説明

配管吊バンド

【課題】 2分割一対のバンド片による配管吊バンドの配管作業を簡易化し且つ該簡易化に伴う配管外周での滑動を防止する。
【解決手段】 配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの吊片22近傍に径大部位24を配置し、配管仮置き用のバンド片2aの開口を拡大して配管6の仮置き載置を容易になし得るようにし、ナット4bの緩め幅を小さくしても、配管押え用のバンド片2bの回動をなし得るようにして配管作業を簡易化する。配管仮置き用のバンド片2aの吊片22にボルト4aを固定するとともに配管押え用のバンド片2bの吊片にナット4bの締着による変形を防止する補強面26を配置し、また、各バンド片2a、2bの径大部位24近傍に配管6に圧着する滑動防止突起27を配置して、配管6外周での滑動を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井スラブに配管を吊支持するに用いる配管吊バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配管吊バンドとして、本発明者の提案に係る下記特許文献1が知られており、これによれば、該配管吊バンドは、一方を1/2円以上の湾曲角度の配管仮置き用とし、他方を残余の湾曲角度の配管仮置き用とした2分割一対のバンド片を、その各上端に起立した吊片に挿通したボルトナットによって締着して、別体又は配管仮置き用のバンド片の吊片に一体のタンバックルに吊支持し、配管仮置き用のバンド片によって配管を仮置き支持して配管押え用のバンド片を配管外周方向に回動することにより、その円周方向中間位置でこれらバンド片に形成した連結自由端を相互に連結して該2分割一対のバンド片による配管の被嵌支持を自在としたものとされている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−304052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、配管吊バンドを、上記連結自由端を連結し且つタンバックルとバンド片の吊片をボルトナットによって締着することによってこれらバンド片を一体化した出荷形態で現場に搬入使用するようにすることによって、現場での配管作業を、吊ボルトにタンバックルのナットを螺装し、該吊ボルトに配管吊バンドを設置して、連結自由端の連結を解除してバンド片を分離し、その配管仮置き用のバンド片に配管を仮置き載置した後に、配管押え用のバンド片を、ボルトを回動軸として回動して、双方の連結自由端を連結するように行うことによって、現場での配管作業を可及的に簡易化したものとすることができる。
【0005】
しかし乍ら、配管仮置き用のバンド片は、安定した配管の仮置き載置を可能とするように、例えば220°程度とする如くに、180°を大きく超える角度のものとされるから、その開口幅は、配管の直径より縮小することになり、従って、吊ボルトに設置した複数の配管吊バンドの配管仮置き用のバンド片に対する配管の仮置き載置は、該縮小した開口を、配管吊バンドの弾性を利用するように弾発的に押し広げて該バンド片に対して強制的に圧入して、該複数の配管吊バンドに架設するように行う必要があるところ、該配管の仮置き載置の作業は、高所でなされる上、配管は一般に鋼製で重量が嵩むものとされるから、該配管の仮置き載置の作業が煩雑となり、これが、配管作業の作業効率を阻害する要因となる傾向がある。
【0006】
また、配管押え用のバンド片は、その上記ボルトを回動軸とする回動を、上記配管仮置き用のバンド片に配管を仮置き載置した状態で行うことによって、該回動に際して、その吊片近傍と配管との衝接が生じるため、該衝接を回避するために、該バンド片の吊片近傍を、仮置き載置した配管の上方位置を超えてこれから離すように外側に向けて起立し、該起立状態で、その回動を行うことが必要となり、このため、上記ボルトに螺装したナットを大きく緩めて、吊片をボルトの軸長手方向に移動して、該ボルトを挿通した透孔、一般には上下の長孔の空隙を利用して吊片を外側に向けて立ち上げるようにこれを外側に起立する必要があるところ、一般にナットの緩めは、例えば指先でナットを多数回に亘って回転することによって行うとともに緩めたナットは再度吊片をボルト頭との間で挟持するように同様な締め戻しの締着を行うことが必要であるから、該ナット緩めと締め戻しのための締着幅が大きくなってボルトナットの締着作業が煩雑となり、同じくこれが、配管作業の作業効率を阻害する要因となる傾向がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、上記2分割一対のバンド片のうち一方の配管仮置き用のバンド片に対する配管の仮置き載置を可及的簡易になし得るようにし、また、該配管の仮置き載置を容易になし得るとともに上記