し具兼蓋部材保持具51を取り外す(図16参照)。次に、図17に示すように、連結バー29の上面をガイドとして鋸99によって立上り管部9を切断する。このとき、連結バー29の上面位置が所定の位置になっているので、立上り管部9は所定の高さを残して切断される。
【0036】
立上り管部9が切断されると、図18に示すように切削具61をセットする。セットは、切削具61のアーム部55に設けられた貫通孔65をガイド支柱33に挿入することによって行う。なお、貫通孔65とガイド支柱33との間には若干の隙間(遊び)が設けられており、図18に示すように、若干斜めになった状態で保持可能になっている。
次に、図19に示すように、切削具61をガイド支柱33に沿って下方に移動し、図20に示すように、係止爪77を本体部25の係止部38に係止させる。このとき、切削具61の切削台座70が立上り管部9の上端面に押されて切削ハウジング67内に収納された状態になる。このとき、切削台座70はバネ71によって立上り管部上端面に押し付けられた状態になっている。この状態で、図19に示すように、ラチェット軸75にラチェットレバー101を装着して回転させることで、切削台座70が回転し、切削台座70に形成された刃物によって、立上り管部9の上端面と内周面が切削される。
【0037】
次に、図21に示すように、芯出し具兼蓋部材保持具51に蓋部材23を保持した蓋部材保持具83を設置して、ガイド支柱33に設置する。さらに、図22に示すように、ヒータ具81をガイド支柱33の側方から設置して、ヒータ具81の係止爪77を本体部25の係止部38に係止させる。そして、蓋部材保持具83をガイド支柱33に沿って下降させて蓋部材23をヒータ具81の円形凹陥部91に挿入する。この状態で、ヒータ具81に通電して、立上り管部9の内周面及び蓋部材23の外周面を約20秒間加熱して溶融させる。
【0038】
溶融が完了すると、図23に示すように、蓋部材保持具83を上方に移動し、さらにヒータ具81を側方に取り外す。そして、蓋部材保持具83をガイド支柱33に沿って下降させて、蓋部材23を立上り管部9の上部に挿入する。このとき、蓋部材23と仮栓19との間の空気が圧縮されることになるが、図24に示すように、棒部材が蓋部材23に押されて弁体98が移動して弁開状態になって空気が導管1側に抜けるので、空気が圧縮されることなく蓋部材23を立上り管部9に容易に押し付けることができる。この状態で、蓋部材23が立上り管部9に融着する。その後、図25に示すように、芯出し具兼蓋部材保持具51を取り外す。
その後は、図26に示すように保持棒62を取り外し、さらに本体部25を取り外して完了となる。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、配管分岐部材3の撤去作業を容易に行うことができる。
しかも、切削作業や融着作業は立上り管部9に対して位置決めされたガイド支柱33を基準にして行なうようにしているので、切削位置や融着位置がずれることがなく、確実に行なうことができる。
また、蓋部材23を立上り管部9に挿入して融着する際に仮栓19を介して蓋部材側と導管1側が連通するようにしているので、蓋部材23の挿入に際して空気が圧縮されることなくスムーズな蓋部材23の挿入ができ、この点においても蓋部材23の確実な融着を可能にしている。
【0040】
なお、蓋部材23を融着した後の状態で、仮栓19を介して蓋部材23側と導管1側が連通することになれば、導管1に流れるガスが仮栓19の連通孔を通じて蓋部材23側に充満することになり、それ故、蓋部材23の融着状態を導管1を流れるガスの漏れの有無によって検査できるという効果もある。この点、仮栓に連通孔が設けられない従来例では、導管1を流れるガスは仮栓で止められているので、蓋部材の融着状態を導管1を流れるガスの漏れの有無という観点からの検査はできないので、この点でも本発明は優れていると言える。
【0041】
なお、上記の実施の形態では、仮栓19の構造として、中央に芯棒97を設置する例を示したが、仮栓19の構造としてはこれに限られるものではなく、例えば図27、図28に示すように、仮栓19を、中央部に下方に向けて拡径する開口部103を設け、該開口部103を、常温では固体であるが融着時の熱によって軟化するワックス105によって封止しておくようにしてもよい。このようにすれば、融着時に蓋部材23を押し付けたときに、熱と空圧でワックス105が除去されて開口部103が開き、仮栓19、蓋部材23及び立上り管部9で囲まれた空間の空気が圧縮されることがなく、蓋部材23の設置を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 導管
3 配管分岐部材
5 供給管
7 サドル部
9 立上り管部
11 チーキャップ
13 分岐管部
15 ノーブローガスバック
17 カッター
19 仮栓
21 切削工具
23 蓋部材
25 本体部
27 ベース部
29 連結バー
31 装着部材
33 ガイド支柱