ナットの緩めと締着の幅を可及的に極小化するも、配管との衝接を回避し得るようにして、配管作業の作業効率を可及的高度に確保するとともに配管の安定且つ確実な被嵌保持をなし得るようにした配管吊バンドを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って検討すると、上記配管仮置き用のバンド片に、その湾曲方向吊片近傍位置にバンド片の内径より径大として吊片の起立位置に至るようにした該バンド片と同心円の径大部位を配置して、配管仮置き用のバンド片の角度を、配管の仮置き載置の安定性を確保するものとする一方で、角度によって規制される該バンド片の開口の幅を拡大することによって、該バンド片に対する配管の仮置き載置を可及的簡易にしてスムーズになし得ること、また、これに加えて上記配管押え用のバンド片にも、同様にその湾曲方向吊片近傍位置にバンド片の内径より径大として吊片の起立位置に至るようにした該バンド片と同心円の径大部位を配置して、配管押え用のバンド片の回動に際して、該バンド片に対してその吊片近傍における回動の軌跡を外側に離隔するように、配管仮置き用のバンド片に仮置き載置した配管との間に衝接回避用のスペースを配置することによって、該配管押え用のバンド片のボルトからの起立幅を可及的に大きく確保し、該バンド片が配管の上部に衝接するのを防止するようにして、ナットの緩め幅と締め戻しのための締着幅を可及的に極小化するも、該バンド片が配管に衝接するのを回避し得るものとすることによって、配管作業の作業効率を可及的高度に確保することが可能となること、更に、このように配管仮置き用のバンド片又はこれと配管押え用のバンド片に径大部位を配置したとき、該径大部位に応じた角度、場合によっては該径大部位の角度と連結自由端の連結に要する角度の分、配管との接触角度、即ち被嵌支持の角度が減少し、被嵌支持の強度が低下する可能性ある上、ボルトナットの締着に際して、ボルトが吊片に対して揺動することによって、例えば、ボルト頭、特にそのいずれか又は対向する角部分が、吊片に設置したボルト回り止めに乗り上げて、締着不良を招く可能性があり、その結果、配管吊バンドによる配管被嵌支持の強度不足を招き、配管の外周方向に対して該配管吊バンドが滑動する如くに被嵌支持が不安定になされたりする可能性が残るところ、該被嵌支持を確実に行ってその被嵌強度を確保するようにボルトナット締着の被嵌強度確保措置を施すことによって、配管の被嵌支持を、その被嵌強度を確保して安定して確実に行うことが可能となることの知見を得て、本発明をなすに至ったものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、一方を1/2円以上の湾曲角度の配管仮置き用とし、他方を残余の湾曲角度の配管仮置き用とした2分割一対のバンド片を、その各上端に起立した吊片に挿通したボルトナットによって締着して別体又は配管仮置き用のバンド片の吊片に一体のタンバックルに吊支持し、配管仮置き用のバンド片によって配管を仮置き支持して配管押え用のバンド片を配管外周方向に回動することにより、その円周方向中間位置でこれらバンド片に形成した連結自由端を相互に連結して該2分割一対のバンド片による配管の被嵌支持を自在とした配管吊バンドであって、上記配管仮置き用のバンド片又は該バンド片と配管押え用のバンド片の湾曲方向吊片近傍位置にこれら2分割一対のバンド片における内径より径大にして該吊片上端の起立位置に至る同心円の径大部位を配置するとともに上記ボルトナット締着時の配管外周方向への回動可能性を防止するようにボルトナット締着による被嵌強度確保措置を施してなることを特徴とする2分割バンド片を有する配管吊バンドとしたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、径大部位の配置によってボルトナットの締着を充分になし得ないケースは、多くの場合、ナットの回転によってボルトが連れ回りすることに起因する傾向が強いことから、上記被嵌強度確保措置を、該連れ回りを確実に防止することによって、配管の被嵌強度を確保したものとするように、これを、上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管仮置き用のバンド片における吊片にボルトのボルト頭を固定又は固定的に保持してナット回転によるボルトの連れ回りを防止することによって行なってなることを特徴とする請求項1に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンドとしたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、ボルトナットの締着に際してナット回転によって配管押え用の吊片に撓みや捩れ等の変形が生じて、該変形がボルトナットの締着不良を招く可能性があることから、上記被嵌強度確保措置を、該吊片に変形を防止する補強面を配置することによって、同様に配管の被嵌強度を確保したものとするように、これを、上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管押え用のバンド片における吊片に該吊片の面内に補強面を配置しナット回転による該吊片の変形を防止することによって行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンドとしたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記吊片に対するボルト頭の固定又は固定的な保持を、吊片に対向一対の固定用のリブを形成するとともに該リブにボルト頭の対向側面を圧着挟持することによって、一般にプレス加工によって形成する配管吊バンドにおいて可及的簡易且つ確実に形成することができることから、これを、上記ボルト頭の固定又は固定的な保持を、上記吊片に対向一対の固定用のリブを突出し該リブ間にボルト頭の対向する側面を圧着挟持することによって行ってなることを特徴とする請求項2又は3に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンドとしたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記吊片の面内の補強面を、該吊片の面内を部分的に隆起した隆起面とすることによって、同じく、一般にプレス加工によって形成する配管吊バンドにおいて可及的簡易且つ確実に形成することができることから、これを、上記吊片の面内の補強面を、該吊片の面内に吊片外方に向けて部分的に配置した隆起面によるものとしてなることを特徴とする請求項3に記載の配管吊バンドとしたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記配管バンドの滑動を直接に防止することが有効であることから、上記被嵌強度確保措置を、径大部位を配置したバンド片の該径大部位近傍に内側に向けて突出して配管に圧接する滑動防止突起を配置して配管の被嵌強度を確保したものとするように、これを、上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管仮置き用及び/又は配管押え用のバンド片の上記径大部位近傍に、内側に突出した配管の滑動防止突起を配置することによって行ってなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンドとしたものである。
【0014】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、配管仮置き用のバンド片又は該バンド片と配管押え用のバンド片の湾曲方向吊片近傍位置にこれらバンド片に径大部位を配置することによって配管作業の作業効率を可及的高度に確保するとともに、該径大部位を配置することによって生じることある配管バンドによる配管の被嵌支持を、被嵌強度を確保して安定して確実に行うようにした配管吊バンドを提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、上記被嵌強度確保措置を、ナットの回転によってボルトが連れ回りすること確実に防止することによって、配管の被嵌強度を確保したものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記被嵌強度確保措置を、ボルトナットの締着に際してナット回転によって配管押え用の吊片に撓みや捩れ等の変形を防止する補強面を配置することによって、同様に配管の被嵌強度を確保したものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記吊片に対するボルト頭の固定又は固定的な保持を、吊片に対向一対の固定用のリブを形成するとともに該リブにボルト頭の対向側面を圧着挟持することによって、一般にプレス加工によって形成する配管吊バンドにおいて可及的簡易且つ確実に形成することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記吊片の面内の補強面を、該吊片の面内を部分的に隆起した隆起面とすることによって、同じく、一般にプレス加工によって形成する配管吊バンドにおいて可及的簡易且つ確実に形成することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記被嵌強度確保措置を、径大部位を配置したバンド片の該径大部位近傍に内側に向けて突出して配管に圧接する滑動防止突起を配置したものとすることによって、上記配管バンドの滑動を直接に防止して配管の被嵌強度を確保したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】配管吊バンドの正面図である。