35 凹部
37 溝部
38 係止部
39 チェーン
41 端部材
43 クランプ部材
44 クランプバー
45 周溝
51 芯出し具兼蓋部材保持具
53 矩形板部
55 アーム部
57 ハンドル部
59 挿入孔
60 クランプレバー
61 切削具
62 保持棒
63 凹陥部
64 凸部
65 貫通孔
66 プランジャー軸
67 切削ハウジング
68 刃物ベース
69 切削刃
70 切削台座
71 バネ
73 ガイド筒
75 ラチェット軸
77 係止爪
79 融着具
81 ヒータ具
83 蓋部材保持具
85 カバー部材
87 ヒータユニット
89 切欠部
91 円形凹陥部
93 筒形凸部
95 仮栓保持部材
97 芯棒
98 弁体
99 鋸
101 ラチェットレバー
103 開口部
105 ワックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管に固定されたサドル部から立ち上がる立上り管部と該立上り管部から分岐して設けられた分岐管部とを備えてなる樹脂製の配管分岐部材を撤去する方法であって、
円盤状の仮栓を前記立上り管部内に挿入する仮栓設置工程と、前記立上り管部を前記サドル部近傍にて除去する立上り管部除去工程と、円盤状で樹脂製の蓋部材の外周面及び前記除去によって現れた立上り管部の内周面とを加熱して溶融する溶融工程と、前記蓋部材を前記立上り管部に挿入して両者を接着する接着工程とを備えたことを特徴とする配管分岐部材の撤去方法。
【請求項2】
前記立上り管部除去工程は、立上り管部の上端面と内周面の両方を切削する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の配管分岐部材の撤去方法。
【請求項3】
前記接着工程において、前記蓋部材を前記立上り管部に挿入したときに、前記仮栓に、前記蓋部材側と前記導管側の空間を連通させる連通路が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管分岐部材の撤去方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の配管分岐部材の撤去方法に用いる配管分岐部材の撤去装置であって、
ガイド支柱を備えると共に前記導管に着脱自在に装着される本体部と、前記ガイド支柱にガイドされて前記立上り管の上端面及び内周面を切削する切削具と、前記ガイド支柱に支持されて前記蓋部材を保持する蓋部材保持具と、前記ガイド支柱に支持されて前記蓋部材の外周面と前記立上り管の内周面を加熱して溶融するヒータ具とを備えたことを特徴とする配管分岐部材の撤去装置。
【請求項5】
前記立上り管部の軸芯に対する前記本体部の装着位置を決める芯出し具を備えてなり、該芯出し具は、前記立上り管に挿入可能な凸部と、該凸部の側方に延出するアーム部と、該アーム部に設けられて前記ガイド支柱に挿入可能な貫通孔を有し、該貫通孔を前記ガイド支柱に挿入すると共に前記凸部を前記立上り管部に挿入することによって前記立上り管の軸芯に対する前記本体部の装着位置を位置決めするようにしたことを特徴とする請求項4記載の配管分岐部材の撤去装置。
【請求項6】
前記切削具は、切削刃が形成された切削台座と、該切削台座を切削対象となる立上り管側に常時付勢する付勢手段と、切削具を前記本体部に係止させる係止部材とを備えてなることを特徴とする請求項4又は5に記載の配管分岐部材の撤去装置。
【請求項7】
前記ヒータ具は、前記蓋部材の外周面を加熱する凹陥部と、前記立上り管の内周面を加熱する凸部とを備えてなることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の配管分岐部材の撤去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−112067(P2011−112067A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266294(P2009−266294)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(503143482)桐生瓦斯株式会社 (5)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000161998)京葉瓦斯株式会社 (46)
【出願人】(000197322)静岡瓦斯株式会社 (12)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(596052511)岡山ガス株式会社 (2)
【出願人】(000196680)西部瓦斯株式会社 (47)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【出願人】(391000841)大肯精密株式会社 (20)
【出願人】(501462620)斎長物産株式会社 (10)
【Fターム(参考)】