【図2】配管仮置き用のバンド片の正面図である。
【図3】配管仮置き用のバンド片の側面図である。
【図4】配管押え用のバンド片の正面図である。
【図5】配管押え用のバンド片の側面図である。
【図6】配管吊バンドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、図1乃至図6においてAは、鋼板にプレス加工を施すことによって形成した2分割バンド片を有する配管吊バンドであり、該配管吊バンドAは、一方を1/2円以上の湾曲角度の配管仮置き用とし、他方を残余の湾曲角度の配管仮置き用とした2分割一対のバンド片2a、2bを、その各上端に起立した吊片22に挿通したボルトナット4a、4bによって締着して別体又は配管仮置き用のバンド片の吊片に一体、本例にあっては別体のタンバックル1に吊支持し、配管仮置き用のバンド片2aによって配管6を仮置き支持して配管押え用のバンド片2bを配管6外周方向に回動することにより、その円周方向中間位置でこれらバンド片2a、2bに形成した連結自由端3を相互に連結して該2分割一対のバンド片2a、2bによる配管6の被嵌支持を自在としたものとしてあり、このとき該配管バンドAは、上記配管仮置き用のバンド片2a又は該バンド片2aと配管押え用のバンド片2b、本例にあっては配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの湾曲方向吊片近傍位置にこれら2分割一対のバンド片2a、2bにおける内径より径大にして該吊片上端の起立位置に至る同心円の径大部位24を配置するとともに上記ボルトナット4a、4b締着時の配管外周方向への滑動可能性を解消するようにボルトナット4a、4b締着による被嵌強度確保措置を施したものとしてある。
【0023】
配管吊バンドAのバンド片2a、2bは、湾曲片21と、該湾曲片21上端の吊片22と、該湾曲片21先端の連結自由端3を備えて、例えば1.5mm程度の肉厚の鋼板にそれぞれプレス加工を施して形成して、例えば、内径を、半径3cm程度にして6cm程度としてある。
【0024】
該配管吊バンドAにおける配管仮置き用のバンド片2aは、吊片22によってタンバックル1に該バンド片2aを吊支持し且つ連結自由端3を連結することによって該連結自由端3を部分的に重複した配管6の支持状態で、吊片22位置から連結自由端3の先端までの湾曲角度を、例えば220°程度、配管押え用のバンド片2bは、例えば140°程度として、配管6の外周をカバーして、これを被嵌支持するようにしてある。このとき、上記タンバックル1による配管吊バンドAの吊支持状態で配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの吊片22間には10°程度の空隙が生じるようにしてあるから、該空隙の角度を双方のバンド片2a、2bで吸収するように、各バンド片2a、2bは、例えば5°程度の角度を短寸化したものとしてあり、従って、本例の配管仮置き用のバンド片2aは、上記配管支持の状態で215°程度、配管押え用のバンド片2bは135°程度の湾曲角度を備えるようにしてある一方、上記吊片22間の空隙及び連結自由端3を除く湾曲片21の角度は、配管仮置き用のバンド片2aにあって、これを200°弱の、例えば190°程度とし、配管押え用のバンド片2bにあって、120°弱の、例えば110°程度としてある。
【0025】
各バンド片2a、2bの上端には、ボルト4aを挿通するボルト孔23を透設した吊片22を上向きに起立してあり、本例にあって該ボルト孔23は、上記配管仮置き用のバンド片2aにあってはボルト4aの、例えば6mm程度の軸に合せて7mm程度にこれより幾分径大化した円形のものとする一方、配管押え用のバンド片2bにあっては、上記配管仮置き用のバンド片2aの吊片22配置の上記ボルト孔23とその上端位置を合せて、下端を該ボルト孔23の下端より下方に向けて延長した、例えば幅を7mm程度、長さを1.3mm程度に長寸化して、ボルト4aの挿通状態で該バンド片2bを外側に起立し得るように上下に長孔をなすものとしてある。
【0026】
各バンド片2a、2bの連結自由端3は、連結によって相互に重合するように屈曲形成した段差重合片31及び先端重合片33と、上記段差重合片31と先端重合片33間に相互に噛合い係合するように配置した各1/2幅の切欠溝32と、上記段差重合片31と先端重合片33の重合による該連結自由端3の連結に際して各バンド片2a、2bの湾曲片21との径差を吸収し、本例にあってはバンド片2a、2bの内径に対して1mm程度の空隙を残すように径内に向けて先端重合片に突出配置した先端突起34と、該連結自由端3の連結後に双方の外れ止めを行うように相互に嵌合係止する切起し突起35を備えたものとしてある。
【0027】
このように形成した配管仮置き用のバンド片2a、配管押え用のバンド片2bには、本例にあってその双方に上記各バンド片2a、2bの内径より径大の円弧部をなすように径大部位25を配置してある。該径大部位25は、配管仮置き用のバンド片2a及び配管押え用のバンド片2bの上記各湾曲片21の上方部分、即ち連結自由端3と逆側の端部側に該湾曲片21の内径を部分的に径大化するようにしてその配置を行い、その上端に吊片22を起立してある。
【0028】
本例にあって径大部位25は、配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bに、その位置及び長さ(湾曲角度)を共通に配置してあり、本例にあって該径大部位25は、湾曲片21の先端から、例えば20°程度の湾曲角度にして、これらバンド片2a、2bの上記半径3cmに対して、その半径を3.2cm程度とすることによって、該径大部位25において2mm程度の幅分を径外方向に径大化してある。
【0029】
配管仮置き用のバンド片2aは、上記径大部位25を配置したことによって、吊片22下端から上記連結自由端3の先端まで220°、上記吊片22間の空隙及び連結自由端を除く190°の、配管6中心の外径と等しい180°を超える湾曲角度を有することによって、その開口が配管6の外径より縮小したものとなるところ、該開口6を拡大、例えば、該開口を配管の外径に略等しいか、又はこれより僅かに小さい開口の幅とするように拡大することができ、例えばバンド片2aの弾性に大きく抗して圧入することなく、配管6の仮置き載置を、該配管6の有する自重を利用して配管仮置き用のバンド片2aに乗せるか、その後にやや上から押圧することによって、可及的簡易にしてスムーズに行うことが可能となる。
【0030】
このとき、本例にあっては、更に、上記連結自由端3における先端重合片33の配置を、バンド片2aの内径に対して1mm程度の空隙を残すように配置したことによって、該空隙を加えると、上記吊片22下端と連結自由端3の先端との開口を、配管6に対して合計3mm程度径大化することになるから、上記湾曲角度によって縮小した開口は、該配管6と等しいか又はこれを超える幅を有するものとなり、従って、本例にあっては該空隙の寄与によって配管6の仮置き載置は、該配管6を開口に乗せるようすれば、これを更に簡易に行うことができる。
【0031】
また、配管押え用のバンド片2bは、上記径大部位25を配置したことによって、その吊片22の下端位置が2mm程度タンバックル1側の上方に移動するから、吊片22近傍における回動の軌跡を外側に離隔して、配管仮置き用のバンド片2aに仮置き載置した配管6との間に衝接回避用のスペースを配置することができ、このため配管押え用のバンド片2bの回動による配管6の被嵌支持に際して、該配管押え用のバンド片2bのボルト4aからの外側に向けた立ち上げの起立幅を縮小しても、該バンド片2bが配管6の上部に衝接するのを防止することができ、従って、該バンド片2bを回動するに必要となるナット4bの緩め幅と回動後の締め戻し幅を極小的に短くすることができる。また、本例にあっては、該バンド片2bの吊片22に配置したボルト挿通孔23を上下の長孔としたから、該長孔がバンド片2bの外側に向けた立ち上げに寄与する結果、上記配管作業における上記ナット4bの緩め幅と締着時の締め戻しの締着幅を更に縮小することができる。
【0032】
配管吊バンドAは、後述のように、その上記2分割一対のバンド片2a、2bの各上端に起立した吊片22を、該吊片22に挿通したボルトナット4a、4bによって締着して、別体又は配管仮置き用のバンド片の吊片に一体のタンバックル、本例にあっては、天井スラブに上端を固定した吊ボルト5に螺装固定した別体のタンバックル1における一対の締着片を内側に挟むようにその外側に配置して、一方の吊片、本例にあっては配管仮置き用のバンド片2aにおける吊片22側からのボルト4aに、他方の吊片、本例にあっては配管押え用のバンド片2bにおける吊片22側のナット4b、例えば六角ナットや蝶ナットを締着することによって、該タンバックル1に吊支持して配管6の被嵌支持を行うところ、上記径大部位24、本例にあっては配管仮置き用及び配管押え用の各バンド片2a、2bに径大部位24を配置したことによって、該径大部位24に応じた角度、例えば双方でその間隔を含めて60度と連結自由端3の連結に要する角度、例えば50度の合計110度分、配管6との接触角度、即ち被嵌支持の角度が減少することに起因すると見られる締着不良乃至これによる配管吊バンドAによる配管6被嵌支持の強度不足を招くことがあり、その結果、配管吊バンドAによる配管被嵌支持の強度不足を招き、配管6の外周方向に対して該配管吊バンドAが滑動する如くに被嵌支持が不安定になされたりする可能性が残ることがあるが、上記被嵌強度確保措置によって、滑動の可能性を解消し、配管吊バンドAによる配管6の被嵌支持を確実に行ってその被嵌強度を確保して、配管6の被嵌支持を、安定して確実に行うようにしてある。
【0033】
本例にあって吊片22のボルトナット4a、4b締着による被嵌強度確保措置は、これを、配管仮置き用のバンド片2aにおける吊片22にボルト4aのボルト頭を固定又は固定的に保持してナット4b回転によるボルト4aの連れ回りを防止することによって行ない、配管押え用のバンド片2bにおける吊片22に該吊片22の面内に補強面26を配置しナット4b回転による該吊片22の変形を防止することによって行ない、また、配管仮置き用及び/又は配管押え用のバンド片、本例にあっては配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの上記径大部位24近傍に、内側に突出した配管の滑動防止突起27を配置することによって行ったものとしてある。
【0034】
このとき、上記ボルト頭の固定又は固定的な保持は、これを、上記吊片22に対向一対の固定用のリブ25を突出し該リブ25間にボルト頭の対向する側面を圧着挟持することによって行ったものとし、上記吊片の面内の補強面26は、これを、該吊片22の面内に吊片22外方に向けて部分的に配置した隆起面によるものとしてある。
【0035】
即ち、本例にあって配管仮置き用のバンド片2aにおける吊片22には、外側に向けて突出するように、垂直、水平乃至傾斜配置、本例にあっては水平配置し、更に上位を小、下位を大とした対向一対の固定用のリブ25を配置するとともに該対向一対の固定用のリブ25によってボルト4a、本例にあっては六角ボルトのボルト頭の対向する側面を圧着挟持してあり、該圧着挟持は、本例にあって、上記対向一対の固定用のリブ25を形成後に該リブ25にカシメ加工を施し又は対向一対の固定用のリブ25を、ボルト頭の対向する側面の間隔より僅かに小さい間隔に形成し、ボルト頭を該リブ25間に圧入することによって、該吊片22にボルト頭を一体化するように、該ボルト頭の対向する側面を強固且つ一体的に挟持し、該ボルト4aを固定したもの乃至は固定的に保持したものとしてある。これによって、ボルトナット4a、4bの締着に際してナット4bを回転しても、該吊片22に一体化したボルト4aは、これが前後乃至上下左右に揺動することも、ボルト頭がリブ25に乗り上げたりすることなく、ボルト頭が吊片22に密着して固定することによって定位置で、ナット4bの回転によってボルトナット4a、4bの確実な締着を行うことによって、配管吊バンドAによる配管6挟持状の被嵌支持を行ってその被嵌強度を確保することができる。
【0036】
吊片22の面内の補強面26は、例えば配管押え用のバンド片2bにおける吊片22を、プレス加工によって外側、即ちナット4b側に1mm以下、例えば0.数mm程度突出するように平坦に隆起して、ナット4bの径より幾分広い面積をなすように矩形乃至方形のものとしてある。補強面26を配置することによって、ナット4bの回転による締め付けに際して、該吊片22に撓みや捩れ等の変形を招くことなく、締め付け力を常に均一に受けることによって、ボルトナット4a、4bの容易にして確実な締着を行うことができる。
【0037】
配管6の滑動防止突起27は、各バンド片2a、2bの上記径大部位24近傍の奥行方向前後にそれぞれ一対配置してあり、該滑動防止突起27は、微小にして先端を可及的に鋭角とするようにバンド片2a、2bにそれぞれプレス加工を施して内側に低突出して形成したものとしてある。該滑動防止突起27は、ボルトナット4a、4bの締着によって、先端を配管6の外周面に強圧着して、配管吊バンドAと配管6の間に僅かながらも生じることあるクリアランスを吸収するドット状のスペーサーをなす如くにして、配管吊バンドAの滑動を直接に阻害するように防止するようにしてある。本例にあって該滑動防止突起27は、径大部位24から1〜2cm程度の位置に、それぞれ1mm程度の径、0.5mm程度の高さで、例えば外周にエッジを残してその滑動防止性を向上するように、各一対を突出してある。
【0038】
本例にあって、上記被嵌強度確保措置は、上記配管仮置き用のバンド片2aにおけるボルト頭の吊片22への固定又は固定的な保持、配管押え用のバンド片2bにおける吊片22の面内の補強面26及び配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの各滑動防止突起27を同時に備えたものとしてあり、これらの各配管被嵌支持の被嵌強度を重畳的に備えることによって、該配管吊バンドAによる配管6の被嵌支持は、その配管6外周面に上記合計110度程度の配管6の支持角度が減少するも、極めて強固に配管6を被嵌支持することができ、実験によれば、配管6を被嵌支持した状態で、該配管吊バンドAの配管6に対する滑動は全くないことはもとより、該配管吊バンドAのタンバックル1を手持ちして、これを回動するように外力を付与して回動を試みるも、その回動を行うことはできなかった。
【0039】
一方、上記配管仮置き用のバンド片2aにおけるボルト頭の吊片22への固定又は固定的な保持、配管押え用のバンド片2bにおける吊片22の面内の補強面26及び配管仮置き用及び配管押え用のバンド片2a、2bの滑動防止突起27による被嵌強度確保措置は、、いずれも配管仮置き用のバンド片2a、配管押え用のバンド片2bを生産するプレス加工によって、これらバンド片2a、2bに設置することができ、その設置を可及的簡易且つ確実に行うことができる。
【0040】
以上のように形成した本例の配管吊バンドAは、各バンド片2a、2bの連結自由端3を相互に連結し且つタンバックル1とバンド片2a、2bの吊片22を、配管仮置き用のバンド片2aにおける吊片22側にボルト4aのボルト頭を、配管押え用のバンド片2bにおける吊片22側にナット4bを配置して、該ボルトナット4a、4bによって仮止め状に締着するとともにタンバックル1を配管吊バンドAの内側に回動収納するように配置して、バンド片2a、2b一体化の出荷形態で現場に搬入使用するようにしてあり、本例にあってはボルト4aは、これにナット4bを螺装した後に、その先端のネジ山を数山程度圧潰して、螺装したナット4bの脱落を防止するようにしてある。
【0041】
現場での配管作業は、配管吊バンドAの外側にタンバックル1を回転して脱出し、吊ボルト5に該タンバックル1の回転ナット11を螺装することによって、複数の吊ボルト5に対して複数の配管吊バンドAを吊支持した後に、ボルトナット4a、4bのナット4bをやや緩めて、ボルト4aを回動軸として配管押え用のバンド片2bを回動し、双方のバンド片2a、2bにおける連結自由端3の連結を解除して、配管押え用のバンド片2bを配管仮置き用のバンド片2aから分離し、該複数の配管吊バンドAの各配管仮置き用のバンド片2aに対して配管6を架設する如くに仮置き載置し、その後に配管押え用のバンド片2bを、配管6を被嵌支持するようにボルト4aを回動軸として、配管外周方向に回動し、双方の連結自由端3を連結し、該連結自由端3の連結状態で、配管押え用のバンド片2bの吊片22側に位置するナット4aを締め戻して、ボルトナット4a、4bによる締着固定を行うものとしてあり、このとき連結自由端3の連結は、双方のバンド片2a、2bの段差重合片31にそれぞれ先端重合片33を重合するとともに双方の切欠溝32を噛合い係合し、その切起し突起35を他方のバンド片2a又は2bの段差重合片31及び先端重合片33に引掛け状に係合することによって、これを行うものとしてある。
【0042】
このとき本例の配管吊バンドAは、その上記配管仮置き用のバンド片2aの径大部位24によって、該バンド片2aに対する配管6の上記架設状の仮置き載置を可及的に簡易且つスムーズに行うことができるとともに該仮置き載置を安定して行うことができ、また、配管押え用のバンド片2bの径大部位24によって、ナット4bの緩め幅と締め戻しの締着幅を極小化でき、従って、配管作業の作業効率を可及的高度に確保することができる。
【0043】
また、上記被嵌強度確保措置、即ち、上記配管仮置き用のバンド片2aにおけるボルト頭の吊片22への固定又は固定的な保持によって、ボルトナット4a、4bの締着に際して、ナット4bの回転によってボルト4aが連れ回りすること確実に防止することによって、配管6の被嵌強度を確保したものとすることができ、同じくナット4b回転によって配管押え用のバンド片2bの吊片22に撓みや捩れ等の変形を防止して、同様に配管6の被嵌強度を確保したものとすることができ、配管6に圧接する滑動防止突起27を配置したものとすることによって、上記配管吊バンドAの滑動を直接に防止して配管6の被嵌強度を確保したものとすることができ、また、これらはそれぞれプレス加工によって形成できるから、一般にプレス加工によって形成する配管吊バンドAにおいてその形成を可及的簡易且つ確実に行うことができる。
【0044】
図中12は該タンバックル1における回転ナット11の落下防止用のナット抜止め、24は吊片22のボルト4aの回転止め、27はバンド片2a、2bの補強リブをそれぞれ示す。
【0045】
図示した例は以上のとおりとしたが、タンバックルを、配管仮置き用のバンド片の吊片に一体に形成したもの、即ち、タンバックルの支持片と該吊片を一体化して双方を一体に形成したものとすること、上記配管吊バンドの配管仮置き用のバンド片又は配管押え用のバンド片の一方に、その湾曲方向吊片近傍位置に該バンド片の内径より径大にして該吊片上端の起立位置に至る同心円の径大部位を配置するようにして、配管の仮置き載置を容易化し又はナットの緩め幅と締め戻しの締着幅を小さくすること、ボルトナット締着による被嵌強度確保措置について、配管仮置き用のバンド片における吊片にボルトのボルト頭を固定又は固定的に保持したものとするとき、ボルト頭を該吊片に溶着し、接着し又は金具固定して、同様にナット回転によるボルトの連れ回りを防止すること、配管押え用のバンド片における吊片に該吊片の面内に配置する補強面を、該吊片の裏面、即ち、タンバックル側に形成すること、同じく該補強面を多数微小の横リブ又は縦リブによって形成すること、径大部位を配管仮置き用又は配管押え用のバンド片の一方に配置したとき、上記滑動防止突起を該一方のバンド片に配置すること、ナットを図示した六角ナットに代えて、蝶ナットとすること等を含めて、本発明の実施に当って、配管吊バンド、配管仮置き用のバンド片、配管押え用のバンド片、径大部位、タンバックル、吊片、ボルト孔、被嵌強度確保措置、必要に応じて用いるボルト頭の固定又は固定的保持、リブ、補強面、滑動防止突起等の各具体的形状、構造、材質、形成手段、これらの関係、これらに対する付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0046】
A 配管吊バンド
1 タンバックル
11 回転ナット
12 ナット抜止め
2a 配管仮置き用のバンド片
2b 配管押え用のバンド片
21 湾曲片
22 吊片
23 ボルト孔
24 径大部位
25 リブ
26 補強面
27 滑動防止突起
28 補強リブ
3 連結自由端
31 段差重合片
32 切欠溝
33 先端重合片
34 先端突起
35 切起し突起
4a ボルト
4b ナット
5 吊ボルト
6 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方を1/2円以上の湾曲角度の配管仮置き用とし、他方を残余の湾曲角度の配管仮置き用とした2分割一対のバンド片を、その各上端に起立した吊片に挿通したボルトナットによって締着して別体又は配管仮置き用のバンド片の吊片に一体のタンバックルに吊支持し、配管仮置き用のバンド片によって配管を仮置き支持して配管押え用のバンド片を配管外周方向に回動することにより、その円周方向中間位置でこれらバンド片に形成した連結自由端を相互に連結して該2分割一対のバンド片による配管の被嵌支持を自在とした配管吊バンドであって、上記配管仮置き用のバンド片又は該バンド片と配管押え用のバンド片の湾曲方向吊片近傍位置にこれら2分割一対のバンド片における内径より径大にして該吊片上端の起立位置に至る同心円の径大部位を配置するとともに上記ボルトナット締着時の配管外周方向への滑動可能性を防止するようにボルトナット締着による被嵌強度確保措置を施してなることを特徴とする2分割バンド片を有する配管吊バンド。
【請求項2】
上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管仮置き用のバンド片における吊片にボルトのボルト頭を固定又は固定的に保持してナット回転によるボルトの連れ回りを防止することによって行なってなることを特徴とする請求項1に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンド。
【請求項3】
上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管押え用のバンド片における吊片に該吊片の面内に補強面を配置しナット回転による該吊片の変形を防止することによって行なってなることを特徴とする請求項1又は2に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンド。
【請求項4】
上記ボルト頭の固定又は固定的な保持を、上記吊片に対向一対の固定用のリブを突出し該リブ間にボルト頭の対向する側面を圧着挟持することによって行ってなることを特徴とする請求項2又は3に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンド。
【請求項5】
上記吊片の面内の補強面を、該吊片の面内に吊片外方に向けて部分的に配置した隆起面によるものとしてなることを特徴とする請求項3に記載の配管吊バンド。
【請求項6】
上記吊片のボルトナット締着による被嵌強度確保措置を、配管仮置き用及び/又は配管押え用のバンド片の上記径大部位近傍に、内側に突出した配管の滑動防止突起を配置することによって行ってなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の2分割バンド片を有する配管吊バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214648(P2011−214648A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82660(P2010−82660)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(392018078)日栄インテック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】